(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】ゲームプログラム、およびゲーム装置
(51)【国際特許分類】
A63F 13/814 20140101AFI20241120BHJP
A63F 13/45 20140101ALI20241120BHJP
【FI】
A63F13/814
A63F13/45
(21)【出願番号】P 2021022524
(22)【出願日】2021-02-16
【審査請求日】2023-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000129149
【氏名又は名称】株式会社カプコン
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸谷 知久
(72)【発明者】
【氏名】堀 諭史
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-183174(JP,A)
【文献】特開2001-009150(JP,A)
【文献】特開2018-201786(JP,A)
【文献】特開2018-092656(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63F 13/00-A63F 13/98
A63F 9/24
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータを、
キャラクタとオブジェクトを仮想空間内に配置してゲームを進行させるゲーム進行部と、
楽曲を再生する再生部と、
時間のカウントの速度を可変できるタイマと、
して機能させ、
前記再生部は、前記楽曲の再生中において、所定の中止条件が成立した場合に前記楽曲の再生を中止し、
前記タイマは、前記中止条件の成立に応じてカウントを開始し、
前記再生部は、前記楽曲の再生を再開する再開条件が成立した場合には、前記タイマのカウント値が第1閾値以下か否かに応じた態様で、前記楽曲を再生し、
前記速度は、前記キャラクタと前記オブジェクトとの距離が第2閾値よりも大きい場合には、前記距離が前記第2閾値以下の場合よりも大き
く、前記キャラクタと前記オブジェクトとの距離が大きくなるほど大きくなり、
前記再生部は、
前記タイマのカウント値が前記第1閾値以下の場合において、前記再開条件が成立した場合には、前記楽曲の再生を中止した箇所または当該箇所の近傍から再生し、
前記タイマのカウント値が前記第1閾値よりも大きい場合において、前記再開条件が成立した場合には、前記楽曲を最初から再生する
ことを特徴とするゲームプログラム。
【請求項2】
コンピュータを、
キャラクタとオブジェクトを仮想空間内に配置してゲームを進行させるゲーム進行部と、
楽曲を再生する再生部と、
時間のカウントの速度が固定のタイマと、
して機能させ、
前記再生部は、前記楽曲の再生中において、所定の中止条件が成立した場合に前記楽曲の再生を中止し、
前記タイマは、前記中止条件の成立に応じてカウントを開始し、
前記再生部は、前記楽曲の再生を再開する再開条件が成立した場合には、前記タイマのカウント値が第1閾値以下か否かに応じた態様で、前記楽曲を再生し、
前記第1閾値は、前記キャラクタと前記オブジェクトとの距離が第2閾値よりも大きい場合には、前記距離が前記第2閾値以下の場合よりも小さ
く、前記キャラクタと前記オブジェクトとの距離が大きくなるほど小さくなり、
前記再生部は、
前記タイマのカウント値が前記第1閾値以下の場合において、前記再開条件が成立した場合には、前記楽曲の再生を中止した箇所または当該箇所の近傍から再生し、
前記タイマのカウント値が前記第1閾値よりも大きい場合において、前記再開条件が成立した場合には、前記楽曲を最初から再生する
ことを特徴とするゲームプログラム。
【請求項3】
請求項1または請求項2のゲームプログラムにおいて、
前記中止条件は、前記キャラクタと前記オブジェクトとの距離が第3閾値以上の場合に成立し、前記第3閾値よりも小さい場合に不成立であり、
前記再開条件は、前記キャラクタと前記オブジェクトとの距離が第4閾値以下の場合に成立し、前記第4閾値よりも大きい場合に不成立である
ことを特徴とするゲームプログラム。
【請求項4】
請求項1から請求項
3の何れかのゲームプログラムを記憶した記憶部と、
