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特許7590661光学素子駆動装置、カメラモジュール、カメラ搭載装置及び駆動方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】光学素子駆動装置、カメラモジュール、カメラ搭載装置及び駆動方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/04 20210101AFI20241120BHJP
   G03B 30/00 20210101ALI20241120BHJP
   H04N 23/57 20230101ALI20241120BHJP
   H04N 23/60 20230101ALI20241120BHJP
   H02N 2/06 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
G02B7/04 E
G02B7/04 D
G03B30/00
H04N23/57
H04N23/60
H02N2/06
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022161094
(22)【出願日】2022-10-05
(65)【公開番号】P2024054690
(43)【公開日】2024-04-17
【審査請求日】2024-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樋渡 航輝
(72)【発明者】
【氏名】板垣 洋一
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-75419(JP,A)
【文献】特開2009-171834(JP,A)
【文献】特開2011-55665(JP,A)
【文献】特開2008-211894(JP,A)
【文献】特開2003-333395(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02 - 7/16
G03B 17/02
G03B 30/00
H04N 5/222- 5/257
H04N 23/00
H04N 23/40 -23/76
H04N 23/90 -23/959
H02N 2/00 - 2/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定体と、
光学素子を保持し、前記固定体に対して移動可能に配置される可動体と、
圧電素子を有し、前記圧電素子の振動運動を直線運動に変換して前記可動体を駆動する駆動部と、
所定の駆動周波数を有する駆動信号を前記駆動部に印加する駆動制御部と、
前記駆動部の駆動状態を検出する駆動検出部と、
前記駆動部の雰囲気温度を測定する温度測定部と、を備え、
前記駆動制御部は、
複数の駆動周波数と雰囲気温度を対応付けて記憶可能であり、
前記駆動検出部によって検出された情報から前記駆動部の駆動エラーの有無を判断し、
前記駆動エラーである場合に、現在の駆動周波数に対応付けられている雰囲気温度と、前記温度測定部によって測定された現在の雰囲気温度を比較し、
比較結果に応じて前記駆動周波数を補正するとともに、当該補正後の駆動周波数と現在の前記雰囲気温度とを対応付けて記憶する、
光学素子駆動装置。
【請求項2】
複数の前記駆動周波数は、予め基準温度に対応付けられている基準周波数と、前記基準周波数より大きい側に設定された第1補正周波数と、前記基準周波数より小さい側に設定された第2補正周波数と、を含み、
前記駆動制御部は、前記基準温度と現在の前記雰囲気温度を比較して、前記比較結果に応じて、前記第1補正周波数及び前記第2補正周波数の何れかを選択する、
請求項1に記載の光学素子駆動装置。
【請求項3】
前記第1補正周波数及び前記第2補正周波数は、それぞれ、段階的に複数設定されている、
請求項2に記載の光学素子駆動装置。
【請求項4】
前記駆動制御部は、前記駆動周波数が補正不能である場合に、前記駆動周波数を前記基準周波数に戻し当該基準周波数を維持する、
請求項2に記載の光学素子駆動装置。
【請求項5】
前記駆動部は、駆動方向の異なる複数の駆動態様を有しており、
前記駆動制御部は、複数の前記駆動態様ごとに前記駆動周波数を制御する、
請求項1に記載の光学素子駆動装置。
【請求項6】
前記駆動検出部は、磁気センサーである、
請求項1に記載の光学素子駆動装置。
【請求項7】
前記温度測定部は、サーミスタである、
請求項1に記載の光学素子駆動装置。
【請求項8】
請求項1に記載の光学素子駆動装置と、
前記光学素子を用いて被写体像を撮像する撮像部と、を備える、
カメラモジュール。
【請求項9】
情報機器又は輸送機器であるカメラ搭載装置であって、
請求項8に記載のカメラモジュールを備える、
カメラ搭載装置。
【請求項10】
固定体と、前記固定体に対して移動可能に配置される可動体と、圧電素子を有し前記圧電素子の振動運動を直線運動に変換して前記可動体を駆動する駆動部と、を備える光学素子駆動装置の駆動方法であって、
所定の駆動周波数を有する駆動信号を前記駆動部に印加する工程と、
前記駆動部の駆動状態を検出する工程と、
前記駆動部の雰囲気温度を測定する工程と、
検出された前記駆動状態から前記駆動部の駆動エラーの有無を判定する工程と、
