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特許7590609仮想空間提供装置、仮想空間提供方法、仮想空間提供システム、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】仮想空間提供装置、仮想空間提供方法、仮想空間提供システム、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/00 20240101AFI20241119BHJP
   G06T 19/00 20110101ALI20241119BHJP
【FI】
G06Q50/00 300
G06T19/00 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024032826
(22)【出願日】2024-03-05
【審査請求日】2024-03-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518412081
【氏名又は名称】株式会社バーチャルキャスト
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】打田 恭平
【審査官】渡部 幸和
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-103259(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2021-0154050(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 50/00
G06T 15/00-19/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
参加者間でコミュニケーションが可能な仮想空間を提供する仮想空間提供装置であって、
参加者による前記仮想空間に対する影響を復元するための影響データを保存する保存部と、
前記仮想空間を生成する際に前記保存部から前記影響データを読み出して前記影響を復元する復元部と、
前記仮想空間内に参加者がいないときに削除条件に基づいて前記影響データを前記保存部から削除する更新部と、を備え、
前記削除条件は、前記影響の属性、前記影響を与えた参加者の属性、前記影響が与えられてからの経過時間の少なくともいずれかに基づく条件である、
仮想空間提供装置。
【請求項2】
請求項1に記載の仮想空間提供装置であって、
参加者のリクエストに応じて仮想空間を生成し、前記仮想空間から最後の参加者がいなくなったときに前記仮想空間を消去する管理部を備え、
前記更新部は、前記仮想空間を生成する際あるいは前記仮想空間を消去する際に、前記影響データを削除する、
仮想空間提供装置。
【請求項3】
請求項2に記載の仮想空間提供装置であって、
前記管理部は、同じ構成の複数の仮想空間を生成し、
前記保存部は、前記複数の仮想空間のそれぞれに対する影響を復元するための影響データを仮想空間を区別せずに保存する、
仮想空間提供装置。
【請求項4】
コンピュータによる、参加者間でコミュニケーションが可能な仮想空間を提供する仮想空間提供方法であって、
参加者による前記仮想空間に対する影響を復元するための影響データを保存部に保存し、
前記仮想空間を生成する際に前記保存部から前記影響データを読み出して前記影響を復元し、
前記仮想空間内に参加者がいないときに削除条件に基づいて前記影響データを前記保存部から削除し、
前記削除条件は、前記影響の属性、前記影響を与えた参加者の属性、前記影響が与えられてからの経過時間の少なくともいずれかに基づく条件である、
仮想空間提供方法。
【請求項5】
端末と参加者間でコミュニケーションが可能な仮想空間を提供するサーバを備える仮想空間提供システムであって、
前記サーバは、
参加者による前記仮想空間に対する影響を復元するための影響データを保存する保存部と、
前記仮想空間を生成する際に前記保存部から前記影響データを読み出して前記影響を復元する復元部と、
前記仮想空間内に参加者がいないときに削除条件に基づいて前記影響データを前記保存部から削除する更新部と、を備え、
前記削除条件は、前記影響の属性、前記影響を与えた参加者の属性、前記影響が与えられてからの経過時間の少なくともいずれかに基づく条件である、
仮想空間提供システム。
【請求項6】
