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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】T字隅肉溶接継手および鋼構造物
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20241119BHJP
   C22C 38/16 20060101ALI20241119BHJP
   B23K 9/02 20060101ALI20241119BHJP
   B23K 9/00 20060101ALN20241119BHJP
   B23K 31/00 20060101ALN20241119BHJP
   C21D 8/02 20060101ALN20241119BHJP
【FI】
C22C38/00 301Z
C22C38/16
B23K9/02 S
B23K9/02 D
B23K9/00 501B
B23K31/00 F
C21D8/02 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024124845
(22)【出願日】2024-07-31
【審査請求日】2024-08-14
(31)【優先権主張番号】P 2023197581
(32)【優先日】2023-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100136777
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 純子
(72)【発明者】
【氏名】山口 徹雄
(72)【発明者】
【氏名】石井 裕規
(72)【発明者】
【氏名】高嶋 康人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 孝矩
【審査官】河野 一夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-094686(JP,A)
【文献】特開2008-290116(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00
C22C 38/16
B23K 9/02
B23K 9/00
B23K 31/00
C21D 8/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板に立て板を隅肉溶接してなるT字溶接継手であって、前記平板に用いる鋼板は、
化学組成が、
C :0.03~0.08質量%、
Si:0.30~0.60質量%、
Mn:1.00~2.00質量%、
P :0質量%超、0.020質量%以下、
S :0質量%超、0.002質量%以下、
Al:0.01~0.05質量%、
Cu:0.10~0.50質量%、
Ni:0.10~0.50質量%、
Nb:0質量%超、0.030質量%以下、
Ti:0.005~0.025質量%、
N :0.002~0.007質量%、
Ca:0.0005~0.0030質量%、および
Si+Cu:0.4質量%以上を満たし、
残部はFeおよび不可避不純物からなり、更に、
鋼板の板厚方向に表面から1mmまでの断面領域において、長さが10μmを超える非金属介在物の個数密度が10個/mm以下である、T字隅肉溶接継手。
【請求項2】
前記平板に用いる鋼板の降伏強さは500MPa以下である、請求項1に記載のT字隅肉溶接継手。
【請求項3】
T字片面隅肉溶接継手であって、溶接部の溶け込み率が、立て板の板厚の50~90%である、請求項1または2に記載のT字隅肉溶接継手。
【請求項4】
請求項1または2に記載のT字隅肉溶接継手を有する、鋼構造物。
【請求項5】
請求項3に記載のT字隅肉溶接継手を有する、鋼構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、T字隅肉溶接継手および鋼構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁、船舶、建築物、建設機械等の溶接構造物では、該溶接構造物の疲労強度向上の観点から、溶接継手の疲労強度を向上することが求められる。溶接継手の疲労強度を向上させる技術として、止端形状を改善する技術、溶接残留応力を低減する技術等が挙げられる。
【0003】
前記止端形状を改善する技術として、例えば特許文献1には、隅肉溶接継手の溶接止端部を研削する方法、また特許文献2には、TIGアーク熱により溶接止端部を溶融して滑らかにする方法が示されている。前記溶接残留応力を低減する技術として、例えば特許文献3には、溶接ビードに沿ってハンマーピーニングまたは超音波衝撃処理で圧縮残留応力を導入して疲労強度を改善する方法が示されている。また特許文献4、特許文献5には、低変態温度溶接材料を使用して溶接する方法が示されている。
