(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】ホーン付き同軸スピーカー及びその形状最適化方法
(51)【国際特許分類】
H04R 9/06 20060101AFI20241119BHJP
H04R 9/04 20060101ALI20241119BHJP
H04R 9/02 20060101ALI20241119BHJP
H04R 1/30 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
H04R9/06 A
H04R9/04 103
H04R9/02 102A
H04R1/30 A
(21)【出願番号】P 2023534739
(86)(22)【出願日】2021-07-05
(86)【国際出願番号】 CN2021104529
(87)【国際公開番号】W WO2022127081
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-06-07
(31)【優先権主張番号】202011463139.1
(32)【優先日】2020-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519348325
【氏名又は名称】蘇州上声電子股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SUZHOU SONAVOX ELECTRONICS CO., LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】陸明偉
(72)【発明者】
【氏名】柴国強
(72)【発明者】
【氏名】徐仁方
(72)【発明者】
【氏名】薛夏豐
【審査官】▲徳▼田 賢二
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0064414(US,A1)
【文献】実開昭55-051523(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 9/06
H04R 9/04
H04R 9/02
H04R 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウーファーユニットとツイーターユニットを備えた同軸スピーカーであって、前記同軸スピーカーには、内部空洞と開いた上端と下端を備えたホーンも含まれ、前記ツイーターユニットにはツイーターコーンが含まれ、前記ホーンは前記ツイーターコーンを囲み、前記ホーンの下端部は前記ツイーターユニットに接続され、前記ホーンの上端部は最大内径にあ
り、前記ホーンは拡張部を有しており、前記拡張部は前記ホーンの上端部より低く、前記拡張部の内径は下から上に向かって徐々に大きくなっており、前記ホーンの上下方向に沿った断面の内側の輪郭またはその一部がベジェ曲線形状を呈していることを特徴とする同軸スピーカー。
【請求項2】
前記ホーンの内径は下から上に向かって徐々に大きくなることを特徴とする請求項1に記載の同軸スピーカー。
【請求項3】
前記ツイーターユニットにはシートも含まれ、前記シートは前記ウーファーユニットに設置され、前記ツイーターコーンは前記シートに設置され、前記ホーンの下端部は、前記シート及び/又はツイーターコーンの外縁に接続されることを特徴とする請求項1に記載の同軸スピーカー。
【請求項4】
前記ホーンの下端面の一部には、上向きにアーチ状のアーチ部があり、前記ツイーターコーンのエッジ部分は前記アーチ部の下に位置し、それらの間に前記内部空洞と連通する環状の凹状空洞を形成することを特徴とする請求項
3に記載の同軸スピーカー。
【請求項5】
前記ツイーターユニットは、ツイーターボイスコイルと、音声信号を前記ツイーターボイスコイルに送信するためのはんだラグとをさらに含み、前記はんだラグの上部は前記シートに埋め込まれており、前記ツイーターボイスコイルの入力端に接触して導通し、前記はんだラグは、音声信号を入力するための信号入力線に電気的に接続されることを特徴とする請求項
3に記載の同軸スピーカー。
【請求項6】
前記ウーファーユニットはウーファーボイスコイルを含み、前記ウーファーボイスコイルのリード線は前記信号入力線に電気的に接続されていることを特徴とする請求項
5に記載の同軸スピーカー。
【請求項7】
前記ウーファーユニットには、さらに磁気回路システムが含まれ、前記磁気回路システムには上下方向に延びる貫通穴が設けられており、前記信号入力線が前記貫通穴に貫通し、前記はんだラグの下部は前記貫通穴内に伸びており、前記信号入力線に電気的に接続されていることを特徴とする請求項
