(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】冷凍機
(51)【国際特許分類】
F25B 1/053 20060101AFI20241120BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
F25B1/053 D
F25B1/053 J
F25B1/00 321N
F25B1/00 101Z
(21)【出願番号】P 2024055205
(22)【出願日】2024-03-29
【審査請求日】2024-03-29
(31)【優先権主張番号】P 2023058725
(32)【優先日】2023-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 孝一
(72)【発明者】
【氏名】西村 公佑
(72)【発明者】
【氏名】岩田 有弘
(72)【発明者】
【氏名】福田 大悟
(72)【発明者】
【氏名】河内谷 佑季
【審査官】庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0226467(US,A1)
【文献】実開平03-019499(JP,U)
【文献】特開2006-194579(JP,A)
【文献】特開昭49-043104(JP,A)
【文献】特開2021-156220(JP,A)
【文献】特開2023-013514(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
F25B 1/053
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍サイクルを実行する冷凍機であって、
冷媒を圧縮する圧縮機と、
圧縮された前記冷媒を凝縮する凝縮器と、
凝縮された前記冷媒を膨張させる膨張弁と、
膨張した前記冷媒を蒸発させる蒸発器と、
前記蒸発器と前記圧縮機とを接続する吸入配管と、
前記圧縮機を駆動するモータと、
前記凝縮器から吐出された前記冷媒を対象部品に供給する第1配管と、
前記対象部品を冷却した前記冷媒を第1位置である前記吸入配管に供給する第2配管と、
前記対象部品を冷却した前記冷媒を前記第1位置とは異なる位置であり当該冷凍機に含まれる第2位置に供給する第3配管と、
前記第2配管に設けられた第1制御弁と、
前記第3配管に設けられた第2制御弁と、
前記第1制御弁及び前記第2制御弁を制御する制御部と、を備える冷凍機。
【請求項2】
前記圧縮機は、ターボ圧縮機である、請求項1に記載の冷凍機。
【請求項3】
前記対象部品は、前記モータ、又は、前記圧縮機の回転軸を支持する軸受、又は、前記モータのコントローラである、請求項1又は2に記載の冷凍機。
【請求項4】
前記第2位置は、前記蒸発器である、請求項1
又は2に記載の冷凍機。
【請求項5】
前記対象部品は、前記モータであり、
前記第1配管は、前記モータのケーシング内に連通する流路に接続されている、請求項1
又は2に記載の冷凍機。
【請求項6】
前記対象部品は、前記圧縮機の回転軸を支持する軸受であり、
前記軸受は、オイルレス軸受である、請求項1
又は2に記載の冷凍機。
【請求項7】
前記蒸発器は前記冷媒と空気との間で伝熱する空気熱交換器である、請求項1
又は2に記載の冷凍機。
【請求項8】
前記制御部は、
前記第1制御弁を開状態とし、前記第2制御弁を閉状態として、第1運転モードを実行可能であり、
前記第1制御弁を閉状態とし、前記第2制御弁を開状態として、第2運転モードを実行可能である、請求項
1又は2に記載の冷凍機。
【請求項9】
前記圧縮機においてサージングが発生する領域の境界を示すサージラインに基づいて、前記第3配管を流れる前記冷媒の流量を制御する制御部を備える請求項1
又は2に記載の冷凍機。
【請求項10】
前記制御部は、前記サージラインに関して前記冷媒の流量が大きい側の運転領域であり、前記サージラインに対して余裕代が考慮された運転許容限界ラインに基づいて、前記第3配管を流れる前記冷媒の流量を制御する請求項
9に記載の冷凍機。
【請求項11】
前記第2位置は、前記蒸発器であり、
前記制御部は、
現在の第1時点よりも所定時間が経過した第2時点における前記圧縮機の動作点を予測し、
予測した前記動作点が前記運転許容限界ラインよりも前記サージラインに近い領域、又は、前記サージングが発生する領域内に存在する場合に、前記第3配管を流れる前記冷媒の流量を増加させる請求項
10に記載の冷凍機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷凍機に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍機は、圧縮機、凝縮器、膨張弁、及び蒸発器を備える。圧縮機として、例えばターボ圧縮機が利用される場合がある。ターボ圧縮機は、回転軸を備え、回転軸の一端には、羽根車が設けられ、回転軸の他端は、モータ室に配置されている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に記載のターボ圧縮機では、昇圧前の低温低圧の気体が、モータ室に導入されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
圧縮機には各種の制約事項があり、この制約事項によって圧縮機を運転可能な領域が制限されている。制約事項が満たされない場合には、冷凍機の運転が不安定となる。本開示は、圧縮機を運転可能な領域の拡大を図ることが可能な冷凍機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る冷凍機は、冷凍サイクルを実行する冷凍機であって、冷媒を圧縮する圧縮機と、圧縮された冷媒を凝縮する凝縮器と、凝縮された前記冷媒を膨張させる膨張弁と、膨張した冷媒を蒸発させる蒸発器と、蒸発器と圧縮機とを接続する吸入配管と、圧縮機を駆動するモータと、凝縮器から吐出された冷媒を対象部品に供給する第1配管と、対象部品を冷却した冷媒を第1位置である吸入配管に供給する第2配管と、対象部品を冷却した冷媒を第1位置とは異なる位置であり当該冷凍機に含まれる第2位置に供給する第3配管と、を備える。
【0006】
本態様の冷凍機では、対象部品を冷却後の冷媒を、第1位置である吸入配管、または、第2位置に供給することができる。冷凍機は、対象部品を冷却後の冷媒を、第1位置及び第2位置の両方に供給することができる。冷凍機では、対象部品を冷却後の冷媒の供給先を選択することにより、圧縮機を運転可能な領域の拡大を図ることができる。
【0007】
本開示の一態様に係る冷凍機において、圧縮機は、ターボ圧縮機でもよい。本態様の冷凍機では、対象部品を冷却後の冷媒の供給先を選択することにより、運転状態を変えてサージングの発生を抑制できる。
【0008】
本開示の一態様に係る冷凍機において、対象部品は、モータ、又は、圧縮機の回転軸を支持する軸受、又は、モータのコントローラである。
【0009】
本態様の冷凍機では、モータを冷却することにより、モータにおける発熱を抑制することができる。本態様の冷凍機では、軸受を冷却することにより、軸受における焼きつきを抑制できる。本態様の冷凍機では、コントローラを冷却することにより、コントローラにおける不具合の発生を抑制することができる。
【0010】
本開示の一態様に係る冷凍機において、第2位置は、蒸発器でもよい。本態様の冷凍機では、対象部品を冷却後の冷媒を、蒸発器に戻すことにより、圧縮機に供給される冷媒ガスの過熱度を相対的に低くすることができる。
【0011】
