(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】車両用吸気装置
(51)【国際特許分類】
B60K 13/02 20060101AFI20241120BHJP
F02M 35/10 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
B60K13/02 C
F02M35/10 101M
F02M35/10 301V
(21)【出願番号】P 2020211254
(22)【出願日】2020-12-21
【審査請求日】2023-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】高木 良輔
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-200235(JP,A)
【文献】特開2020-117125(JP,A)
【文献】特開2011-74762(JP,A)
【文献】特開2015-140787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 13/02,
F02M 35/10,35/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の内燃機関に空気を送ることができるように構成される吸気ダクトと、
前記車両の前部に
設けられるエンジンルーム内のうち前端寄りかつ上端寄りに配置され、かつ前記車両の幅方向に延びるクロスメンバと
を備え、
前記吸気ダクトが、前記車両の前後方向にて前記クロスメンバと対向するように配置され、かつ前記クロスメンバに取り付けられている、車両用吸気装置であって、
前記クロスメンバが、前記車両の前方寄りに位置する前方壁と、前記車両の前後方向にて前記前方壁と対向し、かつ前記前方壁に対して前記車両の後方側に位置する後方壁とを有し、
前記前方壁の下端が、前記後方壁の下端よりも下方に位置しており、
前記吸気ダクトが、その内部に空気を吸入可能とするように開口する第1吸気口及び第2吸気口を有しており、
前記第1吸気口が、前記吸気ダクトを通過する空気の流れ方向における前記吸気ダクトの上流端部に形成され、かつ前記前方壁に対して前記車両の後方側に配置され、
前記第2吸気口が、前記第1吸気口よりも前記流れ方向の下流側かつ前記第1吸気口よりも上方かつ後方に形成され、かつ前記後方壁に対して前記車両の後方側に配置されている、車両用吸気装置。
【請求項2】
前記第1吸気口が前記車両の幅方向の一方に向かって開口しており、
前記吸気ダクトが、その上流端部から前記車両の幅方向の他方に延びた後に前記車両後方に向かって湾曲するように延びる第1吸気部分と、前記第1吸気部分の流れ方向の下流部から立ち上がる第2吸気部分とを有し、
前記第2吸気口が、前記車両の前方を向く前記第2吸気部分の前部に配置されている、請求項1に記載の車両用吸気装置。
【請求項3】
前記吸気ダクトが、前記第2吸気部分の流れ方向の下流部から、前記車両の幅方向にて前記第1吸気口と同じ側に延びる第3吸気部分を有し、
前記第3吸気部分が、前記車両の前方を向く前記第3吸気部分の前部から、前記クロスメンバに向かって突出する取付部を有し、
前記第3吸気部分の取付部が、前記クロスメンバに取り付けられており、
前記第3吸気部分の取付部の下端が、前記第2吸気口の下端よりも下方に位置している、請求項2に記載の車両用吸気装置。
【請求項4】
前記第3吸気部分が、前記車両の後方を向く前記第3吸気部分の後部にて、前記第3吸気部分から前記内燃機関に空気を送ることができるように開口する送出口を有し、
前記車両の前後方向で見て、前記送出口は、前記第2吸気口に対して前記車両の幅方向にて前記第1吸気口と同じ側にオフセットするように配置されている、請求項3に記載の車両用吸気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の内燃機関に送られる空気を吸入可能とする車両用吸気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両においては、エンジン等の内燃機関にて用いられる混合気等のために空気が必要とされる。そのため、車両は、その内燃機関にて用いられる空気を吸入可能とするように構成される吸気装置を有しており、典型的に、吸気装置は、車両前部の吸気口から取り込まれた空気を内燃機関に送る吸気ダクトを有する。