請求項1ないしのいずれかに記載の仮想空間提供装置の各部としてコンピュータを動作させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、仮想空間提供装置、仮想空間提供方法、仮想空間提供システム、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、メタバースが注目されている。メタバースとは、ネットワークを介して接続され、多数のユーザが参加可能な仮想空間のことである。ユーザは、アバターを用いて他者と共有された仮想空間に参加し、そこでコミュニケーションを取りながら、様々な活動を行うことができる。
【0003】
非特許文献1は、仮想空間上でのコミュニケーションを可能にするサービスであり、ルームと呼ばれる仮想空間を提供している。ユーザはルームにアイテムを配置し、ルームをカスタマイズすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2022-183944号公報
【文献】特開2020-017243号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】“ルームステップアップガイド”、株式会社バーチャルキャスト、2020年11月12日、インターネット〈 URL:https://blog.virtualcast.jp/blog/2020/11/room_startguide_stepup/〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1において、ルームに配置したアイテムを消滅させるタイミングは、以下のパターンが考えられる。
【0007】
(1)アイテムを出した人がルームからいなくなったときに消滅させる
(2)ルームから人がいなくなったときに消滅させる
(3)ルームに永続させる
【0008】
(1)と(2)の場合は、アイテムが消滅するので、ルームの状態がリセットされ、ルームが以前のセッションと継続的につながっている感覚を得にくい。
【0009】
(3)の場合は、ルームがアイテムで溢れてしまうという問題がある。その問題を防ぐために、アイテムを配置できる人を決めるなど、アイテムの配置に制約を付ける必要が生じる。また、ユーザが自治を始めてしまい、アイテムを出したら片付ける、という文化が醸成されるおそれがある。その結果、アイテムを自由に配置できるという特徴が十分に生かせないという問題がある。
【0010】
特許文献1は、特定動作で学習に用いるアイテムオブジェクトを仮想空間内に生成し、特定動作のタイミングと特定動作の内容(アイテムオブジェクトの情報)をデータベースに保存している。特許文献2は、配信中の仮想空間に仮想アイテムを投げ入れることができ、時間が経過すると仮想アイテムが消失する。特許文献1,2のいずれも上記の問題を解決できない。
【0011】
さらに、ルームを複製して生成する場合は、どのルームのアイテムを保存するのか、という問題がある。
【0012】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであり、ユーザのアイテム使用を促進することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示の一態様の仮想空間提供装置は、参加者間でコミュニケーションが可能な仮想空間を提供する仮想空間提供装置であって、参加者による前記仮想空間に対する影響を復元するための影響データを保存する保存部と、前記仮想空間を生成する際に前記保存部から前記影響データを読み出して前記影響を復元する復元部と、前記仮想空間内に参加者がいないときに削除条件に基づいて前記影響データを前記保存部から削除する更新部と、を備え、前記削除条件は、前記影響の属性、前記影響を与えた参加者の属性、前記影響が与えられてからの経過時間の少なくともいずれかに基づく条件である
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、ユーザのアイテム使用を促進できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、メタバースコミュニケーションサービスを提供するシステムの構成の一例を示す図である。
図2図2は、システムが提供する仮想空間の一例を示す図である。
図3図3は、仮想空間内に配置されたアイテムの扱いを説明するための図である。
図4図4は、サーバの構成の一例を示す図である。
図5図5は、サーバの処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図6図6は、影響削除処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図7図7は、複数の仮想空間のアイテムをまとめて保存する様子の一例を示す図である。
図8図8は、複数の仮想空間を生成する様子の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[システムの構成]
