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特許7590621多層成形容器、ボトル、チューブ、及びリサイクル樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-18
(45)【発行日】2024-11-26
(54)【発明の名称】多層成形容器、ボトル、チューブ、及びリサイクル樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/02 20060101AFI20241119BHJP
【FI】
B65D1/02 110
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2024150571
(22)【出願日】2024-09-02
(62)【分割の表示】P 2024066367の分割
【原出願日】2024-04-16
【審査請求日】2024-09-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】根来 宏明
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 誠
(72)【発明者】
【氏名】宮房 有花
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2023-516881(JP,A)
【文献】特開2021-127173(JP,A)
【文献】特開2024-48543(JP,A)
【文献】特開2001-58621(JP,A)
【文献】特開2017-136816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペットボトルキャップを用いて得られたリサイクル樹脂、及び顔料1を含有する内層と、白色顔料2及び樹脂2を含有する外層とを少なくとも有し、
前記リサイクル樹脂が、ポリエチレン及びポリプロピレンを含み、前記リサイクル樹脂中、ポリエチレンの質量(g):ポリプロピレンの質量(g)が、80~90:10~20である、多層成形容器。
【請求項2】
前記顔料1が、ペットボトルキャップに由来する顔料1aを含み、
前記内層が、ペットボトルキャップを用いて得られたリサイクル樹脂組成物を用いて形成され、
前記リサイクル樹脂組成物が、前記リサイクル樹脂及び前記顔料1aを含有し、前記リサイクル樹脂組成物のメルトマスフローレート(MFR)が、2~10g/10minである、請求項1に記載の多層成形容器。
【請求項3】
前記内層が、樹脂1を更に含有し、前記樹脂1及び前記樹脂2が、ポリオレフィンを含む、請求項1に記載の多層成形容器。
【請求項4】
前記内層が、樹脂1を更に含有し、前記樹脂1の含有率が、内層を基準として20~40質量%である、請求項1に記載の多層成形容器。
【請求項5】
前記白色顔料2の含有率が、外層を基準として2~20質量%である、請求項1に記載の多層成形容器。
【請求項6】
前記白色顔料2の含有率が、外層を基準として5~10質量%である、請求項1に記載の多層成形容器。
【請求項7】
前記内層が、白色顔料1を含有し、前記白色顔料1の含有率が、内層を基準として1~25質量%である、請求項1に記載の多層成形容器。
【請求項8】
前記内層が、白色顔料1を含有し、前記白色顔料1の含有率が、内層を基準として1~6質量%である、請求項1に記載の多層成形容器。
【請求項9】
前記内層と前記外層とを少なくとも有し、前記内層の厚さが300~2,500μmであり、前記外層の厚さが50~1,000μmである多層構造を、少なくとも一部に有する、請求項1に記載の多層成形容器。
【請求項10】
少なくとも一部の表面の明度(L*値)が、80.0~99.0である、請求項1に記載の多層成形容器。
【請求項11】
ペットボトルキャップを用いて得られたリサイクル樹脂、及び、ペットボトルキャップに由来する顔料1aを含有し、前記リサイクル樹脂が、ポリエチレン及びポリプロピレンを含み、前記リサイクル樹脂中、ポリエチレンの質量(g):ポリプロピレンの質量(g)が、80~90:10~20であり、請求項1~10のいずれかに記載の多層成形容器の製造に使用される、リサイクル樹脂組成物。
【請求項12】
ペットボトルキャップを用いて得られたリサイクル樹脂、及び顔料1を含有する内層材料と、白色顔料2及び樹脂2を含有する外層材料を用い、ブロー成形法又は押出成形法によって成形することを含み、
前記リサイクル樹脂が、ポリエチレン及びポリプロピレンを含み、前記リサイクル樹脂中、ポリエチレンの質量(g):ポリプロピレンの質量(g)が、80~90:10~20である、多層成形容器の製造方法。
【請求項13】
下記を満たす内層を成形する、請求項12に記載の多層成形容器の製造方法。
内層の明度(L*値)が、45.0~90.0である。
【請求項14】
下記を満たす外層を成形する、請求項12又は13に記載の多層成形容器の製造方法。
外層の全光線透過率が、90.0%以下である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、多層成形容器、ボトル、チューブ、リサイクル樹脂組成物、及び多層成形容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル製ボトルは、透明性、意匠性、軽量性、安全性等の特性を持つことから、食品、ヘルスケア、化粧品、医療等の多くの分野で使用されており、使用量が拡大している。また、近年、循環型社会が推進されるなかで、ポリエステル製ボトル本体の材料であるポリエステルは、ボトル、日用品、衣料品等にリサイクル利用され、高いリサイクル率が実現されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ペットボトルをリサイクル使用したポリエステル樹脂と粒子を含むポリエステル樹脂組成物からなる二軸配向ポリエステルフィルムを巻き取ってなる二軸配向ポリエステルフィルムロールが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2022/049998号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、ポリエステル製ボトルのキャップには、内容物に対する耐性が高く、成形加工が容易であることから、ポリオレフィン樹脂が使用されることが多い。また、キャップの意匠性を高めるために、ポリオレフィン樹脂には顔料を用いて多種多様な着色が行われている。そのため、キャップのリサイクル用途は限られているのが現状である。
【0006】
