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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】コーティング剤
(51)【国際特許分類】
   C09D 1/00 20060101AFI20241120BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20241120BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20241120BHJP
   C09D 105/08 20060101ALI20241120BHJP
   C09D 101/00 20060101ALI20241120BHJP
   B05D 3/10 20060101ALI20241120BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20241120BHJP
   B05D 5/00 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
C09D1/00
C09D7/61
C09D7/65
C09D105/08
C09D101/00
B05D3/10 F
B05D7/24 303B
B05D7/24 303G
B05D7/24 302Y
B05D5/00 Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020559990
(86)(22)【出願日】2019-12-04
(86)【国際出願番号】 JP2019047527
(87)【国際公開番号】W WO2020116541
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-11-08
(31)【優先権主張番号】P 2018227723
(32)【優先日】2018-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(73)【特許権者】
【識別番号】516018810
【氏名又は名称】NT&I株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001782
【氏名又は名称】弁理士法人ライトハウス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 泰
(72)【発明者】
【氏名】細尾 昇平
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-119073(JP,A)
【文献】特開2002-080829(JP,A)
【文献】特表2012-532214(JP,A)
【文献】特開平10-101374(JP,A)
【文献】特開2002-088275(JP,A)
【文献】特許第7369957(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水不溶性の金属化合物の微粒子と、無機ポリマーと、透明ナノファイバーとが溶媒に分散し、
透明ナノファイバーの含有量が、全固形分に対して0.1~10質量%である、コーティング剤。
【請求項2】
透明ナノファイバーが、多糖類からなるナノファイバーである、請求項1に記載のコーティング剤。
【請求項3】
多糖類からなるナノファイバーが、セルロースナノファイバー、又は、キチン若しくはキトサンの構造単位を有するナノファイバーである、請求項2に記載のコーティング剤。
【請求項4】
金属微粒子の粒子径は1~100nmであり、透明ナノファイバーの繊維径は2~100nmである、請求項1~のいずれかに記載のコーティング剤。
【請求項5】
金属化合物が二酸化ケイ素である、請求項1~のいずれかに記載のコーティング剤。
【請求項6】
無機ポリマーがシリコンアルコキシドを縮合した構造を有する、請求項1~のいずれかに記載のコーティング剤。
【請求項7】
コーティング剤の固形分濃度が0.1~30質量%である、請求項1~のいずれかに記載のコーティング剤。
【請求項8】
金属微粒子と無機ポリマーとの質量の比が20/80~90/10である、請求項1~のいずれかに記載のコーティング剤。
【請求項9】
請求項1~のいずれかに記載のコーティング剤を塗布して形成されたコーティング膜を有する物品。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載のコーティング剤を塗布する塗布方法であって、
被塗布面を、洗浄液を利用して洗浄する第1洗浄工程と、
被塗布面に該洗浄液が残存している状態で、前記コーティング剤を塗布する塗布工程と
を有する塗布方法。
【請求項11】
塗布したコーティング剤の全てが乾燥する前に、塗布面を、洗浄液を利用して洗浄する第2洗浄工程と
を有する、請求項10に記載の塗布方法。
【請求項12】
被塗布面が、金属酸化物および珪酸化合物である、請求項10又は11に記載の塗布方法。
【請求項13】
被塗布面がガラスであり、
第1洗浄工程にて、ガラス用研磨剤を利用して洗浄する、請求項12に記載の塗布方法。
【請求項14】
被塗布面がセラミックスである、請求項12に記載の塗布方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超親水性を示すコーティング膜を形成することができるコーティング剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、防曇性や防汚性を向上させることを目的として、超親水性のコーティング材料の開発が進められている。親水性を発揮する材料としては、例えば、水酸基を含有する有機ポリマーを用いた有機系材料(例えば、特許文献1)、光触媒を利用する無機系材料(例えば、特許文献2)、シリカを利用する無機系シリカ材料(例えば、特許文献3、4)などが知られている。しかし、有機系材料ではUV硬化又は加熱硬化によりコーティングを形成する必要があり、現場施工が困難な場合がある。また、酸化チタンからなる親水性膜が親水性を発揮するためには、紫外線を照射することが必要となる。そのため、屋内などの紫外線が十分に照射されない環境で用いられる場合は、親水性が発揮できないという問題が生じる。
【0003】
紫外線が十分に照射されるような環境であるか否かにかかわらず、親水性を発揮するできるものとして、例えば、ゾル-ゲル法により作製される非晶質シリカからなる超親水性膜が提案されている(例えば、特許文献5参照)。また、親水性官能基を導入した非晶質シリカを用い超親水性膜も提案されている(例えば、特許文献6、7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-356201号公報
【文献】特許第3844182号明細書
【文献】特開平9-156959号公報
【文献】特開2015-096459号公報
【文献】特開2008-174617号公報
【文献】再公表2013-001975号公報
【文献】特開2000-239607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ゾル-ゲル法などの無機ポリマーからなるコーティング膜は基材への密着性が十分でなく、特に、厚膜とした場合に基材への密着性が低下することがあった。そして、得られた膜は、耐恒温恒湿性(温度や湿度が常に加される環境)が低く、基材と塗膜との屈折率の差により干渉縞が生じやすいという問題があった。このような場合に、コーティング膜に柔軟性を付与するために有機ポリマーを添加することも考えられるが、得られるコーティング膜の透明性や硬度、耐久性が低下するという問題も発生しうる。また、特許文献6に提案される4官能性ケイ素化合物を加水分解縮合して得られた非晶質シリケート化合物を含有する無機親水性コート液では、本発明者らの検討により、耐湿熱性や耐摩耗性において改善の余地があることがわかった。特許文献7に提案されるシリカ質被膜は、スルフィド基をスルホン酸基に転化させて親水性を付与するものであり、被膜の形成に200℃程度の加熱が必要であった。
【0006】
また、無機ポリマーからなるコーティング剤は、塗装プロセスが複雑になることがある。さらに、親水性の低い基材など基材によっては、コーティング剤を塗装してもレベリング性が悪く、作業性も十分でないことがあった。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものである。本発明の目的の一つは、硬度、耐久性に優れ、且つ、基材への密着性、防曇性や防汚性、作業性に優れたコーティング膜を得ることができるコーティング剤を提供することである。
本発明の目的の一つは、親水性、耐温水性、塗工性に優れ、また、クラックの発生しにくいコーティング膜を形成できるコーティング剤を提供することである。
また、本発明の目的の一つは、耐恒温恒湿性、耐熱性、耐候性に優れ、また、親水性を長期にわたって維持可能なコーティング膜を形成できるコーティング剤を提供することである。
さらには、本発明の目的の一つは、親水性に優れ、基材と塗膜の屈折率差により発生する干渉縞を抑制可能なコーティング膜を形成できるコーティング剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、以下の[1]~[19]により達成される。
[1]水不溶性の金属化合物の微粒子と、無機ポリマーと、透明ナノファイバーとが溶媒に分散したコーティング剤;
[2]透明ナノファイバーが、多糖類からなるナノファイバーである、前記[1]のコーティング剤;
[3]多糖類からなるナノファイバーが、セルロースナノファイバー、又は、キチン若しくはキトサンの構造単位を有するナノファイバーである、前記[2]のコーティング剤;
[4]透明ナノファイバーの含有量が全固形分に対して0.1~10質量%である、前記[1]~[3]のいずれかのコーティング剤;
[5]金属微粒子の粒子径は1~100nmであり、透明ナノファイバーの繊維径は2~100nmである、前記[1]~[4]のいずれかのコーティング剤;
[6]水不溶性の金属化合物の微粒子と、無機ポリマーとが溶媒に分散したコーティング剤であって、前記金属化合物が超親水性官能基を有する、コーティング剤;
[7]超親水性官能基は式(1):
【化1】
(ただし、式(1)中、Rは炭素数1~10のアルキル基由来の構造単位、Aは一価の陽イオンである。)で表される構造を有するスルホン酸基又はスルホン酸塩基、式(2):
【化2】
(ただし、式(2)中、Rは炭素数1~10のアルキル基由来の構造単位、Aは一価の陽イオンである。)で表される構造を有するカルボン酸塩基、ポリエーテル基、若しくは、ウレイド基を含有する官能基である、前記[6]のコーティング剤;
[8]水不溶性の金属化合物の微粒子と、無機ポリマーと、屈折率調整剤とが溶媒に分散したコーティング剤;
[9]金属化合物が二酸化ケイ素である、前記[1]~[8]のいずれかのコーティング剤、
[10]屈折率調整剤は、Mg、Al、Ca、Ti、Zn、Nb、Zr、Sn、Ta、Ce及び、Hfからなる群より選択される少なくとも1種の金属の酸化物微粒子である、前記[9]のコーティング剤;
[11]無機ポリマーがシリコンアルコキシドを縮合した構造を有する、前記[1]~[10]のいずれかのコーティング剤;
[12]コーティング剤の固形分濃度が0.1~30質量%である、前記[1]~[11]のいずれかのコーティング剤;
