(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/00 20060101AFI20241120BHJP
【FI】
B60C11/00 C
B60C11/00 B
B60C11/00 D
(21)【出願番号】P 2020178250
(22)【出願日】2020-10-23
【審査請求日】2023-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 大介
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-188853(JP,A)
【文献】特開平11-059123(JP,A)
【文献】特表2012-520926(JP,A)
【文献】特開2017-186001(JP,A)
【文献】特開2019-199136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部にタイヤ周方向に沿って延在する少なくとも2本の主溝により区画された少なくとも3つの陸部を有し、
タイヤ幅方向最外側の前記主溝のタイヤ幅方向外側の前記陸部をショルダー領域とし、タイヤ幅方向最外側の前記主溝のタイヤ幅方向内側の前記陸部をセンター領域とした場合、
前記センター領域の前記陸部の接地面積比GCeと前記ショルダー領域の前記陸部の接地面積比GShとがGSh<GCeの関係を満たし、
前記センター領域の前記陸部のキャップゴムのtanδ(20℃)であるTCe20と前記ショルダー領域の前記陸部のキャップゴムのtanδ(20℃)であるTSh20とがTCe20<TSh20の関係を満たし、
前記センター領域の前記陸部のキャップゴムのtanδ(60℃)であるTCe60と前記ショルダー領域の前記陸部のキャップゴムのtanδ(60℃)であるTSh60とがTCe60<TSh60の関係を満たし、
TSh20/TCe20であるX20とTSh60/TCe60であるX60とがX60<X20の関係を満た
し、
TCe60/TCe20であるYCeとTSh60/TSh20であるYShとがYSh<YCeの関係を満たす、タイヤ。
【請求項2】
トレッド部にタイヤ周方向に沿って延在する少なくとも2本の主溝により区画された少なくとも3つの陸部を有し、
タイヤ幅方向最外側の前記主溝のタイヤ幅方向外側の前記陸部をショルダー領域とし、タイヤ幅方向最外側の前記主溝のタイヤ幅方向内側の前記陸部をセンター領域とした場合、
前記センター領域の前記陸部の接地面積比GCeと前記ショルダー領域の前記陸部の接地面積比GShとがGSh<GCeの関係を満たし、
前記センター領域の前記陸部のキャップゴムのtanδ(20℃)であるTCe20と前記ショルダー領域の前記陸部のキャップゴムのtanδ(20℃)であるTSh20とがTCe20<TSh20の関係を満たし、
前記センター領域の前記陸部のキャップゴムのtanδ(60℃)であるTCe60と前記ショルダー領域の前記陸部のキャップゴムのtanδ(60℃)であるTSh60とがTCe60<TSh60の関係を満たし、
TSh20/TCe20であるX20とTSh60/TCe60であるX60とがX60<X20の関係を満た
し、
前記TCe60と前記TCe20とが、0.2≦TCe60/TCe20≦0.5の関係を満たす、タイヤ。
【請求項3】
トレッド部にタイヤ周方向に沿って延在する少なくとも2本の主溝により区画された少なくとも3つの陸部を有し、
タイヤ幅方向最外側の前記主溝のタイヤ幅方向外側の前記陸部をショルダー領域とし、タイヤ幅方向最外側の前記主溝のタイヤ幅方向内側の前記陸部をセンター領域とした場合、
前記センター領域の前記陸部の接地面積比GCeと前記ショルダー領域の前記陸部の接地面積比GShとがGSh<GCeの関係を満たし、
前記センター領域の前記陸部のキャップゴムのtanδ(20℃)であるTCe20と前記ショルダー領域の前記陸部のキャップゴムのtanδ(20℃)であるTSh20とがTCe20<TSh20の関係を満たし、
前記センター領域の前記陸部のキャップゴムのtanδ(60℃)であるTCe60と前記ショルダー領域の前記陸部のキャップゴムのtanδ(60℃)であるTSh60とがTCe60<TSh60の関係を満たし、
TSh20/TCe20であるX20とTSh60/TCe60であるX60とがX60<X20の関係を満た
し、
前記TSh60と前記TSh20とが、0.3≦TSh60/TSh20≦0.6の関係を満たす、タイヤ。
【請求項4】
前記センター領域の前記陸部の接地面積比率GCe’と前記ショルダー領域の前記陸部の接地面積比率GSh’とが、10%≦GCe’-GSh’≦50%の関係を満たす、請求項1
から3のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記X20と前記X60とが、1.01以上2.0以下の範囲を満たす、請求項1から
4のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記センター領域の前記陸部の実接地面積ACeと前記TCe60との積PCe60、および前記ショルダー領域の前記陸部の実接地面積AShと前記TSh60との積PSh60が、10以上50以下の範囲を満たす、請求項1から
5のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記センター領域の前記陸部の実接地面積ACeと前記TCe20との積PCe20、および前記ショルダー領域の前記陸部の実接地面積AShと前記TSh20との積PSh20が、30以上90以下の範囲を満たす、請求項1から
6のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記GCeと前記TCe60との積と、前記GShと前記TSh60との積との比が、0.90≦(GCe×TCe60)/(GSh×TSh60)≦1.10の範囲を満たし、前記GCeと前記TCe20との積と、前記GShと前記TSh20との積との比が、0.90≦(GCe×TCe20)/(GSh×TSh20)≦1.10の範囲を満たす、請求項1から
7のいずれか1項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
トレッドゴムのtanδを高くし、接地面積を大きくすると、乾燥路面での制動性能の向上が図られる。しかし、tanδおよび接地面積の増大は、乾燥路面での制動性能の向上と背反して、接地面で巻き上げた砂がタイヤハウス内ではねる際の砂はね音により車内騒音を悪化させ静粛性能に影響を及ぼす。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1の空気入りタイヤは、タイヤ幅方向最外側の主溝のタイヤ幅方向外側の陸部をショルダー領域とし、タイヤ幅方向最外側の主溝のタイヤ幅方向内側にて主溝で区画された陸部をセンター領域とした場合、センター領域の陸部の接地面積比がショルダー領域の陸部の接地面積比よりも大きく形成され、かつショルダー領域の陸部のキャップゴムのtanδ(20℃)がセンター領域の陸部のキャップゴムのtanδ(20℃)よりも大きく形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1の空気入りタイヤは、乾燥路面での制動性能の向上に寄与が大きいショルダー領域において、陸部のキャップゴムのtanδ(20℃)をセンター領域の陸部のキャップゴムのtanδ(20℃)よりも大きく形成したことで、乾燥路面での制動性能を確保する。その一方で、センター領域において、陸部のキャップゴムのtanδ(20℃)をショルダー領域の陸部のキャップゴムのtanδ(20℃)よりも小さく形成したことで、接地面への砂の吸着量を少なくし、静粛性能を向上する。また、ショルダー領域において、陸部の接地面積比をセンター領域の陸部の接地面積比よりも小さく形成したことで、接地面への砂の吸着量を少なくし、静粛性能を向上する。その一方で、センター領域において、陸部の接地面積比をショルダー領域の陸部の接地面積比よりも大きく形成したことで、乾燥路面での制動性能を確保する。この結果、特許文献1の空気入りタイヤは、乾燥路面での制動性能を損なうことなく静粛性能を向上できる。
【0006】
近年の自動車では、車両性能が向上しており、タイヤ単体の制動性能についてこれまで以上の改善が求められている。その一方で、背反する砂はねを抑制する静粛性能を確保することが求められている。
【0007】
この発明は、静粛性能を確保しつつ制動性能をより高めることのできるタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係るタイヤは、トレッド部にタイヤ周方向に沿って延在する少なくとも2本の主溝により区画された少なくとも3つの陸部を有し、タイヤ幅方向最外側の前記主溝のタイヤ幅方向外側の前記陸部をショルダー領域とし、タイヤ幅方向最外側の前記主溝のタイヤ幅方向内側の前記陸部をセンター領域とした場合、前記センター領域の前記陸部の接地面積比GCeと前記ショルダー領域の前記陸部の接地面積比GShとがGSh<GCeの関係を満たし、前記センター領域の前記陸部のキャップゴムのtanδ(20℃)であるTCe20と前記ショルダー領域の前記陸部のキャップゴムのtanδ(20℃)であるTSh20とがTCe20<TSh20の関係を満たし、前記センター領域の前記陸部のキャップゴムのtanδ(60℃)であるTCe60と前記ショルダー領域の前記陸部のキャップゴムのtanδ(60℃)であるTSh60とがTCe60<TSh60の関係を満たし、TSh20/TCe20であるX20とTSh60/TCe60であるX60とがX60<X20の関係を満たす。
【0009】
TCe60/TCe20であるYCeとTSh60/TSh20であるYShとがYSh<YCeの関係を満たすことが好ましい。
【0010】
前記センター領域の前記陸部の接地面積比率GCe’と前記ショルダー領域の前記陸部の接地面積比率GSh’とが、10%≦GCe’-GSh’≦50%の関係を満たすことが好ましい。
【0011】
前記X20と前記X60とが、1.01以上2.0以下の範囲を満たすことが好ましい。
【0012】
前記TCe60と前記TCe20とが、0.2≦TCe60/TCe20≦0.5の関係を満たすことが好ましい。
【0013】
前記TSh60と前記TSh20とが、0.3≦TSh60/TSh20≦0.6の関係を満たすことが好ましい。
【0014】
前記センター領域の前記陸部の実接地面積ACeと前記TCe60との積PCe60、および前記ショルダー領域の前記陸部の実接地面積AShと前記TSh60との積PSh60が、10以上50以下の範囲を満たすことが好ましい。