そこで、本発明の実施形態は、ペットボトルキャップから得たリサイクル樹脂の新たな用途を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の実施形態を含む。本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0008】
(1)ペットボトルキャップを用いて得られたリサイクル樹脂、及び顔料1を含有する内層と、白色顔料2及び樹脂2を含有する外層とを少なくとも有する、多層成形容器。
(2)前記リサイクル樹脂が、ポリエチレン及びポリプロピレンからなる群から選択される少なくとも1種を含む、前記(1)に記載の多層成形容器。
(3)前記内層が、樹脂1を更に含有し、前記樹脂1及び前記樹脂2が、ポリオレフィンを含む、前記(1)又は(2)に記載の多層成形容器。
(4)前記白色顔料2が、酸化チタンを含む、前記(1)~(3)のいずれかに記載の多層成形容器。
(5)前記白色顔料2の含有率が、外層を基準として2~20質量%である、前記(1)~(4)のいずれかに記載の多層成形容器。
(6)前記顔料1が、白色顔料1を含む、前記(1)~(5)のいずれかに記載の多層成形容器。
(7)前記白色顔料1が、酸化チタンを含む、前記(6)に記載の多層成形容器。
(8)前記白色顔料1の含有率が、内層を基準として1~25質量%である、前記(6)又は(7)に記載の多層成形容器。
(9)前記内層と前記外層とを少なくとも有し、前記内層の厚さが300~2,500μmであり、前記外層の厚さが50~1,000μmである多層構造を、少なくとも一部に有する、前記(1)~(8)のいずれかに記載の多層成形容器。
(10)少なくとも一部の表面の明度(L*値)が、80.0~99.0である、前記(1)~(9)のいずれかに記載の多層成形容器。
(11)前記(1)~(10)のいずれかに記載の多層成形容器である、ボトル。
(12)前記(1)~(10)のいずれかに記載の多層成形容器である、チューブ。
(13)ペットボトルキャップを用いて得られたリサイクル樹脂、及び、顔料1を含有し、前記(1)~(10)のいずれかに記載の多層成形容器の製造に使用される、リサイクル樹脂組成物。
(14)ペットボトルキャップを用いて得られたリサイクル樹脂、及び顔料1を含有する内層材料と、白色顔料2及び樹脂2を含有する外層材料を用い、ブロー成形法又は押出成形法によって成形することを含む、多層成形容器の製造方法。
(15)前記内層材料が、樹脂1を更に含有する、前記(14)に記載の多層成形容器の製造方法。
(16)下記を満たす内層及び外層を成形する、前記(14)又は(15)に記載の多層成形容器の製造方法。
内層と外層とからなる積層体を形成したとき、外層側から測定した明度(L*値)が、80.0~99.0である。
(17)下記を満たす内層を成形する、前記(14)~(16)のいずれかに記載の多層成形容器の製造方法。
内層の明度(L*値)が、45.0~90.0である。
(18)下記を満たす外層を成形する、前記(14)~(17)のいずれかに記載の多層成形容器の製造方法。
外層の全光線透過率が、90.0%以下である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一実施形態によれば、ペットボトルキャップから得たリサイクル樹脂の新たな用途として、多層成形容器が提供される。また、本発明の他の一実施形態によれば、多層成形容器に適したリサイクル樹脂組成物が提供される。さらに、本発明の他の一実施形態によれば、ペットボトルキャップから得たリサイクル樹脂の新たな用途として、多層成形容器の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態を説明する。本発明の実施形態は以下に限定されない。
【0011】
≪多層成形容器≫
本発明の実施形態において、多層成形容器は、ペットボトルキャップを用いて得られたリサイクル樹脂、及び顔料1を含有する内層と、白色顔料2及び樹脂2を含有する外層とを少なくとも有する。内層は、樹脂1を更に含有してよい。「顔料1」は内層に含まれる顔料を、「樹脂1」は、内層に含まれるリサイクル樹脂以外の樹脂を、「白色顔料2」は外層に含まれる白色顔料を、「樹脂2」は、外層に含まれる樹脂を意味する。多層成形容器は、更に接着剤層、他の樹脂層など任意の層を有してよい。
【0012】
ペットボトルキャップは、意匠性、識別性等の観点から、商品ごとに特有の色を有し、それに応じた着色剤を含有する樹脂組成物によって形成されている。使用済みの様々なペットボトルキャップを回収してリサイクル樹脂組成物を得ると、リサイクル樹脂組成物は、多種類の着色剤とリサイクル樹脂とを含有するものとなる。リサイクル樹脂組成物は着色剤によって呈される色のために、リサイクル用途が限られているのが現状である。リサイクル用途を拡大するためには、ペットボトルキャップを回収した後に色ごとに分別する、又は、リサイクル樹脂組成物から着色剤を分離除去することなどが考えられるが、煩雑さ、コスト等の理由から実用化は困難である。これらに対し、本発明の実施形態は、多層構造を採用することで、ペットボトルキャップの新しい用途を見出したものである。本発明の実施形態によれば、ペットボトルキャップ廃棄物を減らすことができ、環境負荷を低減し、資源循環型社会の実現に貢献することができる。また、成形容器の製造という点からみると、原料費用を抑えて安価で容器を製造できることに加え、意匠性にも優れるという効果を有する。
【0013】
<内層>
内層は、ペットボトルキャップを用いて得られた樹脂と、顔料1とを含有する。内層は、更に樹脂1、添加剤等の任意の成分を含有してよい。内層は、例えば、ペットボトルキャップをリサイクルして得られたリサイクル樹脂組成物を用いて形成できる。ペットボトルキャップは、通常、樹脂、顔料、添加剤等を含むため、リサイクル樹脂組成物は、それらから得られる、リサイクルされた樹脂、顔料、及び添加剤等を含有する。
【0014】
[リサイクル樹脂]
リサイクル樹脂は、ペットボトルキャップを用いて得られた樹脂である。ペットボトルキャップの材料には、一般的に、ポリエチレン(PE)及び/又はポリプロピレン(PP)が使用されている。ポリエチレンは、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等であり、好ましくは高密度ポリエチレンである。したがって、リサイクル樹脂は、ポリエチレン及びポリプロピレンからなる群から選択される少なくとも1種を含んでよく、好ましくは、高密度ポリエチレン及びポリプロピレンからなる群から選択される少なくとも1種を含む。リサイクル樹脂が、高密度ポリエチレン及びポリプロピレンからなる群から選択される少なくとも1種を含む場合、剛性が高い容器を得ることができる傾向がある。
【0015】