[13]金属微粒子と無機ポリマーとの質量の比が20/80~90/10である、前記[1]~[12]のいずれかのコーティング剤;
[14]前記[1]~[13]のいずれかに記載のコーティング剤を塗布して形成されたコーティング膜を有する物品;
[15]前記[1]~[14]のいずれかに記載のコーティング剤を塗布する塗布方法であって、被塗布面を、洗浄液を利用して洗浄する第1洗浄工程と、被塗布面に該洗浄液が残存している状態で、前記コーティング剤を塗布する塗布工程とを有する塗布方法;
[16]塗布したコーティング剤の全てが乾燥する前に、塗布面を、洗浄液を利用して洗浄する第2洗浄工程とを有する、前記[15]に記載の塗布方法;
[17]被塗布面が、金属酸化物および珪酸化合物である、前記[15]又は[16]に記載の塗布方法;
[18]被塗布面がガラスであり、第1洗浄工程にて、ガラス用研磨剤を利用して洗浄する、前記[17]に記載の塗布方法;
[19]被塗布面がセラミックスであり、前記[17]に記載の塗布方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施の形態によれば、透明性や硬度にも優れ、且つ、基材への密着性、防曇性や防汚性、作業性に優れたコーティング膜を得ることができるコーティング剤を提供することができる。
また、本発明の実施の形態によれば、親水性、耐温水性、塗工性に優れ、また、クラックの発生しにくいコーティング膜を形成できるコーティング剤を提供することができる。
また、本発明の実施の形態によれば、耐恒温恒湿性、耐熱性、耐候性に優れ、また、親水性を長期にわたって維持可能なコーティング膜を形成できるコーティング剤を提供することができる。
さらには、本発明の実施の形態によれば、親水性に優れ、基材と塗膜の屈折率差により発生する干渉縞を抑制可能なコーティング膜を形成できるコーティング剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のコーティング剤の各成分や製造方法、コーティング膜の形成方法等について、説明する。本発明のコーティング剤は、水不溶性の金属化合物の微粒子と、無機ポリマーとが溶媒に分散したものである。
【0011】
(水不溶性の金属化合物の微粒子)
本発明では、水不溶性の金属化合物の微粒子(以下、金属微粒子ということがある)が用いられる。金属微粒子としては、金属の酸化物または金属の水酸化物であって、水に不溶な微粒子を用いることができる。該金属としては、水不溶性を示す微粒子であれば特に限定されないが、Mg、Al、Si、Ca、Ti、Zn、Nb、Zr、Sn、Ta、Ce、Hfの元素記号で表される金属を例示することができる。これら金属の酸化物又は金属の水酸化物等のほか、ケイ酸塩化合物を含む微粒子も用いることができる。これらの中でも、Si原子を含む微粒子、例えば、二酸化ケイ素やケイ酸塩化合物が、得られるコーティング膜の親水性に優れる点から好ましい。
【0012】
金属微粒子はコロイド状のものが用いられる。金属微粒子の平均粒子径は1nm以上であることが好ましく、3nm以上であることがより好ましく、5nm以上であることがさらに好ましい。また、金属微粒子の平均粒子径は、100nm以下であることが好ましい。このような粒子径をもつ金属微粒子を用いることによって、得られるコーティング膜の透明性、硬度を高めることができる。コロイド状の金属微粒子としては、例えば、コロイダルシリカをあげることができる。コロイダルシリカの平均粒子径は、BET法などにより測定することができる。
【0013】
コーティング剤中の金属微粒子の含有量(固形分)は、金属微粒子と無機ポリマーの合計の含有量(固形分)に対して20質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%であることがさらに好ましい。金属微粒子の含有量が20質量%未満となると、得られるコーティング膜の硬度が低下することがある。また、コーティング剤中の金属微粒子の含有量は、金属微粒子と無機ポリマーの合計の含有量に対して90質量%以下であることが好ましく、85質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることがさらに好ましい。金属微粒子の含有量が90質量%を超えると、得られるコーティング膜の基材への密着性が低下したり、親水性が低下する傾向にある。
【0014】
なお、後述する第2の実施の形態においては、金属化合物および無機ポリマーのうち少なくとも金属化合物が超親水性官能基を有するものである。
【0015】
(無機ポリマー)
本発明のコーティング剤は無機ポリマーを含有する。無機ポリマーとしては、例えば、Si-O結合、Al-O結合、Ti-O結合、Zr-O結合、Sn-O結合を有するものであり、且つ、分子中に水酸基を有するものが好ましい。
【0016】
なお、本明細書における無機ポリマーは、いわゆるポリマーだけでなくオリゴマーも含む概念であり、無機ポリマーには分子量が10,000以下の低重合体も含まれる。無機ポリマーは、コーティング膜を形成する際に、他の無機ポリマーと結合してもよい。
【0017】
無機ポリマーとしては、金属アルコキシドから得られる無機ポリマー、つまり、金属アルコキシド中のアルコキシ基が加水分解し、さらに脱水縮合することにより得られるものを用いることができる。金属アルコキシドとしては、例えば、M(OR)(Mは金属原子、Rは水素原子または1価の炭化水素基を表す。)、M(OR(Mは金属原子、Rは水素原子または1価の炭化水素基、Rは1価の炭化水素基を表す。)、M(OR (Mは金属原子、Rは水素原子または1価の炭化水素基、Rは1価の炭化水素基を表す。)などがあげられる。1価の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等を例示することができる。
【0018】
金属原子がSiの場合、すなわちシリコンアルコキシドの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ-n-プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ-n-ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラ-t-ブトキシシランまたはその誘導体等、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ-n-プロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリ-n-ブトキシシラン、メチルトリイソブトキシシラン、メチルトリ-t-ブトキシシランまたはその誘導体等、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジ-n-プロポキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、ジメチルジ-n-ブトキシシラン、ジメチルジイソブトキシシラン、ジメチルジ-t-ブトキシシランまたはその誘導体等などがあげられる。これらのシリコンアルコキシドのなかでも、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランが好ましい。
【0019】
金属原子がAlの場合、すなわちアルミニウムアルコキシドの具体例としては、テトラエトキシアルミニウム、テトライソプロポキシアルミニウムまたはその誘導体等があげられる。
【0020】
金属原子がTiの場合、すなわちチタンアルコキシドの具体例としては、テトライソプロポキシチタン、テトラ-n-ブトキシチタンまたはその誘導体等があげられる。
【0021】
金属原子がZrの場合、すなわちジルコニウムアルコキシドの具体例としては、テトラ-n-ブトキシジルコニウム、テトラ-t-ブトキシジルコニウムまたはその誘導体等、または、オキシ硝酸ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム等があげられる。
【0022】
金属原子がSnの場合、すなわちスズアルコキシドの具体例としては、テトラ-n-ブトキシスズ、テトラ-t-ブトキシスズまたはその誘導体等があげられる。
【0023】
なお、これらの金属アルコキシドは例示であって、他の金属アルコキシド、或いは、その誘導体を用いることができる。これらの金属アルコキシドあるいはその誘導体は、単独で使用しても、2種以上併用してもよい。
【0024】
コーティング剤中の無機ポリマーの含有量(固形分)は、金属微粒子と無機ポリマーの合計の含有量(固形分)に対して10質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%であることがさらに好ましい。無機ポリマーの含有量が10質量%未満となると、得られるコーティング膜の基材への密着性が低下したり、親水性が低下する傾向にある。また、コーティング剤中の無機ポリマーの含有量は、金属微粒子と無機ポリマーの合計の含有量に対して80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることがさらに好ましい。無機ポリマーの含有量が80質量%を超えると、得られるコーティング膜の硬度が低下することがある。
【0025】
(溶媒)
本発明のコーティング剤は溶媒を含む。溶媒としては水または水を含有するアルコール系溶媒、及び、グリコールエーテルを用いることができる。アルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、sec-ブタノール、t-ブタノール、n-ペンタノール、i-ペンタノール、2-メチルブタノール、sec-ペンタノール、t-ペンタノール、3-メトキシブタノール、n-ヘキサノール、2-メチルペンタノール、sec-ヘキサノール、2-エチルブタノール、sec-ヘプタノール、3-ヘプタノール、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、sec-オクタノール、n-ノニルアルコール、2,4,6-ジメチルヘプタノール、n-デカノール、sec-ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec-テトラデシルアルコール、sec-ヘプタデシルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール等の低級脂肪族アルコール系溶媒が挙げられる。グリコールエーテルとしては、例えば、エチレングリコールモノブチルエーテルおよびその誘導体、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、ペチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルおよびこれらの誘導体が挙げられる。これらのアルコール系溶媒、及び、グリコールエーテルは、1種単独で、または複数を混合して用いることができる。これらの水または水を含有するアルコール系溶媒、または、グリコールエーテルを用いることによって、安定的に金属粒子や無機ポリマーを分散することができる。
【0026】
