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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】無線送受信装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/0413 20170101AFI20241119BHJP
【FI】
H04B7/0413 320
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023527052
(86)(22)【出願日】2021-11-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-15
(86)【国際出願番号】 KR2021015936
(87)【国際公開番号】W WO2022098130
(87)【国際公開日】2022-05-12
【審査請求日】2023-05-02
(31)【優先権主張番号】10-2020-0145980
(32)【優先日】2020-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0150724
(32)【優先日】2021-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】508112782
【氏名又は名称】ケーエムダブリュ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドゥク ヨン キム
(72)【発明者】
【氏名】ヨン チャン ムン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ヒョン シム
(72)【発明者】
【氏名】ミン ソン ユン
(72)【発明者】
【氏名】テ ヨル オー
【審査官】川口 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-080077(JP,A)
【文献】特開2014-027608(JP,A)
【文献】特表2011-521592(JP,A)
【文献】特開2003-060424(JP,A)
【文献】特開2010-233215(JP,A)
【文献】特開2000-049524(JP,A)
【文献】特開2009-225013(JP,A)
【文献】特表2020-503709(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/02 - 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる方向性を有する多重ビームを形成して前記多重ビームにより信号を送受信する配列アンテナと、
直交偏波対を合成して前記多重ビーム形成のための多重ビーム信号を生成するデジタル部と、
前記多重ビーム信号を周波数変換して前記配列アンテナにそれぞれ出力するRF部とを含み、
前記デジタル部は、
2個の直交する偏波信号からなる第1の直交偏波対を合成し、
前記第1の直交偏波対とは異なる種類の2個の直交する偏波信号からなる第2の直交偏波対を合成し、
前記第1の直交偏波対および前記第2の直交偏波対を前記多重ビームのうちの隣接するビームに割当て、さらに
前記各ビームに割当てられた直交偏波対の位相を異ならせるように設定し、
前記配列アンテナは、
同じセクタ内でビームを形成する複数のアンテナモジュールを含み、
前記各アンテナモジュールに対して、前記第1の直交偏波対または前記第2の直交偏波対の偏波信号を有する一対のビームを形成する、ことを特徴とする無線送受信装置。
【請求項2】
前記多重ビームは、それぞれのビームが垂直および水平方向に異なる方向性を有することを特徴とする請求項1に記載の無線送受信装置。
【請求項3】
前記デジタル部は、
異種の偏波信号から直交偏波対を合成する偏波合成部と、
前記直交偏波対をそれぞれのビームに割当てる偏波割当部と、
前記それぞれのビームに割当てられた直交偏波対に基づいて前記配列アンテナでの多重ビーム形成のための多重ビーム信号を生成する多重ビーム形成部とを含むことを特徴とする請求項1に記載の無線送受信装置。
【請求項4】
前記偏波合成部は、
入力信号の偏波を第1直交偏波対および第2直交偏波対に変換することを特徴とする請求項3に記載の無線送受信装置。
【請求項5】
前記第1直交偏波対は、
±45度直交偏波対または垂直/水平(vertical/horizontal)直交偏波対のいずれか1つであることを特徴とする請求項4に記載の無線送受信装置。
【請求項6】
前記第1直交偏波対は、
±45度直交偏波対または垂直/水平(vertical/horizontal)直交偏波対のいずれか1つであり、
前記第2直交偏波対は、
±45度直交偏波対または垂直/水平(vertical/horizontal)直交偏波対の他の1つであることを特徴とする請求項4に記載の無線送受信装置。
【請求項7】
前記偏波割当部は、
それぞれのビームに前記合成された第1直交偏波対または第2直交偏波対を割当てることを特徴とする請求項4に記載の無線送受信装置。
【請求項8】
前記偏波割当部は、
それぞれのビームのうち第1ビームに第1直交偏波対を割当て、前記第1ビームに隣り合う第2ビームに前記第2直交偏波対を割当てることを特徴とする請求項7に記載の無線送受信装置。
【請求項9】
前記デジタル部は、
ビームの個数および基準ビームの偏波成分に応じてそれぞれのビームに対する偏波割当制御信号を生成して前記偏波割当部に提供する偏波割当制御部をさらに含むことを特徴とする請求項3に記載の無線送受信装置。
【請求項10】
前記デジタル部は、
前記多重ビーム信号に割当てられた直交偏波対の大きさおよび位相を補正する大きさ/位相補正部をさらに含むことを特徴とする請求項3に記載の無線送受信装置。
【請求項11】
前記デジタル部は、
前記多重ビーム信号に割当てられた直交偏波対の偏波合成時の信号の大きさおよび位相と、前記RF部のRFチェーンの信号の大きさおよび位相とを比較して信号の大きさおよび位相の補正を決定し、前記大きさ/位相補正部に補正信号を出力する偏波合成キャリブレーション部をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の無線送受信装置。
【請求項12】
前記デジタル部は、
前記配列アンテナでの多重ビーム形成のための多重ビーム信号を生成する多重ビーム形成部と、
前記多重ビーム信号に異種の直交偏波対を合成する偏波合成部と、
前記多重ビーム信号に合成されたいずれか1つの直交偏波対をそれぞれの多重ビーム信号に割当てる偏波割当部とを含むことを特徴とする請求項1に記載の無線送受信装置。
【請求項13】
互いに異なる方向性を有する多重ビームを形成して前記多重ビームにより信号を送受信する配列アンテナと、
入力信号に直交偏波対を合成し、互いに隣り合うビームに異種の直交偏波対を割当てるようにそれぞれのビームにいずれか1つの直交偏波対を割当てデジタル部と、
前記それぞれのビームに割当てられた直交偏波対の偏波信号を周波数変換し、各偏波信号の位相を設定して前記配列アンテナにビーム信号を出力するように構成されたRF部とを含み、
前記RF部は、
それぞれの偏波信号の周波数を変換する複数のRFチェーンと、前記周波数変換された各偏波信号の位相を異なるように設定してアナログ多重ビーム信号を生成する多重ビーム形成部とを含み、
前記デジタル部は、
2個の直交する偏波信号からなる第1の直交偏波対を合成し、
前記第1の直交偏波対とは異なる種類の2個の直交する偏波信号からなる第2の直交偏波対を合成し、
前記第1の直交偏波対および前記第2の直交偏波対を前記多重ビームのうちの隣接するビームに割当て、
前記配列アンテナは、
同じセクタ内でビームを形成する複数のアンテナモジュールを含み、
前記各アンテナモジュールに対して、前記第1の直交偏波対または前記第2の直交偏波対の偏波信号を有する一対のビームを形成する、ことを特徴とする無線送受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線送受信装置および方法(RADIO TRANSMISSION AND RECEPTION APPARATUS AND BEAM FORMING METHOD THREROF)に関し、より詳しくは、異種の直交偏波対が交差する多重ビームを有する無線送受信装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
移動通信のMIMO(multiple-input multiple-output)アンテナモジュールは、多重経路によるフェージング(fading)の影響を減少させ、偏波ダイバーシティ(diversity)機能を行うために、複数の二重偏波アンテナモジュール(二重偏波アンテナモジュールアレイ)として設計されることが一般的である。
【0003】
