(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】有機資源の炭化装置及び有機資源炭の製造方法
(51)【国際特許分類】
C10B 53/02 20060101AFI20241119BHJP
C10B 47/02 20060101ALI20241119BHJP
【FI】
C10B53/02
C10B47/02
(21)【出願番号】P 2024008879
(22)【出願日】2024-01-24
【審査請求日】2024-03-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501281618
【氏名又は名称】エフビットコミュニケーションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小鷹 敬一
(72)【発明者】
【氏名】福島 慎一
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3244273(JP,U)
【文献】特開2013-010808(JP,A)
【文献】特開2001-139956(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10B 53/02
C10B 47/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機資源の乾燥及び炭化を連続的に行うための炭化装置であって、
前記炭化装置は、
(a)2基又は3基以上の炉、及び
(b)排ガス処理装置、を備え、
前記炉は、着脱可能な上フタ、中カゴ、及び台座部を含み、
相互に前記排ガス処理装置を介して通気可能に連結され、
それぞれ、該上フタの着脱により、有機資源の乾燥工程及び炭化工程を切り替え可能であ
り、前記上フタを中カゴに取り付けることで前記炉は密閉炉となり、有機資源を炭化し、生じた排ガスは排ガス処理装置にて処理することができ、上フタを中カゴから取り外すことで、排ガス処理装置から取り込んだ熱流が炉の外へ放出され、有機資源を乾燥することができる、
前記炭化装置
、
ただし、前記排ガス処理装置は、有機資源の炭化工程を行う炉において生じた排ガスを前記排ガス処理装置内に取込み、前記排ガス処理装置において前記排ガスを燃焼させ、燃焼させた排ガスを有機資源の乾燥工程を行う炉へ排出する排ガス処理装置である。
【請求項2】
前記炉及び前記排ガス処理装置が、炉の台座部に備えられた排ガスの取込用ダクト及び排出用ダクトにより、通気可能に連結される、請求項1に記載の炭化装置。
【請求項3】
前記排ガス処理装置は、300℃~1000℃の温度で、前記排ガスを燃焼させる、請求項
1に記載の炭化装置。
【請求項4】
前記有機資源は、木質材又は草質材を含み、未使用、廃棄物由来、又はこれらの混合材である、請求項1に記載の炭化装置。
【請求項5】
有機資源炭の製造方法であって、
前記製造方法は、
(a)炉において、有機資源を炭化する炭化工程、
(b)工程(a)で生じた排ガスを
、排ガス処理装置において
燃焼して処理する排ガス処理工程、及び
(c)工程(b)で
燃焼して処理された排ガスを用いて、工程(a)とは異なる炉において、有機資源を乾燥させる乾燥工程、を含み、
前記炉は、着脱可能な上フタを備え、
前記上フタを炉に取り付けることで前記炉は密閉炉となり、有機資源を炭化し、及び
上フタを炉から取り外すことで、前記排ガス処理装置から取り込んだ熱流が炉の外へ放出され、有機資源を乾燥することができ、
前記炉に備えられた上フタを
前記取り付け又は取り外しにより着脱することで、乾燥工程及び炭化工程を行う炉を切り替えることにより連続的に有機資源を炭化する、有機資源炭の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機資源を連続的に炭化可能な炭化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
化石燃料を用いた発電に替わる方法として、有機資源を用いるバイオマス燃料を用いた発電が注目されている。また、当該バイオマス燃料として、エネルギー密度の観点から炭の利用が注目されてきた。