【0004】
前記溶接構造物が橋梁である場合、例えば溶接継手として、橋梁鋼床板にリブ材が隅肉溶接により取り付けられた隅肉溶接継手が挙げられる。該隅肉溶接継手の疲労強度を高める技術として、例えば特許文献6には、平板と縦板の突合せ部にレ開先(くさび状空隙)を有する略T字型の隅肉溶接継手において、開先として開先角度20°以上35°以下のレ開先(くさび状空隙)を形成し、1電極1パス当たりの入熱量が5kJ/cm以上、10kJ/cm以下でソリッドワイヤを用いたガスメタルアーク溶接により裏波ビードを形成することが示されている。
【0005】
また特許文献7には、多パス溶接であって、1パス目の溶接金属の変態開始温度が175℃~400℃の範囲となるような溶接材料を用いて溶接を施す第1の溶接工程、次いで、前記第1の溶接工程で形成した溶接金属の一部が未溶融部となるように、溶接金属を1パスまたは2パス以上で盛り上げる溶接を施す第2の溶接工程であって、最終パスの溶接熱により前記未溶融部を全てオーステナイトに再変態させる第2の溶接工程を有する、多パス溶接を行うことが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平5-69128号公報
【文献】特開昭59-110490号公報
【文献】特開2013-233590号公報
【文献】特許3851953号
【文献】特許3752545号
【文献】特開2008-290115号公報
【文献】国際公開第2012/114532号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
鋼材が高強度化すると、鋼材自体の疲労強度は向上する。しかし、鋼材自体の疲労強度が向上しても、溶接継手の疲労強度は改善しないことが、例えば、渡辺修ら、「高強度鋼溶接継手の疲労強度とその支配因子-応力集中係数と溶接残留応力の効果-」、溶接学会論文集,1995年、第13巻、第3号、p.438-443によって知られている。その理由として、溶接ビードの止端部の形状に起因した応力集中、溶接で生じた引張残留応力の存在により、溶接ビード内で疲労亀裂が発生しやすい状態となり、これらの現象に鋼材の疲労強度は影響しないためと考えられている。
【0008】
特許文献1、2のように止端形状を改善する技術と、特許文献3のように溶接残留応力を低減する技術は、継手の疲労寿命の改善に寄与するが、例えば、橋梁鋼床板にリブが隅肉溶接により取り付けられた隅肉溶接継手の場合、疲労亀裂発生位置は溶接ルート部であり溶接後に止端形状の改善や溶接残留応力の低減といった対応を行うことができない。
【0009】
また溶接ルート部の疲労改善技術としては、特許文献4、5のように低変態温度溶接材料を使用して溶接すること、特許文献6、7のように、混合ガスでの裏波溶接を行うことや特殊な溶接材料で多パス溶接を実施するものがある。しかし、これらはいずれも特殊な溶接であり、通常の隅肉溶接(特に橋梁鋼床板にUリブを隅肉溶接、更に特には橋梁鋼床板にUリブを片面隅肉溶接)で疲労特性が改善されていない。
【0010】
特に、橋梁鋼床板にUリブを片面隅肉溶接した、T字片面隅肉溶接継手(以下「鋼床板Uリブ溶接継手」ということがある)は、該溶接継手側からの平板(デッキプレート)貫通の疲労亀裂を目視点検で発見することが困難なため、Uリブ溶接継手のルート部からの疲労亀裂発生の抑制が求められる。
【0011】
上記の通り、溶接継手の疲労強度を向上させる方法として種々の方法があるが、これらの方法では簡易的に溶接継手の疲労強度を十分高めることが難しく、更なる改善が必要であると考えられる。本開示は該事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、高い疲労強度を示すT字隅肉溶接継手と、該T字隅肉溶接継手を有する、鋼構造物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の態様1は、
平板に立て板を隅肉溶接してなるT字溶接継手であって、前記平板に用いる鋼板は、
化学組成が、
C :0.03~0.08質量%、
Si:0.30~0.60質量%、
Mn:1.00~2.00質量%、
P :0質量%超、0.020質量%以下、
S :0質量%超、0.002質量%以下、
Al:0.01~0.05質量%、
Cu:0.10~0.50質量%、
Ni:0.10~0.50質量%、
Nb:0質量%超、0.030質量%以下、
Ti:0.005~0.025質量%、
N :0.002~0.007質量%、
Ca:0.0005~0.0030質量%、および