【0015】
前記センター領域の前記陸部の実接地面積ACeと前記TCe20との積PCe20、および前記ショルダー領域の前記陸部の実接地面積AShと前記TSh20との積PSh20が、30以上90以下の範囲を満たすことが好ましい。
【0016】
前記GCeと前記TCe60との積と、前記GShと前記TSh60との積との比が、0.90≦(GCe×TCe60)/(GSh×TSh60)≦1.10の範囲を満たし、前記GCeと前記TCe20との積と、前記GShと前記TSh20との積との比が、0.90≦(GCe×TCe20)/(GSh×TSh20)≦1.10の範囲を満たすことが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、静粛性能を確保しつつ制動性能をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、実施形態に係る空気入りタイヤの子午断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る空気入りタイヤの平面図である。
【
図3】
図3は、キャップゴムの粘弾性曲線を示す図である。
【
図4】
図4は、実施例に係る空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。また、この実施形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
【0020】
本実施形態に係る空気入りタイヤについて説明する。
図1は、本実施形態に係る空気入りタイヤの子午断面図である。
図2は、本実施形態に係る空気入りタイヤの平面図である。
【0021】
以下の説明において、タイヤ径方向とは、空気入りタイヤ1の回転軸(図示せず)と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向において回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向において回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、前記回転軸を中心軸とする周り方向をいう。また、タイヤ幅方向とは、前記回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)CLに向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。タイヤ赤道面CLとは、空気入りタイヤ1の回転軸に直交するとともに、空気入りタイヤ1のタイヤ幅の中心を通る平面である。タイヤ幅は、タイヤ幅方向の外側に位置する部分同士のタイヤ幅方向における幅、つまり、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから最も離れている部分間の距離である。タイヤ赤道線とは、タイヤ赤道面CL上にあって空気入りタイヤ1のタイヤ周方向に沿う線をいう。本実施形態では、タイヤ赤道線にタイヤ赤道面と同じ符号「CL」を付す。
【0022】
本実施形態の空気入りタイヤ1は、
図1および
図2に示すようにトレッド部2と、その両側のショルダー部3と、各ショルダー部3から順次連続するサイドウォール部4およびビード部5とを有している。また、この空気入りタイヤ1は、カーカス層6と、ベルト層7と、を備えている。
【0023】
トレッド部2は、ゴム材(トレッドゴム)からなり、空気入りタイヤ1のタイヤ径方向の最も外側で露出し、その表面が空気入りタイヤ1の輪郭となる。トレッド部2の外周表面、つまり、走行時に路面と接触する踏面には、トレッド面21が形成されている。トレッド面21は、タイヤ周方向に沿って延在し、タイヤ幅方向に複数(本実施形態では3本)並ぶ主溝22が設けられている。そして、トレッド面21は、これら複数の主溝22により、タイヤ周方向に沿って延び、タイヤ赤道線CLと平行なリブ状の陸部23が複数(本実施形態では4本)形成されている。なお、主溝22は、溝幅が3mm以上で、溝深さが5mm以上であって、JATMAに規定されるウェアインジケータの表示義務を有する溝である。
【0024】
ショルダー部3は、トレッド部2のタイヤ幅方向両外側の部位である。また、サイドウォール部4は、空気入りタイヤ1におけるタイヤ幅方向の最も外側に露出したものである。また、ビード部5は、ビードコア51とビードフィラー52とを有する。ビードコア51は、スチールワイヤであるビードワイヤをリング状に巻くことにより形成されている。ビードフィラー52は、カーカス層6のタイヤ幅方向端部がビードコア51の位置で折り返されることにより形成された空間に配置されるゴム材である。
【0025】
カーカス層6は、各タイヤ幅方向端部が、一対のビードコア51でタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に折り返され、かつタイヤ周方向にトロイド状に掛け回されてタイヤの骨格を構成するものである。このカーカス層6は、タイヤ周方向に対する角度がタイヤ子午線方向に沿いつつタイヤ周方向にある角度を持って複数並設されたカーカスコード(図示せず)が、コートゴムで被覆されたものである。カーカスコードは、有機繊維(ポリエステルやレーヨンやナイロンなど)からなる。このカーカス層6は、少なくとも1層で設けられている。