本開示の一態様に係る冷凍機において、対象部品は、モータであり、第1配管は、モータのケーシング内に連通する流路に接続されていてもよい。本態様の冷凍機では、モータのケーシング内に冷媒を供給することにより、直接的にモータを冷却できる。本態様の冷凍機によれば、モータを冷却することにより、モータの温度に係る制約事項を緩和できる。モータの温度に係る制約事項としては、モータの巻線又は磁石の温度条件がある。巻線又は磁石を冷却することにより、圧縮機を運転可能な領域を拡大することができる。
【0012】
本開示の一態様に係る冷凍機において、対象部品は、圧縮機の回転軸を支持する軸受であり、軸受は、オイルレス軸受でもよい。本態様の冷凍機では、オイルレス軸受に供給されるガスとして冷媒を用いることができる。本態様の冷凍機によれば、オイルレス軸受を冷却することにより、軸受の温度に係る制限を緩和できる。これにより、圧縮機を運転可能な領域を拡大することができる。本態様の冷凍機では、オイルレス軸受を採用することにより、油などの粘性の高い流体を作動流体として用いる軸受を使用しなくてもよい。オイルレス軸受を使用した場合には、高速回転においても、軸受損失を小さくできる。そのため、軸受の回転数に係る制限を緩和することができ、圧縮機を運転可能な領域を拡大することができる。
【0013】
本開示の一態様に係る冷凍機において、蒸発器は冷媒と空気との間で伝熱する空気熱交換器でもよい。本態様の冷凍機では、冷媒と空気との間で熱交換することにより、空気を冷却できる。空気熱交換器は外気温度の影響を受けるため、水熱交換器よりも温度変化が大きい。そのため、空気熱交換器の下流の圧縮機における運転状態が変化しやすく、空気熱交換を備える冷凍機では、水熱交換器を備える冷凍機と比較して、要求される運転領域は広くなる。本態様の冷凍機では、運転可能な領域を拡大することができるので、運転状態が変化しやすい空気熱交換器を備える冷凍機において有効である。
【0014】
本開示の一態様に係る冷凍機は、第2配管に設けられた第1制御弁と、第3配管に設けられた第2制御弁と、第1制御弁及び第2制御弁を制御する制御部と、を備えていてもよい。本態様の冷凍機では、制御部が第1制御弁及び第2制御弁の開閉動作を制御することにより、対象部品を冷却後の冷媒の供給先を切り替えることができる。
【0015】
本開示の一態様に係る冷凍機において、制御部は、第1制御弁を開状態とし、第2制御弁を閉状態として、第1運転モードを実行可能であり、第1制御弁を閉状態とし、第2制御弁を開状態として、第2運転モードを実行可能である。
【0016】
本態様の冷凍機では、第1運転モードを選択することにより、対象部品を冷却後の冷媒を圧縮機の吸入配管に戻すことができる。これにより、圧縮機に供給される冷媒ガスの過熱度を相対的に高くできる。また、本態様の冷凍機では、第2運転モードを選択することにより、対象部品を冷却後の冷媒を第2位置に供給することができる。本態様の冷凍機によれば、第1運転モード又は第2運転モードを選択することにより、圧縮機に供給される冷媒ガスの過熱度を変えることができ、圧縮機を運転可能な領域の拡大を図ることができる。
【0017】
対象部品の冷却後の冷媒を圧縮機の吸入配管に戻す第1運転モードでは、冷媒の過熱度が増加することにより、圧縮機において必要な圧縮動力が増加する。そのため、所要動力が大きい動作点において、モータ出力に関する制約が発生する。このようなモータ出力に関する制約を回避するために、第1運転モードから第2運転モードへ切り替えることにより、圧縮機の運転を継続することができる。その結果、運転可能な領域の拡大を図ることができる。
【0018】
対象部品の冷却後の冷媒を蒸発器に戻す第2運転モードでは、冷凍能力が減少する。このような第2運転モードでは、冷凍能力を確保するために必要な吸入体積流量を増加させる必要がある。そのため、必要冷凍能力の大きい動作点においては、圧縮機の回転数制約が発生する。このような圧縮機の回転数制約を回避するために、第2運転モードから第1運転モードへ切り替えることにより、圧縮機の回転数を維持したまま冷凍能力を確保することができる。本態様では、運転状態に応じて、第1運転モードから第2運転モードへ切り替えたり、第2運転モードから第1運転モードへ切り替えたりすることができるので、運転可能な領域の拡大を図ることができる。
【0019】
本開示の一態様に係る冷凍機では、圧縮機においてサージングが発生する領域の境界を示すサージラインに基づいて、第3配管を流れる冷媒の流量を制御する制御部を備える。本態様の冷凍機では、サージラインに基づいて第3配管を流れる冷媒の流量を制御することにより、圧縮機におけるサージングの発生を抑制することができる。
【0020】
本開示の一態様に係る冷凍機において、制御部は、サージラインに関して冷媒の流量が大きい側の運転領域であり、サージラインに対して余裕代が考慮された運転許容限界ラインに基づいて、第3配管を流れる前記冷媒の流量を制御する。本態様の冷凍機では、サージラインに対して余裕代が考慮された運転許容限界ラインに基づいて第3配管を流れる冷媒の流量を制御することにより、圧縮機におけるサージングの発生を確実に抑制することができる。
【0021】
本開示の一態様に係る冷凍機において、第2位置は、蒸発器であり、制御部は、現在の第1時点よりも所定時間が経過した第2時点における圧縮機の動作点を予測し、予測した動作点が運転許容限界ラインよりもサージラインに近い領域、又は、サージングが発生する領域内に存在する場合に、第3配管を流れる冷媒の流量を増加させる。本態様の冷凍機では、現在よりも後の第2時点における圧縮機の動作点を予測して、サージングの発生を予測することができる。本態様の冷凍機では、サージングの発生のおそれが高い場合に、第3配管を流れる冷媒の流量を増加させることにより、サージングの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】一実施形態に係る冷凍機を示す概略図である。
【
図3】冷凍機の制御部を示す機能ブロック図である。
【
図4】冷凍機の冷凍サイクルにおけるモリエル線図である。
【
図6】圧縮機における体積流量と断熱効率との関係を示すグラフである。
【
図7】冷凍機における制御の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
添付図面を参照しながら、本発明の限定的でない実施例について説明する。なお、添付図面では同一又は対応する部材又は部品には同一又は対応する参照符号が付される。また、以下では同一又は対応する部材又は部品の重複する説明を省略する。また、図面では部材又は部品は必ずしも縮尺通りには描かれていない。従って、当業者は、以下の限定的でない実施例を参照して具体的な寸法を任意に決定できる。また、以下の実施例は発明を限定するものではなく例示するものである。また、実施例に記述される特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0024】
[冷凍機の概略]
図1に示される冷凍機100は、例えば、空気調和装置、冷凍機器、及び冷蔵機器に利用される。冷凍機100は、その他の機器に利用されてもよい。冷凍機100は冷凍サイクルを実行する。冷凍機100の冷凍サイクルは、蒸気圧縮式冷凍サイクルである。冷凍機100は、圧縮機10、凝縮器20、膨張弁30、及び蒸発器40を備える。
【0025】
冷凍機100の作動流体である冷媒は、特に限定されない。圧縮機10は、冷媒ガスを圧縮する。凝縮器20は、圧縮機10によって圧縮された冷媒ガスを凝縮する。膨張弁30は、凝縮器20によって凝縮された冷媒を膨張させる。蒸発器40は、膨張弁30によって膨張された冷媒を蒸発させる。蒸発器40で蒸発した冷媒ガスは、圧縮機10に吸入される。