前記ゲームプログラムを実行する制御部と、
を備えたことを特徴とするゲーム装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲームプログラム、およびゲーム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータを用いて実行されるゲームには、楽曲の再生による演出が行われるものがある(例えば特許文献1を参照)。再生される楽曲は、例えばBGM(background music)である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ゲームでは、楽曲の再生開始や終了(一時的な中止も含む)のやり方によって、演出の効果が変わってくる。
【0005】
本発明の目的は、コンピュータを用いて実行されるゲームにおける、楽曲の再生開始および再生終了方法の提供である。なお、ここでは、「再生終了」とは、一時的な再生中止も含む概念である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様は、コンピュータを、
キャラクタとオブジェクトを仮想空間内に配置してゲームを進行させるゲーム進行部と、
楽曲を再生する再生部と、
カウントの速度を可変できるタイマと、
して機能させ、
前記再生部は、前記楽曲の再生中において、所定の中止条件が成立した場合に前記楽曲の再生を中止し、
前記タイマは、前記中止条件の成立に応じてカウントを開始し、
前記再生部は、前記楽曲の再生を再開する再開条件が成立した場合には、前記タイマのカウント値が第1閾値以下か否かに応じた態様で、前記楽曲を再生し、
前記速度は、前記キャラクタと前記オブジェクトとの距離が第2閾値よりも大きい場合には、前記距離が前記第2閾値以下の場合よりも大きい
ことを特徴とするゲームプログラムである。
【0007】
また、第2の態様は、コンピュータを、
キャラクタとオブジェクトを仮想空間内に配置してゲームを進行させるゲーム進行部と、
楽曲を再生する再生部と、
カウントの速度が固定のタイマと、
して機能させ、
前記再生部は、前記楽曲の再生中において、所定の中止条件が成立した場合に前記楽曲の再生を中止し、
前記タイマは、前記中止条件の成立に応じてカウントを開始し、
前記再生部は、前記楽曲の再生を再開する再開条件が成立した場合には、前記タイマのカウント値が第1閾値以下か否かに応じた態様で、前記楽曲を再生し、
前記第1閾値は、前記キャラクタと前記オブジェクトとの距離が第2閾値よりも大きい場合には、前記距離が前記第2閾値以下の場合よりも小さい
ことを特徴とするゲームプログラムである。
【0008】
また、第1または第2の態様のゲームプログラムにおいて、
前記中止条件は、前記キャラクタと前記オブジェクトとの距離が第3閾値以上の場合に成立し、前記第3閾値よりも小さい場合に不成立であり、
前記再開条件は、前記キャラクタと前記オブジェクトとの距離が第4閾値以下の場合に成立し、前記第4閾値よりも大きい場合に不成立としてもよい。
【0009】
また、前記態様においては、前記再生部は、
前記タイマのカウント値が前記第1閾値以下の場合において、前記再開条件が成立した場合には、前記楽曲の再生を中止した箇所または当該箇所の近傍から再生し、
前記タイマのカウント値が前記第1閾値よりも大きい場合において、前記再開条件が成立した場合には、前記楽曲を最初から再生してもよい。
【0010】
また、第3の態様は、前記態様の何れかのゲームプログラムを記憶した記憶部と、
前記ゲームプログラムを実行する制御部と、
を備えたことを特徴とするゲーム装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、コンピュータを用いて実行されるゲームにおける、楽曲の再生開始および再生終了方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】時刻T=0における、プレイヤキャラクタとモンスターとの位置関係を例示する。
【
図3】時刻T=1における、プレイヤキャラクタとモンスターとの位置関係を例示する。
【
図4】時刻T=2における、プレイヤキャラクタとモンスターとの位置関係を例示する。
【
図5】時刻T=3における、プレイヤキャラクタとモンスターとの位置関係を例示する。
【
