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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】可変容量制御ピストンポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04B 1/324 20200101AFI20241120BHJP
   F04B 1/2078 20200101ALI20241120BHJP
【FI】
F04B1/324
F04B1/2078
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024040837
(22)【出願日】2024-03-15
【審査請求日】2024-04-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【復代理人】
【識別番号】100156410
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 輝和
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】池生 慎一
(72)【発明者】
【氏名】横田 貴也
(72)【発明者】
【氏名】山本 怜
(72)【発明者】
【氏名】宮田 脩平
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-158558(JP,A)
【文献】特開2003-148328(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 1/324
F04B 1/2078
F04B 1/2092
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変容量制御ピストンポンプであって、
ハウジング内において、
シャフトを中心に回転可能なシリンダバレルと、
前記シリンダバレルにおいて、前記シャフトを中心として周方向に所定の間隔で配置される複数のシリンダと、
前記シリンダに対して前記シャフトの軸方向に往復動作可能なピストンと、
前記ピストンに対して角度が可変となるように支持部を中心にして揺動可能な斜板と、
前記斜板の一部に対して、前記斜板の傾斜角度が大きくなるように押圧可能なスプリングと、
前記斜板の最大傾斜角度を規制するストッパと、
を具備し、
前記ピストンの端部は、前記斜板の面に沿って移動可能であり、
前記ストッパは、前記斜板側に対して押圧可能な押圧手段を有し、前記斜板の揺動可能な全範囲において、前記ストッパが前記斜板に対して一定の力で押圧された状態が維持されることを特徴とする可変容量制御ピストンポンプ。
【請求項2】
前記押圧手段は油圧ピストンであり、前記斜板には前記油圧ピストンが一定の力で押圧されることを特徴とする請求項1記載の可変容量制御ピストンポンプ。
【請求項3】
前記油圧ピストンの背部には、ばねが配置され、前記油圧ピストンの押圧方向に対して前記ばねが前記油圧ピストンを押圧することを特徴とする請求項2記載の可変容量制御ピストンポンプ。
【請求項4】
前記ストッパは、前記斜板を挟んで前記スプリングに対向する位置に配置されることを特徴とする請求項1記載の可変容量制御ピストンポンプ。
【請求項5】
前記ストッパは、前記支持部を挟んで前記スプリングとは逆側に配置されることを特徴とする請求項1記載の可変容量制御ピストンポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定馬力制御型の可変容量制御ピストンポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、建設機械向けなどの油圧ポンプにおいて、エンジンの出力を有効に活用するため、定馬力制御型の可変容量制御ピストンポンプが広く用いられている。可変容量ピストンポンプは、スプリング荷重によるモーメントと、吐出圧力によるモーメントをバランスさせることで、吐出圧力が増加すると斜板が傾転し、吐出流量を減少させることで定馬力制御が行われる。
【0003】