前記駆動エラーである場合に、現在の駆動周波数に対応付けられている雰囲気温度と、測定された現在の雰囲気温度を比較する工程と、
比較結果に応じて前記駆動周波数を補正する工程と、
当該補正後の駆動周波数と現在の前記雰囲気温度とを対応付けて記憶する工程と、を含む、
駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子駆動装置、カメラモジュール、カメラ搭載装置及び駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、スマートフォンやドローン等のカメラ搭載装置には、小型のカメラモジュールが搭載されている。ドローンとは、遠隔操作又は自動制御により飛行させることができる無人航空機であり、マルチコプターと呼ばれるものもある。
【0003】
カメラモジュールには、レンズ等の光学素子を駆動する光学素子駆動装置が使用される。光学素子駆動装置は、例えば、光学素子(例えば、レンズ)を光軸方向に移動させ、被写体を撮影するときのピント合わせを自動的に行うオートフォーカス機能(以下、「AF機能」と称する、AF:Auto Focus)を有する。AF機能を実現する駆動部としては、例えば、圧電素子(ピエゾ素子)を有する超音波モーター型のアクチュエーターが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ところで、圧電素子の共振周波数は、温度に依存して変化することが知られている。特許文献1に記載の駆動方法では、現在の雰囲気温度に基づいて駆動周波数が補正され、補正された駆動周波数を有する駆動信号が圧電素子に印加されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5233922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、圧電素子の共振周波数の温度依存性には個体差があるため、特許文献1のように、駆動周波数と雰囲気温度が予め対応付けられた関係をすべてのアクチュエーターに対して適用した場合、駆動周波数が適切に補正されるとは限らず、所望の駆動制御が行われない虞がある。
【0007】
本発明の目的は、圧電素子に印加する駆動信号の駆動周波数を雰囲気温度に応じて適切に補正し、所望の駆動制御を行うことができる光学素子駆動装置、カメラモジュール、カメラ搭載装置及び駆動方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る光学素子駆動装置は、
固定体と、
光学素子を保持し、前記固定体に対して移動可能に配置される可動体と、
圧電素子を有し、前記圧電素子の振動運動を直線運動に変換して前記可動体を駆動する駆動部と、
所定の駆動周波数を有する駆動信号を前記駆動部に印加する駆動制御部と、
前記駆動部の駆動状態を検出する駆動検出部と、
前記駆動部の雰囲気温度を測定する温度測定部と、を備え、
前記駆動制御部は、
複数の駆動周波数と雰囲気温度を対応付けて記憶可能であり、
前記駆動検出部によって検出された情報から前記駆動部の駆動エラーの有無を判断し、
前記駆動エラーである場合に、現在の駆動周波数に対応付けられている雰囲気温度と、前記温度測定部によって測定された現在の雰囲気温度を比較し、
比較結果に応じて前記駆動周波数を補正するとともに、当該補正後の駆動周波数と現在の前記雰囲気温度とを対応付けて記憶する。
【0009】
本発明に係るカメラモジュールは、
上記の光学素子駆動装置と、
前記光学素子を用いて被写体像を撮像する撮像部と、を備える。
【0010】
本発明に係るカメラ搭載装置は、
情報機器又は輸送機器であるカメラ搭載装置であって、
上記のカメラモジュールを備える。
【0011】
本発明に係る駆動方法は、
固定体と、前記固定体に対して移動可能に配置される可動体と、圧電素子を有し前記圧電素子の振動運動を直線運動に変換して前記可動体を駆動する駆動部と、を備える光学素子駆動装置の駆動方法であって、
所定の駆動周波数を有する駆動信号を前記駆動部に印加する工程と、
前記駆動部の駆動状態を検出する工程と、
前記駆動部の雰囲気温度を測定する工程と、
検出された前記駆動状態から前記駆動部の駆動エラーの有無を判定する工程と、
前記駆動エラーである場合に、現在の駆動周波数に対応付けられている雰囲気温度と、測定された現在の雰囲気温度を比較する工程と、
比較結果に応じて前記駆動周波数を補正する工程と、
当該補正後の駆動周波数と現在の前記雰囲気温度とを対応付けて記憶する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、圧電素子に印加する駆動信号の駆動周波数が雰囲気温度に応じて適切に補正され、所望の駆動制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1A図1Bは、本発明の一実施の形態に係るカメラモジュールを搭載するスマートフォンを示す図である。
図2図2は、カメラモジュールの外観斜視図である。
図3図3は、光学素子駆動装置の外観斜視図である。
図4図4は、光学素子駆動装置におけるAF機能を示すブロック図である。
図5図5は、光学素子駆動装置における駆動制御処理の一例を示すフローチャートである。
図6図6A図6Eは、周波数テーブルの一例を示す図である。