6に記載の同軸スピーカー。
【請求項8】
前記同軸スピーカーには、前記ホーンとウーファーユニットの間に接続されたダストリングも含まれていることを特徴とする請求項1に記載の同軸スピーカー。
【請求項9】
前記ウーファーユニットにはウーファーコーンが含まれ、前記ダストリングは前記ホーンの上端部と前記ウーファーコーンの間に接続されることを特徴とする請求項
8に記載の同軸スピーカー。
【請求項10】
前記ウーファーユニットはウーファーボイスコイルを含み、前記ツイーターユニットは前記ウーファーボイスコイル内に設置され、前記ツイーターユニットの最上端と前記ホーンの上端は、どちらも前記ウーファーユニットの上端より低くなっていることを特徴とする請求項1に記載の同軸スピーカー。
【請求項11】
前記同軸スピーカーはまた、前記ホーンの内面から内側に延びる複数の延長フィンを含み、前記延長フィンは、前記ツイーターユニットのツイーターコーンの上にあることを特徴とする請求項1に記載の同軸スピーカー。
【請求項12】
前記延長フィンは前記ホーンの半径方向内側に延長し、前記延長フィンの半径方向のサイズは、上から下に向かって徐々に増加することを特徴とする請求項
11に記載の同軸スピーカー。
【請求項13】
各前記延長フィンの下端部はすべて、環状部材に接続されていることを特徴とする請求項
12に記載の同軸スピーカー。
【請求項14】
ホーン付き同軸スピーカーの形状最適化方法であって、
請求項1に記載の同軸スピーカーの幾何学的モデルを構築し、ホーンの輪郭曲線における制御ノードを取得するステップS1と、
物理場を設定するステップS2と、
材料パラメータを定義するステップS3と、
メッシュを分割するステップS4と、
ホーンのプロファイル形状の幾何学的パラメータを最適化するステップS5と、
最適化された後のパラメータに従ってホーンの最適化された幾何学的モデルをレンダリングするステップS6と、を含み、
そのうち、前記ステップS5は具体的には、
ホーンの輪郭曲線にある制御ノードのグループの座標値Pを最適化パラメータとして使用する最適化パラメータの選択S51と、
制約条件を設定する:座標値Pの値の範囲Cを
【数9】
に制限し、
上記の式で、lbは座標値Pの下限、ubは座標値Pの上限であるS52と、
最適化の目標を決定する:同軸スピーカーの0°の軸角度と軸外角度の高周波平均音圧レベル応答
【数10】
と
【数11】
の合計は、最大値を取る必要があり、つまり、
【数12】
を満たし
上記の式で、
【数13】
は最適化の目標を満たす最適化パラメータのセットであり、
【数14】
は最大値を求める演算子であるS53と、
最適化計算:最適化パラメータPと制約条件Cに従って、最適化アルゴリズムを使用して、最適化の目標を満たす最適化パラメータのセットを取得するS54と、を含むことを特徴とするホーン付き同軸スピーカーの形状最適化方法。
【請求項15】
前記ステップS2は具体的には、
電磁界および振動システム:スピーカー振動システム部品の固定部分に「固定制約」を設定し、スピーカー振動システム部品の材料構成関係を「線形弾性材料モデル」に設定し、スピーカーボイスコイルに軸方向荷重FFを
次のように設定し
、
【数15】
上記の式で、BLはスピーカー磁気回路の駆動力係数、Zb(freq)はスピーカー磁気回路の基本インピーダンス周波数応答曲線、vはスピーカーボイスコイルの軸方向振動速度、V
0はスピーカー負荷電圧であるS21と、
音場:ホーン輪郭の幾何学的モデルを「硬い音場の境界」に設定し、スピーカー周辺の空気領域の外層を「完全一致層」に設定するS22と、を含むことを特徴とする請求項
14に記載の形状最適化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連技術出願の相互参照)
本開示は、2020年12月14日に出願された出願番号CN 2020114631391の中国特許出願の優先権を主張し、その全内容は参照により本開示に組み込まれる。
【0002】
本開示は、スピーカーの分野、特にホーン付き同軸スピーカー及びその形状最適化方法に関する。
【背景技術】
【0003】