【0026】
圧縮機10は、冷媒ガスを可逆断熱圧縮する。凝縮器20に供給された冷媒ガスは、定圧で放熱して液化する。液化した冷媒は、膨張弁30でエンタルピ一定で不可逆膨張して、冷媒の一部が蒸発する。冷媒は、蒸発器40において定圧で吸熱する。
【0027】
冷凍機100は、冷媒が流れる配管L11~L14を備える。配管L11は、蒸発器40と圧縮機10とを接続する吸入配管である。配管L12は、圧縮機10と凝縮器20とを接続する。配管L13は、凝縮器20と膨張弁30とを接続する。配管L14は、膨張弁30と蒸発器40と接続する。
【0028】
冷媒ガスは、配管L11を流れて、圧縮機10に吸入される。圧縮機10で圧縮された冷媒ガスは、配管L12を流れて、凝縮器20に供給される。凝縮器20で液化した冷媒液は、配管L13を流れて、膨張弁30に流入する。膨張弁30で膨張した冷媒は、配管L14を流れて、蒸発器40に供給される。蒸発器40で吸熱した冷媒ガスは、配管L11を流れて、圧縮機10に供給される。
【0029】
圧縮機10は、例えばターボ圧縮機である。圧縮機10は、ケーシング11、インペラ12、駆動軸13、軸受14、及びモータ50を備える。ケーシング11は、インペラ12、駆動軸13、軸受14、及びモータ50を収容する。
【0030】
ケーシング11は、インペラ12を収容する圧縮室11aと、モータ50を収容するモータ室11bと、を有する。
【0031】
インペラ12は、駆動軸13の一端に設けられている。駆動軸13の他端は、モータ室12bの内部に配置されている。駆動軸13は、モータ50の回転軸を含む。
【0032】
軸受14は、駆動軸13を回転可能に支持する。軸受14は、ケーシング11に固定されている。軸受14は、例えばラジアル軸受でもよい。圧縮機10は、複数の軸受14を備える。軸受14は、例えばオイルレス軸受である。軸受14は、すべり軸受でもよく、転がり軸受でもよい。
【0033】
モータ50は、圧縮機10の駆動源である。モータ50は、回転子及び固定子を有する。回転子は、駆動軸13に固定され、駆動軸13と共に回転する。固定子は、ケーシング11に固定され、回転子の周囲に配置されている。
【0034】
冷凍機100は、インバータ60を備える。インバータ60は、モータ50の回転数を制御する。インバータ60は、モータ50の運転周波数を制御するコントローラである。
【0035】
圧縮機10のインペラ12は、モータ50による回転駆動力を受けて回転する。インペラ12が回転することにより、冷媒ガスが圧縮される。
【0036】
圧縮機10はターボ圧縮機(遠心式圧縮機)に限定されず、容積式圧縮機でもよい。容積式圧縮機は、例えばロータリ式でもよく、スクロール式でもよく、往復式でもよく、スクリュー式でもよい。
【0037】
凝縮器20は、圧縮機10によって圧縮された高温高圧の冷媒蒸気を冷却する熱交換器である。凝縮器20は、例えば水又は空気と、冷媒とを熱交換することにより、冷媒を凝縮させる。凝縮器20である熱交換器は、例えば水冷式でもよく、空冷式でもよく、蒸発式でもよく、その他の形式でもよい。熱交換器は、シェルアンドチューブ形式でもよく、二重管形式でもよく、プレートフィン形式でもよく、その他の形式でもよい。
【0038】
膨張弁30は、凝縮器20から出た高圧の冷媒液を絞り膨張させる。膨張弁30を通過した冷媒は、低圧低温の状態となる。膨張弁30を通過した冷媒は、一部が蒸発した状態であり、飽和蒸気と飽和液が共存する湿り蒸気の状態である。
【0039】
蒸発器40は、膨張弁30を出て膨張した冷媒と、被冷却流体とを熱交換する熱交換器である。被冷却流体は、冷却対象である流体である。被冷却流体は、例えば空気又は水である。被冷却流体は、その他の流体でもよい。蒸発器40では、湿り蒸気の状態である冷媒が被冷却流体から熱を奪って蒸発する。蒸発器40は、例えば空気熱交換器でもよい。空気熱交換器は、冷媒と空気との間で伝熱する。
【0040】
蒸発器40は、例えば乾式でもよく、満液式でもよく、液強制循環式でもよい。蒸発器40は、例えばプレートフィンコイル形式でもよく、シェルアンドチューブ形式でもよい。
【0041】
[冷却機構]
次に、冷却機構200について説明する。冷凍機100は、凝縮器20から排出された冷媒を用いて対象部品を冷却する冷却機構200を備える。対象部品は、例えばモータ50である。対象部品は、軸受14でもよく、モータ50のコントローラであるインバータ60でもよい。対象部品は、その他の部品でもよい。冷却機構200は、複数の対象部品を冷却してもよい。冷却機構200は、モータ50、軸受14、及びインバータ60を冷却してもよい。冷却機構200は、例えば、ケーシング11を冷却することにより、ケーシング11に収容されたモータ50を冷却してもよい。冷却機構200によって冷却される対象部品は、圧縮機10のケーシング11でもよい。
【0042】
対象部品は、圧縮機10から離れた位置に配置されていてもよい。インバータ60は、圧縮機10に搭載されていてもよく、圧縮機10から離れた位置に配置されていてもよい。
【0043】
冷却機構200は、配管L21~L24、膨張弁V21、及び制御弁V23,V24を備える。配管L21は、凝縮器20とモータ室11bとを接続する。配管L21は、凝縮器20の出口に接続された配管L13と、モータ室11bとを接続する。配管L21は、凝縮器20を出た冷媒を、対象部品に供給する配管である。
【0044】
配管L21には、膨張弁V21が設けられている。膨張弁V21は、配管L21を流れる冷媒の流量及び圧力を調整できる。膨張弁V21を通過した冷媒は、減圧されて低温状態となっている。低温状態の冷媒は、配管L21を流れて、対象部品に供給される。配管L21は、例えば、ケーシング11のモータ室11bの内部に連通している。配管L21を流れた冷媒は、モータ室11bに供給されて、モータ50を冷却する。
【0045】
配管L22は、モータ室11bに接続されている。モータ50を冷却した後の冷媒は、配管L22を流れて、モータ室11bの外に排出される。配管L22の出口側は、分岐されて、配管L23及び配管L24に接続されている。
【0046】
配管L23は、配管L22と配管L11とを接続する。配管L24は、配管L22と蒸発器40とを接続する。配管L11は、第1位置である吸入配管である。蒸発器40は、第1位置とは異なる第2位置の一例である。第2位置は、冷凍機100に含まれる位置である。第2位置は、蒸発器40に限定されず、その他の位置でもよい。例えば、圧縮機10が多段圧縮機である場合に、第2位置は、後段の圧縮機構(インペラ)の入口でもよい。また、圧縮機10が多段圧縮機である場合に、第1位置は、後段の圧縮機構への吸入配管でもよい。冷凍機100において、第1位置は、複数個所あってもよい。
【0047】
配管L21は、凝縮器20から吐出された冷媒を対象部品に供給する第1配管の一例である。配管L23は、対象部品を冷却した冷媒を第1位置である吸入配管(配管L11)に供給する第2配管の一例である。配管L24は、対象部品を冷却した冷媒を第1位置とは異なる第2位置に供給する第3配管の一例である。
【0048】
配管L23には、制御弁V23が設けられ、配管L24には、制御弁V24が設けられている。制御弁V23は、第1制御弁の一例である。制御弁V24は、第2制御弁の一例である。冷却機構200では、制御弁V23及び制御弁V24の開閉動作を制御することにより、モータ50を冷却後の冷媒の供給先を選択することができる。
【0049】