【0003】
炭のうち木炭については、その製造において、材料となる木材中の水分量が、最終的な炭の炭化率や炭を得るための炭化時間に大きな影響を与えるため、目視による炭焼き炉の確認や判断等に未だ手作業等を必要としている。例えば、備長炭の製造においては1週間程度の炭化時間を要する。
【0004】
木炭製造の効率化を目的として、木炭製造装置の開発が進められてきた(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
炭の材料となる有機資源の種類や材料中の水分量により、炭化に適した温度や炭化時間等の諸条件が異なる。そのため、あらゆる有機資源から効率的に炭を製造するための炭化装置は、広範な範囲の有機資源の利用を可能にするものである。
しかしながら、かかる炭化装置は、有機資源の種類等に応じて炉を個別に用意する必要があるため製造設備の大型化や自動化が困難であり、大量の炭を効率的に製造することが可能な装置は存在しない。
【0007】
したがって、本発明の目的は、上記不都合が解消された、すなわち、効率的に炭を製造できる炭化装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意研究した結果、有機資源の前処理の工程において必要な熱を、炭化における別の工程において発生した熱により補填することにより上記課題が解決される可能性があることを見出し、さらに研究を進めた結果、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の典型的な諸態様は、以下のとおりである。
[1]
有機資源の乾燥及び炭化を連続的に行うための炭化装置であって、
前記炭化装置は、
(a)2基又は3基以上の炉、及び
(b)排ガス処理装置、を備え、
前記炉は、着脱可能な上フタ、中カゴ、及び台座部を含み、
相互に前記排ガス処理装置を介して通気可能に連結され、
それぞれ、該上フタの着脱により、有機資源の乾燥工程及び炭化工程を切り替え可能である、
前記炭化装置。
[2]
前記炉及び前記排ガス処理装置が、炉の台座部に備えられた排ガスの取込用ダクト及び排出用ダクトにより、通気可能に連結される、[1]に記載の炭化装置。
[3]
前記排ガス処理装置は、
有機資源の炭化工程を行う炉において生じた排ガスを前記ガス処理装置内に取込み、
前記ガス処理装置において前記排ガスを燃焼させ、
燃焼させた排ガスを有機資源の乾燥工程を行う炉へ排出する、
[1]に記載の炭化装置。
[4]
前記排ガス処理装置は、300℃~1000℃の温度で、前記排ガスを燃焼させる、[3]に記載の炭化装置。
[5]
前記有機資源は、木質材又は草質材を含み、未使用、廃棄物由来、又はこれらの混合材である、[1]に記載の炭化装置。
[6]
有機資源炭の製造方法であって、
前記製造方法は、
(a)炉において、有機資源を炭化する炭化工程、
(b)工程(a)で生じた排ガスを、前記排ガス処理装置において処理する排ガス処理工程、及び
(c)工程(b)で処理された排ガスを用いて、工程(a)とは異なる炉において、有機資源を乾燥させる乾燥工程、を含み、
前記炉に備えられた上フタを着脱することで、乾燥工程及び炭化工程を行う炉を切り替えることにより連続的に有機資源を炭化する、有機資源炭の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の炭化装置によれば、効率的に炭を製造することができる。
また、本発明の炭化装置によれば、乾燥工程により有機資源の水分量のムラを低減可能であるため、安定した品質の炭を製造することができる。
さらに、本発明の炭化装置によれば、2基又は3基以上の同型の炉を連結したものであり、有機資源を移し替えることなく、同じ炉において有機資源の乾燥及び炭化を行うことができるため、製造設備の大型化や自動化が容易である。
本発明の炭化装置は、上記のとおり
(a)2基又は3基以上の炉、及び
(b)排ガス処理装置
