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特許7590597ピニオン付きモータ及びピニオン付きモータを備える歯車機構
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】ピニオン付きモータ及びピニオン付きモータを備える歯車機構
(51)【国際特許分類】
   F16H 55/17 20060101AFI20241119BHJP
【FI】
F16H55/17 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023559351
(86)(22)【出願日】2021-11-12
(86)【国際出願番号】 JP2021041760
(87)【国際公開番号】W WO2023084743
(87)【国際公開日】2023-05-19
【審査請求日】2024-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】有谷 拓也
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-102221(JP,A)
【文献】実開昭60-129542(JP,U)
【文献】特開2002-021984(JP,A)
【文献】特開平11-247875(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 55/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部にピニオンが設けられたシャフトを有するピニオン付きモータであって、
前記ピニオンは、
前記シャフトに装着される基部と、
前記シャフトの外径以下の外径を有し、歯車として機能する完全歯形部と、
前記基部と前記完全歯形部との間に設けられ、前記シャフトの軸方向における長さが前記完全歯形部の前記軸方向における長さ以下で、歯車として機能しない不完全歯形部と、を有し、
前記基部は、その外周面に、前記ピニオンに設けられた挿通孔を介して前記シャフトの先端面にボルトをねじ込む際に把持される平面部を有する、ピニオン付きモータ。
【請求項2】
前記不完全歯形部は、前記完全歯形部よりも小径のくびれ形状を有する、請求項1に記載のピニオン付きモータ。
【請求項3】
前記基部は、キーを介して、前記シャフトに一体回転可能に外挿される、請求項1又は2に記載のピニオン付きモータ。
【請求項4】
前記シャフトの先端部は、先端側に行くに従って小径となるテーパ状となっており、
前記基部に設けられた軸孔に前記シャフトの先端部が嵌め込まれて、前記シャフトの先端部はテーパ結合される、請求項1又は2に記載のピニオン付きモータ。
【請求項5】
前記基部の外周面には、軸受が装着されており、
前記軸受の外輪が中空状のケーシングの内面に固定されることで位置決めされる、請求項1から4のいずれかに記載のピニオン付きモータ。
【請求項6】
前記モータの外形は、多角形であり、
テーパ結合する際に、前記完全歯形部の位相と前記モータの外形の位相とに基づいて、前記完全歯形部と前記モータの外形とは位置決めされる、請求項4に記載のピニオン付きモータ。
【請求項7】
請求項1からのいずれかに記載のピニオン付きモータを備える歯車機構であって、
前記ピニオン付きモータは、前記完全歯形部と噛み合う相手側の歯車と前記シャフトとの軸間距離が所定距離となるように位置決めした状態で、ケーシングに固定される、ピニオン付きモータを備える歯車機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピニオン付きモータ及びこれを備える歯車機構に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、モータとともに使用される減速装置が開示されている。この減速装置では、入力軸を介して、モータの動力が入力される。入力軸は、ピニオンと、モータ軸挿入穴を有するモータ側端部と、ピニオンとモータ側端部との間の部分(歯車として機能しない不完全歯形部)とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-102221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