同軸スピーカーは、高音域と中低音域をそれぞれ再現するツイーターユニットとウーファーユニットを統合している。同軸スピーカーの利点は、フルレンジスピーカーの帯域幅が大幅に改善され、カーオーディオで広く使用されていることである。現在、少数の高品質カースピーカーオーディオシステムは、同軸スピーカーのツイーターユニットのみを使用し、ウーファーユニットをミュートして車内の音場を調整する場合がある。これはまた、ツイーターユニットが単独で動作する場合、良好な周波数応答曲線を持っている必要があるという事実にもつながる。ただし、同軸スピーカーでは、ウーファーユニットの構造がツイーターユニットの放射音場に影響を与えることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の問題を考慮して、本開示は、ホーン付き同軸スピーカーを提供し、これは、ツイーターユニットのみが動作するときにより良い周波数応答曲線を有し、同時に、ウーファーユニットのツイーターユニットの音場への影響を低減する。本開示はまた、ホーン付き同軸スピーカーの形状最適化方法を提供し、これは、ホーンの形状を迅速かつ正確に最適化し、スピーカーの音響性能を改善することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の態様によれば、同軸スピーカーは、ウーファーユニット及びツイーターユニットを含み、前記同軸スピーカーには、内部空洞と開いた上端と下端を備えたホーンも含まれ、前記ツイーターユニットにはツイーターコーンが含まれ、前記ホーンは前記ツイーターコーンを囲み、前記ホーンの下端部は前記ツイーターユニットに接続され、前記ホーンの上端部は最大内径にある。
【0006】
好ましい実施例では、前記ホーンは拡張部を有し、前記拡張部の内径は下から上に向かって徐々に大きくなる。より好ましくは、上下方向の前記拡張部の断面は、2つの鏡面対称のベジェ曲線形状の内部輪郭を持っている。高周波周波数応答曲線を滑らかにする。
【0007】
好ましい実施例では、前記ホーンの内径は下から上に向かって徐々に大きくなる。より好ましくは、前記ホーンの上下方向の断面には、2つの鏡面対称のベジェ曲線形状の内部輪郭がある。高周波周波数応答曲線を滑らかにする。
【0008】
好ましくは、前記ツイーターユニットにはシートも含まれ、前記シートは前記ウーファーユニットに設置され、前記ツイーターコーンは前記シートに設置され、前記ホーンの下端部は、前記シート及び/又はツイーターコーンの外縁に接続される。
【0009】
より好ましくは、前記ホーンの下端面の一部には、上向きにアーチ状のアーチ部があり、前記ツイーターコーンのエッジ部分は前記アーチ部の下に位置し、それらの間に前記内部空洞と連通する環状の凹状空洞を形成する。高周波周波数応答曲線を滑らかにする。
【0010】
より好ましくは、前記ツイーターユニットは、ツイーターボイスコイルと、音声信号を前記ツイーターボイスコイルに送信するためのはんだラグとをさらに含み、前記はんだラグの上部は前記シートに埋め込まれており、前記ツイーターボイスコイルの入力端に接触して導通し、前記はんだラグは、音声信号を入力するための信号入力線に電気的に接続される。
【0011】
さらに、前記ウーファーユニットはウーファーボイスコイルを含み、前記ウーファーボイスコイルのリード線は前記信号入力線に電気的に接続されている。
【0012】
さらに、前記ウーファーユニットには磁気回路システムが含まれ、前記磁気回路システムには上下方向に延びる貫通穴が設けられており、前記信号入力線が前記貫通穴に貫通し、前記はんだラグの下部は前記貫通穴内に伸びており、前記信号入力線に電気的に接続されている。
【0013】
好ましくは、前記同軸スピーカーには、前記ホーンとウーファーユニットの間に接続されたダストリングも含まれている。
【0014】
より好ましくは、前記ウーファーユニットにはウーファーコーンが含まれ、前記ダストリングは前記ホーンと前記ウーファーコーンの間に接続され、さらに、前記ダストリングは通気性のある材料で作られている。 ウーファーユニット用磁気ギャップ防塵である。
【0015】
さらに、ダストリングの上下方向に沿った断面には、ウーファーユニットの動作中にウーファーコーンが引っ張られないように、2つの鏡面対称の波状またはジグザグ形状が含まれている。
【0016】
さらに、前記通気性のある材料は、綿、PC(ポリカーボネート)またはCONEX(アラミド繊維)である。ダストリングは防塵専用で、防水用ではない。
【0017】
好ましくは、前記ウーファーユニットはウーファーボイスコイルを含み、前記ツイーターユニットは前記ウーファーボイスコイル内に設置され、前記ツイーターユニットの最上端と前記ホーンの上端は、どちらも前記ウーファーユニットの上端より低くなっている。ツイーターユニットとホーンはウーファーユニット内に一体的に配置されている。
【0018】