図6】時刻T=4における、プレイヤキャラクタとモンスターとの位置関係を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施形態1]
以下、本発明の実施形態にかかるゲームプログラム、およびゲーム装置について、図面を参照して説明する。
【0014】
本実施形態で説明するゲームプログラムは、例えば、パーソナルコンピュータ、プレイステーション(登録商標)、XBox(登録商標)、PlayStation Vita(登録商標)、Nintendo Switch(登録商標)などのゲーム装置において実行される。
【0015】
本実施形態で説明するゲームは、三次元のゲーム空間(以下、仮想空間)が舞台となっている。仮想空間は、画像としてディスプレイに表示される。仮想空間には、岩壁、洞窟、川といった地形を表すオブジェクトが設けられている。地形のオブジェクト上には、建物や樹木などの様々なオブジェクトも設けられている。
【0016】
本ゲームは、ユーザ(ここではプレイヤ)の操作を受けて、プレイヤキャラクタを三次元の仮想空間で活動させてノンプレイヤキャラクタである敵キャラクタと戦闘するアクションゲームである。本ゲームでは、プレイヤキャラクタ同士でグループを編成して敵キャラクタと戦闘を行う場合がある。本ゲームにおけるノンプレイヤキャラクタには、プレイヤキャラクタと戦うモンスター等を例示できる。
【0017】
ユーザは、通信ネットワーク(図示を省略)を介して他のユーザとオンラインにてゲームを進めることができる。ユーザは、通信ネットワークを介さずに個人でゲームを進めることもできる。
【0018】
本ゲームでは、ゲームの進行過程においてBGMが再生される場合がある。本ゲームでは、ノンプレイヤキャラクタとして、複数種類のモンスターが存在する。それぞれのモンスターには、専用の楽曲(BGM)が用意されている。例えば、プレイヤキャラクタにモンスターが近づくと、そのモンスターのテーマ曲(以下、戦闘曲と呼ぶ場合もある)が再生される。
【0019】
〈ゲーム装置の構成〉
図1は、本実施形態のゲーム装置5の構成を示すブロック図である。ゲーム装置5は、ユーザの操作に基づいて所定のゲームを実行する。ゲーム装置5には、ディスプレイ61、スピーカ62およびコントローラ63が外部接続または内蔵される。
【0020】
ゲーム装置5では、例えば、インストールされたゲームプログラムおよびゲームデータに基づいてゲームが進行する。なお、ゲーム装置5同士も、通信ネットワーク(図示を省略)または近距離無線通信装置(図示せず)を用いて、互いにデータ通信を行うことができる。
【0021】
ゲーム装置5は、ネットワークインターフェース51、グラフィック処理部52、オーディオ処理部53、操作部54、記憶部55および制御部56を有する。ネットワークインターフェース51、グラフィック処理部52、オーディオ処理部53、操作部54および記憶部55は、バス59を介して制御部56と電気的に接続されている。
【0022】
ネットワークインターフェース51は、例えばゲーム装置5や外部のサーバ装置(図示を省略)との間で各種データを送受信するために、前記通信ネットワークに通信可能に接続される。
【0023】
グラフィック処理部52は、制御部56から出力されるゲーム画像情報に従って、プレイヤキャラクタおよびゲーム空間に関する各種オブジェクトを含むゲーム画像を、動画形式で描画する。グラフィック処理部52は、ディスプレイ61と接続されている。ゲーム画像は、ゲーム画面としてディスプレイ61上に表示される。
【0024】
オーディオ処理部53は、制御部56の指示に従ってデジタルのゲーム音声を再生および合成する。オーディオ処理部53は、スピーカ62と接続されている。再生および合成されたゲーム音声は、スピーカ62から出力される。
【0025】
操作部54は、コントローラ63と接続され、操作入力に関するデータをコントローラ63との間で送受信する。例えば、ユーザは、コントローラ63に設けられたボタン等の操作子(図示略)を操作することにより、ゲーム装置5に操作信号を入力する。
【0026】
記憶部55は、HDD、RAMおよびROM等で構成される。記憶部55は、ゲームプログラムおよびゲームデータを記憶することができる。記憶部55には、他のゲーム装置5から受信した他アカウント情報なども記憶される。
【0027】
