(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】ファンイン/ファンアウトデバイス
(51)【国際特許分類】
G02B 6/32 20060101AFI20241120BHJP
G02B 6/02 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
G02B6/32
G02B6/02 461
(21)【出願番号】P 2020219279
(22)【出願日】2020-12-28
【審査請求日】2023-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】392017004
【氏名又は名称】湖北工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桐山 智晶
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 勝博
(72)【発明者】
【氏名】木藤 克哉
【審査官】堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-206294(JP,A)
【文献】特開2015-219424(JP,A)
【文献】特開2019-191260(JP,A)
【文献】国際公開第2020/027253(WO,A1)
【文献】特開2020-091466(JP,A)
【文献】実開昭57-105607(JP,U)
【文献】特開2015-114606(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0300312(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/26 - 6/27
G02B 6/30 - 6/34
G02B 6/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状であり、軸線方向に沿って延在している複数の第1コア(C1乃至C4、C1乃至C7)と、前記複数の第1コアを取り囲む共通のクラッド(CL)と、を備えるマルチコア光ファイバ(20、120、220)と、
前記マルチコア光ファイバ(20、120、220)の中心軸線と平行な第1光軸を有し、前記マルチコア光ファイバに対応して設けられ、各前記第1コア(C1乃至C4、C1乃至C7)から出射される、主光線(B1乃至B4、B1乃至B7)が互いに平行である光線を、前記主光線がそれぞれ所定の方向に傾斜するように出射する第1レンズ(30)と、
前記第1光軸と平行な第2光軸を有する第2レンズ(41乃至44、141乃至144、241乃至247)を複数有し、前記第1レンズ(30)から出射された各前記第1コアからの光線を対応する前記第2レンズ(41乃至44、141乃至144、241乃至247)によりそれぞれ収束する第2レンズ群(40、140、240)と、
柱状であり、
それぞれが中心軸線に沿って延在している1つの第2コア(C)と、前記第2コア(C)を取り囲むクラッド(CLs)と、を有するシングルコア光ファイバ(51乃至54、151乃至154、251乃至257)を前記第2レンズ(41乃至44、141乃至144、241乃至247)と同数だけ備え、各前記シングルコア光ファイバ(51乃至54、151乃至154、251乃至257)の端面(51a乃至54a、151a乃至154a、251a乃至257a)は、対応する前記第2レンズ(41乃至44、141乃至144、241乃至247)から出射された前記第1コア(C1乃至C4、C1乃至C7)からの光線が前記第2コア(C)上で収束する位置に配置されているシングルコア光ファイバ群(50、150、250)と、
を備えるファンイン/ファンアウトデバイス(10、110、210)において、
各前記シングルコア光ファイバ(51乃至54、151乃至154、251乃至257)の前記端面(51a乃至54a、151a乃至154a、251a乃至257a)は、その中心軸線と直交する面に対して第1傾斜方向に第1研磨角度だけ傾斜するように斜研磨されており、
前記シングルコア光ファイバのうちその中心軸線が前記第1光軸から離間した位置に位置する周辺シングルコア光ファイバ(51乃至54、151乃至154、251乃至253並びに255乃至257)の斜研磨方向は、対応する第2レンズ(41乃至44、141乃至144、241乃至243並びに245乃至247)の
全ての位置が、前記周辺シングルコア光ファイバが斜研磨されて
おらず、対応する前記第2レンズから出射された光線の主光線が前記周辺シングルコア光ファイバの前記中心軸線に対し平行に入射するときに位置する非研磨位置と比較して前記第1光軸に接近
している径方向小型化配置、又は
、対応する第2レンズ(41乃至44、141乃至144、241乃至243並びに255乃至257)の全ての位置が前記非研磨位置と比較して前記第1レンズ(30)に接近
している光軸方向小型化配置の少なくとも一方を満たすように設定され
る、
ファンイン/ファンアウトデバイス。
【請求項2】
請求項1に記載のファンイン/ファンアウトデバイスにおいて、
各前記シングルコア光ファイバ(51乃至54、151乃至154、251乃至257)の前記中心軸線は、対応する前記第2レンズ(41乃至44、141乃至144、241乃至247)の前記第2光軸と平行である、
ファンイン/ファンアウトデバイス。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のファンイン/ファンアウトデバイスにおいて、
各前記周辺シングルコア光ファイバ(51乃至54、151乃至154、251乃至253並びに255乃至257)の前記中心軸線に沿ってその端面を見たときに、その端面の中心を通り、前記第1光軸と前記端面の中心とを結ぶ線分と直交する線分を、各前記周辺シングルコア光ファイバの第1直交線(L1乃至L4、Lr11乃至Lr14、L21乃至23並びにL25乃至27)と規定し、
前記端面の外周のうち、前記第1直交線に対して前記第1光軸が位置している側とは反対側の部分の外周を第1外周(Cir1乃至Cir4、Cir11乃至Cir14、Cir21乃至23並びにCir25乃至27)と規定すると、
前記斜研磨方向は、斜研磨基準軸の近位端(E2)が前記第1外周上に位置するように設定されている、
ファンイン/ファンアウトデバイス。
【請求項4】
請求項3に記載のファンイン/ファンアウトデバイスにおいて、
前記斜研磨方向は、前記斜研磨基準軸の前記近位端(E2)が前記第1外周(Cir1乃至Cir4、Cir11乃至Cir14、Cir21乃至23並びにCir25乃至27)の中点に位置するように設定されている、
ファンイン/ファンアウトデバイス。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載のファンイン/ファンアウトデバイスにおいて、
各前記周辺シングルコア光ファイバ(51乃至54、251乃至253並びに255乃至257)の前記中心軸線に沿ってその端面を見たときに、前記第1光軸と直交し任意の方向に延びる直線である基準線(Lb)が各前記周辺シングルコア光ファイバの中心を通過していない第1の場合において、
各前記周辺シングルコア光ファイバの前記端面の中心を通り、前記基準線(Lb)と平行な線分を、各前記周辺シングルコア光ファイバの平行線(Lz1乃至Lz4、Lz21乃至23並びにLz25乃至27)と規定し、
前記端面の外周のうち、前記平行線に対して前記第1光軸が位置している側の部分の外周を第2外周(Ciz1乃至Ciz4、Ciz21乃至23並びにCiz25乃至27)と規定すると、
前記斜研磨方向は、斜研磨基準軸の近位端(E2)が前記第2外周上に位置するように設定されており、
各前記周辺シングルコア光ファイバ(151乃至154)の前記中心軸線に沿ってその端面を見たときに、前記基準線(Lb)が各前記周辺シングルコア光ファイバの中心を通過する第2の場合において、
各前記周辺シングルコア光ファイバの前記端面の中心を通り、前記基準線(Lb)と直交する線分を、各前記周辺シングルコア光ファイバの第2直交線(線分Lz11乃至Lz14)と規定し、
前記端面の外周のうち、前記第2直交線(線分Lz11乃至Lz14)に対して前記第1光軸が位置している側の部分の外周を第3外周(Ciz11乃至Ciz14)と規定すると、
前記斜研磨方向は、前記斜研磨基準軸の前記近位端(E2)が前記第3外周上に位置するように設定されている、
ファンイン/ファンアウトデバイス。
【請求項6】
請求項5に記載のファンイン/ファンアウトデバイスにおいて、
前記第1の場合、前記斜研磨方向は、前記斜研磨基準軸の前記近位端(E2)が前記第2外周(Ciz1乃至Ciz4、Ciz21乃至23並びにCiz25乃至27)の中点に位置するように設定されており、
前記第2の場合、前記斜研磨方向は、前記斜研磨基準軸の前記近位端(E2)が前記第3外周(Ciz11乃至Ciz14)の中点に位置するように設定されている、
ファンイン/ファンアウトデバイス。
【請求項7】