図1を参照し、メタバースコミュニケーションサービスを提供するシステムの構成の一例について説明する。同図に示すシステムは、ネットワークを介して通信可能に接続されたサーバ10と端末30を備える。ユーザが端末30を用いてサーバ10にアクセスすると、サーバ10はユーザ間でコミュニケーション可能な仮想空間を提供する。端末30は、HMDやコントローラを備えるVR機器を用いることができる。端末30としてスマートフォン、タブレット端末、パーソナルコンピュータなどの機器を用いてもよい。同図では、2台の端末30のみを図示しているが、これに限るものではない。
【0017】
サーバ10は、ユーザごとにルームと呼ばれる仮想空間を提供する。つまり、各ユーザは自分のルームを持つ。各ルームは独立した仮想空間である。ユーザがルームに入室すると、ユーザが操作するアバターがルーム内に配置されて、ユーザはアバターを操作してルーム内で活動することができる。アバターとは、ユーザを表すコンピュータグラフィックスのキャラクタである。同じルームに参加したユーザ間でコミュニケーションを取ることができる。入室とは、ユーザが端末30を操作し、サーバ10に対してルームへのアクセスを要求し、サーバ10により要求が受け入れられたことである。退室とは、ルームからアバターを削除することである。以下、ユーザが操作するアバターをユーザと表すこともある。
【0018】
ユーザは、自分のルームに入室可能な他のユーザを指定したり、他のユーザがルーム内で可能な行動を設定したりすることができる。ユーザ(管理者)が、他のユーザを自分のルームに招待したり、他のユーザのルームに参加したりすることで、ルーム内の他のユーザとコミュニケーションを取ることができる。複数のユーザで1つのルームを管理してもよい。事業者が管理する公共ルームがあってもよい。
【0019】
ユーザはルーム間を移動できてもよい。例えば、ユーザのアバターがルームに設置されたドアを開けてドアを通過すると、別のルームに移動できる。
【0020】
ユーザは所持するアイテムを取り出してルーム内に配置することができる。アイテムとは、仮想空間に配置できるオブジェクトである。つまり、ユーザはアバターを操作してオブジェクト(アイテム)を出現させて、ルーム内にオブジェクトを配置することができる。
【0021】
また、ペンのアイテムは、ルームに落書きをする(例えば、ルーム内のオブジェクトにテクスチャを貼り付ける)ことができる。ユーザは、自分のルームだけでなく、他のユーザのルームにアイテムを置いたり、落書きしたりできる。なお、ルームの管理者がアイテムを置くことやルームに影響を与えることを許可していない場合は、この限りではない。
【0022】
ここでは、ルームに置かれたアイテムや落書きを影響と呼ぶ。影響は、アイテムと落書きに限らず、ルームのオブジェクトの移動、変形、改造、または破壊などを含む。例えば、ドリルアイテムでルームの壁オブジェクトに開けられた穴などもルームへの影響である。
【0023】
図2にルーム100の一例を示す。同図に示すルーム100は、床オブジェクト110と壁オブジェクト120を配置して構成される。ルーム100には、ドア、窓、天井、あるいは家具などのその他のオブジェクトが配置されてもよい。ルーム100内には、2人のユーザがそれぞれ操作する2体のアバター200A,200Bが存在する。例えば、アバター200Aは、ルーム100の管理者のユーザが操作するアバターであり、アバター200Bは、ルーム100に招待されたユーザが操作するアバターである。ルーム100内には、アバター200Bが取り出したアイテム300Bが置かれている。
【0024】
ユーザが与えたルームへの影響(例えば配置したアイテムや落書き)は、ルームに参加者がいないとき、つまり、ルームにユーザ(アバター)がいないときに、その影響を残したままにするか否かが判定される。例えば、図2において、アイテム300Bを置いたアバター200Bがルーム100からいなくなっても、アイテム300Bはルーム100に置かれたままである。ルーム100の管理者のアバター200Aがルーム100からいなくなっても、アイテム300Bはルーム100に置かれたままである。
【0025】
図3に示すように、ルーム100から全てのアバター200A,200Bがいなくなったとき、アイテム300Bは、ルーム100にそのまま残されるか、削除されるかが判断される。アイテム300Bを残すか削除するかの判定については後述する。
【0026】
[サーバの構成]
図4を参照し、サーバ10の構成の一例について説明する。同図に示すサーバ10は、管理部11、復元部12、更新部13、制御部14、および蓄積部15を備える。
【0027】