好ましくは、前記同軸スピーカーはまた、前記ホーンの内面から内側に延びる複数の延長フィンを含み、前記延長フィンは、前記ツイーターユニットのツイーターコーンの上にある。より好ましくは、前記延長フィンはホーンの半径方向内側に延長する。さらに、前記延長フィンの半径方向のサイズは、上から下に向かって徐々に増加する。さらに、各前記延長フィンの下端部はすべて、環状部材に接続されている。さらに、前記延長フィンの内縁は弧状である。延長フィンは、ツイーターユニットの内部部品を効果的に保護し、指などの異物が誤ってツイーターユニットに入り、ツイーターコーンなどの内部部品を損傷するのを防ぐことができ、延長フィンはまた、より良い高周波分散を可能にすることができる。
【0019】
本開示の別の態様によれば、ホーン付き同軸スピーカーの形状最適化方法は、
上記のように同軸スピーカーの幾何学的モデルを確立し、ホーンの輪郭曲線における制御ノードを取得するステップS1と、
物理場を設定するステップS2と、
材料パラメータを定義するステップS3と、
メッシュを分割するステップS4と、
ホーンのプロファイル形状の幾何学的パラメータを最適化するステップS5と、
最適化された後のパラメータに従ってホーンの最適化された幾何学的モデルをレンダリングするステップS6と、を含み、
そのうち、前記ステップS5は具体的には以下を含む。
S51、最適化パラメータの選択:ホーンの輪郭曲線にある制御ノードのグループの座標値Pを最適化パラメータとして使用する。
S52、制約条件を設定する:座標値Pの値の範囲Cを
【数1】
に制限する
上記の式で、lbは座標値Pの下限、ubは座標値Pの上限である。
S53、最適化の目標を決定する:同軸スピーカーの0°の軸角度と軸外角度の高周波平均音圧レベル応答
【数2】
と
【数3】
の合計は、最大値を取る必要があり、つまり、
【数4】
を満たす
上記の式で、
【数5】
は最適化の目標を満たす最適化パラメータのセットであり、
【数6】
は、最大値を解くための演算子である。
S54、最適化計算:最適化パラメータPと制約条件Cに従って、最適化アルゴリズムを使用して、最適化の目標
【数7】
を満たす最適化パラメータのセットを取得する。
【0020】
好ましくは、前記ステップS2は具体的には以下を含む。
S21、電磁界および振動システム:スピーカー振動システム部品の固定部分に「固定制約」を設定し、スピーカー振動システム部品の材料構成関係を「線形弾性材料モデル」に設定し、スピーカーボイスコイルに軸方向荷重FFを設定し、次のようにである
【数8】
上記の式で、BLはスピーカー磁気回路の駆動力係数、Zb(freq)はスピーカー磁気回路の基本インピーダンス周波数応答曲線、vはスピーカーボイスコイルの軸方向振動速度、V
0はスピーカー負荷電圧である。
S22、音場:ホーン輪郭の幾何学的モデルを「硬い音場の境界」に設定し、スピーカー周辺の空気領域の外層を「完全一致層」に設定する。
【0021】
ステップS1では、有限要素解析ソフトウェアでスピーカーとその周囲の空気領域の幾何学的モデルを確立し、パラメトリックベジェ曲線でホーン輪郭の幾何学的モデルを確立し、曲線内の制御ノードを取得し、これらの制御ノードの座標値からホーン輪郭の幾何学的形状を制御する。
【0022】
ステップS3において、スピーカー振動システムの各部品の機械的材料パラメータを定義し、空気の材料パラメータを定義する。
【0023】
ステップS4では、「フリー三角メッシュ」ユニットを使用して、スピーカーとその周囲の空気領域のメッシュを分割し、最大メッシュユニットのサイズは、1つの音波波長内で少なくとも5~6個線形ユニットの原則を満たす必要がある。
【0024】
ステップS54では、最適化アルゴリズムは、Nelder-Mead、BOBYQA、COBYLA、Laplace、Winslow、座標検索、Yeoh平滑化の7つの勾配のない最適化アルゴリズム、およびSNOPT、MMA、Levenberg-Marquardtの3つの勾配型最適化アルゴリズムから選択される。
【0025】
COMSOLMultiphysicsやANSYSなどの有限要素解析ソフトウェアで上記の各ステップを実行する。
【発明の効果】
【0026】
本開示は、上記の手段を採用しており、従来技術と比較して以下の利点を有する。
【0027】
本開示のホーン付き同軸スピーカーにおいて、ツイーターユニットが動作すると、ツイーターホーンは音波を前方に伝播するように誘導し、音波が後方に放射するのを防ぎ、それによってウーファーユニットの高音への影響を低減し、同時に、徐々に外向きに拡張する構造は、ツイーターユニットの高周波の拡張を助長している。本開示の形状最適化方法は、最適化アルゴリズムを通じてホーンの最適なベジェ曲線形状を設計し、これにより、スピーカーホーンを迅速、低コスト、正確に最適化することができ、それによってスピーカーホーンの開発サイクルを短縮し、スピーカーの音響性能を改善する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本開示の技術的解決手段をより明確に説明するために、以下は、実施例の説明で使用される添付の図面を簡単に説明し、明らかに、以下の説明の図面は、本開示のいくつかの実施例にすぎず、当業者にとって、他の図面もまた、創造的な努力なしにこれらの図面から得ることができる。
