(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】流水式環境制御システムおよびこれを用いた施設
(51)【国際特許分類】
A01G 9/24 20060101AFI20241120BHJP
A01G 7/00 20060101ALI20241120BHJP
A01G 18/69 20180101ALI20241120BHJP
A01G 22/25 20180101ALI20241120BHJP
【FI】
A01G9/24 U
A01G7/00 601Z
A01G18/69
A01G22/25 Z
(21)【出願番号】P 2020217643
(22)【出願日】2020-12-25
【審査請求日】2023-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】513230859
【氏名又は名称】株式会社雪屋媚山商店
(74)【代理人】
【識別番号】110004392
【氏名又は名称】弁理士法人佐川国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100110766
【氏名又は名称】佐川 慎悟
(74)【代理人】
【識別番号】100165515
【氏名又は名称】太田 清子
(74)【代理人】
【識別番号】100169340
【氏名又は名称】川野 陽輔
(74)【代理人】
【識別番号】100195682
【氏名又は名称】江部 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100206623
【氏名又は名称】大窪 智行
(72)【発明者】
【氏名】本間 弘達
(72)【発明者】
【氏名】大西 洋一
(72)【発明者】
【氏名】堀川 幸博
(72)【発明者】
【氏名】中畑 久
(72)【発明者】
【氏名】小谷 愛花
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-81474(JP,A)
【文献】特開平9-107798(JP,A)
【文献】特開2016-144440(JP,A)
【文献】特開2002-79286(JP,A)
【文献】特開平11-246277(JP,A)
【文献】登録実用新案第3221077(JP,U)
【文献】特開昭61-119122(JP,A)
【文献】特開2017-201917(JP,A)
【文献】特開2018-166451(JP,A)
【文献】特開2003-57(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0212945(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/24
A01G 7/00
A01G 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
施設内に水を流して室内環境を制御する流水式環境制御システムであって、
前記施設の内壁面を側面とし、前記施設の構造床を底面として構成され、前記構造床上に水を循環可能に貯水されてなる環境制御プールと、
前記環境制御プール内の前記構造床上に透水性を有する材料によって形成されているとともに、前記環境制御プールの水面より高い位置に床面を備えてなる透水性作業床と、
水温が略一定に保持された水を貯水する貯水槽と、
前記貯水槽内の水を前記環境制御プールへ供給して前記貯水槽へ循環させる循環ポンプと、
を有する、流水式環境制御システム。
【請求項2】
前記環境制御プールは、
前記構造床上に設けられ、互いに向かい合う前記内壁面のそれぞれと密接する前記透水性作業床を介在して、前記循環ポンプからの循環水が供給される上流側プールと、前記循環水が排水される下流側プールと
に隔てられている、請求項1に記載の流水式環境制御システム。
【請求項3】
前記上流側プールにおける前記循環水の供給口と、前記下流側プールにおける前記循環水の排水口とは、互いに前記施設の対角位置近傍に設けられている、請求項2に記載の流水式環境制御システム。
【請求項4】
前記透水性作業床は、破砕されたホタテ貝殻とセメントとの混合物によって構成されている、請求項1から請求項3のいずれかに記載の流水式環境制御システム。
【請求項5】
前記施設内には、前記施設内に散水することで加湿するとともに前記環境制御プールに水を補給するための散水ノズルが、前記透水性作業床の床面に沿って所定の高さ位置から散水するように複数設けられている、請求項1から請求項4のいずれかに記載の流水式環境制御システム。