管理部11はルームを管理する。例えば、管理部11は、ルームに名前または番号などの識別子を付与しておく。管理部11は、ルームの識別子を含むリクエストを端末30から受信すると、そのルームのインスタンスが存在するか否かを判定する。インスタンスが存在しない場合、管理部11は、ルーム情報を蓄積部15から読み出して、ルームのインスタンスを生成する。ルームのインスタンスとは、ルーム情報をもとに作られる仮想空間であり、データがメモリ上に展開されて、ユーザはルーム(仮想空間)を利用できるようになる。ルーム情報とは、ルームを構築するために必要な情報である。ルーム情報は、例えば、ルームを構成するオブジェクトの配置情報など、仮想空間をレンダリング(可視化)するために必要な情報を含む。以下、ルームのインスタンスを「ルーム」と称することもある。
【0028】
復元部12は、ルームのインスタンスを生成する際、影響情報を蓄積部15から読み出して、影響情報が示す影響をルームに反映する。影響情報は、以前のルームの状態を復元するための保存情報である。影響情報は、ルームへの一時的な影響に関する影響データを含む。影響データとは、例えば、置かれたアイテム、落書きなどの影響を復元するための情報である。影響データは、例えば、アイテムの識別子、アイテムのモデルやテクスチャ、ルーム内での位置情報を含む。影響データは、影響を与えたユーザの識別子、影響が与えられた時刻情報、および影響の寿命(後述のスコア)の少なくともいずれかを保持してもよい。影響情報が示す影響をルームに反映することで、前回保存したルームの状態を復元できる。後述の影響削除処理において、削除条件を満たした影響データは影響情報から削除される。
【0029】
ルームからアバターがいなくなったとき、つまりルームへの参加者がいなくなったとき、管理部11はルームのインスタンスを削除する。管理部11がインスタンスを削除する際、復元部12はユーザによるルームへの影響を復元できるように、影響情報に影響を復元するための影響データを追加する。例えば、復元部12は、置かれたアイテムの配置情報やペンによる落書きを復元するための情報を蓄積部15に保存する。復元部12は、ルームへの影響が発生したタイミングで、例えばユーザがアイテムをルームに置いたとき、その影響データを影響情報に追加してもよい。
【0030】
更新部13は、ルームに参加者がいないときに、つまり、インスタンスを生成する際あるいはインスタンスを削除する際に、影響情報が含む影響データのそれぞれについて、その影響データを残すか、削除するかを判定し、影響情報を更新する。更新部13は、ルームのインスタンスが存在していないときに、そのルームの影響情報を更新してもよい。更新部13による影響削除処理の詳細については後述する。
【0031】
制御部14は、ユーザの音声データおよびアバターを制御するための制御データを各端末30から受信し、音声データと制御データを各端末30へ配信する。制御部14は、置かれたアイテムの情報など、各端末30でルームを可視化するために必要な情報も各端末30へ配信する。各端末30で、ルームがレンダリングされ、ユーザの音声が出力されるので、ユーザ間でコミュニケーションを取ることができる。端末30は、アバターの視点でルームをレンダリングしてもよいし、アバターの視点とは異なる視点でルームをレンダリングしてもよい。例えば、ユーザがHMDを使用する場合はアバターの視点でルームをレンダリングする。ユーザがスマートフォンやパーソナルコンピュータなどディスプレイでルームを見る場合は、ルーム内に配置した仮想カメラの視点でルームをレンダリングする。
【0032】
制御部14は、ルーム内の様子を撮影した動画を配信してもよい。例えば、制御部14は、ルームに参加していない視聴者に向けて、仮想カメラでルームを撮影した動画を配信する。
【0033】
蓄積部15は、ルーム情報と影響情報を保持する。ルーム情報は、事業者から提供された基本のルームの状態だけでなく、ルームの管理者が配置したオブジェクト(例えば家具、階段、はしご、壁など)の情報を含んでもよい。蓄積部15は、基本的にルームごとにルーム情報と影響情報を保持する。蓄積部15は、ユーザのアカウントに関する情報やルームの管理に関する情報を保持してもよい。
【0034】
[サーバの動作]
図5のフローチャートを参照し、サーバ10の処理の流れの一例について説明する。図5の処理は、サーバ10が、ルームへの入室を要求する入室リクエストを端末30から受信したときに実行される。入室リクエストは、ルームの識別子、ユーザの識別子などを含む。ユーザは、ルームへの入室が許可されているものとする。
【0035】
ステップS11にて、サーバ10は、入室リクエストで指定されたルームのインスタンスが存在するか否か判定する。インスタンスが存在する場合、サーバ10は、ユーザのアバターをルームに配置し、処理をステップS14に進める。