【0029】
【
図1】本開示の実施例による同軸スピーカーの全体的な外観の概略図である。
【
図2】
図1に示した同軸スピーカーの上面図である。
【
図5】
図2のツイーターユニットとホーンの立体概略図である。
【
図6】
図2のツイーターユニットとホーンの断面図である。
【
図7】ホーンのない同軸スピーカーと本開示の実施例による同軸スピーカーとの周波数応答曲線の比較図である。
【
図8】本開示の実施例による形状最適化設計方法のフローチャートである。
【
図9】
図9は、スピーカー、ホーン、およびその周囲の空気の幾何学的モデルである。
【
図10】
図10に、ツイーターユニットの基本インピーダンスの実数部を示す。
【
図11】
図11に、ツイーターユニットの基本インピーダンスの虚部を示す。
【
図13】
図13に、ツイーターユニットのボイスコイルを示す。
【
図14】
図14に、ツイーターユニットのダイヤフラムを示す。
【
図22】
図22に、ツイーターユニットのホーン幾何学的モデルの最適化結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施例について詳細に説明することにより、本開示の利点と特徴が当業者により容易に理解できるようになる。ここで、これらの実施形態の説明は、本開示の理解を助けるために使用されるが、本開示の限定を構成するものではないことに留意されたい。また、以下に説明する本開示の様々な実施形態に含まれる技術的特徴は、互いに矛盾しない限り、互いに組み合わせることができる。
【0031】
本開示の説明において、「上」、「下」、「内」、「外」などの用語が示す向きまたは位置関係は、図に基づいて示される向きまたは位置関係であり、本開示の説明を容易にし、説明を単純化することのみを目的としており、参照される装置または要素が特定の向きを有し、特定の向きで構築され、動作しなければならないことを示したり暗示したりするのではなく、したがって、本開示を制限するものと解釈されるべきではないことに留意されたい。
【0032】
本開示の説明において、特に明示的に指定および限定されない限り、「取り付け」、「相互接続」および「接続」という用語は、広い意味で理解されるべきであり、固定接続、着脱式接続または一体的接続であってもよく、機械的接続又は電気的接続であってもよく、直接接続または中間媒体を介した間接接続であってもよく、2つの要素の内部接続であってもよいことに留意されたい。当業者は、本開示における上記の用語の特定の意味を特定の状況で理解することができる。
【0033】
図1から
図6に示されるように、本実施例は、ウーファーユニット1とツイーターユニット2とを同軸上に配置したホーン付き同軸スピーカーを提供する。該同軸スピーカーには、内部空洞と開いた上端と下端を備えたホーン3も含まれる。上記ツイーターユニット2はツイーターコーン22を備え、ホーン3はツイーターコーン22を取り囲んでいる。ホーン3の下端部はツイーターユニット2に接続され、ホーン3の上端は最大内径にある。ホーン3は拡張部を有しており、拡張部の内径は下から上に向かって徐々に大きくなっている。また、ホーン3の内径は下から上に向かって徐々に大きくなり、ホーン3全体としては、外側に向かって徐々に拡張する形状となっている。具体的には、ホーン3の上下方向に沿った断面は、
図3に示すように、鏡面対称のベジエ曲線形状の2つの内側輪郭を有するため、高周波周波数応答曲線は比較的滑らかである。別の実施例では、ホーン3を内側に拡張し、次に徐々に外側に拡張することができる。ホーン3は、ウーファーユニット 1の構造からツイーターユニット2によって放射される音場に対する影響を大幅に低減する。ホーンは、スピーカーダイヤフラムの表面の音響インピーダンスを改善するだけでなく、それによってスピーカーの感度を改善するだけでなく、さらに重要なことに、スピーカーの高周波音場の指向性を広げ、音場効果を改善することができる。
【0034】
ウーファーユニット1は、フレーム11と、フレーム11上に配置されたウーファーコーン12及び第1磁気回路システム14と、ウーファーコーン12に接続されたウーファーボイスコイル13と、ウーファーボイスコイル13に套設された位置決めダンパー16とを含む。第1磁気回路システム14は、ウーファーボイスコイル13が挿入される磁気ギャップを形成し、ウーファーボイスコイル13の下端が磁気ギャップに挿入され、通電後に上下に振動してウーファーコーン12を振動させて音を出す。位置決めダンパー16の外周縁は、フレーム11に固定され、ウーファーボイスコイル13が横揺れするのを防止する。