このような可変容量型のピストンポンプとしては、例えば、斜板の揺動中心とその揺動中心軸線を、ピストンの作動時に斜板を軸方向に押圧する合力中心軸線より離隔して配置した定馬力制御ピストンポンプが提案されている(特許文献1)。特許文献1では、斜板の一端が、スプリングを押して斜板の傾転角を減少させると、揺動中心に対するピストンからの合カ作用腕の長さが減少する。このため、より理想的な定馬力制御特性を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開平4-6775公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図5図6は、従来のピストンポンプ100を示す図であり、図5は、斜板107が最大角度となって、最大吐出量の状態であり、図6は、斜板107が揺動して、斜板107の傾斜角度が小さくなった状態を示す図である。
【0006】
シャフト105とシリンダバレル109は、シャフト105を軸心として回転可能である。シリンダバレル109には、複数のシリンダ111が配置され、それぞれのシリンダ111にはピストン113が設けられる。それぞれのピストン113の端部は、シュー117を介して斜板107に当接される。シュー117は、斜板107の表面に沿って摺動可能である。
【0007】
斜板107は、シャフト105の軸方向に垂直な方向(紙面に垂直な方向)を回転軸として、揺動中心119を中心に揺動可能である。すなわち、斜板107は、シャフト105に対して角度が可変である。斜板107の一方の端部側には、スプリング121に嵌合したスプリングホルダ122の先端が接触し、スプリング121によって斜板107は押圧される。すなわち、斜板107には、スプリング121からの押圧力によるモーメントMsが付与される。
【0008】
シャフト105を回転させると、シリンダバレル109が回転するため、ピストン113が斜板107に沿って移動する。この際、斜板107が傾斜しているため、ピストン113は、斜板107とシリンダバレル109との距離に応じてシリンダ111に対して往復動作する。この際、ピストン113の往復動作に伴い、油の吸引と吐出が行われる。
【0009】
ここで、斜板107は、全てのピストン113からの合力を受ける。このため、斜板107には、全てのピストン113からの押圧力によるモーメントMpが付与される。すなわち、斜板107は、前述したスプリング121によるモーメントMsと、ピストン113によるMpとが釣り合った角度で保持される。
【0010】
図7(a)は、図5におけるストッパ123近傍の拡大図である。前述したように、Ms>Mpの状態では、スプリング121の押圧力によって、斜板107は図中反時計回り方向に揺動し、ストッパ123に接触した状態で維持される。すなわち、ストッパ123は、ハウジングに固定され、斜板107の最大傾斜角度を規制するものである。一方、この状態から、Mpが徐々に大きくなり、MpがMsを上回ると、斜板107が揺動を開始する。図7(b)は、斜板107が揺動を開始し、ストッパ123から離れた直後の状態を示す図である。
【0011】
ここで、複数のシリンダ111の内圧は、シャフト105が1回転する間に吸入圧力と吐き出し圧力となる状態を繰り返すことによって、斜板107に作用するピストン合力が変動し、斜板107を揺動させる振動が発生する。この振動によって、斜板が最大傾斜角度の状態から斜板が揺動を開始するカット点近傍において、ストッパ123と斜板107の接触と離れによる、いわゆる叩き音が発生する問題があった。すなわち、MpとMsとの差が小さい場合には、斜板107とストッパ123との間にわずかな隙間が形成される場合が生じ(図中X部)、脈動によって、図7(a)と図7(b)の状態が繰り返され、いわゆるたたき音が発生する問題があった。
【0012】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、騒音が小さい可変容量制御ピストンポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述した目的を達成するため、本発明は、可変容量制御ピストンポンプであって、ハウジング内において、シャフトを中心に回転可能なシリンダバレルと、前記シリンダバレルにおいて、前記シャフトを中心として周方向に所定の間隔で配置される複数のシリンダと、前記シリンダに対して前記シャフトの軸方向に往復動作可能なピストンと、前記ピストンに対して角度が可変となるように支持部を中心にして揺動可能な斜板と、前記斜板の一部に対して、前記斜板の傾斜角度が大きくなるように押圧可能なスプリングと、前記斜板の最大傾斜角度を規制するストッパと、を具備し、前記ピストンの端部は、前記斜板に沿って摺動可能であり、前記ストッパは、前記斜板側に対して押圧可能な押圧手段を有し、前記斜板揺動可能な全範囲において、前記ストッパが前記斜板に対して一定の力で押圧された状態が維持されることを特徴とする可変容量制御ピストンポンプである。
