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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】止水プラグ
(51)【国際特許分類】
   E03F 7/00 20060101AFI20241120BHJP
【FI】
E03F7/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023088642
(22)【出願日】2023-05-30
【審査請求日】2024-05-07
(73)【特許権者】
【識別番号】520467246
【氏名又は名称】株式会社セラスト
(74)【代理人】
【識別番号】100225141
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 安司
(72)【発明者】
【氏名】泥川 一豊
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特許第6913418(JP,B1)
【文献】特開2019-027079(JP,A)
【文献】実開昭54-046030(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 1/00~11/00
F16L 1/00~1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、
端部に環状フランジを備える第一の筒状体と、
両端部に環状フランジを備える第二の筒状体と、
前記第二の筒状体に嵌め被せる環状弾性スリーブと、
前記環状弾性スリーブを固定する固定バンドと、
水圧供給用配管及び空圧排出用配管と、を備える止水プラグであって、
前記第一の筒状体の他端部と前記第二の筒状体とが外周溶接され、
前記第二の筒状体は、両端部に1又は2以上の環状切欠部を備え、
前記第一の筒状体及び前記第二の筒状体は、前記水圧供給用配管及び前記空圧排出用配管のための貫通孔を有し、
前記環状弾性スリーブの内周面には、前記環状切欠部に嵌合する環状弾性部材が突設され、
前記環状弾性スリーブの外周面の左右端部には、前記固定バンドのための環状溝がそれぞれ形成され、かつ、前記環状溝間に、複数の環状リブが形成されている、止水プラグ。
【請求項2】
少なくとも、
端部に環状フランジを備える第一の筒状体と、
両端部に環状フランジを備える第二の筒状体と、
両端部に環状フランジを備える第三の筒状体と、
前記第二の筒状体と前記第三の筒状体とを接合する接合部材と、
前記第二の筒状体及び前記第三の筒状体にそれぞれ嵌め被せる環状弾性スリーブと、
前記環状弾性スリーブを固定する固定バンドと、
水圧供給用配管及び空圧排出用配管と、を備える止水プラグであって、
前記第一の筒状体の他端部と前記第二の筒状体の端部とが外周溶接され、
前記第二の筒状体の他端部と前記第三の筒状体の端部とが前記接合部材を用いて相互に外周溶接され、
前記第二の筒状体及び前記第三の筒状体は、両端部に1又は2以上の環状切欠部を備え、
前記第一の筒状体、前記第二の筒状体及び前記第三の筒状体は、前記水圧供給用配管及び前記空圧排出用配管のための貫通孔を有し、
前記環状弾性スリーブの内周面には、共に、前記環状切欠部に嵌合する環状弾性部材が突設され、
前記環状弾性スリーブの外周面の左右端部には、前記固定バンドのための環状溝がそれぞれ形成され、かつ、前記環状溝間に、複数の環状リブが形成されている、止水プラグ。
【請求項3】
少なくとも、
端部に環状フランジを備える第一の筒状体と、
第一の環状フランジ部と、第一の環状フランジ部に対応する環状フランジ部と、第二の環状フランジ部と、第二の環状フランジ部に対応する環状フランジ部とを備える第二の筒状体と、
前記第二の筒状体に嵌め被せる環状弾性スリーブと、
前記環状弾性スリーブを固定する固定バンドと、
水圧供給用配管及び空圧排出用配管と、を備える止水プラグであって、
前記第一の筒状体の他端部と前記第二の筒状体とが外周溶接され、