請求項1又は請求項2に記載のファンイン/ファンアウトデバイスにおいて、
各前記周辺シングルコア光ファイバ(51乃至54、151乃至154、251乃至253並びに255乃至257)の前記中心軸線に沿ってその端面を見たときに、その端面の中心を通り、前記第1光軸と前記端面の中心とを結ぶ線分と直交する線分を、各前記周辺シングルコア光ファイバの第1直交線(L1乃至L4、Lr11乃至Lr14、L21乃至23並びにL25乃至27)と規定し、
前記端面の外周のうち、前記第1直交線に対して前記第1光軸が位置している側の部分の外周を第4外周(Ciz31乃至Ciz34、Ciz41乃至43並びにCiz45乃至47)と規定すると、
前記斜研磨方向は、斜研磨基準軸の近位端(E2)が前記第4外周上に位置するように設定されている、
ファンイン/ファンアウトデバイス。
【請求項8】
請求項7に記載のファンイン/ファンアウトデバイスにおいて、
前記斜研磨方向は、前記斜研磨基準軸の前記近位端(E2)が前記第4外周(Ciz31乃至Ciz34、Ciz41乃至43並びにCiz45乃至47)の中点に位置するように設定されている、
ファンイン/ファンアウトデバイス。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8の何れか一項に記載のファンイン/ファンアウトデバイスにおいて、
前記マルチコア光ファイバ(20p)の端面(20ap)は、その中心軸線と直交する面に対して第2傾斜方向に第2研磨角度だけ傾斜するように斜研磨されており、
前記マルチコア光ファイバの前記中心軸線に沿ってその端面を見たときに、前記端面の中心を通り、前記斜研磨方向に沿って延びる直線を基準軸と規定し、
前記基準軸から、前記中心軸線及び前記基準軸と直交する直交軸に沿って、前記基準軸に対して一方の側に向かう方向を第1直交方向と規定し、前記基準軸に対して他方の側に向かう方向を第2直交方向と規定すると、
前記マルチコア光ファイバの前記斜研磨方向は、その中心軸線に沿ってその端面を見たときに、前記基準軸から前記第1直交方向に最も離間している第1コアの前記基準軸からの距離と、前記基準軸から前記第2直交方向に最も離間している第1コアの前記基準軸からの距離と、の和である離間距離が最小となるように設定されている、
ファンイン/ファンアウトデバイス。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9の何れか一項に記載のファンイン/ファンアウトデバイスにおいて、
前記第2レンズのうち少なくとも1つの第2レンズ(41、43)を除く他の第2レンズ(42、44)の主点(Cs2、Cs4)は、それぞれ同一平面上に位置しており、
前記少なくとも1つの第2レンズ(41、43)の主点(Cs1、Cs3)は、全ての前記第2レンズ(41乃至44)の主点(Cs1乃至Cs4)が同一平面上に位置していると仮定した場合における前記少なくとも1つの第2レンズ(41、43)の前記主点(Cs1、Cs3)と比較して、前記第1光軸に近接している、
ファンイン/ファンアウトデバイス。
【請求項11】
請求項10に記載のファンイン/ファンアウトデバイスにおいて、
2n個(n≧2)の第2レンズ(41乃至44)を含み、
前記第2レンズを前記第1光軸に沿って見たときに、
前記第2レンズの主点(Cs1乃至Cs4)は、それぞれ前記第1光軸を中心とする正多角形の頂点に位置しており、
前記正多角形の対角線上に位置する一対の第2レンズ(41,43、42,44)の主点を結ぶn本の線分(r1、r2)は、互いに前記第1光軸上の異なる位置で前記第1光軸と直交し、
前記線分(r1、r2)の長さは、前記n本の線分が互いに前記第1光軸上の同じ位置で前記第1光軸と直交すると仮定した場合における前記線分(r3、r4)の長さよりも短い、
ファンイン/ファンアウトデバイス。
【請求項12】
請求項1に記載の、前記シングルコア光ファイバ(51乃至54、151乃至154、251乃至257)を複数備える前記シングルコア光ファイバ群(50、150、250)と、前記第2レンズ(41乃至44、141乃至144、241乃至247)を前記シングルコア光ファイバと同数だけ有する前記第2レンズ群(40、140、240)と、前記第1レンズ(30)と、少なくとも前記シングルコア光ファイバの数以上の前記第1コア(C1乃至C4、C1乃至C7)を備える前記マルチコア光ファイバ(20、120、220)と、を備え、
請求項1に記載の前記ファンイン/ファンアウトデバイス(10、110、210)が光線を伝搬する方向と反対方向に光線を伝搬する、
ファンイン/ファンアウトデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファンイン/ファンアウトデバイスに関する。特に、マルチコア光ファイバと複数のシングルコア光ファイバとを備え、両者を光学的に結合する空間結合型のファンイン/ファンアウトデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
インターネットによる通信トラフィック需要は年々増加しており、光通信の更なる高速大容量化が望まれている。従来から、その需要に応えるために、波長分割多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)技術及びデジタルコヒーレント技術等により伝送容量の増大が進められてきた。
【0003】
近年、新たな多重化技術として、マルチコア光ファイバを用いた空間分割多重(SDM:Space Division Multiplexing)技術が注目されている。SDM技術によれば、更に高速大容量化できるとされている。SDM技術の研究開発の進展に伴い、ファンイン/ファンアウト(Fan-in/Fan-out。以下、「FIFO」とも称する。)デバイスの需要が高まっている。FIFOデバイスは、マルチコア光ファイバと複数のシングルコア光ファイバとを備え、両者を光学的に結合する光学デバイスである。
【0004】
FIFOデバイスとして、例えば、空間結合型、ファイババンドル型、及び、溶融延伸型のデバイスが挙げられる。空間結合型のFIFOデバイスは、レンズ(ガラスブロック等を含む)を用いてマルチコア光ファイバとシングルコア光ファイバとを光学的に結合することを特徴としている。空間結合型のFIFOデバイスは、ファイババンドル型及び溶融延伸型のFIFOデバイスと比較して部品のサイズは大きくなってしまうものの、挿入損失を小さくできるというメリットがある。
【0005】
特許文献1には、或る軸線に沿って配置された空間結合型のFIFOデバイスが開示されている。このFIFOデバイスは、マルチコア光ファイバの各コアと、コアと同数のシングルコア光ファイバ(のコア)と、を光学的に結合する。FIFOデバイスは、第1光学系と第2光学系とを備えており、第1光学系は、GRIN(Gradient Index)レンズ及びガラスブロックから構成され、第2光学系は、レンズアレイから構成されている。このレンズアレイは、シングルコア光ファイバと同数のレンズを有する。第1光学系は、軸線上においてマルチコア光ファイバ側に配置されており、第2光学系は、当該軸線上においてシングルコア光ファイバ側に配置されている。第1光学系は、マルチコア光ファイバの各コアから出射された光線をコリメート(平行化)するとともに偏向するように構成されている。第2光学系は、第1光学系から出射された各コアからの光線を、(マルチコア光ファイバの)各コアに対応するレンズにて偏向し、各レンズに対応するシングルコア光ファイバの端面に収束するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【0007】
ところで、各シングルコア光ファイバが、その端面が軸線と直交するように形成されている場合、第1光学系を経て第2光学系から出射された光線が各シングルコア光ファイバの端面において反射し、反射光がFIFOデバイスを経由してマルチコア光ファイバの各コアに入射する可能性がある。このような反射光は、一般に、「反射戻り光」と称される。反射戻り光は、マルチコア光ファイバを経由して送信側の通信装置に入射したり、多重反射したりすることにより信号光の光学特性を低下させる可能性がある。
【0008】
そこで、従来から、シングルコア光ファイバの端面を軸線と直交する面に対して傾斜するように研磨することにより、反射光がマルチコア光ファイバの各コアに入射することを抑制する(即ち、反射戻り光を低減する)ことが行われている。以下、光ファイバの端面を軸線と直交する面に対して傾斜するように研磨することを「斜研磨する」と称する。特許文献1のFIFOデバイスでは、複数のシングルコア光ファイバが束ねられた状態で各端面が一括して斜研磨されており、これにより反射戻り光が低減されている。
【0009】