本発明のコーティング剤において、固形分濃度は0.1質量%以上となるように溶媒量を調整することが好ましい。固形分濃度が0.1質量%未満となると、所望の厚さのコーティング膜を形成するために多量のコーティング剤が必要となるため、作業の効率が悪くなる傾向にある。固形分濃度は30質量%以下となるように溶媒量を調整することが好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。固形分濃度が30質量%を超えると、コーティング剤の保存安定性が低下する傾向にある。
【0027】
(触媒)
本発明のコーティング剤に触媒を添加することで、無機ポリマーの加水分解反応および/または重縮合反応を促進することができる。触媒の種類は特に限定されないが、例えば、非イオン性触媒を用いることが好ましい。非イオン性触媒を用いる場合は、酸触媒または塩基触媒を用いる場合に較べて、酸、塩基に対する腐食性の高い基材にも超親水性膜を形成できる。非イオン性触媒としては、ドロキシアルデヒド誘導体(あるいはヒドロキシケトン誘導体)、ヒドロキシカルボン酸誘導体、アリルアルコール誘導体、およびヒドロキシニトリル誘導体が例示される。
【0028】
(その他添加剤)
本発明のコーティング剤には、塗膜の平滑化を目的としてレベリング剤等の界面活性剤や、ハジキ防止を目的として増粘剤、また用途に応じて着色顔料などを添加することができる。その他添加剤は、本発明のコーティング剤により形成されるコーティング膜の親水性に影響しない範囲で添加することができる。
【0029】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態は、水不溶性の金属化合物の微粒子と、無機ポリマーと、透明ナノファイバーとが溶媒に分散したコーティング剤に関するものである。本発明の実施の形態によれば、親水性、耐温水性、塗工性に優れ、また、クラックの発生しにくいコーティング膜を形成できるコーティング剤を提供することができる。
【0030】
(透明ナノファイバー)
本発明のコーティング剤は、透明ナノファイバーを含有する。透明ナノファイバーとは、例えば、透明性を有し、且つ、繊維径が100nm以下の繊維をいう。透明ナノファイバーを用いた場合でも、得られるコーティング膜は透明性や硬度、耐久性に優れる。また、透明ナノファイバーを用いることで、得られるコーティング膜を厚膜とした場合にでも基材への密着性は低下せず、また、コーティング膜の親水性や耐久性(例えば、耐温水性、耐熱性、耐温湿熱性、耐候性など)も向上する。さらには、コーティング剤を塗工する際の塗工性も向上し、色むら等がなく均質なコーティング膜を得ることができる。
【0031】
本発明のコーティング剤を用いて形成されたコーティング膜は、透明ナノファイバーがコーティング膜の基材側に偏在する一方で、無機ポリマーがコーティング膜の表面に偏在し、コーティング膜表面の凹凸(凹凸の高低差)が大きくなることで、より超親水性及び耐クラック性を発揮できると考えられる。
【0032】
透明ナノファイバーは、六員環構造を有する多糖類からなるナノファイバーを用いることが好ましい。多糖類からなる透明ナノファイバーとしては、例えば、セルロースナノファイバー、又は、キチン若しくはキトサンの構造単位を有するナノファイバーがあげられる。セルロースナノファイバーは、TEMPO処理により得られるミクロフィブリルとよばれる構造単位を含むセルロースナノファイバーや、バイオマスを原料として物理解砕により得られるセルロースナノファイバーであることが好ましい。
【0033】
透明ナノファイバーの繊維径は、2nm以上であることが好ましい。透明ナノファイバーの繊維径は、100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましく、20nm以下であることがさらに好ましい。透明ナノファイバーの繊維径が100nmより大きくなると、透明性が低下する傾向にある。
【0034】
コーティング剤中の透明ナノファイバーの含有量は、固形分全量に対して0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、1質量%以上であることがさらに好ましい。透明ナノファイバーの含有量が0.1質量%未満となると、透明ナノファイバーの添加することによる効果が十分でなくなる場合がある。透明ナノファイバーの含有量は、固形分全量に対して10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましい。透明ナノファイバーの含有量が10質量%以上となると、得られるコーティング膜の透明性や硬度、耐久性、及び、流動性が低下する傾向にある。
【0035】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態は、水不溶性の金属化合物の微粒子と、無機ポリマーとが溶媒に分散したコーティング剤であって、金属化合物の微粒子が超親水性官能基を有するものである。第2の実施形態のコーティング剤によれば、該コーティング剤を用いて作製したコーティング膜の超親水性が優れるだけでなく、耐恒温恒湿性、耐熱性にも優れ、及び、長期にわたって優れた親水性を発揮することができる。
【0036】
第2の実施形態では、水不溶性の金属化合物の微粒子は、上記において説明した水不溶性の金属化合物に超親水性官能基を有する。金属化合物が超親水性官能基を有する場合は、微粒子表面の少なくとも一部に超親水性官能基を有することが好ましい。用いる金属化合物の微粒子の一部がその表面に超親水性官能基を有していればよく、用いるすべての微粒子の表面に官能基を有していなくてもよい。また、無機ポリマーが超親水性官能基を有していてもよく、この場合は、無機ポリマーに超親水性官能基を有する化合物をハイブリッドさせて形成することができる。無機ポリマーにおいても、無機ポリマー表面の少なくとも一部に超親水性官能基を有することが好ましいが、用いるすべての無機ポリマーの表面に官能基を有していなくてもよい。
【0037】
超親水性官能基は、本発明に用いる金属化合物および無機ポリマーの表面に超親水性を付与するものであれば、特に限定なく採用することができるが、形成する膜の超親水性、耐恒温恒湿性、及び、耐候性のいずれにも優れることから、超親水性官能基は、式(1):
【化3】
(ただし、式(1)中、Rは炭素数1~10のアルキル基由来の構造単位、Aは一価の陽イオンである。)で表される構造を有するスルホン酸基又はスルホン酸塩基、式(2):
【化4】
(ただし、式(2)中、Rは炭素数1~10のアルキル基由来の構造単位、Aは一価の陽イオンである。)で表される構造を有するカルボン酸塩基、ポリエーテル基、若しくは、ウレイド基を含有する官能基であることが好ましい。
【0038】
式(1)および式(2)において、RおよびRの炭素数は、それぞれ独立に、1以上であることがより好ましく、2以上であることがさらに好ましい。炭素数は、5以下であることがより好ましく、3以下であることがさらに好ましい。炭素数がこのような範囲にある場合は、本発明のコーティング剤を用いて形成する膜の耐酸化性が優れたものとなり、結果として、耐候性に優れた膜を形成することができる。
【0039】
水不溶性の金属化合物の微粒子に、スルホン酸基又はスルホン酸塩基を導入する方法としては、例えば、
式(4):
【化5】
(ただし、式(4)中、Rは炭素数1~10のアルキル基由来の構造単位、Aは一価の陽イオンである。)で表される化合物の水酸基と、金属化合物の微粒子に存在する水酸基とを加水分解反応させることにより得ることができる。加水分解反応は、酸性又はアルカリ性の条件下で行うことができる。また、水不溶性の金属化合物の微粒子に、スルホン酸基又はスルホン酸塩基を導入する際には、たとえば、水不溶性の金属化合物の微粒子、溶媒の存在下、触媒により無機ポリマーを合成する反応を4~6時間の反応を行った後、スルホン酸基又はスルホン酸塩基を有する化合物を添加して、さらに2~3時間の反応を行うことが考えられる。あるいは、コーティング剤に屈折率調整剤をさらに含める場合であれば、たとえば、屈折率調整剤、溶媒の存在下、触媒により無機ポリマーを合成する反応を2~3時間の反応を行った後、水不溶性の金属化合物の微粒子を添加して2~3時間の反応を行い、さらにスルホン酸基又はスルホン酸塩基を有する化合物を添加して、2~3時間の反応を行うことが考えられる。
【0040】
式(4)で表される化合物としては、例えば、エタノール-2-スルホン酸、エタノール-2-スルホン酸ナトリウム、プロパノール-3-スルホン酸、プロパノール-3-スルホン酸ナトリウム、ブタノール-4-スルホン酸、ブタノール-4-スルホン酸ナトリウムなどがあげられる。中でも、高い親水性を付与することができる点で、エタノール-2-スルホン酸、エタノール-2-スルホン酸ナトリウムを用いることが好ましい。
【0041】
水不溶性の金属化合物の微粒子に導入するポリエーテル基としては、例えば、ポリエチレンオキサイド(PEO)基やポリプロピレンオキサイド(PPO)基などのポリアルキレンオキサイド基を例示することができる。ポリエーテル基の分子量は、超親水性を示す限り、特に限定されるものではないが、3000程度またはそれ以下の分子量であることが好ましい。
【0042】
水不溶性の金属化合物の微粒子にポリエーテル基を導入する方法としては、両末端に水酸基を有するポリアルキレンオキサイドの水酸基と、金属化合物の微粒子に存在する水酸基とを加水分解反応させることにより得ることができる。加水分解反応は、酸性又はアルカリ性の条件下で行うことができる。
【0043】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態は、水不溶性の金属化合物の微粒子と、無機ポリマーと、屈折率調整剤とが溶媒に分散したコーティング剤である。第3の実施形態のコーティング剤によれば、得られるコーティング膜と基材との屈折率差により生じる干渉縞が抑制されたものとなる。
【0044】
屈折率調整剤は、Mg、Al、Ca、Ti、Zn、Nb、Zr、Sn、Ta、Ce及び、Hfからなる群より選択される少なくとも1種の金属の酸化物微粒子であることが好ましい。これらのなかでも、屈折率調整剤として酸化チタンを用いる場合は、該化合物の屈折率が非常に高いことから、二酸化ケイ素のような低屈折率である金属化合物の微粒子に対して、少量の添加で屈折率を向上させることができるので好ましい。また、屈折率調整剤として酸化ジルコニアを用いる場合は、酸化チタンのように有機物を光分解する反応を起こさないので、コーティング剤を屋外用途の樹脂基板に直接塗工しても、基板を劣化させずに、超親水性を付与することが可能となるという利点がある。
【0045】
屈折率調整剤としては、水不溶性の金属化合物の微粒子の屈折率と、屈折率調整剤の屈折率との差が0.1以上であるものを用いることが好ましく、0.3以上であるものを用いることがより好ましく、0.5以上であるものを用いることがさらに好ましい。水不溶性の金属化合物の微粒子の屈折率と、屈折率調整剤の屈折率との差が0.1未満であると、コーティング膜の屈折率を調整する効果が十分でなくなる傾向にある。また、水不溶性の金属化合物の微粒子の屈折率と、屈折率調整剤の屈折率との差が大きいほど、屈折率調整剤の添加効果が大きい。
【0046】
金属の酸化物微粒子の平均粒子径は1nm以上であることが好ましく、3nm以上であることがより好ましい。また、金属微粒子の平均粒子径は、100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましく、35nm以下であることがさらに好ましい。このような粒子径をもつ金属の酸化物微粒子を屈折率調整剤として用いることによって、得られるコーティング膜の干渉縞の抑制による透明性を高めることができる。また、粒子径が小さい場合は、得られるコーティング膜の透明性に影響しないので好ましい。