【0026】
ベルト層7は、少なくとも2層のベルト7A,7Bを積層した多層構造をなし、トレッド部2においてカーカス層6の外周であるタイヤ径方向外側に配置され、カーカス層6をタイヤ周方向に覆うものである。ベルト7A,7Bは、タイヤ周方向に対して所定の角度(例えば、20度~30度)で複数並設されたコード(図示せず)が、コートゴムで被覆されたものである。コードは、スチールまたは有機繊維(ポリエステルやレーヨンやナイロンなど)からなる。また、重なり合うベルト7A,7Bは、互いのコードが交差するように配置されている。
【0027】
なお、図には明示しないが、ベルト層7の外周であるタイヤ径方向外側には、ベルト補強層が設けられていてもよい。ベルト補強層は、ベルト層7をタイヤ周方向に覆うものである。ベルト補強層は、タイヤ周方向に略平行(±5度)でタイヤ幅方向に複数並設されたコード(図示せず)がコートゴムで被覆されている。コードは、スチールまたは有機繊維(ポリエステルやレーヨンやナイロンなど)からなる。ベルト補強層は、帯状(例えば幅10[mm])のストリップ材をタイヤ周方向に巻き付けて設けられている。このベルト補強層は、例えば、ベルト層7のタイヤ幅方向端部のみを覆うように配置されていたり、ベルト層7全体を覆うように配置されていたり、2層の補強層を有してタイヤ径方向内側の補強層がベルト層7よりもタイヤ幅方向で大きく形成されてベルト層7全体を覆うように配置されタイヤ径方向外側の補強層がベルト層7のタイヤ幅方向端部のみを覆うように配置されていたり、2層の補強層を有して各補強層がベルト層7のタイヤ幅方向端部のみを覆うように配置されていたりする。
【0028】
本実施形態の空気入りタイヤ1では、
図1および
図2に示すように、トレッド部2において、タイヤ幅方向最外側の主溝22をショルダー主溝22Bといい、ショルダー主溝22B以外の主溝22を内側主溝22Aという。さらに、内側主溝22Aおよびショルダー主溝22Bにより挟まれる陸部23をセンター領域の陸部(センター陸部)23Aといい、ショルダー主溝22Bのタイヤ幅方向外側の陸部23をショルダー領域の陸部(ショルダー陸部)23Bという。
【0029】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、
図1に示すように、トレッド部2のトレッドゴムは、トレッド面21において路面に接地する接地面をなすキャップゴム24を有している。トレッド部2のトレッドゴムは、キャップゴム24のタイヤ径方向内側にベースゴム25を有している。そして、キャップゴム24は、タイヤ幅方向最外側のショルダー主溝22Bの溝底を境にして、当該ショルダー主溝22Bのタイヤ幅方向内側のセンターキャップゴム24Aと、ショルダー主溝22Bのタイヤ幅方向外側のショルダーキャップゴム24Bとで構成されている。即ち、センター陸部23Aは、センターキャップゴム24Aで形成され、ショルダー陸部23Bは、ショルダーキャップゴム24Bで形成されている。
【0030】
センターキャップゴム24Aは、tanδ(20℃)が0.2以上0.48以下の範囲内であり、ショルダーキャップゴム24Bは、tanδ(20℃)が0.5以上0.7以下の範囲内で、相互の粘弾性が異なっている。なお、tanδ(20℃)は、JIS K6394:2007に準じて、粘弾性スペクトロメーター(例えば、東洋精機製作所社製)を用い、伸張変形歪率10%±2%、振動数20Hz、温度20℃の条件で測定したときの値をいう。
【0031】
また、センターキャップゴム24Aは、tanδ(60℃)が0.1以上0.28以下の範囲内であり、ショルダーキャップゴム24Bは、tanδ(60℃)が0.25以上0.35以下の範囲内で、相互の粘弾性が異なっている。なお、tanδ(60℃)は、JIS K6394:2007に準じて、粘弾性スペクトロメーター(例えば、東洋精機製作所社製)を用い、伸張変形歪率10%±2%、振動数20Hz、温度60℃の条件で測定したときの値をいう。
【0032】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、センター陸部23Aとショルダー陸部23Bとで接地面積比が設定されている。接地面積比は、各陸部23において、タイヤ周方向全体において、主溝22を除き、接地面積/(溝面積+接地面積)により算出される。溝面積は、主溝22を除く全ての溝(例えば、タイヤ周方向に交差するラグ溝26や主溝22よりも溝幅の細い細溝やサイプ27)の開口面積である。ラグ溝26は、主溝22よりも溝幅および溝深さが小さい溝である。接地面積および溝面積は、センター陸部23Aでは、内側主溝22Aやショルダー主溝22Bの開口端がタイヤ幅方向端となり、ショルダー陸部23Bでは、ショルダー主溝22Bのタイヤ幅方向外側の開口端と接地端Tがタイヤ幅方向端となる。そして、センター陸部23Aは、接地面積比が0.8以上1.0以下の範囲内であり、ショルダー陸部23Bは、接地面積比が0.5以上0.7以下の範囲内で、相互の接地面積比が異なっている。
【0033】