フェージングとは、電波の強度が時間によって変化する現象を意味し、ダイバーシティとは、電場の強度または信号出力対ノイズ出力の比が互いに異なるいくつかの受信信号を合成して単一の信号を得ることにより、フェージングの影響を減少させる方式を意味する。
【0004】
二重偏波アンテナから放射されるビームはwideビーム形状を有し、wideビーム形状のビームは周辺環境によってSNR(signal to noise ratio)が低下して、遠い地点までの信号の伝送が困難という限界がある。
【0005】
このような問題を解決するために、従来は、二重偏波アンテナモジュールアレイ内の放射素子をカップリングして(信号経路を共有して)、同一周波数の信号(同一偏波の信号)に対して空間(セクタ)を分離することにより、このような問題を解決しようとした。
【0006】
しかし、このような方法は、互いに同じ偏波を有するビームが隣接した位置に配置されるので、各ビーム間の相関関係が高くなって通信品質が低下する問題点を発生させることがある。
【0007】
このように、多重ビームを用いるMassive MIMO(multiple-input and multiple-output)システムでは、互いに隣接するビーム間の干渉によって無線チャネルの相関係数が高くなってアンテナの信号送受信効率が低下する問題が発生する。さらに、ビーム間の干渉による影響でセルの容量が制限される問題を有している。
【0008】
最近は、互いに異なる偏波を有するアンテナモジュールをMassive MIMOシステムに採用して隣接するビームが互いに異なる偏波を用いるように構成することにより、隣接するビーム間の干渉を減少させている。しかし、この方法は、使用しようとする偏波それぞれに対するアンテナモジュールを別途に構成しなければならないので、製作工程が複雑になることから、多くの時間と費用がかかる問題点を有する。
【0009】
また、この方法は、使用しようとする偏波それぞれに対するアンテナモジュールを別途に構成しなければならないので、アンテナサイズを増加させる問題点も生じることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の技術的課題を解決するためになされたものであって、セルまたはセクタ内に形成される多重ビームそれぞれに対して直交偏波対を付与しかつ、隣接するビーム間には同種の偏波対ではない異種の直交偏波対を付与することでビーム間の干渉を最小化して、アンテナ効率およびセル容量を増加させるようにした、無線送受信装置およびそのビーム形成方法を提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明の他の目的は、1つのセルまたはセクタ内で固定されたビームを互いに異なる方向を有するように分離することでカバレッジを拡張させることができ、narrowビームを放射することでアンテナの利得を向上させるようにした、無線送受信装置およびそのビーム形成方法を提供することである。
【0012】
本発明の技術的課題は以上に言及した課題に制限されず、言及されていないさらに他の課題は以下の記載から当業者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するための、本発明の一実施例による無線送受信装置は、互いに異なる方向性を有する多重ビームを形成して前記多重ビームにより信号を送受信する配列アンテナと、直交偏波対を合成して前記多重ビーム形成のための多重ビーム信号を生成するデジタル部と、前記多重ビーム信号を周波数変換して前記配列アンテナにそれぞれ出力するRF部とを含むことを特徴とする。
【0014】
前記デジタル部は、前記多重ビームのうち互いに隣り合うビームに異種の直交偏波対を割当て、それぞれのビームに割当てられた直交偏波対の位相をそれぞれ異なるように設定することを特徴とする。
【0015】
前記多重ビームは、それぞれのビームが垂直および水平方向に異なる方向性を有することを特徴とする。
【0016】
前記デジタル部は、異種の偏波信号から直交偏波対を合成する偏波合成部と、前記直交偏波対をそれぞれのビームに割当てる偏波割当部と、前記それぞれのビームに割当てられた直交偏波対に基づいて前記配列アンテナでの多重ビーム形成のためのビーム信号を生成する多重ビーム形成部とを含むことを特徴とする。
【0017】
前記偏波合成部は、入力信号の偏波を第1直交偏波対および第2直交偏波対に変換することを特徴とする。
【0018】
前記第1直交偏波対は、±45度直交偏波対または垂直/水平(vertical/horizontal)直交偏波対のいずれか1つであることを特徴とする。
【0019】
前記第2直交偏波対は、±45度直交偏波対または垂直/水平(vertical/horizontal)直交偏波対の他の1つであることを特徴とする。
【0020】
前記偏波割当部は、それぞれのビームに前記合成された第1直交偏波対または第2直交偏波対を割当てることを特徴とする。
【0021】
前記偏波割当部は、それぞれのビームのうち第1ビームに第1直交偏波対を割当て、前記第1ビームに隣り合う第2ビームに前記第2直交偏波対を割当てることを特徴とする。
前記デジタル部は、ビームの個数および基準ビームの偏波成分に応じてそれぞれのビームに対する偏波割当制御信号を生成して前記偏波割当部に提供する偏波割当制御部をさらに含むことを特徴とする。
【0022】
前記デジタル部は、前記ビーム信号に割当てられた直交偏波対の大きさおよび位相を補正する位相補正部をさらに含むことを特徴とする。
【0023】
前記デジタル部は、前記ビーム信号に割当てられた直交偏波対の偏波合成時の大きさおよび位相と、前記RF部のRFチェーンの大きさおよび位相とを比較して大きさおよび位相の補正を決定し、前記位相補正部に補正信号を出力する偏波合成キャリブレーション部をさらに含むことを特徴とする。
【0024】
前記デジタル部は、前記配列アンテナでの多重ビーム形成のためのビーム信号を生成する多重ビーム形成部と、前記ビーム信号に異種の直交偏波対を合成する偏波合成部と、前記ビーム信号に合成されたいずれか1つの直交偏波対をそれぞれのビーム信号に割当てる偏波割当部とを含むことを特徴とする。
【0025】
また、上記の目的を達成するための、本発明の他の実施例による無線送受信装置は、互いに異なる方向性を有する多重ビームを形成して前記多重ビームにより信号を送受信する配列アンテナと、入力信号に直交偏波対を合成し、それぞれのビームにいずれか1つの直交偏波対を割当てかつ、互いに隣り合うビームに異種の直交偏波対を割当てるデジタル部と、前記それぞれのビームに割当てられた直交偏波対の偏波信号を周波数変換し、各偏波信号の位相を設定して前記配列アンテナにビーム信号を出力するRF部とを含むことを特徴とする。
【0026】
前記RF部は、それぞれの偏波信号の周波数を変換する複数のRFチェーンと、前記周波数変換された各偏波信号の位相を異なるように設定してアナログ多重ビーム信号を生成する多重ビーム形成部とを含むことを特徴とする。
【0027】
一方、上記の目的を達成するための、本発明の一実施例による無線送受信装置のビーム形成方法は、直交偏波対を合成して前記多重ビーム形成のための多重ビーム信号を生成するステップと、RFチェーンを介して前記多重ビーム信号を周波数変換して配列アンテナにそれぞれ出力するステップと、前記配列アンテナで前記多重ビーム信号から互いに異なる方向性を有する多重ビームを形成するステップとを含むことを特徴とする。
【0028】
前記多重ビームは、互いに隣り合うビームに異種の直交偏波対が割当てられ、それぞれのビームに割当てられた直交偏波対の位相がそれぞれ異なるように設定されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明による無線送受信装置およびそのビーム形成方法によれば、セルまたはセクタ内に形成される多重ビームそれぞれに対して直交偏波対を付与しかつ、隣接するビーム間には同種の偏波対ではない異種の直交偏波対を付与することでビーム間の干渉を最小化することができ、それによってアンテナ効率およびセル容量を増加させる効果がある。
【0030】
また、本発明は、1つのセルまたはセクタ内で固定されたビームを互いに異なる方向を有するように分離することでカバレッジを拡張させることができ、narrowビームを放射することでアンテナの利得を向上させることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の第1実施例による無線送受信装置の構成を示す図である。
図2】本発明の一実施例による偏波合成部の動作を説明するのに参照される実施例を示す図である。
図3】本発明の一実施例による偏波合成部の動作を説明するのに参照される実施例を示す図である。
図4A】本発明の一実施例による偏波割当部の動作を説明するのに参照される実施例を示す図である。
図4B】本発明の一実施例による偏波割当部の動作を説明するのに参照される実施例を示す図である。