図7図7A図7Bは、車載用カメラモジュールを搭載するカメラ搭載装置としての自動車を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
<スマートフォン>
図1A図1Bは、本発明の一実施の形態に係るカメラモジュールAを搭載するスマートフォンM(カメラ搭載装置の一例)を示す図である。図1AはスマートフォンMの正面図であり、図1BはスマートフォンMの背面図である。
【0016】
スマートフォンMは、2つの背面カメラOC1、OC2からなるデュアルカメラを有する。本実施の形態では、背面カメラOC1、OC2に、カメラモジュールAが適用されている。
【0017】
<カメラモジュール>
図2は、カメラモジュールAの外観斜視図である。本実施の形態では、直交座標系(X,Y,Z)を使用して説明する。後述する図においても共通の直交座標系(X,Y,Z)で示している。
【0018】
カメラモジュールAは、例えば、スマートフォンMで実際に撮影が行われる場合に、X軸方向が上下方向(又は左右方向)、Y軸方向が左右方向(又は上下方向)、Z軸方向が前後方向となるように搭載される。すなわち、Z軸方向が光軸方向であり、図中上側(+Z側)が光軸方向受光側、下側(-Z側)が光軸方向結像側である。また、Z軸に直交するX軸方向及びY軸方向を「光軸直交方向」と称し、XY面を「光軸直交面」と称する。なお、光軸方向は、光学素子の種類に応じて、光路方向又は焦点方向(焦点を調整する方向)と言い換えてもよい。
【0019】
カメラモジュールAは、AF機能を備え、被写体を撮影するときのピント合わせを自動的に行うことができる。なお、カメラモジュールAは、振れ補正機能(以下「OIS機能」と称する、OIS:Optical Image Stabilization)を備えていてもよい。この場合、カメラモジュールAは、OIS機能により、撮影時に生じる振れ(振動)を光学的に補正して、像ぶれのない画像を撮影することができる。
【0020】
図2に示すように、カメラモジュールAは、AF機能を実現する光学素子駆動装置1、円筒形状のレンズバレルにレンズが収容されてなるレンズ部2及びレンズ部2により結像された被写体像を撮像する撮像部3等を備える。すなわち、光学素子駆動装置1は、光学素子としてレンズ部2を駆動する、いわゆるレンズ駆動装置である。
【0021】
本実施の形態の光学素子駆動装置1は、上述したカメラモジュールA等へ搭載することを考慮して設計されており、Z軸方向における長さが、X軸方向及びY軸方向における長さより短い構成、すなわち、Z軸方向に沿う高さを低背化した構成である。
【0022】
撮像部3は、光学素子駆動装置1のZ軸方向における結像側に配置される。撮像部3は、例えば、イメージセンサー基板301、イメージセンサー基板301に実装される撮像素子302及びモジュール制御部303を有する。
【0023】
イメージセンサー基板301は、例えば、フレキシブルプリント回路基板(FPC;Flexible printed circuits)であり、撮像素子302で得られた撮像信号をスマートフォンMの制御装置(図示略)に送信可能に構成される。スマートフォンMの制御装置は、受信した撮像信号を処理する画像処理部(図示略)を含む。
【0024】
撮像素子302は、例えば、CCD(charge-coupled device)型イメージセンサー、CMOS(complementary metal oxide semiconductor)型イメージセンサー等により構成され、レンズ部2により結像された被写体像を撮像する。
【0025】
モジュール制御部303は、例えば、制御ICで構成され、光学素子駆動装置1の駆動制御を行う。光学素子駆動装置1は、イメージセンサー基板301に搭載され、機械的かつ電気的に接続される。モジュール制御部303は、イメージセンサー基板301に設けられてもよいし、カメラモジュールAが搭載されるカメラ搭載機器(本実施の形態では、スマートフォンM)に設けられてもよい。
【0026】
<光学素子駆動装置>
図3は、光学素子駆動装置1の外観斜視図である。図3では、カバー13を取り外した状態を示している。
【0027】
図3に示すように、光学素子駆動装置1は、レンズホルダー11、ベース12、カバー13、支持部30A~30C、駆動部40A、40B、及び回路基板部50等を備える。
【0028】
カバー13は、光学素子駆動装置1の外装体であり、駆動装置本体(符号略)の外側を覆う。カバー13は、Z軸方向から見た平面視で略矩形状の有蓋四角筒体である。カバー13の平面視形状は、例えば、正方形状である。すなわち、光学素子駆動装置1は、Z軸方向から見た平面視において、X軸方向及びY軸方向に拡がる矩形形状を有している。以下の説明において、「平面視」とはZ軸方向から見た平面視のことを意味する。
【0029】
カバー13は、光軸方向受光側の面(上面)に略円形の開口131を有する。レンズ部2(図2参照)は、カバー13の開口131から外部に臨む。レンズ部2は、カバー13の開口面よりもZ軸方向における受光側に突出するように配置されてもよい。カバー13は、例えば、光学素子駆動装置1のベース12に接着により固定される。
【0030】
なお、カバー13は、例えば、磁性材料で形成され、外部からの電磁波の入射又は外部への電磁波の放射を遮断するシールド機能を有していてもよい。
【0031】