Si+Cu:0.4質量%以上を満たし、
残部はFeおよび不可避不純物からなり、更に、
鋼板の板厚方向に表面から1mmまでの断面領域において、長さが10μmを超える非金属介在物の個数密度が10個/mm以下である、T字隅肉溶接継手である。
【0013】
本発明の態様2は、
前記平板に用いる鋼板の降伏強さは500MPa以下である、態様1に記載のT字隅肉溶接継手である。
【0014】
本発明の態様3は、
T字片面隅肉溶接継手であって、溶接部の溶け込み率が、立て板の板厚の50~90%である、態様1または2に記載のT字隅肉溶接継手である。
【0015】
本発明の態様4は、
態様1または2に記載のT字隅肉溶接継手を有する、鋼構造物である。
【0016】
本発明の態様5は、
態様3に記載のT字隅肉溶接継手を有する、鋼構造物である。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、高い疲労強度を示すT字隅肉溶接継手と、該T字隅肉溶接継手を有する鋼構造物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、溶け込み率の求め方を説明する図である。
図2図2は、疲労試験に用いた疲労試験体の側面図と上面図である。
図3図3は、疲労試験に用いた疲労試験装置の概略側面図である。
図4図4は、疲労試験体に貼り付けたひずみゲージの位置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明者らは、高い疲労強度を示す、平板に立て板を隅肉溶接してなるT字溶接継手(T字隅肉溶接継手)を得るべく鋭意研究を行った。その結果、該溶接継手を得るには、前記平板に用いる鋼板の化学組成を制御するとともに、該鋼板の板厚方向に表面から1mmまでの断面領域(以下「表層域」ということがある)の非金属介在物の形態を制御すればよいことを見出した。
【0020】
更には、好ましくは前記平板に用いる鋼板の降伏強さを500MPa以下とすることによって、より高い疲労強度を達成できることを見出した。
【0021】
(T字隅肉溶接継手における平板(鋼板)の化学組成)
平板に用いる鋼板の化学組成について以下に説明する。
【0022】
C:0.03~0.08質量%
Cは、主に母材(すなわち鋼板)の強度を確保するために重要な元素である。そのため、C含有量は0.03質量%以上とする。C含有量は、好ましくは0.04質量%以上である。一方、C含有量が過剰になると、強度が高くなり過ぎて所望の引張強度が得られないだけでなく、焼入れ性が過剰となり、小入熱溶接時の溶接熱影響部が硬化し、耐溶接割れ性が低下する。そのためC含有量は、0.08質量%以下とする。好ましくは0.07質量%以下であり、より好ましくは0.06質量%以下である。
【0023】
Si:0.30~0.60質量%
Siは、固溶強化量が大きく母材の強度を確保するために必要な元素であると同時に、転位の増殖を抑制することで、疲労亀裂発生寿命(応力負荷開始から疲労亀裂が発生するまでのサイクル数等で評価される寿命)を延ばすのに有効な元素である。溶接熱影響部においてもこの作用は有効である。これらの効果を発揮させるため、Si含有量は0.30質量%以上とする。Si含有量は、好ましくは0.35質量%以上である。しかし、Si含有量が過剰になると、靱性等の疲労特性以外の特性を低下させる恐れがある。そのため、Si含有量は、0.60質量%以下とする。Si含有量は、好ましくは0.55質量%以下である。
【0024】
Mn:1.00~2.00質量%
Mnは、オーステナイトを安定化させ、変態温度を低温化させる元素である。また、Mnは、低温変態による結晶粒径微細化効果により衝撃特性の確保に有効な元素である。さらに、Mnは、焼入れ性を向上させて強度向上に有効な元素でもある。これらの効果を発揮させるため、Mnを1.00質量%以上含有させる。Mn含有量は、より好ましくは1.20質量%以上である。しかし、Mnを過剰に含有させると、伸び特性、低温靭性及びHAZ靭性が劣化する。そのため、Mn含有量の上限は2.00質量%とする。Mn含有量は、好ましくは1.80質量%以下である。
【0025】
P:0質量%超、0.020質量%以下
P(リン)は、製造過程などで不可避的に不純物として含有される元素であり、母材やHAZの靭性及び疲労特性に悪影響を及ぼす元素である。よってP含有量は0.020質量%以下とする。Pは少なければ少ないほど好ましく、0.015質量%以下が好ましく、最も好ましくは0.010質量%以下である。なお製鋼能力の観点から、通常0質量%超は含まれ得る。
【0026】
S:0質量%超、0.002質量%以下