入力軸は、モータの動力を減速装置に入力するために、モータ軸に取り付けられる部材であるので、軸方向の長さをあまり長くすることができない。また、モータ軸の外径よりもピニオンの外径が小さい場合、完全歯形部とモータ側端部との間の段付き部とピニオンの切り上げ部分との間の長さが短いと、入力軸の強度が低下してしまう。従って、従来、歯車として機能しない不完全歯形部の軸方向の長さは、歯車として機能するピニオンの軸方向の長さよりも長くなる。
【0005】
この場合、入力軸のモータ軸からの突出長さが長くなるので、入力軸が取り付けられたモータの大型化を招く。これにより、モータと減速装置とからなる機構において、モータの配置スペースが大きくなり、機構全体が大型化してしまう。そこで、入力軸の軸方向長さを短くするために、入力軸のピニオンをモータ軸の基端側にオフセットすることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、先端部にピニオンが設けられたシャフトを有するピニオン付きモータであって、前記ピニオンは、前記シャフトに装着される基部と、前記シャフトの外径以下の外径を有し、歯車として機能する完全歯形部と、前記基部と前記完全歯形部との間に設けられ、前記シャフトの軸方向における長さが前記完全歯形部の前記軸方向における長さ以下で、歯車として機能しない不完全歯形部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
一態様によれば、歯車として機能する完全歯形部を有するピニオンが設けられたシャフトを有するピニオン付きモータであって、ピニオンの軸方向の長さを短くするために、ピニオンの完全歯形部をシャフトの基端側にオフセットすることができるピニオン付きモータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明のピニオン付きモータの第1実施形態を示す左側面図であり、一部を断面にして示している。
図2】本発明のピニオン付きモータの第2実施形態を示す左側面図であり、一部を断面にして示している。
図3】本発明のピニオン付きモータの第3実施形態を示す左側面図であり、一部を断面にして示している。
図4】本発明のピニオン付きモータの第4実施形態を示す左側面図であり、一部を断面にして示している。
図5】本発明のピニオン付きモータの第5実施形態を示す左側面図であり、一部を断面にして示している。
図6】本発明のピニオン付きモータの第6実施形態を示す正面図である。
図7】本発明のピニオン付きモータの第7実施形態を示す平面図である。
図8A】本発明のピニオン付きモータを備える歯車機構の一実施形態を示す説明図であり、第1モータの取付部分を示している。
図8B図8Aの実施形態の歯車機構を示す説明図であり、第2モータの取付部分を示している。
図9】本発明のピニオン付きモータの第1変形例を示す側面視縦断面図であり、一部を拡大して示している。
図10】本発明のピニオン付きモータの第2変形例を示す側面視縦断面図であり、一部を拡大して示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の一態様に係るピニオン付きモータについて、図面を参照して説明する。図1に示すように、第1実施形態のピニオン付きモータ1は、モータ本体Mの先端側J12にピニオン2が設けられたシャフト3を有する。ピニオン2は、シャフト3に装着される基部4と、歯車として機能する完全歯形部5と、歯車として機能しない不完全歯形部6とを有する。ピニオン2は、軸方向J1に沿って延びる棒状であり、先端側J12が縮径されている。ピニオン2は、基部4からなる大径部と、不完全歯形部6及び完全歯形部5からなる小径部とを有する。
【0010】
基部4は、ピニオン2の基端側J11に位置している。基部4は、シャフト3の基端側J11である後方側に開口した円筒状である。すなわち、基部4は、後方側に開口した円形の内穴7を有している。この内穴7は、シャフト3の先端部が差し込まれる軸孔である。基部4の前壁には、基部4の内外を連通する円形の連通孔8が設けられている。
【0011】