図5】本発明の一実施例による偏波割当部の動作を説明するのに参照される実施例を示す図である。
図6】本発明の一実施例による多重ビーム形成部の動作を説明するのに参照される実施例を示す図である。
図7】本発明の一実施例による大きさ/位相補正部の動作を説明するのに参照される実施例を示す図である。
図8】本発明の一実施例によるビーム形成動作を説明するのに参照される実施例を示す図である。
図9A】本発明の一実施例によるビーム形成動作を説明するのに参照される実施例を示す図である。
図9B】本発明の一実施例によるビーム形成動作を説明するのに参照される実施例を示す図である。
図10】本発明の一実施例によるデジタル部の受信動作を説明するのに参照される実施例を示す図である。
図11A】本発明の一実施例によるデジタル部の受信動作を説明するのに参照される実施例を示す図である。
図11B】本発明の一実施例によるデジタル部の受信動作を説明するのに参照される実施例を示す図である。
図12】本発明の第2実施例による無線送受信装置の構成を示す図である。
図13】本発明の第2実施例によるデジタル部の動作を説明するのに参照される実施例を示す図である。
図14】本発明の第2実施例によるデジタル部の動作を説明するのに参照される実施例を示す図である。
図15】本発明の第3実施例による無線送受信装置の構成を示す図である。
図16A】本発明の実施例による無線送受信装置の動作効果を説明するのに参照される実施例を示す図である。
図16B】本発明の実施例による無線送受信装置の動作効果を説明するのに参照される実施例を示す図である。
図17】本発明の第1実施例による無線送受信装置のビーム形成方法に関する動作フローを示す図である。
図18】本発明の第2実施例による無線送受信装置のビーム形成方法に関する動作フローを示す図である。
図19】本発明の第3実施例による無線送受信装置のビーム形成方法に関する動作フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の一部の実施例を例示的な図面により詳細に説明する。各図面の構成要素に参照符号を付すにあたり、同一の構成要素については、たとえ他の図面上に表示されてもできるだけ同一の符号を有するようにしていることに留意しなければならない。また、本発明の実施例を説明するにあたり、かかる公知の構成または機能に関する具体的な説明が本発明の実施例についての理解を妨げると判断された場合、その詳細な説明は省略する。
【0033】
本発明の実施例の構成要素を説明するにあたり、第1、第2、A、B、(a)、(b)などの用語を使うことができる。このような用語はその構成要素を他の構成要素と区別するためのものに過ぎず、その用語によって当該構成要素の本質や順番または順序などが限定されない。また、他に断らない限り、技術的または科学的な用語を含むここで使われるすべての用語は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。一般的に使われる辞書に定義されているような用語は、関連技術の文脈上有する意味と一致する意味を有すると解釈されなければならず、本出願において明らかに断らない限り、理想的または過度に形式的な意味で解釈されない。
本発明は、無線送受信装置および方法に関し、本発明による無線送受信装置は、多重ビームを用いるMassive MIMO(multiple-input and multiple-output)システムに適用可能である。
【0034】
図1は、本発明の一実施例による無線送受信装置の構成を示す図である。
【0035】
図1を参照すれば、無線送受信装置10は、配列アンテナ100と、RF部200と、デジタル部300とを含むことができる。
【0036】
配列アンテナ100は、複数のアンテナモジュール(antenna module)110で構成される。ここで、配列アンテナ100は、複数のアンテナモジュール110を一定のパターンによって定められた位置にそれぞれ配列し、各アンテナモジュール110の配列位置によって位相および大きさなどを調整して所定の方向にビームを放射するアンテナを意味する。この時、配列アンテナ100は、RF部200またはデジタル部300で生成されたビーム形成制御信号により多重ビームを形成することができる。
【0037】
それぞれのアンテナモジュール110は、セルカバレッジ内で垂直または水平方向に互いに異なる方向性を有する多重ビームを形成することができる。したがって、それぞれのアンテナモジュール110は、特定のビーム方向に対する送信または受信を行うように動的に構成される。
【0038】
それぞれのアンテナモジュール110は、互いに異なる偏波方向を有する2つまたはそれ以上の放射素子で構成される。
【0039】
一例として、アンテナモジュール110は、直交する偏波方向を有する2つの放射素子で構成された二重偏波アンテナモジュールであってもよい。
【0040】
ここで、二重偏波アンテナモジュールは、+45度偏波方向を有する第1放射素子と、前記第1放射素子の偏波方向と直交(または垂直)する-45度偏波方向を有する第2放射素子とを含んで構成される。
【0041】
一方、二重偏波アンテナモジュールは、垂直(vertical)偏波方向を有する第3放射素子と、前記第3放射素子の偏波方向と直交(または垂直)する水平(Horizontal)偏波方向を有する第4放射素子とを含んで構成される。
【0042】
他の例として、アンテナモジュール110は、直交する偏波方向を有する4つの放射素子で構成された四重偏波アンテナモジュール(またはクワッド偏波アンテナモジュール)であってもよい。
【0043】
ここで、四重偏波アンテナモジュールは、+45度偏波方向を有する第1放射素子と、前記第1放射素子の偏波方向と直交(または垂直)する-45度偏波方向を有する第2放射素子と、垂直(vertical)偏波方向を有する第3放射素子と、前記第3放射素子の偏波方向と直交(または垂直)する水平(Horizontal)偏波方向を有する第4放射素子とを含んで構成される。この時、第3放射素子および/または第4放射素子は、第1放射素子および/または第2放射素子と±45度の偏波方向差を有することができる。
【0044】
四重偏波アンテナモジュールを介して放射されるビームは、narrowビーム形状を有することができ、これらビームのうち互いに隣接するビームは、互いに異なる直交偏波方向を有することができる。
【0045】
ここで、「直交」または「垂直」とは、放射素子の偏波方向が正確に90度の角度差を有する場合と、90±θの角度差を有する場合とをすべて含むことができる。θは、アンテナモジュール110の製作工程での誤差、他のアンテナモジュールとの相関関係(correlation)の程度、ビーム形成方向の調整の必要性などに応じて可変できる。
アンテナモジュール110を構成する放射素子は、アンテナモジュール110の構成領域内で多様な形態で配置される。
【0046】
一例として、アンテナモジュール110を構成する放射素子は、互いに離隔するように配置される。
【0047】
他の例として、アンテナモジュール110を構成する放射素子は、一部または全体放射素子の中心が互いに交差するように配置される。この場合、アンテナモジュール110において放射素子の占める面積が減少してアンテナモジュール全体の面積効率性が増大できる。
【0048】
このように、アンテナモジュール110の面積効率性の増大は、アンテナの製作、設置、維持補修などによる便宜性の向上につながることができる。
【0049】
それぞれのアンテナモジュール110によって形成されるビームは、直交する少なくとも2つの直交偏波対によって形成され、互いに隣り合うビームの直交偏波対は、互いに異なるタイプ(方向)の直交偏波からなる。
【0050】
一例として、複数のビームのうち第1ビームは、第1タイプの直交偏波対で形成される。ここで、第1タイプの直交偏波対は、+45度偏波信号および-45度偏波信号からなる偏波対であってもよい。
【0051】
一方、第1ビームに隣り合う少なくとも1つの第2ビームは、第2タイプの直交偏波対で形成される。ここで、第2タイプの直交偏波対は、垂直(vertical)偏波信号および水平(Horizontal)偏波信号からなる偏波対であってもよい。
【0052】
このように、本発明は、多重ビームを形成するにあたり、互いに隣り合うビームに対して異なるタイプ(異種)の直交偏波対を適用することにより、隣り合うビーム間の相関度を減少させて通信品質を向上させることができる。ここで、互いに隣り合うビームは、水平方向に隣り合うビームだけでなく、垂直方向に隣り合うビームに対しても互いに異なるタイプの直交偏波対を適用することができる。このように、直交偏波対を適用することで無線チャネルの直交性が向上することにより、無線送受信システムのチャネル容量が増大できる。
【0053】
仮に、多重偏波を用いてビームを形成するアンテナシステムとして、同一のセクタ内でビームを形成するアンテナモジュールが各モジュールごとに1つのビームを形成し、それぞれのビームは、同一偏波または1つの偏波成分を有するようにビームを形成する方式が考えられる。