を備えるところ、(a)の2基又は3基以上の炉は、いずれも有機資源の乾燥及び有機資源の乾燥の両方に用いることができるばかりでなく、相互に前記排ガス処理装置を介して通気可能に連結されている。そのため、本発明の装置においては、ある炉における炭化工程において発生した熱を、他の炉において用いて乾燥工程を行うことができ、乾燥工程及び炭化工程を同時かつ熱量的に高い効率で進行させることを可能にする。
また、2基又は3基以上の炉は、乾燥工程及び炭化工程を切り替え可能であるため、乾燥された有機資源を移し替えることなく同じ炉においてそのまま炭化工程に付すことができる。
このような炉は従来全く知られていなかったし、当該炉が通気可能に連結する排ガス処理装置を備えた炭化装置についても従来全く知られていなかった。さらに、本願発明の炭化装置が達成し得る炭化効率は、従来技術の炭化効率を顕著に上回るものである。
したがって、本願発明は従来技術と異なるばかりでなく、従来技術から当業者が想到することが不可能な発明である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】
図2は、本発明の一態様を示す概略図である。
【
図3】
図3は、本発明の炭化装置に備えられた炉の概略図である。
【
図4】
図4は、炭化工程における炉を説明する概略図である。
【
図5】
図5は、乾燥工程における炉を説明する概略図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施例における炭化装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、
有機資源の乾燥及び炭化を連続的に行うための炭化装置であって、
前記炭化装置は、
(a)2基又は3基以上の炉、及び
(b)排ガス処理装置、を備え、
前記炉は、着脱可能な上フタ、中カゴ、及び台座部を含み、
相互に前記排ガス処理装置を介して通気可能に連結され、
それぞれ、該上フタの着脱により、有機資源の乾燥工程及び炭化工程を切り替え可能である、
前記炭化装置、である。
【0013】
すなわち、本発明の炭化装置は、2基又は3基以上の炉、及び排ガス処理装置を備えるものである。
【0014】
前記炉は、着脱可能な上フタ、中カゴ、及び台座部を含む。炉は、中カゴ内に配置した有機資源を乾燥及び炭化することができる。乾燥及び炭化の切り替えは上フタの着脱により行うことができる。具体的には、炉は、上フタを中カゴに取り付けることで、密閉炉として機能するため、酸素を遮断した状態で中カゴ内に配置した有機資源を加熱することができ、有機資源を炭化することができる。一方、炉は、上フタを中カゴから取り外すことで、台座部を介して中カゴ下部から取り込んだ熱流が中カゴ上部通じて炉の外へ放出されることができる。このため、炉内温度の過度な上昇による有機資源の燃焼を防ぎつつ、中カゴ内に配置した有機資源を乾燥することができる。
【0015】
炉においては、台座部に着火材を配置し、着火材に火をつけることで中カゴ内の有機資源を炭化することができる。そのため、炭化工程における熱移動は台座部から中カゴへの上下移動となり、有機資源の均一な炭化が可能となる。
【0016】
前記排ガス処理装置は、排ガス処理装置内に取り込んだ排ガスを処理し、処理された排ガス(本明細書中において、「熱流」と称することもある)として排ガス処理装置外に放出することができる。排ガスの処理により、排ガス中に含まれる塩素、リン、カリウム等を含む不純物を除去することができる。したがって、排ガス処理装置から放出される熱流は、不純物を含まないため、環境への負荷が小さい。また、これらの不純物は発電設備の劣化を引き起こすため、有機資源炭は不純物を含まないことが好ましい。そのため、本発明の炭化装置は、熱流を有機資源の乾燥に用いることで最終的に得られる有機資源炭に含まれる不純物の量を低減することができる点で従来の炭化装置と比較して優れる。
【0017】
本発明の炭化装置において、前記炉と前記排ガス処理装置とは、炉が相互に排ガス処理装置を介して通気可能に連結されている。このように2基又は3基以上の炉が排ガス処理装置を介して連結されていることにより、有機資源の炭化工程で生じた排ガスを排ガス処理装置で処理し、排ガス処理装置で処理された熱流を有機資源の乾燥工程に利用することができる。
【0018】