制御部56は、CPUおよび半導体メモリを含むマイクロコンピュータで構成されている。制御部56は、ゲーム装置5の動作を制御する。例えば、制御部56は、ゲームプログラムを実行することにより、グラフィック処理部52およびオーディオ処理部53等を動作させる。
【0028】
オーディオ処理部53は、所定のソフトウェア(例えばゲームプログラム、またはそれに付随するプログラム)を実行することによって、ゲーム音声(以下、単に音声という場合もある)を再生する。オーディオ処理部53は、音声の再生において音像定位を行う。オーディオ処理部53は、音像定位を行うため、音声が聴取される仮想の受音点(以下、仮想マイクL)を仮想空間に設定する。この例では仮想マイクLは、プレイヤキャラクタの近傍に設定されている。仮想マイクLは、プレイヤキャラクタの移動にともなって移動する。
【0029】
このゲームでは、仮想空間内に存在する音源(仮想の音源)から音声が発せられたように、音響的な演出が行われる。オーディオ処理部53は、仮想の音源(プレイヤキャラクタなど)から発せられた音声を、あたかも仮想マイクLで集音したかのような音響表現で、スピーカ62に出力する。仮想マイクLは、仮想の聴取者であり、オーディオ処理部53による音像定位の基準点である。
【0030】
オーディオ処理部53は、制御部56の指示に応じて、楽曲の再生の開始および中止を行う。楽曲の基になるデジタルデータ(音声データ)は、ゲームデータとして記憶部55に格納されている。
【0031】
本ゲームでは、仮想空間にて繰り広げられる各キャラクタの動作、各キャラクタの位置、キャラクタの状態などに応じて、各場面に適したBGMが再生される。本ゲームでは、既述の通り、それぞれのモンスターに、専用のBGM(テーマ曲)が用意されている。
【0032】
〈制御部の機能的構成〉
制御部56は、ゲームプログラムを実行することにより、ゲーム進行部562、再生部563、タイマ564、および速度管理部565として機能する。
【0033】
ゲーム進行部562は、操作部54から入力された信号に応じて、ゲームを進行させる。その際、ゲーム進行部562は、ユーザの操作に応じて、プレイヤキャラクタを仮想空間において動作させる。ゲーム進行部562は、ノンプレイヤキャラクタも、仮想空間において動作させる。
【0034】
再生部563は、所定の条件(後述)が成立した場合に種々の楽曲を再生する。再生部563は、楽曲の再生が必要な状況になったら、その状況に応じた楽曲を選択する。例えば、再生部563は、プレイヤキャラクタとモンスターとが戦闘状態の場合には、戦闘に相応しい楽曲(戦闘曲)を選択する。本実施形態では、モンスター(ノンプレイヤキャラクタ)毎に選択すべき戦闘曲(テーマ曲)が予め定められている。
【0035】
再生部563は、選択した楽曲を特定する情報をオーディオ処理部53に送信する。更に、再生部563は、その楽曲の再生開始をオーディオ処理部53に指示する。
【0036】
再生部563は、テーマ曲に関しては、予め定められた、楽曲再生開始の条件(以下、開始条件という)が成立した場合に、オーディオ処理部53に、テーマ曲の再生開始を指示する。本実施形態では、開始条件は、プレイヤキャラクタとノンプレイヤキャラクタ(モンスター)との距離Dに応じて成否が定められている。
【0037】
具体的に、再生部563は、モンスターとプレイヤキャラクタとの距離Dが予め定めた閾値(以下、再生上限値Th4という)よりも小さい場合(D<再生上限値Th4)に、開始条件が成立したと判断する。つまり、プレイヤキャラクタを中心として、半径が再生上限値Th4の仮想球体(あるいは仮想の円)の内部にノンプレイヤキャラクタNPCが入った場合には、開始条件が成立する。以下では、再生上限値Th4を第4閾値と呼ぶ場合がある。
【0038】
再生部563は、開始条件が成立したら、そのモンスターに対応付けられている楽曲(テーマ曲)を再生対象として選択する。再生部563は、選択した楽曲の再生開始をオーディオ処理部53に指示する。
【0039】
また、再生部563は、予め定められた、楽曲再生中止の条件(以下、中止条件という)が成立した場合に、楽曲の再生中止をオーディオ処理部53に指示する。中止条件は、プレイヤキャラクタとノンプレイヤキャラクタ(モンスター)との距離Dに応じて成否が定められている。
【0040】