【0054】
これに対し、本発明は、異種偏波を有する多重ビームを形成するにあたり、同一のセクタ内でビームを形成するそれぞれのアンテナモジュールは、各モジュールごとに互いに直交する一対の偏波信号(仮に、士45度直交偏波信号)を有する一対のビームを形成する。すなわち、1つのアンテナモジュールは、2個の偏波信号(仮に、士45度直交偏波信号)に対する2個のビームを生成し、前記2個のビームのうちの1つには+45度偏波信号、他の1つには-45度偏波信号が割当てられる。このように、一対の偏波信号は、互いに異なる位相を有するように設定されることでビームが空間的に分離されるため、ビーム間の干渉が最小化される。
【0055】
それだけでなく、前記の一対の士45度直交偏波信号を有する一対のビームを形成するアンテナモジュールに隣り合うアンテナモジュールは、前記士45度直交偏波信号と干渉されない他の一対の偏波信号(V/H直交偏波信号)を有する一対のビームを形成するため、隣り合うアンテナモジュールのビーム間の干渉も最小化することができる。
【0056】
また、図1を参照すれば、一対の士45度直交偏波信号を有するビームと、同種の他の一対の士45度直交偏波信号を有するビームとが空間的に完全に分離可能で、同種偏波を有するビーム間の干渉も最小化されるという利点がある。
【0057】
RF部200は、複数のRFチェーン210を含むことができる。この時、RFチェーン210は、フィルタ(Filter)、電力増幅器(Power Amplifier、PA)、低雑音増幅器(Low Noise Amplifier、LNA)およびRFICなどを含んで構成される。RFICは、DAC(digital to analog converter)/ADC(analog to digital converter)、ミキサ(mixer)などを含んで構成される。
【0058】
RFチェーン210は、無線周波数アンテナを用いて伝送するのに適した信号で信号を調整するか、配列アンテナ100を介して受信された信号をサンプリングおよび基底帯域の処理に適した信号に変換する。
【0059】
図1には示さないが、RF部200は、アナログ型多重ビーム形成部を含むことができる。万一、RF部200にアナログ型多重ビーム形成部が含まれる場合、デジタル部300の多重ビーム形成部が省略可能である。これに関する具体的な説明は、後述する図15の実施例を参照する。
【0060】
ここで、本発明の多重ビーム形成は、基本的にデジタルビームフォーミング(Digital Beam forming)手法を用いる。
【0061】
アナログビームフォーミング(Analog Beam forming)は、デジタル信号処理が完了したアナログ信号を多数の経路に分岐し、各経路での位相シフト(PS;phase shift)と電力増幅(PA;power amplifier)の設定によりビームを形成する方式で、1個のRFチェーンと共に多数の位相シフトおよび信号減衰器で構成される送信および受信システム構造からなる。アナログビームフォーミングは、個別アンテナごとに連結されている位相シフトと信号減衰器の位相および振幅値をそれぞれ変化させてビームの方向と形状を形成する方式である。このようなアナログビームフォーミング手法は、位相シフトの制限的な解像度特性と高い部品価格の問題によってシステム性能と経済性の面で脆弱であり、高容量のための空間マルチプレキシング伝送手法と構造的にふさわしくない形態である。
【0062】
これに対し、デジタルビームフォーミングは、ダイバーシティと多重化利得を最大化するために、基地局の基底帯域(Baseband)処理を用いてデジタル段でビームを形成する手法である。また、デジタルビームフォーミングは、個別アンテナごとにRFチェーンが連結され、位相シフトまたは信号減衰器のようなRF回路が用いられず、このようなシステム構造をベースとするデジタルビームフォーミング手法は、RF段で信号の位相と振幅を変化させるのではなく、基底帯域(Baseband)でデジタル信号処理により信号の位相および振幅を変化させる。
【0063】
ここで、本発明の多重ビーム形成は、デジタルビームフォーミング(Digital Beam forming)がアンテナシステムのデジタル装置(DU)ではない無線ユニット(Radio Unit、RU)で実現されることを特徴とし、これに関する詳しい説明は後述する。
【0064】
一方、図1の実施例では、RF部200および配列アンテナ100をそれぞれ示したが、配列アンテナ100がRF部200に含まれた形態で実現されてもよい。
【0065】
デジタル部300は、インターフェース部310と、偏波合成部320、360と、偏波割当部330、370と、多重ビーム形成部340と、大きさ/位相補正部350と、偏波割当制御部380と、偏波合成キャリブレーション部390とを含むことができる。ここで、デジタル部300は、無線ユニット(Radio Unit、RU)のデジタルフロントエンド(Digital Front End、DFE)であるか、あるいはそれに含まれた一部のユニット形態で実現できる。
【0066】
通常のデジタルビームフォーミングは、アンテナシステムのデジタル装置(DU)でビームフォーミングに関連する動作をすべて行うのに対し、本発明による無線送受信装置10は、アンテナシステムのデジタル装置で行っていたビームフォーミングだけでなく、偏波合成および割当などの動作を無線ユニット(Radio Unit、RU)で行うことを特徴とする。
【0067】
ここで、前記無線ユニット(Radio Unit、RU)は、ユーザを区分できないため、ユーザごとに異なるビームを形成せず、セクタ内のすべてのユーザに同一のビームを形成することを特徴とする。一方、デジタル部300は、図1の[実施例1]または図12の[実施例2]のように多重ビーム形成部340の位置が異なるように構成される。
【0068】
[実施例1]
図1の実施例によれば、インターフェース部310は、無線送受信装置10に連結された装置から信号を受信したり、あるいは装置に信号を出力(伝達)する役割を果たす。ここで、インターフェース部310は、無線送受信装置10を基地局のデジタル装置(Digital Unit、DU)に連結するフロントホールインターフェース(Fronthaul Interface)であってもよい。
【0069】
一例として、フロントホールインターフェースは、CPRI(Common Public Radio Interface)、eCPRI(enhanced CPRI)などが相当できる。
【0070】
偏波合成部320および偏波割当部330は、送信信号を処理するユニットと、受信信号を処理するユニットとをそれぞれ配置することができる。この場合、送信信号処理ユニットと受信信号処理ユニットは、配置位置および順序が異なっていてもよい。
【0071】
以下、送信信号を処理する動作を基準としてビーム形成動作を説明する。
【0072】
偏波合成部320は、入力信号を基準として4個の直交偏波成分を抽出して偏波合成を行う。この時、偏波合成部320は、直交偏波対を合成し、合成された直交偏波対を偏波割当部330に印加することができる。
【0073】
偏波合成部320で4個の直交偏波成分を抽出する動作に関する具体的な説明は、図2および図3の実施例を参照する。ここで、図2および図3の実施例は、配列アンテナ100の各アンテナモジュール110が二重偏波アンテナモジュールであると想定して説明する。
【0074】
まず、図2を参照すれば、偏波合成部320は、2個の信号、すなわち、第1入力信号および第2入力信号が入力されると、第1および第2入力信号から直交する第1および第2偏波成分を抽出することができる。
【0075】
また、偏波合成部320は、第1および第2偏波成分を変換して直交する第3および第4偏波成分を抽出することができる。
【0076】
この時、偏波合成部320は、下記の数1のMatrixを用いて、入力信号を基準として4個の偏波成分を抽出することができる。
【0077】
【数1】
【0078】
ここで、第1および第2偏波成分は、直交する1つの第1偏波対をなすことができる。一例として、第1および第2偏波成分は、±45度偏波成分または垂直/水平(vertical/horizontal)偏波成分のいずれか1つであってもよい。
【0079】
また、第3および第4偏波成分は、直交する他の1つの第2偏波対をなすことができる。一例として、第3および第4偏波成分は、±45度偏波成分または垂直/水平(vertical/horizontal)偏波成分の他の1つであってもよい。
このように、偏波合成部320は、上記数1のMatrixを用いて、入力信号を基準として4個の偏波成分を抽出し、これによって互いに異なる異種の偏波対が交差する多重ビームを形成することができる。
【0080】