【0014】
前記押圧手段は油圧ピストンであり、前記斜板には前記油圧ピストンが一定の力で押圧されることが望ましい。
【0015】
前記油圧ピストンの背部には、ばねが配置され、前記油圧ピストンの押圧方向に対して前記ばねが前記油圧ピストンを押圧してもよい。
【0016】
前記ストッパは、前記斜板を挟んで前記スプリングに対向する位置に配置されてもよい。
【0017】
前記ストッパは、前記支持部を挟んで前記スプリングとは逆側に配置されてもよい。
【0018】
第1の発明によれば、ストッパの後方に、斜板に対してストッパを押圧可能な押圧手段を配置し、斜板の角度が変化した際にストッパが斜板に対して追従して所定の力で押圧した状態が維持される。このため、ストッパが斜板から離れることがなく、叩き音の発生を抑制することができる。
【0019】
特に、押圧手段が油圧ピストンであれば、油圧ピストンのストローク長に対して、常に一定の力で斜板にストッパを押圧することができる。このため、斜板の傾斜角度によらす、確実にストッパを斜板に押圧することができる。
【0020】
また、油圧ピストンの背部に、ばねを配置して、油圧ピストンの押圧方向に対してばねで油圧ピストンを押圧することで、斜板揺動開始直後において、スムーズに油圧ピストンを押し出すことができる。すなわち、最大吐出量状態から斜板の揺動が開始する直後において、油圧ピストンとシリンダとの摩擦等によってピストンの移動開始動作が不安定となる恐れがあるが、このような油圧ピストンの移動遅れを抑制し、より確実にピストンを斜板に押し付けることができる。
【0021】
このような押圧手段は、斜板を挟んでスプリングに対向する位置に配置してもよく、斜板の支持部を挟んでスプリングとは逆側に配置してもよい。いずれの場合も、ストッパによって、斜板の最大傾斜角度を規制するとともに、斜板揺動時における叩き音の発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、騒音が小さい可変容量制御ピストンポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】最大吐出量の状態におけるピストンポンプ1を示す図。
図2】斜板7が揺動した状態におけるピストンポンプ1を示す図。
図3】(a)は、最大吐出量の状態におけるストッパ23近傍の拡大図、(b)は、斜板7が揺動した状態におけるストッパ23近傍の拡大図。
図4】最大吐出量の状態におけるピストンポンプ1aを示す図。
図5】最大吐出量の状態におけるピストンポンプ100を示す図。
図6】斜板107が揺動した状態におけるピストンポンプ100を示す図。
図7】(a)は、最大吐出量の状態におけるストッパ123近傍の拡大図、(b)は、斜板7が揺動開始した状態におけるストッパ123近傍の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態にかかるピストンポンプについて説明する。図1は、最大吐出量の状態におけるピストンポンプ1を示す図であり、図2は、斜板7が揺動した状態におけるピストンポンプ1を示す図である。本実施形態のピストンポンプは、定馬力可変容量制御型のピストンポンプである。
【0025】
ピストンポンプ1は、主に、シャフト5、斜板7、シリンダバレル9、バルブプレート15、スプリング21等から構成される。シャフト5、斜板7、シリンダバレル9、バルブプレート15、スプリング21等は、ハウジング3の内部に収容される。
【0026】
シャフト5はハウジング3に対して回転可能に取り付けられる。また、シャフト5にはシリンダバレル9が連結される。すなわち、シリンダバレル9は、シャフト5を軸心としてシャフト5とともに回転可能である。シリンダバレル9には、シャフト5を中心に、周方向に所定の間隔で複数のシリンダ11が配置される。それぞれのシリンダ11には、シャフト5の軸方向に対して往復動作可能なピストン13が配置される。
【0027】