冷凍機100では、制御弁V23を開状態とし、制御弁V24を閉状態として、第1運転モードを実行できる。第1運転モードでは、モータ50を冷却後の冷媒を吸入配管である配管L11に戻すことができる。
【0050】
冷凍機100では、制御弁V23を閉状態とし、制御弁V24を開状態として、第2運転モードを実行できる。第2運転モードでは、モータ50を冷却後の冷媒を蒸発器40に戻すことができる。配管L24の接続先は、蒸発器40でもよく、蒸発器40に接続された配管L14でもよい。冷却後の冷媒は、蒸発器40に直接供給されてもよく、配管L14を介して、間接的に蒸発器40に供給されてもよい。
【0051】
冷凍機100では、制御弁V23及び制御弁V24の開閉動作を制御することにより、冷却後の冷媒を配管L11のみに戻してもよく、蒸発器40のみに戻してもよく、配管L11及び蒸発器40の両方に戻してもよい。また、冷凍機100は、制御弁V23,V24に代えて、三方弁である制御弁を備えていてもよい。また、冷凍機100では、配管L23に制御弁V23が設けられ、配管L24に制御弁V24が設けられていなくてもよい。同様に、冷凍機100では、配管L24に制御弁V24が設けられ、配管L23に制御弁V23が設けられていなくてもよい。
【0052】
[サージング]
次にサージングについて説明する。
図5は、圧縮機の性能曲線を示すグラフである。
図5では、横軸に流量を示し、縦軸に断熱ヘッドを示す。
図6では、横軸に体積流量を示し、縦軸に断熱効率を示す。
図5では、性能曲線G1~G3が図示されている。性能曲線G1~G3は、異なる回転数における断熱ヘッドを示す。
【0053】
各種用途に用いられる軸流圧縮機又は遠心圧縮機等の圧縮機では、運転時にサージングが発生するおそれがある。例えば遠心圧縮機において、運転時に、流量を絞った状態で圧力を上昇させていくと、旋回失速又はサージングが発生する。一般的には、低流量になるにつれ、旋回失速が発生し、ついにはサージングが発生する。
【0054】
例えば遠心圧縮機の運転時に、ある流量を境にさらに流量が低下すると、遠心圧縮機(ターボ機械)の内部において周方向に逆流領域が発生する。このような逆流領域が発生することを旋回失速と呼ぶ。逆流領域が発生する現象は、周方向に変動する圧縮機内部の局所的な現象である。
【0055】
圧縮機の内部でサージングが発生すると、圧縮機につながる管路系全体にわたって、逆流や脈動による流速や圧力の大きな変動が生じる。これは管路系を含めた機器類に大きな負荷がかかるため、圧縮機の運転を継続できなくなる。
【0056】
例えばサージングの発生を予測するための運転検査を行って確認し、圧縮機の動作点がサージングが発生する領域に入らないように安全率を取ることが好ましい。安全率を考慮した動作点よりも高流量の領域で圧縮機を運転することにより、サージングの発生が抑制される。
【0057】
例えばインバータ等で圧縮機の回転数を可変させる可変駆動を行う運転では、回転数ごとにサージングが発生する流量が決まる。回転数ごとにサージングが発生する動作点を結ぶことで、体積流量と断熱ヘッドから規定されるサージライン(運転限界ライン)SL1が決まる。
【0058】
図5では、サージラインSL1、運転許容限界ラインSL2、及び旋回失速発生ラインSL3が図示されている。運転許容限界ラインSL2は、サージラインに関して冷媒の流量が大きい側の運転領域にある。運転許容限界ラインSL2は、サージラインSL1に対して余裕代SRが考慮されたラインである。
【0059】
図5において、サージラインSL1よりも左側の領域は、サージング発生領域である。運転許容限界ラインSL2よりも右側の領域は、運転可能領域である。
【0060】
[従来技術の課題]
従来技術の課題について説明する。例えば従来技術に係る空調機では、低流量(冷凍能力の低下)かつ、高ヘッド(高圧力差)に変化した場合に、遠心圧縮機の動作点がサージラインSL1を超えた領域となり、遠心圧縮機の運転ができなくなる。
【0061】
[制御部]
次に
図2を参照して、冷凍機100の制御部210について説明する。
図2は、冷凍機100の制御部210を示すブロック図である。
図2は、制御部210のハードウェア構成を示す。
図2に示されるように、制御部210は、各種センサ220、インバータ60、膨張弁30、膨張弁V21、及び制御弁V23,V24と電気的に接続されている。
【0062】
各種センサ220は、例えば、冷凍機100の外部の温度(外気温)を計測する温度センサ(外気温センサ)、冷媒の温度を計測する温度センサ、冷媒の圧力を計測する圧力センサ、冷媒の流量を計測する流量センサなどでもよい。各種センサ220は、その他の情報を取得するセンサでもよい。
【0063】
各種センサ220は、例えば、吸入圧力センサ221、吸入温度センサ222、吐出圧力センサ223、吐出温度センサ224、及び水温センサ225を含む。吸入圧力センサ221は、圧縮機10に吸入される冷媒ガスの圧力を検出する。吸入温度センサ222は、圧縮機10に吸入される冷媒ガスの温度を検出する。吐出圧力センサ223は、圧縮機10から吐出された冷媒ガスの圧力を検出する。吐出温度センサ224は、圧縮機10から吐出された冷媒ガスの温度を検出する。
【0064】
例えば蒸発器が水熱交換器である場合には、水温センサ225は、蒸発器40に流入する水の温度を検出する。水温センサ226は、蒸発器40から流出した水の温度を検出する。制御部210は、各種センサ220によって検出されたデータを入力する。制御部210は、各種センサ220によって取得したデータを用いて各種データを算出することができる。制御部210は、水温センサ225,226から取得したデータを用いて、圧縮機10に吸入される冷媒ガスの体積流量を算出できる。制御部210は、蒸発器40における伝熱量に基づいて、冷媒ガスの体積流量を算出できる。制御部210は、蒸発器40におけるエントロピーに基づいて、冷媒ガスの体積流量を算出できる。水熱交換器以外の場合などは、冷媒流量を計測する流量計によって冷媒ガスの体積流量を算出してもよい。
【0065】
制御部210は、CPU211、及び記憶部212を備える。CPU(Center Processing Unit)211は、冷凍機100における全体の処理を司る。CPU211は、インバータ60を介して、モータ50の回転数を制御できる。CPU211は、膨張弁30の開閉動作を制御できる。CPU211は、膨張弁V21の開閉動作を制御できる。CPU211は、制御弁V23,V24の開閉動作を制御できる。
【0066】
記憶部212は、ROM(Read Only Memory)213及びRAM(Random Access Memory)214を含む。ROM213は、CPU211に制御処理を実行させるための各種プログラムの他、冷凍機100における動作に必要な各種データ等が記憶されている。RAM214は、センサ220から取得したデータ等を一時的に記憶する。
【0067】
[機能ブロック]
次に
図3を参照して、制御部210における機能ブロックについて説明する。
図3は、冷凍機100の制御部210を示す機能ブロック図である。制御部210では、ハードウェアとソフトウェア制御部との組み合わせによって、冷凍機100の機能を実現する機能ブロックが構成される。
【0068】
冷凍機100において、実施形態の各機能は、一又は複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(digital signal processor)、FPGA(field programmable gate array)や従来の回路モジュール等のデバイスを含むものとする。