炉は、1基で有機資源の炭化及び乾燥の両方を行うことができるため、2基又は3基以上の炉は同型のものを複数用いることができる。したがって、本発明の炭化装置においては、従来の単一の炉を備える炭化設備とは異なり、炉の数を増やすことで炭化設備の大型化が容易である。炉の数は、特に制限はないが、一度の運転において炭化を行う炉の数と乾燥を行う炉の数とが同数とすることが好ましい。
炉の数を増やす場合、一度の運転において炭化を行う複数の炉及び乾燥を行う複数の炉(以下、一度の運転において同一の工程を行う複数の炉を「炉群」とも称する場合がある)が排ガス処理装置を介して通気可能に連結されていればよく、ある炉群に含まれる複数の炉同士の連結は、特に制限されない。例えば、炉群が1本のダクトにより排ガス処理装置と連結していてもよいし、炉群に含まれる複数の炉の各々が複数のダクトにより排ガス処理装置と連結する構成としてもよい。
【0019】
本発明の一態様において、前記炉及び前記排ガス処理装置は、炉の台座部に備えられた排ガスの取込用ダクト及び排出用ダクトにより、通気可能に連結されることができる。なお、ダクトの説明における、「取込用」及び「排出用」の語は、排ガス処理装置から見たダクトの役割により区別するものである。すなわち、取込用ダクトは、炭化工程において炉で生じた排ガス(すなわち、未処理の排ガス)を排ガス処理装置に取り込むためのダクトである。一方、排出用ダクトは、排ガス処理装置で処理された排ガスを乾燥工程のため炉に排出するためのダクトである。上記のとおり、取込用ダクト及び排出用ダクトは、その役割により定められるため、取込用及び排出用を兼用する1本のダクトであってもよく、役割に応じた2本以上のダクトであってもよい。
【0020】
前記炉及び前記排ガス処理装置は、炉の台座部に備えられた排ガスの取込用ダクト及び排出用ダクトにより、通気可能に連結されることにより、有機資源の炭化工程で生じた排ガスを排ガス処理装置で処理し、排ガス処理装置で処理された熱流を有機資源の乾燥工程に利用することができる。また、乾燥工程において、熱流が中カゴ下部から中カゴ上部通じて炉の外へ放出されるため、中カゴ内に配置した有機資源を効率的に乾燥することができる。さらに、上記のとおり、取込用ダクト及び排出用ダクトは台座部に備えられているため、例えば、中カゴの上下を乾燥工程の途中で反転させることができ、中カゴ内の有機資源の乾燥を均一に行うことができる。
【0021】
本発明の一態様において、排ガス処理装置は、有機資源の炭化工程を行う炉において生じた排ガスを排ガス処理装置内に取込み、排ガス処理装置において排ガスを燃焼させ、燃焼させた排ガスを有機資源の乾燥工程を行う炉へ排出する、前記炭化装置とすることができる。本態様によれば、炭化工程で生じる排ガス中に含まれる塩素、リン、カリウム等の不純物を除去し、不純物を含まない熱流を有機資源の乾燥に利用することができる。その結果、乾燥後の有機資源をさらに炭化させて得られる有機資源炭に含まれる不純物の量も低減することができるため、高品質の有機資源炭を得ることができる。
【0022】
また、有機資源の炭化工程により生じた排ガスの熱を利用して、有機資源の乾燥工程を行うことができるため、炭化装置全体では炭化工程と乾燥工程を同時に行うことができる。
【0023】
本発明の一態様において、排ガス処理装置は、300℃~1000℃の温度で、排ガスを燃焼させることができる。排ガスを燃焼させる場合、燃焼温度は、300℃~1000℃とすることができる。燃焼温度は、好ましくは600℃~1000℃であってよく、より好ましくは700℃~1000℃であってよく、さらに好ましくは800℃~1000℃であってよい。上記温度で、排ガスを燃焼させることにより、排ガス中の不純物を除去された熱流を得ることができる。さらに、排ガス処理装置は、熱流を降温させた後、排ガス処理装置外に放出することができる。具体的には、本発明の炭化装置において、排ガス処理装置で処理された排ガスを、80℃~200℃に降温し、有機資源の乾燥のための熱流に利用することができる。
【0024】
本発明の一態様において、炭化の対象となる有機資源は、木質材又は草質材を含み、未使用、廃棄物由来、又はこれらの混合材とすることができる。
【0025】
