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特許7590569好気的解糖検出製品の製造における炭素-窒素蛍光量子ドットの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】好気的解糖検出製品の製造における炭素-窒素蛍光量子ドットの使用
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/64 20060101AFI20241119BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20241119BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
G01N21/64 F
C12Q1/02
C12M1/34 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023527458
(86)(22)【出願日】2021-12-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-22
(86)【国際出願番号】 CN2021141880
(87)【国際公開番号】W WO2022096029
(87)【国際公開日】2022-05-12
【審査請求日】2023-06-12
(31)【優先権主張番号】202111275141.0
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】514082712
【氏名又は名称】上海交通大学医学院付属第九人民医院
(73)【特許権者】
【識別番号】515291465
【氏名又は名称】中国科学院上海微系統与信息技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 吉鵬
(72)【発明者】
【氏名】楊 思維
(72)【発明者】
【氏名】丁 古巧
(72)【発明者】
【氏名】周 慧芳
(72)【発明者】
【氏名】範 先群
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0284318(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105802621(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107502338(CN,A)
【文献】国際公開第2021/209818(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/156878(WO,A2)
【文献】守谷崇,NAD+選択的プローブを用いてチトクロムP450の基質を網羅的に検出する,万有生命科学振興国際交流財団 第24回仙台シンポジウム Poster発表要旨,2013年,Vol.24,p.57
【文献】Dual emission fluorescent silver nanoclusters for sensitive detection of the biological coenzyme NAD+/NADH,Yufeng Yuan,2016年,Vol.494,pp.46-48,https://doi.org/10.1016/j.ab.2015.09.021
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/62-21/74
G01N 33/48-33/98
JSTPlus(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
JMEDPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
好気的解糖検出製品の製造における炭素-窒素蛍光量子ドットの使用であって、
前記炭素-窒素蛍光量子ドットは、C N量子ドットであり、前記炭素-窒素蛍光量子ドット中のN含有量は0.5~5at%であり、
前記好気的解糖検出製品は、蛍光共鳴エネルギー移動による測定でNAD を検出し、よって好気的解糖を検出することができ、
前記蛍光共鳴エネルギー移動では、NAD がドナーであり、C N量子ドットがアクセプターである、使用。
【請求項2】
前記炭素-窒素蛍光量子ドットの直径は1~100nmであることを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記使用は、生細胞内好気的解糖検出製品の製造における使用であることを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記使用は、好気的解糖の定性又は半定量検出製品の製造における使用であることを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項5】
