(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】回転型操作装置
(51)【国際特許分類】
G05G 5/03 20080401AFI20241120BHJP
G05G 1/08 20060101ALI20241120BHJP
H01H 19/03 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
G05G5/03 B
G05G1/08 B
H01H19/03
(21)【出願番号】P 2020140126
(22)【出願日】2020-08-21
【審査請求日】2023-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】濱田 淳
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雅司
(72)【発明者】
【氏名】杉江 敏幸
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-342018(JP,A)
【文献】特開2009-54459(JP,A)
【文献】特開2010-257055(JP,A)
【文献】特開2005-81908(JP,A)
【文献】特開2006-39825(JP,A)
【文献】特表2020-513607(JP,A)
【文献】特開2015-93493(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05G 5/03
G05G 1/08
H01H 19/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作者が回転操作を行うための操作子と、
前記回転操作による回転角度に応じた角度信号を出力する角度センサと、
前記操作子に振動を伝達するように配置される振動素子と、
前記角度信号に基づいて前記回転操作による回転角度を検出すると共に、前記振動素子における振動の発生及び停止を制御する制御部と、
節度感を付与する節度角がユーザにより設定記憶される記憶部と
、
配置対象に固定されるベース部材と、
このベース部材に取り付けられる前記操作子の固定側部材と、
この固定側部材に回転可能に組付けられ、中空部分を有する円筒状である前記操作子の回転側部材と、
前記固定側部材に取り付けられる支持部材と、
この支持部材に配置され、表示面が前記回転側部材の中空部分に臨むように配置され、前記回転操作に関連した表示を行なうように前記制御部により制御される表示部とを備え、
前記制御部は、前記回転操作による回転角度が前記節度角に達すると、前記振動素子に振動を発生させ
、
前記振動素子は、前記表示部に配置される回転型操作装置。
【請求項2】
前記振動素子は圧電素子であり、
前記制御部には、前記圧電素子が発生させた電圧が入力され、
前記制御部は、前記回転操作に応じて前記表示部の表示内容を変化させ、
前記表示部の表示面がユーザにより押圧操作されることで発生した電圧が入力されると、前記表示内容に関連した制御を行う請求項
1記載の回転型操作装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記回転操作に応じて前記表示部に節度角の数値を表示させ、前記のユーザによる押圧操作を認識すると、その時点で表示させている数値を確定させる請求項
2記載の回転型操作装置。
【請求項4】
操作者が回転操作を行うための操作子と、
前記回転操作による回転角度に応じた角度信号を出力する角度センサと、
前記操作子に振動を伝達するように配置される振動素子と、
前記角度信号に基づいて前記回転操作による回転角度を検出すると共に、前記振動素子における振動の発生及び停止を制御する制御部と、
節度感を付与する節度角がユーザにより設定記憶される記憶部とを備え、
前記制御部は、前記回転操作による回転角度が前記節度角に達すると、前記振動素子に振動を発生させ、
前記操作子は、配置対象に固定されるベース部材と、一端側が前記ベース部材に取り付けられる支持部と、この支持部の他端側に取り付けられる円盤部とを有する固定側部材と、
前記固定側部材に対して回転可能に組付けられ、ユーザが指を掛けて回転操作を行う円環部を有する回転側部材とを備え、
前記振動素子は、前記固定側部材に配置され、
前記円環部の直径は、前記円盤部の直径以下であり、
前記円環部は、前記ベース部材と前記円盤部との間に配置されている回転型操作装置。
【請求項5】
