(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
F02D 29/02 20060101AFI20241119BHJP
B62J 50/21 20200101ALI20241119BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
F02D29/02 321A
B62J50/21
H02J7/00 P
H02J7/00 B
(21)【出願番号】P 2023550919
(86)(22)【出願日】2021-09-30
(86)【国際出願番号】 JP2021036163
(87)【国際公開番号】W WO2023053353
(87)【国際公開日】2023-04-06
【審査請求日】2024-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古谷 昌志
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼口 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】塚田 善昭
(72)【発明者】
【氏名】石川 潤
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼▲崎▼ 篤志
(72)【発明者】
【氏名】安達 惇
(72)【発明者】
【氏名】福吉 康弘
【審査官】村山 美保
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-089742(JP,A)
【文献】特開2010-163879(JP,A)
【文献】特開2012-251465(JP,A)
【文献】特開平8-42387(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 29/02
B62J 50/21
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンの回転を変速して駆動輪に伝達するマニュアル式の変速機と、
アイドルストップ条件が成立すると前記エンジンを自動停止するアイドルストップ制御を行うアイドルストップ制御手段と、
前記エンジンの始動に必要な電力を蓄電するバッテリと、を備えた鞍乗型車両であって、
前記変速機がインギヤでの前記エンジンの自動停止中に、前記バッテリのバッテリ電圧が第1の閾値以下となった場合に、ライダに対して前記エンジンの再始動操作を促す報知を行う報知手段と、
前記報知の後に、前記エンジンの再始動操作が確認されなかったことを少なくとも条件として、前記鞍乗型車両の電源状態を、前記報知が行われたときよりも消費電力の低い第1の状態にする電源制御手段と、を備える、
ことを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項2】
請求項1に記載の鞍乗型車両であって、
前記電源制御手段は、前記バッテリ電圧が前記エンジンの始動に必要な電圧値以上かつ前記第1の閾値よりも低い第2の閾値まで低下することも条件として、前記電源状態を前記第1の状態にする、
ことを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項3】
請求項1に記載の鞍乗型車両であって、
前記電源制御手段は、前記報知から所定の時間が経過することも条件として、前記電源状態を前記第1の状態にする、
ことを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の鞍乗型車両であって、
前記アイドルストップ制御手段は、前記報知手段による前記報知の後、前記電源制御手段が前記電源状態を前記第1の状態にする条件が成立する前に前記変速機が前記インギヤからニュートラルに切り替えられた場合には、前記エンジンの自動停止を終了する、
ことを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項に記載の鞍乗型車両であって、
前記エンジンと前記変速機との間の動力伝達を遮断可能なクラッチをさらに備え、
前記アイドルストップ制御手段は、前記報知手段による前記報知の後、前記電源制御手段が前記電源状態を前記第1の状態にする条件が成立する前に前記クラッチが開放された場合には、前記エンジンの自動停止を終了する、
ことを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項に記載の鞍乗型車両であって、
前記第1の状態は、前記鞍乗型車両のイグニッション電源がオフの状態である、
ことを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項7】
請求項1に記載の鞍乗型車両であって、
前記アイドルストップ制御手段は、前記変速機がニュートラルでの前記エンジンの自動停止中に、前記バッテリ電圧が第3の閾値以下となった場合には、前記エンジンの自動停止を終了する、
ことを特徴とする鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