【0003】
しかしながら、車両の冠水時、浸水時等において、この吸気ダクトの吸気口から吸気ダクトの内部を通って内燃機関に水等の侵入物が侵入するおそれがある。この場合、侵入物によって内燃機関が故障するおそれがある。そのため、内燃機関への侵入物の侵入を防ぐことを可能とする種々の吸気装置が提案されている。
【0004】
このような吸気装置の一例としては、吸気ダクトが、車両前部に位置するコンパートメントの車両前後方向の前部を区画し、かつフロントグリルを囲むように形成されるフロントバンパカバーに対して車両正面視で重なり、かつ車両前方に向けて開口する空気吸込口(吸気口)と、この空気吸込口の上端よりも上方にて車両後方に延びながらパワーユニットと連通する空気流出路とを有しており、空気取込口が、フロントバンパカバーの車両前後方向の後面に沿って車両幅方向に延びるクロスメンバよりも下方に位置する、吸気装置が挙げられる。(例えば、特許文献1、特に、その
図4を参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記吸気装置の一例においては、特に、車両の冠水時、浸水時等において、フロントグリルからコンパートメント内に侵入した水等の侵入物が、吸気口を塞ぐと、この侵入物が内燃機関の負圧によって吸気ダクトを通って内燃機関に向かって吸い込まれるおそれがある。そのため、このような内燃機関への侵入物の侵入を確実に防ぐことが望まれる。
【0007】
また、上記吸気装置の一例においては、吸気口がクロスメンバよりも下方に位置するので、車両の冠水時、浸水時等において侵入物が吸気口に到達し易い。このような構成について、吸気口を車両上方に移動させると、クロスメンバも吸気口と一緒に車両上方に移動させることが必要となる。この場合、車両が大型化するという問題がある。そのため、内燃機関への侵入物の侵入を確実に防ぐために吸気ダクトを改良する場合、車両の大型化を防ぐことも肝要となる。
【0008】
このような実情を鑑みると、車両用吸気装置においては、水等の侵入物が吸気ダクトを通って内燃機関に侵入するのを確実に防ぐこと、車両の大型化を防ぐことが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
課題を解決するために、一態様に係る車両用吸気装置は、車両の内燃機関に空気を送ることができるように構成される吸気ダクトと、前記車両の前部に配置され、かつ前記車両の幅方向に延びるクロスメンバとを備え、前記吸気ダクトが、前記車両の前後方向にて前記クロスメンバと対向するように配置され、かつ前記クロスメンバに取り付けられている、車両用吸気装置であって、前記クロスメンバが、前記車両の前方寄りに位置する前方壁と、前記車両の前後方向にて前記前方壁と対向し、かつ前記前方壁に対して前記車両の後方側に位置する後方壁とを有し、前記前方壁の下端が、前記後方壁の下端よりも下方に位置しており、前記吸気ダクトが、その内部に空気を吸入可能とするように開口する第1吸気口及び第2吸気口を有しており、前記第1吸気口が、前記吸気ダクトを通過する空気の流れ方向における前記吸気ダクトの上流端部に形成され、かつ前記前方壁に対して前記車両の後方側に配置され、前記第2吸気口が、前記第1吸気口よりも前記流れ方向の下流側かつ前記第1吸気口よりも上方かつ後方に形成され、かつ前記後方壁に対して前記車両の後方側に配置されている。
【発明の効果】
【0010】
一態様に係る車両用吸気装置においては、水等の侵入物が吸気ダクトを通って内燃機関に侵入するのを確実に防ぐことができ、車両の大型化を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る吸気装置を含む車両の前端部を概略的に示す正面図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係る車両のエンジンルーム内に配置される吸気装置、クロスメンバ、エアクリーナ、エンジン、及びラジエータを概略的に示す平面図である。
【
図3】
図3は、一実施形態に係る吸気装置を含む車両の前部を