リサイクル樹脂中のポリエチレンとポリプロピレンの含有比率は特に限定されない。特に分別することなくペットボトルキャップを回収してリサイクル樹脂組成物を得ると、通常は、組成物中のリサイクル樹脂は、ポリエチレンとポリプロピレンとを、(ポリエチレンの質量(g))>(ポリプロピレンの質量(g))となる比率で含有する。ポリエチレンの質量(g):ポリプロピレンの質量(g)は、例えば、60~95:5~40、65~93:7~35、又は70~90:10~30である。ただし、ポリエチレンとポリプロピレンとの含有比率は、使用済みペットボトルを回収する季節、地域など回収状況に応じて変動するため、前記範囲に限定されない。コールド用ペットボトルのキャップは、ポリエチレン製キャップであることが多く、ホット用ペットボトルのキャップは、ポリプロピレン製キャップであることが多い。必要に応じてペットボトルキャップを分別し、特定のペットボトルキャップからリサイクル樹脂組成物を得てもよく、ポリエチレンの質量(g):ポリプロピレンの質量(g)は、例えば、95~100:0~5、又は0~60:40~100であってもよい。
【0016】
成形性の観点から、リサイクル樹脂中、ポリエチレンの質量(g):ポリプロピレンの質量(g)は、80~100:0~20であることが好ましい。強度の観点から、80~90:10~20がより好ましい。
【0017】
リサイクル樹脂組成物のメルトマスフローレート(MFR)は0.1~10g/10min、1~10g/min、又は2~10g/10minであることが好ましい。MFRは、JIS K 7210-1:2014に準拠して求めることができる。
【0018】
内層中のリサイクル樹脂組成物の含有率は、内層を基準として(内層100質量%中)、例えば、15~80質量%、20~80質量%、30~75質量%、又は40~70質量%である。20質量%以上であると、リサイクル材を使うことで石油由来の樹脂量を低減できる。80質量%以下であると、ブロー成形又は押出成形において良好な成形性を保つことができる。
【0019】
内層中のリサイクル樹脂の含有率は、内層を基準として(内層100質量%中)、例えば、13~80質量%、18~80質量%、27~75質量%、又は36~70質量%である。13質量%以上であると、リサイクル材を使うことで石油由来の樹脂量を低減できる。80質量%以下であると、ブロー成形又は押出成形において良好な成形性を保つことができる。
【0020】
[顔料1]
内層は、顔料1を含有する。顔料1は、リサイクル樹脂組成物が含有するペットボトルキャップに由来する顔料を含む。ペットボトルキャップに由来する顔料とは、ペットボトルキャップに含まれていた顔料を意味する。顔料1は、ペットボトルキャップに由来する顔料以外の顔料を更に含有してよい。ペットボトルキャップに由来する顔料を「顔料1a」という場合があり、顔料1a以外の顔料を「顔料1b」という場合がある。
【0021】
顔料1aは、通常、2種以上の顔料を含み、例えば、5種以上、又は10種以上の顔料を含む。顔料1aと顔料1bとは、互いに同一の顔料を含んでも、又は、互いに同一の顔料を含まなくてもよい。例えば、顔料1aが白色キャップに由来する酸化チタンを含み、顔料1bも酸化チタンを含んでよい。顔料1の例として、有機顔料及び無機顔料が挙げられる。
【0022】
有機顔料として、例えば、アゾ顔料、キナクリドン顔料、ペリレン顔料、イソインドリノン顔料、ジケトピロロピロール顔料、フタロシアニン顔料等が挙げられる。
アゾ顔料の具体例としては、C.I.ピグメントイエロー93、95、150、151、168、169、180、181、C.I.ピグメントレッド144、208、214等、
キナクリドン顔料の具体例としては、C.I.ピグメントレッド122、207、C.I.ピグメントバイオレッド19等、
ペリレン顔料の具体例としては、C.I.ピグメントレッド149、178等、
イソインドリノン顔料の具体例としては、C.I.ピグメントイエロー109、110、139、C.I.ピグメントオレンジ61等、
ジケトピロロピロロピロール顔料の具体例としては、C.I.ピグメントレッド254、264、C.I.ピグメントオレンジ71等
が挙げられる。
【0023】
ピグメントイエロー93の具体例は、クロモフタルイエロー3GNP(BASF社製)、ピグメントイエロー95の具体例は、クロモフタルイエローGRP(BASF社製)、ピグメントイエロー150の具体例は、バイナモンイエロー115002(ホイバッハ社製)、ピグメントイエロー151の具体例は、PVファストイエローH4G(クラリアント社製)、ピグメントイエロー168の具体例は、リオノールイエローK5G(トーヨーカラー社製)、ピグメントイエロー169の具体例は、リオノールイエローK2R(トーヨーカラー社製)、ピグメントイエロー180の具体例は、PVファストイエローHG(クラリアント社製)、ピグメントイエロー181の具体例は、PVファストイエローH3R(クラリアント社製)、ピグメントレッド144の具体例は、クロモフタルレッドBRN(BASF社製)、ピグメントレッド208の具体例は、グラフトールレッドHF2B(BASF社製)、ピグメントレッド214の具体例は、クロモフタルレッドBN(BASF社製)、ピグメントレッド122の具体例は、ファストゲンスーパーマゼンダRE03(DIC社製)、バイナモンレッド312201(ホイバッハ社製)、ピグメントレッド207の具体例は、ファストゲンスーパースカーレットGK(DIC社製)、ピグメントバイオレッド19の具体例は、クロムフタルレッド2020(BASF社製)、ピグメントレッド149の具体例は、パリオゲンレッドK3580(BASF社製)、ピグメントレッド178の具体例は、パリオゲンレッドK3911HD(BASF社製)、ピグメントレッド254の具体例は、クロモフタルレッド2028(BASF社製)、ピグメントレッド264の具体例は、イルガジンDPPルビンTR(BASF社製)、ピグメントオレンジ71の具体例は、クロモフタルDPPオレンジTRP(BASF社製)等である。
【0024】
無機顔料として、例えば、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫化亜鉛、酸化鉄、群青、コバルトブルー、ニッケルチタンイエロー、ビスマスイエロー、カーボンブラック、パール顔料等が挙げられる。
【0025】
顔料1の含有率は、内層を基準として(内層100質量%中)、例えば、1~30質量%、1~25質量%、1~20質量%、1~10質量%、1~8質量%、又は1~6質量%である。1質量%以上であると、容器の内容物を十分に隠蔽できる傾向がある。10質量%以下であると、容器の落下衝撃強度をより良好に保つことができる。
【0026】