前記第二の筒状体は、第一の環状フランジ部と、第一の環状フランジ部に対応する環状フランジ部間と、第二の環状フランジ部と、第二の環状フランジ部に対応する環状フランジ部間とに、1又は2以上の環状切欠部を備え、
前記第一の筒状体及び前記第二の筒状体は、前記水圧供給用配管及び前記空圧排出用配管のための貫通孔を有し、
前記環状弾性スリーブの内周面には、前記環状切欠部に嵌合する環状弾性部材が突設され、
前記環状弾性スリーブの外周面の左右端部には、前記固定バンドのための環状溝がそれぞれ形成され、かつ、前記環状溝間に、複数の環状リブが形成されている、止水プラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にマンホール内で各種工事等が行われる際に、マンホール内を下水が流れない状態にする下水バイパス装置で使用される止水プラグに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、マンホールの下水バイパス装置用の止水プラグとして、剛性材料よりなる略筒状のボディと、ゴム状弾性材料よりなりかつボディに嵌め被せられて両端部がボディの外周面に取り付けられている弾性スリーブとを備えており、弾性スリーブとボディとの間に流体圧が供給されることによって弾性スリーブの外周面が上流側下水管または下流側下水管の内周面に圧接するように膨張させられるものが開示された。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の下水バイパス装置用の止水プラグは、事実上、流体圧として水圧を使用することができないという問題があった。
そこで、本発明者は、上記課題を解決する手段を特許第6913478号において開示した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-27079号公報
【文献】特許第6913478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明者は、この先願発明における止水プラグにつき、既設管径φ800mmにおける耐久試験の結果が問題のないものであることを確認している。しかしながら、内向きフランジ部が本体に対して径方向内向きに突出した構造であるために、止水プラグの実質的な有効径が、円筒状の本体の内径ではなく、内向きフランジ部の内径となる、という点において改良の余地があった。また、内向きフランジ部に下水が衝突を繰り返すことで、止水プラグ自体が意図せず移動してしまうおそれがあった。
【0006】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、止水プラグの有効径を円筒状の本体とし、下水の進水方向に対して、障害となる物が存在しない止水プラグを提供することを目的とする。また、より確実に止水プラグの意図しない移動を防ぐ止水プラグを提供することをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、内向きフランジ部に設けられた配管取付け用貫通孔の位置を変更して、内向きフランジ部を使用しない構造とすることによって、また、本体部と弾性スリーブとを互いに嵌合させる構造とすることによって、さらに、弾性スリーブを連続して横に並べることが可能となる構造とすることによって、係る課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0008】
すなわち、本発明は、少なくとも、端部に環状フランジを備える第一の筒状体と、両端部に環状フランジを備える第二の筒状体と、前記第二の筒状体に嵌め被せる環状弾性スリーブと、前記環状弾性スリーブを固定する固定バンドと、水圧供給用配管及び空圧排出用配管と、を備える止水プラグであって、前記第一の筒状体の他端部と前記第二の筒状体とが外周溶接され、前記第二の筒状体は、両端部に1又は2以上の環状切欠部を備え、前記第一の筒状体及び前記第二の筒状体は、前記水圧供給用配管及び前記空圧排出用配管のための貫通孔を有し、前記弾性スリーブの内周面には、前記環状切欠部に嵌合する環状弾性部材が突設され、前記弾性スリーブの外周面の左右端部には、前記固定バンドのための環状溝がそれぞれ形成され、かつ、前記環状溝間に、複数の環状リブが形成されている止水プラグである。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、止水プラグの実質的な有効径を円筒状の本体とし、下水の進水方向に対して、障害となる物が存在しない止水プラグが提供される。