図1のX-X線に沿って切断した状態で概略的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、一実施形態に係る吸気装置の吸気ダクトの吸気領域及びクロスメンバを、
図2の片側矢印Yから見た状態で概略的に示す拡大図である。
【
図5】
図5は、一実施形態に係る吸気ダクトの吸気領域をクロスメンバに取り付けた状態で概略的に示す平面図である。
【
図6】
図6は、一実施形態に係る吸気ダクトの吸気領域をクロスメンバに取り付けた状態で概略的に示す底面図である。
【
図7】
図7は、一実施形態に係る吸気ダクトの吸気領域を概略的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
一実施形態に係る車両用吸気装置について、以下に説明する。本実施形態に係る吸気装置は、エンジン等の内燃機関を有する車両に適用される。この車両は自動車となっている。しかしながら、車両は、エンジンを有する自動車以外の車両とすることもできる。
【0013】
本明細書の説明に用いられる
図1~
図7においては、車両を基準とする方向を次のように示している。
図2~
図7においては、車両前方を片側矢印Fにより示し、かつ車両後方を片側矢印Bにより示す。車両前後方向は、2つの片側矢印F,Bにより示される。
【0014】
図1、
図2、及び
図5~
図7においては、車両左方を片側矢印Lにより示し、かつ車両右方を片側矢印Rにより示す。車両左方及び右方は、それぞれ、車両がその前方を向いた状態での左方及び右方とする。車両幅方向は、2つの片側矢印L,Rにより示される。
【0015】
図1、
図3、
図4、及び
図7においては、車両上方を片側矢印Uにより示し、かつ車両下方を片側矢印Dにより示す。車両上下方向は、2つの片側矢印U,Dにより示される。なお、以下においては、特に詳細を説明しない限り、前方、後方、前後方向、左方、右方、幅方向、上方、下方、及び上下方向は、車両を基準とした方向を指すものとする。
【0016】
「車両用吸気装置の概略」
図1~
図7を参照すると、一実施形態に係る車両用吸気装置1は、概略的には次のように構成される。
図1及び
図2を参照すると、車両用吸気装置(以下、必要に応じて、単に「吸気装置」という)1は、車両に搭載される。かかる車両は、内燃機関2の一種であるエンジン2を有する。
【0017】
吸気装置1は、このエンジン2に空気を送ることができるように構成される吸気ダクト10を有する。エンジン2においては、吸気ダクト10を通って送られる空気を混合気の生成等に用いる。なお、
図2~
図7においては、空気の流れを二点鎖線の片側矢印Kにより示す。
【0018】
図2~
図6を参照すると、吸気装置1は、車両の前部に配置されるクロスメンバ20を有する。クロスメンバ20は車両幅方向に延びる。吸気ダクト10は、前後方向にてクロスメンバ20と対向するように配置される。吸気ダクト10は、クロスメンバ20に取り付けられる。
【0019】
図3及び
図4に示すように、クロスメンバ20は、その前方寄りに位置する前方壁21を有する。クロスメンバ20は、前方壁21に対して後方側に位置する後方壁22を有する。かかる後方壁22は、前方壁21と前後方向に対向する。前方壁21の下端21aは、後方壁22の下端22aよりも下方に位置する。
【0020】
図2~
図7を参照すると、吸気ダクト10は、その内部に空気を吸入可能とするように開口する第1吸気口11及び第2吸気口12を有する。第1吸気口11は、吸気ダクト10を通過する空気の流れ方向における吸気ダクト10の上流端部10aに形成される。第1吸気口11は、クロスメンバ20の前方壁21に対して後方側に配置される。第2吸気口12は、第1吸気口11よりも流れ方向の下流側かつ第1吸気口11よりも上方かつ後方に形成される。第2吸気口12は、クロスメンバ20の後方壁22に対して後方側に配置される。
【0021】
さらに、一実施形態に係る車両用吸気装置1は、概略的には次のように構成することができる。
図4、
図6、及び
図7に示すように、第1吸気口11は車両の幅方向の一方に向かって開口する。
図3~
図7を参照すると、吸気ダクト10は、その上流端部10aから車両の幅方向の他方に延びた後に後方に向かって湾曲するように延びる第1吸気部分13を有する。吸気ダクト10は、第1吸気部分13の流れ方向の下流部13aから立ち上がる第2吸気部分14を有する。第2吸気口12は、車両の前方を向く第2吸気部分14の前部14aに配置される。