【0069】
制御部210のCPU211は、ROM213等の記憶部212に記憶されているプログラムを実行することで、
図3に示すモータ制御部231、膨張弁制御部232、及び弁制御部233の各機能を実現する。なお、制御部210と接続された外部機器及びセンサは、これらの各機能の一部を実行してもよい。また、制御部210における機能は、これらに限定されない。
【0070】
モータ制御部231は、インバータ60を介して、モータ50の回転数を制御できる。制御部210は、モータ50の回転数を制御することにより、圧縮機10のインペラ12の回転数を制御することができる。膨張弁制御部232は、膨張弁30を制御して、膨張弁30を通過後の冷媒の圧力を制御してもよい。
【0071】
弁制御部233は、膨張弁V21の開閉動作を制御できる。弁制御部233は、制御弁V23の開閉動作を制御できる。弁制御部233は、制御弁V24の開閉動作を制御できる。弁制御部233は、膨張弁V21の開閉動作を制御して、モータ50に供給される冷媒の圧力を調整してもよい。
【0072】
弁制御部233は、制御弁V23及び制御弁V24の開閉動作を制御することにより、冷却後の冷媒の供給先を切り替えることができる。冷凍機100では、冷却後の冷媒の供給先を配管L11とすることにより、第1運転モードを実行できる。冷凍機100では、冷却後の冷媒の供給先を蒸発器40とすることにより、第2運転モードを実行できる。
【0073】
上述したように、モータ制御部231、膨張弁制御部232、及び弁制御部233は、記憶部212に記憶されているプログラムにより、ソフトウェアで実現できる。これらのモータ制御部231、膨張弁制御部232、及び弁制御部233のうち全部又は一部を、IC(Integrated Circuit)等のハードウェアで実現してもよい。
【0074】
[Ph線図]
次に
図4を参照して、冷凍機100の冷凍サイクルにおけるモリエル線図について説明する。
図4では、横軸にエンタルピhを示し、縦軸に圧力Pを示す。線
図Ph1は、第1運転モードにおけるPh線図である。線
図Ph2は、第2運転モードにおけるPh線図である。
【0075】
「1→2」の状態変化は、圧縮機10による可逆断熱圧縮による変化であり、等エントロピー変化である。等エントロピー変化をした際のエンタルピ変化を断熱ヘッドと称呼する。「2→3」の状態変化は、凝縮器20における等圧変化であり、冷媒は凝縮、冷却される。「3→4」の状態変化は、膨張弁30による絞り膨張であり、等比エンタルピ変化である。「4→1」の状態変化は、蒸発器40における等圧変化であり、冷媒は蒸発、加熱される。また、実際の圧縮過程「1→2」は、可逆断熱圧縮からずれるが、ターボ圧縮機においては、同じ回転数、同じ体積流量の場合、圧縮機の動作点として同じ断熱ヘッド特性を示すことが過去の知見から得られている。そのため、本明細書においては、可逆断熱圧縮過程及び断熱ヘッドに着目して説明する。
【0076】
[第1運転モードにおけるPh線図]
線
図Ph1は、対象部品を冷却した後の冷媒を吸入ガスラインである配管L11に戻した場合であり、第1運転モードの場合である。第1運転モードでは、圧縮機10に吸入する冷媒ガスの過熱度が相対的に高くなる。配管L23から冷却後の冷媒が配管L11に流入することにより、圧縮機10から吐出される圧縮後の冷媒ガスの温度は、第2運転モードと比較して高くなる。
【0077】
また、第1運転モードの場合、圧縮機10による昇圧量ΔP1は、第2運転モードの場合の昇圧量ΔP2よりも小さい。なお、第1運転モードと、第2運転モードとの比較において、圧縮機10における回転数及び体積流量は同じである。同様に、従来技術と比較する場合も、圧縮機10における回転数及び体積流量は同じである。昇圧量ΔP1は、圧力P21と圧力P1との差分である。昇圧量ΔP2は、圧力P22と圧力P1との差分である。第1運転モードにおける圧縮機10の吐出後の圧力P21は、第2運転モードにおける圧縮機10の吐出後の圧力P22よりも低い。
【0078】
第1運転モードでは、冷凍機100における要求温度差ΔTが小さい場合に、断熱効率が低い動作点で運転させずに、断熱効率が高い点で冷凍機100の運転を継続することができる。これにより、冷凍機100における運転範囲を、従来と比較して広げることができる。冷凍機100におけるサージングの発生を抑制しつつ、運転範囲を拡大することができる。
【0079】
図5は、圧縮機の性能曲線を示すグラフである。
図5では、横軸に体積流量を示し、縦軸に断熱効率を示す。
図5では、性能曲線G1,G2が図示されている。性能曲線G1,G2は、異なる回転数における断熱ヘッドを示す。
図5では、動作点P21,P22が図示されている。
【0080】
また、
図5では、サージラインSL1が図示されている。サージラインSL1は、サージングが発生するラインを示す。体積流量がサージラインSL1以下になると、サージングが発生し、冷媒ガスの流れが不安定となる。
【0081】
動作点P21は、動作点P22と比較して、体積流量が多く、断熱ヘッドが低い動作点である。動作点P22は、動作点P21と比較して、体積流量が少なく、断熱ヘッドが高い。動作点P23は、動作点P21,P22と比較して、体積流量が少なく、断熱ヘッドが高い動作点である。動作点P23の体積流量は、サージラインSL以下である。動作点P23は、運転不可能な領域における仮想の動作点である。
【0082】
図6は、圧縮機における体積流量と断熱効率との関係を示すグラフである。
図6では、横軸に体積流量を示し、縦軸に断熱効率を示す。
図6では、グラフG3が図示されている。動作点P21における断熱効率は、動作点P22における断熱効率よりも低い。動作点P22における断熱効率は、動作点P21における断熱効率よりも高い。動作点P22における断熱効率は、圧縮機10の断熱効率のピークに近い。
【0083】
冷凍機100では、運転モードを切り替えることができ、動作点P21,P22を変えることができる。冷凍機100では、サージラインSL1から遠い方の動作点P21に切り替えることで、サージングの発生のおそれを低減することができる。また、冷凍機100では、運転モードを切り替えることにより、断熱効率の高い方の動作点P22、または、断熱効率の低い方の動作点P21を選択できる。
【0084】
[第2運転モードにおけるPh線図]
線
図Ph2は、冷却後の冷媒を蒸発器40に戻した場合であり、第2運転モードの場合である。第2運転モードでは、圧縮機10に吸入する冷媒ガスの過熱度が相対的に低くなる。第2運転モードにおいて圧縮機10に吸入する冷媒ガスの過熱度は、第1運転モードにおいて圧縮機10に吸入する冷媒ガスの過熱度よりも低い。
【0085】
また、第2運転モードの場合、圧縮機10による昇圧量ΔP2は、第1運転モードの場合の昇圧量ΔP1よりも大きい。そのため、第2運転モードでは、圧縮機10における駆動軸13の回転数制限により昇圧することができなかった圧力P22まで、昇圧することができる。圧縮機10における回転数制限は、例えば、インペラ12、駆動軸13、及びモータ50の回転子を含む回転体の強度による場合がある。また、圧縮機10における回転数制限は、例えば回転体の軸共振による場合がある。また、圧縮機10による回転数制限は、例えば駆動軸13を支持する軸受14の強度による場合がある。冷凍機100では、第2運転モードを実行することにより、同じ回転数及び同じ体積流量において、圧縮機10から吐出後の冷媒ガスの圧力を従来と比較して、高くすることができる。これにより、冷凍機100における運転範囲を、従来と比較して広げることができる。冷凍機100におけるサージングの発生を抑制しつつ、運転範囲を拡大することができる。