顔料1aの含有率は、内層を基準として(内層100質量%中)、例えば、0.01~4.0質量%、0.05~2.0質量%、又は0.1~1.2質量%である。顔料1bの含有率は、内層を基準として(内層100質量%中)、例えば、1~25質量%、1~20質量%、1~10質量%、1~8質量%、又は1~6質量%である。1質量%以上であると、容器の内容物を十分に隠蔽できる傾向がある。10質量%以下であると、容器の落下衝撃強度をより良好に保つことができる。
【0027】
有機顔料の含有率は、内層を基準として(内層100質量%中)、例えば、0~5質量%、0~4質量%、又は0~3質量%である。5質量%以下であると、容器の外観を白に保ちやすい。
【0028】
無機顔料の含有率は、内層を基準として(内層100質量%中)、例えば、1~25質量%、1~20質量%、1~10質量%、1~8質量%、又は1~6質量%である。1質量%以上であると、容器の内容物を十分に隠蔽できる傾向がある。10質量%以下であると、ボトルの落下衝撃強度をより良好に保つことができる。
【0029】
顔料1は、白色顔料1を含有してよい。「白色顔料1」は、内層に含まれる白色顔料を意味する。顔料1が白色顔料1を含む態様として、(1)内層が顔料1aを含有し、顔料1aが白色顔料1を含む、(2)内層が顔料1aと顔料1bとを含有し、顔料1aと顔料1bとが白色顔料1を含む、などが挙げられる。白色顔料1は、好ましくは酸化チタンを含む。
【0030】
白色顔料1の含有率は、内層を基準として(内層100質量%中)、例えば、1~25質量%、1~20質量%、1~10質量%、1~8質量%、又は1~6質量%である。1質量%以上であると、容器の内容物を十分に隠蔽できる傾向がある。10質量%以下であると、容器の落下衝撃強度をより良好に保つことができる。
【0031】
白色顔料1が酸化チタンを含む場合、酸化チタンは、耐候性を抑える観点から触媒活性が低いルチル型酸化チタンであることが好ましい。また、白色顔料1がルチル型酸化チタンを含むと、良好な隠蔽性が得られやすい。酸化チタンの平均粒径は、隠蔽性の観点から、0.10~0.30μm、0.20~0.28μm、又は0.22~0.25μmであることが好ましい。平均粒径は、動的光散乱式粒径分布(散乱光強度基準)における体積基準のメディアン径(D50)をいう。平均粒径は、例えば、動的光散乱式粒径分布測定装置LB-550(堀場製作所社製)を用いて25℃の条件下で測定できる。
【0032】
[樹脂1]
内層は、樹脂1を含有してよい。樹脂1は、多層成形容器の成形に用いられる樹脂であってよく、好ましくは熱可塑性樹脂である。樹脂1は、リサイクル樹脂と相溶性のある樹脂であってよく、相溶性のある樹脂として、ポリエステル、ポリスチレン、ポリオレフィン、芳香族ナイロン等が挙げられる。ポリオレフィンの例として、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等のポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-α-オレフィンランダム共重合体、アイオノマー樹脂などを挙げることができる。樹脂1は、好ましくはポリオレフィンを含み、より好ましくは、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はこれらの両方を含む。
【0033】
樹脂1のメルトマスフローレート(MFR)は、例えば0.01~50g/10min、0.1~2g/10min、又は0.1~1g/10minであることが好ましい。
【0034】
樹脂1の含有率は、内層を基準として(内層100質量%中)、例えば、10~80質量%、10~70質量%、10~50質量%、15~45質量%、又は20~40質量%である。10質量%以上であると、ブロー成形又は押出成形において良好な成形性を保つことができる。50質量%以下であると、石油由来の樹脂量を低減できる。
【0035】
[任意成分]
内層は、必要に応じ、樹脂1の他にも添加剤等の任意の成分を含有してよい。添加剤として、アルカリ金属、アルカリ土類金属、亜鉛等の金属石けん;酸化防止剤;紫外線吸収剤;光安定剤;金属不活性剤;ノニオン系界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等の界面活性剤;帯電防止剤;ハロゲン系、リン系、金属酸化物等の難燃剤などが挙げられる。
【0036】
金属石けんとして、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸リチウム、ラウリル酸カルシウム、ラウリル酸亜鉛、ラウリル酸マグネシウム等が挙げられる。
【0037】
酸化防止剤として、例えば、フェノール系、ホスファイト系等が挙げられる。フェノール系の例は、ジエチル[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォネート、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート等である。ホスファイト系の例は、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジ-ホスファイト等である。
【0038】
紫外線防止剤として、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系等が挙げられる。ベンゾトリアゾール系の例は、2,2-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6[(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]]、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、2-[5-クロロ(2H)-ベンゾトリアゾール-2-イル]-4-メチル-6-(tert-ブチル)フェノール等である。トリアジン系の例は、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール等である。
【0039】
光安定剤として、例えば、ヒンダードアミン系が挙げられる。ヒンダードアミン系の例は、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ポリ[{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}]、ジブチルアミン・1,3,5-トリアジン・N,N-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル-1,6-ヘキサメチレンジアミン・N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物等である。
【0040】