【0010】
また、本発明により、より確実に止水プラグの意図しない移動を防ぐ止水プラグが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第一の実施形態に係る止水プラグ1の斜視図である。
図2】第一の実施形態に係る止水プラグ1の断面図である。
図3】第二の実施形態に係る止水プラグ41の斜視図である。
図4】第二の実施形態に係る止水プラグ41の断面図である。
図5】第三の実施形態に係る止水プラグ51の断面図である。
図6】第四の実施形態に係る止水プラグ61の第一の環状フランジ部材である。
図7】第四の実施形態に係る止水プラグ61の第一の断面図である。
図8】マンホールの下水バイパス装置を模式的に示す垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態を、図面を参照しながら以下に説明する。なお、以下の説明において、図2の上下を「上下」といい、同左右を「左右」というものとする。この上下は便宜的なもので、実際の設置に際しては、上下が逆(図1から180°回転)になってもいいし、上下が同じ高さ(図1から90°回転)になってもいい。また、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を付すこととする。
【0013】
本発明の実施形態に係るマンホールの下水バイパス装置(A)に用いられる止水プラグは、図8に示した上流側または下流側止水プラグ(配置が左右対称となる点を除いて、上流側止水プラグと下流側止水プラグとは同一の構造)(2A)(2B)として使用される。下水バイパス装置には、図示省略するが、流体圧供給手段として、水圧を供給するためのポンプ(水圧供給源)、止水プラグに設けられた水圧供給用配管に接続される水圧供給用外部配管、止水プラグに設けられた空気排出用配管に接続される空気圧排出用外部配管などが設けられる。
【0014】
(第一の実施形態)
図1および図2を用いて、本実施形態に係る止水プラグ1について説明する。
止水プラグ1は、端部に環状フランジを備える第一の筒状体2と、両端部に環状フランジを備える第二の筒状体3と、第二の筒状体に嵌め被せる環状弾性スリーブ4と、環状弾性スリーブを固定する固定バンド5と、水圧供給用配管6と、空圧排出用配管7とを備えている。
【0015】
第一の筒状体2は、円筒状の管部材8と、円筒状の管部材8の左端部に溶接等によって接合されたバイパス管(B)との接続側となる環状フランジ部材9とから構成される。環状フランジ部材9には、複数のボルト挿通孔が周方向に等間隔おきに形成されている。円筒状の管部材8の厚みは、例えば、約4mm程度とされる。
【0016】
第二の筒状体3は、円筒状の管部材8と内径が略等しい円筒状の管部材10と、円筒状の管部材10の左端部に溶接等によって接合された第一の筒状体との接合側となる環状フランジ部材11と、右端部に溶接等によって接合された非接合側環状フランジ部材12とから構成される。各環状フランジ部材の外径は、設置する下水管の内径よりも小さい外径であれば、特には制限されないが、環状フランジ部材11は、環状フランジ部材9の外径よりも小さい外径を有しており、環状フランジ部材12は、環状フランジ部材11の外径よりも小さい外径を有していることが好ましい。円筒状の管部材10の厚みは、例えば、約6mm程度とされる。なお、環状フランジ部材11及び環状フランジ部材12は、管部材10へ接合したものとする必要はなく、管部材10を旋盤加工等によって削り出して形成させたものでもよい。
【0017】