前記好気的解糖検出製品は試薬であり、試薬の終体積を基準として、前記試薬中には、終濃度が1μg/mL~1mg/mLの炭素-窒素蛍光量子ドットが含まれることを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項6】
前記試薬には緩衝液が更に含まれ、前記緩衝液は、生理食塩水、水、DMSO、DMF又はPBSのうちの1つ又は複数から選択されることを特徴とする請求項に記載の使用。
【請求項7】
NAD検出製品の製造における炭素-窒素蛍光量子ドットの使用であって、
前記炭素-窒素蛍光量子ドットは、C N量子ドットであり、前記炭素-窒素蛍光量子ドット中のN含有量は0.5~5at%であり、
前記NAD 検出製品は、蛍光共鳴エネルギー移動による測定でNAD を検出することができ、
前記蛍光共鳴エネルギー移動では、NAD がドナーであり、C N量子ドットがアクセプターである、使用
【請求項8】
好気的解糖を検出する方法であって、
炭素-窒素蛍光量子ドットを含む好気的解糖検出製品と被検サンプルを共培養し、培養終了後に、蛍光生成の有無又はその蛍光強度を検出する、とのステップを含み、
前記炭素-窒素蛍光量子ドットは、C N量子ドットであり、前記炭素-窒素蛍光量子ドット中のN含有量は0.5~5at%であり、
前記好気的解糖検出製品は、蛍光共鳴エネルギー移動による測定でNAD を検出し、よって好気的解糖を検出することができ、
前記蛍光共鳴エネルギー移動では、NAD がドナーであり、C N量子ドットがアクセプターである、ことを特徴とする方法。
【請求項9】
更に、培養終了後に遠心分離にかけ、上清液を廃棄してから、緩衝液を用いて沈殿物を再懸濁し、再懸濁後に、蛍光生成の有無又は蛍光強度を再び検出する、とのステップを含むことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項10】
更に、
1)前記被検サンプルは、好気的解糖代謝特徴を有する生細胞を含むサンプルであり
2)前記好気的解糖検出製品の使用体積は1μL~1mLであり、
3)培養時間は5min~2hであり、
4)培養温度は4~50℃であり、
5)蛍光強度を検出する際、蛍光検出の励起波長は200~800nmである、
との特徴のうちの1つ又は複数を含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記被検サンプルは、細胞、腫瘍組織又は非腫瘍組織、胸腹水、血液又は尿から選択されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記被検サンプルは前処理を施したサンプルであることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、解糖検出の分野に関し、特に、好気的解糖検出製品の製造における炭素-窒素蛍光量子ドットの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
好気的解糖プロセスは、正常細胞と腫瘍細胞との重要な代謝の違いである。そのため、細胞レベルで好気的解糖の蛍光スクリーニング及びイメージングを実現することが、腫瘍細胞の識別や腫瘍リスクの評価を実現するための潜在的に重要な手段となっている。好気的解糖の検出実現は、主としてNAD又はNADHの検出に依存している。技術の進歩に伴い、解糖プロセスにおける特定の標的代謝物の検出という方向性については、従来の技術手段として、酵素サイクリング測定、クロマトグラフィー、質量分析法及び核磁気共鳴分光法が存在する。しかし、これらの検出には、反映されるのが1つの細胞群の平均的な代謝状態であって、単一細胞の代謝状態は反映できないとの限界がある。また、細胞破砕液が必要であり、生細胞の検出はできないため、in vivo検出はなおさら不可能である。現在のところ、比較的先進的な検出技術は、「遺伝的コード化代謝物センサー(Genetically encoded metabolite sensors)」とされている。当該技術の原理は、蛍光タンパク質をNADH、ATP、グルコース等の代謝物と結合させて構造を変え、蛍光強度を変化させることで標識するというものである(参考文献:非特許文献1)。遺伝的コード化代謝物センサーは、細胞内のNAD及びNADHの動態変化を高感度で反映可能であるが、やはり同様に、例えば、蛍光強度が弱い、特異性が低い(全細胞のNADを検出する)、pHの影響を極めて受けやすい(腫瘍の酸性微小環境)といった限界がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】SoNar,a Highly Responsive NAD+/NADH Sensor,Allows High-Throughput Metabolic Screening of Anti-tumor Agents