鞍乗型車両において、所定の条件が満たされると車両のエンジンを自動停止する一方、このエンジンの自動停止中に発進操作が検知されるとエンジンを再始動するアイドルストップ制御が知られている。一般に、アイドルストップ制御によるエンジンの停止中には、各種の電気負荷への電力供給が継続されるためバッテリ電圧が低下する。そのため、エンジンを停止する際には、エンジンの再始動のためのバッテリ電圧を確保しておく必要がある。特許文献1では、無段変速式の車両において、このバッテリ電圧の低下によりエンジンの再始動ができなくなることを防ぐため、バッテリの充電状態を検知し、所定の条件のもとで警告を発したり、エンジンを再始動したりすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、マニュアル式の変速機を搭載した車両においてアイドルストップ制御を行う場合、変速機のギヤポジションがインギヤの状態でエンジンを自動停止することが考えられる。インギヤ状態でエンジンが自動停止している状態で、上記従来技術のようにエンジンを再始動させると、ライダの操作状態によってはライダの意図しない車両の動作が生じる恐れがある。
【0005】
本発明は、アイドルストップ制御を行う車両において、ライダの意図しない車両の動作を抑制しつつ、エンジンの再始動に必要なバッテリ電圧を確保しやすくする技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
エンジンと、
前記エンジンの回転を変速して駆動輪に伝達するマニュアル式の変速機と、
アイドルストップ条件が成立すると前記エンジンを自動停止するアイドルストップ制御を行うアイドルストップ制御手段と、
前記エンジンの始動に必要な電力を蓄電するバッテリと、を備えた鞍乗型車両であって、
前記変速機がインギヤでの前記エンジンの自動停止中に、前記バッテリのバッテリ電圧が第1の閾値以下となった場合に、ライダに対して前記エンジンの再始動操作を促す報知を行う報知手段と、
前記報知の後に、前記エンジンの再始動操作が確認されなかったことを少なくとも条件として、前記鞍乗型車両の電源状態を、前記報知が行われたときよりも消費電力の低い第1の状態にする電源制御手段と、を備える、
ことを特徴とする鞍乗型車両が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ライダの意図しない車両の動作を抑制しつつ、エンジンの再始動に必要なバッテリ電圧を確保しやすくすることができる。
【0008】
本発明のその他の特徴及び利点は、添付図面を参照とした以下の説明により明らかになるであろう。なお、添付図面においては、同じ若しくは同様の構成には、同じ参照番号を付す。
【図面の簡単な説明】
【0009】
添付図面は明細書に含まれ、その一部を構成し、本発明の実施の形態を示し、その記述と共に本発明の原理を説明するために用いられる。
【
図3】
図1の鞍乗型車両のハードウェア構成の一例を示す図。
【
図4】アイドルストップECUが行う処理の例を示すフローチャート。
【
図5】アイドルストップECUが行う処理の例を示すフローチャート。
【
図6】アイドルストップECUが行う処理の例を示すフローチャート。
【
図7】電源制御ECUが行う処理の例を示すフローチャート。
【
図8】アイドルストップECUが行う処理の例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴は任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
<自動二輪車の概要>
図1は、鞍乗型車両10の左側面図、
図2は、鞍乗型車両10の上面図である。なお、発明の理解を容易にするために、特に指示のない限り、
図1及び
図2に示す矢印方向に従って、前後、上下、及び左右の方向を説明する。
【0012】
鞍乗型車両10は、ダブルクレードル型の車体フレーム12を有する。この車体フレーム12は、ヘッドパイプ14と、左右一対のメインフレーム16と、ダウンフレーム18とを有する。左右一対のメインフレーム16は、ヘッドパイプ14から左右に分岐して緩やかに後ろ下がりで後方に延びた後、湾曲部16aを介して下方に延びている。ダウンフレーム18は、ヘッドパイプ14から左右に分岐してメインフレーム16の下方を、後ろ斜め下方に延びた後、湾曲部18aを介して略水平に後方に延び、メインフレーム16の後端部に接続される。
【0013】
車体フレーム12は、更に、左右一対のシートフレーム20と、左右一対のピボットプレート22と、左右一対の補強ステー24とを有する。左右一対のシートフレーム20は、左右一対のメインフレーム16の湾曲部16a近傍から後方にやや後ろ上がりに延びている。左右一対のピボットプレート22は、メインフレーム16の後端部付近に配置される。左右一対の補強ステー24は、メインフレーム16のピボットプレート22が設けられている付近から斜め後ろ上がりに延びてシートフレーム20に接続される。左右一対のピボットプレート22には、ピボット26が設けられている。
【0014】
左右一対のフロントフォーク28は、ヘッドパイプ14によって回転自在に軸支され、左右一対のフロントフォーク28の上端には、トップブリッジ30aを介して、操舵用のハンドルバー32が取り付けられている。
【0015】
トップブリッジ30aには、スピードメータ等を有するメータ部34が取り付けられている。ヘッドパイプ14及びボトムブリッジ30bの前方には、鞍乗型車両10の前方を照射するヘッドライト36と、左右一対のフロントウインカ37が設けられている。前輪WFは、左右一対のフロントフォーク28によって回転自在に軸支され、前輪WFの上部には、フロントフェンダ38が設けられている。