木質材は、特に限定されず、スギ、ヒノキ、マツ等の針葉樹、又はケヤキ、サクラ、オーク等の広葉樹を用いることができる。木質材の形状等も、特に限定されず、例えば、丸太、角材、板材、チップ等を用いることができる。また、木質材は、樹木の幹に限られず、樹皮、根、葉、実等を用いてもよい。草質材は、特に限定されず、タケ、イネ、キビ、トウモロコシ等を用いることができる。
【0026】
有機資源は、未使用であってもよく、廃棄物由来であってもよく、これらの混合材であってもよい。廃棄物由来の有機資源としては、例えば、間伐材、端材、建築廃材、ヤシ殻等が挙げられる。
【0027】
上記の有機資源は、水分を含んでいる。有機資源に含まれる水分量、すなわち、含水率は、水分を含まない状態の重量に基づいて求められる。一般に有機資源の含水率は、種類や伐採からの時間経過により異なるが、15%~65%程度である。炭化工程においては、含水率の違いにより炭化時間に違いが生じるため、有機資源をそのまま炭化するとムラが生じる。本発明の炭化装置によれば、乾燥工程により有機資源の含水率を15%程度以下まで低減することができ、その後の炭化工程の時間短縮及びムラの発生を防ぐことができる。その結果、有機資源炭の効率的な製造及び有機資源炭の品質の安定化を達成することができる。
【0028】
有機資源の形状は特に限定されないが、得られる有機資源炭の使い勝手や均一な炭化を行う観点から、ペレット形状とすることは好ましい。
【0029】
また、本発明のさらなる態様は、以下のとおりである。
有機資源炭の製造方法であって、
前記製造方法は、
(a)炉において、有機資源を炭化する炭化工程、
(b)工程(a)で生じた排ガスを、前記排ガス処理装置において処理する排ガス処理工程、及び
(c)工程(b)で処理された排ガスを用いて、工程(a)とは異なる炉において、有機資源を乾燥させる乾燥工程、を含み、
前記炉に備えられた上フタを着脱することで、乾燥工程及び炭化工程を行う炉を切り替えることにより連続的に有機資源を炭化する、有機資源炭の製造方法。
【0030】
本発明の製造方法においては、有機資源の炭化工程において生じた排ガスを処理し、排ガスの処理により得られた熱流を利用して有機資源の乾燥工程を行う。その結果、本発明の製造方法は、一度の運転により有機資源炭と乾燥した有機資源を得ることができる。さらに、炭化工程を行った炉内から得られた有機資源炭を取り出し、未乾燥の有機資源を投入し、炭化工程を行う炉と乾燥工程を行う炉とを切り替えることにより、連続的に有機資源を炭化することが可能である。
【0031】
乾燥工程及び炭化工程の切り替えは、炉に備えられた上フタの着脱により可能であるため、乾燥した有機資源を炭化炉へ移し替えることなく、同じの炉において有機資源の乾燥及び炭化を行うことができる。
【0032】
工程(a)は、炉において、有機資源を炭化する炭化工程である。工程(a)においては、上フタを炉に取り付ける。その結果、炉は密閉炉として機能するため、酸素を遮断した状態で有機資源を加熱し、有機資源を炭化することができる。
【0033】
工程(a)における、炭化条件は、有機資源の種類等によっても異なるが、炭化温度は300℃~700℃の範囲で調整することができる。例えば、炭化温度は600℃~700℃とすることにより、炭化工程で生じる排ガス中に含まれる塩素、リン、カリウム等の不純物を抑制することができる。一方、不純物が少ない有機資源においては、炭化温度は300℃~400℃とすることもできる。このように、本発明の製造方法において、炭化する有機資源の種類に応じて、炭化温度を適宜調整することができる。なお、本発明の方法において、炭化の対象となる有機資源は前述のものが挙げられる。
【0034】
工程(a)における、炭化時間は、一般的に有機資源の状態等によっても異なるが、後述する乾燥工程後の有機資源を用いることにより、6時間~24時間程度まで短縮することができる。
【0035】
工程(b)は、工程(a)で生じた排ガスを、前記排ガス処理装置において処理する排ガス処理工程である。工程(b)は、300℃~1000℃の温度で、排ガスを燃焼させることができる。前記温度は、好ましくは600℃~1000℃であってよく、より好ましくは700℃~1000℃であってよく、さらに好ましくは800℃~1000℃であってよい。上記温度で、排ガスを燃焼させることにより、排ガス中の不純物を除去することができる。