前記振動素子は、前記円盤部の中央部に配置されている請求項
4記載の回転型操作装置。
【請求項6】
前記円環部の外周面にはテーパが付けられている請求項
4又は
5記載の回転型操作装置。
【請求項7】
前記円盤部の外周面にもテーパが付けられている請求項
6記載の回転型操作装置。
【請求項8】
前記円盤部及び円環部の外周面が、連続する傾斜面となっている請求項
7記載の回転型操作装置。
【請求項9】
前記振動素子を複数備える請求項1から
8の何れか一項に記載の回転型操作装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作者が回転操作を行うための操作子を備える操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
操作者が操作子を指により摘まんで回転させて入力を行う回転型の操作装置において、操作者が回転操作を行う際に節度感を付与するためには、一般に機械的な節度付与機構を用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そのため、予め節度付与機構を配置している位置でしか節度感を付与することができない。したがって、製品毎に異なる回転位置で節度感を付与するには、それぞれに対応した操作装置を個別に作成する必要があった。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、操作者が回転操作を行う際に節度感を柔軟に付与することが可能な回転型操作装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の回転型操作装置によれば、振動素子を、操作者が回転操作を行うための操作子に振動を伝達するように配置する。制御部は、角度センサより入力される角度信号に基づいて、操作者の回転操作による回転角度を検出すると共に、振動素子における振動の発生及び停止を制御する。記憶部には、節度感を付与する節度角がユーザにより設定記憶される。そして、制御部は、回転操作による回転角度が節度角に達すると振動素子に振動を発生させる。
【0007】
このように構成すれば、操作者が操作子を回転操作した際に、ユーザが記憶部に設定した節度角に達すると振動素子が振動するので、その振動により操作子に触れている操作者の指や手に節度感を付与することができる。したがって、任意の角度において節度感を付与することが可能となり、様々な製品に柔軟に対応させることができる。尚、ユーザが記憶部に節度角を設定しなければ、節度感を付与しない製品仕様に対応できることは勿論である。
【0009】
また、請求項1記載の回転型操作装置によれば、回転側部材を中空部分を有する円筒状に形成し、表示部が配置される支持部材を固定側部材に取り付けることで、表示部の表示面が回転側部材の中空部分に臨むように配置して、振動素子を表示部に配置する。このように構成すれば、回転側部材以上の層に位置する表示部に振動素子を配置できるので、回転側部材に触れている操作者に対して節度感を明確に感じさせることができる。
【0010】
請求項2記載の回転型操作装置によれば、制御部に、振動素子としての圧電素子が発生させた電圧を入力する。そして、制御部は、回転操作に応じて表示部の表示内容を変化させ、表示部の表示面がユーザにより押圧操作されることで発生した電圧が入力されると、表示内容に関連した制御を行う。すなわち、圧電素子は外力が加えられると電圧を発生させるので、制御部は、その電圧を検出すればユーザによって表示部の表示面が押圧操作されたことを認識できる。つまり、圧電素子を押圧スイッチとして使用できるので、制御部は、ユーザの押圧操作に応じて、例えば表示部に選択的に表示させている内容を確定するなどの制御を行うことができる。
【0011】
請求項3記載の回転型操作装置によれば、制御部は、回転操作に応じて表示部に節度角の数値を表示させ、ユーザによる押圧操作を認識すると、その時点で表示させている数値を確定させる。これにより、ユーザは節度角の設定を行うことが可能になる。
【0012】
請求項4記載の回転型操作装置によれば、操作子の固定側部材は、配置対象に固定されるベース部材と、一端側が前記ベース部材に取り付けられる支持部と、この支持部の他端側に取り付けられる円盤部とを有する。これにより、ベース部側を後方とすると円盤部は前方に位置し、ユーザに近い側に配置される。
【0013】