【0016】
メインフレーム16とダウンフレーム18との間には、エンジン40及びマニュアル変速機42が設けられ、エンジン40の上方であって、メインフレーム16の前側上方には、燃料タンク44が取り付けられている。エンジン40には、排気管46が取り付けられ、排気管46にはマフラー48が接続されている。オイルクーラ50は、エンジン40の前方であってダウンフレーム18の前側に設けられ、スロットルボディ52及びエアクリーナ54は、エンジン40の後方に設けられている。
【0017】
左右一対のピボットプレート22には、ピボット26を介してスイングアーム56が略上下方向に揺動自在に軸支され、スイングアーム56の後端部上側とシートフレーム20との間には、リアクッション58が介装されている。スイングアーム56の後端には、駆動輪である後輪WRが回転可能に軸支されている。エンジン40の動力は、チェーン60を介して後輪WRに伝達される。左右一対のピボットプレート22には、後方に延びる左右一対のステップホルダ62が固定されており、左右一対のステップホルダ62の前部と後部には、運転者用、同乗者用のステップ64、66が左右に取り付けられている。
【0018】
燃料タンク44の後方且つシートフレーム20の上部には、運転者及び同乗者が着座する(跨る)ためのシート68が取り付けられており、シート68は、運転者が乗車する運転者用シート68aと、同乗者が乗車する同乗者用シート68bからなるタンデムシートである。シートフレーム20の後部には、同乗者が把持するグラブバー70、及び、リアウインカ72が取り付けられている。シートフレーム20の後方にはリアフェンダ74が設けられており、リアフェンダ74には、テールランプ76が取り付けられている。
【0019】
図2に示すように、ハンドルバー32の右端側には、ハンドルバー32に対して回動可能な加速を指示するスロットルグリップ80が設けられている。ハンドルバー32には、スロットルグリップ80の前方に、鞍乗型車両10の前輪に制動力を与えるための前輪制動用のブレーキレバー(ブレーキ操作子)82が設けられている。運転者がブレーキレバー82を右手で操作することで、前輪WFに設けられた図示しないブレーキ装置が作動し、前輪WFに制動力が与えられる。
【0020】
右側のステップ64の前方には、鞍乗型車両10の後輪に制動力を与えるための後輪制動用のフットブレーキペダル(ブレーキ操作子)84が設けられている。運転者が右側のステップ64に右足を置いて、フットブレーキペダル84を右足で操作することで、後輪WRに設けられた図示しないブレーキ装置が作動し、後輪WRに制動力が与えられる。
【0021】
また、ハンドルバー32には、ハンドルバー32の左端側の前方にクラッチレバー86が設けられている。このクラッチレバー86は、エンジン40の駆動力のマニュアル変速機42への伝達を遮断するクラッチ43(
図3参照)を作動させるためのものである。左側のステップ64の前方には、マニュアル変速機42の変速比の異なる変速ギヤを選択的に切り換えるためのシフトペダル88が設けられている。運転者が左側のステップ64に左足を置いて、ギアチェンジペダル88を左足で操作することで、マニュアル変速機42の変速ギヤが切り換わる。
【0022】
<ハードウェア構成>
図3は、鞍乗型車両10のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図3では、後述するアイドルストップ制御の処理例に必要な構成要素を中心に示している。
【0023】
制御ユニット100は、電源制御ECU(Electronic Control Unit)101及びアイドルストップECU102を含む。各ECUは、CPUに代表されるプロセッサ、半導体メモリ等の記憶デバイス、外部デバイスとのインタフェース等を含む。記憶デバイスにはプロセッサが実行するプログラムやプロセッサが処理に使用するデータ等が格納される。各ECUはプロセッサ、記憶デバイスおよびインタフェース等を複数備えていてもよい。また、各ECUは、CAN(Controller Area Network)等の不図示のネットワークを介して相互に接続し、データの授受を行うことができる。
図3では、後述す
る処理例に関係するECUを示している。しかしながら、制御ユニット100が備えるECUの数や、各ECUが担当する機能については適宜設計可能であり、本実施形態よりも細分化したり、あるいは、統合したりすることが可能である。
【0024】
電源制御ECU101は、鞍乗型車両10の電源状態を制御する。本実施形態の鞍乗型車両10では、キー操作或いはボタンの押下といったライダの操作によって電源状態が変化し得るが、後述する処理例で示すように、電源制御ECU101によっても鞍乗型車両10の電源状態を制御可能である。本実施形態では、鞍乗型車両10の電源状態は、イグニッション電源及びアクセサリ電源の両方がオフである電源オフ状態、アクセサリ電源のみがオンであるアクセサリオン状態及びこれらの両方がオンである電源オン状態の間で遷移する。しかしながら、鞍乗型車両10の電源状態の態様はこれに限られない。例えば、イグニッション電源のみがオンである状態や、イグニッション電源又はアクセサリ電源が複数系統設けられ、その少なくとも一部がオンである状態等も鞍乗型車両10の電源状態に含まれ得る。電源制御ECU101は、例えばIG(イグニッション)リレー94又は不図示のACC(アクセサリ)リレーのオンオフを切り替えることにより、鞍乗型車両10の電源状態を制御する。