【0022】
ここで、
図3~
図7によれば、車両の幅方向の一方は右方となっている。この場合、車両の幅方向の他方は左方となる。しかしながら、車両の幅方向の一方を左方とし、かつ車両の幅方向の他方を右方とすることもできる。
【0023】
図3~
図7を参照すると、吸気ダクト10は、第2吸気部分14の流れ方向の下流部14bから、車両の幅方向にて第1吸気口11と同じ側に延びる第3吸気部分15を有する。第3吸気部分15は、前方を向く第3吸気部分15の前部15aから、クロスメンバ20に向かって突出する取付部15bを有する。第3吸気部分15の取付部15bは、クロスメンバ20に取り付けられている。第3吸気部分15の取付部15bの下端15cは、第2吸気口12の下端12aよりも下方に位置する。
【0024】
第3吸気部分15は、後方を向く第3吸気部分15の後部15dにて、第3吸気部分15からエンジン2に空気を送ることができるように開口する送出口15eを有する。前後方向で見て、この送出口15eは、第2吸気口12に対して車両の幅方向にて第1吸気口11と同じ側にオフセットするように配置されている。
【0025】
「吸気装置及び車両の詳細」
図1~
図3を参照すると、本実施形態に係る吸気装置1、及びこれを適用する車両は、詳細には次のように構成することができる。
図2に示すように、車両は、吸気装置1からの空気を浄化可能とするように構成されるエアクリーナ3を有する。このエアクリーナ3によって浄化された空気が、エンジン2に送られる。
【0026】
車両の前部にはエンジンルーム4が設けられる。吸気装置1、エンジン2、及びエアクリーナ3は、エンジンルーム4内に配置される。さらに、エンジン2及びエアクリーナ3は、エンジンルーム4の後方寄りに配置される。吸気装置1及びエアクリーナ3は、エンジン2に対して上方に配置される。吸気装置1は、エアクリーナ3に対して前方に配置される。
【0027】
図1及び
図3を参照すると、車両は、その前端部に位置するフロントグリル5を有する。フロントグリル5はまた、エンジンルーム4の前端に位置する。フロントグリル5は、空気を車両前方の外部からエンジンルーム4内に取り入れ可能とするようにフロントグリル5を貫通する複数の開口孔5aを有する。
【0028】
車両は、その前端部に位置するフロントパネル6を有する。フロントパネル6は、フロントパネル6は、前後方向にて吸気装置1及びフロントグリル5間に位置することができる。フロントパネル6は、フロントグリル5の後方に位置する傾斜壁6aを有する。傾斜壁6aは、後方から前方に向かうに従って上方に持ち上がるように傾斜する。傾斜壁6aは、フロントグリル5を通ってエンジンルーム4内に入った空気を吸気ダクト10の第1吸気口11に導くように形成される。
図2に示すように、車両は、エンジンルーム4の前端に位置するラジエータ7を有する。
図1に示すように、車両は、エンジンルーム4を上方から覆うエンジンフード8を有する。
【0029】
「吸気ダクトの詳細」
図2~
図7を参照すると、吸気ダクト10は、詳細には次のように構成することができる。吸気ダクト10は樹脂を用いて作製することができる。さらに、吸気ダクト10は、樹脂を用いて作製された複数の部品を組み立てた組立体とすることができる。これら複数の部品は、樹脂射出成型品とすることができる。しかしながら、吸気ダクトに用いられる材料は、樹脂に限定されない。
【0030】
図2に示すように、吸気ダクト10は、第3吸気部分15の送出口15eとエアクリーナ3とを連結する第4吸気部分16を有する。吸気ダクト10においては、空気の流れ方向の上流から同下流に向かって、第1吸気部分13、第2吸気部分14、第3吸気部分15、第4吸気部分16が、この順番に並んでいる。第1~第3吸気部分13~15は、吸気ダクト10の流れ方向の吸気側領域10bに配置される。
【0031】
図5~
図7に示すように、第1吸気口11は、第3吸気部分15の取付部15bと上下方向に対向し、かつ取付部15bの下方に位置する。