しかしながら、特許文献1の技術によれば、FIFOデバイスの結合部(FIFOデバイスのうち、マルチコア光ファイバとシングルコア光ファイバとを光学的に結合している部分)のサイズが更に増大するという問題がある。即ち、一般に、光ファイバの端面が斜研磨されている場合、当該端面に光線を収束するためには、レンズにより光線を偏向する(別言すれば、レンズからの出射光の光線角度(軸線と成す角度)を変更する)必要がある。レンズからの出射光の光線角度は、当該レンズへの入射光の入射位置(レンズの光軸からの距離)に依存する。ここで、特許文献1では、シングルコア光ファイバの各端面が一括して斜研磨されるため、各端面は互いに平行となっている。従って、各端面に光線を収束するためには、各レンズからの出射光の光線角度を揃える、つまり、各レンズへの入射光の入射位置を揃える必要がある。これは、各レンズを同一方向に移動させる(即ち、レンズアレイを軸線と交差する方向に移動させる)ことを意味する。この構成によれば、第2光学系(レンズアレイ)が軸線から離間する方向に移動することによりFIFOデバイスの結合部のサイズが増大する。
【0010】
本発明は、上述した問題に対処するためになされたものである。即ち、本発明の目的の一つは、反射戻り光を低減しつつ、ファンイン/ファンアウト(FIFO)デバイスの結合部を小型化することが可能な技術を提供することにある。
【0011】
本発明によるファンイン/ファンアウトデバイス(10、110、210)は、
柱状であり、軸線方向に沿って延在している複数の第1コア(C1乃至C4、C1乃至C7)と、前記複数の第1コアを取り囲む共通のクラッド(CL)と、を備えるマルチコア光ファイバ(20、120、220)と、
前記マルチコア光ファイバ(20、120、220)の中心軸線と平行な第1光軸を有し、前記マルチコア光ファイバに対応して設けられ、各前記第1コア(C1乃至C4、C1乃至C7)から出射される、主光線(B1乃至B4、B1乃至B7)が互いに平行である光線を、前記主光線がそれぞれ所定の方向に傾斜するように出射する第1レンズ(30)と、
前記第1光軸と平行な第2光軸を有する第2レンズ(41乃至44、141乃至144、241乃至247)を複数有し、前記第1レンズ(30)から出射された各前記第1コアからの光線を対応する前記第2レンズ(41乃至44、141乃至144、241乃至247)によりそれぞれ収束する第2レンズ群(40、140、240)と、
柱状であり、それぞれが中心軸線に沿って延在している1つの第2コア(C)と、前記第2コア(C)を取り囲むクラッド(CLs)と、を有するシングルコア光ファイバ(51乃至54、151乃至154、251乃至257)を前記第2レンズ(41乃至44、141乃至144、241乃至247)と同数だけ備え、各前記シングルコア光ファイバ(51乃至54、151乃至154、251乃至257)の端面(51a乃至54a、151a乃至154a、251a乃至257a)は、対応する前記第2レンズ(41乃至44、141乃至144、241乃至247)から出射された前記第1コア(C1乃至C4、C1乃至C7)からの光線が前記第2コア(C)上で収束する位置に配置されているシングルコア光ファイバ群(50、150、250)と、
を備える。
このファンイン/ファンアウトデバイス(10、110、210)において、
各前記シングルコア光ファイバ(51乃至54、151乃至154、251乃至257)の前記端面(51a乃至54a、151a乃至154a、251a乃至257a)は、その中心軸線と直交する面に対して第1傾斜方向に第1研磨角度だけ傾斜するように斜研磨されており、
前記シングルコア光ファイバのうちその中心軸線が前記第1光軸から離間した位置に位置する周辺シングルコア光ファイバ(51乃至54、151乃至154、251乃至253並びに255乃至257)の斜研磨方向は、対応する第2レンズ(41乃至44、141乃至144、241乃至243並びに245乃至247)の全ての位置が、前記周辺シングルコア光ファイバが斜研磨されておらず、対応する前記第2レンズから出射された光線の主光線が前記周辺シングルコア光ファイバの前記中心軸線に対し平行に入射するときに位置する非研磨位置と比較して前記第1光軸に接近している径方向小型化配置、又は、対応する第2レンズ(41乃至44、141乃至144、241乃至243並びに255乃至257)の全ての位置が前記非研磨位置と比較して前記第1レンズ(30)に接近している光軸方向小型化配置の少なくとも一方を満たすように設定される。
ここで、「周辺シングルコア光ファイバ」は、マルチコア光ファイバの中心軸線以外の軸線に沿って延在しているコアから出射される光線が入射することになるシングルコア光ファイバである。
また、「光ファイバの斜研磨方向」とは、光ファイバの端面の中心を通り当該端面と直交し且つ所定の傾斜方向と平行な平面が当該端面と交差する線分である「斜研磨基準軸」に沿って、対応するレンズからより離間している遠位端からより近接している近位端に向かう方向を、当該端面の中心軸線に沿って見たときの方向である。なお、光ファイバがシングルコア光ファイバの場合、「対応するレンズ」は第2レンズ群の第2レンズであり、「所定の傾斜方向」は第1傾斜方向である。また、光ファイバがマルチコア光ファイバの場合、「対応するレンズ」は第1レンズであり、「所定の傾斜方向」は第2傾斜方向である。
更に、本明細書において、「集光」とは、レンズが複数の光源(例えば、マルチコア光ファイバの第1コア)からの光線(厳密には、光線の主光線)を1点に集めることを意味し、「収束(集束)」とは、レンズが1つの光源(例えば、マルチコア光ファイバの各第1コア)からの光線の径を絞って1点に集めることを意味する。
【0012】
また、本発明による別のファンイン/ファンアウトデバイスは、
上記記載の、前記シングルコア光ファイバ(51乃至54、151乃至154、251乃至257)を複数備える前記シングルコア光ファイバ群(50、150、250)と、前記第2レンズ(41乃至44、141乃至144、241乃至247)を前記シングルコア光ファイバと同数だけ有する前記第2レンズ群(40、140、240)と、前記第1レンズ(30)と、少なくとも前記シングルコア光ファイバの数以上の前記第1コア(C1乃至C4、C1乃至C7)を備える前記マルチコア光ファイバ(20、120、220)と、を備え、
上記記載の前記ファンイン/ファンアウトデバイス(10、110、210)が光線を伝搬する方向と反対方向に光線を伝搬する。
【0013】
本発明によれば、反射戻り光を低減しつつ、FIFOデバイスの結合部を小型化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るFIFOデバイスの一例を示す側面図である。
【
図2】FIFOデバイスが備えるシングルモード光ファイバの端面を示す図であり、斜研磨回転角度を説明するために用いられる図である。
【
図3A】FIFOデバイスが備える第2レンズの移動方向を示す側面図である。
【
図4】
図1のFIFOデバイスの比較例としての比較デバイスの斜視図である。
【
図6】比較デバイスが備えるマルチコア光ファイバの端面を示す図である。
【
図7A】比較デバイスが備える第2レンズの正面図である。
【
図7B】比較デバイスのマルチコア光ファイバの或るコアからの出射光の主光線が対応する第2レンズを透過する様子を示す図である。
【
図8】比較デバイスが備えるシングルモード光ファイバの端面を示す図である。
【
図9A】
図1のFIFOデバイスにおける斜研磨回転角度と径方向の移動量との関係を規定したグラフである。
【
図9B】
図1のFIFOデバイスにおける斜研磨回転角度とz軸方向の移動量との関係を規定したグラフである。
【
図11A】
図10の範囲R1の部分拡大図であり、第2レンズの径方向の移動方向、第2レンズへの主光線の入射位置、及び、斜研磨回転角度の対応関係を示す図である。
【
図11B】
図10の範囲R1の部分拡大図であり、第2レンズのz軸方向の移動方向、第2レンズへの主光線の入射位置、及び、斜研磨回転角度の対応関係を示す図である。
【
図12】第2レンズの移動により出射光の主光線がどのように屈折するかを示す図である。
【
図13】シングルモード光ファイバの正面図であり、径方向条件が成立するときの斜研磨回転角度の角度範囲等を説明するために用いられる図である。
【
図14】シングルモード光ファイバの正面図であり、z軸方向条件が成立するときの斜研磨回転角度の角度範囲等を説明するために用いられる図である。
【
図15】本発明の第1実施形態に係るFIFOデバイスの別の一例が備えるマルチコア光ファイバの端面を示す図である。
【
図16】
図15のマルチコア光ファイバを備えるFIFOデバイスを示す平面図である。
【
図17】
図16のFIFOデバイスの比較例としての比較デバイスの平面図である。
【
図18A】
図16のFIFOデバイスにおける斜研磨回転角度と径方向の移動量との関係を規定したグラフである。
【
図18B】
図16のFIFOデバイスにおける斜研磨回転角度とz軸方向の移動量との関係を規定したグラフである。
【
図20】
図19の範囲R2の部分拡大図であり、第2レンズの径方向及びz軸方向の移動方向、第2レンズへの主光線の入射位置、及び、斜研磨回転角度の対応関係を示す図である。
【
図21】シングルモード光ファイバの正面図であり、径方向条件が成立するときの斜研磨回転角度の角度範囲等を説明するために用いられる図である。
【