【0025】
アイドルストップECU102は、アイドルストップ制御を実行する。詳しくは後述するが、アイドルストップECU102は、所定のアイドルストップ条件が成立するとエンジン40を自動停止する。また、アイドルストップECU102は、所定のアイドルストップ終了条件が成立すると、スタータモータ92により自動停止しているエンジン40を再始動する。
【0026】
バッテリ90は、鞍乗型車両10の各種電装品の動作に必要な電力を蓄電し、供給する。例えば、バッテリ90は、走行するために必要な走行系の電装品に電力を供給する。走行系の電装品は、例えば、各ECU、エンジン40の始動或いは駆動に用いられるスタータモータ92や点火プラグ等の各種電装品、ヘッドライト36等の灯火装置、車両状態をライダに知らせる各種計器等を含み得る。また例えば、バッテリ90は、走行以外の目的で用いられる非走行系の電装品にも電力を供給する。非走行系の電装品は、例えば、オーディオやグリップを温めるグリップヒータ、シールド角度を電動で調整可能な電動ウインドシールド(いずれも不図示)等を含み得る。
【0027】
鞍乗型車両10は、車両自体或いは周辺環境の状態を検出する各種のセンサを含み得る。本実施形態では、鞍乗型車両10は、スロットル開度センサ104、クラッチ検出センサ105、車速センサ106、ギヤポジションセンサ107、バッテリ電圧センサ108及びブレーキセンサ109を含む。スロットル開度センサ104は、ライダのスロットル操作によるスロットル開度を検出する。クラッチ検出センサ105は、クラッチ43の接続状態を検出する。車速センサ106は、鞍乗型車両10の車速を検出するセンサであり、本実施形態では変速ギヤ列421内の所定のギヤの回転数から車速を検出する。ギヤポジションセンサ107は、マニュアル変速機42のギヤポジションを検出するセンサであり、本実施形態ではシフトドラム422の回転角度に基づいてライダが選択するギヤ段(例:1速~4速及びニュートラルのいずれか)を検出する。バッテリ電圧センサ108は、バッテリ90のバッテリ電圧を検出する。なお、バッテリ電圧センサ108は、電源制御ECU101又はアイドルストップECU102に内蔵されていてもよい。ブレーキセンサ109は、ライダのブレーキレバー82又はフットブレーキペダル84の操作状態を検出する。
【0028】
報知部96は、ライダに対して所定の情報を報知する。本実施形態では、報知部96は、アイドルストップ制御によるエンジン40の自動停止中に所定の条件が満たされると、ライダに対してエンジン40の再始動操作を促す報知を行う。一例として、報知部96は、アイドルストップ制御の実行状態を報知するインジケータであり、エンジン40の自動停止中に通常は点灯する一方で、再始動操作を促す際には点滅する等、状況に応じて表示態様を変化させる。
【0029】
<処理例>
(アイドルストップ制御)
図4は、アイドルストップECU102が行う処理の例を示すフローチャートである。具体的には、
図4は、アイドルストップECU102が所定の条件に基づきエンジン40を自動停止する際の処理を示している。本実施形態では、アイドルストップECU102は、マニュアル変速機42がインギヤ(1速)の状態でもエンジン40を自動停止するインギヤアイドルストップ制御を行う。
【0030】
本フローチャートは、例えば、アイドルストップ制御が有効であり、かつ、エンジン40が自動停止していない場合に周期的に実行される。なお、以下の説明では、フローチャートの各ステップについて単にS101等と表記する。
【0031】
S101において、アイドルストップECU102は、各種センサのセンサ値を取得する。ここでは、アイドルストップECU102は、スロットル開度センサ104、クラッチ検出センサ105、車速センサ106、ギヤポジションセンサ107及びブレーキセンサ109のセンサ値を取得する。
【0032】
S102において、アイドルストップECU102は、マニュアル変速機42の変速ギヤ列421のギヤポジションがニュートラル又は1速であればS103に進み、そうでなければS110に進む。アイドルストップECU102は、S101で取得したギヤポジションセンサ107の検出結果に基づいてギヤポジションを確認する。
【0033】
S103において、アイドルストップECU102は、クラッチ43が開放されていればS104に進み、そうでなければS110に進む。アイドルストップECU102は、S101で取得したクラッチ検出センサ105の検出結果に基づいてクラッチ43の接続状態を確認する。なお、ここでは、クラッチ43が開放されている状態は、いわゆる半クラッチの状態を含まず、クラッチ43により動力伝達が完全に遮断されている状態を指すものとする。
【0034】
S104において、アイドルストップECU102は、ブレーキ操作量が閾値以上であればS105に進み、そうでなければS110に進む。アイドルストップECU102は、S101で取得したブレーキセンサ109の検出結果に基づいてブレーキ操作量を確認する。ここでの閾値は適宜設定可能であるが、ライダの明確なエンジン40の停止意思を確認する観点から、ライダがブレーキレバー82を強く握ったことを確認できる値に設定され得る。例えば、ライダによるブレーキレバー82の操作量が、ブレーキレバー82のストロークの5~9割以上である場合にブレーキ操作量が閾値以上となるように設定され得る。