【0036】
インスタンスが存在しない場合、ステップS12にて、サーバ10は、ルーム情報に基づいてルームのインスタンスを生成する。
【0037】
ステップS13にて、サーバ10は、影響情報に基づいてルームの影響を復元する。このとき、サーバ10は後述の影響削除処理を実行する。影響削除処理で削除された影響はルームに復元されずに、影響情報から削除される。
【0038】
ルームが前回の保存状態に基づいて復元されると、サーバ10は、ユーザのアバターをルームに配置する。
【0039】
ステップS14にて、サーバ10は、音声データや制御データを端末30との間で送受信し、制御データに基づいてアバターを制御する。
【0040】
ルームにユーザが存在する場合、つまりルームのインスタンスが存在する場合、他のユーザの端末30からルームへの入室リクエストを受信すると、サーバ10は、ステップS11にてYESと判定し、そのユーザのアバターをルームに配置する。
【0041】
サーバ10が端末30から退室リクエストを受信した場合、退室リクエストに対応するアバターをルームから削除する。
【0042】
ステップS15にて、サーバ10は、全てのユーザがルームからいなくなったか否かを判定する。ルームに参加するユーザが存在する場合は、ステップS14の処理を繰り返す。
【0043】
全てのユーザがいなくなった場合、ステップS16にて、サーバ10は、ルームを復元できるように、ルームへの影響を影響情報に保存する。このとき、サーバ10は影響削除処理を実行し、削除されない影響のみを影響情報に保存してもよい。なお、影響削除処理は、少なくともステップS13とステップS16のいずれかで実行すればよい。
【0044】
ステップS17にて、サーバ10は、ルームのインスタンスを消去する。
【0045】
[影響削除処理]
図6のフローチャートを参照し、影響削除処理の一例について説明する。影響削除処理は、ルームにユーザが存在しないときに実行される。本実施形態では、ルームのインスタンスを生成する際、ルームのインスタンスを削除する際に、影響削除処理が実行される。
【0046】
ステップS21にて、サーバ10は、ルーム内の影響の数が閾値を超えているか否か判定する。例えば、サーバ10は、ルームに置かれたアイテム数が閾値を超えているか否かを判定する。サーバ10は、影響の数が少なければ、全ての影響の影響データを影響情報に追加して処理を終了する。影響の数が閾値以下の場合は、サーバ10が影響を削除する処理を実行しない。これにより、ルームへの影響が全て削除されることなく、いくつかの影響がルームに残るので、ユーザはルームの継続性を実感できる。なお、サーバ10は、ステップS21の処理を実行せずに、影響の数にかかわらずステップS22以下の処理を実行してもよい。
【0047】
ステップS22にて、サーバ10は、影響のそれぞれについてスコアを計算する。例えばルームにアイテムが置かれたときに、そのアイテムに寿命が設定される。寿命が影響のスコアである。アイテムの寿命は時間の経過に応じて減らされる。なお、ルームにユーザが存在する場合は、アイテムの寿命が尽きたとしても、アイテムや落書きが自動的に削除されることはない。ただし、ユーザはアイテムを片付けたり、落書きを消したりすることはできる。
【0048】
サーバ10は、影響のそれぞれについて、以下のステップS23からステップS25の処理を行う。
【0049】
ステップS23にて、サーバ10は、削除条件に基づいてその影響を削除するか否か判定する。例えば、スコアが所定値以下になった影響は削除すると判定される。あるいは、スコアの低い順に、所定数の影響を削除すると判定してもよい。あるいは、スコアの小さい影響ほど削除されやすいように、スコアの大きさに応じてランダムに影響を削除するか否かを判定してもよい。
【0050】
削除すると判定された場合、ステップS24にて、サーバ10は、影響情報から該当する影響データを削除する。
【0051】
残すと判定された場合、ステップS25にて、サーバ10は、影響情報に影響データを追加する。インスタンス生成時に影響削除処理を行う場合、サーバ10は、影響データに基づいて影響をルームに復元する。
【0052】
[スコアの算出例]
次に、アイテムについて、スコアの算出例を説明する。ユーザはアイテムを作成することができる。アイテムを作成するとは、アイテムのモデルデータを作成することである。アイテムの作者は、アイテムを無償で配布したり、有償で販売したりできる。ユーザは自身が所有するアイテムをいくつでもコピーしてルーム内に置くことができる。アイテムの作者とアイテムの使用者は同一人物であるとは限らない。以下、アイテムのスコア算出例について説明する。
【0053】