【0047】
コーティング剤中の屈折率調整剤の含有量(固形分)は、金属微粒子と無機ポリマーの合計の含有量(固形分)に対して5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることがさらに好ましく、20質量%以上であることが特に好ましい。屈折率調整剤の含有量が5質量%未満となると、得られるコーティング膜について干渉縞を抑制する効果が充分でないことがある。また、コーティング剤中の屈折率調整剤の含有量は、金属微粒子と無機ポリマーの合計の含有量に対して80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、65質量%以下であることがさらに好ましく、60質量%以下であることが特に好ましい。屈折率調整剤の含有量が80質量%を超えると、得られるコーティング膜の透明性が低下したり、親水性が低下する傾向にある。
【0048】
(コーティング剤の製造方法)
本発明の第1の実施形態のコーティング剤は、例えば、金属微粒子と無機ポリマーが溶媒に分散した混合分散液に透明ナノファイバーを添加し、攪拌により分散させて得られる。具体的には、金属微粒子と無機ポリマーの混合分散液に、透明ナノファイバーの水、アルコール、又はグリコールエーテルの分散液を添加する。本発明の第2の実施形態のコーティング剤は、例えば、無機ポリマーに、超親水性基を導入した金属微粒子と、溶媒を添加し、攪拌により分散させて得られる。本発明の第3の実施形態のコーティング剤は、例えば、金属微粒子と無機ポリマーの混合分散液に透明ナノファイバーを添加し、攪拌により分散させて得られる。具体的には、金属微粒子と無機ポリマーの混合分散液に、透明ナノファイバーの水、アルコール、又はグリコールエーテルの分散液を添加する。
【0049】
(コーティング膜の形成方法)
本発明の第1~第3の実施形態のコーティング剤を用いて基材にコーティング膜を形成する方法としては、コーティング剤を基材の表面に塗布する方法、基材をコーティング剤に浸漬する方法が挙げられる。コーティング剤を基材の表面に塗布する方法が、簡便で、コストも低く、また必要な膜の厚さを容易に制御できるため、特に好ましい。
【0050】
塗布方法は、特に限定されず、公知の技術を採用すれば良い。例えば、スピンコート法、ディッピング法、スプレー法、フローコート法、バーコート法、ローラーコート法、リバース法、フレキソ法、印刷法等の塗布手段を適宜採用できる。
【0051】
また、基材とコーティング膜との密着性を向上させるため、基材の表面に前処理を施してもよい。前処理方法としては、コロナ放電処理、グロー放電処理、紫外線、電子線または放射線等の電離活性線による処理、粗面化処理、化学薬品処理またはプライマー処理等が挙げられる。
【0052】
基材としてはガラス、プラスチック、金属、セラミックスなどをコーティングの対象とすることができる。
【0053】
基材の表面に塗布したコーティング剤を乾燥させることで、コーティング膜が形成される。本発明のコーティング剤は常温で乾燥させた場合でも、問題なくコーティング膜を形成することが可能である。乾燥の際には、60℃以上で加熱することが好ましく、120℃以上で加熱することがより好ましい。600℃以下で加熱することが好ましく、300℃以下で加熱することがより好ましい。加熱条件は特に限定されないが、連続式でもバッチ式でも良く、また、常圧あるいは減圧で加熱しても良い。加熱処理の前に室温で一定時間静置する場合、より均一なコーティング膜を形成することが可能である。
【0054】
(コーティング剤の塗布方法)
本発明の第1~第3の実施形態のコーティング剤は、以下の方法により塗布することができる。以下のコーティング剤の塗布方法を用いることにより、約1分~数分程度の短い時間で、コーティング膜を得ることができる。
【0055】
無垢の基材で、被塗布面が汚れていない場合は、
(1)被塗布面にコーティング剤を塗布し、乾燥する方法、
(2)被塗布面にコーティング剤を塗布し、コーティング剤が完全に乾燥する前に、水又は有機溶剤などの洗浄液で表面を洗い流し、乾燥する方法
があげられる。一方、被塗布面が汚れている場合は、
(1)アルコールや洗剤などで被塗布面を洗浄し、被塗布面が完全に乾燥する前に、コーティング剤を塗布し、乾燥する方法、
(2)アルコールや洗剤などで被塗布面を洗浄し、被塗布面が完全に乾燥する前に、コーティング剤を塗布し、水又は有機溶剤などの洗浄液で表面を洗い流し、乾燥する方法、
(3)アルコールや洗剤などで被塗布面を洗浄し、表面にある水垢や石鹸汚れなどを磨き剤で研磨し、水又は有機溶剤などの洗浄液で表面を洗い流し、被塗布面が完全に乾燥する前に、コーティング剤を塗布し、乾燥する方法、
(4)アルコールや洗剤などで被塗布面を洗浄し、表面にある水垢や石鹸汚れなどを磨き剤で研磨し、水又は有機溶剤などの洗浄液で表面を洗い流し、被塗布面が完全に乾燥する前に、コーティング剤を塗布し、水又は有機溶剤などの洗浄液で表面を洗い流し、乾燥する方法
があげられる。
【0056】
被塗布面は、特に限定されないが、ガラスなどの珪酸化合物、プラスチック、アルミやステンレスなどの金属、金属酸化物などのセラミックスなどが挙げられる。中でも、被塗布面は、ガラス、鏡又はセラミックスであることが好ましい。アルコールや洗剤などで、被塗布面の水垢や石鹸汚れを洗浄して除去することができる。また、被塗布面の水垢や石鹸汚れを、磨き剤で研磨して除去することができる。被塗布面がガラス又は鏡である場合は、磨き剤としては、ガラス用研磨剤を用いることが好ましい。ガラス用研磨剤を用いることで、得られるコーティング膜の親水性が向上する、又は、親水性が持続する期間が長くなる傾向にある。被塗布面からアルコール・洗剤や磨き剤で水垢や石鹸汚れを除去する時間は、例えば10秒~数10秒で行うことができる。
【0057】
次に、水又は有機溶剤などの洗浄液で、表面の洗剤や磨き剤を洗い流す。洗浄液として水を用いる場合は、流水を利用することができる。流水で、表面の洗剤や磨き剤を洗い流す時間としては、例えば、数秒~10数秒で行うことができる。
【0058】
次に、ガラス又は鏡の表面に付着した洗浄液が、完全に乾燥せずに残存した状態で、本発明の第1~第3の実施形態のコーティング剤のいずれかを塗布する。コーティング剤の塗布手段は、スプレー法であることが好ましい。スプレー法による塗布は、例えば、数秒~10数秒で行うことができる。
【0059】
塗布したコーティング剤は、常温(5~35℃)により乾燥することができる。塗布したコーティング剤のうちの一部が乾燥し、コーティング膜を形成しているが、コーティング剤の全てが乾燥する前に、塗布面を、洗浄液を利用して洗浄することができる。洗浄液としては、水又は有機溶剤を用いることができる。洗浄液として水を用いる場合は、流水を利用することができる。流水で、コーティング膜の表面を洗浄する時間としては、例えば、数秒~10数秒で行うことができる。
【0060】
洗浄液を乾燥させることで、コーティング膜が形成されたガラス、鏡又はセラミックスを得ることができる。洗浄液の乾燥は、常温での自然乾燥でもよく、加熱乾燥でもよい。自然乾燥の場合は、数分~数時間で洗浄液を乾燥させることができる。得られたコーティング膜は、2週間~3か月程度の期間で親水性を維持することができる。
【0061】
(コーティング膜)
本発明の第1~第3の実施形態のコーティング膜の厚さは、5nm以上であることが好ましく、100nm以上であることがより好ましく、500nm以下であることがさらに好ましい。コーティング膜の厚さが5nm未満となると、親水性が低下する傾向にある。コーティング膜の厚さは、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましく、2μm以下であることがさらに好ましい。また、コーティング膜の厚さが10μmより大きくなると、基材との密着性が低下し、剥離しやすくなる傾向にある。
【0062】
本発明の第1~第3の実施形態のコーティング剤を用いて形成されたコーティング膜は親水性に優れており、超親水性を示すものである。なお、超親水性とは、基材表面のコーティング膜の水に対する静止接触角が10℃以下のものをいう。接触角は、θ/2法を用いて測定する値である。
【0063】
(用途)
本発明の第1~第3の実施形態のコーティング剤の用途は、特に限定されないが、建築物の表面コーティングや、熱交換器やヒートパイプの表面コーティングなどの用途にも使用できる。その他、眼鏡レンズ、カメラレンズ、水中眼鏡、車の窓ガラス、ヘルメットのシールド、湿気の多い場所で使用するミラーやレンズ等の表面コーティングなどに用いることができる。
【実施例
【0064】
以下、本発明のコーティング剤について、実施例を用いて説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0065】
(実施例1;第1の実施形態のコーティング剤)
窒素雰囲気下で、テトラエトキシシラン(多摩化学工業株式会社製)20.9gと、コロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製、商品名;スノーテックス(登録商標)ST-XS、シアーズ粒子径4~6nm、固形分20wt%、溶媒;水)30.1gと、溶媒としてエタノール8.4gと、イオン交換水40.7gとを添加し、触媒として硝酸(関東化学株式会社製、商品名;硝酸1.38)を溶液全体のpHが2となるように反応容器に入れ、40℃で9時間攪拌して、無機ポリマー溶液(A)を得た。
【0066】
次に、得られた無機ポリマー溶液(A)の全量に対して、透明ナノファイバーとしてキチンナノファイバー(株式会社スギノマシン社製、商品名;BiNFi-s SFo-20002)を2質量%、溶媒としてエタノールを体積比で0.7%添加し、25℃で1時間攪拌してコーティング剤を得た。得られたコーティング剤の固形分濃度は、2質量%であった。
【0067】
得られたコーティング剤を、バーコーター(バーNo.7)を用いてバーコート法により76mm×52mmのガラス基板(松波硝子工業株式会社製、厚さ1.5mm)の表面に塗布し、150℃で15分間加熱乾燥させてコーティング膜を得た。
【0068】
<評価>
ガラス基板上、ポリカーボネート基板に得られたコーティング膜について、初期物性と耐久性評価の試験を行った。具体的には、外観、親水性、JIS K 5600-5-6:99に準じた碁盤目試験による密着性試験、JIS K 5600-5-4:99に準じた鉛筆法による引っかき硬度試験、耐スチールウール性、耐アルコール性を初期物性として評価した。また、得られたコーティング膜の耐久性評価として、耐温水性、耐熱性、耐湿熱性、耐摩耗性、耐候性の評価を試験後の水接触角の測定により行った。各評価方法は以下に記す通りである。
【0069】
(外観;透過性)
ヘイズメーター(株式会社村上色彩研究所製、HM-150)を用いてコーティング膜を形成したガラス基板の透過率を測定した。実施例1で得られたコーティング膜は透明であった。
【0070】
(親水性;水接触角)
接触角測定装置(FAMAS、協和界面科学株式会社製)により、θ/2法を用いて、コーティング膜の表面と水滴との静止接触角を測定した。実施例1で得られたコーティング膜表面の静止接触角は10°未満であった。
【0071】
(密着性)