図22】シングルモード光ファイバの正面図であり、z軸方向条件が成立するときの斜研磨回転角度の角度範囲等を説明するために用いられる図である。
【
図23】本発明の第1実施形態に係るFIFOデバイスの更に別の一例が備えるマルチコア光ファイバの端面を示す図である。
【
図24】
図23のマルチコア光ファイバを備えるFIFOデバイスを示す側面図である。
【
図25】
図24のFIFOデバイスの比較例としての比較デバイスの平面図である。
【
図26A】
図24のFIFOデバイスにおける斜研磨回転角度と径方向の移動量との関係を規定したグラフである。
【
図26B】
図24のFIFOデバイスにおける斜研磨回転角度とz軸方向の移動量との関係を規定したグラフである。
【
図28A】
図27の範囲R3の部分拡大図であり、第2レンズの径方向の移動方向、第2レンズへの主光線の入射位置、及び、斜研磨回転角度の対応関係を示す図である。
【
図28B】
図27の範囲R3の部分拡大図であり、第2レンズのz軸方向の移動方向、第2レンズへの主光線の入射位置、及び、斜研磨回転角度の対応関係を示す図である。
【
図29】シングルモード光ファイバの正面図であり、径方向条件が成立するときの斜研磨回転角度の角度範囲等を説明するために用いられる図である。
【
図30】シングルモード光ファイバの正面図であり、z軸方向条件が成立するときの斜研磨回転角度の角度範囲等を説明するために用いられる図である。
【
図31A】本発明の変形例に係るFIFOデバイスのマルチコア光ファイバ及び第1レンズを示す側面図である。
【
図31B】
図31AのFIFOデバイスのマルチコア光ファイバを-y軸方向に移動した状態を示す側面図である。
【
図32A】本発明の第2実施形態に係るFIFOデバイスにおける
図10の範囲R1の部分拡大図である。
【
図32B】シングルモード光ファイバの正面図であり、z軸方向条件が成立するときの斜研磨回転角度の角度範囲等を説明するために用いられる図である。
【
図33A】本発明の第2実施形態に係るFIFOデバイスにおける
図27の範囲R3の部分拡大図である。
【
図33B】シングルモード光ファイバの正面図であり、z軸方向条件が成立するときの斜研磨回転角度の角度範囲等を説明するために用いられる図である。
【
図34A】本発明の第3実施形態に係るFIFOデバイスが備えるマルチコア光ファイバの斜研磨方向を示す図である。
【
図34B】マルチコア光ファイバの別の斜研磨方向を示す図である。
【
図35】マルチコア光ファイバの位置ずれ量と、光線角度のばらつきとの関係を規定したグラフである。
【
図36】本発明の第4実施形態に係るFIFOデバイスが備える第2レンズの正面図である。
【
図37】
図36の第2レンズの比較例としての第2レンズの正面図である。
【
図38】
図36の第2レンズの別のレイアウトを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
図1乃至
図3Bは、本発明の第1実施形態に係るFIFOデバイスの一例であるFIFOデバイス10を示す図である。
図4乃至
図8は、FIFOデバイス10の比較例としてのFIFOデバイス310を示す図である。以下では、まず、FIFOデバイス310の構成について説明し、その後、FIFOデバイス10の構成について説明する。以下では、「FIFOデバイス」を単に「デバイス」とも称する。
【0016】
図4は、デバイス310の斜視図であり、
図5は、デバイス310の側面図である。
図4及び
図5に示すように、デバイス310は、マルチコア光ファイバ20と、第1レンズ30と、第2レンズ群40と、シングルモード光ファイバ群350と、を備える。これらの部材は、軸線A1に沿って上記の順に配置されている。デバイス310(及び後述するデバイス10)には、直交座標系が設定されている。z軸は、マルチコア光ファイバ20から第1レンズ30に向かう方向が正方向となるように軸線A1と平行に延びている。y軸は、z軸と直交しており、紙面上方向が正方向となるように延びている。x軸は、z軸及びy軸と直交している。以下、マルチコア光ファイバ及びシングルモード光ファイバをそれぞれ「MCF」及び「SMF」とも称する。なお、本明細書では、図を見易くするために、特定の部材(例えば、MCF20及びSMF群350)の寸法及び光線の角度等を変更して図示している。
【0017】
MCF20は円柱状であり、少なくともその+z軸方向の端部における中心軸線は、軸線A1と一致している。MCF20の端面20a(
図5参照)は、軸線A1と直交する面(xy平面)と平行である。
図6は、MCF20の中心軸線に沿って端面20aを見たときの図である。
図6に示すように、MCF20は、4つのコアC1乃至C4と、これらのコアC1乃至C4を取り囲む共通のクラッドCLと、を備える。コアC1乃至C4は、端面20aの中心を中心とした正方形の頂点に位置しており、軸線方向に沿って延在している。隣接するコア間の距離(コアピッチ)は50μmである。コアC1乃至C4並びにクラッドCLは、何れも石英を主成分とするガラスにより形成されている。コアC1乃至C4の屈折率は、クラッドCLの屈折率よりも大きい。MCF20は、シングルモード光ファイバである。なお、コアC1乃至C4並びにクラッドCLの材質は石英を主成分とするガラスに限られず、他の材料により形成されてもよい。また、本明細書において、円柱には、軸線が湾曲しているものも含まれる。
【0018】
図4及び
図5に示すように、MCF20の+z軸方向の端部は、円筒状のフェルール22に挿通されて保持されている。フェルール22の端面22aは、MCF20の端面20aと同一平面上に位置している。これは、MCF20の端面20aは、フェルール22に挿通された状態でその端面22aとともに一括して研磨されるためである。
図5では、フェルール22内のMCF20を破線で示しているが、コアC1乃至C4の図示は省略している。
【0019】
MCF20の各コアC1乃至C4を伝搬してきた光線は、端面20aから第1レンズ30に向けて出射される。即ち、MCF20は出射部材として機能する。
図4では、各コアC1乃至C4(
図6参照)から出射される光線の主光線B1乃至B4のみをそれぞれ図示しており、
図5では、コアC2及びC3から出射される光線の主光線B2及びB3のみを図示している。各コアC1乃至C4からの出射光の主光線は互いに平行であるが、各出射光は進行するにつれて発散する発散光である。
【0020】
第1レンズ30は、焦点距離が1.3mmのコリメートレンズであり、より詳細には、回転対称な曲面を有する非球面レンズである。第1レンズ30は、各コアC1乃至C4から出射されて発散する光線をコリメート(平行化)する。第1レンズ30の光軸は、MCF20の中心軸線上(即ち、軸線A1上)に位置している。第1レンズ30は、各コアC1乃至C4から出射される、主光線B1乃至B4が互いに平行である光線を偏向して出射する(より詳細には、主光線B1乃至B4がそれぞれ所定の方向に傾斜するように出射する。)。別言すれば、第1レンズ30は、各コアC1乃至C4からの光線を焦点f1にて集光する。即ち、第1レンズ30は、マルチコア光ファイバに対応して設けられたレンズである。なお、第1レンズ30の曲面は、各コアC1乃至C4からの光線を偏向するように出射可能であれば、非回転対称であってもよい。また、第1レンズ30は、球面レンズ又はGRINレンズであってもよいし、片面が平坦なレンズであってもよい。
【0021】
第2レンズ群40は、MCF20のコア数(本例では、4つ)と同数の第2レンズ41乃至44を有する(
図4参照)。第2レンズ41乃至44は、何れも焦点距離が2.5mmのコリメートレンズであり、より詳細には、回転対称な曲面を有する非球面レンズである。以下では、第2レンズ41乃至44を、単に「レンズ41乃至44」と称する。各レンズ41乃至44の光軸は、第1レンズ30の光軸と平行である。また、レンズ41乃至44の主点は同一平面上に位置しており、当該平面は軸線A1と直交している。
図5では、レンズ41乃至44のうち、主光線B2及びB3が入射するレンズ42及び43のみを図示している。
【0022】
図7Aは、レンズ41乃至44を、軸線A1に沿って(即ち、第1レンズ30の光軸に沿って)見たときの図である。
図7Aに示すように、レンズ41乃至44の主点Cs1乃至Cs4は、それぞれ軸線A1を中心とする正方形の頂点に位置している。より具体的には、レンズ41乃至44は、「第1レンズ30から出射されたMCF20の各コアC1乃至C4からの光線の主光線B1乃至B4」が、対応するレンズ41乃至44の焦点f2(後述)を通過するように配置されている。
【0023】
図7Bを参照して具体的に説明する。
図7Bは、コアC3からの出射光の主光線B3が対応するレンズ43を透過する様子を示す図である。
図4、
図5及び
図7Bに示すように、第1レンズ30から出射されるMCF20のコアC3からの光線は、焦点f1を通過する。焦点f1を通過した光線の主光線B3は、直進してレンズ43の焦点f2(
図7B参照)を通過し、レンズ43の位置Ps3(後述)に所定の入射角度(本例では、1.6°)で入射する。位置Ps3に入射した主光線B3は、レンズ43の光軸As3(