レンズホルダー11は、レンズ部2(図2参照)を保持し、ピント合わせ時にZ軸方向に移動する可動体である。レンズホルダー11は、ベース12に対して径方向における内側に離間して配置され、支持部30A~30Cを介してベース12に付勢された状態で支持される。
【0032】
レンズホルダー11は、例えば、ポリアリレート(PAR)、PARを含む複数の樹脂材料を混合したPARアロイ、液晶ポリマー等で形成される。レンズホルダー11は、筒状のレンズ収容部111を有する。レンズ収容部111の内周面には、レンズ部2(図2参照)が、例えば、接着により固定される。
【0033】
レンズホルダー11は、レンズ収容部111の外周面に、駆動部40A、40Bの動力が伝達される動力伝達部112A、112Bを有する。動力伝達部112A、112Bは、例えば、光軸に関して対称な位置に配置される。動力伝達部112A、112Bは、レンズホルダー11に一体的に成形されてもよいし、レンズホルダー11とは別材料で成形されレンズホルダー11に固定されてもよい。
【0034】
レンズホルダー11は、レンズ収容部111の外周面に、支持部30A~30Cを保持するホルダー側ボール保持部(符号略)を有する。ホルダー側ボール保持部は、例えば、光軸に関して回転対称な位置(例えば、120°回転対称)に配置される。
【0035】
ベース12は、支持部30A~30Cを介して、レンズホルダー11をZ軸方向に移動可能に支持する固定体である。ベース12は、例えば、Z軸方向から見た平面視で略矩形状の四角筒形状を有する。
【0036】
ベース12は、例えば、ポリアリレート(PAR)、PARを含む複数の樹脂材料を混合したPARアロイ(例えば、PAR/PC)、又は液晶ポリマーからなる成形材料で形成される。ベース12は、平面視で略矩形状の部材であり、中央に円形の開口(図示略)を有する。
【0037】
ベース12は、側面に、駆動部40A、40Bが配置されるモーター固定部(符号略)を有する。モーター固定部は、駆動部40A、40Bを保持可能な形状を有している。また、ベース12は、レンズホルダー11のホルダー側ボール保持部と径方向において対向する位置に、ベース側ボール保持部(符号略)を有する。ベース側ボール保持部のうちの一つ(例えば、矩形の頂点に位置する4つの隅部のうちの一つに形成されたボール保持部)には、レンズホルダー11を付勢するための付勢部材(図示略)が配置される。
【0038】
支持部30A~30Cは、ベース12に対して、レンズホルダー11を径方向に離間した状態で支持する。支持部30A~30Cは、それぞれ、複数個(例えば、2個)のボールで構成される。それぞれのボールは、ベース12のベース側ボール保持部とレンズホルダー11のホルダー側ボール保持部により、多点接触で挟持される。
【0039】
なお、周方向における支持部の配置数及びそれぞれの支持部を構成するボールの数は、特に限定されず、適宜変更可能である。
【0040】
駆動部40A、40Bは、ベース12に対して、レンズホルダー11をZ軸方向に駆動する、超音波モーター型のアクチュエーターである。駆動部40A、40Bは、能動側部材であるベース12のモーター固定部に配置され、動力伝達部112A、112Bを介して、受動側部材であるレンズホルダー11と連結される。
【0041】
駆動部40A、40Bは、例えば、光軸に関して点対称な位置に配置される。本実施の形態では、駆動部40A、40Bは、支持部30Aが配置された隅部を除く3つの隅部のうち、対角位置となる2つの隅部(支持部30B、30Cの近傍の隅部)に配置されている。このように配置することにより、レンズホルダー11を安定して駆動することができ、レンズ部2(図2参照)等の光学素子の重量が増加する場合にも対応できる。
【0042】
駆動部40A、40Bは、それぞれ、共振部材41及び圧電素子42を有する。
【0043】
圧電素子42は、例えば、セラミック材料で形成された板状素子であり、高周波電圧を印加することにより振動を発生する。共振部材41の胴部(符号略)を挟み込むように、2枚の圧電素子42が配置される。
【0044】
共振部材41は、導電性材料で形成され、圧電素子42の振動を受けて共振する。共振部材41は、所定の導電性、せん断強度、硬度、比重、ヤング率等を有する金属であればよく、例えば、ステンレス綱が好適である。共振部材41は、例えば、金属板のレーザー加工、エッチング加工又はプレス加工等により形成される。
【0045】
共振部材41及び圧電素子42は、電源線として機能する電極(図示略)と電気的に接続される。電極は、回路基板部50に設けられた配線(図示略)と電気的に接続される。
【0046】
共振部材41は、例えば、圧電素子42に挟持される略矩形状の胴部(符号略)及び胴部からZ軸方向に延在する2つのアーム(符号略)を有する構成である。2つのアームは略対称的な形状を有し、それぞれの自由端部が動力伝達部112A、112Bに当接し、圧電素子42の振動に共振して対称的に変形する。
【0047】
本実施の形態では、2つのアームの自由端部により、動力伝達部112A、112Bが付勢された状態で挟持される。共振部材41と動力伝達部112A、112Bとが当接した状態で共振部材41が共振することにより、圧電素子42の振動運動が動力伝達部112A、112Bの直線運動に変換される。すなわち、共振部材41が直線方向の駆動力を発生する能動要素であり、動力伝達部112A、112Bが駆動力を受けて移動する受動要素である。
【0048】