S(硫黄)もPと同様、製造過程などで不可避的に不純物として含有される元素であり、母材やHAZの靭性に悪影響を及ぼすだけでなく、MnSといった非金属介在物として鋼中に存在し、疲労特性にも悪影響を及ぼす元素である。よって、S含有量は少なく制限することが必要である。S含有量は0.002質量%以下とする。S含有量は少なければ少ないほど好ましい。なお製鋼能力の観点から、通常0質量%超は含まれ得る。
【0027】
Al:0.01~0.05質量%
Alは、脱酸に必要な元素であり、0.01質量%以上含有させる。Al含有量は、好ましくは0.015質量%以上である。一方、Alを過剰に含有させると、アルミナ系の粗大な介在物を形成し母材やHAZの衝撃特性が低下する。そのため、Al含有量は0.05質量%以下とする。
【0028】
Cu:0.10~0.50質量%
Cuは、Siと同様に、転位の増殖を抑制することで疲労亀裂発生寿命を延ばすのに有効な元素であり、溶接熱影響部においても疲労亀裂発生寿命を延ばすのに有効な元素である。この作用を有効に発揮させるため、Cu含有量は0.10質量%以上とする。Cu含有量は、好ましくは0.15質量%以上、より好ましくは0.20質量%以上である。しかし、Cu含有量が過剰となると、焼入れ性が過剰となるだけでなく、熱間加工時に割れなどが生じやすくなる。よって、Cu含有量は0.50質量%以下とする。Cu含有量は、好ましくは0.45質量%以下、より好ましくは0.40質量%以下である。
【0029】
Ni:0.10~0.50質量%
Niは、焼入れ性を向上させ、組織を微細にする効果があると同時に、Cu添加により生じやすくなる熱間加工時の割れを抑制する効果がある。このような効果を発揮させるため、Ni含有量を0.10質量%以上とする。Ni含有量は、好ましくは0.15質量%以上、より好ましくは0.20質量%以上である。しかし、原料コストを低減する観点から、Niは少ない方がよい。そのため、Ni含有量は0.50質量%以下とする。Ni含有量は、好ましくは0.45質量%以下であり、より好ましくは0.40質量%以下である。
【0030】
Nb:0質量%超、0.030質量%以下
Nbは、焼入れ性を向上させ、組織を微細化させるために有効な元素である。こうした作用を有効に発揮させるため、Nb含有量は0質量%超とする。Nb含有量は、好ましくは0.010質量%以上、より好ましくは0.015質量%以上である。しかしながら、Nb含有量が過剰になると、焼入れ性が過剰になり、HAZの靭性に悪影響を及ぼす。そのため、Nb含有量は0.030質量%以下とする。Nb含有量は、好ましくは0.025質量%以下、より好ましくは0.020質量%以下である。
【0031】
Ti:0.005~0.025質量%
Tiは、焼入れ性を向上させる効果を有し、またTiNを形成することで、スラブ加熱時や溶接熱影響部の組織を微細とし、靱性の低下の抑制などに有用な元素である。このため、Ti含有量は0.005質量%以上とする。Ti含有量は、好ましくは0.008質量%以上である。しかしながら、Ti含有量が過剰になると、粗大なTiNが生じて母材やHAZの靱性などの特性を低下させるおそれがある。そのため、Ti含有量は0.025質量%以下とする。Ti含有量は、好ましくは0.020質量%以下である。
【0032】
N:0.002~0.007質量%
Nは、Al、Tiなどと窒化物を形成することによって組織を微細化し、母材および溶接熱影響部の靭性を向上させる効果を有する。こうした効果を発現させるため、N含有量は0.002質量%以上とする。N含有量は、好ましくは0.003質量%以上である。しかしながら、N含有量が過剰になると、母材中に析出する窒化物量が増加し、母材靭性が著しく低下し、さらに溶接熱影響部においても粗大な炭窒化物を形成し靭性が低下する。そのため、N含有量は0.007質量%以下とする。N含有量は、好ましくは0.006質量%以下である。
【0033】
Ca:0.0005~0.0030質量%
Caは、MnSなどの硫化物系の非金属介在物の延伸を抑制する等、非金属介在物の形態制御に有用な元素である。その効果を発揮させるため、Ca含有量は0.0005質量%以上とする。Ca含有量は好ましくは0.0010質量%以上である。しかし、Ca含有量が過剰になると、清浄度の低下を招き靭性が劣化する。そのため、Ca含有量は0.0030質量%以下とする。Ca含有量は、好ましくは0.0025質量%以下である。
【0034】
Si+Cu:0.4質量%以上
SiおよびCuは、転位の増殖を抑制することで疲労亀裂発生寿命を延ばす効果を有する。この効果は溶接熱影響部でも有効に発揮される。すなわちSiおよびCuは、溶接熱影響部の亀裂発生を抑制し、溶接継手の疲労特性を改善する効果を発揮する。この効果を有効に発揮させるため、SiおよびCuの合計含有量(Si+Cu)を0.40質量%以上とする。Si+Cuは、好ましくは0.45質量%以上、より好ましくは0.50質量%以上である。尚、Si+Cuの好ましい上限は、SiとCuの夫々の元素の含有量の好ましい上限の合計となる。