【0035】
ツイーターユニット2は、ウーファーユニット1のボイスコイル内に配置されるのが一般的である。ツイーターユニット2の最上端及びホーン3の上端は、いずれもウーファーユニット1の上端より低く、ツイーターユニット2及びホーン3は全体としてウーファーユニット1内に位置しているので、同軸スピーカーの体積とそれが占めるスペースを増やさないようにする。
【0036】
ツイーターユニット2は、具体的には、ウーファーユニット1上に配置されたシート21と、シート21上に配置された上述のツイーターコーン22および第2磁気回路システム24と、ツイーターコーン22に接続されたツイーターボイスコイル23とを備える。第2磁気回路システム24は、ツイーターボイスコイル23が挿入される磁気ギャップを形成し、ツイーターボイスコイル23の下端が磁気ギャップに挿入され、通電後に上下に振動してツイーターコーン22を振動させて音を出す。
【0037】
シート21は、具体的には、ウーファーユニット1の第1磁気回路システム14上に配置される。該第1磁気回路システム14は、具体的には、Tヨーク141と、Tヨーク141に套設された磁性鋼142とを含み、磁性鋼142は、Tヨーク141を取り囲み、磁気ギャップを形成する。シート21は、Tヨーク141の上部に配置されている。具体的には、本実施例において、Tヨーク141には、上下方向に延びる貫通穴143が開けられる。シート21の下部が該貫通穴143に挿入される。
【0038】
該ツイーターユニット2はまた、音声信号をツイーターボイスコイル23に伝送するためのはんだラグ25を含む。はんだラグ25の上部はシート21に埋め込まれており、例えばリード線を介してツイーターボイスコイル23の入力端に接触して導通し、はんだラグ25の下部は、ウーファーユニット1内に延在し、音声信号を入力するための信号入力線15と電気的に接続される。具体的には、信号入力線15が貫通穴143を貫通し、はんだラグ25の下部が貫通穴143内に延在して信号入力線15と電気的に接続されている。信号入力線15は、ウーファーボイスコイル13のリード線とも電気的に接続され、ウーファーユニット1に音声信号を入力する。
【0039】
具体的には、ホーン3の下端部は、
図3および
図4に示すように、シート21及び/又はツイーターコーン22の外周縁に接続されている。ホーン3の下端面の一部(内側に近い部分)は、上方に向かって湾曲したアーチ部31を有し、ツイーターコーン22のエッジ部分はアーチ部31の下に位置し、それらの間に内部空洞と連通する環状の凹状空洞310を形成し、この設置により、高周波周波数応答曲線がより滑らかになる。具体的には、ツイーターコーン22は、上向きにアーチ状に形成された中央アーチ部221と、中央アーチ部221を取り囲む一回りのエッジアーチ部222を含み、エッジアーチ部222は、ホーン3のアーチ部31の下に位置する。
【0040】
該同軸スピーカーはまた、ホーン3とウーファーユニット1との間に接続されたダストリング4を含む。ダストリング4は、具体的にホーン3の上端部とウーファーコーン12との間に接続されている。ダストリング4は通気性のある材料で製造されており、ウーファーユニット1の磁気ギャップの防塵に使用される。ダストリング4の上下方向に沿った断面には、ウーファーユニット1の動作中にウーファーコーン12が引っ張られないように、2つの鏡面対称の波状またはジグザグ形状が含まれている。通気性のある材料は、綿、PC(ポリカーボネート)またはCONEX(アラミド繊維)である。ダストリング4は防塵専用で、防水用ではない。
【0041】
さらに、該同軸スピーカーはまた、ホーン3の内面から内側に延びる複数の延長フィン32を含み、延長フィン32は、ツイーターユニット2のツイーターコーン22の上にある。延長フィン32は具体的にはホーン3の半径方向に沿って内側に延長し、延長フィン32の半径方向のサイズは、上から下に向かって徐々に増加する。各延長フィン32の下端部はすべて、環状部材33に接続されている。延長フィン32の内縁は弧状である。延長フィン32は、ツイーターユニット2の内部部品を効果的に保護し、指などの異物が誤ってツイーターユニットに入り、ツイーターコーン22などの内部部品を損傷するのを防ぐことができ、延長フィン32はまた、より良い高周波分散を可能にすることができる。
【0042】
ホーン無し同軸スピーカー(比較例)と本実施例のホーン有り同軸スピーカーの周波数応答試験を行い、その試験結果を