完全歯形部5は、ピニオン2の先端側J12に位置している。完全歯形部5は、前後方向(軸方向J1)に開口した円筒状である。すなわち、完全歯形部5は、前後方向に開口した内穴9を有している。完全歯形部5の外周部には、複数の歯10が設けられている。このように、完全歯形部5は、歯車形状に形成されている。完全歯形部5の外径は、シャフト3の外径以下である。
【0012】
不完全歯形部6は、基部4と完全歯形部5との間に設けられている。不完全歯形部6は、前後方向(軸方向J1)に開口した円筒状である。すなわち、不完全歯形部6は、前後方向に開口した内穴11を有している。シャフト3の軸方向J1に沿う不完全歯形部6の長さ(不完全歯形部6の軸方向長さ)aは、完全歯形部5のシャフト3の軸方向J1における長さ(完全歯形部5の軸方向長さ)b以下である。なお、不完全歯形部6は、完全歯形部5に形成された歯形の切り上げ部を含む部分であり、完全な歯形が形成されていない。
【0013】
不完全歯形部6の内穴11と完全歯形部5の内穴9とは、連通している。不完全歯形部6の内穴11と基部4の内穴7とは、基部4の前壁に設けられた連通孔8を介して、連通している。従って、完全歯形部5の内穴9、不完全歯形部6の内穴11及び基部4の内穴7は、前後方向(軸方向J1)に連続している。これにより、ピニオン2の中央部には、前後方向に貫通する挿通孔12が設けられる。
【0014】
このような構成のピニオン2は、基部4の内穴7にシャフト3が差し込まれた状態で、完全歯形部5の内穴9及び不完全歯形部6の内穴11を介して、シャフト3の先端面に形成されたネジ孔13にボルト14がねじ込まれることで、シャフト3に結合される。これにより、ピニオン2は、シャフト3と一体回転可能に、シャフト3の先端部に取り付けられる。
【0015】
第1実施形態のピニオン付きモータ1の場合、従来とは逆に、不完全歯形部6の軸方向長さaが完全歯形部5の軸方向長さbよりも短い。これにより、ピニオン2の軸方向J1の長さを短くするために、従来よりも完全歯形部5をシャフト3の基端側J11にオフセットすることができる。従って、モータ1全体のサイズをコンパクト化することができる。
【0016】
次に、図2を用いて、本発明のピニオン付きモータの第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態で付した符号と同じ符号を有する構成部品は、その作用を同じにするので以下、説明を省略することがある。第2実施形態のピニオン付きモータ1Aは、ピニオン2の不完全歯形部6の構成が第1実施形態と異なる。
【0017】
ピニオン2は、小径部(不完全歯形部6及び完全歯形部5)の基端側J11である後側が縮径されている。これにより、不完全歯形部6の外径は、完全歯形部5の外径よりも小径である。このように、不完全歯形部6は、完全歯形部5よりも小径のくびれ形状を有する。
【0018】
第2実施形態のピニオン付きモータ1Aの場合、不完全歯形部6がくびれ形状に形成されている。従って、完全歯形部5に歯形を形成する際に、切り上げが不要になり、歯形の加工を容易に行うことができる。
【0019】
次に、図3を用いて、本発明のピニオン付きモータの第3実施形態について説明する。なお、第1実施形態で付した符号と同じ符号を有する構成部品は、その作用を同じにするので以下、説明を省略することがある。第3実施形態のピニオン付きモータ1Bは、ピニオン2のシャフト3への取付構造が第1実施形態と異なる。第3実施形態のピニオン付きモータ1Bでは、第2実施形態の場合と同様に、不完全歯形部6がくびれ形状に形成されている。
【0020】
第3実施形態のピニオン付きモータ1Bでは、第1実施形態の場合と同様に、ボルト14によってピニオン2がシャフト3に結合される。これに加えて、基部4の内周面とシャフト3の外周面との間には、キー15が設けられる。この場合、シャフト3の外周面には、軸方向J1に沿って、キー15の厚さ方向略半分が嵌め込まれるキー溝16が設けられている。一方、基部4の内周面には、軸方向J1に沿って、キー溝17が設けられている。このキー溝17は、基端側J11である後方側に貫通している。キー溝17には、シャフト3の外周面から突出するキー15が嵌め込まれる。このようにして、ピニオン2の基部4は、キー15を介して、シャフト3に一体回転可能に外挿される。これにより、ピニオン2は、シャフト3と一体回転可能である。