共振部材41は、少なくとも2つの共振周波数を有し、それぞれの共振周波数に対して、異なる挙動で変形する。言い換えると、共振部材41は、2つの共振周波数に対して異なる挙動で変形するように、全体の形状が設定されている。
【0049】
ここで、異なる挙動とは、動力伝達部112A、112Bを光軸方向受光側に移動(前進)させる挙動と、光軸方向結像側に移動(後退)させる挙動である。つまり、共振部材41を所定の共振周波数で振動させることにより、動力伝達部112A、112BをZ軸方向に前進又は後退させることができる。
【0050】
光学素子駆動装置1において、駆動部40A、40Bに電圧を印加すると、圧電素子42が振動し、共振部材41が周波数に応じた挙動で変形する。駆動部40A、40Bの駆動力により、動力伝達部112A、112BがZ軸方向に摺動される。これに伴い、レンズホルダー11がZ軸方向に移動し、ピント合わせが行われる。
【0051】
回路基板部50は、フレキシブルプリント回路基板51(以下、「FPC51」と称する、FPC:Flexible Printed Circuit)、ドライバーIC52、位置検出センサー53及び温度センサー54等を有する。本実施の形態では、回路基板部50は、ベース12の側面に沿って、略一周するように配置されている。
【0052】
FPC51は、ドライバーIC52、位置検出センサー53及び温度センサー54が実装される回路基板である。FPC51は、例えば、樹脂フィルム等の薄い絶縁層と銅箔等の金属層とが積層されて形成される。金属層により、信号線や電源線等の回路配線が形成される。
【0053】
FPC51の回路配線には、駆動部40A、40B、ドライバーIC52、位置検出センサー53、及び温度センサー54等が電気的に接続される。また、光学素子駆動装置1をカメラモジュールAに組み込んだ場合に、FPC51の回路配線は、イメージセンサー基板301の配線と電気的に接続される。
【0054】
ドライバーIC52は、駆動部40A、40Bの駆動制御を行うハードウェアプロセッサーである。ドライバーIC52は、例えば、演算/制御装置としてのCPU(Central Processing Unit)521、主記憶装置としてのROM(Read Only Memory)522及びRAM(Random Access Memory)523等を有する(図4参照)。
【0055】
ROM522には、基本プログラムや基本的な設定データが記憶される。また、ROM522には、駆動制御処理を実現するためのプログラムが記憶される。CPU521は、ROM522から処理内容に応じたプログラムを読み出してRAM523に展開し、展開したプログラムを実行することにより、駆動部40A、40Bの動作を制御する。
【0056】
さらに、本実施の形態では、ROM522には、駆動部40A、40Bの駆動周波数と雰囲気温度との関係を示す周波数テーブルの初期値(図6A参照)が記憶される。周波数テーブルは、雰囲気温度の内容を書き込み又は書き換え可能に構成される。
【0057】
ドライバーIC52は、例えば、モジュール制御部303からの指示に従い、駆動部40A、40Bに所定の駆動周波数を有する駆動信号(電気信号)を出力する(駆動制御処理)。この駆動制御処理において、ドライバーIC52は、位置検出センサー53及び温度センサー54の検出結果に基づいて、適宜、駆動周波数を補正する。
【0058】
位置検出センサー53は、例えば、ホール素子又はTMR(Tunnel Magneto Resistance)センサー等の磁気センサーである。位置検出センサー53は、レンズホルダー11に配置された位置検出用磁石(図示略)による磁力の強さを検出することにより、Z軸方向におけるレンズホルダー11とベース12との相対位置を取得して、検出位置信号としてドライバーIC52に出力する。位置検出センサー53及び位置検出用磁石は、例えば、径方向に対向するように配置される。
【0059】
なお、フォトリフレクター等の光センサーによりレンズホルダー11のZ軸方向の位置を検出するようにしてもよい。
【0060】
温度センサー54は、例えば、サーミスタである。温度センサー54は、光学素子駆動装置1の雰囲気温度を取得して、測定温度信号としてドライバーIC52に出力する。測定温度信号は、必要に応じて、例えば、ROM522に記憶される。
【0061】
なお、温度センサー54は、駆動部40A、40Bに近い位置に配置されることが好ましい。駆動部40A、40Bが熱源となるため、より雰囲気温度の取得を高精度に行うことができる。
【0062】
光学素子駆動装置1においてオートフォーカスを行う場合には、ドライバーIC52(駆動制御部)により、駆動部40A、40Bへの駆動制御が行われる。以下に、図5を参照して、光学素子駆動装置1における駆動制御処理について具体的に説明する。
【0063】
図5は、光学素子駆動装置1における駆動制御処理の一例を示すフローチャートである。図5に示すフローチャートは、例えば、スマートフォンMにおける撮影操作(例えば、シャッターボタンの押し操作)により、モジュール制御部303からオートフォーカス駆動を指示する制御信号(AFストロークを含む)が入力されたことに伴い、ドライバーIC52によって実行される。
【0064】