第二の筒状体3には、左右端部に一又は二以上の環状切欠部13を備える。環状切欠部13は、例えば、円筒状の管部材10の厚さが約6mmのとき、幅が約8mmで、深さ方向が約2mm程度とされる。なお、環状切欠部13は、外径加工や溝加工などの旋盤加工によって、形成させることができる。
【0018】
第一の筒状体2の円筒状の管部材8には、後述する水圧供給用配管及び空圧供給用配管を接続するために用いる貫通孔14と15が、それぞれ互いに、同一周方向に約60°程度離れた位置に設けられる。また、第二の筒状体3の円筒状の管部材10にも同様に、貫通孔16と17が、それぞれ互いに、同一周方向に約60°程度離れた位置に設けられる。このように設けることで、水圧供給用配管6と空圧排出用配管7を、互いに約60°程度離れた位置で平行となるように設置することができる。
【0019】
貫通孔14と15は、円筒体の管部材8の右端部付近に設ける。このように設けることで、例えば、水圧供給用配管6及び空圧供給用配管7に、ホース付き圧力計等(図示せず)を接続することが可能となる。
一方、貫通孔16と17は、円筒体の管部材10の略中央に設ける。このように設けることで、水圧供給用配管6から流体圧を左右均等に供給することが可能となる。また、空圧排出用配管7から空気を左右均等に排出することが可能となる。
【0020】
本実施形態に係る止水プラグの本体部18は、第一の筒状体2の右端部と、第二の筒状体3の左端部とを外周溶接等の溶接によって接合したものを本体部18とする。このとき、貫通孔14と貫通孔16とが長手方向に一致するように、第一の筒状体と第二の筒状体とを接合する。なお、第一の筒状体2と第二の筒状体3とを接合したあとに、貫通孔14から17を設けてもよい。本体部18を構成する上記各部材を構成する剛性材料としては、耐腐食性や強度等に優れた鋼、特にステンレス鋼が好適に用いられるが、これに限定されるものではない。
【0021】
環状弾性スリーブ4は、第二の筒状体3に嵌め被せて用いるものであり、貫通孔16を介して流体圧が供給されたときに、環状弾性スリーブ4が膨張して下水管Pの内周面に圧接して止水プラグを固定させる。環状弾性スリーブ4は、第二の筒状体の管部材10の長さと略等しい略円筒状のものであって、ゴムやエラストマー等のゴム状弾性材料によって一体に形成されている。さらに、後述する溝形成用環状リブ19、横断面四角形の複数の環状リブ20及び横断面四角形の環状弾性部材21も同様の材料を使用して環状弾性スリーブ4と一体に形成されている。
【0022】
環状弾性スリーブ4の外周面には、その左右端部に、2つの溝形成用の横断面四角形の環状リブ19が等間隔に形成され、後述する固定バンドを固定するために用いる環状溝が形成されている。また、環状弾性スリーブ4の外周面の長さ中間部には、横断面四角形の複数の環状リブ20が、環状弾性スリーブ4の長手方向に所定間隔をおいて形成されている。各環状リブ20は、例えば、幅が約5mmで、高さが約3mm、隣り合う環状リブの間(内法)が約10mmとされる。
【0023】
環状弾性スリーブ4の内周面には、一又は二以上の横断面四角形の環状弾性部材21が突設されている。環状弾性部材21は、第二の筒状体3に備わる左右端部の環状切欠部13に嵌合させるために設けたものであり、例えば、幅が約8mm、高さが約3mmとされる。このような構造とすることにより、第二の筒状体3の円筒状の管部材10の外周面と環状弾性スリーブ4の内周面とを全面的に接触させることができ、これらの間の隙間をゼロとすることができる。仮にこの隙間に空気が存在している場合には、環状弾性スリーブ4を流体圧の供給によって膨張させるときに、水圧の上昇を妨げることになるから、この隙間をゼロとすることができれば、流体圧の供給を短時間で行うことが可能となる。
【0024】
固定バンド5は、ステンレス鋼等よりなり、環状弾性スリーブ4を第二の筒状体3に固定するために用いるものである。
固定バンド5は、環状弾性スリーブ4の外周面の左右端部に形成された環状溝に巻回状に取り付け、締付固定されて、環状弾性スリーブ4の両端部が、第二の筒状体3の左右の環状フランジ部材11と12の取付け基部に気密状に取り付けられる。
【0025】