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来技術の欠点に鑑みて、本発明の目的は、従来技術の課題を解決するために、好気的解糖検出製品の製造における炭素-窒素蛍光量子ドットの使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的及び関連するその他の目的を実現するために、本発明は、好気的解糖検出製品の製造における炭素-窒素蛍光量子ドットの使用を提供する。
【0006】
本発明は、更に、好気的解糖を検出する方法を提供する。上記の方法は、炭素-窒素蛍光量子ドットを含む好気的解糖検出製品と被検サンプルを共培養し、培養終了後に、被検サンプルにおける蛍光生成の有無又はその蛍光強度を検出する、とのステップを含む。
【発明の効果】
【0007】
上述したように、本発明の好気的解糖検出製品の製造における炭素-窒素蛍光量子ドットの使用は、以下の有益な効果を有する。即ち、本発明では、炭素-窒素蛍光量子ドットを用いることで生細胞中のNADの蛍光標識を実現可能とし、これにより、好気的解糖さ
れた細胞の蛍光標識及びイメージングを実現する。よって、低コスト、高効率、迅速、高精度等の優位性を有する。且つ、当該技術は、剥離腫瘍細胞の蛍光識別、腫瘍の超早期警告、腫瘍転移巣の検出、腫瘍の増殖及び悪性度評価等の一連の技術の開発実現に資するものである。
【0008】
次に、図面を組み合わせて、本発明の目的、特徴及び効果が十分に理解されるよう、本発明の構想、具体的構造及び発生する技術的効果について更に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明で提供する好気的解糖検出製品が検出した一般的な細胞代謝産物を示す。
図2図2は、本発明で提供する好気的解糖検出製品の主要構成要素である炭素-窒素量子ドットと代謝産物NADの蛍光励起波長及び蛍光発光波長を示す。
図3図3は、本発明で提供する好気的解糖検出製品が代謝産物NADを検出した際の蛍光定量曲線を示す。
図4図4は、本発明で提供する好気的解糖検出製品がA375細胞及び線維芽細胞の好気的解糖を検出した場合を示す。
図5図5は、本発明で提供する好気的解糖検出製品がPFK15で処理されたA375細胞と未処理のA375細胞を検出した際の蛍光比較図を示す。
図6図6は、本発明で提供する好気的解糖検出製品が動物体内の腫瘍を検出した際の蛍光図を示す。
図7図7は、本発明で提供する好気的解糖検出製品が尿サンプル中の腫瘍細胞を検出した際の蛍光比較図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、好気的解糖検出製品の製造における炭素-窒素蛍光量子ドットの使用を提供する。
【0011】
前記炭素-窒素蛍光量子ドット(又は、窒素ドープグラフェン量子ドット、N-CDsと称する)は、C量子ドット、CN量子ドット又はCN量子ドットのうちの1つ又は複数から選択される。
【0012】
前記N-CDsは均一なサイズを有している。また、結晶の窒素ドープ構造は、N-CDsの蛍光量子収率を著しく向上させて、540nmにおいて強く安定的なフォトルミネッセンス特性を持たせる。生体イメージングについては、従来の蛍光造影剤と比較して、N-CDsは、蛍光シグナルが強く、検出感度が高く、安定性に優れ、生体適合性が良好であり、長時間にわたる動態観測及び生体イメージングが可能である等の明らかな優位性を示す。
【0013】
好ましくは、前記炭素-窒素蛍光量子ドットはCN量子ドットから選択される。CN量子ドットは、単層2次元半導体量子材料である。これは、炭素及び窒素原子で構成されるグラフェンに類似した孔のない蜂の巣状の秩序構造をなすものであって、新型の間接バンドギャップ半導体である。
【0014】
一実施形態において、CN量子ドットの固有バンドギャップは0.39eVである。バンドギャップはナノサイズ効果により調節可能である。単層CN薄膜をベースとするFETデバイスのオンオフ比は、5.5×1010にまで達することができ、キャリア移動度は220cm-1-1に達し得る。CN量子ドットのサイズを調節することで、約400~900nmのフォトルミネッセンスを実現可能である。CN量子ドットは、水素化によって電子注入を実現可能であるとともに、96ケルビン以下で強磁性長距離
秩序が現れる。バンドギャップの存在によって、グラフェンにおける固有バンドギャップがないとの欠点が補われる。また、水素化キャリアの注入は、当該材料の電気学的特性の調節に新たな手段を提供するものである。且つ、強磁性は、当該材料体系が豊富な物理的意味を持つことを予示している。
【0015】