ここで、接地端Tは、空気入りタイヤ1を正規リムにリム組みし、かつ正規内圧を充填するとともに正規荷重の70%をかけたとき、この空気入りタイヤ1のトレッド部2のトレッド面21が路面(水平面)と接地する領域において、タイヤ幅方向の両最外端をいい、タイヤ周方向に連続する。各接地端T間のタイヤ幅方向寸法を接地幅TWという。また、接地面積および溝面積も同様に、空気入りタイヤ1を正規リムにリム組みし、かつ正規内圧を充填するとともに正規荷重の70%をかけたとき、この空気入りタイヤ1のトレッド部2のトレッド面21が路面(水平面)と接地する主溝22を除く領域から得られる。正規リムとは、JATMAで規定する「標準リム」、TRAで規定する「Design Rim」、あるいは、ETRTOで規定する「Measuring Rim」である。また、正規内圧とは、JATMAで規定する「最高空気圧」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、あるいはETRTOで規定する「INFLATION PRESSURES」である。また、正規荷重とは、JATMAで規定する「最大負荷能力」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、あるいはETRTOで規定する「LOAD CAPACITY」である。
【0034】
そして、本実施形態の空気入りタイヤ1は、センター領域のセンター陸部23Aの接地面積比GCeとショルダー領域のショルダー陸部23Bの接地面積比GShとがGSh<GCeの関係を満たす。このGSh<GCeの関係は、ショルダー陸部23Bにおいて、タイヤ周方向に交差するラグ溝26や主溝22よりも溝幅の細い細溝やサイプ27がセンター陸部23Aよりも多く形成されていることにより実施できる。また、本実施形態の空気入りタイヤ1は、センター領域のセンター陸部23Aのセンターキャップゴム24Aのtanδ(20℃)であるTCe20とショルダー領域のショルダー陸部23Bのショルダーキャップゴム24Bのtanδ(20℃)であるTSh20とがTCe20<TSh20の関係を満たす。また、本実施形態の空気入りタイヤ1は、センター領域のセンター陸部23Aのセンターキャップゴム24Aのtanδ(60℃)であるTCe60とショルダー領域のショルダー陸部23Bのショルダーキャップゴム24Bのtanδ(60℃)であるTSh60とがTCe60<TSh60の関係を満たす。また、本実施形態の空気入りタイヤ1は、TSh20/TCe20であるX20とTSh60/TCe60であるX60とがX60<X20の関係を満たす。
【0035】
本実施形態の空気入りタイヤ1によれば、接地面積比が相対的に大きいセンター領域のセンター陸部23Aでセンターキャップゴム24Aのtanδ(20℃)およびtanδ(60℃)を相対的に小さくすることにより、砂はね巻き上げ量の低減が図れる。一方、本実施形態の空気入りタイヤ1によれば、接地面積比が相対的に小さいショルダー領域のショルダー陸部23Bでショルダーキャップゴム24Bのtanδ(20℃)およびtanδ(60℃)を相対的に大きくすることで、乾燥路面での制動性能を確保することができる。また、本実施形態の空気入りタイヤ1によれば、センターキャップゴム24Aとショルダーキャップゴム24Bのtanδ(60℃)の比であるX60よりも、センターキャップゴム24Aとショルダーキャップゴム24Bのtanδ(20℃)の比であるX20が大きくなるように定義することで、高速走行時の制動性能の向上および砂はねを抑制した静粛性能の向上に寄与できる。
【0036】
具体的に、本実施形態の空気入りタイヤ1によれば、乾燥路面での制動性能の向上に寄与が大きいショルダー領域において、ショルダー陸部23Bのショルダーキャップゴム24Bのtanδ(20℃)TSh20およびtanδ(60℃)TSh60をセンター領域のセンター陸部23Aのセンターキャップゴム24Aのtanδ(20℃)TCe20およびtanδ(60℃)TCe60よりも大きくしたことで、乾燥路面での制動性能を確保することができる。その一方で、ショルダー領域において、ショルダー陸部23Bの接地面積比GShをセンター領域のセンター陸部23Aの接地面積比GCeよりも小さくしたことで、接地面への砂の吸着量を少なくし、静粛性能を向上することができる。しかも、本実施形態の空気入りタイヤ1によれば、ショルダー領域において、ショルダー陸部23Bの接地面積比GShをセンター領域のセンター陸部23Aの接地面積比GCeよりも小さく形成したことで、ショルダー陸部23Bの偏摩耗を抑制することができる。センター領域においては、センター陸部23Aのセンターキャップゴム24Aのtanδ(20℃)TCe20およびtanδ(60℃)TCe60をショルダー領域のショルダー陸部23Bのショルダーキャップゴム24Bのtanδ(20℃)TSh20およびtanδ(60℃)TSh60よりも小さくしたことで、接地面への砂の吸着量を少なくし、静粛性能を向上することができる。その一方で、センター領域において、センター陸部23Aの接地面積比GCeをショルダー領域のショルダー陸部23Bの接地面積比GShよりも大きく形成したことで、乾燥路面での制動性能を確保することができる。ここで、高速走行時は、タイヤ温度が上がるため砂はねが発生し難い状況にあり、このため、本実施形態の空気入りタイヤ1によれば、低速走行時は、相対的に温度が低いX20の定義で、上述したtanδ(20℃)と接地面積比との関係により制動性能および静粛性を向上しつつ、高速走行時は相対的に温度が高いX60とX20との差により、センターキャップゴム24Aとショルダーキャップゴム24Bとのtanδ(60℃)の比を小さくすることで、グリップ力を高め安定した乾燥路面での制動性能の向上を図れる。この結果、本実施形態の空気入りタイヤ1は、静粛性能および制動性能をより高めることができる。なお、本実施形態において、低速走行は、市街地などを走行する40km/hから60km/hの速度域を想定し、高速走行を高速道路などを走行する80km/hから100km/hの速度域を想定している。