【0035】
残部:Feおよび不可避不純物
好ましい1つの実施形態では、残部はFeおよび不可避不純物である。不可避不純物としては、原料、資材、製造設備等の状況によって持ち込まれる微量元素(例えば、As、Sb、Snなど)の混入が許容される。なお、例えば、PおよびSのように、通常、含有量が少ないほど好ましく、従って不可避不純物であるが、その組成範囲について上記のように別途規定している元素がある。このため、本明細書において、残部を構成する「不可避不純物」という場合は、別途その組成範囲が規定されている元素を除いた概念である。
【0036】
(T字隅肉溶接継手における平板(鋼板)の表層部の非金属介在物)
[鋼板の板厚方向に表面から1mmまでの断面領域における、長さが10μmを超える非金属介在物の個数密度:10個/mm以下]
平板である鋼板に対して立て板を隅肉溶接し、T字隅肉溶接継手を製造する場合、平板の溶接止端部やルート部からの疲労亀裂発生は、平板である鋼板の表面部に位置する。平板である鋼板の表面からの疲労亀裂発生の原因の一つとして、特に、平板である鋼板の表層部の非金属介在物の存在が挙げられる。平板である鋼板の表層部の非金属介在物の大きさ、個数を低減することが重要であり、特に、上記疲労亀裂発生の原因となりやすい、MnSなどの様な熱間圧延により圧延方向に伸張した非金属介在物を低減することが、上記疲労亀裂発生の抑制に重要であると考えられる。
【0037】
そこで本実施形態では、鋼板の板厚方向に表面から1mmまでの断面領域における、長さが10μmを超える非金属介在物の個数密度を10個/mm以下に抑える。前記個数密度は、小さいほど好ましく、5個/mm以下であることが好ましい。本開示で対象とする非金属介在物の種類は問わないが、例えば上述したMnS、アルミナ等が含まれうる。非金属介在物の前記「長さ」とは、非金属介在物の外接円直径をいう。なお、例えばMnSは、圧延時に圧延方向に引き延ばされるため、非金属介在物の長さ方向は圧延方向と一致し得る。よって鋼板の圧延方向が明らかである場合には、非金属介在物の前記「長さ」は、鋼板の圧延方向の直線長さともいえる。該個数密度は後述する実施例に記載の方法で求められる。また、継手における平板を採取した後、実施例に記載の方法で求めてもよい。
【0038】
(T字隅肉溶接継手における平板(鋼板)の降伏強さ)
立板の溶接時、平板である鋼板により面内回転変形が拘束されるため、平板である鋼板の降伏強さにより直交方向残留応力は変化する。この直交方向残留応力が小さいほど疲労亀裂発生抑制に有効である。本開示の平板に用いる鋼板が、上述した化学組成と非金属介在物の形態を満たし、更には降伏強さが500MPa以下であることにより、疲労亀裂の発生がより一層抑制される。前記平板に用いる鋼板の降伏強さは、好ましくは480MPa以下、より好ましくは450MPa以下である。ただし、母材強度確保の観点から、前記平板に用いる鋼板の降伏強さの下限は350MPa程度である。
【0039】
(T字隅肉溶接継手における平板(鋼板)の製造方法)
本実施形態では、溶製し鋳造(例えば連続鋳造)を行うことにより、所定の化学組成の鋼片を得る。その後、熱間圧延前に前記鋼片の表裏面につき、片側につき深さ1~2mm程度を溶削または研削により除去して、本実施形態に係る鋼板を得る。
【0040】
上記溶削または研削によって、鋳造して得られる鋼片の表層部に存在するMnSなどの様な熱間圧延により圧延方向に伸張しやすい非金属介在物を除去する。また鋼片の極表面には、Nb、Ti(マイクロアロイ元素)等の窒化物に起因し、不可避的な鋼片割れ等が発生することがある。更に鋼片の表層部には、連続鋳造時に使用のモールドパウダーの巻き込み等により、外来の介在物も不可避的に存在しうる。外来の介在物は、圧延により開口して割れ疵となった場合、圧延後に研削除去されるのが一般的であるが、外来の介在物が微小で圧延により開口せず鋼板の表層部に残存した場合、疲労亀裂発生の一因となる。よって、溶削または研削により、これら鋼片割れや外来の介在物も併せて除去することが好ましい。
【0041】
熱間圧延時の加熱温度や熱間圧延条件は特に限定されず、所望の強度(概ね、引張強さ400MPa~600MPa級)、靭性、サイズが得られるように、一般的な厚鋼板の製造条件を設定することができる。板厚は、例えば6~100mmとすることができ、該板厚も、熱間圧延の条件を適宜設定することで制御できる。なお、鋼板の降伏強さを500MPa以下の好ましい範囲内とする方法として、例えば後述する実施例に示す通り、熱間圧延後に焼きならしを行うこと等が挙げられる。