【0086】
第2運転モードの場合、冷凍機100における冷媒の循環体積流量が低く、サージングが発生する領域に突入するために運転できなかった領域まで、冷凍機100における運転範囲を広げることができる。
【0087】
また、第2運転モードでは、第1運転モードと比較して、蒸発器40における冷凍能力が低くなり、同じ要求温度差ΔTにおいて、蒸発器40における冷凍能力を調整することができる。例えば、冷凍機100における暖房運転においては、暖房能力に影響がなく、高い圧力を維持して、運転することができる。
【0088】
[第1運転モードと第2運転モードの比較]
第1運転モードにおける圧縮機10による断熱ヘッドΔh1は、第2運転モードにおける圧縮機10による断熱ヘッドΔh2と同じである。
【0089】
第1運転モードにおける等エントロピー線の傾きは、第2運転モードにおける等エントロピー線の傾きと異なる。第2運転モードにおける等エントロピー線の傾きは、第1運転モードにおける等エントロピー線の傾きと比較して大きい。第2運転モードにおいて、圧縮機10による圧縮後の冷媒ガスの圧力P22は、第1運転モードにおいて、圧縮機による圧縮後の冷媒ガスの圧力P21よりも高い。
【0090】
第1運転モードにおける圧縮機10への吸入時の状態「1」のエンタルピh11は、第2運転モードにおける圧縮機10への吸入時の状態「1」のエンタルピh12よりも高く、第1運転モードにおける吸入過熱度は、第2運転モードにおける吸入過熱度よりも高い(Δh3=h11-h12)。
【0091】
冷媒物性において、吸入過熱度が増加すると、等エントロピー線(1→2)の傾きが小さくなる。すなわち、圧縮機10において、同じ回転数、同じ体積流量の場合、断熱ヘッドΔh1,Δh2は、同じであるが、昇圧量ΔP1,ΔP2は異なる。第2運転モードにおける到達圧力P22は、第1運転モードにおける到達圧力P21よりも高い。換言すると、吸入過熱度が大きい場合には、吸入過熱度が小さい場合と比較して、圧縮機10による圧縮後の冷媒の到達圧力P21は低い(P21<P22)。
【0092】
[冷凍機100における制御の手順]
次に
図7を参照して冷凍機100における制御の手順について説明する。
図7は、冷凍機100における制御の手順を示すフローチャートである。
【0093】
まず、冷凍機100の制御部210は、各種データを入力する。制御部210は、各種センサ220から各種データを入力する。制御部210は、その他の入力部及びスイッチから各種信号を受信できる。制御部210は、外部の処理装置及び端末から各種データを入力してもよい。制御部210は、例えば、外気温に関するデータ、熱負荷に関するデータ、及び目標水温(室温)に関するデータを入力することができる。制御部210は、入力したデータから各種データを算出してもよい。
【0094】
制御部210は、終了信号を受信したか否かを判定する(ステップS12)。例えば、使用者は冷凍機100の運転を終了させる場合には、スイッチを操作する。スイッチは終了信号を出力する。制御部210は、終了信号を受信した場合(ステップS12;YES)には、ここでの処理を終了する。制御部210は、終了信号を受信しない場合(ステップS12;NO)には、ステップS12の処理を実行する。
【0095】
次に、制御部210は、次回の制御後の圧縮機10の運転点情報を確認する(ステップS13)。
【0096】
次に、制御部210は、動作点の断熱ヘッド及び体積流量を計算する(ステップS14)。制御部210は、入力した各種データを用いて、動作点の断熱ヘッド及び体積流量を計算できる。制御部210は、計算した断熱ヘッド及び体積流量を用いて、所定の時間が経過した後の将来の動作点を算出できる。制御部210は、例えば、
図5に示すマップを用いて、将来の動作点を算出してもよい。
【0097】
次に、制御部210は、将来の動作点が運転許容限界ラインSL2を超えるか否かを判定する(ステップS15)。制御部210は、例えば、
図5に示すマップを参照し、将来の動作点が運転許容限界ラインSL2の左側の領域に存在するか否かを判定する。制御部210は、将来の動作点が運転許容限界ラインSL2よりも左側の領域に存在すると予想した場合には、運転許容限界ラインSL2を超えると判定する。運転許容限界ラインSL2で示す状態よりも体積流量が少ない場合には、動作点は運転許容限界ラインSL2よりも左側に存在する。運転許容限界ラインSL2で示す状態よりも体積流量が多い場合には、動作点は、運転許容限界ラインSL2よりも右側に存在する。
【0098】
制御部210は、将来の動作点が運転許容限界ラインSL2を超える場合(ステップS15;YES)には、ステップS18の処理を実行する。制御部210は、将来の動作点が運転許容限界ラインSL2を超えない場合(ステップS15;NO)には、ステップS16の処理を実行する。
【0099】
ステップS16では、制御部210は制御を実行する。ここでいう「制御」は、例えば、圧縮機10の回転数の制御、及びバルブの駆動制御を含む。ここでいう「バルブ」は、例えば、膨張弁30、膨張弁V21、制御弁V23、及び制御弁V24を含む。制御部210は、その他の制御を実行してもよい。制御部210は、各種制御を実行し、冷凍機100の運転を実行する。
【0100】
次に、制御部210は、現在の制御後の冷凍機100の運転点情報を確認する(ステップS17)。制御部210は、各種データを取得して、現在の制御後の冷凍機100の運転点情報を確認する。制御部210は、運転点情報として、例えば、圧縮機10に吸入される冷媒ガスの吸入圧力及び吸入温度、圧縮機10から吐出される冷媒ガスの吐出圧力及び吐出温度、並びに、圧縮機10に吸入される冷媒ガスの体積流量を確認する。
【0101】
制御部210は、ステップS17の処理の実行後、ステップS13~S15を繰り返す。
【0102】
ステップS18では、制御部210は、吸入ガス戻し先を蒸発器40に切り替え可能であるか否かを判定する。吸入ガス戻し先とは、
図1に示す配管L22を流れる冷媒の戻し先である。吸入ガス戻し先は、例えば、蒸発器40又は配管L11である。
【0103】
制御部210は、現在の吸入ガスの戻し先が配管L11である場合(ステップS18;YES)に、吸入ガス戻し先を蒸発器40に切り替え可能であると判定し、ステップS19の処理を実行する。
【0104】
制御部210は、現在の吸入ガスの戻し先が蒸発器40である場合(ステップS18;NO)に、吸入ガス戻し先を蒸発器40に切り替え可能であると判定しないで、ステップS20を実行する。
【0105】
ステップS19では、吸入ガスの戻し先を配管L11から蒸発器40へ切り替える。冷凍機100において、配管L22を流れる冷媒は、蒸発器40に供給される。制御部210は、ステップS19の処理を実行した後、ステップS17、ステップS13、ステップS14、及びステップS15の処理を繰り返す。
【0106】
ステップS20では、制御部210は、エラー信号を発信し、ここでの処理を終了する。制御部210は、ステップS20の処理の実行後、冷凍機100の運転を停止させる処理を実行してもよい。
【0107】
[冷凍機100の作用効果]
本実施形態に係る冷凍機100は、対象部品であるモータ50を冷却した冷媒を配管(第1位置である吸入配管)L11に供給する配管L23と、モータ50を冷却した冷媒を蒸発器(第2位置)40に供給する配管L24とを備える。
【0108】