具体的に再生部563は、プレイヤキャラクタと、テーマ曲が再生されているモンスターとの距離Dが、予め定めた閾値(以下、中止下限値Th3という)以上の場合(D≧中止下限値Th3)に、中止条件が成立したと判断する。以下では、中止下限値Th3を第3閾値と呼ぶ場合がある。本実施形態では、中止下限値Th3=再生上限値Th4であるものとする。
【0041】
再生部563は、中止条件が成立した場合には、オーディオ処理部53に対して、戦闘曲と、BGM(非戦闘時の楽曲)とについて、いわゆるクロスフェード処理を行うように指示する。オーディオ処理部53は、再生部563の指示に応じて、戦闘曲と非戦闘時の楽曲とに対してクロスフェード処理を行う。具体的に、オーディオ処理部53は、戦闘曲をフェードアウトさせ、BGMをフェードインさせる。
【0042】
再生部563は、楽曲の再生中止を指示する場合には、その楽曲における再生の中止位置を、記憶部55に記録する。ここでは、中止条件が成立した後に最初に到達する、小節の終わりを「中止位置」としている。
【0043】
再生部563は、テーマ曲の再生中止後に、所定の条件(以下、再開条件という)が成立した場合には、再生を中止していたテーマ曲の再生を再開する。本実施形態では、再生部563は、中止していたテーマ曲に対応するモンスターと、プレイヤキャラクタとの距離Dに基づいて、再開条件の成否を判断する。より具体的には、再生部563は、中止していたテーマ曲に対応するモンスターと、プレイヤキャラクタとの距離が、再生上限値Th4(第4閾値)よりも小さい場合に、再開条件が成立したと判断する。
【0044】
再生部563は、テーマ曲(楽曲)の再生を再開する場合には、タイマのカウント値Cが、予め定めたタイマ閾値Th1(第1閾値)以下か否かに応じた態様で楽曲を再生する。タイマ閾値Th1は、例えば10秒に設定される。本実施形態では、再生の態様として、楽曲の途中(以下、「再開位置」という)から再生を開始する態様(以下、第1態様という)と、楽曲の最初(例えばイントロ)から再生する態様(以下、第2態様という)がある。
【0045】
再生部563は、カウント値Cがタイマ閾値Th1以下の場合において、再開条件が成立した場合には、第1態様によるテーマ曲の再生を行う。すなわち、再生部563は、再開位置から楽曲の再生を再開する。ここでは、「再開位置」は、「中止位置」である。
【0046】
また、再生部563は、カウント値Cがタイマ閾値Th1よりも大きい場合において、再開条件が成立した場合には、第2態様によるテーマ曲の再生を行う。すなわち、再生部563は、楽曲を最初から再生する。
【0047】
タイマ564は、カウント速度を可変できるタイマ(カウンタ)である。タイマ564は、速度管理部565が設定したカウント速度に従って、カウントを行う。タイマ564は、中止条件の成立に応じてカウントを開始する。タイマ564は、再開条件、および開始条件の何れかが成立した場合に、カウントを終了し、カウント値Cをリセットする。
【0048】
速度管理部565は、タイマ564におけるカウント速度を設定する。速度管理部565は、設定するカウント速度を所定の変数に書き込む。タイマ564は、その変数の値(カウント速度)を読み取り、読み取ったカウント速度でカウントを行う。
【0049】
速度管理部565は、カウント速度を、プレイヤキャラクタとモンスター(ノンプレイヤキャラクタ)との距離Dに応じて決定する。具体的に、速度管理部565は、距離Dが設定変更閾値Th2よりも大きい場合(D>設定変更閾値Th2)には、速度管理部565は、距離Dが設定変更閾値Th2以下(D≦設定変更閾値Th2)の場合よりもカウント速度を大きく設定する。
【0050】
〈動作例〉
制御部56がゲームプログラムを実行するとゲームが進行する。ユーザは、仮想空間でプレイヤキャラクタを動作させることができる。また、仮想空間では、ゲーム進行に応じて、ノンプレイヤキャラクタNPC(モンスターM1)が動作する。
【0051】
図2から
図6は、本ゲームプログラムの動作を説明する図である。
図2から
図6は、仮想空間VSにおける一部の領域を示している。これらの図に示した円は、再生上限値Th4、中止下限値Th3等を表している。
図2から
図6によって、プレイヤキャラクタPCとモンスターM1の動作(換言するとゲーム状態の変化)を時系列で示している。
【0052】
図2から
図6では、プレイヤキャラクタPCとモンスターM1の相対的な位置関係を示している。ゲーム状況が、