【請求項6】
前記貯水槽内には熱媒を流通させる熱交換パイプが配管されており、前記熱媒を冷却する際には雪から回収された冷熱が利用されるとともに、前記熱媒を加熱する際にはデータセンタの廃熱から回収された温熱が利用される、請求項1から請求項5のいずれかに記載の流水式環境制御システム。
【請求項7】
前記施設は、完全に遮光されたキノコ類の栽培施設、またはサツマイモ類の傷口を自然治癒させるキュアリング施設として構成されている、請求項1から請求項6のいずれかに記載の流水式環境制御システム。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の流水式環境制御システムによって室内環境が制御される、施設。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キノコ類等を栽培する栽培施設や、サツマイモ類等を自然治癒させるキュアリング施設の室内環境を制御する流水式環境制御システムおよびこれを用いた施設に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、所定の施設の室内環境を制御するものとして、例えば、特開2013-94077号公報には、外気を取り入れて温度を一定に調整する温度調整室と、前記温度調整室内の温度調整済みの空気を送り込み、湿度を調整して茸類を栽培する茸類栽培室とを有する茸類栽培用ハウスが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された発明においては、温度の調節を空調設備によって行い、湿度の調節を加湿器によって行っている。このため、空調設備や加湿器を導入するためのイニシャルコストがかかる上、栽培対象物に適した温度・湿度を維持するには、空調設備および加湿器の双方を運転し続けなければならず、電気代等のランニングコストがかかるという問題がある。
【0005】
また、空調設備や加湿器を用いて施設の室内環境を調節する場合、施設内に温度ムラや湿度ムラができやすい。このため、栽培対象物の生育状態にばらつきが発生しやすく、収量や品質等に影響を及ぼすおそれもある。
【0006】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、施設の室内環境を安価に制御し、温度ムラや湿度ムラの少ない良好な室内環境を維持することができる流水式環境制御システムおよびこれを用いた施設を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る流水式環境制御システムは、施設の室内環境を安価に制御し、温度ムラや湿度ムラの少ない良好な室内環境を維持するという課題を解決するために、施設内に水を流して室内環境を制御する流水式環境制御システムであって、前記施設内の構造床上に水を循環可能に貯水されてなる環境制御プールと、前記環境制御プール内の前記構造床上に透水性を有する材料によって形成されているとともに、前記環境制御プールの水面より高い位置に床面を備えてなる透水性作業床と、水温が略一定に保持された水を貯水する貯水槽と、前記貯水槽内の水を前記環境制御プールへ供給して前記貯水槽へ循環させる循環ポンプと、を有する。
【0008】
また、本発明の一態様として、透水性作業床に循環水を透水させ、循環水の蒸発や循環水との熱交換を促進するという課題を解決するために、前記環境制御プールは、前記透水性作業床を介在して、前記循環ポンプからの循環水が供給される上流側プールと、前記循環水が排水される下流側プールとで構成されていてもよい。
【0009】
さらに、本発明の一態様として、環境制御プール全体に循環水を行き渡らせて、温度ムラや湿度ムラを一層低減するという課題を解決するために、前記上流側プールにおける前記循環水の供給口と、前記下流側プールにおける前記循環水の排水口とは、互いに前記施設の対角位置近傍に設けられていてもよい。
【0010】
また、本発明の一態様として、透水性作業床内に透水した水の流れを横方向に誘導して循環し易くするという課題を解決するために、前記透水性作業床は、破砕されたホタテ貝殻とセメントとの混合物によって構成されていてもよい。
【0011】
さらに、本発明の一態様として、施設内の加湿および循環水の補給を行うという課題を解決するために、前記施設内には、前記施設内に散水することで加湿するとともに前記環境制御プールに水を補給するための散水ノズルが、前記透水性作業床の床面に沿って所定の高さ位置から散水するように複数設けられていてもよい。
【0012】