すなわち、本発明の一実施例による無線送受信装置は、1つのセル(またはセクタ)内の固定されたビームを、Matrixを用いて互いに異なる位相を有する複数のビームに分割し、分割された各ビームに直交偏波対の偏波成分をそれぞれ付与する方式で多重ビームを形成することができる。
【0081】
ここで、入力信号の偏波成分は、配列アンテナ100の特性に応じて決定可能である。
一例として、配列アンテナ100の各アンテナモジュール110が±45度偏波アンテナモジュールの場合、第1および第2偏波成分は、±45度偏波成分であり、第3および第4偏波成分は、垂直/水平(vertical/horizontal)偏波成分になる。
【0082】
これに関する実施例は、図3を参照する。
【0083】
図3を参照すれば、第1入力信号および第2入力信号の偏波成分a、bは、配列アンテナ100の特性に応じて決定される。これにより、偏波合成部320は、偏波成分a、bが決定されると、第1および第2偏波成分a、bを抽出する。
【0084】
また、偏波合成部320は、数1のMatrixを用いて、偏波成分a、bを[数2]で合成して第3偏波成分を抽出し、偏波成分a、bを[数3]で合成して第4偏波成分を抽出する。
【0085】
【数2】
【0086】
【数3】
【0087】
以下の実施例では、第1偏波成分が+45度偏波、第2偏波成分が-45度偏波、第3偏波成分が垂直偏波、そして第4偏波成分が水平偏波からなると想定して説明するが、これに限定されるものではない。
【0088】
これにより、偏波合成部320は、抽出された第1~第4偏波成分を用いて直交偏波対の偏波成分を合成し、直交偏波対が合成された信号を偏波割当部330に出力する。
【0089】
偏波割当部330は、偏波合成部320によって合成された直交偏波対、すなわち、±45度直交偏波対および垂直/水平(V/H)直交偏波対のうちビーム形成のためのいずれか1つの直交偏波対を選択して多重ビームにそれぞれ割当てる。この時、多重ビームに割当てられた直交偏波対の物理的偏波合成は、配列アンテナ100段で行われる。
【0090】
偏波割当部330は、配列アンテナ100によって形成されるビームの個数、基準ビームの偏波などを基準として各ビームに適用される直交偏波対を割当てることができる。
【0091】
ここで、偏波割当部330は、ビームの個数および基準ビームの偏波情報などを直接受信することができる。
【0092】
一方、偏波割当部330は、偏波割当制御部380から偏波割当制御信号を受信すると、受信された偏波割当制御信号によりそれぞれのビームに適用される直交偏波対を割当てることもできる。
【0093】
この時、偏波割当部330は、多重ビームのうち基準ビームにいずれか1つの直交偏波対を割当て、基準ビームの直交偏波対を基準として隣り合うビームに互いに異なるタイプの直交偏波対を交差割当てる。
【0094】
つまり、偏波割当部330は、基準となる第1ビームに第1および第2偏波成分の第1直交偏波対を割当て、第1ビームに隣り合う第2ビームには第3および第4偏波成分の第2直交偏波対を割当てることができる。また、偏波割当部330は、第2ビームに隣り合う第3ビームに再度第1直交偏波対を交差して割当てることができる。
【0095】
偏波割当部330でそれぞれのビームに直交偏波対を割当てる動作に関する具体的な説明は、図4Aおよび図4Bを参照する。
【0096】
偏波割当部330は、図4Aおよび図4Bに示されるように、入力信号S、Sを基準として抽出された+45度、-45度、V、Hの4個の偏波成分からなる士45度直交偏波対またはV/H直交偏波対を多重ビームにそれぞれ割当てることができる。ここで、Sは、+45度偏波信号であり、Sは、-45度偏波信号であると想定する。
【0097】
この時、偏波割当部330は、図4Aのように、多重ビームのいずれか1つの第1ビームに士45度直交偏波対を割当てることができる。この場合、配列アンテナ100は、+45度偏波信号および-45度偏波信号を用いて第1ビームを形成することができる。
【0098】
一方、偏波割当部330は、図4Bのように、第1ビームに隣り合う少なくとも1つ以上の第2ビームにV/H直交偏波対を割当てることができる。この場合、配列アンテナ100は、垂直(V)偏波信号および水平(H)偏波信号を用いて第2ビームを形成することができる。もちろん、偏波割当部330は、第2ビームに隣り合う少なくとも1つ以上のビームに再度士45度直交偏波対を割当てることができる。
【0099】
このように、偏波割当部330は、多重ビームに士45度直交偏波対またはV/H直交偏波対を交差割当てることができる。この場合、配列アンテナ100で多重ビームを形成する時、互いに隣り合うビーム同士で異種、すなわち、互いに異なるタイプの偏波成分を有するので、隣り合うビーム間の相関度が低下して信号送受信効率が向上する効果をもたらすことができる。
【0100】
図1には、偏波合成部320および偏波割当部330が単一個で構成されたことを示したが、図5に示されるように、偏波合成部320および偏波割当部330は、複数個で構成されてもよい。
【0101】
この時、偏波割当制御部380は、複数の偏波割当部330の動作を制御することができる。
【0102】
偏波割当制御部380は、形成するビームの個数および基準ビームの偏波情報が入力されると、入力されたビームの個数に対応してそれぞれのビームに対応する偏波割当制御信号を生成することができる。ここで、偏波割当制御信号は、直交偏波対を割当てる対象ビームの情報、および対象ビームに対して割当てられる直交偏波対の情報を含むことができる。
【0103】
偏波割当制御部380は、それぞれのビームに対応して生成された偏波割当制御信号を複数の偏波割当部330にそれぞれ伝送することができる。
【0104】
ここで、偏波割当制御部380は、形成するビームごとに対応する偏波割当部330を決定し、各偏波割当部330に偏波割当制御信号を伝送することができる。この場合、それぞれの偏波割当部330は、偏波割当制御部380から受信された偏波割当制御信号に基づいて対象ビームに対する直交偏波対を割当てることができる。
【0105】
偏波割当部330は、それぞれのビームに対する直交偏波対が割当てられると、それぞれのビームに割当てられた直交偏波対の情報を多重ビーム形成部340に出力することができる。
【0106】
ここで、多重ビーム形成部340は、セル(またはセクタ)内の固定されたビームを、Matrixを用いて互いに異なる位相を有する複数のビームに分割しかつ、分割された各ビームに直交偏波対の偏波成分を付与する。
【0107】
これにより、多重ビーム形成部340は、偏波割当部330からそれぞれのビームに対して割当てられた直交偏波対の情報が入力されると、それぞれのビームに対して割当てられた直交偏波対の情報を用いて多重ビームに対するそれぞれのビーム信号を生成する。
【0108】
この時、多重ビーム形成部340は、それぞれのビーム信号の位相をそれぞれ異なるように設定することができる。ここで、それぞれのビーム信号は、互いに異なる位相を有するので、配列アンテナ100によってビームの形成時に互いに異なる方向性を有するビームが形成される。
【0109】
多重ビーム形成部340は、生成されたそれぞれのビーム信号をRF部200のRFチェーン210を経て配列アンテナ100の各アンテナモジュール110に出力する。ここで、それぞれのビーム信号は、対象ビームに割当てられた直交偏波対の信号を含むことができる。
【0110】
多重ビーム形成部340のビーム信号の生成動作に関する具体的な説明は、図6の実施例を参照する。
【0111】
図6を参照すれば、複数の偏波合成部320および偏波割当部330を介して入力信号S、S、…、Sに対応してそれぞれのビームに対する直交偏波対が割当てられると、多重ビーム形成部340は、それぞれのビームに割当てられた直交偏波対に対する偏波信号に対応するビーム信号を生成することができる。
【0112】
ここで、多重ビーム形成部340は、入力信号S、S、…、Sに重みベクトル(weight vector)を乗算してそれぞれのビーム信号を生成することができる。この時、それぞれのビーム信号は、入力信号に乗算される重みベクトル値に応じてビームの方向および形状が異なる。
【0113】
多重ビーム形成部340によって生成されたそれぞれのビーム信号は、RF部200を経て配列アンテナ100のそれぞれのアンテナモジュール110を介して出力される。
【0114】
この時、RF部200のそれぞれのRFチェーン211~219は、入力されたビーム信号、すなわち、ビームに割当てられた偏波信号の周波数変換を行った後に、対応するアンテナモジュール110を介して送信する。
【0115】
ここで、デジタル部300は、それぞれのRFチェーン211~219にビーム信号を出力する前に、大きさ/位相補正部350と、偏波合成キャリブレーション部390とによってビーム信号の大きさおよび位相を補正する。
【0116】