水圧供給用配管6は、第一の筒状体2に設けられた貫通孔14を通じて、先端開口が第一の筒状体内部にあるL字管部23と、第二の筒状体に設けられた貫通孔16を通じて、環状弾性スリーブ4と第二の筒状体3との間に先端開口があるL字管部25と、これらを接続するための直管部24とを備えている。
【0026】
水圧供給用配管6は、L字管部23の外側(第一の筒状体の外側)において、簡易迅速継手の雄形継手部材(図示せず)を備えている。この雄形継手部材に、ポンプ等の水圧供給装置に接続された水圧供給用配管の先端に取り付けられた簡易迅速継手の雌型継手部材を嵌め合わせて接続して、水圧供給用配管に所定の圧力値に設定された水を供給する。なお、水圧供給用外部配管の途中には、コックやボールバルブ等の開閉弁や圧力計が設けられ、開閉弁を操作することにより、流体圧の供給や、流体圧の所定圧力の維持を切り替える。
【0027】
空圧排出用配管7は、第一の筒状体2に設けられた貫通孔15を通じて、先端開口が第一の筒状体内部にあるL字管部(図示せず)と、第二の筒状体3に設けられた貫通孔17を通じて、環状弾性スリーブ4と第二の筒状体3との間に先端開口があるL字管部(図示せず)と、これらを接続するための直管部26とを備えている。
【0028】
空圧排出用配管7は、L字管部(図示せず)の外側(第一の筒状体の外側)において、簡易迅速継手の雄形継手部材(図示せず)を備えている。この雄形継手部材にポンプ等に接続された空圧排出用配管の先端に取り付けられた簡易迅速継手の雌型継手部材を嵌め合わせて接続して、空圧排出用配管を必要に応じて開閉する。なお、空気排出用配管は、水圧供給用配管と同じ構造としているため、外部配管を水圧供給用とすることで、水圧供給用配管として使用することができる。
【0029】
本実施形態の止水プラグ1は、空気排出用配管7を開放した状態で、水圧供給用配管6に所定の圧力値に設定された水を供給すると、環状弾性スリーブ4の内周面と第二の筒状体3の管部材10の外周面との間に、貫通孔14と16を介して、水が入り込み、環状弾性スリーブ4が膨張させられ、環状リブの平坦な頂面が下水管の内周面に、圧接させられる。これにより、下水流通時の動圧等によって長さ方向に移動させられないだけの取り付け強度が得られる。また、固定バンド5は、環状弾性スリーブ4の内周面に突設させた環状弾性部材21が、第二の筒状体3に備わる左右端部の環状切欠部13に嵌合されている部分の上部側から締付固定させるから、止水プラグの長手方向における意図しない移動を防ぐことができる。
【0030】
止水プラグ1を使用した下水バイパス装置は、例えば、特許文献1に記載された設置手順によって取り付けられる。ここで、特許文献2に記載されたように、本発明に係る止水プラグ1においても、水圧を使用したときに、空気圧と同程度の時間で止水状態となるまで膨張させることができる。これにより、空気圧使用時の漏れが確認しづらいという問題が解消し、万が一破裂した場合でも影響が小さくて済むという安全性向上効果が得られる。そして、安全性が向上したことで、膨張圧力を最大0.3MPaまで加圧することができ、そのため、バイパス管の流量圧力も0.2MPaまで止水することができる。
【0031】
本実施形態に係る止水プラグ1は、第一の筒状体2の円筒状の管部材8に貫通孔14を設けること及びL字管部を使用して、第一の筒状体の外側において、簡易迅速継手の雄形継手部材を設けることが可能となる。また、第一の筒状体と第二の筒状体との内径は略等しいから、本体部18の内径は、第一の筒状体の内径及び第二の筒状体の内径と同一のものとなる。
このような構造とすることで、止水プラグ内に継手部材を設置する必要がなくなるので、止水プラグ内の水位が高くなったとしても、継手部材が下水に触れたり、浸かったりしてしまうおそれがない。また、マンホールに通じている上流側下水管および下流側下水管が100φから300φ程度の小口径に対して用いることができるのは勿論のこと、400φから1000φ程度の中口径に対しても、大容量の下水を流せることが可能となるから、幅広い下水管に対して対応することが可能となる。
【0032】