図7B参照)と平行な光線としてレンズ43から出射する。
【0024】
ここで、
図7Aに示すように、レンズ43を軸線A1に沿って見ると、主光線B3の入射位置Ps3は、「軸線A1とレンズ43の主点Cs3とを結ぶ半直線」上に位置している。より詳細には、入射位置Ps3は、主点Cs3から+x軸方向及び+y軸方向にそれぞれ等距離だけ離間した位置に位置している。これは、
図6に示すように、レンズ43に対応するMCF20のコアC3が、その中心から-x軸方向及び-y軸方向にそれぞれ等距離(本例では、25μm)だけ離間した位置に設けられているためである。
【0025】
同様に、
図4に示すように、焦点f1を通過した光線の主光線B1、B2及びB4は、直進してレンズ41、42及び44の焦点f2(図示省略)をそれぞれ通過し、レンズ41、42及び44の位置Ps1、Ps2及びPs4に所定の入射角度(本例では、1.6°)で入射する。位置Ps1、Ps2及びPs4に入射した主光線B1、B2及びB4は、レンズ41、42及び44の光軸と平行な光線としてレンズ41、42及び44からそれぞれ出射する。
図7Aに示すように、レンズ41、42及び44を軸線A1に沿って見ると、主光線B1、B2及びB4の入射位置Ps1、Ps2及びPs4は、軸線A1を中心とし、入射位置Ps3上に1つの頂点を有する正方形の残り3つの頂点にそれぞれ位置している。これは、MCF20のコア配置によるものである(
図6参照)。即ち、入射位置Ps1乃至Ps4は、軸線A1に関して対称関係にある。
【0026】
図4及び
図5に示すように、第2レンズ群40は、第1レンズ30から出射された各コアC1乃至C4からの光線を、対応するレンズ41乃至44によりそれぞれ収束する(
図4及び
図5では主光線のみ図示)。なお、各レンズ41乃至44の曲面は、対応する各コアC1乃至C4からの光線を偏向するように出射可能であれば、非回転対称であってもよい。また、各レンズ41乃至44は、球面レンズ又はGRINレンズであってもよいし、片面が平坦なレンズであってもよい。
【0027】
SMF群350は、レンズ41乃至44と同数(本例では、4つ)のSMF351乃至354を有する(
図4参照)。SMF351乃至354は、何れも1つの伝搬モードの光線を伝搬する光ファイバである。SMF351乃至354は、互いに同一の構成を有するため、以下ではSMF353の構成を説明する。SMF353は円柱状であり、少なくともその-z軸方向の端部における中心軸線は、対応するレンズ43の光軸As3(
図7B参照)と平行である。また、SMF353は、第1レンズ30の光軸から離間した位置に位置している。SMF353の端面353aは、xy平面と平行である。
図8は、SMF353の中心軸線に沿って端面353aを見たときの図である。
図8に示すように、SMF353は、その中心軸線に沿って延在している1つのコアCと、当該コアCを取り囲むクラッドCLsと、を備える。コアC及びクラッドCLsは、何れも石英を主成分とするガラスにより形成されている。コアCの屈折率は、クラッドCLsの屈折率よりも大きい。なお、コアC及びクラッドCLsの材質は石英を主成分とするガラスに限られず、他の材料により形成されてもよい。
【0028】
図4及び
図5に示すように、SMF353の-z軸方向の端部は、円筒状のフェルール363に挿通されて保持されている。SMF353の端面353aは、フェルール363に挿通された状態でその端面363aとともに一括して研磨されている。これにより、SMF353の端面353aとフェルール363の端面363aは、同一平面(xy平面)上に位置している。
図5では、フェルール363内のSMF353を破線で示している。
【0029】
SMF353の端面353aは、レンズ43から出射されたコアC3からの光線が、コアC上(より厳密には、コアCの中心上)で収束する位置に配置されている。即ち、SMF353は、主光線B3がコアCの中心に入射するように配置されている。これにより、コアC3からの出射光は、SMF353のコアCに低損失で入射する。
【0030】
同様に、SMF351、352及び354は、第1レンズ30の光軸から離間した位置に位置しており、それらの端面351a、352a及び354a(
図4参照)は、レンズ41、42及び44から出射されたコアC1、C2及びC4からの光線が、コアC上(より厳密には、コアCの中心上)でそれぞれ収束する位置に配置されている。即ち、SMF351、352及び354は、主光線B1、B2及びB4がコアCの中心にそれぞれ入射するように配置されている。これにより、コアC1、C2及びC4からの出射光は、SMF351、352及び354のコアCに低損失で入射する。
【0031】
このように、第1レンズ30及び第2レンズ群40は、MCF20とSMF群350とを光学的に結合している。別言すれば、第1レンズ30及び第2レンズ群40は、デバイスの結合部として機能する。以上が、比較例としてのデバイス310の構成についての説明である。
【0032】
続いて、デバイス10の構成について、
図1乃至
図3Bを参照して説明する。
図1は、デバイス10の側面図である。
図1に示すように、デバイス10は、MCF20と、第1レンズ30と、第2レンズ群40と、SMF群50と、を備える。これらの部材は、軸線A1に沿って上記の順に配置されている。即ち、デバイス10は、SMF群50を除いて、デバイス310で用いられた部材と同一の部材を用いている。加えて、MCF20と第1レンズ30との位置関係は、デバイス310におけるそれらの位置関係と同一である。これに対し、MCF20及び第1レンズ30と、第2レンズ群40と、の位置関係は、デバイス310におけるそれらの位置関係とは異なっている。以下では、主にデバイス310との相違点について説明する。なお、MCF20のコアC1乃至C4は、「第1コア」の一例に相当する。また、第1レンズ30の光軸及びレンズ41乃至44の光軸は、それぞれ「第1光軸」及び「第2光軸」の一例にそれぞれ相当する。
【0033】
SMF群50は、レンズ41乃至44と同数(本例では、4つ)のSMF51乃至54を有する。SMF51乃至54は、それらの端面51a乃至54a(
図1では端面52a及び53aのみ図示)が斜研磨されている点でSMF351乃至354と相違している。ここで、斜研磨とは、各端面51a乃至54aが、その中心軸線と直交する面(本実施形態では、xy平面)に対して所定の傾斜方向(後述)に所定の研磨角度(本例では、8°)だけ傾斜するように斜めに研磨されていることを意味する。SMF51乃至54が斜研磨されることにより、端面51a乃至54aにおける反射戻り光をそれぞれ低減している。SMF51乃至54の-z軸方向の端部は、円筒状のフェルール61乃至64に挿通されて保持されている。SMF51乃至54の端面51a乃至54aは、フェルール61乃至64の端面61a乃至64aとともにそれぞれ一括して斜研磨されている。なお、SMF群50、及び、SMF51乃至54は、それぞれ「シングルコア光ファイバ群」及び「周辺シングルコア光ファイバ」の一例に相当する。また、SMF51乃至54のコアCは「第2コア」の一例に相当する。更に、上記傾斜方向及び上記研磨角度は、それぞれ「第1傾斜方向」及び「第1研磨角度」の一例に相当する。
【0034】
ここで、「SMF51乃至54の端面51a乃至54aの中心を通り当該端面51a乃至54aと直交し且つ上記傾斜方向と平行な平面」が当該端面51a乃至54aとそれぞれ交差する線分を「斜研磨基準軸」と規定する。この場合、SMF51乃至54の各斜研磨方向は、「斜研磨基準軸に沿って、対応するレンズ41乃至44からより離間している遠位端E1からより近接している近位端E2に向かう方向」を、各端面51a乃至54aの中心軸線に沿って見たときの方向として規定される。本実施形態では、SMF51乃至54は円柱状である。このため、斜研磨された各端面51a乃至54aは、これに垂直な方向から見ると楕円形状となっている。従って、斜研磨基準軸は、各端面51a乃至54aの長軸であり、この長軸の両端のうち、対応するレンズ41乃至44からより離間している一端(遠位端E1)からより近接している他端(近位端E2)に向かう方向を各端面51a乃至54aの中心軸線に沿って見たときの方向が、「各SMF51乃至54の斜研磨方向」である。以下では、ある部材をその中心軸線に沿って見ることを、「当該部材を正面視する」とも称する。
図2は、SMF53及び52の端面53a及び52aを正面視した図である。
図1及び
図2に示すように、端面53aの斜研磨方向D3は、斜研磨基準軸の遠位端E1から近位端E2に向かう方向(+y軸方向)であり、端面52aの斜研磨方向D2は、斜研磨基準軸の遠位端E1から近位端E2に向かう方向(-y軸方向)である。なお、斜研磨方向は、端面51a乃至54aのz軸成分が減少する研磨方向ということもできる。
【0035】
以下では、SMF51乃至54の端面51a乃至54aを正面視したときに、任意の或る斜研磨方向が、「各端面51a乃至54aの中心を通り+y軸方向に向かう基準方向D0」から反時計回りに成す角を、「正の値を有する斜研磨回転角度Ψ」と規定する。