前記炭素-窒素蛍光量子ドット中のN含有量は0.5~5at%である。前記炭素-窒素蛍光量子ドット中のN含有量は、0.5~1.5at%、1.5~2.5at%、2.5~3.5at%、3.5~4.5at%、4.5~5at%のいずれかの範囲とすることができる。
【0016】
前記炭素-窒素蛍光量子ドットの直径は1~100nmである。前記炭素-窒素蛍光量子ドットの直径は、1~10nm、10~20nm、20~30nm、30~40nm、40~50nm、50~60nm、60~70nm、70~80nm、80~90nm又は90~100nmのいずれかの範囲から選択可能である。
【0017】
一実施形態において、炭素-窒素蛍光量子ドットの量子収率は0.1~0.9である。
【0018】
一実施形態において、前記炭素-窒素蛍光量子ドットの励起波長は240~650nmであり、及び/又は、発光波長の範囲は350~950nmである。
【0019】
一実施形態において、炭素-窒素蛍光量子ドットの表面を修飾する必要はない。
【0020】
一実施形態において、前記使用は、生細胞内好気的解糖検出製品の製造における使用である。
【0021】
一実施形態において、前記使用は、単一細胞内好気的解糖検出製品の製造における使用である。
【0022】
更に、前記生細胞又は単一細胞は、好気的解糖代謝モデルの生細胞又は単一細胞である。
【0023】
更に加えて、前記好気的解糖代謝モデルの生細胞又は単一細胞は、腫瘍生細胞又は腫瘍単一細胞である。
【0024】
前記炭素-窒素蛍光量子ドットは、細胞の好気的解糖代謝中間体である酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)との蛍光共鳴エネルギー移動によって蛍光強化を実現可能である。
【0025】
前記好気的解糖検出製品は、NADを検出することで好気的解糖を検出する。即ち、前記使用は、生細胞内のNADを検出する製品の製造における使用である。
【0026】
更に加えて、前記生細胞又は単一細胞は、NADを産生可能な腫瘍生細胞又は腫瘍単一細胞である。
【0027】
前記好気的解糖検出製品は試薬である。試薬の終体積を基準として、前記試薬中には、終濃度が1μg/mL~1mg/mLの炭素-窒素蛍光量子ドットが含まれる。
【0028】
前記試薬には緩衝液が更に含まれる。即ち、前記緩衝液は炭素-窒素蛍光量子ドットの溶媒となる。前記緩衝液は、生理食塩水、水、DMSO、DMF又はPBSのうちの1つ又は複数から選択される。PBSのpHは7.2~7.4である。
【0029】
本発明は、更に、NAD検出製品の製造における炭素-窒素蛍光量子ドットの使用を提供する。
【0030】
本発明は、更に、好気的解糖検出製品を提供する。前記好気的解糖検出製品は、前記炭素-窒素蛍光量子ドットを含む。
【0031】
前記炭素-窒素蛍光量子ドットは、Nドープグラフェン量子ドット、C量子ドット、CN量子ドット又はCN量子ドットのうちの1つ又は複数から選択される。
【0032】
前記好気的解糖検出製品には緩衝液が更に含まれる。前記緩衝液は炭素-窒素蛍光量子ドットの溶媒となり得る。
【0033】
前記緩衝液は、生理食塩水、水、DMSO、DMF又はPBSのうちの1つ又は複数から選択される。
【0034】
本発明は、更に、腫瘍を検出又は治療する製品の製造における炭素-窒素蛍光量子ドットの使用を提供する。
【0035】
前記腫瘍検出製品は、腫瘍の早期診断に用いられる。具体的に、前記腫瘍検出製品は、腫瘍細胞のスクリーニング、腫瘍微小病変の検出、臨床サンプル腫瘍細胞のスクリーニング検査又は腫瘍可視化研究に用いられる。
【0036】
前記腫瘍治療製品は、腫瘍の早期介入に用いられる。
【0037】
前記腫瘍細胞検出製品には、少なくとも炭素-窒素蛍光量子ドットが含まれる。
【0038】
本発明は、好気的解糖を検出する方法を提供する。上記の方法は、炭素-窒素蛍光量子ドットを含む好気的解糖検出製品と被検サンプルを共培養し、培養終了後に、被検サンプルにおける蛍光生成の有無又はその蛍光強度を検出する、とのステップを含む。
【0039】
一実施形態において、上記の方法は、更に、培養終了後に遠心分離にかけ、上清液を廃棄してから、緩衝液を用いて沈殿物を再懸濁し、再懸濁後に、蛍光生成の有無又は蛍光強度を再び検出する、とのステップを含む。
【0040】
更に、以下の特徴のうちの1つ又は複数を含む。
【0041】
1)前記被検サンプルは、好気的解糖代謝特徴を有する生細胞を含むサンプルである。好ましくは、前記被検サンプルは、細胞、腫瘍組織又は非腫瘍組織、胸腹水、血液又は尿から選択される。より好ましくは、前記被検サンプルは前処理を施したサンプルである。
【0042】
2)前記好気的解糖検出製品の使用体積は1μL~1mLである。
【0043】
3)培養時間は5min~2hである。
【0044】
4)培養温度は4~50℃であり、好ましくは、培養温度は20~40℃である。
【0045】
5)蛍光強度を検出する際、蛍光検出の励起波長は200~800nmである。