金属不活性剤として、例えば、2,3-ビス[[3-[3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル]プロピオニル]]プロピオノヒドラジド等が挙げられる。
【0041】
任意成分の含有率は、内層を基準として(内層100質量%中)、例えば、0.01~5質量%、0.05~3質量%、又は0.1~1質量%である。0.01質量%以上であると、添加した材料の効果を十分に発揮できる。5質量%以下であると、ブリードアウト等の移行性を抑えて成形できる。
【0042】
<外層>
外層は、顔料2と、樹脂2とを含有する。外層は、更に任意の成分を含有してよい。外層は、多層成形容器において、内層の外側に位置する層である。外層は、内層に接する層であってもよく、外層と内層との間に接着剤層、他の樹脂層等の任意の層を含んでもよく、外層の外側に更に任意の層を含んでもよい。顔料2、樹脂2、及び任意の成分の例は、内層の説明における顔料1、樹脂1、及び任意の成分の例と同じである。
【0043】
[顔料2]
内層は、顔料2を含有する。顔料2の例として、有機顔料及び無機顔料が挙げられる。有機顔料及び無機顔料の例は、内層の説明における有機顔料及び無機顔料の例と同じである。
【0044】
顔料2の含有率は、外層を基準として(内層100質量%中)、例えば、2~20質量%、3~15質量%、又は5~10質量%である。2質量%以上であると内層を十分に隠蔽できるため、良好な外観を保つことができる。20質量%以下であると、ブロー成形又は押出成形において良好な成形性を保つことができる。
【0045】
有機顔料の含有率は、外層を基準として(内層100質量%中)、例えば、0~3質量%、0.1~3質量%、0.2~2質量%、又は0.3~1質量%である。0.1質量%以上であると鮮やかな外観を保つことができる傾向がある。3質量%以下であると、内容物への溶出を抑えることができる。
【0046】
無機顔料の含有率は、外層を基準として(内層100質量%中)、例えば、2~20質量%、3~15質量%、又は5~10質量%である。2質量%以上であると内層を十分に隠蔽できるため、良好な外観を保つことができる傾向がある。20質量%以下であると、ブロー成形又は押出成形において良好な成形性を保つことができる。
【0047】
顔料2は、白色顔料2を含有してよい。「白色顔料2」は、外層に含まれる白色顔料を意味する。白色顔料2の含有率は、外層を基準として(内層100質量%中)、例えば、2~20質量%、3~15質量%、又は5~10質量%である。2質量%以上であると内層を十分に隠蔽し、良好な白色外観を保つことができる傾向がある。20質量%以下であると、ブロー成形又は押出成形において良好な成形性を保つことができる。白色顔料2は、酸化チタンを含むことが好ましい。
【0048】
[樹脂2]
外層は、樹脂2を含有する。樹脂2は、多層成形容器の成形に用いられる樹脂であってよく、好ましくは熱可塑性樹脂である。樹脂2は、好ましくはポリオレフィンを含み、より好ましくは、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はこれらの両方を含む。熱可塑性樹脂及びポリオレフィンの例は、内層の説明における熱可塑性樹脂及びポリオレフィンの例と同じである。
【0049】
樹脂2の含有率は、外層を基準として(内層100質量%中)、例えば、80~98質量%、85~97質量%、又は90~95質量%である。80質量%以上であると、ブロー成形又は押出成形において良好な成形性を保つことができる。98質量%以下であると内層を十分に隠蔽できるため、良好な外観を保つことができる傾向がある。
【0050】
<多層構造>
多層成形容器は、多層構造を有する。多層構造の例を以下に挙げる。
・内層/外層
・内層/接着剤層/外層
・樹脂層X/内層/外層
・内層/外層/樹脂層X
・樹脂層X/接着剤層/内層/接着剤層/外層
・樹脂層X/内層/樹脂層Y/外層
・樹脂層X/内層/外層/樹脂層Y
・樹脂層X/接着剤層/内層/接着剤層/樹脂層Y/接着剤層/外層
・樹脂層X/樹脂層Y/内層/外層
・樹脂層X/接着剤層/樹脂層Y/接着剤層/内層/接着剤層/外層
【0051】
接着剤層は、2つ以上の層を接着させる層であり、例えば、接着させたい2層の融点が異なる場合に、それらの2層を接着させるための層である。接着剤層として、酸変性ポリオレフィン、エチレン-アクリル酸共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂等を含む接着剤を用いて形成された層が知られている。市販の接着剤として、ニュクレル(三井・デュポンポリケミカル社製)、アドマー(三井化学社製)、メルセン(東ソー社製)等が挙げられる。
【0052】
樹脂層X及び樹脂層Yは、様々な機能を有する層であり、例えば、内容物とリサイクル材を含む内層と直接接触させないための最内層、バリア層、外層の外に設けて容器表面の平滑性を上げて更に意匠性を向上させる最外層等である。例えば、樹脂層X及び樹脂層Yは、それぞれ独立に、内層又は外層と同じ組成の層であってよい。
【0053】
<形状、用途等>
多層成形容器の形状は、例えば、ボトル、チューブ、円筒、角柱、球等の任意の形状であってよい。好ましくは、ボトル又はチューブの形状である。本発明の実施形態によれば、多層成形容器であるボトル又はチューブが得られる。多層成形容器の容量は、特に限定されず、例えば、350mL、500mL、1000mL、1500mL、2000mL等の任意の容量であってよい。多層成形容器全体の厚さは均一であっても、また、不均一であってもよい。例えば、多層成形容器がボトルである場合、ボトルの口部、肩部、胴部、底部等の厚さが互いに異なっていてもよい。多層成形容器は、内層と外層とを有する多層構造を少なくとも一部に有していればよい。多層成形容器は、容器の全体に多層構造を有しても、又は、容器の一部に多層構造を有し、他の部分は、単層又は別の積層構造であってもよい。
【0054】
多層成形容器は、洗剤用、化粧品用、薬品用、食品用、医療用等の様々な用途に適している。多層成形容器は、好ましくは、洗剤用ボトル又は洗剤用チューブである。
【0055】
<明度及び黄色度>
多層成形容器は、少なくとも一部の表面の明度(L*値)が、80.0~99.0であってよい。明度(L*値)は、国際照明委員会(CIE)により定義されたL*a*b*表色系におけるL*値であり、色彩色差計を用いて測定できる。明度(L*値)は、好ましくは、85.0~99.0、又は90.0~99.0である。明度(L*値)は、外層及び内層の明度、厚さ等によって調整できる。多層成形容器がボトル又はチューブである場合、少なくとも胴部の明度が前記範囲を満たすことが好ましく、ボトル又はチューブの全部の明度が前記範囲を満たすことがより好ましい。
【0056】