アイテムが置かれてからの経過時間がスコアに反映されてもよい。より古くから存在するアイテムほど削除される可能性が高くなる。
【0054】
ユーザのアイテムに対する操作がスコアに反映されてもよい。例えば、アイテムに対して、見る、持つ、使う、装着する、参照する、購入するなどの操作が行われると、その操作がスコアに反映される。
【0055】
アイテムに対する評価がスコアに反映されてもよい。例えば、ユーザが、アイテムに対して、「いいね」「よくないね」「通報」「非表示」などアクションをできるようにする。アイテムに対するアクションがスコアに反映される。
【0056】
アイテムを置いたユーザの属性がスコアに反映されてもよい。例えば、有名人が置いたアイテムはスコアを高くし、BANされた履歴のあるユーザが置いたアイテムはスコアを低くする。ルームの管理者が置いたアイテムはスコアを高くする。
【0057】
アイテムの属性がスコアに反映されてもよい。例えば、アイテム名や説明が正しく設定されている、自由に利用できるように公開されたアイテムである、あるいは有償販売されているアイテムである場合にスコアを高くする。
【0058】
アイテムの作者の属性がスコアに反映されてもよい。例えば、アイテムの作者が信頼できるユーザである場合や交友関係が広い場合にスコアを高くする。
【0059】
落書きなどのアイテム以外の影響についても、アイテムと同様に、さまざま要素をスコアに反映できる。
【0060】
[ルームの複製]
次に、ルームの複製について説明する。
【0061】
1つのルーム情報から複数のインスタンスを生成することで、同じ構成のルーム、つまり同一配置のルームを生成することができる。例えば、遊園地の仮想空間など、大人数が参加する仮想空間については、複数のインスタンスを生成して参加者を分散させる。複数のインスタンスのそれぞれは、互いに独立した仮想空間である。
【0062】
開園時間にインスタンスが生成され、閉園時間にインスタンスが削除される。開園から閉園までの営業時間内に与えられた影響(例えば、ユーザによって園内に置かれたアイテム)について、インスタンスが削除されるときにその影響を削除する方法がある。この場合、次の営業時には、前回の影響が全く反映されていないインスタンスが生成される。
【0063】
影響を保存する場合、複数のインスタンスのうちのいずれか1つの影響を保存する方法が考えられる。次の営業時には、保存した同じ影響を全部のインスタンスに反映する。しかしながら、影響が保存されない他のインスタンスについては影響が切り捨てられるという問題がある。複数のインスタンスの影響をそれぞれ保存する場合、生成するインスタンスの数は参加者数に応じて動的に決められるため、生成されないインスタンスについては影響が復元されない。
【0064】
そこで、本開示では、複数のインスタンスそれぞれの影響を1つにまとめる。
【0065】
図7図8を参照し、ルームを複製したときの影響の処理の概要について説明する。図7では、一つのルーム情報から同じ構成の3つのルーム100A,100B,100Cが生成された。ルーム100A,100B,100Cのそれぞれでアバターが行動する。サーバ10は、全てのルーム100A,100B,100Cを同時に生成する必要はなく、ルームへの参加希望者が増えたときに、新たにルーム(インスタンス)を生成してよい。
【0066】
図7の例では、初期状態ではアイテムは置かれておらず、稼働中に、ルーム100Aにアイテム300Aが置かれ、ルーム100Bにアイテム300Bが置かれ、ルーム100Cにアイテム300Cが置かれたものとする。
【0067】
ルーム100A,100B,100Cからユーザがいなくなると、サーバ10は、ルーム100A,100B,100Cを削除する。サーバ10は、ユーザがいなくなったルームから順に削除してよい。
【0068】
ルームを削除する際、サーバ10は、ルーム100A,100B,100Cそれぞれに置かれたアイテム300A,300B,300Cの情報を1つの影響情報にまとめて保存する。例えば、サーバ10は、ルーム100Aを削除する際にアイテム300Aの影響データを影響情報に保存し、ルーム100Bを削除する際にアイテム300Bの影響データを同じ影響情報に保存し、ルーム100Cを削除する際にアイテム300Cの影響データを同じ影響情報に保存する。影響情報には、アイテム300A,300B,300Cのそれぞれを復元するための影響データが含まれる。
【0069】
次の営業時、図8では、図7で保存した影響情報を用いてルーム100A,100B,100Cを生成する。
【0070】