JIS K 5600-5-6:99に準じて、コーティング膜に対して垂直になるようにカッター刃を当てて6本の切込みを1mm間隔で平行に行ったのち、90°方向を変えて直行する6本の切込みを行った。75mmの長さにテープを取り出し、テープをコーティング膜の格子にカットした部分に貼り、コーティング膜が透けて見えるようにしっかり指でテープをこすった。テープを付着して、60°に近い角度で、およそ1秒でテープを引き離した。付着量をJISの0~5の分類により評価した。実施例1で得られたコーティング膜を用いた場合の付着量は分類0であった。
【0072】
(引っかき硬度)
JIS K 5600-5-4:99に準じて、7mmの直線を引き、目視によりでコーティング膜表面の跡の種類を評価した。実施例1で得られたコーティング膜表面の引っかき硬度は6Hと評価できた。
【0073】
(耐スチールウール性)
♯0000番手のスチールウールを用いて500g/cm荷重の条件でコーティング膜表面の中央部分を10往復擦り、目視により表面変化を観察した。実施例1で得られたコーティング膜表面に傷はなかった。
【0074】
(耐アルコール性)
純エタノールに含浸した脱脂綿(15mm×15mm、含浸量1ml)を用いてコーティング膜表面を100往復拭き、目視により表面変化を観察した。実施例1で得られたコーティング膜表面は、試験前後で変化はなかった。
【0075】
(耐温水性)
コーティング膜を形成したガラス基板のコーティング膜表面に、50℃の温水を100ミリリットル/時間で100時間接触させ続け、コーティング膜の外観の変化を目視で確認し、また、コーティング膜表面の水に対する静止接触角を測定した。目視変化はなく、静止接触角は試験後も10°未満であった。
【0076】
(耐熱性)
コーティング膜を形成したガラス基板を150℃条件下に100時間放置し、コーティング膜の外観の変化を目視で確認し、また、コーティング膜表面の水に対する静止接触角を測定した。
【0077】
(耐湿熱性)
コーティング膜を形成したガラス基板を、65℃、95%RH条件下に100時間放置し、コーティング膜の外観の変化を目視で確認し、また、コーティング膜表面の水に対する静止接触角を測定した。
【0078】
(耐摩耗性)
コーティング膜を形成したガラス基板を、平面形の往復試験台に取り付け、大きさ20×20mmの平面摩擦子(日本製紙クレシア株式会社製、クレシアEF)にて500g荷重で摩擦させたのち、コーティング膜表面の水に対する静止接触角を測定した。静止接触角は10°未満であった。
【0079】
(耐候性)
JIS B 7754:91に準じて、キセノンアークランプ式耐候性試験をおこなった。300~400nmの連続スペクトルを有するキセノンランプを用い、ブラックパネル温度63℃、60W/mのランプ強度で、102分間の照射、続いて18分間の照射及び水の噴霧の120分間のサイクルを繰り返して、コーティング膜表面を1000時間、照射し、コーティング膜の外観の変化を目視で確認し、また、コーティング膜表面の水に対する静止接触角を測定した。静止接触角は10°未満であった。
【0080】
(実施例2;第1の実施形態のコーティング剤)
実施例1の無機ポリマー溶液(A)を用い、実施例1のコーティング剤の製造において透明ナノファイバーとしてセルロースナノファイバー(株式会社スギノマシン社製、商品名;BiNFi-s AMa-10002)を用いた以外は実施例1と同様にしてコーティング剤を製造し、初期物性と耐久性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0081】
(実施例3;第1の実施形態のコーティング剤)
実施例1の無機ポリマー溶液(A)の製造において、コロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製、商品名;スノーテックス(登録商標)ST-S、BET粒子径8~11nm、固形分30wt%、溶媒;水)20.0gに、イオン交換水を51.2gに変更した以外は実施例1と同様にしてコーティング剤を製造し、初期物性と耐久性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0082】
(実施例4;第1の実施形態のコーティング剤)
実施例1の無機ポリマー溶液(A)の製造において、コロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製、商品名;スノーテックス(登録商標)ST-30、BET粒子径10~15nm、固形分30wt%、溶媒;水)20.0gに、イオン交換水を51.2gに変更した以外は実施例1と同様にしてコーティング剤を製造し、初期物性と耐久性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0083】
(実施例5;第1の実施形態のコーティング剤)
実施例1の無機ポリマー溶液(A)の製造において、コロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製、商品名;スノーテックス(登録商標)ST-UP、動的光散乱法の平均粒子径40~100nm、固形分20wt%、溶媒;水)30.1gに変更した以外は実施例1と同様にしてコーティング剤を製造し、初期物性と耐久性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0084】
(実施例6;第1の実施形態のコーティング剤)
実施例1の無機ポリマー溶液(A)の製造において、テトラエトキシシランを16.7gに、球状のコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製、商品名;スノーテックス(登録商標)ST-OS、BET粒子径8~11nm、固形分20wt%、溶媒;水)36.1gに、エタノールを6.7gに、イオン交換水を41.0gに変更した以外は実施例1と同様にしてコーティング剤を製造し、初期物性と耐久性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0085】
(実施例7;第1の実施形態のコーティング剤)
実施例6の無機ポリマー溶液(A)を用い、実施例6のコーティング剤の製造において透明ナノファイバーとしてセルロースナノファイバー(株式会社スギノマシン社製、商品名;BiNFi-s AMa-10002)を用いた以外は実施例6と同様にしてコーティング剤を製造し、初期物性と耐久性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0086】
(実施例8;第1の実施形態のコーティング剤)
実施例1の無機ポリマー溶液(A)の製造において、テトラエトキシシランを20.8gに、鎖状のコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製、商品名;スノーテックス(登録商標)ST-OUP、動的光散乱法の平均粒子径40~100nm、固形分15wt%、溶媒;水)40.0gに、エタノールを8.3gに、イオン交換水を30.8gに変更した以外は実施例1と同様にしてコーティング剤を製造し、初期物性と耐久性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0087】
(実施例9;第2の実施形態のコーティング剤)
窒素雰囲気下で、テトラエトキシシラン(多摩化学工業株式会社製)18.8gと、コロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製、商品名;スノーテックス(登録商標)ST-XS、シアーズ粒子径4~6nm、固形分20wt%、溶媒;水)30.1gと、溶媒としてエタノール7.5gと、イオン交換水37.6gと、触媒として硝酸(関東化学株式会社製、商品名;硝酸1.38)を溶液全体のpHが2となるように反応容器に入れ、40℃で6時間攪拌した。その後、超親水性官能基を付与する化合物としてスルホン酸塩化合物(キヨスミ研究所社製、商品名;KS-S10X)6.0gを添加し、さらに40℃で3時間攪拌して、無機ポリマー溶液(A)を得た。
次に、得られた無機ポリマー溶液(A)の全量に対して、溶媒としてエタノールを体積比で0.7%添加し、25℃で1時間攪拌してコーティング剤を得て、初期物性と耐久性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0088】
(実施例10;第2の実施形態のコーティング剤)
実施例9の無機ポリマー溶液(A)を用い、実施例9のコーティング剤の製造において透明ナノファイバーとしてキチンナノファイバー(株式会社スギノマシン社製、商品名;BiNFi-s SFo-20002)を無機ポリマー溶液(A)全量に対して2質量%添加した以外は実施例9と同様にしてコーティング剤を製造し、初期物性と耐久性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0089】
(実施例11;第2の実施形態のコーティング剤)
実施例9の無機ポリマー溶液(A)の製造において、溶媒としてエタノールの代わりにメタノール7.5gを用いて、40℃で4時間攪拌した後、スルホン酸塩化合物を添加し、40℃で2時間攪拌した以外は実施例9と同様にして無機ポリマー溶液(A)を製造した。この無機ポリマー溶液(A)の全量に対して、溶媒としてメタノールを体積比で0.7%添加し、25℃で1時間攪拌してコーティング剤を製造し、初期物性と耐久性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0090】
(実施例12;第2の実施形態のコーティング剤)
実施例11の無機ポリマー溶液(A)を用い、実施例11のコーティング剤の製造において透明ナノファイバーとしてキチンナノファイバー(株式会社スギノマシン社製、商品名;BiNFi-s SFo-20002)を無機ポリマー溶液(A)全量に対して2質量%添加した以外は実施例11と同様にしてコーティング剤を製造し、初期物性と耐久性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0091】
(実施例13;第2の実施形態のコーティング剤)
実施例11の無機ポリマー溶液(A)の製造において、コロイダルシリカをコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製、商品名;スノーテックス(登録商標)ST-UP、動的光散乱法の平均粒子径40~100nm、固形分20wt%、溶媒;水)30.1gに変更した以外は実施例9と同様にしてコーティング剤を製造し、初期物性と耐久性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0092】
(実施例14;第2の実施形態のコーティング剤)
実施例13の無機ポリマー溶液(A)を用い、実施例13のコーティング剤の製造において透明ナノファイバーとしてキチンナノファイバー(株式会社スギノマシン社製、商品名;BiNFi-s SFo-20002)を無機ポリマー溶液(A)全量に対して2質量%添加した以外は実施例13と同様にしてコーティング剤を製造し、初期物性と耐久性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0093】
(実施例15;第2の実施形態のコーティング剤)