多層成形容器は、少なくとも一部の表面の黄色度(YI値)が、-15.0~15.0であってよい。黄色度(YI値)は、国際照明委員会(CIE)により定義されたXYZ表色系に基づき、JIS K 7373:2006に従って求められるYI値であり、色彩色差計を用いて測定できる。黄色度(YI値)は、好ましくは、-10.0~10.0、又は-5.0~5.0である。黄色度(YI値)は、外層及び内層の色相、厚さ等によって調整できる。多層成形容器がボトル又はチューブである場合、少なくとも胴部の黄色度が前記範囲を満たすことが好ましく、ボトル又はチューブの全部の黄色度が前記範囲を満たすことがより好ましい。
【0057】
<全光線透過率>
多層成形容器は、少なくとも一部の全光線透過率が、10.0%以下であってよい。全光線透過率は、好ましくは、5.0%以下、又は1.0%以下である。全光線透過率は、外層及び内層の全光線透過率、厚さ等によって調整できる。多層成形容器がボトル又はチューブである場合、少なくとも胴部の全光線透過率が前記範囲を満たすことが好ましく、ボトル又はチューブの全部の全光線透過率が前記範囲を満たすことがより好ましい。
【0058】
<厚さ>
例えば、多層成形容器は、内層と外層とを少なくとも有し、内層の厚さが300~2,500μmであり、外層の厚さが50~1,000μmである多層構造を、少なくとも一部に有する。多層成形容器は、内層及び外層の厚さが前記範囲である多層構造を、全部に有してもよい。
【0059】
多層構造の全体の厚さは、容器がボトルである場合、500~3,000μm、700~2,500μm、又は900~1,500μmであってよい。500μm以上であると、ボトルとしての強度を保持できる。3,000μm以下であると、均一なブロー成形ができる。ボトルは、ボトルの少なくとも一部の多層構造の厚さが前記範囲を満たすことが好ましく、ボトルの全部の多層構造の厚さが前記範囲を満たすことがより好ましい。以下の内層の厚さ、外層の厚さ、及び内層の厚さ/外層の厚さ(比率)についても、それぞれ同様に、一部が下記範囲を満たすことが好ましく、全部が下記範囲を満たすことがより好ましい。
内層の厚さは、例えば、300~2,500μm、500~2,000μm、又は700~1,500μmである。300μm以上であると、ボトルとしての強度を保持できる。2,500μm以下であると、均一なブロー成形ができる。
外層の厚さは、例えば、50~1,000μm、60~500m、又は70~200μmである。50μm以上であると、内層を十分に隠蔽できる。1,000μm以下であると、均一なブロー成形ができる。
内層の厚さ/外層の厚さ(比率)は、例えば、20/1~1/1、15/1~3/1、又は12/1~5/1である。
【0060】
積層構造の全体の厚さは、チューブの場合、100~1,000μm、150~800μm、又は200~600μmであってよい。100μm以上であると、チューブとしての強度を保持できる。1,000μm以下であると、軽量のチューブを保持できる。
内層の厚さは、例えば、40~800μm、80~500μm、又は100~300μmである。40μm以上であると、チューブとしての強度を保持できる。800μm以下であると、軽量のチューブを保持できる。
外層の厚さは、例えば、20~500μm、40~300μm、又は60~200μmμmである。20μm以上であると、内層を十分に隠蔽できる。500μm以下であると、軽量のチューブを保持できる。
内層の厚さ/外層の厚さ(比率)は、例えば、10/1~1/2、5/1~1/1、又は3/1~1/1である。
【0061】
接着剤層の厚さは、例えば、10~100μmである。樹脂層Xの厚さは、樹脂層Xの機能、材料等に適した厚さであってよく、例えば、50~1,000μmである。樹脂層Yの厚さは、樹脂層Yの機能、材料等に適した厚さであってよく、例えば、50~1,000μmである。
【0062】
≪リサイクル樹脂組成物≫
本発明の実施形態であるリサイクル樹脂組成物は、ペットボトルキャップをリサイクルして得られる。リサイクル樹脂組成物は、リサイクル樹脂と顔料1aとを少なくとも含有し、更に任意の成分を含有してよい。リサイクル樹脂、顔料1a、及び任意の成分は、上述のとおりである。任意の成分は、ペットボトルキャップに含まれていた添加剤であり得る。リサイクル樹脂組成物の形状は、例えば、ペレット状、粉末状、顆粒状の形状であってよく、好ましくはペレット状である。リサイクル樹脂組成物は、上述の実施形態の多層成形容器の製造に使用される。
【0063】
リサイクル樹脂の含有率は、リサイクル樹脂組成物を基準として(リサイクル樹脂組成物100質量%中)、例えば、90.0~99.9質量%、95.0~99.8質量%、又は98.0~99.5質量%である。90.0質量%以上であると、石油由来の樹脂量を低減できる。99.9質量%以下であると、容器の内容物を隠蔽するため、良好な外観を保つことができる。
【0064】
顔料1aの含有率は、リサイクル樹脂組成物を基準として(リサイクル樹脂組成物100質量%中)、例えば、0.01~10.00質量%、0.05~5.00質量%、又は0.10~2.00質量%である。0.01質量%以上であると、内容物を隠蔽するため、良好な外観を保つことができる。10.00質量%以下であると、ブロー成形又は押出成形において良好な成形性を保つことができる。有機顔料の含有率は、例えば、0~1質量%、0.001~1.00質量%、又は0.01~0.50質量%である。無機顔料の含有率は、例えば、0.00~10.00質量%、0.05~5.00質量%、又は0.10~2.00質量%である。
【0065】
リサイクル樹脂組成物は、例えば、ペットボトルキャップを粉砕し、粉砕物を得ること(粉砕工程)、粉砕物を溶融混練し、混練物を得ること(混練工程)を含む製造方法によって得ることができる。製造方法は、ペットボトルキャップを洗浄すること、洗浄したペットボトルキャップを乾燥させること、粉砕物を洗浄すること、洗浄した粉砕物を乾燥させること、粉砕物を分別すること、任意の成分を添加すること、混練物をペレット等の形状に成形することなどの任意の工程を更に含んでよい。
【0066】
粉砕工程における包装材の破砕方法は、特に制限されず、例えば、ジョークラッシャー、インパクトクラッシャー、カッターミル、スタンプミル、リングミル、ローラーミル、ジェットミル、ハンマーミルを用いる方法が挙げられる。
【0067】
混練工程において、必要に応じて添加剤等の任意の成分を加えてもよい。溶融混練方法は、特に限定されず、例えば、ヘンシェルミキサー、タンブラー、ディスパー等で混合した後、ニーダー、ロールミル、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、シュギミキサー、バーティカルグラニュレーター、ハイスピードミキサー、ファーマトリックス、ボールミル、スチールミル、サンドミル、振動ミル、アトライター、バンバリーミキサー等の回分式混練機、二軸押出機、単軸押出機、ローター型二軸混練機等で溶融混練する方法が挙げられる。混練物をペレット等の形状に造粒する場合には、二軸押出機又は単軸押出機を好ましく使用できる。