サーバ10は、ルーム100A,100B,100Cを生成する際に、図6のフローチャートに従って影響削除処理を実行する。ルーム100A,100B,100Cを削除する際に影響削除処理を実行してもよい。図8の例では、影響情報には3つの影響(アイテム300A,300B,300C)が含まれるので、サーバ10は、アイテム300A,300B,300Cのそれぞれについて削除するか否かを判定する。影響削除処理の結果、アイテム300Cが削除された。
【0071】
サーバ10は、ルーム100A,100B,100Cを生成し、全てのルーム100A,100B,100Cにおいてアイテム300A,300Bを復元する。
【0072】
以上説明したように、本実施形態のサーバ10は、参加者間でコミュニケーションが可能なルーム(仮想空間)を提供するサーバ10である。サーバ10は、参加者によるルームに対する影響を復元するための影響データを保存する蓄積部15と、ルームを生成する際に蓄積部15から影響データを読み出して影響を復元する復元部12と、ルームに参加者がいないときに削除条件に基づいて影響データを蓄積部15から削除する更新部13を備える。これにより、アイテムは片付けなくても自動で削除されることがあるので、ユーザは気兼ねなくアイテムを配置することができる。また、アイテムは必ずしも削除されるものではないので、ユーザはルームの継続性を実感できる。その結果、ユーザによるアイテムの利用を促進できる。
【0073】
本実施形態のサーバ10は、管理部11が、同じ構成の複数のルームを生成し、蓄積部15は、複数のルームのそれぞれに対する影響を復元するための影響データをルームを区別せずに保存する。これにより、複数のルームの影響がまとめて1つの影響情報に保存されるので、同じルーム情報から複製された複数のルーム間での格差をなくすことができる。
【0074】
本開示で述べた各機能部の任意の一部または全部をプログラムによって実現するようにしてもよい。本開示で言及したプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に非一時的に記録して頒布されてもよいし、インターネットなどの通信回線(無線通信も含む)を介して頒布されてもよいし、任意の端末にインストールされた状態で頒布されてもよい。上記の記載に基づいて、当業者であれば、本開示の追加の効果や種々の変形例を想到できるかもしれないが、本開示の態様は、上述した個々の実施形態には限定されるものではない。特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本開示の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。例えば、本開示において1台の装置(あるいは部材、以下同じ)として説明されるもの(図面において1台の装置として描かれているものを含む)を複数の装置によって実現してもよい。逆に、本開示において複数の装置として説明されるもの(図面において複数の装置として描かれているものを含む)を1台の装置によって実現してもよい。あるいは、ある装置(例えばサーバ)に含まれるとした手段や機能の一部または全部が、他の装置(例えばユーザ端末)に含まれるようにしてもよい。また、「システム」とは、1台の装置から構成されてもよいし、2以上の装置(例えばサーバとユーザ端末、あるいは複数のユーザ端末)から構成されてもよい。
【0075】
また、本開示に記載された事項の全てが必須の要件というわけではない。特に、本開示に記載され、特許請求の範囲に記載されていない事項は任意の付加的事項ということができる。
【0076】
なお、本出願人は本開示の「先行技術文献」欄の文献に記載された文献公知発明を知っているにすぎず、本開示は必ずしも同文献公知発明における課題を解決することを目的とするものではないことにも留意されたい。本開示が解決しようとする課題は本開示全体を考慮して認定されるべきものである。例えば、本開示において、特定の構成によって所定の効果を奏する旨の記載がある場合、当該所定の効果の裏返しとなる課題が解決されるということもできる。ただし、必ずしもそのような特定の構成を必須の要件とする趣旨ではない。
【符号の説明】
【0077】
10 サーバ
11 管理部
12 復元部
13 更新部
14 制御部
15 蓄積部
30 端末
【要約】
【課題】ユーザのアイテム使用を促進する。
【解決手段】サーバ10は、参加者間でコミュニケーションが可能なルーム(仮想空間)を提供するサーバ10である。サーバ10は、参加者によるルームに対する影響を復元するための影響データを保存する蓄積部15と、ルームを生成する際に蓄積部15から影響データを読み出して影響を復元する復元部12と、ルームに参加者がいないときに削除条件に基づいて影響データを蓄積部15から削除する更新部13を備える。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8