【0035】
S105において、アイドルストップECU102は、スロットルが閉じていればS106に進み、そうでなければS110に進む。アイドルストップECU102は、S101で取得したスロットル開度センサ104の検出結果に基づいてスロットル開度を確認する。
【0036】
S106において、アイドルストップECU102は、鞍乗型車両10の車速が閾値以下であればS107に進み、そうでなければS110に進む。アイドルストップECU102は、S101で取得した車速センサ106の検出結果に基づいて鞍乗型車両10の車速を確認する。車速の閾値は、例えば0~5km/hの間の値に設定され得る。すなわち、車速の条件は、鞍乗型車両10が完全に停車していることであってもよいし、鞍乗型車両10が所定の車速以下であることであってもよい。
【0037】
S107において、アイドルストップECU102は、タイマをスタートさせる。なお、前回以前の本フローチャートの実行時にすでにタイマがスタートしている場合は、タイマによる計測を継続する。
【0038】
S108において、アイドルストップECU102は、タイマがスタートしてから所定時間が経過していればS109に進み、そうでなければフローチャートを終了する。所定時間は、例えば1~5秒の間の値に設定されてもよい。
【0039】
S109において、アイドルストップECU102は、エンジン40を自動停止してフローチャートを終了する。なお、アイドルストップECU102は、エンジン40の自動停止に加えて、アイドルストップ制御によりエンジン40が自動停止したことを報知部96に報知させてもよい。具体的には、報知部96がインジケータである場合、アイドルストップECU102は報知部96を点灯させてもよい。
【0040】
S110において、アイドルストップECU102は、タイマをリセットしてフローチャートを終了する。
【0041】
本フローチャートによれば、アイドルストップ条件が成立した状態が所定時間継続した場合(S102~S108)に、エンジン40が自動停止する(S109)。したがって、ライダの明確なエンジン40の停止意思を反映してエンジン40を停止することができる。
【0042】
なお、ここでは、アイドルストップ条件は、
(1)ギヤポジションがニュートラル又は1速
(2)クラッチが開放されている(クラッチレバー86が握られている)
(3)ブレーキ操作量閾値以上
(4)スロットルが開状態
(5)車速が閾値以下
の(1)~(5)の全てが満たされることに対応する。しかしながら、アイドルストップ条件には、エンジン40の冷却水温等が閾値以上等、他の条件が含まれてもよい。また、
図4の例ではギヤポジションがニュートラルでも1速でもその他の条件は同じであるが、ニュートラルの場合と1速の場合とで他の条件が異なっていてもよい。例えば、ギヤポジションがニュートラルの場合は、クラッチ43が接続していてもエンジン40の駆動力が後輪WRに伝達されないので、上記(2)をアイドルストップ条件から除いてもよい。すなわち、アイドルストップECU102は、S102でギヤポジションがニュートラルであることを確認した場合はS104に進んでもよい。また、本実施形態では、ギヤポジションがニュートラル又は1速であることをアイドルストップ条件の一つとしているが、これに代えてギヤポジションが1速であることをアイドルストップ条件の一つとしてもよい。すなわち、マニュアル変速機42がインギヤ(1速)の場合にのみエンジン40の自動停止が行われてもよい。
【0043】
なお、
図4のフローチャートに基づき一旦エンジン40が自動停止した後は、(1)~(5)の全ての条件が満たされた状態が継続しなくても、
図5で説明する再始動の条件が成立するまではエンジンの自動停止状態が継続し得る。例えば、エンジン40が自動停止した後は、ライダが握っていたクラッチレバー86を離してもエンジン40の自動停止が継続し得る。
【0044】
図5は、アイドルストップECU102が行う処理の例を示すフローチャートである。具体的には、
図5は、アイドルストップECU102が所定の条件に基づき自動停止したエンジン40を再始動する際の処理を示している。本フローチャートは、例えば、
図4のフローチャートに基づきエンジン40が自動停止した場合に周期的に実行される。
【0045】
S201において、アイドルストップECU102は、各種センサのセンサ値を取得する。ここでは、アイドルストップECU102は、スロットル開度センサ104、クラッチ検出センサ105、及びギヤポジションセンサ107のセンサ値を取得する。
【0046】
S202において、アイドルストップECU102は、マニュアル変速機42の変速ギヤ列421のギヤポジションがニュートラル又は1速であればS203に進み、そうでなければ本フローチャートを終了する。アイドルストップECU102は、S201で取得したギヤポジションセンサ107の検出結果に基づいてギヤポジションを確認する。
【0047】