【0036】
工程(b)で処理された排ガスは、80℃~200℃程度まで降温された後、後述する工程(c)における有機資源の乾燥のための熱流として用いられる。
【0037】
工程(c)は、工程(b)で処理された排ガスを用いて、工程(a)とは異なる炉において、有機資源を乾燥させる乾燥工程である。工程(c)においては、上フタを炉から取り外す。したがって、炉の下部から吹き込まれた熱流は炉の上部から放出されるため、炉内温度の過度な上昇による有機資源の燃焼を防ぎつつ、中カゴ内に配置した有機資源を乾燥することができる。
【0038】
工程(c)においては、乾燥工程の途中で炉内の有機資源を適宜再配置してもよい。再配置は、炉内の有機資源を攪拌してもよい。また、再配置は、炉が中カゴと台座部で分離可能な場合、中カゴの上下を反転させてもよい。乾燥工程の途中で有機資源を再配置することにより、有機資源を均一に乾燥させることができる。
【0039】
工程(c)後の乾燥した有機資源の含水率は5%~10%程度とすることができる。工程(c)により有機資源を乾燥させることにより、その後の炭化工程の時間短縮及びムラの発生を防ぐことができる。
【0040】
本発明の製造方法は、工程(c)により乾燥した有機資源を用いて、工程(c)を行った炉に上フタを取り付けることで、そのまま次の工程(a)を行うことができる。したがって、本発明の製造方法は、一の炉において炭化工程及び乾燥工程を交互に繰り返すことで連続的に有機資源炭を炭化することができる。
【0041】
以下、さらなる理解のため、本発明の炭化装置の構造及び本発明の炭化装置による有機資源炭の製造方法について、図面を参照しつつ説明する。ただし、本発明の炭化装置は図面に限定されるものではない。
【0042】
図1は、本発明の炭化装置及び本発明の製造方法を示す模式図である。
図1において、1a及び1bは炉を示す。炉1a及び1bは、着脱可能な上フタ2a及び2bを含む。
図1において、3は排ガス処理装置を示す。炉1a及び1bは、排ガス処理装置3を介して通気可能に連結されている。また、炉1a及び排ガス処理装置3は、ダクト4aを介して通気可能に連結され、炉1b及び排ガス処理装置3は、ダクト4bを介して通気可能に連結されている。
図1において、炭化工程で生じた排ガスの流れを矢印で示す。
なお、
図1において、2基の炉を区別するため炉1a及び炉1bと付しているが、両者は同一の構造を有する炉である。ダクト4a及び4bは、排ガス処理機による排ガスの処理の前後の前後に応じて表記する位置を区別しているが、実際の炉及びダクトの接続位置を示すものではない。
【0043】
図1(A)において、炉1aには上フタ2aが取り付けられており、炉1aで炭化工程が行われる。炭化工程で生じた排ガスはダクト4aを通り、排ガス処理装置3へ送られる。排ガス処理装置3で処理された排ガスはダクト4bを通り、炉1bへ送られる。炉1bからは上フタ2bが取り外されており、炉1bで乾燥工程が行われる。
図1(A)に示される状態で炭化工程及び乾燥工程が終了した後、得られた有機資源炭を炉1aから取り出し、炉1aに未乾燥の有機資源を配置して、
図1(B)に示される状態でさらに炭化工程及び乾燥工程を行うことができる。
【0044】
図1(B)において、炉1bには上フタ2bが取り付けられており、炉1bで炭化工程が行われる。炭化工程で生じた排ガスはダクト4bを通り、排ガス処理装置3へ送られる。排ガス処理装置3で処理された排ガスはダクト4aを通り、炉1aへ送られる。炉1aからは上フタ2aが取り外されており、炉1aで乾燥工程が行われる。
図1(B)に示される状態で炭化工程及び乾燥工程が終了した後、得られた有機資源炭を炉1bから取り出し、炉1bに未乾燥の有機資源を配置して、
図1(A)に示される状態でさらに炭化工程及び乾燥工程を行うことができる。
【0045】
以上のように、
図1(A)及び
図1(B)の状態を交互に切り替えることで、連続的に有機資源を炭化することができる。
【0046】