【0068】
≪多層成形容器の製造方法≫
本発明の実施形態である多層成形容器の製造方法は、ペットボトルキャップを用いて得たリサイクル樹脂及び顔料1を含有する内層材料と、白色顔料2及び樹脂2を含有する外層材料を用い、ブロー成形法又は押出成形法によって成形することを含む。ブロー成形法は、例えば、射出ブロー成形法であってよく、押出成形法は、例えば、共押出成形法であってよい。内層材料は、樹脂1を更に含有してよい。外層材料は、更に白色顔料2以外の顔料を含有してよい。多層成形容器の製造方法に使用され得る、リサイクル樹脂、顔料1(顔料1a、顔料1b)、樹脂1、顔料2(白色顔料2)、樹脂2、及び任意の成分は、上述のとおりである。
【0069】
多層成形容器の製造方法は、下記(1)~(4)の少なくとも1つ以上を満たす内層及び/又は外層を成形することを含む製造方法であってよい。
(1)内層と外層とからなる積層体を形成したとき、外層側から測定した明度(L*値)が、80.0~99.0、85.0~99.0、又は90.0~99.0である。
(2)内層と外層とからなる積層体を形成したとき、外層側から測定した黄色度(YI値)が、-15.0~15.0、-10.0~10.0、又は-5.0~5.0である。
(3)内層の明度(L*値)が、45.0~90.0、70.0~85.0、又は75.0~82.0である。
(4)外層の全光線透過率が、90.0%以下、60.0%以下、又は35.0%以下である。
【0070】
明度、黄色度、及び全光線透過率は、内層材料及び外層材料の種類、内層及び外層の厚さ等を変化させることにより調整できる。また、上記(1)~(4)における明度、黄色度、及び全光線透過率の値として、本発明の実施形態である多層成形容器の製造方法に従って多層成形容器を製造する場合と同じ内層材料及び外層材料を使用し、本発明の実施形態である多層成形容器の製造方法に従って多層成形容器を製造する場合と同じ厚さの内層、外層又はこれらからなる積層体を作製し、作製した内層、外層又はこれらからなる積層体を用いて測定した値を採用することができる。このときの作製方法は、例えば、フィルム成形機を用いる方法、熱プレス機を用いる方法であってよい。
【0071】
内層と外層との好ましい組み合わせとして、以下が挙げられる。
・明度(L*値)が、45.0~85.0である内層と、全光線透過率が、35.0%未満である外層
・明度(L*値)が、75.0~90.0である内層と、全光線透過率が、35.0~40.0%である外層
【0072】
<内層材料及び外層材料>
内層用の材料(「内層材料」という場合がある。)は、リサイクル樹脂と顔料1aとを含有するリサイクル樹脂組成物と、必要に応じて樹脂1、顔料1b、及び任意の成分とを混練して調製できる。外層用の材料(「外層材料」という場合がある。)は、白色顔料2と、樹脂2と、必要に応じて任意の成分とを混練して調製できる。
【0073】
内層材料及び外層材料は、下記(1)~(6)の少なくとも1つ以上を満たす材料であってよい。
(1)内層材料を用いて形成した厚さ1,000μmの層1のMFRが、0.05~5g/10minである。
(2)外層材料を用いて形成した厚さ100μmの層2のMFRが、0.05~5g/10minである。
(3)内層材料を用いて形成した厚さ1,000μmの層1と、外層材料を用いて形成した厚さ100μmの層2とからなる積層体の、層2側から測定した明度(L*値)が、80.0~99.0、85.0~99.0、又は90.0~99.0である。
(4)内層材料を用いて形成した厚さ1,000μmの層1と、外層材料を用いて形成した厚さ100μmの層2とからなる積層体の、層2側から測定した黄色度(YI値)が、-15.0~15.0、-10.0~10.0、又は-5.0~5.0である。
(5)内層材料を用いて形成した厚さ1,000μmの層1の明度(L*値)が、45.0~90.0、70.0~85.0、又は75.0~82.0である。
(6)外層材料を用いて形成した厚さ100μmの層2の全光線透過率が、90.0%以下、60.0%以下、又は35.0%以下である。
【0074】
内層材料のMFRは、樹脂1の種類及び含有量、顔料1の含有量等を変化させることにより調整できる。外層材料のMFRは、樹脂2の種類及び含有量、顔料2の含有量等を変化させることにより調整できる。明度、黄色度、及び全光線透過率は、各層に含まれる顔料の種類、含有量等を変化させることにより調整できる。
【0075】
内層材料と外層材料との好ましい組み合わせとして、以下が挙げられる。
・層1の明度(L*値)が、45.0~85.0である内層材料と、層2の全光線透過率が、35.0%未満である外層材料
・層1の明度(L*値)が、75.0~90.0である内層材料と、層2の全光線透過率が、35.0~40.0%である外層材料
【0076】
MFRは、JIS K 7210:-1:2014に準拠して求めることができる。
全光線透過率は、JIS K 7375:2008に準拠して測定できる。
明度(L*値)は、国際照明委員会(CIE)により定義されたL*a*b*表色系におけるL*値であり、色彩色差計を用いて測定できる。
黄色度(YI値)は、国際照明委員会(CIE)により定義されたXYZ表色系に基づき、JIS K 7373:2006に従って求められるYI値であり、色彩色差計を用いて測定できる。
【0077】
ペットボトルキャップを用いて得たリサイクル樹脂、顔料1、任意で使用される樹脂1、白色顔料2、及び樹脂2の使用量は、上述の実施形態の多層成形容器の内層及び外層の説明において記載した含有率となる量であってよい。
【実施例
【0078】
本発明の実施形態を実施例により説明する。本発明の実施形態は以下の実施例に限定されない。
【0079】
≪内層材料及び外層材料の調製≫
内層材料及び外層材料の原料として、以下を用意した。
<ペットボトルキャップ由来のリサイクル樹脂組成物>
ペットボトルキャップを粉砕し、得られた粉砕物を溶融混練して、リサイクル樹脂と顔料1aとを含有するペレット状のリサイクル樹脂組成物を得た。リサイクル樹脂組成物の組成及びMFRは以下のとおりである。
ポリエチレンの質量(g):ポリプロピレンの質量(g)=80:20
顔料1aの含有率:0.50質量%
MFR:5g/10min
<樹脂1(A)>
(A-1)HDPE(株式会社プライムポリマー社製 ハイゼックス6203B MFR:0.35g/10min