それぞれのピストン13の端部は、シュー17を介して斜板7に当接される。シュー17は、斜板7の表面に沿って摺動可能である。すなわち、ピストン13の端部は、斜板7の表面に沿って、シャフト5を中心に周方向に移動する。
【0028】
斜板7は、シャフト5の軸方向に垂直な方向(紙面に垂直な方向)を回転軸として、支持部(揺動中心19)を中心に揺動可能である。すなわち、斜板7は、シャフト5に対して角度が可変である。なお、斜板7は、シリンダバレル9のように、シャフト5を回転軸として回転しない。
【0029】
斜板7の一方の端部側(図中上方)にはアーム部が設けられ、アーム部においてスプリング21の先端がスプリングホルダ22を介して斜板7と接触し、スプリング21によって斜板7は、シャフト5に対する傾斜角度が大きくなるように押圧される。すなわち、斜板7には、揺動中心19を基準として、スプリング21からの押圧力によるモーメントMsが付与される。斜板7は、スプリング21からの力によるモーメントMsによって、揺動中心19を起点に図中反時計周り方向に傾斜する。
【0030】
スプリング21による斜板7の揺動方向の後方には、ストッパ23が配置される。すなわち、ストッパ23は、斜板7を挟んでスプリング21に対向する位置に配置される。図1に示す状態では、斜板7が最も大きな傾斜角度となった状態であり、この状態において、斜板7は、ストッパ23によって、それ以上の揺動が規制される。すなわち、ストッパ23によって、斜板7の最大傾斜角度を規制することができる。なお、ストッパ23の機能については詳細を後述する。
【0031】
前述したように、シャフト5を回転させると、シャフト5とともに、シリンダバレル9が回転する。このため、シリンダバレル9に設けられるシリンダ11及びピストン13が、シャフト5を中心に移動する。また、前述したように、ピストン13の端部は、斜板7の表面に沿って移動可能である。
【0032】
この際、斜板7が傾斜しているため、ピストン13は、斜板7とシリンダバレル9との距離に応じてシリンダ11に対して往復動作する。例えば、図1において、シャフト5の上方に図示したピストン13は、最もシリンダ11から引き出された状態となり、シャフト5の下方に図示したピストン13は、最もシリンダ11へ押し込まれた状態となる。
【0033】
バルブプレート15には、所定の位置に孔が形成される。このため、ピストン13が押し込まれた状態から引き出された状態に移行する際には、バルブプレート15の孔を介してシリンダ11内に油を吸引する。また、ピストン13が引き出された状態から押し込まれた状態に移行する際には、バルブプレート15の孔を介して油を吐出する。すなわち、図1に示すように、斜板7の傾斜角度が最大の際に、最も油の吐出量が多くなり、図2に示すように、斜板7の傾斜角度が小さくなると、油の吐出量が減少する。
【0034】
ここで、前述したように、斜板7は、全てのピストン13からの合力を受ける。すなわち、斜板7には、全てのピストン13からの押圧力によるモーメントMpが付与される。このため、Ms>Mpの状態では、斜板7は、傾斜角度が増す方向(図中反時計方向)に傾斜し、Ms<Mpの状態では、斜板7は、スプリング21によるモーメントMsに対抗して、傾斜角度が減る方向(図中時計方向)に傾斜する。この際、斜板7の傾斜角度が小さくなると、スプリング21の押圧力が増すため、斜板7は、MsとMpとが釣り合った角度で保持される。すなわち、ピストンポンプ1は、油圧が高くなると、吐出量を減少させて定馬力制御が行われる。
【0035】
次に、ピストンポンプ1におけるストッパ23の機能について詳細に説明する。図3(a)は、図1におけるストッパ23近傍の拡大図であり、図3(b)は、図3(a)の状態から、斜板7の傾斜角度が減少する方向に斜板7が揺動した状態であって、図2におけるストッパ23の近傍の拡大図である。
【0036】
ピストンポンプ1における、ストッパ23は、ハウジング3に形成されたシリンダ部29に収容される。シリンダ部29には、油圧回路27が接続されており、一定の油圧(図中P)が付与される。なお、油圧回路27を構成する流路や各種の弁は、ハウジング3の外部に配置されてもよく、ハウジング3内に収容されてもよい。
【0037】
ストッパ23は、油圧によってシリンダ部29から押し出される方向に力を受ける。このため、ストッパ23は、斜板7を一定の力で押圧することができる。すなわち、ストッパ23は油圧ピストンであり、ストッパ23を斜板7に対して所定の力で押圧する押圧手段として機能する。