【0046】
6)遠心分離の回転速度は500~1500回転/分であり、前記遠心分離時間は1~30分である。
【0047】
一実施形態において、被検サンプルの前処理ステップは以下のステップ1、ステップ2を含んでもよい。
【0048】
ステップ1において、収集した被検組織を体積1mmに切断して培養する。或いは、収集した細胞、胸腹水、血液又は尿を遠心分離にかけて上清液を廃棄する。
【0049】
ステップ2において、緩衝液を加えて、前記ステップ1で取得した組織断片又は沈殿物を再懸濁する。これにより得られる再懸濁液を好気的解糖検出製品との混合、培養に使用可能である。
【0050】
一実施形態において、被検サンプルの前処理時にステップ2で使用する緩衝液は、好気的解糖検出製品の緩衝液と同じである。
【0051】
一実施形態において、蛍光生成の有無の検出には蛍光顕微鏡を使用可能である。好気的解糖された細胞は蛍光を発し得る。
【0052】
蛍光強度の検出には蛍光分光光度計を使用可能である。取得した蛍光強度に基づいて、サンプルにつき半定量分析を実施可能である。
【0053】
一実施形態において、蛍光顕微鏡の励起波長は200~800nmである。
【0054】
一般的に、前記好気的解糖を検出する方法には、診断目的と非診断目的が含まれる。好ましくは、前記好気的解糖を検出する方法は非診断目的である。前記非診断目的とは、科学研究において好気的解糖を検出することで、好気的解糖のメカニズム、疾病の発生・進行メカニズム、細胞の代謝メカニズム等の研究を実現することを言う。
【0055】
以下に、特定の具体的実施例を通じて、本発明の実施形態につき説明する。なお、当業者であれば、本明細書で開示する内容から本発明のその他の利点及び効果を容易に理解可能である。更に、本発明は、その他の異なる具体的実施形態によっても実施又は応用可能である。また、本明細書の各詳細は、異なる視点及び応用に基づき、本発明の精神を逸脱しないことを前提に各種の補足又は変更が可能である。
【0056】
本発明の具体的実施形態について更に記載する前に、理解すべき点として、本発明の保護の範囲は後述する特定の具体的実施方案に限らない。更に、理解すべき点として、本発明の実施例で使用する用語は特定の具体的実施方案を記載するためのものであって、本発明の保護の範囲を制限するものではない。また、本発明の明細書及び特許請求の範囲では、別途明示しない限り、「1つ」、「一の」及び「この」といった単数形には複数形が含まれる。
【0057】
実施例で数値範囲を示している場合には、本発明において別途説明している場合を除き、各数値範囲の2つの端点及び2つの端点間の任意の数値をいずれも選択可能であると解釈すべきである。また、別途定義している場合を除き、本発明で使用するあらゆる技術及び科学用語は、当業者により一般的に理解される意味と同義である。更に、実施例で使用している具体的方法、デバイス、材料のほかに、当業者による従来技術の理解及び本発明の記載に基づいて、本発明の実施例で述べる方法、デバイス、材料と類似又は同等の従来技術における任意の方法、デバイス及び材料を用いて本発明を実現してもよい。
【0058】
以下の実施例で使用したCN量子ドットの製造方法は次の通りである。即ち、80mLの2,3-ジアミノフェナジン溶液(2.0mM)を100mLのオートクレーブに投
入し、加熱して380℃の高温に維持したまま16h加熱することで、CN量子ドット産生物を取得可能であった。その後、産生物を0.02μmのナノ孔径の酸化アルミニウム膜で濾過し、取得した濾液を12時間静置することで、生体実験にそのまま適用されるCN量子ドットを取得できた。上記で使用した2,3-ジアミノフェナジン(DAP、98%)は、米国J&K Scientific ltd.から購入した。
【実施例1】
【0059】
複数種類の細胞代謝中間体の溶液(溶媒はいずれも0.9%の生理食塩水)をそれぞれ被検サンプルとして選択した。複数種類の細胞代謝中間体は、それぞれ、グルコース、PKM1、PKM2、Pyr、LDH、ラクテート、NADH、NAD、ADP、O 、・OH等であった(濃度はいずれも0.1mM)。また、CN量子ドット(直径1nm、濃度1μg/mL、溶媒は生理食塩水)を好気的解糖検出製品として選択した。被検サンプル中にCN量子ドットを1μL加え、サンプルを2h培養した。培養温度は25℃であった。また、蛍光分光光度計の励起波長を400nm、発光波長を530nmとして、蛍光強度を読み取った。その結果、図1に示すように、NADサンプルの蛍光強度は約7倍強化されたが、残りのサンプルの蛍光強度に明らかな変化は見られなかった。
【0060】