マンホールに通じている上流側下水管のその先の既設配管経路の何れかの箇所に圧送管が存在した場合には、下水バイパス装置に、通常より圧力の高い状態の下水が止水プラグに通液されてしまうことが想定される。このとき、下水の進水方向に対して、本体部内部に障害となる物が存在してしまうと、この障害物に高水圧状態の下水が衝突して、その衝撃により、止水プラグ自体がずれてしまうことが想定される。このような事態が想定される場合であっても、本発明に係る止水プラグは、その内部に障害物が存在しないから、障害物への衝突を起因とする止水プラグの意図しない移動は構造上発生しないと考えられる。
【0033】
(第2の実施形態)
図3および図4を用いて、本実施形態に係る止水プラグ41について説明する。
止水プラグ41は、端部に環状フランジを備える第一の筒状体2と、両端部に環状フランジを備える第二の筒状体3と、両端部に環状フランジを備える第三の筒状体42と、第二の筒状体と第三の筒状体を接合する接合部材49と、前記第二の筒状体3及び前記第三の筒状体42にそれぞれ嵌め被せる環状弾性スリーブ4と、前記環状弾性スリーブを固定する固定バンド5と、水圧供給用配管6及び空圧排出用配管7とを備えている。
【0034】
本実施形態の止水プラグ41は、第1の実施形態における止水プラグ1の第二の筒状体の右側部分に第三の筒状体を接合したものである。以下、止水プラグ1と重複している部分を除いて説明する。また、止水プラグ41を使用した下水バイパス装置等の設置方法は第1の実施形態と同様であるため省略する。
【0035】
第三の筒状体42は、円筒状の管部材10と内径が略等しい円筒状の管部材43と、円筒状の管部材43の左端部に溶接等によって接合された第二の筒状体との接合側となる環状フランジ部材44と、右端部に溶接等によって接合された非接合側環状フランジ部材45とから構成される。各環状フランジ部材の外径は、設置する下水管の内径よりも小さい外径であれば、特には制限されないが、環状フランジ部材44は、第二の筒状体の右側環状フランジ部材12の外径と略等しい外径を有しており、環状フランジ部材45は、環状フランジ部材44の外径よりも小さい外径を有していることが好ましい。なお、環状フランジ部材44及び環状フランジ部材45は、管部材43へ接合したものとする必要はなく、管部材43を旋盤加工等によって削り出して形成させたものでもよい。
【0036】
第三の筒状体42には、第二の筒状体3と同様に、円筒体の管部材43の左右端部に一又は二以上の環状切欠部46を備える。環状切欠部46は、例えば、円筒状の管部材43の厚さが約6mmのとき、幅が約8mmで、深さ方向が約2mm程度とされる。なお、環状切欠部13は、外径加工や溝加工などの旋盤加工によって、形成させることができる。
【0037】
第三の筒状体42の円筒状の管部材43には、第一の筒状体2及び第二の筒状体3の円筒状の管部材8と10と同様に、水圧供給用配管6及び空圧供給用配管7を接続するために用いる貫通孔47と48とがそれぞれ設けられる。
【0038】
接合部材49は、第二の筒状体3と第三の筒状体42とを接合するために用いる。また、接合部材49の厚さは、例えば、第一の筒状体2と略同程度の厚みとされる。
接合部材49は、円筒状の管部材であって、第一の筒状体と第二の筒状体と第三の筒状体と略等しい内径を有している。また、接合部材49の外径は、第二の筒状体の右端部に接合されたフランジよりも小さい外径のものを用いるとよい。
【0039】
本実施形態の止水プラグ41は、環状弾性スリーブ4を連続して横に並べた状態で、下水管の内周面に圧設させて用いることになるから、下水流通時の取り付け強度を倍増させることが可能となる。また、図示しないが、本実施形態の止水プラグ41の右端部に接ぎ合部材と第四の筒状体を接続することも勿論可能である。さらに、図示しないが、上流側と下流側とで、環状弾性スリーブの数が異なる止水プラグを設置することも可能である。
【0040】
(第3の実施形態)
図5を用いて、本実施形態に係る止水プラグ51について説明する。