【0037】
ここで、
図3は、キャップゴム24の粘弾性曲線を示す図である。
図3に示すように、実線で示す2つの曲線うちの一方がセンターキャップゴム24Aの粘弾性曲線の一例をあらわし、他方がショルダーキャップゴム24Bの粘弾性曲線の一例をあらわしている。
図3に示すように、本実施形態の空気入りタイヤ1は、センターキャップゴム24Aのtanδ(20℃)であるTCe20とショルダーキャップゴム24Bのtanδ(20℃)であるTSh20とは、TCe20<TSh20の関係を満たしている。また、本実施形態の空気入りタイヤ1は、センターキャップゴム24Aのtanδ(60℃)であるTCe60とショルダーキャップゴム24Bのtanδ(60℃)であるTSh60とがTCe60<TSh60の関係を満たしている。また、本実施形態の空気入りタイヤ1は、TSh20/TCe20であるX20とTSh60/TCe60であるX60とがX60<X20の関係を満たしている。なお、
図3において、破線で示す曲線と一点鎖線で示す曲線は、他の例のゴムの粘弾性曲線の一例を示しており、様々な粘弾性曲線のゴムを適宜選択することで、季節や速度域に応じて性能向上を図ることができる。
【0038】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、センター領域のセンター陸部23Aにおけるセンターキャップゴム24Aのtanδ(60℃)とtanδ(20℃)の関係TCe60/TCe20をYCeとし、ショルダー領域のショルダー陸部23Bにおけるショルダーキャップゴム24Bのtanδ(60℃)とtanδ(20℃)の関係TSh60/TSh20をYShとし、これらYCeとYShとが、YSh<YCeの関係を満たすことが好ましい。
【0039】
YCeは、センターキャップゴム24Aのtanδ(60℃)とtanδ(20℃)の温度依存性である
図3のtanδ(粘弾性曲線)の傾きをあらわし、YShは、ショルダーキャップゴム24Bのtanδ(60℃)とtanδ(20℃)の温度依存性である
図3のtanδの傾きをあらわしている。この空気入りタイヤ1によれば、上述したように、高速走行時は、タイヤ温度が上がるため砂はねが発生し難い状況にあるため、センター領域のセンター陸部23Aにおいてtanδ(60℃)とtanδ(20℃)の間の傾きの少ない(つまりtanδ(60℃)が高い)センターキャップゴム24Aを使用することで、より安定した乾燥路面での制動性能の向上を図ることができる。
【0040】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、センター領域のセンター陸部23Aの接地面積比率GCe’と、ショルダー領域のショルダー陸部23Bの接地面積比率GSh’とが、10%≦GCe’-GSh’≦50%の関係を満たすことが好ましい。接地面積比率は、各陸部23において、タイヤ周方向全体において、主溝22を除き、接地面積/(溝面積+接地面積)の百分率により算出される。上記GCe’-GSh’の関係は、ショルダー陸部23Bにおいて、タイヤ周方向に交差するラグ溝26や主溝22よりも溝幅の細い細溝やサイプ27がセンター陸部23Aよりも多く形成されていることにより実施できる。
【0041】
この空気入りタイヤ1によれば、センター領域のセンター陸部23Aの接地面積比率GCe’とショルダー領域のショルダー陸部23Bの接地面積比率GSh’との差を10%以上とすることで、ショルダー領域において接地面への砂の吸着量を少なくすることができる。一方、センター領域のセンター陸部23Aの接地面積比率GCe’とショルダー領域のショルダー陸部23Bの接地面積比率GSh’との差を50%以下とすることで、ショルダー領域における接地面への砂の吸着量の低減効果を確保できる。例えば、ショルダー領域においてショルダーキャップゴム24Bのグリップ力が高く砂の吸着量が多い場合、静粛性能が低下する傾向となるが、センター陸部23Aの接地面積比率GCe’と、ショルダー陸部23Bの接地面積比率GSh’との差を定義することで、ショルダー領域における接地面への砂の吸着量の低減効果を向上できる。
【0042】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、センターキャップゴム24Aとショルダーキャップゴム24Bのtanδ(20℃)の比であるX20が、1.01≦X20≦2.0の範囲を満たし、かつセンターキャップゴム24Aとショルダーキャップゴム24Bのtanδ(60℃)の比であるX60が1.01≦X60≦2.0の範囲を満たすことが好ましい。
【0043】