なお、位置検出センサー53及び温度センサー54の検出結果は、常時、ドライバーIC52に対して出力されているものとする。また、駆動制御処理は、例えば、駆動部40A、40Bの駆動態様ごとに実行される。具体的には、レンズホルダー11を光軸方向受光側に移動させる挙動で共振部材41を変形させる駆動制御処理と、レンズホルダー11を光軸方向受光側に移動させる挙動で共振部材41を変形させる駆動制御処理とで、別々の周波数テーブルに従って駆動制御が行われる。
【0065】
また、ROM522には、周波数テーブルの初期値として、図6Aに示す周波数テーブルが記憶されているものとする。図6Aに示す周波数テーブルでは、駆動制御処理において設定可能な駆動周波数として、基準周波数f0と、基準周波数f0に対して所定のシフト幅fc(例えば、20kHz)で段階的に増減させた4つの補正周波数f0±fc、f0±2fcが記憶されている。ここでは、雰囲気温度が高くなるに伴い、適した駆動周波数が増大するものとする。
【0066】
駆動周波数の上限値(図6Aでは「f0+2fc」)及び下限値(図6Aでは「f0-2fc」)は、駆動部40A、40Bにおいて所望の駆動動作(レンズホルダー11を前進又は後退させる動作)が正常に行われる範囲で設定される。また、基準周波数f0に対して駆動周波数を変化させる段数(図6Aでは上下2段階)は特に制限されず、駆動周波数を上下3段階以上で変化させる(シフト幅fcを小さくする)ようにしてもよい。
【0067】
図6Aに示す周波数テーブルでは、初期値として、基準周波数f0と基準温度T0が対応付けて記憶されている。基準周波数f0に対する基準温度T0は、例えば、光学素子駆動装置1の製造時に、製品ごとに予め設定される。駆動制御処理の開始直後は、基準周波数f0が駆動周波数として設定される。
【0068】
図5のステップS101において、ドライバーIC52は、オートフォーカス処理として、モジュール制御部303からの制御信号で指示されたAFストロークだけレンズホルダー11が移動するように、駆動部40A、40Bに駆動信号を出力する。例えば、駆動制御処理の開始直後は、基準周波数f0の駆動信号が駆動部40A、40Bに出力される。これにより、レンズホルダー11がZ軸方向に移動し、ピント合わせが行われる。
【0069】
ステップS102において、ドライバーIC52は、位置検出センサー53の検出結果に基づいて、駆動エラーが発生しているか否かを判定する。駆動エラーが発生している場合(ステップS102で“YES”)、ステップS103の処理に移行する。駆動エラーが発生していない場合(ステップS102で“NO”)、駆動制御処理を終了する。次回の駆動制御処理におけるステップS101では、現在の駆動周波数が維持される。
【0070】
具体的には、ドライバーIC52は、例えば、所定時間(例えば、30ms)以内に、指示されたAFストロークだけレンズホルダー11が移動して目標位置に収束したか否かに基づいて、駆動エラーの発生の有無を判定する。レンズホルダー11が所定時間以内に目標位置に収束しない場合が、駆動エラーとなる。
【0071】
ステップS103において、ドライバーIC52は、温度センサー54で測定された現在の雰囲気温度(以下、「測定温度」と称する)と、現在の駆動周波数に対応付けられている雰囲気温度(以下、「設定温度」と称する)とを比較する。例えば、駆動制御処理の開始直後は、基準周波数f0に対応付けられている基準温度T0が設定温度となる。
【0072】
ステップS104において、ドライバーIC52は、比較結果(測定温度と設定温度の温度差)に応じて、駆動周波数を補正可能であるか否かを判定する。駆動周波数を補正可能である場合(ステップS104で“YES”)、ステップS105の処理に移行する。駆動周波数を補正不能である場合(ステップS104で”NO“)、ステップS107の処理に移行する。
【0073】
具体的には、ドライバーICは、周波数テーブル(例えば、図6A参照)に、駆動周波数として設定可能な補正周波数がある場合は補正可能であると判定し、駆動周波数として設定可能な補正周波数がない場合は補正不能であると判定する。例えば、補正周波数の上限値(例えば、図6Aにおける補正周波数f0+2fc)による駆動制御において駆動エラーが発生し、さらに駆動周波数を増大させることになる場合、駆動周波数として設定可能な補正周波数がないので補正不能となる。
【0074】
ステップS105において、ドライバーIC52は、ステップS104における比較結果(温度差)に応じて、駆動周波数を補正する。次回以降の駆動制御処理のステップS102において改めて駆動エラーが発生するまでは、補正後の駆動周波数を有する駆動信号により駆動制御が行われる。
【0075】
ステップS106において、ドライバーIC52は、補正時の測定温度を、補正周波数に対応付けてRAM523に記憶する。次回以降の駆動制御処理において駆動エラーが発生した場合は、記憶された測定温度(補正温度)が「設定温度」となり、ステップS103、S104の処理が行われる。
【0076】
ステップS104で補正不能であると判定された場合、ステップS107において、ドライバーIC52は、駆動周波数を基準周波数f0に戻す。次回以降の駆動制御処理では、基準周波数f0の駆動信号により駆動制御が行われる。
【0077】