本実施形態の止水プラグ51は、端部に環状フランジを備える第一の筒状体2と、第一の環状フランジ部53と、第一の環状フランジ部53に対応する環状フランジ部54と、第二の環状フランジ部材55と、第二の環状フランジ部55に対応する環状フランジ部56とを備える第二の筒状体52と、第二の筒状体52に嵌め被せる2つの環状弾性スリーブ4と、環状弾性スリーブ4を固定する固定バンド5と、水圧供給用配管6及び空圧排出用配管7とを備える。
【0041】
本実施形態の止水プラグ51は、第1の実施形態における止水プラグ1の第二の筒状体の管部材10を長手方向に延長したものを用いる。また、第3の実施形態の止水プラグの外観は、第2の実施形態の止水プラグの外観と略同一である。
以下、止水プラグ1と重複している部分を除いて説明する。また、止水プラグ51を使用した下水バイパス装置等の設置方法は第1の実施形態と同様であるため省略する。
【0042】
第二の筒状体52は、円筒状の管部材8と内径が略等しく、設置する下水管の内径よりも小さい外径の円筒状の管部材を、旋盤加工等によって、環状弾性スリーブを嵌め被せるための溝(環状フランジ部)を複数削り出して形成される。
第二の筒状体52の左端部には、第一の筒状体との接合側となる環状フランジ部53が形成される。また、第二の筒状体52の略中央部には、環状弾性スリーブ4の長さに対応する環状フランジ部54が形成される。なお、環状弾性スリーブ4の長さに対応するとは、環状弾性スリーブ4の長手方向の長さと環状フランジ部53と環状フランジ部54との間の距離が等しいという意味である。
一方、第二の筒状体52の右端部には、非接合側環状フランジ部55が形成される。また、この略中央部には、環状弾性スリーブ4の長さに応じた環状フランジ部56が形成される。第二の筒状体52の厚みは、例えば、約6mm程度とされる。なお、環状弾性スリーブ4の長さに対応するとは、環状弾性スリーブ4の長手方向の長さと環状フランジ部55と環状フランジ部56との間の距離が等しいという意味である。
【0043】
また、第二の筒状体52において、環状弾性スリーブ4を嵌め被せる部分の左右端部には、一又は二以上の一対の環状切欠部13が形成される。環状切欠部13は、例えば、第二の筒状体52の厚さが約6mmのとき、幅が約8mmで、深さ方向が約2mm程度とされる。
【0044】
第二の筒状体52には、第一の実施形態と第二の実施形態と同様に、水圧供給用配管6及び空圧供給用配管7を接続するために用いる貫通孔57及び58とがそれぞれ設けられる。
【0045】
本実施形態の止水プラグ51は、第二の実施形態の止水プラグと同様に、環状弾性スリーブ4を連続して横に並べた状態で、下水管の内周面に圧設させて用いることになるから、下水流通時の取り付け強度を倍増させることが可能となる。また、図示しないが、環状弾性スリーブを3つ以上設置するために、第二の筒状体の長さ方向の長さを延長・設定することも勿論可能である。さらに、図示しないが、上流側と下流側とで、環状弾性スリーブの数が異なる止水プラグを設置することも可能である。
【0046】
(第4の実施形態)
図6及び図7を用いて、本実施形態に係る止水プラグ61について説明する。
本実施形態の止水プラグ61は、円筒体の管部材62と、第一の環状フランジ部材63と、第二の環状フランジ部材64と、円筒体の管部材62に嵌め被せる環状弾性スリーブ4と、環状弾性スリーブ4を固定する固定バンド5と、水圧供給用配管6及び空圧排出用配管7とを備える。
【0047】
環状弾性スリーブ4及び固定バンド5については、第1の実施形態及び第2の実施形態で用いたものと同様のものを使用することができるため、これを省略して説明する。また、止水プラグ61を使用した下水バイパス装置等の設置方法は第1の実施形態と同様であるため省略する。
【0048】
第一の環状フランジ部材63には、複数のボルトを周方向に等間隔で設けるための貫通孔51が設けられており、この貫通孔に複数のボルトを寸切り溶接等して接合する。ここで、この貫通孔51は、円筒体の管部材62の外径よりも内側の位置に設ける(図5の点線円を参照)。
また、第一の環状フランジ部材63には、180°離れた位置において、貫通孔と貫通孔との中間位置に水圧供給用配管6及び空圧排出用配管7の取付け用貫通孔52が設けられている。