実施例9の無機ポリマー溶液(A)の製造において、テトラエトキシシランを20.7gに、コロイダルシリカを18.7gに、溶媒としてメタノール15.5gとイオン交換水28.0gに代えて、40℃で4時間攪拌した後、スルホン酸塩化合物(キヨスミ研究所社製、商品名;KS-S10X)8.9gを添加し、40℃で2時間攪拌した以外は実施例9と同様にして無機ポリマー溶液(A)を製造した。この無機ポリマー溶液(A)の全量に対して、溶媒としてメタノールを体積比で0.7%添加し、25℃で1時間攪拌してコーティング剤を製造し、初期物性と耐久性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0094】
(実施例16;第2の実施形態のコーティング剤)
実施例15の無機ポリマー溶液(A)の製造において、コロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製、商品名;スノーテックス(登録商標)ST-UP、動的光散乱法の平均粒子径40~100nm、固形分20wt%、溶媒;水)8.4gに変更した以外は実施例15と同様にして無機ポリマー溶液(A)を得た。この無機ポリマー溶液(A)に、透明ナノファイバーとしてキチンナノファイバー(株式会社スギノマシン社製、商品名;BiNFi-s SFo-20002)を無機ポリマー溶液(A)全量に対して2質量%添加した以外は実施例15と同様にしてコーティング剤を製造し、初期物性と耐久性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0095】
(実施例17;第2の実施形態のコーティング剤)
実施例9の無機ポリマー溶液(A)の製造において、テトラエトキシシランを15.0gに、コロイダルシリカをコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製、商品名;スノーテックス(登録商標)ST-OS、BET粒子径8~11nm、固形分20wt%、溶媒;水)36.0gに、エタノールを19.5gに、イオン交換水を24.8gに変更し、スルホン酸化合物を4.8gにした以外は実施例9と同様にしてコーティング剤を製造し、初期物性と耐久性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0096】
(実施例18;第2の実施形態のコーティング剤)
実施例17の無機ポリマー溶液(A)を用い、実施例17のコーティング剤の製造において透明ナノファイバーとしてキチンナノファイバー(株式会社スギノマシン社製、商品名;BiNFi-s SFo-20002)を無機ポリマー溶液(A)全量に対して2質量%添加した以外は実施例17と同様にしてコーティング剤を製造し、初期物性と耐久性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0097】
(実施例19;第2の実施形態のコーティング剤)
実施例9の無機ポリマー溶液(A)の製造において、コロイダルシリカをコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製、商品名;スノーテックス(登録商標)ST-OUP、動的光散乱法の平均粒子径40~100nm、固形分15wt%、溶媒;水)40.1gに、エタノールを9.9gに、イオン交換水を25.5gに変更した以外は実施例9と同様にしてコーティング剤を製造し、初期物性と耐久性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0098】
(実施例20;第2の実施形態のコーティング剤)
実施例19の無機ポリマー溶液(A)を用い、実施例19のコーティング剤の製造において透明ナノファイバーとしてキチンナノファイバー(株式会社スギノマシン社製、商品名;BiNFi-s SFo-20002)を無機ポリマー溶液(A)全量に対して2質量%添加した以外は実施例19と同様にしてコーティング剤を製造し、初期物性と耐久性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0099】
(実施例21;第3の実施形態のコーティング剤)
窒素雰囲気下で、テトラエトキシシラン(多摩化学工業株式会社製)20.6gと、溶媒としてエタノール15.0gと、イオン交換水17.5gと、屈折率調整剤としてチタニアゾル(多木化学株式会社製、商品名;タイノックAM-15、二次粒子径20nm、固形分15wt%)18.7gを反応容器に入れ、40℃で3時間攪拌した後、コロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製、商品名;スノーテックス(登録商標)ST-XS、シアーズ粒子径4~6nm、固形分20wt%、溶媒;水)24.5gを添加して40℃で3時間攪拌した後、超親水性官能基を付与する化合物としてスルホン酸塩化合物(キヨスミ研究所社製、商品名;KS-S10X)3.8gを添加し、触媒として硝酸(関東化学株式会社製、商品名;硝酸1.38)を溶液全体のpHが2となるように反応容器に入れ、40℃で3時間攪拌して、無機ポリマー溶液(A)を得た。
次に、得られた無機ポリマー溶液(A)の全量に対して、溶媒としてエタノールを体積比で0.7%添加し、25℃で1時間攪拌してコーティング剤を製造し、バーコーター(バーNo.12)を用いて製膜した以外は実施例1と同様の初期物性と耐久性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0100】
(実施例22;第3の実施形態のコーティング剤)
実施例21の無機ポリマー溶液(A)を用い、実施例21のコーティング剤の製造において透明ナノファイバーとしてキチンナノファイバー(株式会社スギノマシン社製、商品名;BiNFi-s SFo-20002)を無機ポリマー溶液(A)全量に対して2質量%添加した以外は実施例21と同様にしてコーティング剤を製造し、初期物性と耐久性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0101】
(実施例23;第3の実施形態のコーティング剤)
実施例21の無機ポリマー溶液(A)の製造において、テトラエトキシシランを14.6gに、エタノールを19.8gに、イオン交換水を12.4gに、チタニアゾルをチタニアゾル(多木化学株式会社製、商品名;タイノックM-6、二次粒子径10nm、固形分6wt%)33.2gに変更し、コロイダルシリカを17.4gに、スルホン酸塩化合物を2.7gにした以外は実施例21と同様にしてコーティング剤を製造し、初期物性と耐久性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0102】
(実施例24;第3の実施形態のコーティング剤)
実施例23の無機ポリマー溶液(A)を用い、実施例23のコーティング剤の製造において透明ナノファイバーとしてキチンナノファイバー(株式会社スギノマシン社製、商品名;BiNFi-s SFo-20002)を無機ポリマー溶液(A)全量に対して2質量%添加した以外は実施例23と同様にしてコーティング剤を製造し、初期物性と耐久性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0103】
(実施例25;第3の実施形態のコーティング剤)
実施例21の無機ポリマー溶液(A)の製造において、コロイダルシリカをコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製、商品名;スノーテックス(登録商標)ST-UP、動的光散乱法の平均粒子径40~100nm、固形分20wt%、溶媒;水)に変更した以外は実施例21と同様にしてコーティング剤を製造し、初期物性と耐久性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0104】
(実施例26;第3の実施形態のコーティング剤)
実施例25の無機ポリマー溶液(A)を用い、実施例25のコーティング剤の製造において透明ナノファイバーとしてキチンナノファイバー(株式会社スギノマシン社製、商品名;BiNFi-s SFo-20002)を無機ポリマー溶液(A)全量に対して2質量%添加した以外は実施例25と同様にしてコーティング剤を製造し、初期物性と耐久性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0105】
(実施例27;第3の実施形態のコーティング剤)
実施例21の無機ポリマー溶液(A)の製造において、テトラエトキシシランを14.6gに、エタノールを19.8gに、イオン交換水を12.4gに、チタニアゾルをチタニアゾル(多木化学株式会社製、商品名;タイノックM-6、二次粒子径10nm、固形分6wt%)33.2gに変更し、コロイダルシリカをコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製、商品名;スノーテックス(登録商標)ST-UP、動的光散乱法の平均粒子径40~100nm、固形分20wt%、溶媒;水)17.4gに、スルホン酸塩化合物を2.7gに変更した以外は実施例21と同様にしてコーティング剤を製造し、初期物性と耐久性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0106】
(実施例28;第3の実施形態のコーティング剤)
実施例27の無機ポリマー溶液(A)を用い、実施例27のコーティング剤の製造において透明ナノファイバーとしてキチンナノファイバー(株式会社スギノマシン社製、商品名;BiNFi-s SFo-20002)を無機ポリマー溶液(A)全量に対して2質量%添加した以外は実施例27と同様にしてコーティング剤を製造し、初期物性と耐久性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0107】
(実施例29;第3の実施形態のコーティング剤)
実施例21の無機ポリマー溶液(A)の製造において、コロイダルシリカをコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製、商品名;スノーテックス(登録商標)ST-OS、BET粒子径8~11nm、固形分20wt%、溶媒;水)に変更した以外は実施例21と同様にしてコーティング剤を製造し、初期物性と耐久性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0108】
(実施例30;第3の実施形態のコーティング剤)
実施例29の無機ポリマー溶液(A)を用い、実施例29のコーティング剤の製造において透明ナノファイバーとしてキチンナノファイバー(株式会社スギノマシン社製、商品名;BiNFi-s SFo-20002)を無機ポリマー溶液(A)全量に対して2質量%添加した以外は実施例29と同様にしてコーティング剤を製造し、初期物性と耐久性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0109】
(実施例31;第3の実施形態のコーティング剤)
実施例21の無機ポリマー溶液(A)の製造において、イオン交換水を9.3gに変更し、コロイダルシリカをコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製、商品名;スノーテックス(登録商標)ST-OUP、動的光散乱法の平均粒子径40~100nm、固形分15wt%、溶媒;水)32.7gに変更した以外は実施例21と同様にしてコーティング剤を製造し、初期物性と耐久性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0110】