その後、NAD溶液(濃度0.1mM)とCN量子ドット溶液(1μg/mL)を被検サンプルとして選択し、2種類の溶液の蛍光発光の励起スペクトル及び蛍光発光スペクトルをそれぞれ検出した。すると、図2に示すように、NAD溶液の励起波長及び発光波長はそれぞれ423nm及び476nmであり、CN量子ドット溶液の励起波長及び発光波長はそれぞれ495nm及び530nmであった。つまり、蛍光共鳴エネルギー移動の過程では、NADがドナーであり、CN量子ドットがアクセプターであることが分かった。
【0061】
以上の結果より、CN量子ドットは、細胞の好気的解糖代謝中間体であるNADとの蛍光共鳴エネルギー移動により蛍光強化を実現可能なことが明らかとなった。
【実施例2】
【0062】
NAD溶液を被検サンプルとして選択した。濃度は、それぞれ、0mM(生理食塩水)、0.05mM、0.1mM、0.15mM、0.2mM、0.25mMであった。また、CN量子ドット(直径1nm、濃度1μg/mL、溶媒は生理食塩水)を好気的解糖検出製品として選択した。被検サンプル中にCN量子ドットを1μL加え、サンプルを2h培養した。培養温度は25℃であった。そして、蛍光分光光度計により蛍光強度を読み取った。その結果、図3に示すように、一定の範囲において、CN量子ドットの蛍光強度はNAD濃度の上昇に伴い強化されることが分かった。
【実施例3】
【0063】
A375細胞(好気的解糖代謝モデル)と線維芽細胞(酸化的リン酸化代謝モデル)を被検サンプルとして選択し、これらの細胞を共培養した。細胞濃度はいずれも10個であった。また、CN量子ドット(直径1nm、濃度1μg/mL、溶媒は生理食塩水)を好気的解糖検出製品として選択した。被検サンプル中にCN量子ドットを1μL加え、サンプルを2h培養した。培養温度は25℃であった。そして、蛍光顕微鏡(励起波長400nm)でサンプルの蛍光状況を観察した。その結果、図4に示すように、視野内のA375細胞の蛍光は明らかであったが、線維芽細胞には明らかな蛍光が見られなかった。点線円でマークしたものがA375細胞であり、実線円でマークしたものが線維芽細胞である。
【実施例4】
【0064】
A375細胞を被検サンプルとして選択した。細胞濃度はいずれも10個であった。
被検細胞サンプルに1-(4-pyridinyl)-3-(2-quinolinyl)-2-propen-1-one(PFK15、20nM)を加え、12h培養した。また、CN量子ドット(直径1nm、濃度1μg/mL、溶媒は生理食塩水)を好気的解糖検出製品として選択した。被検サンプル中にCN量子ドットを1μL加え、12h培養した。培養温度は25℃であった。そして、蛍光顕微鏡(励起波長400nm)で蛍光状況を観察したところ、PFK15で処理した(PFK15は細胞の好気的解糖代謝レベルを阻害可能であり、細胞質のNAD濃度を低下させる)A375細胞の蛍光は、PFK15で処理しなかった群よりも43%低下した(結果は図5に示す通り)。
【実施例5】
【0065】
BALB/cヌードマウス(4週間、メス)を選択し、3%ペントバルビタールを用いて麻酔をかけた。また、A375細胞を濃度2×10mL-1の懸濁液中に置いた。次に、腫瘍細胞をマウスの硝子体下腔に注射して、眼内上皮内腫瘍動物モデルを作製した。腫瘍細胞を注射してから1週間後に、準備しておいたCN量子ドット溶液を硝子体下腔に注入し、12時間培養してから、小動物ライブイメージング撮影を行った。その後、ラットを殺処理し、眼組織を採取して薄片化したあと、HE染色及び蛍光撮影を行った。これにより、図6に示すように、HE染色、蛍光写真及び小動物ライブイメージングのいずれにおいても腫瘍細胞成長のプロセスを視認可能となった。結果として、動物の体内において、炭素-窒素蛍光量子ドットは、好気的解糖代謝モデルの腫瘍細胞の成長プロセスについて正確な動的蛍光標識及び観測を可能とすることが示された。
【実施例6】
【0066】
膀胱癌患者の尿と健常者の尿を被検サンプルとして選択した。また、CN量子ドット(直径1nm、濃度1μg/mL、溶媒は生理食塩水)を好気的解糖検出製品として選択した。被検サンプル中にCN量子ドットを1μL加え、サンプルを2h培養した。培養温度は25℃であった。そして、蛍光顕微鏡(励起波長400nm)でサンプルの蛍光状況を観察した。その結果、図7に示すように、視野内の腫瘍患者の尿細胞は蛍光が明らかであったが、健常者の尿には明らかな蛍光が見られなかった。
【0067】
以上の実施例は、本発明で開示した実施方案を説明するためのものであって、本発明を制限するものと解釈すべきではない。また、本文中に列挙した各種修正及び発明中の方法の変形は、本発明の範囲及び精神を逸脱しないことを前提に、当業者にとって自明である。なお、本発明における複数の具体的な好ましい実施例を組み合わせて本発明につき具体的に記載したが、理解すべき点として、本発明はこれらの具体的実施例に限定されない。実際に、当業者にとって自明な各種の上記修正により取得される発明は、いずれも本発明の範囲に含まれるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7