また、本発明の一態様として、捨てられる冷熱や温熱によって一定温度に保持された水を用いて施設内の室内環境を調節し、ランニングコストを安価にするという課題を解決するために、前記貯水槽内には熱媒を流通させる熱交換パイプが配管されており、前記熱媒を冷却する際には雪から回収された冷熱が利用されるとともに、前記熱媒を加熱する際にはデータセンタの廃熱から回収された温熱が利用されてもよい。
【0013】
さらに、本発明の一態様として、白きくらげ等のキノコ類を安価に通年栽培する、または干し芋の原材料を通年で確保するという課題を解決するために、前記施設は、完全に遮光されたキノコ類の栽培施設、またはサツマイモ類の傷口を自然治癒させるキュアリング施設として構成されていてもよい。
【0014】
本発明に係る施設は、室内環境を安価に制御し、温度ムラや湿度ムラの少ない良好な室内環境を維持することができるという課題を解決するために、上述したいずれかの流水式環境制御システムによって室内環境が制御される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、施設の室内環境を安価に制御し、温度ムラや湿度ムラの少ない良好な室内環境を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る流水式環境制御システムおよびこれを用いた施設の一実施形態を示す全体図である。
【
図2】本実施形態の環境制御プールおよび透水性作業床の配置関係を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る流水式環境制御システムおよびこれを用いた施設の実施形態について図面を用いて説明する。
【0018】
本発明に係る流水式環境制御システム1は、施設10内に水を流して温度や湿度等の室内環境を制御するためのものであり、
図1に示すように、主として、水を循環可能に貯水されてなる環境制御プール2と、透水性を有する材料によって形成される透水性作業床3と、水を貯水する貯水槽4と、水を循環させる循環ポンプ5と、施設10内に散水する散水ノズル6とを有している。以下、各構成について説明する。
【0019】
なお、本実施形態において、施設10は完全に遮光されており、白きくらげのようなキノコ類の栽培施設10として好適に構成されているが、この構成に限定されるものではなく、一定の温度および湿度に調整された室内環境を必要とする施設10であればよい。具体的には、サツマイモ類の傷口を自然治癒させるキュアリング施設として構成してもよい。サツマイモ類を30℃以上の多湿な環境下で保存すると、傷口の表皮下にコルク層が形成されて自然治癒(キュアリング)する。このキュアリングによって、サツマイモ類の保存可能期間が長期化するため、干し芋の原材料等を通年で確保することが可能となる。
【0020】
また、栽培施設10における他の栽培対象物としては、例えば、黒きくらげ、椎茸、エリンギ、えのき茸、しめじ、イチゴ、みかん、バナナ、カカオ等のように、高湿度環境で育つ植物、果物、菌類等であれば広く適用できる。また、キュアリング施設における他のキュアリング対象物としては、植物の球根等が挙げられる。
【0021】
環境制御プール2は、施設10の室内環境を制御するための水を貯水するものである。室内環境のうち特に、室温の維持と高湿度を維持するために用いられる。本実施形態において、環境制御プール2は、
図1に示すように、施設10内の構造床11上に設けられており、所定深さの水を循環可能に貯水する。
【0022】
環境制御プール2の深さは、施設10の大きさや透水性作業床3の大きさ、施設外環境の外気温や湿度、維持するための室内環境に応じて適宜設定されるが、10~20cm程度が好ましい。10cm以上の水深があれば、十分な熱容量が確保され、室内の温度環境が安定化する。一方、20cm以下の水深にすることで、必要な熱容量を確保しつつ、ランニングコストが低減する。なお、本実施形態では、アスファルトやコンクリート等によって形成された構造床11に止水シート(図示せず)を被覆することで保水性を高めているが、この構成に限定されるものではない。
【0023】
透水性作業床3は、栽培対象物等を載置するとともに作業者の足場となるものである。本実施形態において、透水性作業床3は、透水性を有する材料によって形成されているとともに、
図1に示すように、環境制御プール2内の構造床11上に設けられ、環境制御プール2の水面より高い位置に床面31を備えている。これにより、透水性作業床3の床下では環境制御プール2内の水が透水される一方、透水性作業床3の床上には栽培対象物等が載置され作業者が歩行可能となる。
【0024】