本態様の冷凍機100では、対象部品を冷却後の冷媒を、第1位置である配管L11、又は、第2位置である蒸発器40に供給することができる。冷凍機100は、対象部品を冷却後の冷媒を、配管L11及び蒸発器40の両方に供給することができる。冷凍機100では、対象部品を冷却後の冷媒の供給先を選択することにより、運転状態を変えてサージングの発生を抑制できる。冷凍機100では、対象部品を冷却後の冷媒の供給先を選択することができるので、運転可能な領域を広げることができる。
【0109】
冷凍機100によれば、圧縮機10の回転数を変更しない場合であっても、冷却後の冷媒の供給先を変更することにより、蒸発器40における冷凍能力を調節できる。また、冷凍機100によれば、冷却後の冷媒の供給先を変更することにより、運転可能な範囲を拡大することができ、サージングが発生するために、運転できなかった圧力範囲であっても、運転可能である。冷凍機100では、対象部品を冷却後の冷媒の供給先を選択することにより、運転状態を変えてサージングの発生を抑制できる。
【0110】
冷凍機100において、対象部品はモータ50である。本態様の冷凍機100では、モータ50を冷却することにより、モータ50における発熱を抑制して、モータ50における信頼性の向上を図ることができる。本態様の冷凍機100によれば、モータ50を冷却することにより、モータ50の温度に係る制約事項を緩和できる。モータ50の温度に係る制約事項としては、モータ50の巻線又は磁石の温度条件がある。冷凍機100では、モータ50の巻線及び磁石を冷却することができるので、圧縮機10を運転可能な領域を拡大することができる。
【0111】
冷凍機100において、対象部品はモータ50に限定されない。冷凍機100において、対象部品は、圧縮機10の駆動軸(回転軸)13を支持する軸受14でもよい。この構成の冷凍機100では、軸受14を冷却することにより、軸受14における焼きつきを抑制できる。本態様の冷凍機100によれば、軸受14の温度に係る制限を緩和できる。冷凍機100では、軸受14を冷却することにより、軸受14の温度上昇を抑制することができ、軸受14に関する制限を緩和できる。そのため、圧縮機10を運転可能な領域を拡大することができる。
【0112】
冷凍機100において、対象部品は、モータ50のコントローラであるインバータ60でもよい。この構成の冷凍機100では、インバータ60を冷却することにより、インバータ60における不具合の発生を抑制することができ、インバータ60の信頼性の向上を図ることができる。
【0113】
冷凍機100において、第2位置は、蒸発器40である。本態様の冷凍機100では、対象部品を冷却後の冷媒を、蒸発器40に戻すことにより、圧縮機10に供給される冷媒ガスの過熱度を相対的に低くすることができる。
【0114】
対象部品の冷却後の冷媒を蒸発器40に戻す第2運転モードでは、冷凍能力が減少する。このような第2運転モードでは、冷凍能力を確保するために必要な吸入体積流量を増加させる必要がある。そのため、必要冷凍能力の大きい動作点においては、圧縮機10の回転数制約が発生する。このような圧縮機10の回転数制約を回避するために、第2運転モードから第1運転モードへ切り替えることにより、圧縮機10の回転数を維持したまま冷凍能力を確保することができる。
【0115】
冷凍機100において、対象部品は、モータ50であり、配管L21は、モータ室11b内に連通する流路に接続されている。配管L21は、モータ室11b内に連通する流路を含んでもよい。モータ室11bに連通する流路は、ケーシング11を貫通する流路を含む。本態様の冷凍機100では、モータ室11bの内部に冷媒を供給することができ、ケーシング11の内部のモータ50の回転軸、回転子、及び固定子を直接的に冷却することができる。本態様の冷凍機100では、上述したように、モータ50の温度に係る制約事項を緩和することができるので、圧縮機10を運転可能な領域を拡大することができる。
【0116】
冷凍機100において、対象部品は、圧縮機10の駆動軸13を支持する軸受14でもよく、軸受14は、オイルレス軸受でもよい。本態様の冷凍機100では、オイルレス軸受に供給されるガスとして冷媒を用いることができる。これにより、オイルレス軸受を採用することにより、軸受14における耐摩耗性及び耐焼き付け性の向上を図ることができる。また、オイルレス軸受を採用することにより、軸受14におけるメンテナンスを軽減することができる。
【0117】
本態様の冷凍機100によれば、オイルレス軸受を冷却することにより、軸受14の温度に係る制限を緩和できる。これにより、圧縮機10を運転可能な領域を拡大することができる。本態様の冷凍機100では、オイルレス軸受を採用することにより、油などの粘性の高い流体を作動流体として用いる軸受を使用しなくてもよい。オイルレス軸受を使用した場合には、高速回転においても、軸受損失を小さくできる。そのため、軸受14の回転数に係る制限を緩和することができ、圧縮機10を運転可能な領域を拡大することができる。
【0118】
冷凍機100において、蒸発器40は冷媒と空気との間で伝熱する空気熱交換器である。本態様の冷凍機100では、冷媒と空気との間で熱交換することにより、空気を冷却できる。冷凍機100は、空気調和装置に適用することができ、例えば、住宅の室内の空気の温度調整を行うことができる。
【0119】
空気熱交換器は外気温度の影響を受けるため、水熱交換器よりも温度変化が大きい。そのため、空気熱交換器の下流の圧縮機10における運転状態が変化しやすく、空気熱交換を備える冷凍機100では、水熱交換器を備える冷凍機と比較して、要求される運転領域は広くなる。本態様の冷凍機100では、運転可能な領域を拡大することができるので、運転状態が変化しやすい空気熱交換器を備える冷凍機において有効である。
【0120】
冷凍機100は、配管L23に設けられた制御弁V23と、配管L24に設けられた制御弁V24と、制御弁V23及び制御弁V24を制御する制御部210と、を備える。本態様の冷凍機100では、制御部210が制御弁V23及び制御弁V24の開閉動作を制御することにより、対象部品を冷却後の冷媒の供給先を切り替えることができる。
【0121】
冷凍機100において、制御部210は、制御弁V23を開状態とし、制御弁V24を閉状態として、第1運転モードを実行可能であり、制御弁V23を閉状態とし、制御弁V24を開状態として、第2運転モードを実行可能である。
【0122】
本態様の冷凍機100では、第1運転モードを選択することにより、対象部品を冷却後の冷媒を圧縮機10の吸入配管である配管L11に戻すことができる。これにより、圧縮機10に供給される冷媒ガスの過熱度を相対的に高くできる。また、本態様の冷凍機100では、第2運転モードを選択することにより、対象部品を冷却後の冷媒を第2位置である蒸発器40に供給することができる。本態様の冷凍機100によれば、第1運転モード又は第2運転モードを選択することにより、圧縮機10に供給される冷媒ガスの過熱度を変えることができ、サージングの発生を抑制できる。冷凍機100では、運転の調整範囲の拡大を図ることができる。
【0123】
対象部品の冷却後の冷媒を圧縮機10の吸入配管である配管L11に戻す第1運転モードでは、冷媒の過熱度が増加することにより、圧縮機10において必要な圧縮動力が増加する。そのため、所要動力が大きい動作点において、モータ出力に関する制約が発生する。このようなモータ出力に関する制約を回避するために、第1運転モードから第2運転モードへ切り替えることにより、圧縮機10の運転を継続することができる。その結果、運転可能な領域の拡大を図ることができる。
【0124】