この空気入りタイヤ1によれば、X20およびX60を1.01以上とすることで、ショルダーキャップゴム24Bのtanδが大きく乾燥路面での制動性能の向上を図ることができる。一方、X20およびX60を2.0以下とすることで、tanδの過大を抑え砂はねの抑制効果を確保できる。
【0044】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、センター領域のセンター陸部23Aにおけるセンターキャップゴム24Aのtanδ(60℃)とtanδ(20℃)の比YCeであるTCe60/TCe20が、0.2≦TCe60/TCe20≦0.5の範囲を満たすことが好ましい。
【0045】
この空気入りタイヤ1によれば、センター領域のセンター陸部23Aにおけるセンターキャップゴム24Aについて、
図3のtanδ(粘弾性曲線)の傾きの範囲を設定している。この空気入りタイヤ1によれば、センターキャップゴム24Aについて、粘弾性曲線の傾きの範囲が設定されることで、背反する乾燥路面での制動性能と砂はねを抑制する静粛性能との両立化を図ることができる。
【0046】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、ショルダー領域のショルダー陸部23Bにおけるショルダーキャップゴム24Bのtanδ(60℃)とtanδ(20℃)の比YShであるTSh60/TSh20が、0.3≦TSh60/TSh20≦0.6の関係を満たすことが好ましい。
【0047】
この空気入りタイヤ1によれば、ショルダー領域のショルダー陸部23Bにおけるショルダーキャップゴム24Bについて、
図3のtanδ(粘弾性曲線)の傾きの範囲を設定している。この空気入りタイヤ1によれば、ショルダーキャップゴム24Bについて、粘弾性曲線の傾きの範囲が設定されることで、背反する乾燥路面での制動性能と砂はねを抑制する静粛性能との両立化を図ることができる。
【0048】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、センター領域のセンター陸部23Aの実接地面積ACeと、センター陸部23Aのセンターキャップゴム24Aのtanδ(60℃)TCe60との積PCe60、およびショルダー領域のショルダー陸部23Bの実接地面積AShと、ショルダー領域のショルダー陸部23Bのショルダーキャップゴム24Bのtanδ(60℃)TSh60との積PSh60が、10以上50以下の範囲を満たすことが好ましい。
【0049】
ここで、実接地面積ACe,AShは、空気入りタイヤ1を正規リムにリム組みし、かつ正規内圧を充填するとともに正規荷重の70%をかけたとき、
図2に二点鎖線で囲むように、トレッド部2のトレッド面21が路面(水平面)と接地する接地領域Gにおいて、主溝22を含む全ての溝の溝面積を除くものである。
【0050】
この空気入りタイヤ1によれば、センター陸部23AにおけるPCe60、およびショルダー陸部23BにおけるPSh60が10以上であれば、センター領域において接地面積比GCeを大きくし、かつショルダー領域においてtanδ(60℃)TCe60を大きくできるため、センター領域およびショルダー領域において乾燥路面での制動性能を確保することができる。一方、センター陸部23AにおけるPCe60、ショルダー陸部23BにおけるPSh60が50以下であれば、センター領域においてtanδ(60℃)TCe60を抑え、かつショルダー領域において接地面積比GShを抑えられるため、センター領域およびショルダー領域において接地面への砂の吸着量を少なくして静粛性能を向上することができる。
【0051】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、センター領域のセンター陸部23Aの実接地面積ACeと、センター陸部23Aのセンターキャップゴム24Aのtanδ(20℃)TCe20との積PCe20、およびショルダー領域のショルダー陸部23Bの実接地面積AShと、ショルダー領域のショルダー陸部23Bのショルダーキャップゴム24Bのtanδ(20℃)TSh20との積PSh20が、30以上90以下の範囲を満たすことが好ましい。
【0052】
この空気入りタイヤ1によれば、センター陸部23AにおけるPCe20、およびショルダー陸部23BにおけるPSh20が30以上であれば、センター領域において接地面積比GCeを大きくし、かつショルダー領域においてtanδ(20℃)TCe20を大きくできるため、センター領域およびショルダー領域において乾燥路面での制動性能を確保することができる。一方、センター陸部23AにおけるPCe20、ショルダー陸部23BにおけるPSh20が90以下であれば、センター領域においてtanδ(20℃)TCe20を抑え、かつショルダー領域において接地面積比GShを抑えられるため、センター領域およびショルダー領域において接地面への砂の吸着量を少なくして静粛性能を向上することができる。