S203において、アイドルストップECU102は、クラッチ43が開放されていればS204に進み、そうでなければ本フローチャートを終了する。アイドルストップECU102は、S201で取得したクラッチ検出センサ105の検出結果に基づいてクラッチ43の接続状態を確認する。なお、クラッチ43が開放されているかどうかの判断は、
図4のS103と同様であり得る。
【0048】
S204において、アイドルストップECU102は、スロットルが開いていればS205に進み、そうでなければフローチャートを終了する。アイドルストップECU102は、S201で取得したギヤポジションセンサ107の検出結果に基づいてスロットル開度を確認する。
【0049】
S205において、アイドルストップECU102は、エンジン40を再始動する。アイドルストップECU102は、スタータモータ92により自動停止しているエンジン40を再始動する。
【0050】
なお、エンジン40の再始動条件は適宜設定可能である。例えば、スロットルの開度は条件とせずに、ギヤポジションがニュートラル又は1速であり、かつ、エンジン40の自動停止後に離されたクラッチレバー86が再度握られた場合に、エンジン40を再始動してもよい。
【0051】
(バッテリ電圧に基づく報知制御及び電源オフ制御)
ところで、エンジン40の自動停止中には、ヘッドライト36やブレーキランプ(不図示)、その他の電装品の電力消費によりバッテリ90のバッテリ電圧Vが低下する。したがって、自動停止中には、バッテリ電圧Vがスタータモータ92によりエンジン40を再始動するのに必要な電圧(以下、再始動電圧V0とする)を下回らないようにする必要がある。そのための方法として、例えば自動停止中にバッテリ90の再始動電圧V0まで下がる前にエンジン40を再始動することが考えられる。一方で、本実施形態の鞍乗型車両10のように、インギヤ状態でもエンジン40を自動停止する場合にライダの意思と関係なくエンジン40が再始動すると、ライダの意図しない発進動作に繋がる恐れがある。そこで、本実施形態では、鞍乗型車両10の制御ユニット100は、以下で説明する報知制御及び電源制御を行う。
【0052】
図6は、アイドルストップECU102が行う処理の例を示すフローチャートである。具体的には、
図6は、アイドルストップECU102がエンジン40の自動停止中のバッテリ電圧Vに応じてライダに報知する際の処理を示している。本フローチャートは、例えば、
図4のフローチャートに基づきエンジン40が自動停止した場合に、
図5のフローチャートと並行して周期的に実行される。
【0053】
S301において、アイドルストップECU102は、センサ値を取得する。ここでは、アイドルストップECU102は、バッテリ電圧センサ108のセンサ値を取得する。
【0054】
S302において、アイドルストップECU102は、バッテリ電圧Vが閾値Vt1以下であればS303に進み、そうでなければフローチャートを終了する。アイドルストップECU102は、S301で取得したバッテリ電圧Vと、予め設定された閾値Vt1とを比較する。閾値Vt1は、再始動電圧V0よりも高い値に設定される。
【0055】
S303において、アイドルストップECU102は、ライダに対してエンジン40の再始動操作を促す報知を行う。具体的には、報知部96がインジケータであり、エンジン40の自動停止中に報知部96が点灯している場合、アイドルストップECU102は報知部96を点灯から点滅に切り替えてもよい。その他、報知部96がスピーカである場合には警報音や音声メッセージにより再始動操作を促す報知が行われてもよいし、報知部96がテキストを表示可能な表示部である場合にはテキストメッセージにより再始動操作を促す報知が行われてもよい。
【0056】
なお、ここでは、マニュアル変速機42のギヤポジションがインギヤ又はニュートラルのいずれの場合でも報知部96による報知が行われる例を説明したが、ニュートラルの場合には報知部96による報知を行わずにエンジン40を再始動させてもよい。これにより、インギヤの場合にエンジン40が再始動することによる鞍乗型車両10の意図しない発進を抑制しつつ、ニュートラルの場合にはエンジン40を再始動させてバッテリ電圧Vが再始動電圧V0を下回ることを抑制することができる。いずれにしても、マニュアル変速機42がインギヤでのエンジン40の自動停止中にバッテリ電圧Vが閾値Vt1以下となった場合にライダに対してエンジン40の再始動を促す報知が行われればよい。
【0057】
図7は、電源制御ECU101が行う処理の例を示すフローチャートである。具体的には、
図7は、電源制御ECU101がエンジン40の自動停止中に鞍乗型車両10の電源状態を制御する際の処理を示している。本フローチャートは、例えば、
図4のフローチャートに基づきエンジン40が自動停止した場合に、
図5及び
図6のフローチャートと並行して周期的に実行される。
【0058】
S401において、電源制御ECU101は、各種情報を取得する。例えば、電源制御ECU101は、各種センサのセンサ値や、アイドルストップECU102によりライダに対する報知が行われたか等の情報を取得する。
【0059】
S402において、電源制御ECU101は、アイドルストップECU102によりS303の報知が行われていればS403に進み、そうでなければフローチャートを終了する。例えば、アイドルストップECU102は、S303でライダに対して報知を行った場合に、その旨の情報をアイドルストップECU102の記憶デバイスに記憶しておく。そして、電源制御ECU101は、CAN等のネットワークを介してライダに対する報知の有無についての情報をアイドルストップECU102から取得する。