【0038】
ここで、前述したように、スプリング21の押圧力による斜板7へのモーメントMsとピストン13の合力による斜板7への逆方向のモーメントMpとが釣り合う状態で、斜板7の傾斜角度が保持される。このため、スプリング21のばね力は、予め、ストッパ23による押圧力を加味して設定される。
【0039】
このように、ストッパ23による押圧力は、スプリング21による押圧力よりも十分に小さく、スプリング21によるモーメントMsがピストン13からの油圧によるモーメントMpよりも大きい場合には、図1に示すように、ストッパ23は、斜板7を介してスプリング21の押圧力により、シリンダ部29に対して押し込み限界まで押し込まれた状態となる。
【0040】
ここで、ストッパ23がシリンダ部29に完全に押し込まれた状態とは、それ以上は、ストッパ23が後方に移動できない状態である。このため、ストッパ23は、斜板7の最大傾斜角度を規制する機能を有する。
【0041】
一方、MsよりもMpが大きくなると、斜板7は傾斜角度が小さくなる方向に揺動する。この際、ストッパ23には後方から押圧力が付与されているため、斜板7に追従して接触状態が維持される。また、ストッパ23のストローク長は、斜板7の揺動可能範囲における変位量(スプリング21の最大変位量)以上に設定される。すなわち、ストッパ23は、ピストンポンプ1で設定される斜板7の揺動可能範囲(すなわち、図1の状態から、使用範囲におけるスプリング21が最も潰れた状態までの範囲)に対して、追従可能な可動範囲を有する。
【0042】
このため、図3(b)に示すように、斜板7の傾斜角度が設定範囲で最小となる状態においても、ストッパ23は、所定の押圧力で斜板7を押圧した状態が維持される。すなわち、ストッパ23は、常に一定の押圧力で斜板7に対して押し付けられて接触した状態が維持される。したがって、前述したように、斜板7に複数のピストン13の吸油と吐出との繰り返しの際に生じる脈動(振動)が生じても、ストッパ23はその振動に追従して、常にストッパ23が斜板7と接触した状態が維持される。このため、いわゆる叩き音の発生を抑制することができる。
【0043】
なお、ストッパ23の後方には、ストッパ23の本体よりも径の小さいピン31が設けられる。また、ハウジング3には、シリンダ部29の後方に孔33が設けられ、ピン31は孔33に収容される。また、シリンダ部29内において、ストッパ23の背部には、孔33よりも径の大きな皿ばね25が配置される。皿ばね25は、ストッパ23を後方から斜板7方向へ押圧可能である。なお、皿ばね25には孔が形成されており、ピン31は皿ばね25の孔に挿入される。また、前述したように、ストッパ23がシリンダ部29に完全に押し込まれた状態においては、皿ばね25が潰された状態となる。
【0044】
ストッパ23が油圧ピストンである場合において、図3(a)に示すように、最大傾斜角度で斜板7がスプリング21によって押圧されている状態から、斜板7が揺動を開始した直後において、ストッパ23の動作が安定しない場合がある。たとえば、ストッパ23が斜板7からの力でシリンダ部29に完全に押し込まれて止まっていた状態から、わずかに斜板7が揺動した瞬間に、ストッパ23とシリンダ部29との摩擦等の影響で、斜板7の揺動への追従動作が一瞬遅れる場合がある。
【0045】
これに対し、皿ばね25は、斜板7の移動開始直後におけるストッパ23の動作を補助する。このため、ストッパ23は、動作初期から安定して斜板7への押圧状態を維持することができる。
【0046】
なお、ピン31の長さは、ストッパ23のストローク長以上で設定される。このため、ストッパ23の可動範囲において、ピン31は孔33から抜けることがない。このため、皿ばね25がピン31から抜けることがなく、皿ばね25は、常にピン31の外周(ストッパ23の後方)に保持される。
【0047】
なお、図1等に示したピストンポンプ1では、斜板7を挟んでスプリング21とは逆側に対向するようにストッパ23を配置したが、ストッパ23の配置はこれには限られない。図4は、他の実施形態に係るピストンポンプ1aを示す図である。なお、ピストンポンプ1aの機構において、ピストンポンプ1と同様の機能を発揮する構成については、図1等と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0048】