【0042】
(T字隅肉溶接継手)
本開示のT字隅肉溶接継手は、平板に立て板を隅肉溶接してなるT字溶接継手であって、前記平板に用いる鋼板が上述した化学組成と非金属介在物の形態を満たす。一方、前記立て板に用いる鋼板は限定されず、T字溶接継手の用途等に応じて適宜選択される。立て板に用いる鋼板として、一般的には平板と同程度の強度クラスの鋼板が用いられうる。
【0043】
本開示のT字隅肉溶接継手は、好ましくはT字片面隅肉溶接継手であって、溶接部の溶け込み率が、立て板の板厚の50~90%である。溶け込み率は、図1に示される通り、立て板5の板厚をT(mm)、立て板5の板厚に占める溶け込み深さをt(mm)としたときに、(t/T)×100(%)で求められる。溶け込み率は、溶接ルート側に応力集中をさせるため立て板の板厚の50%以上必要であり、より好ましくは55%以上である。溶け込み率が立て板の板厚の90%を超えると、溶接の安定性から局所的な溶接の抜けにつながり、健全な溶接継手が得られないリスクが高まる。溶け込み率の上限は、好ましくは85%以下である。
【0044】
本発明のT字隅肉溶接継手として、好ましくは、片面隅肉溶接により溶け込み率が立て板の板厚の50~90%となるように溶接されたものは、特に、溶接ルート側で平板が片持ちの繰り返し曲げ振幅を受ける際に、疲労亀裂発生抑制効果をより発現できる。これは、平板が片持ちの繰り返し曲げ振幅を受ける際、溶接ルート側の平板における溶接熱影響部が応力集中部となるが、上記平板が、前述した化学組成および非金属介在物形態を制御した鋼板であれば、疲労亀裂発生が生じ難く、高い疲労特性を発揮しうる。
【0045】
T字隅肉溶接継手は、平板に対し、立て板がほぼT字状に隅肉溶接された継手であり得る。立て板は、平板に対しほぼ垂直に溶接するIリブ(平面板)に限られず、平板に対し約77°の角度で溶接するUリブ等が含まれる。本開示のT字隅肉溶接継手は、立て板としてUリブが用いられる場合に、優れた疲労特性を発揮できる。なお後述する実施例では、立て板としてUリブを用いたT字隅肉溶接継手を模擬した疲労試験体を作製しており、該疲労試験体における立て板はUリブの一部を模擬したものである。
【0046】
(T字隅肉溶接継手の製造方法)
本開示では、溶接継手に用いる鋼板に応じて、溶接材料の組成および溶接方法、溶接条件を調整して、適正な組成の溶接金属を形成すればよい。本開示のT字隅肉溶接継手作製のための溶接方法として、被覆アーク溶接、ガスメタルアーク溶接、サブマージアーク溶接、FCW(フラックス コアド ワイヤ)などの各種溶接方法を好適に適用できる。
【0047】
本開示には、前記T字隅肉溶接継手を有する鋼構造物も含まれる。鋼構造物として、例えば、船舶、海洋構造物、ペンストック、橋梁、貯槽、建設機械等が挙げられる。本開示の鋼構造物は、溶接継手として、上述した本開示のT字隅肉溶接継手を含むため、高い疲労特性を発揮しうる。特に、橋梁のT字隅肉溶接継手として好適である。橋梁鋼床板のUリブ溶接部のルート側からの疲労亀裂発生抑制に有効なデッキプレート(平板)として、所定の化学組成と非金属介在物の形態を制御した鋼板(母材)を用いるため、汎用的な鋼板を平板に用いた場合と比較して、優れた疲労特性を発揮し、特には疲労亀裂発生が十分に抑制される。
【実施例
【0048】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、前述および後述する趣旨に合致し得る範囲で、適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0049】
1.サンプル作製
表1の化学組成の鋼片を連続鋳造により得た。鋼1-1と鋼1-2では、鋼片の表裏面を片側1~2mm程度溶削と研削により除去してから、鋼片を加熱し、熱間圧延を行い、板厚16mmの鋼板(厚鋼板)を得た。一方、鋼2および鋼3では、連続鋳造により得られたままの鋼片を、加熱し、熱間圧延を行い、板厚16mmの鋼板(厚鋼板)を得た。ここで、鋼1-1の熱間圧延では制御圧延を行い、熱間圧延の仕上温度の狙いは740℃とした。鋼1-2の熱間圧延では制御圧延は行わず、熱間圧延後に930℃を狙って炉温設定した焼きならしを行った。鋼2および鋼3については、熱間圧延の仕上温度の狙いを750℃とした制御圧延を行うとともに、熱間圧延後に速やかに、冷却速度を5℃/s、冷却停止温度580℃を狙い条件とした加速冷却を行った。なお、表1において、下線を付した数値は、本開示の範囲から外れていることを示している。鋼1-1と鋼1-2は本発明例、鋼2および鋼3は、汎用的な引張強さ490MPa級の厚鋼板の比較例である。
【0050】
【表1】
【0051】