【0060】
S403において、電源制御ECU101は、ライダにより再始動動作が行われたか否かを確認し、行われてい
なければS404に進み、そうでなければフローチャートを終了する。再始動操作は例えば、
図5のフローチャートにおいてS205のステップが行われるような操作、すなわちクラッチレバー86を握った状態でのスロットル操作等である。
【0061】
S404において電源制御ECU101は、所定の条件が成立していればS405に進み、そうでなければフローチャートを終了する。例えば、所定の条件は、バッテリ電圧Vが再始動電圧V0以上、かつ、閾値Vt1よりも低い閾値Vt2まで低下したことであってもよい。この場合、再始動に必要なバッテリ電圧Vをより確実に確保することができる。また例えば、所定の条件は、S303における報知から所定時間経過したことであってもよい。この場合、条件の判定を簡易な処理で行うことができる。
【0062】
S405で、電源制御ECU101は、鞍乗型車両10の電源状態を消費電力のより低い状態に切り替える。これにより、バッテリ電圧Vの低下が抑制されるので、再始動電圧V0以上のバッテリ電圧Vを確保しやすくすることができる。また、再始動電圧V0以上のバッテリ電圧Vの確保にあたり、マニュアル変速機42がインギヤの状態でエンジン40が再始動することもないので、ライダの意図しない鞍乗型車両10の動作を抑制することができる。
【0063】
例えば、電源制御ECU101は、鞍乗型車両10の電源状態を、イグニッション電源及びアクセサリ電源がオンである電源オン状態から、アクセサリ電源のみがオンであるアクセサリオン状態に切り替えてもよい。また例えば、電源制御ECU101は、鞍乗型車両10の電源状態を、イグニッション電源及びアクセサリ電源がオンである電源オン状態から、これらの両方がオフである電源オフ状態に切り替えてもよい。電源状態が切り替えられた場合、ライダは、エンジン40の再始動が必要になったタイミングで、キー操作やボタンの押下等により手動でエンジン40を再始動する。これにより、電源状態の切り替え後、エンジン40の再始動が必要なるまでの間のバッテリ電圧Vの低下が抑制される。
【0064】
<変形例>
図8は、アイドルストップECU102が行う処理の例を示すフローチャートである。
図8は、
図5のフローチャートの変化例であり、アイドルストップECU102が所定の条件に基づき自動停止したエンジン40を再始動する際の処理を示している。詳しくは、
図8のフローチャートでは、
図6のS303の報知が行われた場合に、そうでない場合とエンジン40の再始動の条件を変えている。本フローチャートは、例えば、
図4のフローチャートに基づきエンジン40が自動停止した場合に周期的に実行される。
【0065】
S501において、アイドルストップECU102は、センサ値を取得する。例えば、アイドルストップECU102は、スロットル開度センサ104、クラッチ検出センサ105、及びギヤポジションセンサ107のセンサ値を取得する。
【0066】
S502において、アイドルストップECU102は、S303の報知が行われていればS503に進み、そうでなければS507に進む。例えば、アイドルストップECU102のプロセッサは、S303の報知を行った旨の情報がアイドルストップECU102の記憶デバイスに記憶されているかどうかを確認する。
【0067】
S503~S505は、S303の報知が行われていない場合の処理であり、S202~S204と同様の処理である。また、S506はS205と同様の処理である。よって、各ステップの説明は省略する。アイドルストップECU102は、マニュアル変速機42がニュートラル又は1速であり、クラッチ43が開放されており、スロットルが開状態の場合にはS506でエンジン40が再始動され、そうでない場合はフローチャートを終了する。
【0068】
S507~S508は、S303の報知が行われた場合の処理である。S507において、アイドルストップECU102は、マニュアル変速機42のギヤポジションがニュートラルであればS506に進みエンジン40を再始動し、1速であればS508に進み、それ以外であればフローチャートを終了する。これにより、例えば、インギヤ(1速)での自動停止中にS303の報知が行われ、ライダによりマニュアル変速機42のギヤポジションがインギヤ(1速)からニュートラルに切り替えられたような場合にエンジン40が再始動される。
【0069】
S508において、アイドルストップECU102は、クラッチ43が開放されている場合はS506に進みエンジン40を再始動し、そうでない場合はフローチャートを終了する。これにより、例えば、インギヤ(1速)での自動停止中にS303の報知が行われ、ライダによりクラッチレバー86が握られてクラッチ43が開放されたような場合にエンジン40が再始動される。
【0070】
このように、本変形例では、S303の報知が行われた場合に、ライダがエンジン40の再始動を許容するような操作、換言すればエンジン40が再始動しても鞍乗型車両10の発進等が発生しないようにする操作を行った場合にエンジン40が再始動する。これにより、鞍乗型車両10の利便性を向上することができる。よって、通常の自動停止からの再始動においてはスロットル開であることを条件としているような場合であっても、S303の報知があった場合には再始動の条件を緩和し、バッテリ電圧Vの低下を抑制することができる。