図2の例では、SMF53の斜研磨方向D3は、基準方向D0と一致している。このため、SMF53の斜研磨回転角度Ψは0°である。一方、SMF52の斜研磨方向D2は、基準方向D0と反対である。このため、SMF52の斜研磨回転角度Ψは180°である。また、
図1では図示を省略しているが、この例では、SMF54及び51の斜研磨回転角度Ψは、それぞれ0°及び180°である。以下では、斜研磨回転角度Ψを、単に「回転角度Ψ」とも称する。
【0036】
SMF51乃至54が斜研磨されている場合、これらの端面51a乃至54aに光線を低損失で入射させるためには、レンズ41乃至44からの出射光の主光線B1乃至B4が、「端面51a乃至54aの長軸を通り、当該端面51a乃至54aと直交する平面である長軸直交面」上に位置し、且つ、主光線B1乃至B4の光線角度θ1(レンズ41乃至44の光軸と成す角度)が所定の角度となるように出射光を制御する必要がある。端面51a乃至54aの研磨角度が8°である場合、光線の波長が1.55μmのときの光線角度θ1は、3.8°であることが望ましい。なお、より詳細には、「端面51a乃至54aに入射する主光線B1乃至B4」と、「端面51a乃至54a上の入射位置と近位端E2とを結ぶ線分」とがそれぞれ成す角度が78.2°であることが望ましい。
【0037】
ところで、周知の光線行列によれば、任意の或るレンズからの出射光の光線角度θ1は、当該レンズへの入射光の入射位置p及び入射角度θに依存する。入射位置pは、当該レンズの主点に対する相対位置として定義され、入射角度θは、入射光と当該レンズの光軸とが成す角度として定義される。本例では、レンズ41乃至44への入射光の(主光線B1乃至B4の)光路は不変である。このため、入射光の入射角度θは一定である。従って、レンズ41乃至44からの出射光の主光線B1乃至B4が長軸直交面上に位置し、且つ、その光線角度θ1を所望の角度とするためには、レンズ41乃至44への入射光の入射位置pを制御する必要がある。
【0038】
図3A及び
図3Bは、
図1のレンズ43の拡大図である。
図3A及び
図3Bでは、デバイス10のレンズ43を実線で示し、デバイス310のレンズ43を破線で示している。
図3A及び
図3Bに示すように、デバイス10のレンズ43は、デバイス310のレンズ43に対して-y軸方向に移動している(以下、デバイス310のレイアウトを、単に「移動前」とも称する。)。これにより、レンズ43への主光線B3の入射位置Ps3が、移動前と比べて相対的に+y軸方向に移動するため、レンズ43から出射される主光線B3が、移動前と比較して-y軸方向に傾斜している(
図3A参照)。本例では、主光線B3の光線角度θ1が3.8°となるようにレンズ43を移動させている(即ち、入射位置Ps3を移動させている)。このため、この構成によれば、
図1に示すように、レンズ43からの出射光(
図1では主光線B3のみ図示)は、SMF53の端面53aに適切に入射する。なお、SMF53も、自身に入射する入射光の光線角度θ1の変化に伴い、主光線B3がコアCの中心に入射するように-y軸方向に移動している。
【0039】
一方、
図1及び
図5を比較すると明らかなように、デバイス10のレンズ42は、デバイス310のレンズ42に対して+y軸方向に移動している。これにより、レンズ42への主光線B2の入射位置Ps2(
図7A参照)が、移動前と比べて相対的に-y軸方向に移動するため、レンズ42から出射される主光線B2が、移動前と比較して+y軸方向に傾斜している(
図1参照)。レンズ42をレンズ43と同じ距離だけ移動すると、主光線B2及びB3の対称性により、主光線B2の光線角度θ1は3.8°となる。このため、この構成によれば、
図1に示すように、レンズ42からの出射光(
図1では主光線B2のみ図示)は、SMF52の端面52aに適切に入射する。なお、SMF52も、自身に入射する入射光の光線角度θ1の変化に伴い、主光線B2がコアCの中心に入射するように+y軸方向に移動している。
【0040】
なお、
図1では図示を省略しているが、レンズ44及び41についても同様に移動している。即ち、上述したように、SMF54の斜研磨回転角度Ψは0°であるため、レンズ44(及びSMF54)も、デバイス310のレンズ44(及びSMF54)に対して-y軸方向に移動している。また、SMF51の斜研磨回転角度Ψは180°であるため、レンズ41(及びSMF51)も、デバイス310のレンズ41(及びSMF51)に対して+y軸方向に移動している。レンズ44及び41の移動距離は、レンズ43及び42の移動距離に等しい。この構成によれば、レンズ44及び41からの出射光も、SMF54及び51の端面54a及び51aに適切に入射する。
【0041】
図1のデバイス10によれば、
図5のデバイス310と比較して、反射戻り光を低減できる。加えて、レンズ41乃至44並びにSMF51乃至54を、y軸方向に沿って軸線A1に接近する方向に移動することができる。このため、従来よりも小型化された結合部を有するデバイス10を実現できる。
【0042】
以上の説明から明らかなように、SMF51乃至54の斜研磨方向と、レンズ41乃至44の移動方向との間には相関がある。このため、本願発明者らは、SMF51乃至54の斜研磨回転角度Ψを0°≦Ψ≦360°の範囲で変化させたときのレンズ41乃至44の径方向(後述)の移動量Δrを計算することにより、デバイス10の結合部を径方向に小型化可能な斜研磨回転角度Ψの角度範囲について検討した。
【0043】
また、レンズ41乃至44への入射位置Ps1乃至Ps4は、レンズ41乃至44をxy平面上で移動させる場合だけでなく、少なくともz軸方向に移動させる場合においても制御することができる。このため、本願発明者らは、SMF51乃至54の斜研磨回転角度Ψを0°≦Ψ≦360°の範囲で変化させたときのレンズ41乃至44のz軸方向の移動量Δzも併せて計算することにより、デバイス10をz軸方向(即ち、軸線A1方向)に小型化可能な斜研磨回転角度Ψの角度範囲について検討した。
【0044】
なお、上記の「径方向」とは、「軸線A1」と「各レンズ41乃至44の主点Cs1乃至Cs4(
図7A参照)」とを結ぶ半直線に沿った方向である。なお、「径方向」は、「軸線A1」と「各SMF51乃至54の端面51a乃至54aの中心」とを結ぶ半直線に沿った方向ということもできる。また、「レンズ41乃至44が径方向に移動する」とは、「レンズ41乃至44の移動方向が少なくとも径方向の成分を有する」ことを意味しており、「移動方向が径方向の成分しか有さない」ことを意味しているわけではない。更に、レンズ41乃至44並びにSMF51乃至54は、図示しない部材に収容されているが、レンズ41乃至44等の移動によってこれらの収容部材同士が互いに干渉することはない。
【0045】
図9Aは、デバイス10における斜研磨回転角度Ψと径方向の移動量Δrとの関係を規定したグラフであり、
図9Bは、デバイス10における斜研磨回転角度Ψとz軸方向の移動量Δzとの関係を規定したグラフである。Δrは、レンズ41乃至44が径方向外側に移動する(デバイス10の結合部が大型化する)ときは正の値を有し、径方向内側に移動する(デバイス10の結合部が小型化する)ときは負の値を有する。なお、「径方向外側」は軸線A1から径方向に離間する側であり、「径方向内側」は軸線A1へ径方向に接近する側である。一方、Δzは、レンズ41乃至44が+z軸方向に移動する(デバイス10の結合部が大型化する)ときは正の値を有し、-z軸方向に移動する(デバイス10の結合部が小型化する)ときは負の値を有する。
【0046】
以下では、
図9A及び
図9Bのグラフについて説明する前に、斜研磨回転角度Ψとレンズ41乃至44の移動方向との関係について、レンズ43を例に挙げて説明する。
図10は、レンズ43を正面視した図である。
図11A及び
図11Bは、
図10の範囲R1の部分拡大図である。
図10乃至
図11Bに示す円43aは、入射位置Ps3を中心とする半径0.16mmの円である。なお、これらの図における入射位置Ps3は、比較例としてのデバイス310のレンズ43に主光線B3が入射するときの入射位置(即ち、レンズ43の焦点f2を通過した主光線B3が入射する位置(
図7B参照))である。上述したように、レンズ43への入射光の光路は不変である。このため、レンズ43を移動すると、入射位置Ps3が相対的に移動する。上記計算によれば、以下の知見が得られた。
・レンズ43を、入射位置Ps3が円43a上の任意の点に位置するように移動することにより、出射光の主光線B3の光線角度θ1を3.8°に制御できる。
・レンズ43をxy平面上で移動させる場合、出射光の主光線B3は、レンズ43の移動方向と同じ方向に(3.8°だけ)屈折する。
【0047】
これらの知見について具体的に説明する。
図11A及び
図11Bに示すように、円43a上には、8つの点P1乃至P8がこの順に反時計回りに等間隔で配置されている。点P1は、入射位置Ps3から+y軸方向に位置している。点P1乃至P8は、レンズ43上の固定点である。
図12は、レンズ43を後述する所定の方向に所定の距離だけ移動したときに出射光の主光線B3がどのように屈折するかを示した図である。なお、