図2に本発明の一態様を上方から観察した概略図を示す。上述した炭化工程及び乾燥工程の切り替え、ならびに排ガスの移動の観点から、本発明の炭化装置は、
図2に示すように、排ガス処理装置3を中心に炉1a及び1bが略対称になるように配置されていることは好ましい。
図2において、炉1a及びダクト4a(又は炉1b及びダクト4b)は3本のダクトで連結されている。3本のダクトは排ガスの取込用ダクト又は排出用ダクトである。取込用ダクトは炉で炭化工程を行う場合、炉から排ガス処理装置へ排ガスを取り込むためのダクトである。排出用ダクトは炉で乾燥工程を行う場合、排ガス処理装置から炉へ熱流を排出するためのダクトである。なお、
図2においては、取込用ダクト及び排出用ダクトを3本のダクトとして表記するが、これらのダクトの本数は特に限定されず、例えば、取込用ダクト及び排出用ダクトを2本ずつの計4本のダクトとしてもよく、取込用ダクト及び排出用ダクトを兼用する1本のダクトとしてもよい。取込用ダクト及び排出用ダクトはダクト4a又は4bを介して排ガス処理装置3と連結されている。
【0047】
図3~5に本発明の一態様における炭化装置に備えられた炉1の構造を示す。
図3は炉1の構造を示す図であり、
図4は炭化工程における炉1を示す図であり、
図5は乾燥工程における炉1を示す図である。
【0048】
図3に示すように、炉1は、上フタ2、中カゴ5、及び台座部6を含む。また、台座部6には、火付け穴7が設けられている。さらに、
図4及び
図5に示すように、台座部6は、取込用ダクト8及び排出用ダクト9を備える。
【0049】
炉1は、上フタ4の着脱により、有機資源の乾燥工程及び炭化工程を切り替えることができる。上フタ4で中カゴ5を覆うことで炉1を密閉構造とすることができるため、中カゴ内に投入した有機資源を炭化することができる。一方、上フタ4を中カゴ5から取り外すことで、中カゴ5の上部より水蒸気を放出することができるため、中カゴ5内に投入した有機資源を乾燥することができる。
【0050】
中カゴ5は、内部に有機資源を投入し、有機資源の炭化又は乾燥の場とすることができる。中カゴ5の上部及び底部は、通気可能な構造である。このような構造とすることで、炭化工程及び乾燥工程の両方で台座部6から中カゴ5内に熱流を取り込むことができるため、有機資源の炭化及び乾燥が進行する。また、中カゴ5の上部及び底部は、好ましくはメッシュ構造である。中カゴ5の上部及び底部がメッシュ構造であることで、中カゴ5の上下を限定することなく炉1を使用することができる。そのため、特に炉1を乾燥工程に用いる場合、乾燥工程の途中で中カゴ5の上下を反転させることで、中カゴ5内の有機資源全体を均一に乾燥させることができる。
【0051】
台座部6は、ダクトを介して排ガス処理装置と通気可能に連結されている。台座部6の上に中カゴ5を設置することで、中カゴ5の内部に投入された有機資源を炭化又は乾燥することができる。炭化工程において、
図4に示すように、台座部6に着火材を配置し、火付け穴7から着火材に点火することで炭化工程を開始することができる。炭化工程において、有機資源の炭化により生じた排ガスは、
図4において矢印で示されるように、台座部6から取込用ダクト8を通じて排ガス処理装置に取り込まれることができる。一方、乾燥工程において、
図5において矢印で示されるように、排ガス処理装置により処理された熱流は排出用ダクト9を通じて、台座部6から中カゴ5へ送られ、中カゴ5の上部から放出される。
【0052】
本発明の炭化装置及び本発明の製造方法によれば、
図4及び
図5に示すように、炭化工程及び乾燥工程は、上フタ2の着脱により切り替えることができるため、乾燥させた有機資源を移し替えることなく、有機資源の炭化及び乾燥を連続的に行うことができる。そのため、有機資源の乾燥により炭化時間を短縮することができ、効率的に炭を製造することができる。
【0053】
また、本発明の炭化装置は、2基又は3基以上の炉、及び排ガス処理装置を備えるものであればよいため、製造設備の大型化や自動化が容易である。具体的には、
図6に示すように、同型の1基又は2基以上の炉を、連結させることで一度に製造できる有機資源炭を増やすことができる。なお、