図5に示すフローチャートに従うと、例えば、駆動制御処理の開始後、基準周波数f0による駆動制御が行われている場合に駆動エラーが発生し、基準温度T0よりも測定温度の方が高い場合には、駆動周波数が補正周波数f0+fcに補正される。また、補正時の測定温度が補正温度T1として周波数テーブルに記憶される(図6B参照)。以降の駆動制御処理では、補正周波数f0+fcが駆動周波数として使用される(ステップS101)。また、以降の駆動制御処理において駆動エラーが発生した場合には、補正温度T1を設定温度として、現在の測定温度との比較が行われる(ステップS103)。
【0078】
また例えば、駆動制御処理の開始後、基準周波数f0による駆動制御が行われている場合に駆動エラーが発生し、基準温度T0よりも測定温度の方が低い場合には、駆動周波数が補正周波数f0-fcに補正される。また、補正時の測定温度が補正温度T3として周波数テーブルに記憶される(図6C参照)。以降の駆動制御処理では、補正周波数f0-fcが駆動周波数として使用される(ステップS101)。また、以降の駆動制御処理において駆動エラーが発生した場合には、補正温度T3を設定温度として、現在の測定温度との比較が行われる(ステップS103)。
【0079】
また例えば、補正周波数f0+fcによる駆動制御が行われている場合に駆動エラーが発生し、補正周波数f0+fcに対応付けられている補正温度T1よりも測定温度の方が高い場合には、駆動周波数が補正周波数f0+2fcに補正される。また、補正時の測定温度が補正温度T2として周波数テーブルに記憶される(図6D参照)。以降の駆動制御処理では、補正周波数f0+2fcが駆動周波数として使用される(ステップS101)。また、以降の駆動制御処理において駆動エラーが発生した場合には、補正温度T2を設定温度として、現在の測定温度との比較が行われる(ステップS103)。
【0080】
また例えば、補正周波数f0+2fcによる駆動制御が行われている場合に駆動エラーが発生し、補正周波数f0+2fcに対応付けられている補正温度T2よりも測定温度の方が低い場合には、駆動周波数が補正周波数f0+fcに補正される。また、補正時の測定温度が補正温度T1として周波数テーブルに上書きされる(図6E参照)。以降の駆動制御処理では、補正周波数f0+fcが駆動周波数として使用される(ステップS101)。また、以降の駆動制御処理において駆動エラーが発生した場合には、上書きされた補正温度T1を設定温度として、現在の測定温度との比較が行われる(ステップS103)。
【0081】
また例えば、補正周波数f0+2fcによる駆動制御が行われている場合に駆動エラーが発生し、補正周波数f0+2fcに対応付けられている補正温度T2よりも測定温度の方が高い場合には、補正不能となるので、駆動周波数が基準周波数f0に変更される(ステップS107)。以降の駆動制御処理では、駆動エラーの有無にかかわらず駆動周波数の補正は行われない。つまり、以降の駆動制御処理では、駆動周波数は基準周波数f0に維持され、基準周波数f0の駆動信号が駆動部40A、40Bに出力される。
【0082】
また例えば、補正周波数f0+fcによる駆動制御が行われている場合に駆動エラーが発生し、補正周波数f0+fcに対応付けられている補正温度T1よりも測定温度の方が低い場合には、駆動周波数が基準周波数f0に補正される。この場合、補正時の測定温度は周波数テーブルに記憶されず、基準温度T0は維持される。つまり、基準周波数f0と基準温度T0の関係は、製造時に実験的に求められた最適なものであるので、上書きされないことが好ましい。これにより、以降の駆動制御処理の安定化を図ることができる。
【0083】
このように、本実施の形態に係る光学駆動装置1、カメラモジュールA、スマートフォンM(カメラ搭載装置)及び駆動方法は、以下の特徴事項を単独で、又は、適宜組み合わせて備えている。
【0084】
すなわち、光学素子駆動装置1は、ベース12(固定体)と、レンズ部2(光学素子)を保持しベース12に対して移動可能に配置されるレンズホルダー11(可動体)と、圧電素子42を有し圧電素子42の振動運動を直線運動に変換してレンズホルダー11を駆動する駆動部40A、40Bと、所定の駆動周波数を有する駆動信号を駆動部40A、40Bに印加するドライバーIC52(駆動制御部)と、駆動部40A、40Bの駆動状態を検出する位置検出センサー53(駆動検出部と)、駆動部40A、40Bの雰囲気温度を測定する温度センサー54(温度測定部)と、を備える。ドライバーIC52(駆動制御部)は、複数の駆動周波数と雰囲気温度を対応付けて記憶可能であり、位置検出センサー53によって検出された情報から駆動部40A、40Bの駆動エラーの有無を判定し、駆動エラーである場合に、現在の駆動周波数に対応付けられている雰囲気温度と、温度センサー54によって測定された現在の雰囲気温度を比較し、比較結果に応じて駆動周波数を補正するとともに、当該補正後の駆動周波数と現在の前記雰囲気温度とを対応付けて記憶する。
【0085】
また、光学素子駆動装置1の駆動方法は、ベース12(固定体)と、ベース12に対して移動可能に配置されるレンズホルダー11(可動体)と、圧電素子42を有し圧電素子42の振動運動を直線運動に変換してレンズホルダー11を駆動する駆動部40A、40Bと、を備える光学素子駆動装置1の駆動方法であって、所定の駆動周波数を有する駆動信号を駆動部40A、40Bに印加する工程(図5のステップS101)と、駆動部40A、40Bの駆動状態を検出する工程と、駆動部40A、40Bの雰囲気温度を測定する工程と、検出された駆動状態から駆動部40A、40Bの駆動エラーの有無を判定する工程(図5のステップS102)と、駆動エラーである場合に、設定温度(現在の駆動周波数に対応付けられている雰囲気温度)と、測定温度(測定された現在の雰囲気温度)を比較する工程(図5のステップS103)と、比較結果に応じて駆動周波数を補正する工程(図5のステップS104、S105)と、当該補正後の駆動周波数と現在の雰囲気温度とを対応付けて記憶する工程(図5のステップS106)と、を含む。