(A-2)LLDPE(株式会社プライムポリマー社製 ネオゼックス2006H MFR:0.63g/10min)
(A-3)LDPE(東ソー社製 ペトロセン170K MFR:1.0g/10min)
<顔料1b(B)>
(B-1)酸化チタン(石原産業社製 タイペークPF-711 平均粒径:0.25μm)
(B-2)重質炭酸カルシウム(白石カルシウム社製 ホワイトンーH 平均粒径:22μm)
(B-3)硫化亜鉛(ベネター社製 サクトリスHD-S 平均粒径:0.30μm)
【0080】
<樹脂2>
(C-1)HDPE(株式会社プライムポリマー社製 ハイゼックスハイゼックス6203B MFR:0.35g/10min

<顔料2>
(D-1)酸化チタン(石原産業社製 タイペークPF-711 平均粒径:0.25μm)
【0081】
[内層組成物1]
樹脂1(A-1)50質量%、ペットボトルキャップ由来のリサイクル樹脂組成物50質量%となるように、樹脂1(A-1)とペットボトルキャップ由来のリサイクル樹脂組成物とを、別々の供給口から二軸押出機(日本製鋼所製)に投入し、220℃で溶融混練することでペレット状のポリエチレン系内層材料である内層組成物1を得た。
【0082】
[内層組成物2~16]
樹脂1(A)、顔料1b(B)、ペットボトルキャップ由来のリサイクル樹脂組成物の種類及び配合量(質量%)を、それぞれ表1に記載したように変更した以外は、内層組成物1と同様にして内層組成物を製造した。
【0083】
内層組成物を用いて、熱プレス機により温度200℃にて、厚さ1,000μmのプレスシートを作製し、測色した。フィルム厚さの測定にはノギスを使用し、測色には色彩色差計(日本電色工業社製、SpectroColorMeterSE2000)を使用した。
【0084】
【表1】
【0085】
[外層材料1]
樹脂2(C-1)100質量%を外層材料1として用意した。
【0086】
[外層組成物2]
樹脂2(C-1)97質量%、顔料2(D-1)3質量%となるように、樹脂(C-1)と顔料(D-1)とを、別々の供給口から二軸押出機(日本製鋼所製)に投入し、220℃で溶融混練することでペレット状のポリエチレン系外層材料である外層組成物2を得た。
【0087】
[外層組成物3~6]
樹脂2(C-1)、顔料2(D-1)の配合量(質量%)を、それぞれ表2に記載したように変更した以外は、外層組成物2と同様にして外層組成物を製造した。
【0088】
外層組成物を用いて、フィルム成形機により温度200℃にて、厚さ100μmのフィルムを作製し、全光線透過率を測定した。フィルム厚さの測定にはノギスを使用し、全光線透過率の測定にはヘーズメーター(BYK社製、ヘイズガードプラス)を使用した。
【0089】
【表2】
【0090】
≪多層成形容器の製造及び評価≫
内層材料(内層組成物1~16)及び外層材料(外層組成物1~6)を用いて、多層成形容器を製造した。
【0091】
[実施例1]
内層組成物1と外層組成物2とを用いて、ダイレクト多層ブロー成形機(日精エーエスビー社製)により温度280℃にてダイレクトブロー成形を行い、ポリオレフィン系多層構造を有するブロー成形容器を製造した。ブロー成形容器は、容量が500mLであり、胴部直径が70mmである円筒形ボトルの形状であり、胴部の中央(容器の肩部と底部の中央付近)における総厚さが1,100μm、内層の厚さが1,000μm、外層の厚さが100μmとなるように成形を行った。
【0092】
[実施例2~28、比較例1~6、及び参考例1]
内層組成物と外層組成物の種類、厚さ、及び層構成を、それぞれ表3に記載したように変更した以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィン系多層構造を有するブロー成形容器を製造した。
[実施例29]
多層構造を内層/接着剤層/外層とし、接着剤層として変性ポリオレフィン(三井化学社製、アドマーNF518)を用いた以外は、実施例23と同様にしてポリオレフィン系多層構造を有するブロー成形容器を製造した。胴部の中央における接着剤層の厚さが20μmとなるように成形を行った。
[実施例30]
多層構造を樹脂層X/内層/外層とし、樹脂層XとしてHDPE(株式会社プライムポリマー社製、ハイゼックス6008B)を用いた以外は、実施例23と同様にしてポリオレフィン系多層構造を有するブロー成形容器を製造した。胴部の中央における樹脂層Xの厚さが100μmとなるように成形を行った。
【0093】
実施例1~30、比較例1~6、及び参考例1で得られた多層成形容器を以下の基準で評価し、評価結果を表3及び4に示す。
【0094】
[成形性]
多層成形容器の胴部の中央を3cm角に3か所切り取り、厚さをノギスで測定し、最大値と最小値の差を膜厚ムラとして、以下の基準で判定した。
○:膜厚ムラが50μm未満
△:膜厚ムラが50μm以上100μm未満
×:膜厚ムラが100μm以上
【0095】
[外観から見た時の色相]
多層成形容器の胴部の中央を3cm角に1か所切り取り、色彩色差計(日本電色工業社製、SpectroColorMeterSE2000)にて測色して、L*値とYI値を測定し、以下の基準で判定した。
(L*値)
○:90.0以上
△:80.0以上90.0未満
×:80.0未満
(YI値)
○:10.0未満
△:10.0以上15.0未満
×:15.0以上
【0096】
[隠蔽性]
多層成形容器の胴部の中央を3cm角に1か所切り取り、ヘーズメーター(BYK社製、ヘイズガードプラス)を用いて、全光線透過率を測定し、以下の基準で判定した。
○:1.0%未満
△:1.0%以上10.0%未満
×:10.0%以上
【0097】
[落下強度]
多層成形容器に水を満たして密栓し、高さ1mの位置からコンクリート床面上に底面部が接触するように1回と、胴部が接触するように1回の合計2回落下させ、以下の基準で判定した。
○:亀裂や割れは生じず、内容物の漏れも見られない
△:内容物の漏れは見られないが、亀裂又は割れが生じた
×:亀裂、割れが生じ、内容物の漏れが見られた
【0098】
[リサイクル樹脂組成物の含有率]
内層材料におけるリサイクル樹脂組成物の含有率(質量%)を下記式に従って求め、以下の基準で判定した。
リサイクル樹脂組成物の含有率(質量%)=(リサイクル樹脂組成物の質量(g)/(リサイクル樹脂組成物の質量(g)+樹脂1の質量(g)+顔料1bの質量(g))×100
○:50質量%以上
△:10質量%以上50質量%未満
×:10質量%未満
【0099】
【表3】
【0100】
【表4】
【要約】
【課題】ペットボトルキャップから得たリサイクル樹脂の新たな用途を提供すること。
【解決手段】ペットボトルキャップを用いて得たリサイクル樹脂及び顔料1を含有する内層と、白色顔料2及び樹脂2を含有する外層とを少なくとも有する、多層成形容器。
【選択図】なし