図7に示す。比較例の同軸スピーカーの構造は、ツイータユニットにホーンが設けられておらず、ツイータユニットとウーファユニットとの間にダストリングが接続されている以外、基本的に本実施例と同様である。
図7の細線は比較例の同軸スピーカーにおけるツイータユニットの周波数応答曲線であり、図中の太線は本実施例の同軸スピーカーにおけるツイータユニットの周波数応答曲線である。この図から、本実施例の同軸スピーカーにおけるツイーターユニットの周波数応答曲線がよりバランスがとれていることが分かる。
【0043】
本実施例の同軸スピーカーのホーンの幾何学的形状は、スピーカーの音声再生品質や音場指向特性に直結する。従来の経験的方法に基づいた製品設計→試作サンプル→テスト→設計改善→再試作サンプル→再テストでホーンの幾何学的形状を設計すると、ホーンの問題は設計後期になってからでないと発見できず、開発サイクルが長く、コストが高い。業界では、有限要素に基づく数値シミュレーション分析方法を使用して、さまざまな形状のホーンの下でのスピーカーの音場応答をシミュレートおよび分析し始め、この方法は製品開発サイクルを大幅に短縮し、研究開発費を削減するが、それでも設計の繰り返しに依存し、最終的に理論的に最適なホーン形状を設計できないことがよくある。これに基づいて、本実施例は、次の問題を解決するホーン付き同軸スピーカーの形状最適化方法を提供する。 1.スピーカーホーンの従来の経験的設計方法には、長い開発サイクルと高コストの問題がある。2、一般的なスピーカーの音場シミュレーション分析方法に頼って、理論的に最適なホーン幾何学的形状を設計することはしばしば困難である。
【0044】
上記の同軸スピーカーのツイーターを例に取り、COMSOL Multiphysics 5.5を使用してホーン形状の設計を最適化し、ホーンの最適化された設計結果を直接提供する。
図8は該形状最適化方法のフローチャートであり、主に以下のステップを含む。
ステップ1:この同軸スピーカーのツィーターユニットは軸対称構造を持っているため、計算を容易にするために、最初にCOMSOLソフトウェアで2D軸対称分析環境を選択し、次に「音響と固体の相互作用、周波数領域」物理場インターフェースを選択し、3場結合の周波数領域分析を行うため、最終的に「周波数領域研究」が選択される。
ステップ2:COMSOLソフトウェアを使用して、ツイーターユニット、周囲の空気領域、およびウーファーユニットのダイヤフラムの2D軸対称幾何学的モデルを確立し、図 9 の矢印で示された太い線で示されているように、パラメトリック3次ベジエ曲線を使用して、ホーン輪郭の幾何学的モデルを確立する。幾何学的モデルの説明は次のとおりである:(1)ツイーターユニットの磁気回路システムは有限要素計算には関与せず、硬い音場境界としてのみ扱われ、必要な磁気回路システムの駆動力係数と基本インピーダンス周波数応答曲線は、追加のシミュレーション分析または測定によって取得できる。(2) ウーファーユニットのダイヤフラムも有限要素計算に関与せず、硬い音場境界としてのみ扱われる。(3)暗い曲線で表される3次ベジエ曲線がホーン輪郭で、曲線の2つの端点が固定されており、曲線の中央にある2つのノードの座標値が最適化パラメータとして使用される。
ステップ3:関数、パラメータ、および変数を定義し、以下を含む。(1)ボイス コイルの平均化関数を定義し、coil_av という名前を付け、これは、ボイスコイル範囲内の逆起電力の算術平均値を定義するためのものである。(2)
図10と
図11に示すように、それぞれZbrとZbiというツイーターユニットの基本インピーダンスの実部と虚部の補間関数をインポートする。(3)3次ベジエ曲線の2つのノードの座標パラメータを(P1r, P1z)と(P2r, P2z)として定義しそれらの初期座標を(13.1,-10)[mm]と(14,-0.5)[ mm]に設定する。(4)次のように6つの変数を定義する。
Zb:Zbr(freq)+i*Zbi(freq)、
FF:BL*(V0-BL*coil_av(solid.u_tZ))/Zb、
Lp_0:10*log10(0.5*abs(pfar(0,1[m])[Pa])^2/acpr.pref_SPL^2)、
Lp_the:10*log10(0.5*abs(pfar(0.707[m],0.707[m])[Pa])^2/acpr.pref_SPL^2)、
Lp_ave_0:sum(with(ka,Lp_0),ka,1,21)/21、
Lp_ave_the:sum(with(ka,Lp_the),ka,1,21)/21、