【0053】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、センター領域のセンター陸部23Aの接地面積比GCeとセンター陸部23Aのセンターキャップゴム24Aのtanδ(60℃)TCe60との積と、ショルダー領域のショルダー陸部23Bの接地面積比GShとショルダー領域のショルダー陸部23Bのショルダーキャップゴム24Bのtanδ(60℃)TSh60との積との比が、0.90≦(GCe×TCe60)/(GSh×TSh60)≦1.10の範囲を満たし、センター領域のセンター陸部23Aの接地面積比GCeとセンター陸部23Aのセンターキャップゴム24Aのtanδ(20℃)TCe20との積と、ショルダー領域のショルダー陸部23Bの接地面積比GShとショルダー領域のショルダー陸部23Bのショルダーキャップゴム24Bのtanδ(20℃)TSh20との積との比が、0.90≦(GCe×TCe20)/(GSh×TSh20)≦1.10の範囲を満たすことが好ましい。
【0054】
この空気入りタイヤ1によれば、センター領域の接地面積比GCeとtanδ(60℃)TCe60の積と、ショルダー領域の接地面積比GShとtanδ(60℃)TSh60の積との比が、0.90以上1.10以下の範囲で均一化され、かつセンター領域の接地面積比GCeとtanδ(20℃)TCe20の積と、ショルダー領域の接地面積比GShとtanδ(20℃)TSh20の積との比が、0.90以上1.10以下の範囲で均一化されることで、双方の差があることによる静粛性能と制動性能の偏りを抑え、制動性能を確保し、砂はね音(高周波側の音圧レベル)を低減でき、さらにトレッド部2の偏摩耗を抑制できる。
【0055】
なお、上述した本実施形態の各作用効果を顕著に得るにあたり、ショルダー領域の各ショルダー陸部23Bは、
図2に示す個々の接地面のタイヤ幅方向寸法(ショルダー陸部幅)WShが、各接地端T間の接地幅TWに対して30%以上50%以下の範囲にあることが好ましい。また、センター領域のセンター陸部23Aの
図2に示す個々の接地面のタイヤ幅方向寸法(センター陸部幅)WCeの合計が、接地幅TWに対して50%以上70%以下の範囲にあることが好ましい。
【0056】
本実施形態では、上記のように、タイヤの一例として空気入りタイヤについて説明した。しかし、これに限らず、本実施形態に記載された構成は、他のタイヤに対しても、当業者自明の範囲内にて任意に適用できる。他のタイヤとしては、例えば、エアレスタイヤが挙げられる。
【実施例】
【0057】
本実施例では、条件が異なる複数種類の空気入りタイヤについて、静粛性能(耐砂はね音)および乾燥路面での制動性能に関する性能試験が行われた(
図4参照)。
【0058】
性能評価試験では、タイヤサイズ215/45R18の空気入りタイヤ(試験タイヤ)を、18×7.0Jの正規リムに組み付け、250kPaの正規内圧を充填し、排気量1500ccクラスの車両(試験車両)に装着した。
【0059】
静粛性能の性能試験では、上記試験車両にて、乾燥路面において新品時から100kmの慣らし走行を実施した後、延長50mで幅3mの乾燥路面にエアブローを実施し砂を撒きほうきにてまんべんなくならした試験路を走行して周回テストコースを走行した時にパネラーにより車内騒音の官能評価を行う。官能評価は、周回テストコースを2周した後、さらに周回テストコースを1周した後、さらに周回テストコースを1周した後にそれぞれ行い、3回の平均とする。この評価は、従来例を基準(100)とした指数評価により行われ、その数値が大きいほど砂はね音が小さく静粛性能が優れていることを示している。
【0060】
乾燥路面の制動性能の評価方法は、低速走行および高速走行を実施する。低速走行の評価方法は、上記試験車両にて乾燥路面を走行し、走行速度50km/hからの0km/hまでの制動距離が測定される。また、高速走行の評価方法は、上記試験車両にて乾燥路面を走行し、走行速度100km/hからの0km/hまでの制動距離が測定される。そして、これら測定結果に基づいて従来例を基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は、数値が大きいほど制動距離が短く制動性能が優れていることを示している。
【0061】
図4において、従来例、比較例1~比較例3、実施例1~実施例4の空気入りタイヤは、
図1および
図2に示すように、トレッド部に3本の主溝により4本の陸部が区画形成されている。tanδ(20℃)およびtanδ(60℃)は、従来例のセンター領域の陸部を基準(100)とした指数で示している。また、接地面積比は、従来例のセンター領域の陸部を基準(100)とした指数で示している。従来例、比較例1~比較例3の空気入りタイヤは、接地面積比GCeと接地面積比GShとの関係、tanδ(20℃)TSh20とtanδ(20℃)TCe20との関係、tanδ(60℃)TSh60とtanδ(60℃)TCe60との関係、およびX20とX60との関係が規定外である。一方、実施例1~実施例4の空気入りタイヤは、接地面積比GCeと接地面積比GShとの関係、tanδ(20℃)TSh20とtanδ(20℃)TCe20との関係、tanδ(60℃)TSh60とtanδ(60℃)TCe60との関係、およびX20とX60との関係が規定範囲である。
【0062】
図4の試験結果に示すように、実施例1~実施例4の空気入りタイヤは、静粛性能が確保され、かつ乾燥路面での低速走行時および高速走行時の制動性能が改善されていることが分かる。
【符号の説明】
【0063】
1 空気入りタイヤ
22 主溝
22B ショルダー主溝
22A 内側主溝
23 陸部
23A センター陸部
23B ショルダー陸部
24 キャップゴム
24A センターキャップゴム
24B ショルダーキャップゴム