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特許7590744空気供給機の異常検知装置及び空気供給機の異常検知方法
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  • 特許-空気供給機の異常検知装置及び空気供給機の異常検知方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】空気供給機の異常検知装置及び空気供給機の異常検知方法
(51)【国際特許分類】
   F04D 27/00 20060101AFI20241120BHJP
   F04B 49/10 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
F04D27/00 H
F04B49/10 331G
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2024064340
(22)【出願日】2024-04-12
【審査請求日】2024-04-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524141212
【氏名又は名称】株式会社岡山市環境整備協会
(73)【特許権者】
【識別番号】503306711
【氏名又は名称】株式会社アウルホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】弁理士法人森特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八田 高志
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-189982(JP,A)
【文献】実開昭57-071781(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 27/00
F04B 49/10
F04C 28/28
C02F 3/00
C02F 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エア配管を経て水中に空気を供給する空気供給機の異常検知装置であって、
前記エア配管の表面温度を測定する第1温度センサーが第1断熱材に内蔵された配管側センサーユニットと、
大気温度を測定する第2温度センサーが第2断熱材に内蔵された大気側センサーユニットとを備えており、
前記第1温度センサーと前記第2温度センサーは、前記エア配管の表面温度と、前記大気温度との差が所定の温度差以下となったときに前記空気供給機の異常を検知するために用いるものであり、
前記配管側センサーユニットは、前記空気供給機の外部において、前記エア配管に取り付けられ、前記大気側センサーユニットは、前記配管側センサーユニットに取り付けられることを特徴とする空気供給機の異常検知装置。
【請求項2】
エア配管を経て水中に空気を供給する空気供給機の異常検知方法であって、
前記エア配管の表面温度を測定する第1温度センサーが第1断熱材に内蔵された配管側センサーユニットと、
大気温度を測定する第2温度センサーが第2断熱材に内蔵された大気側センサーユニットとを用い、
第1温度センサーで測定した前記エア配管の表面温度と、前記第2温度センサーで測定した前記大気温度との差が所定の温度差以下となったときに前記空気供給機の異常を検知し、
前記配管側センサーユニットは、前記空気供給機の外部において、前記エア配管に取り付けられ、前記大気側センサーユニットは、前記配管側センサーユニットに取り付けられることを特徴とする空気供給機の異常検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロワー又は送風機と呼ばれる空気供給機の異常検知に関する。
【背景技術】
【0002】
水槽や浄化槽へ空気供給機を用いて空気を供給することが行われている。例えば、浄化槽においては、ブロワーと呼ばれる空気供給機が用いられ、ブロワーから浄化槽の接触ばっ気槽に空気が供給される。このことにより、液体と空気を接触させてばっ気し、接触材である好気性微生物に汚水が循環接触して浄化が行われる。したがって、ブロワーが故障すると浄化槽が正常に機能しなくなるため、ブロワーの異常検知を速やかに行う必要がある。
【0003】
この点、特許文献1に記載の浄化槽用ブロワー等の保守点検システムは、ブロワー等の機器の駆動モータに給電する電線にCTコイルを装着することで、電流値の変化を検知することにより、ブロワーやポンプの異常を把握することができるようにしている。また、特許文献2に記載の汚水浄化装置用の異常検知装置は、送風機の吸気側に発生する吸気圧を利用し、吸気圧の変化から浄化槽および送風機の異常を検知し、管理者などに報知することができるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第3235585号公報