透水性作業床3を構成する透水性を有する材料としては、水を透水させうる空隙や小孔等を有し、作業者が載っても耐えうる強度を有する材料であればよい。本実施形態では、破砕されたホタテ貝殻とセメントとを混合して固めた混合物によって構成されている。破砕されたホタテ貝殻は、その湾曲した破砕形状によって浸透させた水を横方向に流しやすく、透水性作業床3の下部において水を循環させるのに好適である。また、本実施形態では、
図1に示すように、透水性作業床3上に設置した菌床棚7に白きくらげの菌床71を多数載置しているが、設置方法や設置物は栽培対象物に応じて適宜変更される。
【0025】
また、本実施形態において、環境制御プール2は、
図1および
図2に示すように、透水性作業床3を介在して、循環ポンプ5からの循環水が供給される上流側プール21と、循環水が排水される下流側プール22とで構成されている。そして、上流側プール21における循環水の供給口21aと、下流側プール22における循環水の排水口22aとは、互いに施設10の対角位置近傍に設けられている。このように供給口21aと排水口22aの位置が最も離れた対角位置近傍であれば、水の流れるルートが多岐にわたり透水性作業床3内を広範囲に流れるためより好ましい。しかしながら、これらの位置に限定されるものではなく、上流側プール21と下流側プール22に別個に設けられていればよい。
【0026】
なお、本実施形態において、透水性作業床3は、
図2に示すように、施設10の出入口に通じる通路部32と、栽培対象物等を載置したり作業者が歩き回る足場部33とを有している。そして、足場部33の端辺のうち、上流側プール21および下流側プール22に面しない一対の端辺は、施設10の内壁面に密接されている。このため、上流側プール21に供給された水は、必ず透水性作業床3の内部に透水されて下流側プール22へ流れるようになっている。
【0027】
貯水槽4は、水温が略一定に保持された水を貯水するものである。本実施形態において、貯水槽4内には、
図1に示すように、不凍液等の熱媒を流通させる熱交換パイプ41が配管されている。そして、夏期に熱媒を冷却する際には、排雪堆積場等に堆積しておいた雪の雪解け水を冷水槽に貯留し、当該冷水槽内に熱交換パイプ41を通過させる等して、雪から回収された冷熱が利用される。また、冬期に熱媒を加熱する際には、データセンタ内のサーバ室に設けられた排気口等にコイル状の熱交換パイプ41を配管する等してサーバ等が発した廃熱から回収された温熱が利用される。このように、普段は捨てられることの多い冷熱や温熱を再利用することで、低コストで貯水槽4内の水温が略一定に保持されるようになっている。
【0028】
なお、貯水槽4内の水温設定について、例えば、施設10内の室温を25℃で維持したい場合、夏期においては、貯水槽4内の水温を25℃より低い温度(例えば23℃)に設定する。一方、冬期においては、貯水槽4内の水温を25℃より高い温度(例えば27℃)に設定する。このように、施設10内の設定温度や外気温に応じて貯水槽4内の水温を調節することで、施設10内の温度が一年を通じて一定に維持される。
【0029】
循環ポンプ5は、貯水槽4内の水を環境制御プール2へ供給して再び貯水槽4へ戻すことで循環させるものである。本実施形態において、循環ポンプ5は、
図1および
図2に示すように、貯水槽4から汲み上げた水を供給口21aから上流側プール21へ供給するとともに、下流側プール22の排水口22aから排水された水を貯水槽4へ戻すようになっている。
【0030】
散水ノズル6は、施設10内に散水することで加湿するとともに、環境制御プール2に水を補給するものである。本実施形態において、散水ノズル6は、
図1に示すように、透水性作業床3の床面31に沿って所定の高さ位置から散水するように複数設けられている。そして、貯水槽4側の循環系統とは別系統の水源から散水ノズル6へ給水されるようになっている。
【0031】
つぎに、本実施形態の流水式環境制御システム1およびこれを用いた施設10の作用について説明する。
【0032】
本実施形態の流水式環境制御システム1を用いて施設10内の室内環境を制御する場合、まず、施設10内で維持したい設定温度に合わせて、貯水槽4内の水温を一定に保持する。このとき、本実施形態では、熱媒を冷却する際には雪から回収された冷熱を利用し、熱媒を加熱する際にはデータセンタの廃熱から回収された温熱を利用する。これにより、貯水槽4内の水温が低コストで一定に保持される。
【0033】