【0086】
光学素子駆動装置1及び駆動方法によれば、製品ごとの駆動時に、駆動周波数と雰囲気温度の関係を示す周波数テーブルの内容が更新され、更新された関係に基づいて駆動制御が行われる。したがって、圧電素子42の温度依存性を考慮して、圧電素子42に印加する駆動信号の駆動周波数を雰囲気温度に応じて適切に補正し、所望の駆動制御を行うことができる。
【0087】
また、光学素子駆動装置1において、複数の駆動周波数は、予め基準温度T0に対応付けられている基準周波数f0と、基準周波数f0より大きい側に設定された補正周波数f0+fc、f0+2fc(第1補正周波数)と、基準周波数f0より小さい側に設定された補正周波数f0-fc、f0-2fc(第2補正周波数)と、を含み、ドライバーIC(駆動制御部)は、基準温度T0と測定温度(現在の雰囲気温度)を比較して、比較結果に応じて、第1補正周波数及び第2補正周波数の何れかを選択する。これにより、測定温度と基準温度との比較結果に応じて、圧電素子42に印加する駆動信号の駆動周波数を適切に補正することができる。
【0088】
また、光学素子駆動装置1において、補正周波数f0+fc、f0+2fc(第1補正周波数)と、補正周波数f0-fc、f0-2fc(第2補正周波数)は、それぞれ、段階的に複数設定されている。これにより、駆動制御処理において補正周波数を設定するための処理負荷を軽減することができ、駆動制御処理の高速化を図ることができる。
【0089】
また、光学素子駆動装置1において、ドライバーIC52(駆動制御部)は、駆動周波数が補正不能である場合に、駆動周波数を基準周波数f0に戻し、当該基準周波数f0を維持する。これにより、駆動周波数が適正範囲から外れ、レンズホルダー11が駆動しなくなる不具合の発生を防止することができる。
【0090】
また、光学素子駆動装置1において、駆動部40A、40Bは、駆動方向の異なる複数の駆動態様を有しており、ドライバーIC52(駆動制御部)は、複数の駆動態様ごとに駆動周波数を制御する。これにより、複数の共振周波数を有し、共振周波数ごとに異なる挙動(レンズホルダー11を光軸方向結像側に移動させる挙動と光軸方向受光側に移動させる挙動)で変形する駆動部40A、40Bに対して、それぞれの挙動を適切に制御することができる。
【0091】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0092】
例えば、上記実施の形態では、スマートフォンMを例に挙げて説明したが、本発明は、カメラモジュールとカメラモジュールで得られた画像情報を処理する画像処理部とを有するカメラ搭載装置に適用できる。カメラ搭載装置は、情報機器及び輸送機器を含む。情報機器は、例えば、カメラ付き携帯電話機、ノート型パソコン、タブレット端末、携帯型ゲーム機、webカメラ、カメラ付き車載装置(例えば、バックモニター装置、ドライブレコーダー装置)等を含む。また、輸送機器は、例えば、自動車やドローン(無人航空機)等を含む。
【0093】
図7A図7Bは、車載用カメラモジュールVC(Vehicle Camera)を搭載するカメラ搭載装置としての自動車Vを示す図である。図7Aは自動車Vの正面図であり、図7Bは自動車Vの後方斜視図である。自動車Vは、車載用カメラモジュールVCとして、上記実施の形態で説明したカメラモジュールAを搭載する。図7A図7Bに示すように、車載用カメラモジュールVCは、例えば、前方に向けてフロントガラスに取り付けられたり、後方に向けてリアゲートに取り付けられたりする。この車載用カメラモジュールVCは、バックモニター用、ドライブレコーダー用、衝突回避制御用、自動運転制御用等として使用される。
【0094】
また、上記実施の形態では、光学素子としてレンズ部2を駆動する光学素子駆動装置1について説明したが、駆動対象となる光学素子は、ミラーやプリズム等のレンズ以外の光学素子であってもよい。また、本発明は、例えば、光学素子として撮像素子を駆動する光学素子駆動装置に適用することもできる。
【0095】
また、上記実施の形態では、光学素子駆動装置1はAF機能を有しているが、AF機能だけでなく、ズーム機能等、レンズ部2をZ軸方向に移動させる機能を有するものでもよい。また、実施の形態では、AF機能を備える光学素子駆動装置1を例示して説明したが、本発明は、AF機能及びOIS機能のうちの少なくとも一方を備える光学素子駆動装置に対して適用することができる。
【0096】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0097】
1 光学素子駆動装置
11 レンズホルダー(可動体)
12 ベース(固定体)
40A、40B 駆動部
41 共振部材
42 圧電素子
51 ドライバーIC(駆動制御部)
52 位置検出センサー(駆動検出部)
53 温度センサー(温度検出部)
A カメラモジュール
M スマートフォン(カメラ搭載装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7