【文献】特許第437751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の保守点検システムのように、電流検知器を用いると、電流検知器自体が高価である上、電流検知器を装着するためにブロワーの分解作業が必要であり、取り付けに手間がかかった。特許文献2に記載の異常検知装置においては、差圧スイッチを内蔵した装置ボックスと専用の吸気チューブが必要であった。このため、全体として高価になる上、長さ調整を伴う吸気チューブの装着等が必要であり、取り付けに手間がかかるものであった。
【0006】
本発明は、前記のような従来の問題を解決するものであり、低コストかつ取り付け容易な空気供給機の異常検知装置及び異常検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の空気供給機の異常検知装置は、エア配管を経て水中に空気を供給する空気供給機の異常検知装置であって、前記エア配管の表面温度を測定する第1温度センサーと、大気温度を測定する第2温度センサーとを備えており、前記第1温度センサーと前記第2温度センサーは、前記エア配管の表面温度と、前記大気温度との差から前記空気供給機の異常を検知するために用いるものであることを特徴とする。
【0008】
本発明の空気供給機の異常検知方法は、エア配管を経て水中に空気を供給する空気供給機の異常検知方法であって、前記エア配管の表面温度を測定する第1温度センサーと、大気温度を測定する第2温度センサーとを用い、第1温度センサーで測定した前記エア配管の表面温度と、前記第2温度センサーで測定した前記大気温度との差から前記空気供給機の異常を検知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、既存の設備に改造を加えることなく、空気供給機の異常検知が実施可能になる。また、異常検知は、温度センサーによる温度データに基づくものであるので、高価な電流検知センサーや圧力検知センサーは不要になる。すなわち、本発明によれば、低コストかつ取り付け容易な空気供給機の異常検知装置及び異常検知方法が実現可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る空気供給機の異常検知装置を用いた異常検知システムの全体図。
図2】本発明の一実施形態において、ブロワー及び異常検知装置を示す拡大斜視図。
図3】本発明の一実施形態において、検出結果及び演算結果の一例を示した図。
図4】本発明の一実施形態に係る異常検知装置のデータ処理の流れに、管理者の作業の流れを追加したフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、空気供給機の異常検知に関するものである。空気供給機の異常は、例えば駆動部や吐出弁・吸入弁の故障によるものである。空気供給機は、例えばブロワー又は送風機と呼ばれるものであり、本実施形態ではエアポンプやファンにより空気が吐出されるものを想定している。本実施形態では、異常検知の対象を浄化槽に用いるブロワーの例で説明しているが、これに限るものではなく、液体中に空気を吹き込むための空気供給機であればよい。例えば、空気供給機は、水槽や生け簀の水中に空気を吹き込むためのものであってもよい。
【0012】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は本発明の一実施形態に係る空気供給機の異常検知装置(以下、単に「異常検知装置」という。)1を用いた異常検知システムの全体図である。異常検知装置1は、浄化槽20に用いるブロワー30の異常を検知するものである。浄化槽20は、嫌気ろ床槽第1槽21、嫌気ろ床槽第2槽22、接触ばっき槽23、沈殿槽24及び消毒槽25を備えている。
【0013】
嫌気ろ床槽第1槽21及び嫌気ろ床槽第2槽22において、ろ材26、27が汚水に含まれる浮遊物を取り除き、酸素を必要としない嫌気性微生物が汚水中の有機物を分解し、浄化する。接触ばっき槽23には、ブロワー30に接続されたエア配管31からの空気が吹き込まれ、汚水がばっきされながら、接触材28に循環接触する。このことにより、汚水は接触材28に付着する好気性微生物により、さらに浄化される。
【0014】
接触ばっき槽23を経た処理水は、沈殿槽24に流入し、固形物は沈殿し、上澄み水は消毒槽25へ送り出される。消毒槽25では、処理水は塩素消毒され、衛生的に安全な水となって放流される。
【0015】