つぎに、循環ポンプ5が貯水槽4から水を汲み上げ、施設10内の環境制御プール2へ供給すると、当該水が透水性作業床3に透水しつつ環境制御プール2全体に満たされる。これにより、環境制御プール2および透水性作業床3の全面で施設10内の空気と熱交換して温度を増減させるため施設10内の温度ムラが少ない。また、環境制御プール2および透水性作業床3のほぼ全面から水を蒸発させうるため施設10内を一様に加湿することができて湿度ムラが少ない。
【0034】
さらに、上記の通り、環境制御プール2に供給される水は、捨てられる冷熱や温熱によって一定温度に保持されているため、施設10の室内環境を良好に維持するためのランニングコストが一層安価になる。なお、透水性作業床3は栽培対象物や作業者を載せても壊れないため、足下を濡らすことなく栽培対象物の確認作業等が行える。
【0035】
熱交換を終えた水は、循環ポンプ5によって環境制御プール2の排水口22aから順次排水され貯水槽4へ戻される。これにより、環境制御プール2には、常に貯水槽4内で一定温度に調整された水が供給されるため、温度ムラや湿度ムラの少ない良好な室内環境が維持される。また、空調設備や加湿器を用意する必要がなく、循環ポンプ5によって水を循環させるだけでよいため、施設10の室内環境が安価に制御される。
【0036】
このとき、本実施形態では、環境制御プール2が上流側プール21と下流側プール22との間に透水性作業床3を介在させているため、透水性作業床3に循環水が確実に透水し、循環水の蒸発や循環水との熱交換を促進する。また、本実施形態では、循環水の供給口21aと排水口22aとが、互いに施設10の対角位置近傍に配置されるため、循環水が環境制御プール2全体に行き渡る。このため、上述した熱交換による温度調節や、蒸発による湿度調節が一層ムラなく行われる。
【0037】
さらに、本実施形態では、透水性作業床3に含まれるホタテ貝殻が、その湾曲凹部に水を溜めて下方へ落とし難くするため、透水性作業床3内に透水した水の流れを横方向に誘導して循環し易くする。これにより、熱交換を終えた循環水は透水性作業床3内に滞留し過ぎることなく、スムーズに循環される。
【0038】
なお、循環水は施設10内で蒸発した分だけ量が減少するところ、本実施形態では、透水性作業床3の床面31に沿って設けられた複数の散水ノズル6が所定の高さ位置から施設10内に散水する。これにより、施設10内がさらに加湿されるとともに、蒸発することなく床面31に落下した水が循環水として補給される。ただし、環境制御プール2や透水性作業床3による加湿で足りるのであれば、散水ノズル6を設置する必要はなく、貯水槽4側に別途、循環水を補給してもよい。
【0039】
以上のような本実施形態の流水式環境制御システム1およびこれを用いた施設10によれば、以下のような効果を奏する。
1.施設10の室内環境を安価に制御し、温度ムラや湿度ムラの少ない良好な室内環境を維持することができる。
2.透水性作業床3に循環水を確実に透水させ、循環水の蒸発や循環水との熱交換を促進することができる。
3.環境制御プール2全体に循環水を行き渡らせて、温度ムラや湿度ムラを一層低減することができる。
4.透水性作業床3内に透水した水の流れを横方向に誘導して水を循環し易くすることができる。
5.施設10内の加湿および循環水の補給を行うことができる。
6.捨てられる冷熱や温熱によって温度調整された水を用いて施設10内の室内環境を調節し、ランニングコストを安価にすることができる。
7.白きくらげ等の付加価値の高いキノコ類を安価に通年栽培することができる。
8.長期保存が難しい干し芋の原材料を通年で確保することができる。
【0040】
なお、本発明に係る流水式環境制御システム1およびこれを用いた施設10は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【0041】
例えば、上述した本実施形態では、施設10内で維持させたい設定温度に応じて、貯水槽4内の水温をユーザが適宜設定することを想定しているが、この構成に限定されるものではない。すなわち、施設10内の設定温度と、施設10内に設置した温度センサの出力値とを比較し、当該出力値が設定温度となるように貯水槽4内の水温をフィードバック制御可能な制御装置を設けてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 流水式環境制御システム
2 環境制御プール
3 透水性作業床
4 貯水槽
5 循環ポンプ
6 散水ノズル
7 菌床棚
10 施設
11 構造床
21 上流側プール
21a 供給口
22 下流側プール
22a 排水口
31 床面
32 通路部
33 足場部
41 熱交換パイプ
71 菌床