【0071】
その他の変形例として、電源状態の切り替えに関する閾値Vt2を、気温等の環境要因に応じて変化させてもよい。例えば、バッテリ電圧Vが低下しやすい低温条件下において閾値Vt2が相対的に高くなるように、閾値Vt2を設定してもよい。また、再始動を促す報知に関する閾値Vt1についても、気温に応じて変更してもよい。その他、バッテリ90の使用期間等、バッテリ90の性能に影響する要因に基づいて閾値Vt1及び閾値Vt2が設定されてもよい。
【0072】
また、報知部96による報知の態様も適宜変更可能である。例えば、インジケータの色や点滅の仕方等の状態をバッテリ電圧Vや報知からの経過時間に応じて変えてもよい。一例として、バッテリ電圧Vが閾値Vt2に近づくほどインジケータの点滅間隔を短くしてもよい。
【0073】
<実施形態のまとめ>
上記実施形態は、以下の鞍乗型車両を少なくとも開示する。
【0074】
1.上記実施形態の鞍乗型車両(例えば10)は、
エンジン(例えば40)と、
前記エンジンの回転を変速して駆動輪(例えばWR)に伝達するマニュアル式の変速機42(例えば)と、
アイドルストップ条件が成立すると前記エンジンを自動停止するアイドルストップ制御を行うアイドルストップ制御手段(例えば102)と、
前記エンジンの始動に必要な電力を蓄電するバッテリ(例えば90)と、を備えた鞍乗型車両であって、
前記変速機がインギヤでの前記エンジンの自動停止中に、前記バッテリのバッテリ電圧が第1の閾値以下となった場合に、ライダに対して前記エンジンの再始動操作を促す報知を行う報知手段(例えば96,S303)と、
前記報知の後に、前記エンジンの再始動操作が確認されなかったことを少なくとも条件として、前記鞍乗型車両の電源状態を、前記報知が行われたときよりも消費電力の低い第1の状態にする電源制御手段(例えば102,S405)と、を備える。
【0075】
この実施形態によれば、バッテリ電圧が第1の閾値以下になった場合にライダに対してエンジンの再始動操作を促す報知をし、報知をしたにも関わらず再始動操作がない場合には車両の電源状態を第1の状態にする。よって、ライダの意図しない車両の動作を抑制しつつ、エンジンの再始動に必要なバッテリ電圧を確保しやすくすることができる。
【0076】
2.上記実施形態によれば、
前記電源制御手段は、前記バッテリ電圧が前記エンジンの始動に必要な電圧値以上かつ前記第1の閾値よりも低い第2の閾値まで低下することも条件として、前記電源状態を前記第1の状態にする(例えばS404,S405)。
【0077】
この実施形態によれば、バッテリ電圧に基づき電源状態を切り替えるので、エンジン再始動のためのバッテリ電圧をより確保しやすくすることができる。
【0078】
3.上記実施形態によれば、
前記電源制御手段は、前記報知から所定の時間が経過することも条件として、前記電源状態を前記第1の状態にする(例えばS404,S405)。
【0079】
この実施形態によれば、電源状態の切り替えの判定を簡易な処理で行うことができる。
【0080】
4.上記実施形態によれば、
前記アイドルストップ制御手段は、前記報知手段による前記報知の後、前記電源制御手段が前記電源状態を前記第1の状態にする条件が成立する前に前記変速機が前記インギヤからニュートラルに切り替えられた場合には、前記エンジンの自動停止を終了する(例えばS507)。
【0081】
この実施形態によれば、ライダがエンジンの再始動を許容するような操作を行った場合にエンジンの自動停止が終了するので、車両の利便性を向上することができる。
【0082】
5.上記実施形態によれば、
前記エンジンと前記変速機との間の動力伝達を遮断可能なクラッチをさらに備え、
前記アイドルストップ制御手段は、前記報知手段による前記報知の後、前記電源制御手段が前記電源状態を前記第1の状態にする条件が成立する前に前記クラッチが開放された場合には、前記エンジンの自動停止を終了する(例えばS506)。
【0083】
この実施形態によれば、ライダがエンジンの再始動を許容するような操作を行った場合にエンジンの自動停止が終了するので、車両の利便性を向上することができる。
【0084】
6.上記実施形態によれば、
前記第1の状態は、前記鞍乗型車両のイグニッション電源がオフの状態である。
【0085】
この実施形態によれば、バッテリ電圧の低下を抑制でき、エンジンの再始動に必要なバッテリ電圧を確保しやすくすることができる。
【0086】
7.上記実施形態によれば、
前記アイドルストップ制御手段は、前記変速機がニュートラルでの前記エンジンの自動停止中に、前記バッテリ電圧が第3の閾値以下となった場合には、前記エンジンの自動停止を終了する。
【0087】
この実施形態によれば、エンジンを再始動してもライダの意図しない発進等が発生しない場合にエンジンを再始動することで、バッテリ電圧の低下を抑制することができる。
【0088】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0089】
10:鞍乗型車両、40:エンジン、42:マニュアル変速機、90:バッテリ、101:電源制御ECU、102:アイドルストップECU