偏波合成部320で合成された偏波成分は、配列アンテナ100側で実質的に偏波合成が行われる。この時、偏波合成時の大きさ(Amplitude)および位相(Phase)がRFチェーン210の大きさ(Amplitude)および位相(Phase)と同一でなくなれば、偏波の方向がずれるため、大きさおよび位相を同一に補正する過程が必要である。
【0117】
これにより、偏波合成キャリブレーション部390は、ビームに割当てられた直交偏波対の偏波合成時の大きさおよび位相と、RFチェーン210の信号の大きさおよび位相とを比較して補正信号を生成し、生成された補正信号を大きさ/位相補正部350に伝達することができる。
【0118】
したがって、大きさ/位相補正部350は、偏波合成キャリブレーション部390から伝達された補正信号に基づいてビーム信号の偏波の大きさおよび位相を補正する。この時、大きさ/位相補正部350は、偏波合成されたビーム信号の偏波の大きさおよび位相がRFチェーン210の信号の大きさおよび位相と同一に補正する。
【0119】
ただし、偏波合成キャリブレーション部390は、偏波合成が起こる信号に対してのみ補正信号を生成して大きさ/位相補正部350に伝達し、この時、大きさ/位相補正部350は、補正対象のビーム信号に対してのみ偏波の大きさおよび位相を補正するようにする。
【0120】
一例として、アンテナの偏波成分が-45度偏波であると想定した時、大きさ/位相補正部350は、V/H偏波合成が行われる場合にのみ、偏波信号の大きさおよび位相を補正することができる。
【0121】
ここで、大きさ/位相補正部350は、RFチェーン210の数だけ実現されて、ビーム信号の偏波の大きさおよび位相を補正し、補正されたビーム信号を対応するRFチェーン210に出力することができる。
【0122】
これに関する実施例は、図7を参照する。
【0123】
図7に示されるように、複数のRFチェーン211~219は、複数のアンテナモジュール111~119にそれぞれ対応し、大きさ/位相補正部351~359は、複数のRFチェーン211~219の数だけ実現されて、複数のRFチェーン211~219にそれぞれ対応するように連結される。
【0124】
一例として、第1大きさ/位相補正部351は、偏波合成されたビーム信号の大きさおよび位相を第1RFチェーン211の大きさおよび位相と同一に補正し、補正されたビーム信号を第1RFチェーン211を経て第1アンテナモジュール111に出力することができる。
【0125】
したがって、第1アンテナモジュールは、補正された大きさおよび位相に相当するビームを形成する。
【0126】
このように、大きさ/位相補正部350は、偏波合成時に発生する信号の大きさおよび位相変化を補正することでチャネル可塑性を確保し、配列アンテナで正確な方向にビームを形成することができる。これにより、それぞれのアンテナモジュール110は、入力されたそれぞれのビーム信号によって多重ビームを形成する。
【0127】
この時、それぞれのアンテナモジュール110によって形成されるそれぞれのビームは、方向が互いに異なるだけでなく、隣り合うビーム間に異種の偏波特性を有する。
ビーム信号に基づいて配列アンテナ100でビームが形成される動作に関する実施例は、図8を参照する。
【0128】
図8に示されるように、入力信号S、Sに対するビーム信号を受信した第1アンテナモジュールは、士45度直交偏波信号を出力する。この時、出力される士45度直交偏波信号によって、配列アンテナ100には第1方向にビームAが形成される。
【0129】
また、入力信号S、Sに対するビーム信号を受信した第2アンテナモジュールは、隣り合うビームAとは異なるタイプのV/H直交偏波信号を出力する。この時、出力されるV/H直交偏波信号によって、配列アンテナ100には第2方向にビームBが形成される。
【0130】
また、入力信号S、Sに対するビーム信号を受信した第3アンテナモジュールは、隣り合うビームBとは異なるタイプの士45度直交偏波信号を出力する。この時、出力される士45度直交偏波信号によって、配列アンテナ100には第3方向にビームCが形成される。
【0131】
なお、入力信号S、Sに対するビーム信号を受信した第4アンテナモジュールは、隣り合うビームCとは異なるタイプのV/H直交偏波信号を出力する。この時、出力されるV/H直交偏波信号によって、配列アンテナ100には第4方向にビームDが形成される。
図8で説明したように、配列アンテナ100によって形成される多重ビームは、それぞれのビームが互いに異なる方向に向かうように形成されかつ、隣り合うビーム同士は、異種の直交偏波対からなる。
【0132】
ここで、配列アンテナ100によって形成される多重ビームは、図9Aに示されるように、水平方向に互いに隣り合うビーム同士で方向および直交偏波対が異なるだけでなく、図9Bに示されるように、垂直方向の各ビームに対しても隣り合うビーム同士で方向および直交偏波対が異なる。
【0133】
このように、配列アンテナ100を介して形成される多重ビームは、設定された位相に応じて空間上で分離されて複数のビーム形状に放射される。この時、それぞれのビームは、自らが放射された放射素子の偏波方向を有する状態で放射されるので、空間上で互いに隣接する2つのビームは、互いに異なる偏波を有することができる。
本発明の無線送受信装置によって放射されるビーム間にもオーバーラップ(overlap)される領域が存在するが、隣接したビーム間の偏波が互いに異なるので、信号間の相関関係の問題が解消できる。
【0134】
以上、ビーム形成過程を信号を送信する場合の構成および動作を中心に説明した。
【0135】
一方、信号を受信する場合にも、信号を送信する時と動作順序のみ逆順に行われるだけで、細部動作は大して変わらない。ただし、デジタル部300の細部動作をみると、図10のように、信号を受信する過程では、信号を送信する時とは異なり、偏波合成部361~369および偏波割当部371~379の配置位置が変更可能である。
【0136】
信号を受信する場合に、偏波合成部361~369および偏波割当部371~379の細部動作に関する実施例は、図11Aおよび図11Bを参照する。
【0137】
図11Aおよび図11Bを参照すれば、偏波合成部361~369は、受信ビームの偏波成分が士45度と想定した時、受信ビームの偏波成分である士45度を基準として4個の偏波成分、すなわち、+45度、-45度、V、Hを抽出する。
【0138】
ここで、偏波合成部361~369は、受信ビームの偏波成分に基づいて第1偏波成分aおよび第2偏波成分bを抽出する。また、偏波合成部361~369は、数1のMatrixを用いて、偏波成分a、bを[数4]で合成して第3偏波成分を抽出し、偏波成分a、bを[数5]で合成して第4偏波成分を抽出する。
【0139】
【数4】
【0140】
【数5】
【0141】
ここで、第1偏波成分(a)が+45度偏波、第2偏波成分(b)が-45度偏波、第3偏波成分[数4]が垂直偏波、そして第4偏波成分[数5]が水平偏波であると想定して説明するが、これに限定されるものではない。
偏波割当部371~379は、受信ビームの偏波成分を基準として抽出された4個の偏波成分からなる士45度直交偏波対またはV/H直交偏波対を出力信号にそれぞれ割当てる。
【0142】
例えば、偏波割当部371は、図11Aのように、受信ビームに対応してデジタル信号に変換された第1信号に士45度直交偏波対を割当てることができる。
一方、偏波割当部379は、図11Bのように、第2信号にV/H直交偏波対を割当てることができる。
【0143】
図1の実施例では、多重ビーム形成部340が偏波合成部320/割当部330と大きさ/位相補正部350との間に配置されたことを説明したが、実施形態により多重ビーム形成部340の配置位置が異なっていてもよい。
[実施例2]
図12は、多重ビーム形成部の位置が変更された実施例を示す図である。
図12に示されるように、多重ビーム形成部は、インターフェースと偏波合成部/偏波割当部との間に配置されてもよい。
【0144】
図12の実施例において、信号を送信する場合、多重ビーム形成部は、図12のように、入力信号S、S、…、Sに対して互いに異なる位相を有する多重ビーム信号を生成し、生成された多重ビーム信号を偏波合成部に出力することができる。この場合、偏波合成部は、多重ビーム形成部によって生成されたそれぞれのビーム信号に対する直交偏波対の偏波成分を合成し、偏波割当部で異種の直交偏波対のいずれか1つの直交偏波対を選択してそれぞれのビーム信号に割当てることができる。
【0145】
図12の実施例において、信号を受信する場合にも、信号を送信する場合の逆順によって動作し、ただし、図14のように偏波合成部および偏波割当部の位置は変更可能である。ここで、信号を受信する場合の偏波合成部および偏波割当部は、図11Aおよび11Bの動作で説明可能である。したがって、これに関する重複説明は省略する。
【0146】
多重ビーム形成部の位置が図12のように変更されても、偏波合成部および偏波割当部の一部動作を除き、その他の各構成に関する機能および動作は、図1に示された実施例の構成と同一であるので、重複説明は省略する。