図3に示すように、第1吸気口11の下端11aは、クロスメンバ20の前方壁21の下端21aよりも下方に位置する。第1吸気口11の下端11aは、吸気ダクト10中の最も低い位置に配置することができる。第1吸気口11の下端11aは、フロントグリル5の下端5bよりも上方に位置する。第1吸気口11の上端11bは、クロスメンバ20の前方壁21の下端21aよりも上方に位置する。
【0032】
第1吸気口11は、後方壁22及び後述する後方フランジ23と上下方向に対向し、かつ後方壁22及び後方フランジ23の下方に位置する。第1吸気口11及びクロスメンバ20の前方壁21間における前後方向の間隔は、第1吸気口11並びにクロスメンバ20の後方壁22及び後方フランジ23間における上下方向の間隔よりも大きくなっている。
【0033】
図7に示すように、第2吸気口12は、前方に向かって開口している。
図3、
図4、及び
図7を参照すると、第2吸気口12の下端12aは、クロスメンバ20の後方壁22の下端22aよりも上方に位置する。第2吸気口12の上端12bは、クロスメンバ20の後方壁22の下端22aよりも下方に位置する。第2吸気口12の開口面積は、第1吸気口11の開口面積よりも小さくなっている。車両の通常時において、第1吸気口11から吸気ダクト10に取り込まれる空気の量は、第2吸気口12から吸気ダクト10に取り込まれる空気の量よりも多くなっている。
【0034】
図7に示すように、第1吸気部分13は、水平方向に沿って配置される。第1吸気部分13の下流部13aは前後方向に延びる。第1吸気部分13の流れ方向の上流部13bは車両幅方向に延びる。
【0035】
第1吸気部分13においては、下流部13aの横断面が上流部13bの横断面よりも小さくなっている。第1吸気部分13においては、下流部13aの前後方向の長さが上流部13bの車両幅方向の長さよりも長くなっている。第1吸気部分13の上流部13b及び下流部13a間の境界に沿って、吸気ダクト10の外表面から突出する第1リブ17が形成されている。
【0036】
第2吸気部分14の流れ方向の上流部14cは、第1吸気部分13の下流部13aから後方かつ上方に向かって湾曲するように延びる。第2吸気部分14の下流部14bは、第2吸気部分14の上流部14cから上方かつ車両幅方向の一方に向かって湾曲するように延びる。第2吸気口12は、第2吸気部分14の下流部14bに配置される。空気の流れに沿った第2吸気部分14全体の長さは、空気の流れに沿った第1吸気部分13全体の長さよりも短くなっている。
【0037】
第3吸気部分15は、第2吸気部分14の下流部14bから車両幅方向の一方かつ後方に向かって湾曲するように延びる。第3吸気部分15の前部15aは、第2吸気部分14の下流部14bと車両幅方向に連通する。第3吸気部分15は、前方から後方に向かうに従って上方に持ち上がるように傾斜している。第3吸気部分15は、水平方向に対して傾斜している。
【0038】
第2吸気部分14の下流部14b及び第3吸気部分15の前部15a間の境界に沿って、吸気ダクト10の外表面から突出する第2リブ18が形成されている。
図3~
図7を参照すると、第3吸気部分15の取付部15bは、クロスメンバ20の後方フランジ23の上方に位置する。第3吸気部分15の取付部15bの下面は、クロスメンバ20の後方フランジ23の上面に当接する。第3吸気部分15の取付部15bの下面は、水平方向に沿って延びる。
【0039】
第3吸気部分15の取付部15bは、クロスメンバ20の後方フランジ23に上下方向に当接し、かつ接合手段によって後方フランジ23に取り付けられる。接合手段は、ボルト及びナット等の締結手段とすることができる。しかしながら、接合手段は、締結手段以外の手段とすることもできる。
【0040】
「クロスメンバの詳細」
図2~
図6を参照すると、クロスメンバ20は、詳細には次のように構成することができる。クロスメンバ20は、金属を用いて作製される。クロスメンバ20は、金属製の板金をプレス成形することによって作製されたプレス成形品とすることができる。しかしながら、クロスメンバに用いられる材料は、金属に限定されない。
【0041】
特に明確に図示はしないが、クロスメンバ20は、エンジンフード8のロック機構を有する。クロスメンバ20には、ラジエータ7の上部が取り付けられる。
図2及び