2.非金属介在物の観察
鋼1-1と鋼2の鋼板(厚鋼板)を用い、各鋼板の板厚方向であってかつ圧延方向と平行な方向の断面が観察できるように板幅方向のw/4近傍位置から切断して、観察用のサンプルを準備した。観察のための試験片の調製は、JIS G0555 鋼の非金属介在物の顕微鏡試験方法に従って行った。上記断面では、熱間圧延により圧延方向に伸張して疲労性能に悪影響を及ぼすと考えられる、非金属介在物が観察されやすく、よって、該断面における非金属介在物の形態制御は、厳しい制御条件であるといえる。
【0052】
観察は、詳細には、鋼板表面から1mm深さまでの領域において、任意の10か所の非金属介在物を観察した。1か所の観察は、観察倍率200倍(1視野のサイズ:470μm×350μm)で行った。観察では、長さとして非金属介在物の外接円直径が10μmを超える非金属介在物の個数をカウントした。なお本実施例では、鋼板の圧延方向が明らかであり、非金属介在物の前記「長さ」は、鋼板の圧延方向の直線長さにも相当する。合計10視野の、長さ10μmを超える非金属介在物の個数を集計し、1mmあたりの個数(非金属介在物の個数密度)を算出した。その結果を表2に示す。
【0053】
【表2】
【0054】
なお、鋼1-1と鋼1-2は別チャージで製造したが、同じ化学組成狙いで製造し、得られた鋼片の化学組成の違いは、製造上の不可避的な成分変動の範囲内であるため、これらの鋼片から得られた鋼板は、化学組成が同等の鋼板として扱った。また、上述した鋼1-1と鋼1-2の製造条件の違いは、本実施形態で規定する非金属介在物の個数密度には影響を及ぼさないと考えられるため、鋼1-1と鋼1-2は非金属介在物の個数密度が同等であると考えられる。よって、前記非金属介在物の観察は鋼1-1と鋼1-2のうち鋼1-1を用いて行った。
【0055】
また鋼2と鋼3も別チャージで製造したが、同じ化学組成狙いで製造したため、得られた鋼片の化学組成の違いは、製造上の不可避的な成分変動の範囲内である。さらに鋼2と鋼3は、製造条件も同じであるため、これらの鋼片から得られた鋼板は同等品として扱った。よって前記非金属介在物の観察は、鋼2と鋼3のうち鋼2を用いて行い、後述する疲労特性の評価は、鋼2と鋼3のうち鋼3を用いて行った。
【0056】
3.鋼板の引張試験
JIS Z2241に従って引張試験を実施して鋼板の降伏強さを求めた。なお、試験片形状は1A号であり、鋼板の幅方向(圧延直角方向)が試験片の長手方向となるように試験片を採取した。求めた降伏強さを表3に示す。
【0057】
【表3】
【0058】
4.疲労特性の評価
鋼1-1、鋼1-2、鋼3の鋼板(板厚16mm)を用い、疲労特性の評価を行った。詳細には、鋼1-1、鋼1-2、鋼3の鋼板を、それぞれデッキプレート(平板)として、図2に示す、鋼床板デッキプレートとUリブの溶接部を模擬した疲労試験体(小型溶接継手試験モデル)を製作した。図2の下方は、疲労試験体1の上面図であり、図2の上方は、疲労試験体1の側面図を示す。図2の上方の側面図と後に示す図3では、図2下方の上面図で示したボルト9の表示を省略している。
【0059】
図2に示す通り、デッキプレート3に対し、立て板5として板厚6mmの鋼板を、Uリブを模擬して斜めに組み立て、溶け込み率が立て板5の板厚の75%程度となるように片面隅肉溶接を行った。片面隅肉溶接の条件はCO溶接とし、溶接電流は330A、アーク電圧は34V、溶接速度は45cm/min、溶接入熱15.0kJ/cmを狙いとした。次いで、横リブ模擬鋼板7として板厚12mmの鋼板を、横リブを模擬してUリブと交差するように組み立て、両面隅肉溶接を行って溶接体を得た。次いで、図2の下方に示す通り、幅200mmで横リブが幅中央に位置するように溶接体の周囲を切断して疲労試験体1を得た。図2において、符号11は片面隅肉溶接部を示し、符号13は両面隅肉溶接部を示す。鋼1-1と鋼3について片面隅肉溶接部の溶け込み率(立て板の板厚に対する溶け込み深さの比)として、製作した疲労試験体の2か所計測し、平均値を算出した。その結果、鋼1-1の溶け込み率は72.3%、鋼3の溶け込み率は65.7%であった。なお鋼1-2の溶け込み率の計測は行っていない。しかし、溶け込み率は溶接電流、アーク電圧、溶接速度、溶接入熱によって支配され、鋼1-2の片面隅肉溶接は、鋼1-1、鋼3と同じ溶接条件狙いで行ったため、鋼1-2で得られた疲労試験体も、鋼1-1、鋼3の疲労試験体と同等の溶け込み率が得られているといえる。
【0060】