ピストンポンプ1aは、ピストンポンプ1と略同様の構造であるが、ストッパ23の配置が異なる。ピストンポンプ1aでは、ストッパ23は、斜板7の支持部(揺動中心19)を挟んで、スプリング21とは逆側に配置される。すなわち、スプリング21の斜板7への押圧方向と、ストッパ23の斜板7への押圧方向が同一方向(図中左方向)となる。
【0049】
本実施形態においても、ストッパ23は、油圧ピストンであり、斜板7の揺動範囲に対して追従可能なストローク長を有する。すなわち、ストッパ23は、斜板7の揺動に追従して、常に斜板7と接触した状態が維持される。また、ストッパ23は、シリンダ部29への押し込み限界があるため、斜板7がそれ以上傾斜することを規制するストッパとしての機能も発揮することができる。
【0050】
以上説明したように、本実施形態によれば、斜板7の最大傾斜角度を規制するストッパ23が、斜板7の揺動に追従して移動可能である。また、ストッパ23のストローク長が、斜板7の揺動可能範囲をカバー可能であるため、ストッパ23の先端が斜板7から離れることがない。このため、斜板7とストッパ23とによるいわゆる叩き音の発生を抑制することができる。
【0051】
例えば、ストッパ23を可動として斜板7の揺動に追従可能であっても、ストローク長が十分でなければ、斜板7のいずれかの傾斜角度においてストッパ23と斜板7とが離れることになり、叩き音が生じるおそれがある。これに対し、本実施形態にかかるピストンポンプでは、ストッパ23のストローク長が斜板7の揺動可能範囲に対して十分カバーできるため、圧力によらず(斜板7の傾斜角度によらず)、常に叩き音の発生を抑制することができる。
【0052】
また、ストッパ23を油圧ピストンとすることで、常に一定の力でストッパ23を斜板7に押圧し続けることができる。
【0053】
また、ストッパ23の背部に皿ばね25を配置することで、ストッパ23の動作初期における移動を補助して、確実にストッパ23を斜板7に押圧させることができる。
【0054】
なお、ストッパ23の配置は、上述した実施形態には限られない。また、ストッパ23を後方から押圧する押圧手段は、油圧以外の他の方法であってもよく、特に限定されない。また、ストッパ23の後方に配置される必ずしも必須の物ではなく、また、皿ばね25に代えて他の弾性部材であってもよい。
【実施例
【0055】
従来の固定ストッパと本実施形態にかかる斜板追従型のストッパを有するピストンポンプを用いて、騒音を評価した。いずれも、50℃、2600min-1であり、カット点(斜板揺動開始圧力)-5MPaの圧力で評価した。
【0056】
この結果、従来のポンプでは叩き音が生じ、最大89.6dBであったのに対し、本実施形態にかかるポンプでは、叩き音は生じず、最大80.9dBと騒音が低下した。
【0057】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0058】
1、1a………ピストンポンプ
3………ハウジング
5………シャフト
7………斜板
9………シリンダバレル
11………シリンダ
13………ピストン
15………バルブプレート
17………シュー
19………揺動中心
21………スプリング
22………スプリングホルダ
23………ストッパ
25………皿ばね
27………油圧回路
29………シリンダ部
31………ピン
33………孔
100………ピストンポンプ
105………シャフト
107………斜板
109………シリンダバレル
111………シリンダ
113………ピストン
117………シュー
119………揺動中心
121………スプリング
122………スプリングホルダ
123………ストッパ
【要約】
【課題】 騒音が小さい可変容量制御ピストンポンプを提供する。
【解決手段】 スプリング21による斜板7の揺動方向の後方には、ストッパ23が配置される。ストッパ23によって、斜板7の最大傾斜角度を規制することができる。ピストンポンプ1における、ストッパ23は、ハウジング3に形成されたシリンダ部29に収容される。シリンダ部29には、油圧回路27が接続されており、一定の油圧が付与される。ストッパ23は、油圧によってシリンダ部29から押し出される方向に力を受ける。このため、ストッパ23は、常に一定の押圧力で斜板7に対して押し付けられて接触した状態が維持される。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7