図2から
図6に変化する間は、プレイヤキャラクタPCおよびモンスターM1の少なくとも一方が、仮想空間VSで移動する。つまり、
図2から
図6では、プレイヤキャラクタPCが図の中心に記載されていても、プレイヤキャラクタPCが仮想空間VSにおいて静止しているとは限らない。
【0053】
図2は、時刻T=0における、プレイヤキャラクタPCとモンスターM1との位置関係を例示する。時間の単位は任意である(以下同様)。
図2は、モンスターM1がプレイヤキャラクタPCの前に初登場した場面を表している。本ゲームでは、この状態において、プレイヤキャラクタPCとモンスターM1の戦闘が始まる。
【0054】
再生部563は、プレイヤキャラクタPCとモンスターM1の距離Dを確認する。
図2の例では、距離D=D0である。
図2の状態では、D0<再生上限値Th4が成立している。したがって、時刻T=0では、開始条件が成立している。
【0055】
開始条件が成立している場合は、再生部563は、モンスターM1に対応付けられているテーマ曲(戦闘曲)を再生対象として選択する。再生部563は、選択したテーマ曲を最初(例えばイントロ)から再生するように、オーディオ処理部53に指示する。オーディオ処理部53は、再生部563の指示に従ってテーマ曲(戦闘曲)を最初から再生する。
【0056】
図3は、時刻T=1における、プレイヤキャラクタPCとモンスターM1との位置関係を例示する。
図3は、モンスターM1がプレイヤキャラクタPCから逃げ始めた場面を表している。
【0057】
再生部563は、プレイヤキャラクタPCとモンスターM1の距離Dを確認する。
図3の例では、距離D=D1である。D1は、設定変更閾値Th2および再生上限値Th4と次式に示す関係を有する。
【0058】
再生上限値Th4<D1<設定変更閾値Th2
上式から分かるように、
図3の状態では、中止条件が成立する。中止条件が成立し場合は、再生部563は、再生の中止位置を決定する。
【0059】
再生部563は、決定した中止位置を記憶部55に記録する。また、再生部563は、オーディオ処理部53に対して、テーマ曲(戦闘曲)とBGMとについて、クロスフェード処理を行うように指示する。オーディオ処理部53は、再生部563の指示に応じて、戦闘曲をフェードアウトさせ、BGMをフェードインさせる。
【0060】
また、タイマ564は、中止条件が成立したので、カウントを開始する。この段階では、速度管理部565は、カウント速度を予め定められた初期値に設定しているものとする。
【0061】
図4は、時刻T=2における、プレイヤキャラクタPCとモンスターM1との位置関係を例示する。
図4は、逃げたモンスターM1がプレイヤキャラクタPCの近傍に、すぐに戻ってきた状態を示している。ここでは、「すぐに戻ってきた」とは、カウント値C<タイマ閾値Th1が成立する時間であるものとする。本ゲームでは、この状態において、プレイヤキャラクタPCとモンスターM1の戦闘が再度、行われる。
【0062】
再生部563は、プレイヤキャラクタPCとモンスターM1の距離Dを確認する。
図4の例では、距離D=D2である。
図4の状態では、D2<再生上限値Th4が成立している。つまり、時刻T=2においては、再開条件が成立している。そして、カウント値C<タイマ閾値Th1が成立しているので、楽曲再生の態様は、第1態様である。
【0063】
したがって、時刻T=2においては、再生部563は、第1態様によるテーマ曲の再生をオーディオ処理部53に指示する。すなわち、再生部563は、モンスターM1のテーマ曲を、再開位置から再生するように、オーディオ処理部53に指示する。
【0064】
詳しくは、オーディオ処理部53は、モンスターM1のテーマ曲を、再開位置からフェードインさせ、再生中のBGM(例えばT=1で再生を開始したもの)をフェードアウトさせる。すなわち、オーディオ処理部53は、モンスターM1のテーマ曲とBGMとに対してクロスフェード処理を行う。
【0065】
なお、時刻T=2においては、再開条件が成立しているので、タイマ564は、カウントを終了し、カウント値Cをリセットする。
【0066】
図5は、時刻T=3における、プレイヤキャラクタPCとモンスターM1との位置関係を例示する。
図5は、モンスターM1が、プレイヤキャラクタPCから遠くに逃げた状態を示している。
【0067】