第二の環状フランジ64は、特に制限されることはないが、第一の環状フランジ63の外径よりも小さい外径のものであって、円筒体の管部材62の外径と略等しい内径のものを用いるとよい。
【0049】
円筒体の管部材62は、円筒状の管部材8や円筒状の管部材10と同種のものを使用することができる。円筒体の管部材62の左端部に第一の環状フランジ63を図5の点線円の位置に外周溶接等の溶接により接合する。また、第二の環状フランジ64を円筒体の管部材62の右端部に突出するように溶接して接合する。
また、円筒体の管部材62には、第1の実施例及び第2の実施例における、円筒体の管部材8や10と同様に、その左右端部に一又は二以上の環状切欠部13を備える。
さらに、円筒体の管部材62には、水圧供給用配管6及び空圧供給用配管7を接続するために用いる貫通孔65と66とが180°離れた位置においてそれぞれ設けられる。
【0050】
水圧供給用配管6は、上側の配管取付け用貫通孔68に挿通されて円筒状の管部材の内周に沿って長さの中程まで右方に延び、左端部をフランジ部の左外側に露出している直管部66と、直管部66に連なり円筒体の管部材62の長手方向中程において環状弾性スリーブ4と円筒体の管部材62との間に先端開口が臨まされたL字管部67とを備えている。
【0051】
空気排出用配管7は、下側の配管取付け用貫通孔69に挿通されて円筒体の管部材62の内周に沿って長さの中程まで右方に延び、左端部をフランジ部の左外側に露出している直管部70と、直管部70に連なり円筒体の管部材62の長手方向中程において環状弾性スリーブ4と円筒体の管部材62との間に先端開口が臨まされたL字管部66とを備えている。
【0052】
また、図示しないが、第二の実施形態と同様に接合部材を用いて、本体部の右端部に第二の筒状体を接合して、下水管に、環状弾性スリーブ4を連続して横に並べた状態で、下水管の内周面に圧設させて用いることも可能であるし、さらに、第三の筒状体を接合して、環状弾性スリーブ4を連続して横に3つ並べた状態で下水管の内周面に圧設させて用いることも可能である。なお、第二の筒状体等を用いる場合には、本体部と略等しい内径の円筒体の管部材を用いることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、マンホール内で各種工事等が行われる際に、マンホールに通じている上流側下水管と下流側下水管とをバイパス接続して、マンホール内を下水が流れない状態にする下水バイパス装置で使用される止水プラグに用いられることに限られず、例えば、上水道、農業用水等の各種水路に設置して、これらの水路において水が流れない状態にするためにも用いることが可能である。
【符号の説明】
【0054】
5・・・固定バンド、8・・・円筒状の管部材、9・・・環状フランジ部材、11・・・環状フランジ部材、12・・・環状フランジ部材、19・・・環状リブ、20・・・環状リブ、49・・・接合部材、45・・・環状フランジ部材、M・・・マンホール、P・・・下水管
【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、止水プラグの有効径を円筒状の本体とし、下水の進水方向に対して、障害となる物が存在しない止水プラグを提供する。
【解決手段】本発明の止水プラグは、端部に環状フランジを備える第一の筒状体と、両端部に環状フランジを備える第二の筒状体と、第二の筒状体に嵌め被せる環状弾性スリーブと、環状弾性スリーブを固定する固定バンドと、水圧供給用配管及び空圧排出用配管とを備え、第一の筒状体の他端部と第二の筒状体とが外周溶接され、第二の筒状体は、両端部に1又は2以上の環状切欠部を備え、第一の筒状体及び第二の筒状体は、水圧供給用配管及び空圧排出用配管のための貫通孔を有し、環状弾性スリーブの内周面には、環状切欠部に嵌合する環状弾性部材が突設され、環状弾性スリーブの外周面の左右端部には、固定バンドのための環状溝がそれぞれ形成され、かつ、環状溝間に、複数の環状リブが形成されている止水プラグである。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8