本態様の圧縮機10では、第2運転モードから第1運転モードへ切り替えることにより、圧縮機10の回転数制約を回避することができ、圧縮機10の回転数を維持したまま冷凍能力を確保することができる。冷凍機100によれば、運転状態に応じて、第1運転モードから第2運転モードへ切り替えたり、第2運転モードから第1運転モードへ切り替えたりすることができるので、運転可能な領域の拡大を図ることができる。
【0125】
実施形態に係る冷凍機100は、圧縮機10においてサージングが発生する領域の境界を示すサージラインSL1に基づいて、第3配管である配管L24を流れる冷媒の流量を制御する制御部210を備えていてもよい。本態様の冷凍機100では、サージラインSL1に基づいて配管L24を流れる冷媒の流量を制御することにより、圧縮機10におけるサージングの発生を抑制することができる。
【0126】
実施形態に係る冷凍機100において、制御部210は、サージラインSL1に関して冷媒の流量が大きい側の運転領域であり、サージラインSL1に対して余裕代SRが考慮された運転許容限界ラインSL2に基づいて、配管L24を流れる冷媒の流量を制御する。本態様の冷凍機100では、サージラインSL1に対して余裕代SRが考慮された運転許容限界ラインSL2に基づいて配管L24を流れる冷媒の流量を制御することにより、圧縮機10におけるサージングの発生を確実に抑制することができる。
【0127】
実施形態に係る冷凍機100において、第2位置は、蒸発器であり、制御部210は、現在の第1時点よりも所定時間が経過した第2時点における圧縮機10の動作点を予測し、予測した動作点が運転許容限界ラインSL2よりもサージラインSL1に近い領域、又は、サージングが発生する領域内に存在する場合に、配管L24を流れる冷媒の流量を増加させることができる。本態様の冷凍機100では、現在よりも後の第2時点における圧縮機10の動作点を予測して、サージングの発生を予測することができる。本態様の冷凍機では、サージングの発生のおそれが高い場合に、配管L24を流れる冷媒の流量を増加させることにより、サージングの発生を抑制することができる。
【0128】
本実施形態に係る冷凍機100では、圧縮機10の吸入側である配管L11に冷媒ガスを戻していた状態から、冷媒ガスの戻し先を蒸発器40に切り替えることができる。このような冷凍機100では、同じ回転数、同じ体積流量においても、圧縮機10による昇圧量を高くすることができる。また、冷凍機100では過熱度の低下により、等エントロピー線の傾きが急になり、同じ断熱ヘッドでも到達圧力を高くすることができる。
【0129】
また、このような冷凍機100では、冷媒ガスの戻し先を蒸発器40に切り替えることにより、冷凍能力が低下する。このような冷凍機100では、蒸発器40の内部のエンタルピ変化の中で、冷凍能力として使えない部分があるため、冷凍能力が低下する。したがって、冷凍機100では、圧縮機10の流量を低減しなくても、冷凍能力を低下させることができる。
【0130】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳説した。しかしながら、本発明は、上述した実施形態に制限されることはない。上述した実施形態は、本発明の範囲を逸脱することなしに、種々の変形、置換等が適用され得る。また、別々に説明された特徴は、技術的な矛盾が生じない限り、組み合わせが可能である。
【0131】
上記の実施形態において、圧縮機10は単段圧縮機でもよく、複数のインペラ12を備える多段圧縮機でもよい。例えば多段圧縮機において、冷却後の冷媒を後段のインペラ(圧縮機構)に供給してもよい。
【0132】
上記の実施形態において、第2位置である蒸発器40に、冷却後の冷媒を供給しているが、蒸発器40のどの位置に冷媒を供給してもよく、蒸発器40に接続された上流の配管L14に冷却後の冷媒を供給してもよい。また、第2位置は、複数の箇所でもよい。例えば、冷凍機100では、蒸発器40に対して複数の箇所に、冷却後の冷媒を供給してもよい。
【0133】
本発明の一態様は、以下のとおりでもよい。
【0134】
<1>
冷凍サイクルを実行する冷凍機であって、
冷媒を圧縮する圧縮機と、
圧縮された前記冷媒を凝縮する凝縮器と、
凝縮された前記冷媒を膨張させる膨張弁と、
膨張した前記冷媒を蒸発させる蒸発器と、
前記蒸発器と前記圧縮機とを接続する吸入配管と、
前記圧縮機を駆動するモータと、
前記凝縮器から吐出された前記冷媒を対象部品に供給する第1配管と、
前記対象部品を冷却した前記冷媒を第1位置である前記吸入配管に供給する第2配管と、
前記対象部品を冷却した前記冷媒を前記第1位置とは異なる位置であり当該冷凍機に含まれる第2位置に供給する第3配管と、を備える冷凍機。
【0135】
<2>
前記圧縮機は、ターボ圧縮機である、上記<1>に記載の冷凍機。
【0136】
<3>
前記対象部品は、前記モータ、又は、前記圧縮機の回転軸を支持する軸受、又は、前記モータのコントローラである、上記<1>又は<2>に記載の冷凍機。
【0137】
<4>
前記第2位置は、前記蒸発器である、上記<1>~<3>の何れか一つに記載の冷凍機。
【0138】
<5>
前記対象部品は、前記モータであり、
前記第1配管は、前記モータのケーシング内に連通する流路に接続されている、上記<1>~<4>の何れか一つに記載の冷凍機。
【0139】
<6>
前記対象部品は、前記圧縮機の回転軸を支持する軸受であり、
前記軸受は、オイルレス軸受である、上記<1>~<5>の何れか一つに記載の冷凍機。
【0140】
<7>
前記蒸発器は前記冷媒と空気との間で伝熱する空気熱交換器である、上記<1>~<6>の何れか一つに記載の冷凍機。
【0141】
<8>
前記第2配管に設けられた第1制御弁と、
前記第3配管に設けられた第2制御弁と、
前記第1制御弁及び前記第2制御弁を制御する制御部と、を備える上記<1>~<7>の何れか一つに記載の冷凍機。
【0142】
<9>
前記制御部は、
前記第1制御弁を開状態とし、前記第2制御弁を閉状態として、第1運転モードを実行可能であり、
前記第1制御弁を閉状態とし、前記第2制御弁を開状態として、第2運転モードを実行可能である、上記<8>に記載の冷凍機。
【0143】
<10>
前記圧縮機においてサージングが発生する領域の境界を示すサージラインに基づいて、前記第3配管を流れる前記冷媒の流量を制御する制御部を備える上記<1>~<9>の何れか一つに記載の冷凍機。
【0144】
<11>
前記制御部は、前記サージラインに関して前記冷媒の流量が大きい側の運転領域であり、前記サージラインに対して余裕代が考慮された運転許容限界ラインに基づいて、前記第3配管を流れる前記冷媒の流量を制御する上記<10>に記載の冷凍機。
【0145】
<12>
前記第2位置は、前記蒸発器であり、
前記制御部は、
現在の第1時点よりも所定時間が経過した第2時点における前記圧縮機の動作点を予測し、
予測した前記動作点が前記運転許容限界ラインよりも前記サージラインに近い領域、又は、前記サージングが発生する領域内に存在する場合に、前記第3配管を流れる前記冷媒の流量を増加させる上記<11>に記載の冷凍機。
【符号の説明】
【0146】
100 冷凍機
10 圧縮機
13 駆動軸(回転軸)
14 軸受(対象部品、オイルレス軸受)
20 凝縮器
30 膨張弁
40 蒸発器(第2位置、空気熱交換器)
50 モータ(対象部品)
60 インバータ(モータのコントローラ)
210 制御部
L11 配管(吸入配管、第1位置)
L21 配管(第1配管)
L23 配管(第2配管)
L24 配管(第3配管)
V23 制御弁(第1制御弁)
V24 制御弁(第2制御弁)