図6においては、5基の炉が横並びに連結された構成を示すが、炉の数は特に制限されない。生じる排ガスの量ならびに炭化及び乾燥の切り替えによる連続処理の観点から、好ましくは、炭化工程を行う炉群と乾燥工程を行う炉群とは炉の数が同数であってよい。ここまで説明してきたとおり、排ガス又は熱流が炉と排ガス処理装置とを移動可能であればよいところ、排ガス処理装置と各炉の連結は、特に制限されない。
図6に示すように、各炉からなる炉群が1本のダクトから分岐する通気可能な連結部材により排ガス処理装置と連結する構成としてよいし、各炉の各々が個別の複数のダクトにより排ガス処理装置と連結する構成としてもよい。
【0054】
さらに、本発明の炭化装置によれば、有機資源の炭化のムラを抑制できるのみならず、不純物の除去が可能であるため、安定した品質の炭を製造することができる。
【実施例】
【0055】
以下の実施例により本発明をさらに詳述するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0056】
本発明の炭化装置を用いて、1回の炭化作業を行った。以下説明の便宜のため、炉の内部にて有機資源の炭化を行う炉を「炭化炉」と称し、炉の内部にて有機資源の乾燥を行う炉を「乾燥炉」と称する。また、本発明の炭化装置は、炭化炉と乾燥炉とを切り替え可能であるため、最初に炭化炉として機能する炉を「炉A」、最初に乾燥炉として機能する炉を「炉B」と称する。
炭化に用いた有機資源は以下のとおりである:
木質チップ、ヤシ殻、培地、稲茎、コーヒー豆がら、竹、木くず(菌床等)、衣類(綿製)、ヤシ殻外殻、もみ殻(コメ)、枝葉、及び木皮の混合物。
【0057】
炉Aにおいては、上記有機資源の約半量を炉Aの中カゴに投入し、台座部に着火材を配置し、上フタを取り付けた(
図4参照)。
炉Bにおいては、上記有機資源の残りの約半量を炉Bの中カゴに投入し、上フタを取り外した(
図5参照)。
【0058】
炉Aの火付け穴から着火材に着火して、炉A中の有機資源を炭化した。炭化炉である炉Aで生じた排ガスは取込用ダクトを介して、排ガス処理装置に引き込んだ。排ガス処理装置において、排ガスを設定温度900℃で燃焼させた。燃焼した排ガスは排出用ダクトを介して、乾燥炉である炉Bに引き込んだ。
【0059】
6時間後、炭化炉における有機資源の炭化及び乾燥炉における有機資源の乾燥を終了した。その後、炉Bの台座部に着火材を配置し、乾燥炉に上フタを取り付けた。炉Bを炭化炉として、上記と同様にして6時間かけて、炉Bの有機資源の炭化を行った。
【0060】
炉Bにおける有機資源の炭化の終了後、中カゴから有機資源炭を取り出した。得られた有機資源炭について分析した。
【0061】
有機資源炭について、分析した結果を表1に示す。なお、各分析項目の評価は、分析方法に示すJIS規格に準拠するよう測定した。
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明によれば、従来用いられてきた炭焼き窯等の炭化装置と比較して、効率的に有機資源炭を得ることができるばかりではなく、品質の安定した有機資源炭を得ることができる。さらに、本発明の炭化装置は、設備の大型化が容易である。したがって、高品質の有機資源炭が大量に要求される分野の発展に寄与し得る。具体的には、発電用の燃料が求められる発電事業、フォーミング抑制剤として有機資源炭の活用が期待される製鉄事業、並びに有機資源炭を成分として含む土壌改良剤、浄水材、飼料添加物、及び除湿材等の様々な分野の発展に寄与するところ大である。
【符号の説明】
【0063】
1、1a、1b:炉
2、2a、2b:上フタ
3:排ガス処理装置
4a、4b:ダクト
5:中カゴ
6:台座部
7:火付け穴
8:取込用ダクト
9:排出用ダクト
【要約】
【課題】効率的に炭を製造できる炭化装置を提供する。
【解決手段】有機資源の乾燥及び炭化を連続的に行うための炭化装置であって、炭化装置は、(a)2基又は3基以上の炉、及び(b)排ガス処理装置、を備え、炉は、着脱可能な上フタ、中カゴ、及び台座部を含み、相互に排ガス処理装置を介して通気可能に連結され、それぞれ、上フタの着脱により、有機資源の乾燥工程及び炭化工程を切り替え可能である、炭化装置。
【選択図】
図2