回転側部材は、固定側部材に対して回転可能に組付けられ、ユーザが指を掛けて回転操作を行うもので円盤部の直径以下である円環部を有する。そして、振動素子を固定側部材に配置し、円環部をベース部材と円盤部との間に配置する。このように構成すれば、ユーザが円環部に指を掛けて回転操作を行う際には、その指が固定側部材の円盤部の外周部分に触れるようになる。したがって、ユーザが、回転側部材に配置されている振動素子の振動をより感じ易くなり、節度感を十分に得ることができる。
【0014】
請求項5記載の回転型操作装置によれば、振動素子を円盤部の中央部に配置するので、ユーザが複数の指を円環部に掛けた際に、それぞれの指に振動を十分に伝えることができる。
【0015】
請求項6記載の回転型操作装置によれば、円環部の外周面にテーパを付ける。このように構成すれば、円盤部が前方側に位置していても、ユーザが指を円環部の外周面に掛ける際に円盤部が与える抵抗感を減らすことができ、ユーザは回転操作を良好に行うことができる。
【0016】
請求項7記載の回転型操作装置によれば、円盤部の外周面にもテーパを付けるので、ユーザの指に与える抵抗感を更に減らすことができる。
【0017】
請求項8記載の回転型操作装置によれば、円盤部及び円環部の外周面を連続する傾斜面することで両者の間に段差がなくなり、ユーザが指を円環部の外周面に掛ける際に違和感を与えることがなく、ユーザに良好な操作感を付与することができる。
【0018】
請求項9記載の回転型操作装置によれば、振動素子を複数備えることで振動のエネルギーをより大きくして、操作者に節度感を一層明確に感じさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態であり、回転型操作装置の構成を示す分解斜視図
【
図3】制御系の構成を要旨に係る部分について示す機能ブロック図
【
図4】マイコンの処理内容を中心に示すフローチャート
【
図5】回転操作により変化する角度に応じてピエゾ素子に振動を発生させる態様の一例を示す図
【
図7】第2実施形態であり、回転型操作装置の構成を示す分解斜視図
【
図8】第3実施形態であり、制御系の構成を要旨に係る部分について示す機能ブロック図
【
図9】ピエゾ素子を振動させる際に印加する電圧振幅と、ユーザがピエゾ素子を押圧して発生させる電圧振幅とのイメージを示す図
【
図10】マイコンの処理内容を中心に示すフローチャート
【
図11】ユーザの操作に応じてLCDの画面表示が変化する一例を示す図
【
図12】第4実施形態であり、回転型操作装置を示す模式的な縦断面図
【
図13】第5実施形態であり、回転型操作装置を示す模式的な縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について
図1から
図6を参照して説明する。
図1に示すように、回転型操作装置1のベース部材2は、上底側が開放されている概ね浅い円筒状であり、下底側の外面側が配置対象に固定される。ベース部材2には、円板状の回路基板3が収容される。
図1では示さないが、回路基板3には、後述するマイクロコンピュータ等の回路部品が搭載される。
【0021】
回路基板3には、操作子4の固定側部材5が取り付けられる。固定側部材5は円盤状であり、その円盤の外周部分には複数の取付けピン6が配置されている。回路基板3の外周部には、取付けピン6の位置に対応して複数の取付け孔7が形成されており、各取付け孔7に取付けピン6が挿入されて、固定側部材5が取り付けられる。固定側部材5には、操作子4の回転側部材8が回転可能に組付けられている。回転側部材8は、基端部9及び操作ノブ10からなり、基端部9が固定側部材5に組付けられている。
【0022】
基端部9及び操作ノブ10は、何れも中空部分を有する円筒状であり、操作者の手が直接触れる操作ノブ10は基端部9よりも径大である。操作ノブ10の上端側の外周部には複数の凹凸が形成されており、この部分が、操作者が指を掛けて把持した状態で操作を行う際の滑り止め部11となっている。尚、操作ノブ10は、ベース部材2よりも径大であり、組付けられた際には
図2に示すように、ベース部材2は操作ノブ10の外周部分によって覆われた状態になる。
【0023】
操作ノブ10の中空部分には、概ね円筒状の支持部材12が収容され、支持部材12の上面には、表示部であるLCD(Liquid Crystal Display)13が配置される。そして、LCD13の上面は、透明のカバー14によって覆われている。
【0024】