【0021】
第3実施形態のピニオン付きモータ1Bの場合、ピニオン2は、キー15を介して、シャフト3に一体回転可能に取り付けられる。従って、シャフト3に対するピニオン2の周方向の回転を確実に防止することができ、安定した動力伝達が可能である。また、モータ1Bとして、標準モータを用いることができる。
【0022】
次に、図4を用いて、本発明のピニオン付きモータの第4実施形態について説明する。なお、第1実施形態で付した符号と同じ符号を有する構成部品は、その作用を同じにするので以下、説明を省略することがある。第4実施形態のピニオン付きモータ1Cは、ピニオン2のシャフト3への取付構造が第1実施形態と異なる。第4実施形態のピニオン付きモータ1Cでは、第2実施形態の場合と同様に、不完全歯形部6がくびれ形状に形成されている。
【0023】
第4実施形態のピニオン付きモータ1Cでは、第1実施形態の場合と同様に、ボルト14によってピニオン2がシャフト3に結合される。これに加えて、ピニオン2は、シャフト3の先端部にテーパ結合される。そのため、シャフト3の先端部は、先端側J12に行くに従って小径となるテーパ状となっている。この場合、ピニオン2の基部4に設けられた軸孔7にシャフト3のテーパ状に形成された先端部が嵌め込まれることで、シャフト3の先端部がテーパ結合される。これにより、ピニオン2は、シャフト3と一体回転可能である。
【0024】
第4実施形態のピニオン付きモータ1Cの場合、ピニオン2は、シャフト3の先端部にテーパ結合される。従って、第3実施形態の場合と比較して、モータ1Cのシャフト3を短くすることができる。これにより、完全歯形部5をシャフト3の基端側J11にさらにオフセットすることができる。また、モータ1Cとして、標準モータを用いることができる。
【0025】
次に、図5を用いて、本発明のピニオン付きモータの第5実施形態について説明する。なお、第1実施形態で付した符号と同じ符号を有する構成部品は、その作用を同じにするので以下、説明を省略することがある。第5実施形態のピニオン付きモータ1Dは、ピニオン2の周囲の構成が第1実施形態と異なる。第5実施形態のピニオン付きモータ1Dでは、第2実施形態の場合と同様に、不完全歯形部6がくびれ形状に形成されている。
【0026】
図5に示すように、ピニオン2の基部4の外周面には、軸受18が装着される。具体的には、ピニオン2が軸受18を貫通した状態で、ピニオン2の基部4が軸受18の内輪19に嵌め込まれる。この場合、モータ1Dが収容される中空状の不図示のケーシングの内面に、軸受18の外輪20が固定される。
【0027】
第5実施形態のピニオン付きモータ1Dの場合、基部4に設けられた軸受18の外輪20は前記ケーシングに固定される。従って、ピニオン2の完全歯形部5からモータ1Dに作用するモーメントを低減することができる。また、ケーシングに対して、モータ1Dのシャフト3を位置決めすることができる。
【0028】
次に、図6を用いて、本発明のピニオン付きモータの第6実施形態について説明する。なお、第1実施形態で付した符号と同じ符号を有する構成部品は、その作用を同じにするので以下、説明を省略することがある。第6実施形態のピニオン付きモータ1Eは、外形が第1実施形態と異なる。
【0029】
具体的には、モータ1Eの外形は、正面視において多角形である。図示例では、モータ1Eの外形は、正面視において略四角形である。すなわち、モータ1Eの本体部分は、上面21、下面22、左側面23及び右側面24を有している。この場合、例えば、モータ1Eの右側面24と完全歯形部5の所定の歯底の位置とを対応させた状態で、ピニオン2は、シャフト3に前述したようにテーパ結合される。
【0030】
第6実施形態のピニオン付きモータ1Eの場合、テーパ結合であるので、結合時に多角形のモータ1Eの一面と完全歯形部5の所定の歯底の位置とを対応させることができる。従って、テーパ結合する際に、完全歯形部5の位相とモータ1Eの外形の位相とに基づいて、完全歯形部5とモータ1Eの外形とが位置決めされる。この場合、シャフト3を回転させることなく、完全歯形部5を相手側の歯車に容易に噛み合わせることができる。
【0031】