図3を参照すると、クロスメンバ20は、エンジンルーム4の前端寄りかつ上端寄りに位置する。このようなクロスメンバ20は、エンジンルーム4内のアッパークロスメンバ20とすることができる。
【0042】
クロスメンバ20の前方壁21の下端21aは、フロントグリル5の上端5cよりも下方に位置する。クロスメンバ20の前方壁21の上端21bは、フロントグリル5の上端5cよりも下方に位置する。クロスメンバ20は、その後方壁22の下端22aから後方に突出する後方フランジ23を有する。クロスメンバ20の横断面は、略ハット形状に形成することができる。
【0043】
「吸気装置及びその周辺の空気の流れ」
図2及び
図3を参照すると、吸気装置1及びその周辺で空気が次のように流れることができる。特に、車両の走行中において、車両前方の外部からフロントグリル5の開口孔5aを通ってエンジンルーム4内に空気が流入する。
【0044】
フロントグリル5の開口孔5aを通った空気は、クロスメンバ20の前方壁21の下方を通って吸気ダクト10の第1吸気口11に到達する。また、フロントグリル5の開口孔5aを通った空気は、クロスメンバ20の前方壁21の下方を通った後に前方壁21の後方に周って第2吸気口12に到達することができる。第1吸気口11に入った空気は、第1吸気部分13を通って第2吸気部分14に到達したときに、第2吸気口12に入った空気と合流する。
【0045】
このように合流した第2吸気部分14の空気は、第3吸気部分15から第4吸気部分16に流れて、その後、エアクリーナ3に到達する。さらに、エアクリーナ3に到達した空気は、エアクリーナ3によって浄化され、その後、エンジン2に送られる。
【0046】
以上、本実施形態に係る車両用吸気装置1は、車両の内燃機関2に空気を送ることができるように構成される吸気ダクト10と、前記車両の前部に配置され、かつ前記車両の幅方向に延びるクロスメンバ20とを備え、前記吸気ダクト10が、前記車両の前後方向にて前記クロスメンバ20と対向するように配置され、かつ前記クロスメンバ20に取り付けられている、車両用吸気装置1であって、前記クロスメンバ20が、前記車両の前方寄りに位置する前方壁21と、前記車両の前後方向にて前記前方壁21と対向し、かつ前記前方壁21に対して前記車両の後方側に位置する後方壁22とを有し、前記前方壁21の下端21aが、前記後方壁22の下端22aよりも下方に位置しており、前記吸気ダクト10が、その内部に空気を吸入可能とするように開口する第1吸気口11及び第2吸気口12を有しており、前記第1吸気口11が、前記吸気ダクト10を通過する空気の流れ方向における前記吸気ダクト10の上流端部10aに形成され、かつ前記前方壁21に対して前記車両の後方側に配置され、前記第2吸気口12が、前記第1吸気口11よりも前記流れ方向の下流側かつ前記第1吸気口11よりも上方かつ後方に形成され、かつ前記後方壁22に対して前記車両の後方側に配置されている。
【0047】
このような吸気装置1においては、車両の冠水時、浸水時等において、吸気ダクト10の上流端部10aの第1吸気口11が、水等の侵入物によって塞がれた場合であっても、第1吸気口11よりも上方かつ後方に形成される第2吸気口12から吸気ダクト10の内部に空気を取り入れることができる。また、エンジン2等の内燃機関2の負圧によって、第1吸気口11を塞いだ侵入物が、吸気ダクト10の内部に入り込んだとしても、この侵入物を第2吸気口12から吸気ダクト10の外部に排出することができる。
【0048】
さらに、クロスメンバ20の前方壁21の下端21aがクロスメンバ20の後方壁22の下端22aよりも下方に位置していて、第1吸気口11が、前方壁21に対して車両の後方側に配置され、かつ第2吸気口12が、後方壁22に対して車両の後方側に配置されるので、第1及び第2吸気口11,12を、前後方向にてクロスメンバ20とオーバーラップさせながら、水等の侵入物の侵入を防ぐようにより上方に移動させることができる。よって、本実施形態に係る吸気装置1においては、侵入物が吸気ダクト10を通って内燃機関に侵入するのを確実に防ぐことができ、車両の大型化を防ぐことができる。
【0049】