図1では概念的に示すが、例えばTMR(Tunnel Magneto Resistance)センサ等からなる角度センサ15は、操作子4の固定側部材5及び回転側部材8に亘って配置されている。角度センサ15は、操作者により操作ノブ10が回転操作された際に、その回転に伴い変化する角度に応じた角度信号を出力する。また、振動素子であるピエゾ素子16は、同じく
図1では概念的に示すが、LCD13の下面側に配置されている。
【0025】
図3に示すように、回転型操作装置1は、制御部に相当するマイクロコンピュータ17を備えている。以下、マイコン17と称す。マイコン17には、角度センサ15からの角度信号が入力される。また、マイコン17は、図示しないドライバ等を介してピエゾ素子16に所定レベルの電圧を印加することで、ピエゾ素子16に例えば数100Hz程度の振動を発生させる。
【0026】
また、
図3では示さないが、マイコン17は、LCD13の表示も制御するようになっており、LCD13には、操作ノブ10が回転操作された際に、その操作に関連した表示が行われる。例えば、回転操作量に応じた角度を表示したり、回転操作に応じて、適用される製品に対応した複数の制御パラメータの何れかを選択する際には、各制御パラメータに対応した表示を行うなどする。
図3に示す電気的な接続関係に応じて、
図1に示す構成において、回路基板3に搭載されているマイコン17と、その周辺素子等との接続が確保されている。
【0027】
また、
図3に示すように、ユーザは、例えばパーソナルコンピュータ20,及び図示しない例えばUSB(Universal Serial Bus)等の通信インターフェイスを介して、マイコン17に内蔵されているメモリ18にアクセス可能となっている。記憶部に相当するメモリ18は、例えばフラッシュROMやEEPROM等である。ユーザは、回転型操作装置1が適用される製品に応じて、操作者に対し節度感を付与するのに適当な節度角をメモリ18に1つ以上書き込んで設定する。尚、節度角を設定しないことも勿論可能であり、その場合には、例えば節度角を「0度」に設定しておくようにする。
【0028】
次に、本実施形態の作用について説明する。
図4は、マイコン17による処理内容を本実施形態の要旨に係る部分を中心に、ユーザによる設定処理も併せて示すフローチャートである。先ず、ユーザは、事前にパソコン20を介して、上述したようにマイコン17のメモリ18に、操作ノブ10の回転操作に伴う節度感を付与するのに適切な角度値を書き込んで設定しておく(S1)。図中の「*度」が節度角に相当する。
【0029】
マイコン17は、メモリ18に設定されている節度角を読み出し、節度角が0度に設定されているか否かを判断する(S2)。節度角が0度に設定されていれば(YES)、節度感を付与する必要がないのでそのまま処理を終了する。一方、節度角の設定が0度でなければ(NO)、角度センサ15より入力される角度信号に基づき把握される、その時点の操作ノブ10の回転角度を変数B,Aに順次格納する(S3,S4)。当初は、変数Bには初期値0度が格納され、変数Aには回転操作が行われていなければ同じく0度が格納されるが、回転操作が行われていればその操作量に応じた角度が格納される。
【0030】
例えば、ユーザが節度角として90度,180度,270度及び360度の4つを設定したものとする。次のステップS5では、第1の節度角である90度が設定され、変数Bの値より変数Aの値を減じた絶対値が、第1の節度角90度よりも小さいか否かを判断する。前記絶対値が第1の節度角以上であれば(NO)ステップS4に移行する。
【0031】
ステップS4及びS5のループを回っている間に変数Aの値が増加して、ステップS5で「YES」と判断すると、マイコン17は、ピエゾ素子16に電圧を印加して振動を発生させる(S6)。これにより、操作ノブ10を介して操作者の手に振動が伝達されて、操作者は節度感を得ることになる。それから、その時点の回転角度を変数Bに格納すると(S7)ステップS4に移行する。またこの時、次に設定されている節度角があれば、「*度」を次の角度に、例えば第1の角度である90度から、第2の角度である180度に更新する。
【0032】
これにより、
図5に示すように、ユーザが設定した4つの節度角,90度,180度,270度,360度においてピエゾ素子16が振動するようになり、操作者は、操作角90度毎に節度感を得るようになる。また、
図6は、節度角が0度に設定されおり節度感が付与されない場合の
図5相当図である。
【0033】