次に、図7を用いて、本発明のピニオン付きモータの第7実施形態について説明する。なお、第1実施形態で付した符号と同じ符号を有する構成部品は、その作用を同じにするので以下、説明を省略することがある。第7実施形態のピニオン付きモータ1Fは、ピニオン2の基部4の構成が第1実施形態と異なる。
【0032】
具体的には、ピニオン2の基部4は、その外周面に平面部25を有している。図示例では、基部4の外周面において、基部4の径方向に対応する位置に、一対の平面部25,25が、周方向に180度の位置関係を有して設けられている。一対の平面部25,25は、ピニオン2に設けられた挿通孔12を介してシャフト3の先端面のネジ孔13にボルト14をねじ込む際に把持される部分である。
【0033】
第7実施形態のピニオン付きモータ1Fの場合、基部4の外周面には、ピニオン2をシャフト3にボルト14で結合する際に把持される平面部25が設けられている。従って、ピニオン2をボルト14にてシャフト3に結合する際に、平面部25を把持することで、ピニオン2がシャフト3に対して周方向に回転するのを防止できる。これにより、ロボットを用いて、ピニオン2をシャフト3に自動組立することができる。
【0034】
次に、図8A及び図8Bを用いて、本発明のピニオン付きモータの使用形態について説明する。ここでは、2つのピニオン付きモータによって、多関節ロボットを駆動させる場合について説明する。この場合、ロボットのアームには、ピニオン付きモータと減速装置とを備える歯車機構が2つ設けられる。すなわち、アームを構成するケーシング32内には、ピニオン付きモータからなる第1モータ28と第1減速装置29とを備える歯車機構26と、ピニオン付きモータからなる第2モータ30と第2減速装置31とを備える歯車機構27とが設けられる。
【0035】
第1モータ28は、中空状のケーシング32内に設けられる。この際、ケーシング32の内面に、基部4の外周面に設けられた軸受18が固定される。第2モータ30も、第1モータ28と同様にして、アーム内に設けられる。具体的には、第2モータ30は、ケーシング32の内面に基部4の外周面に設けられた軸受18が固定された状態で、ケーシング32内に設けられる。この際、第1モータ28のシャフト3と第2モータ30のシャフト3とは、互いに平行に配置される。これにより、第1モータ28及び第2モータ30は、シャフト3が回転可能に、ロボットのアーム内に設けられる。
【0036】
第1減速装置29は、従来公知の構成であって、例えば、第1モータ28によって駆動される不図示のピニオン歯車を有する第1駆動軸33と、ピニオン歯車に噛み合う不図示のリング歯車とを有するハイポイドギヤセットから構成される。第1駆動軸33は、第1モータ28の軸方向J1に延びるシャフト3と平行に配置されるように、軸方向J2が前後方向に沿うように配置される。第1駆動軸33の前端部(J22側)には、ピニオン歯車が一体回転可能に設けられる。第1駆動軸33の後端部(J21側)には、平歯車34が一体回転可能に設けられる。この平歯車34は、第1モータ28の完全歯形部5に噛み合っている。
【0037】
図8Aに示すように、第1モータ28は、ピニオン2の完全歯形部5と噛み合う相手側の歯車34とシャフト3との軸間距離cが所定距離となるように位置決めした状態で、ケーシング32に固定される。ここで、軸間距離cとは、第1モータ28のシャフト3の軸線eと歯車34の軸線fとの間の距離である。
【0038】
第2減速装置31は、第1減速装置29と同様の構成である。第2減速装置31は、従来公知の構成であって、例えば、第2モータ30によって駆動される不図示のピニオン歯車を有する第2駆動軸35と、ピニオン歯車に噛み合う不図示のリング歯車とを有するハイポイドギヤセットから構成される。第2駆動軸35は、第2モータ30の軸方向J1に延びるシャフト3と平行に配置されるように、軸方向J3が前後方向に沿うように配置される。第2駆動軸35の前端部(J32側)には、ピニオン歯車が一体回転可能に設けられる。第2駆動軸35の後端部(J31側)には、平歯車36が一体回転可能に設けられる。この平歯車36は、第2モータ30の完全歯形部5に噛み合っている。
【0039】