図12の主光線B3は、デバイス310のレンズ43からの出射光の主光線であるため、+z軸方向に進行している(別言すれば、レンズ43の光軸As3(
図7B参照)と平行に進行している)。
【0048】
まず、
図10及び
図11Aを参照して、レンズ43をxy平面上で移動させる場合について説明する。例えば、レンズ43を径方向内側に0.16mm移動すると、入射位置Ps3は点P2に移動する。このとき、
図12に示すように、出射光の主光線B3_P2は、移動前の主光線B3に対して、仮想平面S1(線分P2P6を通り、z軸方向に拡がる平面)上を、点P6側に3.8°だけ屈折する。ここで、点P6側とは、径方向内側であり、即ち、レンズ43の移動方向である。この結果、主光線B3_P2の光線角度θ1は3.8°となる。
【0049】
また、例えば、レンズ43を径方向外側に0.16mm移動すると、入射位置Ps3は点P6に移動する。このとき、
図12に示すように、出射光の主光線B3_P6は、移動前の主光線B3に対して、仮想平面S1上を、点P2側に3.8°だけ屈折する。ここで、点P2側とは、径方向外側であり、即ち、レンズ43の移動方向である。この結果、主光線B3_P6の光線角度θ1は3.8°となる。
【0050】
同様に、レンズ43を、入射位置Ps3が点P1、P3、P4、P5、P7及びP8に位置するようにxy平面上で移動すると、移動後の出射光の主光線B3は、移動前の主光線B3に対して、レンズ43の移動方向に3.8°だけ屈折する。この結果、移動後の主光線B3の光線角度θ1は3.8°となる。
【0051】
上記の説明から明らかなように、レンズ43をxy平面上で移動させる場合、実際の移動距離は、移動方向によらず一定(本例では、0.16mm)であるが、この計算ではレンズ43の径方向の移動距離に着目しているため、移動量Δrは、「レンズ43の実際の移動距離の径方向の成分」として規定される。即ち、実際の移動距離の「径方向と直交する成分」は無視される。例えば、レンズ43を、入射位置Ps3が点P1又はP3に位置するように移動する場合、移動量Δrは、線分Ps3Q1の長さ(本例では、0.11mm)に等しくなる。なお、点Q1は、点P1又はP3から線分P2P6上に下ろした垂線の足である。また、レンズ43を、入射位置Ps3が点P4又はP8に位置するように移動する場合、移動距離が径方向の成分を有していないため、移動量Δrは0となる。
【0052】
次に、
図10及び
図11Bを参照して、レンズ43を少なくともz軸方向に移動させる場合について説明する。レンズ43を-z軸方向に移動させると、入射位置Ps3は径方向内側に移動し、レンズ43を+z軸方向に移動させると、入射位置Ps3は径方向外側に移動する。この計算では、更に、レンズ43をx軸方向に移動させることにより、入射位置Ps3を円43a上の任意の点に移動させている。
【0053】
例えば、レンズ43を-z軸方向に6.2mm移動すると、入射位置Ps3は点P6に移動する。このときの出射光の主光線B3_P6の屈折方向は、上述した通りである(
図12参照)。この状態から、更にレンズ43を+x軸方向に0.23mm移動すると、入射位置Ps3は点P4に移動する。
【0054】
また、例えば、レンズ43を-z軸方向に8.7mm移動すると、入射位置Ps3は点Q2に移動する。点Q2は、直線P2P6と、点P5における円43aの接線との交点である。この状態から、更にレンズ43を+x軸方向に0.16mm移動すると、入射位置Ps3は点P5に移動する。
【0055】
即ち、この計算では、レンズ43を、入射位置Ps3が点P2又はP6に位置するように移動する場合は、レンズ43をz軸方向にのみ移動する。一方、レンズ43を、入射位置Ps3が「点P2及びP6を除く円43a上の任意の点」に位置するように移動する場合は、レンズ43をz軸方向及びx軸方向に移動する。移動後の出射光の主光線B3は、移動前の主光線B3に対して、「レンズ43をxy平面上で移動させる場合」と同一の方向に屈折する。この結果、移動後の主光線B3の光線角度θ1は3.8°となる。なお、レンズ43は、x軸方向に移動する代わりにy軸方向に移動してもよい。
【0056】
上記の説明から明らかなように、レンズ43を少なくともz軸方向に移動させる場合、移動方向によっては、レンズ43をx軸方向に移動させることがある。しかしながら、この計算では第2レンズのz軸方向の移動距離に着目しているため、移動量Δzは、「レンズ43のz軸方向の移動距離」として規定される。このため、入射位置Ps3が点P3又は点P7に位置するようにレンズ43を移動する場合、移動量Δzは0となる。
【0057】
また、x軸方向の移動距離(例えば、0.23mm)は、z軸方向の移動距離(例えば、6.2mm)に比べて極めて短い。このため、レンズ43が-x軸方向に沿って移動する(即ち、軸線A1から離間するように移動する)場合であっても、これによるデバイス10の結合部のサイズの変化は極めて小さい。従って、この計算では、レンズ43のx軸方向における移動距離は無視している(別言すれば、デバイス10の結合部のz軸方向における小型化を優先している。)。
【0058】
以上の知見によれば、SMF53の斜研磨方向を、移動後のレンズ43からの出射光の主光線B3の屈折方向に応じて設定することにより、出射光をSMF53の端面53aに適切に入射させられることが分かる。具体的には、
図11A及び
図11Bに示すように、レンズ43を、入射位置Ps3が点P2に位置するように移動する場合(
図12参照)、SMF53の斜研磨回転角度Ψは45°に設定され得る。また、レンズ43を、入射位置Ps3が点P6に位置するように移動する場合(
図12参照)、SMF53の斜研磨回転角度Ψは225°に設定され得る。同様に、レンズ43を、入射位置Ps3が点P1、P3、P4、P5、P7及びP8に位置するように移動する場合、SMF53の斜研磨回転角度Ψは、それぞれ、0°(=360°)、90°、135°、180°、270°及び315°に設定され得る。
【0059】
レンズ41、42及び44並びにSMF51、52及び54についても、同様の考え方が適用され得る。以上が斜研磨回転角度Ψとレンズ41乃至44の移動方向との関係についての説明である。
【0060】
続いて、
図9Aを参照して移動量Δrの計算結果を説明する。
図9Aによれば、レンズ41については、SMF51の斜研磨回転角度Ψが135°<Ψ<315°のとき、Δrが負となっており、Ψ=225°のときにΔrが最小となっている。レンズ42については、SMF52の斜研磨回転角度Ψが45°<Ψ<225°のとき、Δrが負となっており、Ψ=135°のときにΔrが最小となっている。レンズ43については、SMF53の斜研磨回転角度Ψが315°<Ψ<135°(即ち、315°<Ψ≦360°、0°≦Ψ<135°)のとき、Δrが負となっており、Ψ=45°のときにΔrが最小となっている。レンズ44については、SMF54の斜研磨回転角度Ψが225°<Ψ<45°(即ち、225°<Ψ≦360°、0°≦Ψ<45°)のとき、Δrが負となっており、Ψ=315°のときにΔrが最小となっている。
【0061】
図13は、各SMF51乃至54の端面51a乃至54aを正面視した場合において、Δrが負になるという径方向条件が成立するときの斜研磨回転角度Ψの角度範囲Rr1乃至Rr4、及び、Δrが最小となる(径方向内側に最大となる)ときの斜研磨方向Dr1乃至Dr4を示した図である。
図13では、コアCの図示を省略している。
図13に示すように、角度範囲Rr1乃至Rr4は、外周Cir1乃至Cir4に対応する角度範囲である。ここで、外周Cir1乃至Cir4は、それぞれ、線分L1乃至L4に対して径方向外側の部分の外周である。線分L1乃至L4は、それぞれ、端面51a乃至54aの中心を通り、径方向と直交する線分である。径方向条件は、SMF51乃至54の斜研磨回転角度Ψが、それぞれ、角度範囲Rr1乃至Rr4に含まれる場合に成立する。別言すれば、径方向条件は、斜研磨方向が、端面51a乃至54aの長軸の近位端E2が外周Cir1乃至Cir4上に位置するように設定される場合に成立する。
【0062】
また、斜研磨方向Dr1乃至Dr4は、それぞれ径方向外側を向いており、軸線A1に関して点対称関係が成立している。別言すれば、斜研磨方向Dr1乃至Dr4の向きは、端面51a乃至54aの長軸の近位端E2が、それぞれ、外周Cir1乃至Cir4の中点に位置するように設定されている。
【0063】
なお、別言すれば、線分L1乃至L4は、それぞれ、「端面51a乃至54aの中心を通り、軸線A1と当該中心とを結ぶ線分と直交する線分」である。また、外周Cir1乃至Cir4は、それぞれ、「端面51a乃至54aの外周のうち、線分L1乃至L4に対して軸線A1が位置している側とは反対側の部分の外周」である。線分L1乃至L4、及び、外周Cir1乃至Cir4は、「第1直交線」及び「第1外周」の一例にそれぞれ相当する。
【0064】
次いで、
図9Bを参照して移動量Δzの計算結果を説明する。