以上のように本実施形態によれば、回転型操作装置1にピエゾ素子16を、操作者が回転操作を行うための操作子4に振動を伝達するように配置する。マイコン17は、角度センサ15より入力される角度信号に基づいて、操作者の回転操作による回転角度を検出すると共に、ピエゾ素子16における振動の発生及び停止を制御する。メモリ18には、節度感を付与する節度角が操作者により設定記憶され、マイコン17は、回転操作による回転角度が節度角に達するとピエゾ素子16に振動を発生させる。
【0034】
このように構成すれば、操作者が操作子4を回転操作した際に、ユーザがメモリ18に設定した節度角に達するとピエゾ素子16が振動するので、その振動により操作子4の操作ノブ10に触れている操作者の指や手に節度感を付与することができる。したがって、任意の角度で節度感を付与することが可能となり、回転型操作装置1を様々な製品に柔軟に対応させることができる
【0035】
また、回転型操作装置1では、ベース部材2に操作子4の固定側部材5を取り付け、回転側部材8を、固定側部材5に回転可能に組付ける。そして、ピエゾ素子16を、回転側部材5以上の層に位置する構成部品に配置する。このように構成すれば、操作者の指や手が直接触れる回転側部材8の近傍でピエゾ素子16による振動を発生させて、操作者に節度感をより明確に感じさせることができる。
【0036】
具体的には、回転側部材8を中空部分を有する円筒状に形成し、LCD13が配置される支持部材12を固定側部材5に取り付け、LCD13の表示面が前記中空部分に臨むように配置して、ピエゾ素子16をLCD13の下面に配置した。これにより、回転側部材8の操作ノブ10に触れている操作者に、節度感を明確に感じさせることができる。
【0037】
(第2実施形態)
以下、第1実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、異なる部分について説明する。
図7に示すように、第2実施形態の回転型操作装置21では、ピエゾ素子16を回路基板3に配置している。このように構成すれば、マイコン17とピエゾ素子16との間の配線が短くなり、ピエゾ素子16を予め回路基板3に搭載した状態で回転型操作装置21を組み立てることができるので、組み立て作業が容易になる。
【0038】
(第3実施形態)
第3実施形態の回転型操作装置31は、例えば第1実施形態の構成において、マイコン17に替わるマイコン32は、操作子4の回転操作に応じて、LCD13に表示する画面の内容を切り替えるように制御する。また、マイコン32は、ユーザがカバー14を指で押圧操作した際にピエゾ素子16が発生させる電圧を検出することで、操作子4に押圧スイッチとしての機能を持たせる。そして、上記電圧が閾値を超えると、マイコン32はスイッチがオンされたと見做し、LCD13に表示した選択的な内容を確定させる。
【0039】
図8に示すように、ピエゾ素子16が発生させた電圧は、ダイオードブリッジ33を介してマイコン32のポートに入力される。ダイオードブリッジ33は、電圧に重畳されるノイズを除去するフィルタとして用いられる。必要に応じて、ダイオードブリッジ33の出力側にアンプを配置して、電圧を増幅しても良い。また、ダイオードブリッジ33に替えてCRフィルタを配置しても良い。
【0040】
図9には、ピエゾ素子16を振動させる際に印加する電圧振幅と、ユーザがピエゾ素子16を押圧して発生させる電圧振幅とのイメージを示す。尚、ユーザが押圧操作と回転操作とを同時に行った場合において節度角に達した際にも、ユーザが節度感を十分感じられる態様でピエゾ素子16を振動させるようにすることが望ましい。
【0041】
次に、第3実施形態の作用について説明する。
図10に示すように、マイコン32は、操作ノブ10が回転されると(S11)、必要に応じて、すなわち第1実施形態のように節度角が設定済みであれば、節度角においてピエゾ素子16を振動させる(S12)。また、マイコン32は、操作ノブ10の回転に応じてLCD13に表示させる画面を変化させる(S13)。例えば表示させる画面が10種類ある場合は、操作ノブ10の回転に応じて10種類の画面を循環的に表示させる。
【0042】
現在LCD13に表示させている画面が、数値の設定を行うための画面であれば(S14;YES)、操作ノブ10の回転に応じて画面上に表示させる数値を変化させる。これにより、ユーザに数値を選択させる。そして、ユーザがカバー14を指で押圧操作することでピエゾ素子16が発生させる電圧を検出すると、その時点で表示させている数値を確定させる(S15)。尚、この場合もステップS12と同様に、節度角が設定済みであれば、節度角においてピエゾ素子16を振動させる。それから、設定が完了すれば(YES)処理を終了し、設定が完了しなければ(NO)ステップS11に戻る。