図1において、ブロワー30のエア配管31側には異常検知装置1が設置されている。異常検知装置1は、配管側センサーユニット2、大気側センサーユニット3及び無線電送器4を備えている。図2はブロワー30及び異常検知装置1を示す拡大斜視図である。配管側センサーユニット2は、筒状の断熱材5の内周面に第1温度センサー6を配置したものである。図2に示した配管側センサーユニット2の装着状態においては、第1温度センサー6はエア配管31に接触している。第1温度センサー6の種類は特に限定はなく、対象物の表面温度を測定できるものであればよい。
【0016】
断熱材5には切り込み7が形成されており、切り込み7において、断熱材5を開くことができ、断熱材5のエア配管31への着脱が容易になる。第1温度センサー6は断熱材5に予め固定しておいてもいが、断熱材5のエア配管31への装着時に、断熱材5の内周面に配置してもよい。また、温度センサー5を固定具で配管31に取り付けてから、断熱材5を装着してもよい。断熱材5を用いているのは、第1温度センサー6がエア配管31以外の温度を検知しないようにするためであり、断熱材5は筒状に限るものではない。別途カバーを設ける等、他の構成により、第1温度センサー6がエア配管31以外の温度を検知しないようにした場合は、断熱材5を省いてもよい。
【0017】
大気側センサーユニット3は、筒状の断熱材8の内周面に第2温度センサー9を配置したものである。第2温度センサー9の種類は特に限定はなく、大気温度を測定できるものであればよく、配管側センサーユニット2に用いる第1温度センサー6と同一物を用いてもよい。断熱材8を用いているのは、直射日光を避けるためであり、断熱材8は筒状に限るものではない。また、直射日光の影響を受けにくい環境であれば、断熱材8を省いてもよい。例えば、風通しのよい日陰に設置する場合や、別途日除けを設置した場合等が挙げられる。
【0018】
図2では、固定具10により、配管側センサーユニット2に、大気側センサーユニット3を固定している。このことにより、両ユニットがエア配管31に取り付けられている。固定具10は金属製バンドでもよく、樹脂製バンドでもよい。また、取り付け方法は図2の例に限るものではなく、第1温度センサー6及び第2温度センサー9の位置が安定する方法であれば、他の方法であってもよい。
【0019】
第1温度センサー6及び第2温度センサー9の測定値は無線電送器4に入力される。無線電送器4は、計測手段11と通信手段(通信モジュール)12を備えている。計測手段11は、第1温度センサー6及び第2温度センサー9の測定値をデジタル変換して通信モジュール12に出力する。通信モジュール12は、これらのデジタル変換された温度データをアンテナ13を経て、基地局40(図1参照)へ送信する。
【0020】
後述するとおり、図1において、基地局40へ送信された温度データは、ユーザー端末42及び管理者端末43へ送信される。これらの端末において、第1温度センサー6によるエア配管31の表面温度T1と第2温度センサー9による大気温度T2との差が演算される。本願発明者は、ブロワー30等の空気供給手段の異常検知方法について、研究及び実験を繰り返した結果、ブロワー30等で空気を浄化槽20等の水中に送るときに、圧縮熱により空気の温度が、例えば15~17℃程度上昇することに着目した。すなわち、空気供給手段が正常運転している際は、エア配管31内を流動する空気の温度は、大気温度よりも所定範囲の温度だけ高くなる。したがって、空気供給手段が故障により異常運転している際は、エア配管31内を流動する空気の温度と大気温度との差は正常運転のときよりも小さくなる。本願発明者は、この現象に着目し、空気供給機のエア配管表面温度と大気温度との温度差に基づく空気供給機の異常検知装置及び空気供給機の異常検知方法を導き出した。
【0021】
すなわち、本実施形態に係る異常検知は、エア配管表面温度T1(℃)と大気温度T2(℃)との温度差が所定の温度差T3(℃)以下となったときに、空気供給機(図1及び図2ではブロワー30)に異常が生じていると判断するものである。所定の温度差T3(℃)は、空気供給機の仕様に応じて、予め求めた値でもよく、空気供給機の設置場所において、測定して求めた値でもよい。本実施形態では、T1(℃)はエア配管31内の気中温度ではなく、エア配管31の表面温度であるので、エア配管31の加工や改造を伴うことなく、第1温度センサー6を設置することができる。
【0022】
図3に、検出結果及び演算結果の一例を示している。計測手段11は、所定の時間間隔で、第1温度センサー6及び第2温度センサー9からの測定値を検出し、図1に示したユーザー端末42及び管理者端末43において、温度データから温度差ΔT(℃)を算出する。ΔTは、エア配管表面温度T1(℃)と大気温度T2(℃)との差(T1-T2)である。ユーザー端末42及び管理者端末43は、温度差ΔTがT3(℃)よりも大きいと正常と判断し、温度差ΔTがT3以下であると異常と判断する。図3の例では、時刻t100に至る前は、温度差ΔTがT3よりも大きく正常であるが、時刻t100においてΔTがT3以下となり、異常が検出されている。