再生部563は、プレイヤキャラクタPCとモンスターM1の距離Dを確認する。
図5の例では、距離D=D3である。
図5の状態では、再生上限値Th4<D3である。つまり、時刻T=3においては、中止条件が成立している。
【0068】
そこで、再生部563は、テーマ曲の中止位置を、記憶部55に記録する。また、再生部563は、オーディオ処理部53に対して、テーマ曲(戦闘曲)と、BGMとについて、クロスフェード処理を行うように指示する。オーディオ処理部53は、再生部563の指示に応じて、戦闘曲をフェードアウトさせ、BGMをフェードインさせる。
【0069】
また、
図5の状態では、設定変更閾値Th2<D3である。つまり、時刻T=3においては、カウント速度変更の条件が成立している。そこで、速度管理部565は、距離Dが設定変更閾値Th2以下の場合よりも、カウント速度大きく設定する。この例では、速度管理部565は。カウント速度を、T=1におけるカウント速度よりも大きく、かつT=2におけるカウント速度よりも大きく設定する。
【0070】
T=3においては、中止条件が成立しているので、タイマ564は、カウントを開始する。この段階では、タイマ564のカウント速度は、T=1におけるカウント速度よりも大きく、かつT=2におけるカウント速度よりも大きい。
【0071】
図6は、時刻T=4における、プレイヤキャラクタPCとモンスターM1との位置関係を例示する。
図6は、モンスターM1が、プレイヤキャラクタPCの近くに戻ってきた状態を示している。本ゲームでは、この状態において、プレイヤキャラクタPCとモンスターM1の戦闘が再度、行われる。
【0072】
図6の例では、D4は、D4<再生上限値Th4を満たしている。すなわち、
図6の状態では、再開条件が成立している。また、時刻T=3において、タイマ564のカウント速度が増加させられた結果、時刻T=4においては、既に、カウント値Cは、カウント値C>タイマ閾値Th1を満たしているとする。
【0073】
以上から、再生部563は、第2態様によるテーマ曲の再生をオーディオ処理部53に指示する。すなわち、再生部563は、モンスターM1のテーマ曲を、最初から再生するように、オーディオ処理部53に指示する。
【0074】
また、時刻T=4においては、D4は、D4<設定変更閾値Th2を満たしている。そこで、速度管理部565は、カウント速度の再設定を行う。具体的に速度管理部565は、T=3において設定したカウント速度よりも、カウント速度をより小さく設定する。時刻T=4においては、再開条件が成立しているので、タイマ564は、カウントを終了し、カウント値Cをリセットする。
【0075】
以上をまとめると、本件発明は、コンピュータを、キャラクタとオブジェクトを仮想空間内に配置してゲームを進行させるゲーム進行部562と、楽曲を再生する再生部563と、カウントの速度を可変できるタイマ564と、して機能させ、前記再生部563は、前記楽曲の再生中において、所定の中止条件が成立した場合に前記楽曲の再生を中止し、前記タイマ564は、前記中止条件の成立に応じてカウントを開始し、前記再生部563は、前記楽曲の再生を再開する再開条件が成立した場合には、前記タイマのカウント値がタイマ閾値Th1(第1閾値)以下か否かに応じた態様で、前記楽曲を再生し、前記速度は、前記プレイヤキャラクタPC(キャラクタ)と前記ノンプレイヤキャラクタNPC(オブジェクト)との距離Dが設定変更閾値Th2(第2閾値)よりも大きい場合には、前記距離Dが前記第2閾値以下の場合よりも大きいことを特徴とするゲームプログラムである。
【0076】
〈本実施形態の効果〉
以上のように、本実施形態によれば、タイマ564の速度が、距離Dに応じて可変される。この構成によって、楽曲の再生再開の態様(第1態様および第2態様)が切り替わるタイミングが変化する。すなわち、本実施形態では、多様な演出を容易に行うことができる。本実施形態によれば、コンピュータを用いて実行されるゲームにおける、楽曲の再生開始および再生終了方法を提供できる。なお、ここでは、「再生終了」とは、一時的な再生中止も含む概念である。
【0077】
[実施形態2]
タイマ564には、カウントの速度が固定のタイマを用いることもできる。この場合は、タイマ564のカウント速度を可変する代わりに、タイマ閾値Th1を可変することによって、実施形態1と同様の演出を行うことができる。
【0078】