得られた疲労試験体1を用いて疲労試験を次の通り行った。図3は、疲労試験装置20の概略側面図である。図3に示す通り、疲労試験は可搬型アクチュエータ21を用い、片持ち曲げ方式で実施し、荷重制御により応力比を0.1として載荷し、打ち切り限界は1000万回とした。図3に示す通り、立て板5から、荷重付加位置までの距離は200mmとした。図2の疲労試験体1のデッキプレート3にあらかじめ複数のひずみゲージを貼り付けて疲労試験を行った。図4はひずみゲージ貼付位置を示した疲労試験体1の上面図である。ひずみゲージを、デッキプレート3の立て板5から可搬型アクチュエータ21までの領域の約半分に貼り付けた。このうち、横リブ模擬鋼板7から50mm離れた位置にあるひずみゲージST02,ST03,ST05,ST06,ST07,ST08は、横リブ模擬鋼板7との交差の影響のない一般部に相当する。
【0061】
疲労試験では、貼り付けたひずみゲージの値を計測し、疲労試験中のひずみ変動範囲を調べた。ひずみゲージで測定したひずみ変動範囲が初期値から5%低下したときを疲労亀裂が発生したと定義し、初期値から5%低下したときの繰返し数を、疲労亀裂発生寿命N5%と定義して評価した。そして、横リブ交差の影響の無い一般部において曲げモーメントに応じたひずみ勾配を確認し、模擬Uリブ位置に外挿した値で公称応力範囲Δσを定義した。打ち切り限界強度σwは、打ち切り限界までに疲労亀裂が発生した最小Δσと、発生しなかった最大Δσとの平均値とした。
【0062】
これらの結果を表4に示す。なお上述した通り、本実施例では鋼2と鋼3の鋼片から得られた鋼板は同等品として扱っており、鋼3の疲労特性の評価結果は鋼2の疲労特性の評価結果でもありうる。本実施例では、打ち切り限界強度σwが、汎用的な引張強さ490MPa級の厚鋼板である鋼2、3の打ち切り限界強度σwに対して、10%以上高い場合を、疲労強度が高く優れた疲労特性を示すと評価した。
【0063】
【表4】
【0064】
表1~表4の結果から次のことがわかる。本開示の溶接継手は、所定の化学組成と非金属介在物の形態を満足しているため、打ち切り限界強度σwは、鋼2と鋼3に対して22%以上向上し、従来よりも優れた疲労特性を示すことがわかった。
【0065】
さらに上述の通り、立板の溶接時、平板である鋼板により面内回転変形が拘束されるため、平板である鋼板の降伏強さにより直交方向残留応力は変化する。この直交方向残留応力が小さいほど疲労亀裂発生抑制に有効であるため、平板である鋼板の降伏強さは、低いほうが好ましい。なお鋼1-1よりも降伏強さの低い鋼2、3は、所定の化学組成と非金属介在物の形態を満足していないため、疲労特性は向上していない。一方、鋼1-2の通り、平板に用いる鋼板が所定の化学組成と非金属介在物の形態を満たし、更には、前記平板である鋼板の降伏強さを500MPa以下とすることにより、疲労亀裂の発生がより一層抑制されることがわかった。
【0066】
本明細書の開示内容は、以下の態様を含み得る。
(態様1)
平板に立て板を隅肉溶接してなるT字溶接継手であって、前記平板に用いる鋼板は、
化学組成が、
C :0.03~0.08質量%、
Si:0.30~0.60質量%、
Mn:1.00~2.00質量%、
P :0質量%超、0.020質量%以下、
S :0質量%超、0.002質量%以下、
Al:0.01~0.05質量%、
Cu:0.10~0.50質量%、
Ni:0.10~0.50質量%、
Nb:0質量%超、0.030質量%以下、
Ti:0.005~0.025質量%、
N :0.002~0.007質量%、
Ca:0.0005~0.0030質量%、および
Si+Cu:0.4質量%以上を満たし、
残部はFeおよび不可避不純物からなり、更に、
鋼板の板厚方向に表面から1mmまでの断面領域において、長さが10μmを超える非金属介在物の個数密度が10個/mm以下である、T字隅肉溶接継手。
(態様2)
T字片面隅肉溶接継手であって、溶接部の溶け込み率が、立て板の板厚の50~90%である、態様1に記載のT字隅肉溶接継手。
(態様3)
態様1または2に記載のT字隅肉溶接継手を有する、鋼構造物。
【符号の説明】
【0067】
1 疲労試験体
3 デッキプレート(平板)
5 立て板(Uリブ模擬鋼板)
7 横リブ模擬鋼板
9 ボルト
11 片面隅肉溶接部
13 両面隅肉溶接部
20 疲労試験装置
21 可搬型アクチュエータ
23 支持台
【要約】
【課題】高い疲労強度を示すT字隅肉溶接継手と、該T字隅肉溶接継手を有する鋼構造物を提供する。
【解決手段】平板に立て板を隅肉溶接してなるT字溶接継手であって、前記平板に用いる鋼板は、化学組成が、C、Si、Mn、P、S、Al、Cu、Ni、Nb、Ti、N、Ca、およびSi+Cuが所定の範囲を満たし、残部はFeおよび不可避不純物からなり、更に、鋼板の板厚方向に表面から1mmまでの断面領域において、長さが10μmを超える非金属介在物の個数密度が10個/mm以下である、T字隅肉溶接継手。
【選択図】なし
図1
図2
図3
図4