(実施例32;第3の実施形態のコーティング剤)
実施例31の無機ポリマー溶液(A)を用い、実施例31のコーティング剤の製造において透明ナノファイバーとしてキチンナノファイバー(株式会社スギノマシン社製、商品名;BiNFi-s SFo-20002)を無機ポリマー溶液(A)全量に対して2質量%添加した以外は実施例31と同様にしてコーティング剤を製造し、初期物性と耐久性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0111】
(実施例33;第3の実施形態のコーティング剤)
窒素雰囲気下で、テトラエトキシシラン(多摩化学工業株式会社製)19.2gと、コロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製、商品名;スノーテックス(登録商標)ST-XS、シアーズ粒子径4~6nm、固形分20wt%、溶媒;水)13.2gと、溶媒としてエタノール17.7gと、イオン交換水9.2gと、屈折率調整剤としてチタニアゾル(多木化学株式会社製、商品名;タイノックAM-15、二次粒子径20nm、固形分15wt%)39.0gを反応容器に入れ、40℃で6時間攪拌して、超親水性官能基を付与する化合物としてスルホン酸塩化合物(キヨスミ研究所社製、商品名;KS-S10X)6.1gを添加し、触媒として硝酸(関東化学株式会社製、商品名;硝酸1.38)を溶液全体のpHが2となるように反応容器に入れ、40℃で3時間攪拌して、無機ポリマー溶液(A)を得た。
次に、得られた無機ポリマー溶液(A)の全量に対して、溶媒としてエタノールを体積比で0.7%添加し、25℃で1時間攪拌してコーティング剤を製造し、実施例1と同様の条件で初期物性と耐久性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0112】
(実施例34;第3の実施形態のコーティング剤)
実施例33の無機ポリマー溶液(A)を用い、実施例33のコーティング剤の製造において透明ナノファイバーとしてキチンナノファイバー(株式会社スギノマシン社製、商品名;BiNFi-s SFo-20002)を無機ポリマー溶液(A)全量に対して2質量%添加した以外は実施例33と同様にしてコーティング剤を製造し、初期物性と耐久性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0113】
(実施例35;第3の実施形態のコーティング剤)
実施例33の無機ポリマー溶液(A)の製造において、コロイダルシリカをコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製、商品名;スノーテックス(登録商標)ST-UP、動的光散乱法の平均粒子径40~100nm、固形分20wt%、溶媒;水)に変更した以外は実施例33と同様にしてコーティング剤を製造し、初期物性と耐久性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0114】
(実施例36;第3の実施形態のコーティング剤)
実施例35の無機ポリマー溶液(A)を用い、実施例35のコーティング剤の製造において透明ナノファイバーとしてキチンナノファイバー(株式会社スギノマシン社製、商品名;BiNFi-s SFo-20002)を無機ポリマー溶液(A)全量に対して2質量%添加した以外は実施例35と同様にしてコーティング剤を製造し、初期物性と耐久性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0115】
(実施例37;第3の実施形態のコーティング剤)
実施例33の無機ポリマー溶液(A)の製造において、コロイダルシリカをコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製、商品名;スノーテックス(登録商標)ST-OS、BET粒子径8~11nm、固形分20wt%、溶媒;水)に変更した以外は実施例33と同様にしてコーティング剤を製造し、初期物性と耐久性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0116】
(実施例38;第3の実施形態のコーティング剤)
実施例37の無機ポリマー溶液(A)を用い、実施例37のコーティング剤の製造において透明ナノファイバーとしてキチンナノファイバー(株式会社スギノマシン社製、商品名;BiNFi-s SFo-20002)を無機ポリマー溶液(A)全量に対して2質量%添加した以外は実施例37と同様にしてコーティング剤を製造し、初期物性と耐久性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0117】
(実施例39;第3の実施形態のコーティング剤)
実施例33の無機ポリマー溶液(A)の製造において、テトラエトキシシランを18.4gに、コロイダルシリカをコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製、商品名;スノーテックス(登録商標)ST-OUP、動的光散乱法の平均粒子径40~100nm、固形分15wt%、溶媒;水)16.8gに、チタニアゾルを37.4gに、スルホン酸塩化合物を4.7gに、溶媒としてエタノールを17.1gとイオン交換水4.7gに変更した以外は実施例33と同様にしてコーティング剤を製造し、初期物性と耐久性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0118】
(実施例40;第3の実施形態のコーティング剤)
実施例39の無機ポリマー溶液(A)を用い、実施例39のコーティング剤の製造において透明ナノファイバーとしてキチンナノファイバー(株式会社スギノマシン社製、商品名;BiNFi-s SFo-20002)を無機ポリマー溶液(A)全量に対して2質量%添加した以外は実施例39と同様にしてコーティング剤を製造し、初期物性と耐久性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0119】
(実施例41;第3の実施形態のコーティング剤)
窒素雰囲気下で、テトラエトキシシラン(多摩化学工業株式会社製)22.7gと、溶媒としてメタノール14.3gと、イオン交換水20.2gと、屈折率調整剤としてジルコニアゾル(堺化学工業株式会社製、商品名;商品名SZR-W、D503nm、固形分30wt%、溶媒;水)16.1gと、触媒として硝酸(関東化学株式会社製、商品名;硝酸1.38)を溶液全体のpHが終始2となるように反応容器に入れ、40℃で2時間攪拌した後、コロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製、商品名;スノーテックス(登録商標)ST-XS、シアーズ粒子径4~6nm、固形分20wt%、溶媒;水)20.2gを添加して2時間撹拌した後、超親水性官能基を付与する化合物としてスルホン酸塩化合物(キヨスミ研究所社製、商品名;KS-S10X)77.2gを添加し、40℃で2時間攪拌して、無機ポリマー溶液(A)を得た。
次に、得られた無機ポリマー溶液(A)の全量に対して、溶媒としてメタノールを体積比で0.7%添加し、25℃で1時間攪拌してコーティング剤を製造し、バーコーター(バーNo.12)を用いて製膜した以外は実施例1と同様の初期物性と耐久性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0120】
(実施例42;第3の実施形態のコーティング剤)
実施例41の無機ポリマー溶液(A)の製造において、溶媒としてメタノールの代わりにエタノールを用い、40℃で3時間攪拌した後、コロイダルシリカを添加し、40℃で3時間攪拌した後、スルホン酸塩化合物を添加し、40℃で3時間攪拌して無機ポリマー溶液(A)を製造し、この無機ポリマー溶液(A)全量に対して、透明ナノファイバーとしてキチンナノファイバー(株式会社スギノマシン社製、商品名;BiNFi-s SFo-20002)2質量%、溶媒としてエタノールを体積比で0.7%添加した以外は実施例41と同様にしてコーティング剤を製造し、初期物性と耐久性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0121】
(実施例43;第3の実施形態のコーティング剤)
実施例41の無機ポリマー溶液(A)の製造において、コロイダルシリカをコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製、商品名;スノーテックス(登録商標)ST-UP、動的光散乱法の平均粒子径40~100nm、固形分20wt%、溶媒;水)に変更した以外は実施例41と同様にしてコーティング剤を製造し、初期物性と耐久性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0122】
(実施例44;第3の実施形態のコーティング剤)
実施例42の無機ポリマー溶液(A)の製造において、コロイダルシリカをコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製、商品名;スノーテックス(登録商標)ST-UP、動的光散乱法の平均粒子径40~100nm、固形分20wt%、溶媒;水)に変更した以外は実施例42と同様にしてコーティング剤を製造し、初期物性と耐久性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0123】
(実施例45;第3の実施形態のコーティング剤)
実施例41の無機ポリマー溶液(A)の製造において、コロイダルシリカをコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製、商品名;スノーテックス(登録商標)ST-OS、BET粒子径8~11nm、固形分20wt%、溶媒;水)に変更した以外は実施例41と同様にしてコーティング剤を製造し、初期物性と耐久性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0124】
(実施例46;第3の実施形態のコーティング剤)
実施例42の無機ポリマー溶液(A)の製造において、コロイダルシリカをコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製、商品名;スノーテックス(登録商標)ST-OS、BET粒子径8~11nm、固形分20wt%、溶媒;水)に変更した以外は実施例42と同様にしてコーティング剤を製造し、初期物性と耐久性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0125】
(実施例47;第3の実施形態のコーティング剤)
実施例41の無機ポリマー溶液(A)の製造において、テトラエトキシシランを22.6gに、溶媒としてメタノールを14.0gとイオン交換水13.6gに変更し、コロイダルシリカをコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製、商品名;スノーテックス(登録商標)ST-OUP、動的光散乱法の平均粒子径40~100nm、固形分15wt%、溶媒;水)26.8gに変更した以外は実施例41と同様にしてコーティング剤を製造し、初期物性と耐久性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0126】