本実施形態に係る吸気装置1においては、前記第1吸気口11が前記車両の幅方向の一方に向かって開口しており、前記吸気ダクト10が、その上流端部10aから前記車両の幅方向の他方に延びた後に前記車両後方に向かって湾曲するように延びる第1吸気部分13と、前記第1吸気部分13の流れ方向の下流部13aから立ち上がる第2吸気部分14とを有し、前記第2吸気口12が、前記車両の前方を向く前記第2吸気部分14の前部14aに配置されている。
【0050】
ここで、車両の走行中に車両の周囲で飛散する水等の侵入物は、車両の前後方向に移動する一方で車両の幅方向に移動し難い一方で、車両の走行中に車両の周囲で流れる空気、すなわち、走行風は、車両の前後方向に移動する一方で車両の幅方向に移動し易い。これに対して、本実施形態に係る吸気装置1においては、吸気ダクト10の第1吸気口11が、車両の幅方向に開口するので、空気が第1吸気口11から吸気ダクト10の内部に入るのを可能としながら、侵入物が第1吸気口11から吸気ダクト10の内部に侵入するのを防ぐことができる。
【0051】
また、吸気ダクト10の第1吸気部分13は、クロスメンバ20と一緒になって、車両の前方に開口する吸気ダクト10の第2吸気口12に向かって飛散する水等の侵入物を効率的に遮蔽することができる。その結果、第2吸気口12から吸気ダクト10を通って内燃機関2に向かう侵入物の侵入を効率的に防ぐことができる。さらに、第1及び第2吸気部分13,14がクロスメンバ20を避けながらコンパクトに形成できる。そのため、吸気ダクト10の大型化を防ぐことができ、かつ車両の大型化を防ぐことができる。
【0052】
本実施形態に係る吸気装置1においては、前記吸気ダクト10が、前記第2吸気部分14の流れ方向の下流部14bから、前記車両の幅方向にて前記第1吸気口11と同じ側に延びる第3吸気部分15を有し、前記第3吸気部分15が、前記車両の前方を向く前記第3吸気部分15の前部15aから、前記クロスメンバ20に向かって突出する取付部15bを有し、前記第3吸気部分15の取付部15bが、前記クロスメンバ20に取り付けられており、前記第3吸気部分15の取付部15bの下端15cが、前記第2吸気口12の下端12aよりも下方に位置している。
【0053】
このような吸気装置1においては、第3吸気部分15が、第2吸気部分14の流れ方向の下流部14bから、車両の幅方向にて第1吸気部分13の第1吸気口11と同じ側に延び、かつこのような第3吸気部分15の取付部15bがクロスメンバ20に取り付けられるので、クロスメンバ20の周辺にて吸気ダクト10をコンパクトに配置できる。そのため、吸気ダクト10の大型化を防ぐことができ、かつ車両の大型化を防ぐことができる。
【0054】
また、第3吸気部分15の下端15cが第2吸気口12の下端12aよりも下方に位置するので、第3吸気部分15の取付部15bが、車両の前方に開口する吸気ダクト10の第2吸気口12に向かって飛散する水等の侵入物を効率的に遮蔽することができる。その結果、第2吸気口12から吸気ダクト10を通って内燃機関2に向かう侵入物の侵入を効率的に防ぐことができる。
【0055】
本実施形態に係る吸気装置1においては、前記第3吸気部分15が、前記車両の後方を向く前記第3吸気部分15の後部15dにて、前記第3吸気部分15から前記内燃機関2に空気を送ることができるように開口する送出口15eを有し、前記車両の前後方向で見て、前記送出口15eは、前記第2吸気口12に対して前記車両の幅方向にて前記第1吸気口11と同じ側にオフセットするように配置されている。
【0056】
このような吸気装置1においては、水等の侵入物が第2吸気口12から吸気ダクト10の内部に侵入したとしても、この侵入物は送出口15eを通って内燃機関2に送られ難くなっている。そのため、内燃機関2に向かう水の侵入を効率的に防ぐことができる。
【0057】
ここまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明は、その技術的思想に基づいて変形及び変更可能である。
【符号の説明】
【0058】
1…車両用吸気装置、2…内燃機関、エンジン
10…吸気ダクト、10a…上流端部、11…第1吸気口、12…第2吸気口、12a…下端、13…第1吸気部分、13a…下流部、14…第2吸気部分、14a…前部、14b…下流部、15…第3吸気部分、15a…前部、15b…取付部、15c…下端、15d…後部、15e…送出口
20…クロスメンバ、21…前方壁、21a…下端、22…後方壁、22a…下端