【0043】
図11に、LCD13に表示させる画面が変化する一例を示す。例えば、第1実施形態ではパソコン20を用いて行っていた節度角の設定を、回転型操作装置31で行うものとする。操作ノブ10の回転に応じて「回転角度設定」の画面を表示させると、その画面上で設定の「1.あり」,「2.なし」をユーザに選択させる。ユーザが操作ノブ10を回転させて「1.あり」を選択している状態で、ユーザがカバー14を指で押圧操作して「スイッチ:オン」になると「1.あり」の選択が確定し、節度角の設定画面に移行する。
【0044】
例えば既に90度が設定済みであれば、「090度」を表示させる。下線が付されている桁の数値が変更の対象となる。ユーザが操作ノブ10を回転させて数値「0」を「1」に変化させた状態で、ユーザがカバー14を押圧操作して「スイッチ:オン」になると数値「1」の選択が確定し、「190度」を表示させる。ユーザが操作ノブ10を回転させて数値「9」を「8」に変化させた状態で、ユーザがカバー14を押圧操作して「スイッチ:オン」になると数値「8」の選択が確定し、「180度」を表示させる。
【0045】
その状態でユーザが操作ノブ10を回転させずにカバー14を押圧操作して「スイッチ:オン」になると数値「180」の選択が確定し、「よろしいですか?(Y/N)」を表示させる(S16)。その状態で、ユーザがカバー14を押圧操作して「スイッチ:オン」になると回転角度の設定が完了する。それから、ユーザが操作ノブ10を回転させると、別のパラメータ等の設定画面に遷移する。
【0046】
尚、パソコン20を用いて行われる各種の設定が、上記の例に示すように、回転型操作装置31で行えるようになっている場合は、パソコン20の接続が可能となるように構成する必要はない。
【0047】
以上のように第3実施形態によれば、マイコン32に、ピエゾ素子16が発生させた電圧を入力し、マイコン32は、操作ノブ10の回転操作に応じてLCD13の表示内容を変化させ、ユーザがカバー14により押圧操作されることで発生した電圧が入力されると、表示内容に関連した制御を行う。このように、ピエゾ素子16を押圧スイッチとして使用することで、マイコン32は、ユーザの押圧操作に応じて、LCD13に選択的に表示させている内容を確定するなどの制御を行うことができる。
【0048】
そして、マイコン32は、回転操作に応じてLCD13に節度角の数値を表示させ、ユーザによる押圧操作を認識すると、その時点で表示させている数値を確定させる。これによりユーザは、回転型操作装置31において節度角の設定を行うことが可能になる。
【0049】
(第4実施形態)
第4実施形態の回転型操作装置41は、構造に関するものである。ピエゾ素子16を回転側部材に配置すると、組付けが難しくなるという問題がある。しかしながら、第1実施形態における回転型操作装置1の前方には操作ノブ10が配置されているため、ピエゾ素子16を固定側部材に配置すると、ユーザの指に振動が伝わり難くなり、十分な節度感を付与できなくなるおそれがある。
【0050】
そこで、第4実施形態では、ピエゾ素子16を固定側部材に配置すると共に、固定側部材を回転型操作装置41の前方に配置し、ユーザが回転操作を行うため操作ノブに指を掛ける際には、指が必ず固定側部材に接触する構成を採用する。
【0051】
図12は、回転型操作装置41の模式的な縦断面図である。ロワーケース42には、支持部材43の一端が接続されており、他端は図中右方向である前方に延設されている。回路基板44の中央部には支持部材43が貫通しており、回路基板44は、その状態で支持部材43の一端側である途中部位に支持されている。
【0052】
アッパーケース45は円盤状であり、回路基板44と同様に中央部に支持部材43が貫通した状態で、支持部材43の他端側である途中部位に支持されている。アッパーケース45の直径は、ロワーケース42の直径よりも長く設定されている。アッパーケース45は、前方側に凹部46が形成されており、凹部46の内周側にLCD47が配置されている。LCD47は、その背面が支持部材43の他端に接した状態で支持されている。LCD47の表面は、カバー14と同様のカバー48により覆われている。
【0053】
LCD47の背面側には、僅かに間隔を置いて基板49が配置されている。基板49も回路基板44と同様に、中央部に支持部材43が貫通した状態で他端側の途中部位に支持されている。そして、基板49の裏面には、ピエゾ素子16が配置されている。ここまでが固定側部材を構成している。