(実施例48;第3の実施形態のコーティング剤)
実施例47の無機ポリマー溶液(A)の製造において、溶媒としてメタノールの代わりにエタノールを用い、40℃で3時間攪拌した後、コロイダルシリカを添加し、40℃で3時間攪拌した後、スルホン酸塩化合物を添加し、40℃で3時間攪拌して無機ポリマー溶液(A)を製造し、この無機ポリマー溶液(A)全量に対して、透明ナノファイバーとしてキチンナノファイバー(株式会社スギノマシン社製、商品名;BiNFi-s SFo-20002)2質量%、溶媒としてエタノールを体積比で0.7%添加した以外は実施例47と同様にしてコーティング剤を製造し、初期物性と耐久性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0127】
(実施例49;第3の実施形態のコーティング剤)
実施例41の無機ポリマー溶液(A)の製造において、テトラエトキシシランを19.0gに、ジルコニアゾルを26.7gに、溶媒をエタノール16.5gとイオン交換水22gに変更し、40℃で3時間攪拌した後、コロイダルシリカを9.6gに変更したうえでコロイダルシリカを添加し、40℃で3時間攪拌した後、スルホン酸塩化合物を添加し、40℃で3時間攪拌して無機ポリマー溶液(A)を製造し、この無機ポリマー溶液(A)全量に対して、透明ナノファイバーとしてキチンナノファイバー(株式会社スギノマシン社製、商品名;BiNFi-s SFo-20002)2質量%、溶媒としてエタノールを体積比で0.7%添加した以外は実施例41と同様にしてコーティング剤を製造し、実施例1と同様の条件で初期物性と耐久性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0128】
(実施例50;第3の実施形態のコーティング剤)
実施例49の無機ポリマー溶液(A)の製造において、コロイダルシリカをコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製、商品名;スノーテックス(登録商標)ST-UP、動的光散乱法の平均粒子径40~100nm、固形分20wt%、溶媒;水)に変更し、コーティング剤の製造において透明ナノファイバーを用いなかった以外は実施例49と同様にしてコーティング剤を製造し、初期物性と耐久性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0129】
(実施例51;第3の実施形態のコーティング剤)
実施例49の無機ポリマー溶液(A)の製造において、コロイダルシリカをコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製、商品名;スノーテックス(登録商標)ST-OS、BET粒子径8~11nm、固形分20wt%、溶媒;水)に変更した以外は実施例49と同様にしてコーティング剤を製造し、初期物性と耐久性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0130】
(実施例52;第3の実施形態のコーティング剤)
実施例49の無機ポリマー溶液(A)の製造において、コロイダルシリカをコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製、商品名;スノーテックス(登録商標)ST-OUP、動的光散乱法の平均粒子径40~100nm、固形分15wt%、溶媒;水)12.8gに、イオン交換水を18.8gに変更し、コーティング剤の製造において透明ナノファイバーを用いなかった以外は実施例49と同様にしてコーティング剤を製造し、初期物性と耐久性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0131】
(実施例53;第3の実施形態のコーティング剤)
窒素雰囲気下で、テトラメトキシシラン(多摩化学工業株式会社製)14.6gと、溶媒としてメタノール21.9gと、イオン交換水12.1gと、屈折率調整剤としてジルコニアゾル(堺化学工業株式会社製、商品名;商品名SZR-W、D503nm、固形分30wt%、溶媒;水)45.3gと、超親水性官能基を付与する化合物としてスルホン酸塩化合物(キヨスミ研究所社製、商品名;KS-S10X)6.4gを添加し、触媒として硝酸(関東化学株式会社製、商品名;硝酸1.38)を溶液全体のpHが2となるように反応容器に入れ、40℃で6時間攪拌して、無機ポリマー溶液(A)を得た。
次に、得られた無機ポリマー溶液(A)の全量に対して、透明ナノファイバーとしてキチンナノファイバー(株式会社スギノマシン社製、商品名;BiNFi-s SFo-20002)2質量%、溶媒としてメタノールを体積比で0.7%添加し、25℃で1時間攪拌してコーティング剤を製造し、初期物性と耐久性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0132】
(実施例54;第3の実施形態のコーティング剤)
実施例31の無機ポリマー溶液(A)の製造において、テトラエトキシシランを15.8gに、エタノールを20.7gに、イオン交換水を17.7gに、チタニアゾルの代わりにセリアゾル(第一稀元素化学工業株式会社製、商品名:CESL-30N、粒子径D505~15nm)13.9gに変更し、コロイダルシリカをコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製、商品名:スノーテックス(登録商標)ST-OUP、動的光散乱法の平均粒子径40~100nm、固形分15wt%、溶媒:水)25.1gに、スルホン酸塩化合物を6.8gに変更した以外は実施例31と同様にしてコーティング剤を製造し、初期物性と耐久性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0133】
(比較例1)
実施例1のコーティング剤の製造において、透明ナノファイバーを用いなかった以外は実施例1と同様にしてコーティング剤を製造し、初期物性と耐久性の評価を行った。結果を表3に示す。
【0134】
(比較例2)
実施例21の無機ポリマー溶液(A)の製造において、エタノールを18.8gに変更し、スルホン酸塩化合物を用いなかった以外は実施例21と同様にしてコーティング剤を製造し、初期物性と耐久性の評価を行った。結果を表3に示す。
【0135】
(比較例3)
実施例41の無機ポリマー溶液(A)の製造において、メタノールを21.5gに変更し、透明ナノファイバーとしてキチンナノファイバー(株式会社スギノマシン社製、商品名;BiNFi-s SFo-20002)を無機ポリマー溶液(A)全量に対して2質量%添加し、スルホン酸塩化合物を用いなかった以外は実施例41と同様にしてコーティング剤を製造し、初期物性と耐久性の評価を行った。結果を表3に示す。
【0136】
(比較例4)
実施例53の無機ポリマー溶液(A)の製造において、メタノールを28.3gに変更し、スルホン酸塩化合物を用いなかった以外は実施例53と同様にしてコーティング剤を製造し、初期物性と耐久性の評価を行った。結果を表3に示す。
【0137】
(評価;基板変更)
実施例1において得られたコーティング剤を、バーコーター(バーNo.7)を用いてバーコート法により70mm×50mmの表面にコロナ処理を施したポリカーボネート基板(タキロンシーアイ株式会社製、厚さ1.5mm)の表面に塗布し、120℃で15分間加熱乾燥させてコーティング膜を得た。なお、上記コロナ処理は、新光電気社製コロナフィットCFG-500にて、表面が親水性になるまで行った。また、実施例33~40、49~52、及び、比較例1~3において得られたコーティング剤については、ポリカーボネート基板とバーコーターとしてバーNo.12を用いた以外は上記同様の条件で、コーティング膜の評価を行った。結果を表3に示す。
【0138】
実施例53と比較例4において得られたコーティング剤の評価は、基板をアルミニウム基板(A6061P板、70mm×30mm、厚さ0.3mm)として、バーコーターとしてバーNo.12を用いてコーティング剤を基板表面に塗布し、150℃15分加熱乾燥して得られたコーティング膜について行った。結果を表3に示す。
【0139】
【表1】
【0140】
【表2】
【0141】
【表3】
【0142】
(実施例55)
実施例1、実施例9、実施例21で得られたコーティング剤のそれぞれについて、以下の方法により、市販の表面がガラス製の鏡にコーティングを行った。まず、エタノールを用いて、鏡の表面を洗浄した。次に、鏡の表面にコーティング剤をスプレー塗布した。塗布量としては、乾燥後のコーティング膜の厚さが500nm以下となるように塗布した。塗布後、すぐに、コーティング剤の全てが乾燥する前に、塗布面を、流水を利用して洗浄した。鏡の表面をエタノールで洗浄し、コーティング剤の塗布面を流水で洗い流し終えるまでの所要時間は、約1分であった。そして、得られたコーティング膜の表面に付着した水を20℃で1時間乾燥させた。
【0143】
得られたコーティング膜はいずれも、水の接触角が10°以下であり、呼気によりコーティング膜の表面が曇ることはなく、スプレーにより水を噴霧しても表面に水膜が形成された。さらに、得られたコーティング膜はいずれも、コーティング膜の形成から2ヶ月間、浴室内で放置した後に、スプレーにより水を噴霧しても表面に水膜が形成された。また、得られたコーティング膜はいずれも、コーティング膜の形成から3ヶ月間、屋外で放置した後に、スプレーにより水を噴霧しても表面に水膜が形成された。一方、本実施例で用いた市販のガラス製の鏡そのものは、水の接触角が45°であり、呼気により鏡の表面は曇り、スプレーにより水を噴霧しても表面に水膜は形成されなかった。
【0144】
(実施例56)
実施例1、実施例9、実施例21で得られたコーティング剤のそれぞれについて、以下の方法により、アルミ製の板にコーティングを行った。まず、エタノールを用いて、表面を洗浄した。次に、表面にコーティング剤をスプレー塗布した。塗布量としては、乾燥後のコーティング膜の厚さが500nm以下となるように塗布した。塗布後、すぐに、コーティング剤の全てが乾燥する前に、塗布面を、流水を利用して洗浄した。表面をエタノールで洗浄し、コーティング剤の塗布面を流水で洗い流し終えるまでの所要時間は、約1分であった。そして、得られたコーティング膜の表面に付着した水を20℃で1時間乾燥させた。得られたコーティング膜はいずれも、スプレーにより水を噴霧しても表面に水膜が形成された。
【0145】
(実施例57)
実施例1、実施例9、実施例21で得られたコーティング剤のそれぞれについて、以下の方法により、ステンレス製の板にコーティングを行った。まず、エタノールを用いて、表面を洗浄した。次に、表面にコーティング剤をスプレー塗布した。塗布量としては、乾燥後のコーティング膜の厚さが500nm以下となるように塗布した。塗布後、すぐに、コーティング剤の全てが乾燥する前に、塗布面を、流水を利用して洗浄した。表面をエタノールで洗浄し、コーティング剤の塗布面を流水で洗い流し終えるまでの所要時間は、約1分であった。そして、得られたコーティング膜の表面に付着した水を20℃で1時間乾燥させた。得られたコーティング膜はいずれも、スプレーにより水を噴霧しても表面に水膜が形成された。