[実施例3]
図1および図12の実施例では、多重ビーム形成部がデジタル部300内に配置される実施例を示したが、多重ビーム形成部は、図15のようにアナログ段に配置されてもよい。
【0147】
図15に示されるように、多重ビーム形成部400は、RF部200のRFチェーンおよび配列アンテナ100の間に配置される。
【0148】
本実施例における多重ビーム形成部400は、前述した図1および図12の実施例とは異なり、アナログビームフォーミングにより指向性を有する互いに異なる方向のビーム信号を生成することができる。具体的には、多重ビーム形成部400は、デジタル信号処理が完了したアナログ信号の位相を各配列アンテナ100に対応して調整して互いに異なる方向のビーム信号を生成することができる。このように、各ビーム信号の位相が調整されることにより、基準アンテナ対比の、配列アンテナ100間の位相が調整される。
【0149】
この場合、多重ビーム形成部400は、RFチェーンによって出力された信号の位相を遷移(phase shift)して配列アンテナ100に出力する位相設定モジュール形態で実現できる。前記位相設定モジュールは、アンテナモジュールを介して放射されるビームが空間上で分離されるように、送信信号または受信信号間の位相を互いに異なるように設定することができる。一例として、位相設定モジュールは、位相遷移器(phase shifter)などを用いて実現できる。
【0150】
ここで、アナログビームフォーミングは、ビームの方向が予め定められた重みベクトルを用いるため、重みベクトルを計算するための別のアルゴリズムがなくても良いので、実現が容易という利点がある。
【0151】
それだけでなく、一般的なデジタルビームフォーミングの場合、baseband段でビームフォーミングを行うのに対し、本発明によるアナログビームフォーミングの場合、baseband段ではないアナログ領域で位相遷移によりビームフォーミングを行うため、デジタルビームフォーミングに比べて実現が容易である。
【0152】
図15の実施例は、多重ビーム形成部の配置位置および実現モジュールのみ異なるだけで、その他の構成に関する機能および動作は同一に行われるので、これに関する重複説明は省略する。
【0153】
以上のように、本発明による無線送受信装置10は、セルまたはセクタ内に形成される多重ビームのうち隣接するビーム間には同種の偏波を用いるのではない異種偏波を用いることにより、隣接するビーム間に相関度を減少させてアンテナ効率を極大化させることができる。
【0154】
また、本発明の実施例では、士45度直交偏波、V/H直交偏波のような異種偏波対をビームに割当てるものと説明したが、左円偏波/右円偏波などのように互いに直交するいかなる種類の偏波も異種偏波として使用可能である。
【0155】
図16Aおよび図16Bは、本発明の実施例による無線送受信装置の動作効果を説明するのに参照される実施例を示す図である。
【0156】
本発明の一実施例による無線送受信装置は、セルまたはセクタ内に形成される多重ビームそれぞれに対して直交偏波対を付与しかつ、隣接するビーム間には同種の偏波対ではない異種の直交偏波対を付与する。これによって、本発明による無線送受信装置は、配列アンテナによって形成される多重ビームに対して隣接したビーム間に相関度を減少させることができる。
【0157】
また、隣接したビーム間に異種の直交偏波対を付与するため、隣接したビームを重畳させてもビーム干渉を最小化できるだけでなく、ビーム重畳によってアンテナ効率およびセル容量を増加させる効果をもたらす。
【0158】
これは、図16Aおよび図16Bのグラフによっても確認することができる。
【0159】
まず、図16Aは、4X4構造の配列アンテナを有するMIMOシステムにおいて、ユーザ端末(UE)の位置によるエルゴード容量(ergodic capacity)の変化を示すグラフである。ここで、エルゴード容量は、アンテナシステムのセル(またはセクタ)容量を示し、セル(またはセクタ)容量が増加するほど、アンテナの性能が増加することを意味する。図16Aを参照すれば、1610は、従来のセクタアンテナを用いたシステムのエルゴード容量の変化を示すグラフであり、1620は、セクタアンテナを用いてビームを2つの方向に分けたシステムのエルゴード容量の変化を示すグラフである。また、1630は、本発明による無線送受信装置のアンテナを用いたシステムのエルゴード容量の変化を示すグラフである。
【0160】
一例として、図16Aのエルゴード容量の変化に対するシミュレーション結果は、キャリア周波数(Carrier Frequency)を3.5GHzとして、送信(Tx)アンテナ4個と受信(Rx)アンテナ4個とを有する配列アンテナを含む無線ユニット(Radio Unit、RU)を用いて算出したもので、前記RUのチルト角度(Tilt angle)は約10度の範囲で調整され、ユーザ端末(UE)の位置は、RUから約160m程度離れた距離で-60度~60度の間に10度間隔で配置された条件で測定されたデータに基づいて算出されたものである。
【0161】
図16Aのように、従来のセクタアンテナを用いたシステムにおけるエルゴード容量1610は、約8bps/Hz~11bps/Hzの範囲内で変化し、1つのセクタを2つのビーム(同種偏波)に分けたシステム1620のエルゴード容量は、約8bps/Hz~12bps/Hzの範囲内で変化する。これに対し、本発明による無線送受信装置のエルゴード容量1630は、約9bps/Hz~16bps/Hzの範囲内で変化することを確認することができる。
【0162】
このように、本発明による無線送受信装置のエルゴード容量の変化は、従来のセクタアンテナあるいはセクタアンテナを用いてビームを2つの方向に分けたシステムに比べてエルゴード容量が増加したことを確認することができる。
【0163】
図16Bは、図16Aのグラフにおけるエルゴード容量に対する平均容量および最大容量を比較して示す図である。
【0164】
図16Bを参照すれば、セクタアンテナを用いたシステムにおいて、エルゴード容量に対する平均容量は約10bps/Hzであり、最大容量は11bps/Hz程度である。また、1つのセクタを2つのビーム(同種偏波)に分けたシステムにおけるエルゴード容量に対する平均容量も11bps/Hz程度であり、最大容量は12bps/Hz程度である。この時、このシステムはビームを2つの方向に分ける技術を適用するとはいえ、各ビームに対して同一偏波を有するように形成されるため、本発明のように互いに異なる偏波を有するビームの対を形成する技術に比べてセクタ容量が少なく形成される。
【0165】
これに対し、本発明による無線送受信装置のエルゴード容量に対する平均容量は約13bps/Hzであり、最大容量は約16bps/Hzであって、本発明による無線送受信装置の平均容量および最大容量は、セクタアンテナを適用したシステムの平均容量および最大容量に比べて約30%程度増加したことを確認することができる。
【0166】
図16Aおよび図16Bに示すように、本発明による無線送受信装置は、従来に比べてエルゴード容量が増加しただけアンテナ性能およびセル(またはセクタ)容量を増加させる効果をもたらす。
【0167】
その他にも、一般的に、ビームフォーミングは、アンテナシステムのデジタル装置(DU)で関連動作をすべて行ったため、フロントホールの容量が増加した。
【0168】
つまり、従来は、デジタルビームフォーミングをアンテナシステムのデジタル装置(DU)で処理し、この時、基底帯域でデジタル信号処理によりすべてのアンテナへいく各信号に対するビームフォーミング、偏波合成および割当などを個別的に制御した。このように、各個別アンテナへいく各信号を同時に処理することにより、デジタル装置(DU)の負荷およびフロントホールの容量が増加する問題がある。
【0169】
特に、デジタルビームフォーミングの場合、入力信号に重みベクトルを乗算してビームフォーミングを行うが、この時、重みベクトルを計算するための複雑なアルゴリズムを実行しなければならないため、デジタルビームフォーミングによってデジタル装置(DU)の負荷が増加する。
【0170】
このように、デジタル装置(DU)の負荷が増加したり、フロントホールの容量が増加するのは、第5世代通信システムの観点で改善が必要である。
【0171】
このために、本発明による無線送受信装置10は、アンテナシステムのデジタル装置(DU)で行っていたビームフォーミングだけでなく、偏波合成および割当などの動作を無線ユニット(Radio Unit、RU)で行うようにする。本発明によれば、デジタル装置(DU)での処理動作を無線ユニット(Radio Unit、RU)に分散させることでデジタル装置(DU)の負荷を減少させ、フロントホールの容量を減少させる効果をもたらす。
【0172】
以下、上記のように構成される本発明による無線送受信装置の動作フローをより詳しく説明する。
【0173】