図8Bに示すように、第2モータ30は、ピニオン2の完全歯形部5と噛み合う相手側の歯車36とシャフト3との軸間距離dが所定距離となるように位置決めした状態で、ケーシング32に固定される。ここで、軸間距離dとは、第2モータ30のシャフト3の軸線gと歯車36の軸線hとの間の距離である。
【0040】
従来では、軸方向に長いピニオンが設けられたモータを手首アーム内部に格納するために、手首アーム長が長くなっていた。さらに、ロボットに対してピニオン付きモータの取り外しができるように、モータのピニオンが取り付けられた側とは反対側にも余剰空間を確保する必要があることも、手首アーム長の増加につながっていた。この場合、ロボットのイナーシャが大きくなってしまうため、動作性能を制限する必要があった。これに対し、本実施形態の場合、ピニオン2の軸方向の長さが短いため、手首アーム長を必要以上に長くしなくてもよく、動作性能を上げることができる。
【0041】
また、従来では、ピニオン付きモータのピニオンが前後方向に長いため、モータをアームに取り付ける際にピニオンが撓んでしまうことがあった。この場合、ピニオン付きモータは、位置を調整しながらアームに取り付けられていた。これに対し、本実施形態の歯車機構26,27の場合、ピニオン2の前後方向の長さが従来よりも短いため、軸間距離が正しい位置となるよう調整することなく、ピニオン付きモータ28,30をケーシング32に取り付けることができる。また、本実施形態の場合、ピニオン2の撓みを軽減することができるので、動作時のギヤの倒れを軽減することができる。これにより、異音や回転ムラ、歯の摩擦等を抑制することができる。
【0042】
なお、本発明は各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良は本発明に含まれる。
【0043】
図9を用いて、本発明のピニオン付きモータの第1変形例について説明する。なお、第1実施形態で付した符号と同じ符号を有する構成部品は、その作用を同じにするので以下、説明を省略することがある。第1変形例のピニオン付きモータ1Gは、ピニオン2の完全歯形部5の構成が第1実施形態と異なる。第1変形例のピニオン付きモータ1Gでは、第2実施形態の場合と同様に、不完全歯形部6がくびれ形状に形成されている。また、ピニオン2は、第4実施形態の場合と同様に、テーパ結合によりシャフト3に結合される。
【0044】
図9に示すように、ピニオン2の完全歯形部5の内穴9は、段付き孔であり、前側(J12側)に大径孔37、後側(J11側)に小径孔38が位置している。図示例では、大径孔37の前後方向(軸方向J1)の長さは、ボルト14の頭部の前後長さよりも短い。このような構成であるので、ボルト14がピニオン2を介してシャフト3にねじ込まれた状態において、ボルト14の頭部の一部が大径孔37内に収容される。
【0045】
第1変形例のピニオン付きモータ1Gの場合、完全歯形部5の大径孔37がざぐり孔となっている。従って、ボルト頭部の前側(J12側)への突出を低減して、ボルト頭部を後側(J11側)にオフセットすることができる。
【0046】
図10を用いて、本発明のピニオン付きモータの第2変形例について説明する。なお、第1実施形態で付した符号と同じ符号を有する構成部品は、その作用を同じにするので以下、説明を省略することがある。第2変形例のピニオン付きモータ1Hは、ピニオン2の完全歯形部5の構成が第1実施形態と異なる。第2変形例のピニオン付きモータ1Hでは、第2実施形態の場合と同様に、不完全歯形部6がくびれ形状に形成されている。
【0047】
図10に示すように、完全歯形部5の軸方向の長さiは、完全歯形部5の外径j以下である。従って、第2変形例のピニオン付きモータ1Hによれば、完全歯形部5をシャフト3の基端側J11にさらにオフセットすることができる。
【符号の説明】
【0048】
1 ピニオン付きモータ
2 ピニオン
3 シャフト
4 基部
5 完全歯形部
6 不完全歯形部
7 内穴(軸孔)
12 挿通孔
13 ネジ孔
14 ボルト
15 キー
18 軸受
20 外輪
25 平面部
26 歯車機構
27 歯車機構
28 第1モータ
30 第2モータ
32 ケーシング
34 平歯車
36 平歯車
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10