上記の式で、Zbはツイーターユニットの基本インピーダンス、Zbr(freq) は基本インピーダンスの実部、Zbi(freq)は基本インピーダンスの虚部、iは虚数単位、FFはボイスコイルの荷重、BLはツイーターユニットの駆動力係数で、1.71[Wb/m]であり、V0はスピーカーの負荷電圧で、2.828[V]であり、solid.u_tZはスピーカーボイスコイルの軸方向振動速度式、Lp_0は、スピーカーの0°軸方向1メートルでの音圧レベル、abs()はモジュロ演算子、pfar()は遠距離場音圧解決演算子であり、後続のステップで「遠距離場計算」を定義し、acpr.pref_SPLは基準音圧で、20マイクロパスカルであり、Lp_theはスピーカーの軸から45°、1メートル離れた位置での音圧レベル、Lp_ave_0はスピーカーの軸方向から0°、1メートル離れた位置での平均音圧レベル、sum()は加算演算子、 with()はソート演算子、kaはシリアル番号、Lp_ave_theはスピーカーの軸から45°、1メートルでの平均音圧レベルである。
ステップ4:「固体力学」物理場インターフェースを定義し、以下を含む。(1)
図12の矢印で示した太線に「固定制約」を設定する。(2)
図13の矢印で示したボイスコイルに「本体荷重」を設定し、荷重タイプを「総力」に設定し、z軸方向にFFを入力する。(3)
図14の矢印で示されたコーンに「減衰」を設定し、減衰タイプを「等方性損失係数」に設定する。
ステップ5:「圧力音響、周波数領域」物理場インターフェースを定義し、以下を含む。(1)
図15の矢印で示した太線に「外場計算」を設定する。(2)
図16の矢印で示した太線に「内部硬い音場境界(壁)」を設定する。(3)
図17の矢印で示した領域に「完全一致層」を設定する。
ステップ6:
図18の矢印で示した太線で示すように、「音響構造境界」を定義する。
ステップ7:以下を含む材料パラメータを設定する。(1)空気材料パラメータはCOMSOL材料データベースからのである。(2)ツイーターユニット振動システムの各部品の材料パラメータを以下の表1に示す。
【表1】
ステップ8:メッシュを分割し、以下を含む。(1)
図19の矢印で示した領域で「フリー三角メッシュ」を分割し、最大要素サイズを「343[m]/20000/5」に設定する。(2)
図20の矢印で示したで「マッピング」メッシュを分割し、分布数を「5」に設定し、最終的なメッシュ分割結果を以下の表2に示すように、
【表2】
ステップ9:周波数範囲を2000Hz~20000Hz、1/6オクターブに設定する。
ステップ10:以下を含む最適化を設定する。(1)最適化アルゴリズムを「Nelder-Mead」に設定する。(2)目的関数をLp_ave_0およびLp_ave_theに設定する(3)目的関数のタイプを「最大化」に設定する。(4)最適化パラメータの値の範囲を設定し、
図21に示す。
ステップ11:「計算」ボタンを左クリックして、ソフトウェアインターフェースの右下隅に計算の進行状況を表示する。
ステップ12:ソフトウェアインターフェースの右下隅にある表の列にある最適化パラメータの計算結果を読む:(P1r,P1z)=(13.5,-10)、(P1r,P1z)=(16,-1)。
ステップ13:最適化されたパラメータの計算結果に基づいて、ツイーターユニットのホーンの幾何学的形状を、
図22の矢印で示された領域のようにレンダリングする。
【0045】
上記の方法は、可動コイル型電気スピーカー、可動鉄型スピーカー、MEMSスピーカーに適している。
【0046】
上記の方法は、スピーカー磁気回路システム、振動システム、および音場の3場結合シミュレーション分析技術に基づいており、最適化アルゴリズムによってホーンの最適なベジエ曲線形状を設計しているため、本開示は、スピーカーホーンを迅速かつコスト効率よく正確に最適化することで、スピーカーホーンの開発サイクルを短縮し、スピーカーの音響性能を向上させる。
【0047】
上述の実施例は、本開示の技術的思想および特徴を説明するためだけのものであり、好ましい実施例であり、その目的は、当業者が本開示の内容を理解し、それに応じてそれを実施できるようにすることであり、本開示の保護範囲を限定するものではない。
【符号の説明】
【0048】
1、ウーファーユニット
11、フレーム
12、ウーファーコーン
13、ウーファーボイスコイル
14、第1磁気回路システム
141、Tヨーク
142、磁性鋼
143、貫通穴
11、信号入力線
16、位置決めダンパー
2、ツイーターユニット
21、シート
22、ツイーターコーン
221、中央アーチ部
222、エッジアーチ部
23、ツイーターボイスコイル
24、第2磁気回路システム
25、はんだラグ
3、ホーン
31、アーチ部
310、環状の凹状空洞
32、延長フィン
33、環状部材
4、ダストリング