図17は、本発明の第1実施例による無線送受信装置のビーム形成方法に関する動作フローを示す図である。
【0174】
図17を参照すれば、第1実施例による無線送受信装置10は、図1のようにデジタル部300内の偏波割当部330と大きさ/位相補正部350との間に多重ビーム形成部が配置される構造である。
【0175】
これにより、第1実施例による無線送受信装置10の偏波合成部320は、入力信号に対するストリームに直交偏波対を合成する(S110)。この時、無線送受信装置10は、直交する2つの偏波信号を1つの直交偏波対に合成することができる。
【0176】
一例として、無線送受信装置10は、入力信号を基準として予め定義されたMatrixを用いて、4個の偏波成分、すなわち、±45度偏波成分および垂直/水平(vertical/horizontal)偏波成分を抽出し、抽出された偏波成分のうち直交する±45度偏波成分を1つの直交偏波対に合成し、V/H偏波成分を他の1つの直交偏波対に合成する。
【0177】
以後、無線送受信装置10の偏波割当部330は、「S110」過程で合成された2つの直交偏波対を多重ビームにそれぞれ割当てる(S120)。この時、偏波割当部330は、ビームの個数および基準ビームの偏波成分に応じて基準ビームにいずれか1つの直交偏波対を割当て、基準ビームに隣り合うビームに他の1つの直交偏波対を割当てる。
【0178】
無線送受信装置10の偏波合成部320は、「S120」過程でそれぞれのビームに割当てられた直交偏波対の信号に基づいて多重ビーム信号を生成する(S130)。この時、「S130」過程で生成された多重ビームは、それぞれのビームが互いに異なる位相を有するように生成される。
【0179】
偏波合成部320によって互いに異なる位相の多重ビーム信号が生成されると、無線送受信装置10のRF部200は、複数のRFチェーン210を介してそれぞれのビーム信号を周波数変換し(S140)、配列アンテナ100の各アンテナモジュール110を介して互いに異なる方向性を有するビームを形成する(S150)。
【0180】
無線送受信装置10は、上記の過程により形成されたビームにより信号を送受信する。この時、それぞれのビームは、互いに異なる方向性を有するだけでなく、互いに隣り合うビーム同士で異種の偏波成分を有するため、隣り合うビーム間の相関度が低下して配列アンテナ100の信号送受信効率が増大できる。
【0181】
図17には示さないが、「S120」過程で割当てられた直交偏波対の偏波成分に対して偏波合成が行われる場合、「S140」過程の前に、「S130」過程で生成された多重ビーム信号の大きさおよび位相をRFチェーン210の信号の大きさおよび位相に応じて補正する動作を追加的に行うことができる。この場合、偏波合成時に偏波の方向がずれるのを防止することでビームを正確な方向に形成することができる。
【0182】
図18は、本発明の第2実施例による無線送受信装置のビーム形成方法を示す図である。
【0183】
図18を参照すれば、第2実施例による無線送受信装置10は、図12のように、デジタル部300内のインターフェースと偏波合成部320/偏波割当部330との間に多重ビーム形成部が配置される構造である。
【0184】
これにより、第2実施例による無線送受信装置10の多重ビーム形成部は、入力信号に対応する多重ビーム信号を生成する(S210)。この時、多重ビーム形成部は、それぞれのビーム信号の位相を異なるように設定することができる。
【0185】
以後、無線送受信装置10の偏波合成部320は、「S210」過程で生成された多重ビーム信号に直交偏波対を合成する(S220)。この時、無線送受信装置10は、直交する2つの偏波信号を1つの直交偏波対に合成することができる。
【0186】
一例として、無線送受信装置10は、入力信号を基準として予め定義されたMatrixを用いて、4個の偏波成分、すなわち、±45度偏波成分および垂直/水平(vertical/horizontal)偏波成分を抽出し、抽出された偏波成分のうち直交する±45度偏波成分を1つの直交偏波対に合成し、V/H偏波成分を他の1つの直交偏波対に合成する。
【0187】
以後、無線送受信装置10の偏波割当部330は、「S220」過程で合成された2つの直交偏波対を多重ビーム信号にそれぞれ割当てる(S230)。この時、偏波割当部330は、ビームの個数および基準ビームの偏波成分に応じて基準ビーム信号にいずれか1つの直交偏波対を割当て、基準ビーム信号に隣り合うビーム信号に他の1つの直交偏波対を割当てる。
【0188】
以後、無線送受信装置10のRF部200は、複数のRFチェーン210を介してそれぞれのビーム信号を周波数変換し(S240)、配列アンテナ100の各アンテナモジュール110を介して互いに異なる方向性を有するビームを形成する(S250)。
無線送受信装置10は、上記の過程により形成されたビームにより信号を送受信する。この時、それぞれのビームは、互いに異なる方向性を有するだけでなく、互いに隣り合うビーム同士で異種の偏波成分を有するため、隣り合うビーム間の相関度が低下して配列アンテナ100の信号送受信効率が増大できる。
【0189】
図18には示さないが、「S230」過程で割当てられた直交偏波対の偏波成分に対して偏波合成が行われる場合、「S240」過程の前に、多重ビーム信号の大きさおよび位相をRFチェーン210の信号の大きさおよび位相に応じて補正する動作を追加的に行うことができる。この場合、偏波合成時に偏波の方向がずれるのを防止することでビームを正確な方向に形成することができる。
【0190】
図19は、本発明の第3実施例による無線送受信装置のビーム形成方法を示す図である。
【0191】
図19を参照すれば、第3実施例による無線送受信装置10は、図15のように、RF部200のアナログ段に多重ビーム形成部が配置される構造である。
【0192】
これにより、第3実施例による無線送受信装置10の偏波合成部320は、入力信号に対するストリームに直交偏波対を合成する(S310)。この時、無線送受信装置10は、直交する2つの偏波信号を1つの直交偏波対に合成することができる。
【0193】
一例として、無線送受信装置10は、入力信号を基準として予め定義されたMatrixを用いて、4個の偏波成分、すなわち、±45度偏波成分および垂直/水平(vertical/horizontal)偏波成分を抽出し、抽出された偏波成分のうち直交する±45度偏波成分を1つの直交偏波対に合成し、V/H偏波成分を他の1つの直交偏波対に合成する。
【0194】
以後、無線送受信装置10の偏波割当部330は、「S310」過程で合成された2つの直交偏波対を多重ビームにそれぞれ割当てる(S320)。この時、偏波割当部330は、ビームの個数および基準ビームの偏波成分に応じて基準ビームにいずれか1つの直交偏波対を割当て、基準ビームに隣り合うビームに他の1つの直交偏波対を割当てる。
【0195】
無線送受信装置10のRF部200は、複数のRFチェーン210を介して直交偏波対が割当てられたそれぞれのビームに対する偏波信号を周波数変換する(S330)。
【0196】
以後、無線送受信装置10の多重ビーム形成部は、「S330」過程で周波数変換された直交偏波対の信号の位相をそれぞれ異なるように設定することにより、アナログ多重ビーム信号を生成し(S340)、配列アンテナ100の各アンテナモジュール110を介して互いに異なる方向性を有するビームを形成する(S350)。
【0197】
無線送受信装置10は、上記の過程により形成されたビームにより信号を送受信する。この時、それぞれのビームは、互いに異なる方向性を有するだけでなく、互いに隣り合うビーム同士で異種の偏波成分を有するため、隣り合うビーム間の相関度が低下して配列アンテナ100の信号送受信効率が増大できる。
【0198】
図19には示さないが、「S320」過程で割当てられた直交偏波対の偏波成分に対して偏波合成が行われる場合、「S330」過程の前に、偏波信号の大きさおよび位相をRFチェーン210の信号の大きさおよび位相に応じて補正する動作を追加的に行うことができる。この場合、偏波合成時に偏波の方向がずれるのを防止することでビームを正確な方向に形成することができる。
【0199】
以上の説明は本発明の技術思想を例示的に説明したに過ぎないものであって、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば本発明の本質的な特性を逸脱しない範囲で多様な修正および変形が可能であろう。
【0200】
したがって、本発明に開示された実施例は本発明の技術思想を限定するためではなく説明するためのものであり、このような実施例により本発明の技術思想の範囲が限定されるものではない。本発明の保護範囲は以下の特許請求の範囲により解釈されなければならず、それと同等範囲内にあるすべての技術思想は本発明の権利範囲に含まれると解釈されなければならない。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図17
図18
図19