具体的には、プレイヤキャラクタPCとノンプレイヤキャラクタNPCとの距離Dが、所定の閾値(ここでも設定変更閾値Th2(第2閾値)とする)よりも大きい場合には、距離Dが設定変更閾値Th2以下の場合よりもタイマ閾値Th1を小さく設定する。
【0079】
こうすることでも、実施形態1と同様の演出を行うことが可能になる。すなわち、本実施形態においても、コンピュータを用いて実行されるゲームにおける、楽曲の再生開始および再生終了方法を提供できる。
【0080】
[その他の実施形態]
各実施形態は、プレイヤキャラクタPCを、AI(Artificial Intelligence)によって動作するキャラクタに置換えて実施してもよい。
【0081】
同様に、各実施形態は、ノンプレイヤキャラクタNPCを仮想空間内のオブジェクトに置換えたり、ノンプレイヤキャラクタNPCを種々のキャラクタに置換えたりできる。例えば、ノンプレイヤキャラクタNPCは、マルチプレイ時における他ユーザが操作するプレイヤキャラクタ、仮想空間内に静止物として定義されているオブジェクト等に置換えることができる。静止物として定義されているオブジェクトとしては、仮想空間内に設けられた岩や木等を例示できる。
【0082】
「中止位置」には、種々の定義を採用できる。例えば、再生部563が再生中止を指示したタイミングにおける楽曲の再生位置を「中止位置」とできる。再生部563が再生中止を指示したタイミングから、所定の時間(例えば数秒)が経過したタイミングを「中止位置」としてもよい。また、フェードアウト処理によって楽曲の音量が所定値を下回ったタイミングにおける再生位置を「中止位置」としてもよい。
【0083】
楽曲の再開位置は、「中止位置」には限定されない。再開位置は、厳密に中止した箇所から再生ではなく、「中止位置」の「近傍」でもよい。例えば、中止位置を含む小節の最初あるいは最後を「再開位置」としたり、中止した箇所の数秒前を「再開位置」としたりできる。
【0084】
カウント速度の変更法(閾値との比較結果に基づく変更)は例示である。カウント速度は、例えば、距離Dに応じて連続的に変化させてもよい。具体的には、カウント速度を距離Dの関数で定めることが考えられる。距離Dの関数で定める場合には、距離Dが大きいほど、カウント速度がより大きくなるように関数を定義する。
【0085】
中止下限値Th3と再生上限値Th4には、互いに異なる値を採用してもよい。同様に、開始条件と再開条件とで、閾値を互いに異ならせてもよい。
【0086】
ゲームは、3次元の仮想空間で実施されるものには限定されない。ゲームは、2次元の仮想空間で実施されるものでもよい。また、ゲームは、アクションゲームには限定されない。楽曲が再生されるゲームであれば、各実施形態を適用できる。
【0087】
キャラクタとオブジェクトとの距離Dは、種々の算出法を採用できる。距離Dは、直線距離には限定されない。例えば、キャラクタとオブジェクトの間に壁などの障害物がある場合は、障害物を迂回するルート(道程)を距離Dとしてもよい。
【0088】
前記実施形態で説明した各閾値やタイマのカウント速度は、オブジェクト(例えばモンスター)の種類や状態(例えば、怒り状態や睡眠状態)に応じて、設定値を変えてもよい。また、各閾値やタイマのカウント速度は、クエスト(ゲーム内における課題)ごとに設定値を変えてもよいし、ゲームの状況に応じて設定値を変えてもよい。
【0089】
ゲームプログラムは、いわゆるオンラインゲーム用のゲームプログラムとして実装してもよい。ゲームプログラムがオンラインゲーム用である場合には、制御部56で行っていた処理をサーバ側で行ってもよいし、サーバ側とクライアント(ゲーム装置5)側とで分担してもよい。
【0090】
これらの他の実施形態を採用した場合においても、本発明の作用効果は発揮される。また、本実施形態と他の実施形態、および他の実施形態同士を適宜組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0091】
5 ゲーム装置
55 記憶部
56 制御部(コンピュータ)
562 ゲーム進行部
563 再生部
564 タイマ
NPC ノンプレイヤキャラクタ(オブジェクト)
PC プレイヤキャラクタ(キャラクタ)
Th1 タイマ閾値(第1閾値)
Th2 設定変更閾値(第2閾値)
Th3 中止下限値(第3閾値)
Th4 再生上限値(第4閾値)