【0054】
概ね円環状の操作ノブ51は、ロワーケース42とアッパーケース45との間に配置されており、ロワーケース42に対し、支持部材52によって回転可能に支持されている。操作ノブ51の直径は、アッパーケース45の直径に等しく設計されている。以上の構成において、ロワーケース42はベース部に相当し、支持部材43は支持部に相当する。アッパーケース45は円盤部に相当し、操作ノブ51は、円環部及び回転側部材に相当する。操作子は、固定側部材及び回転側部材により構成されるが、前記固定側部材に回路基板44,LCD47及びカバー48を含む必要はない。
【0055】
以上のように第4実施形態の回転型操作装置41によれば、ユーザが操作ノブ51に指を掛けて回転操作を行う際には、その前方に配置されているアッパーケース45にも必ず指が接触するように構成されている。そして、ピエゾ素子16を、回転型操作装置41の前方側にある固定側部材に配置したので、ピエゾ素子16に発生させた振動を、アッパーケース45を介してユーザの指に伝達し易くなる。これにより、ユーザは節度感を十分に得ることができる。また、回転型操作装置41の組み立て性が良好になる。更に、ピエゾ素子16をアッパーケース45の中央部に配置するので、ユーザが複数の指を操作ノブ51に掛けた際に、それぞれの指に振動を十分に伝えることができる。
【0056】
(第5実施形態)
図13に示す第5実施形態の回転型操作装置61は第4実施形態の変形であり、アッパーケース62及び操作ノブ63の形状が第4実施形態と相違している。アッパーケース62及び操作ノブ63の外周面には、それぞれテーパが付与されており、且つ両者の外周面が連続する傾斜面となっている。
【0057】
これにより、ユーザが操作ノブ63に指を掛ける際に、前方側に配置されている固定側部材のアッパーケース62が与える抵抗感を減らして、ユーザに良好な操作感を与えることができ、ユーザは回転操作をより容易に行うことができる。
【0058】
本発明は上記した、又は図面に記載した実施形態にのみ限定されるものではなく、以下のような変形又は拡張が可能である。
第1実施形態の回転型操作装置1において、第2実施形態のように2個目のピエゾ素子16を回路基板3に配置しても良い。これにより、2つのピエゾ素子16を同時に振動させて振動のエネルギーをより大きくし、操作者に節度感を一層明確に感じさせることができる。
設定する節度角は4つに限らず、1~3又は5以上でも良い。
【0059】
操作ノブ10の滑り止め部11は、必要に応じて設ければ良い。
角度センサは、TMRセンサに限らず、例えば光学式のロータリエンコーダでも良い。
LCD13も必要に応じて設ければ良い。
第3実施形態においてLCD13に表示させる内容は、節度角の設定を行うものに限らない。
第5実施形態において、必ずしも、アッパーケース62及び操作ノブ63の外周面を連続する傾斜面とする必要はない。また、操作ノブ63の外周面だけにテーパを付与しても良い。
【0060】
一つの振動素子に流す電流を変化させ、振動に強弱を付与してもよい。例えば、操作子を75度に回転させたときは弱い振動を付与し、90度に回転させたときには強い振動を付与する、といったように、角度に応じて振動の強弱を設定しても良い。
また、角度に応じて振動の長短を設定しても良い。例えばある角度では長い振動を付与し、別の角度では短い振動を付与しても良い。
【0061】
複数の振動素子を備えた場合、角度や設定に応じて振動させる振動素子を決定しても良い。例えば、振動素子が操作子の中央と、回転円周上とに配置されている場合、操作子を回転させた際には円周上の振動素子を振動させ、操作子を押し込む動作をした際に中央の振動素子を振動させる等する。更に、押し込み時には中央の振動素子を強長振動させながら円周上の振動素子を弱短振動させても良い。
操作子を回転させ続けている間は、特定の角度に限ることなく振動を一定間隔で発生させても良い。
振動を発生させるか否かを、ユーザに決定させても良い。例えば複数の振動素子を備える場合に、振動させない振動素子を選択的に設定可能としても良い。
【符号の説明】
【0062】
図面中、1は回転型操作装置、2はベース部材、3は回路基板、4は操作子、5は固定側部材、8は回転側部材、10は操作ノブ、12は支持部材、13はLCD、15は角度センサ、16はピエゾ素子、17はマイクロコンピュータ、18はメモリを示す。