【0023】
以下、図4に示したフローチャートを参照しながら、図1に示した浄化槽20に用いるブロワー30の異常検知システムについて、時系列的に説明する。図4は、図1に示した異常検知システムにおけるデータ処理の流れに、管理者の作業の流れを追加したフローチャートである。図1において、浄化槽20及びブロワー30の運転が開始すると(図4のステップ100)、接触ばっき槽23にエア配管31からの空気が吹き込まれる。この間、図2に示した第1温度センサー6により、エア配管31の表面温度が測定され、第2温度センサー9により、大気温度が測定される(図4のステップ101)。
【0024】
図2に示した計測手段11は、第1温度センサー6からの測定値を温度データT1にデジタル変換し、第2温度センサー9からの測定値を温度データT2にデジタル変換する。温度データT1及びT2は、通信手段12に出力する。通信手段12は、これらの温度データT1、T2をアンテナ13を経て、基地局40へ送信する(図4のステップ102)。図1において、基地局40から送信された温度データT1、T2はインターネットを介してクラウド41上のサーバーに保存される。サーバ上の温度データT1、T2は、インターネットを介して、ユーザ端末42及び管理者端末43で受信可能である(図4のステップ103)。
【0025】
ユーザ端末42及び管理者端末43において、温度データT1、T2から温度差ΔT(T1-T2)を算出する(図4のステップ104)。管理者は、管理者端末43の表示から、ブロワー30に異常が生じているか否かを確認する(図4のステップ105)。例えば、端末43の表示画面が図3に準じたものに設定していた場合は、管理者は判定欄の「異常」表示により異常を確認する。「異常」表示は、文字でもよいがマーク等でもよく、色を変えたり、警告音を鳴らしたりするものでもよい。ユーザ端末42においても、管理者端末43と同様の内容が表示がされるので、ユーザが異常を確認することも可能である。
【0026】
異常を確認した管理者は、現地確認のために、現地へ保守点検者を派遣する(図4のステップ106)。保守点検者は、異常が確認された場合は、必要に応じて運転を停止する(図4のステップ107)。以後、保守点検者はブロワー30の点検を行い、修理のための準備を行っていく。
【0027】
図1では、浄化槽20の図示は1つであるが、多数の浄化槽20のそれぞれのブロワー30に、異常検知装置1を設置した場合は、多数の浄化槽20の各ユーザのユーザ端末42で測定結果を確認できるとともに、管理者は管理者端末43で、多数の浄化槽20の測定結果を一元管理することが可能となる。
【0028】
前記実施形態では、ユーザ端末42及び管理者端末43において、温度差ΔT(T1-T2)を算出しているが、計測手段11で算出してもよく、クラウド41上のサーバで算出してもよい。また、前記実施形態では、異常検知装置1は、通信手段12を含む無線電送器4を備えたものであったが、通信手段12を省いたものであってもよい。この場合は、無線電送器4に代えて、計測手段11による演算結果を表示する表示器を用いれば、当該設備のユーザーは異常を知ることが可能になる。
【0029】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明によれば、既存の設備に改造を加えることなく、空気供給機の異常検知が実施可能になる。また、異常検知は、温度センサーによる温度データに基づくものであるので、高価な電流検知センサーや圧力検知センサーは不要になる。すなわち、本発明によれば、低コストかつ取り付け容易な空気供給機の異常検知装置及び異常検知方法が実現可能になる。
【符号の説明】
【0030】
1 空気供給機の異常検知装置
2 配管側センサーユニット
3 大気側センサーユニット
4 無線電送器
6 第1温度センサー
9 第2温度センサー
11 計測手段
12 通信手段
30 ブロワー
31 エア配管
【要約】
【課題】低コストかつ取り付け容易な空気供給機の異常検知装置及び異常検知方法を提供する。
【解決手段】エア配管31を経て水中に空気を供給する空気供給機30の異常検知装置1であって、エア配管31の表面温度を測定する第1温度センサー6と、大気温度を測定する第2温度センサー9とを備えており、第1温度センサー6と第2温度センサー9は、エア配管31の表面温度と、大気温度との差から空気供給機30の異常を検知するために用いるものである。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4