図9Bによれば、レンズ41及び42については、SMF51及び52の斜研磨回転角度Ψが270°<Ψ<90°(即ち、270°<Ψ≦360°、0°≦Ψ<90°)のとき、Δzが負となっており、Ψ=0°(360°)のときにΔzが最小となっている。レンズ43及び44については、SMF53及び54の斜研磨回転角度Ψが90°<Ψ<270°のとき、Δzが負となっており、Ψ=180°のときにΔzが最小となっている。
【0065】
図14は、各SMF51乃至54の端面51a乃至54aを正面視した場合において、Δzが負になるというz軸方向条件が成立するときの斜研磨回転角度Ψの角度範囲Rz1乃至Rz4、及び、Δzが最小となる(-z軸方向に最大となる)ときの斜研磨方向Dz1乃至Dz4を示した図である。
図14では、コアCの図示を省略している。
図14に示すように、角度範囲Rz1乃至Rz4は、それぞれ、外周Ciz1乃至Ciz4に対応する角度範囲である。ここで、外周Ciz1乃至Ciz4は、それぞれ、線分Lz1乃至Lz4に対して軸線A1が位置している側の部分の外周である。また、軸線A1と直交し、x軸方向に延びる直線を「基準線Lb」と規定すると、線分Lz1乃至Lz4は、それぞれ、端面51a乃至54aの中心を通り、基準線Lbと平行な線分である。z軸方向条件は、SMF51乃至54の斜研磨回転角度Ψが、それぞれ、角度範囲Rz1乃至Rz4に含まれる場合に成立する。別言すれば、z軸方向条件は、斜研磨方向が、端面51a乃至54aの長軸の近位端E2が外周Ciz1乃至Ciz4上に位置するように設定される場合に成立する。
【0066】
また、斜研磨方向Dz1及びDz2は、それぞれ+y軸方向(即ち、基準線Lbに向かって垂直に延びる方向)を向いており、斜研磨方向Dz3及びDz4は、それぞれ-y軸方向(即ち、基準線Lbに向かって垂直に延びる方向)を向いている。即ち、斜研磨方向Dz1乃至Dz4は、軸線A1に関して点対称関係が成立している。別言すれば、斜研磨方向Dz1乃至Dz4は、端面51a乃至54aの長軸の近位端E2が、それぞれ、外周Ciz1乃至Ciz4の中点に位置するように設定されている。
【0067】
なお、線分Lz1乃至Lz4、及び、外周Ciz1乃至Ciz4は、「平行線」及び「第2外周」の一例にそれぞれ相当する。また、基準線Lbは、各SMF51乃至54の中心を通過していない。このため、「デバイス10に例示されるように各SMF51乃至54が配置される場合」は、「第1の場合」の一例に相当する。また、基準線Lbは、x軸方向に延びる直線に限られない。基準線Lbは、軸線A1と直交し任意の方向に延びる直線であればよい。この場合にレンズ41乃至44を少なくともz軸方向に移動させるには、レンズ41乃至44をz軸方向に移動した後、更に基準線Lbと平行に移動させればよい。
【0068】
本願発明者らは、MCF20(
図1及び
図6参照)を、コア数及び/又はコア配置が異なる他のMCF120及び220に変更して同様の計算を行うことにより、デバイスの結合部を径方向又はz軸方向に小型化可能な斜研磨回転角度Ψの角度範囲について更に詳しく検討した。
【0069】
図15は、検討に用いられたMCF120の端面120aを示す図である。MCF120は、MCF20とコア配置のみが異なるMCFである。
図15に示すように、MCF120は、4つのコアC1乃至C4と、これらのコアC1乃至C4を取り囲む共通のクラッドCLと、を備える。コアC1乃至コアC4は、端面120aの中心を中心として2回対称となるようにx軸方向に直線状に配置されている。コアピッチは50μmである。MCF120のコアC1乃至C4は、「第1コア」の一例に相当する。
【0070】
図16は、MCF120を用いたデバイス110の平面図である。
図17は、デバイス110の比較例としてのデバイス410の平面図である。以下では、まず、デバイス410の構成について、デバイス310(
図4及び
図5参照)との相違点を主に説明し、その後、デバイス110の構成について説明する。
【0071】
図17に示すように、デバイス410は、MCF120と、第1レンズ30と、第2レンズ群140と、SMF群450と、を備える。第2レンズ群140は、レンズ141乃至144を有する。レンズ141乃至144は、レンズ41乃至44とそれぞれ同一のコリメートレンズであるが、それらの位置が異なっている。具体的には、レンズ141乃至144の主点Cs1乃至Cs4(図示省略)は、軸線A1と直交し、x軸方向に延びる直線上に位置している。また、レンズ141乃至144は、「第1レンズ30から出射されたMCF120の各コアC1乃至C4からの光線の主光線B1乃至B4」が、対応するレンズ141乃至144の焦点(図示省略)を通過するように配置されている。これにより、レンズ141乃至144に入射した主光線B1乃至B4は、レンズ141乃至144の光軸と平行な光線としてそれぞれ出射する。レンズ141乃至144への入射光の入射位置Ps11乃至Ps14(図示省略)も、上記直線(主点Cs1乃至Cs4が位置している直線)上に位置している。
【0072】
SMF群450は、SMF451乃至454を有する。SMF451乃至454は、SMF351乃至354とそれぞれ同一のSMFである。SMF451乃至454の端面451a乃至454aは、対応するレンズ141乃至144から出射されたコアC1乃至C4からの光線が、コアCの中心上で収束する位置にそれぞれ配置されている。即ち、SMF451乃至454は、主光線B1乃至B4がコアCの中心に入射するようにそれぞれ配置されている。端面451a乃至454aの中心は、軸線A1と直交し、x軸方向に延びる直線上に位置している。即ち、主光線B1乃至B4は、何れも軸線A1を通るxz平面上に位置している。SMF451乃至454の-z軸方向の端部は、それぞれ、円筒状のフェルール461乃至464に挿通されて保持されている。
【0073】
第1レンズ30及び第2レンズ群140は、MCF120とSMF群450とを光学的に結合しており、デバイスの結合部として機能する。以上が、比較例としてのデバイス410の構成についての説明である。
【0074】
続いて、デバイス110の構成について説明する。
図16に示すように、デバイス110は、SMF群150を除いて、デバイス410で用いられた部材と同一の部材を用いている。
【0075】
SMF群150は、SMF151乃至154を有する。SMF151乃至154は、それらの端面151a乃至154aが斜研磨されている点でSMF451乃至454と相違している。SMF151乃至154は、SMF51乃至54とそれぞれ同一のSMFであり、研磨角度は8°である。SMF151乃至154の-z軸方向の端部は、円筒状のフェルール161乃至164に挿通されて保持されている。SMF151乃至154は、「周辺シングルコア光ファイバ」の一例に相当する。
【0076】
図16の例では、SMF153及び151の回転角度Ψは90°であり、SMF152及び154の回転角度Ψは270°である。
図16及び
図17に示すように、デバイス110のレンズ143及び141は、デバイス410のレンズ143及び141に対して-x軸方向(即ち、軸線A1に接近する方向)に移動している。これにより、レンズ143及び141からそれぞれ出射される主光線B3及びB1が、移動前と比較して、xz平面上で-x軸方向に傾斜している。また、デバイス110のレンズ142及び144は、デバイス410のレンズ142及び144に対して+x軸方向(即ち、軸線A1に接近する方向)に移動している。これにより、レンズ142及び144からそれぞれ出射される主光線B2及びB4が、移動前と比較して、xz平面上で+x軸方向に傾斜している。即ち、主光線B1乃至B4は、何れも軸線A1を通るxz平面上に位置している。本例では、レンズ141乃至144からの出射光の主光線B1乃至B4の光線角度θ1が、何れも3.8°となるようにレンズ141乃至144を移動させている(即ち、入射位置Ps11乃至Ps14を移動させている)。このため、この構成によれば、
図16に示すように、レンズ141乃至144からの出射光(
図16では主光線B1乃至B4のみ図示)は、SMF151乃至154の端面151a乃至154aに適切に入射する。
【0077】
図18Aは、デバイス110における回転角度Ψと移動量Δrとの関係を規定したグラフであり、
図18Bは、デバイス110における回転角度Ψと移動量Δzとの関係を規定したグラフである。以下では、
図18A及び
図18Bのグラフについて説明する前に、レンズ141乃至144の移動方向について、レンズ143を例に挙げて説明する。
図19は、レンズ143を正面視した図である。
図20は、
図19の範囲R2の部分拡大図である。
図19及び
図20に示す円143aは、入射位置Ps13を中心とする半径0.16mmの円である。なお、これらの図における入射位置Ps13は、比較例としてのデバイス410のレンズ43に主光線B3が入射するときの入射位置である。上述したように、入射位置Ps13及び主点Cs3は、軸線A1(
図19では図示省略)を通りx軸方向に延びる直線上に位置している。このため、本例では、x軸方向が径方向に相当する。
【0078】
図20に示すように、円143a上には、8つの点P11乃至P18が、点P1乃至P8(
図11A及び
図11B参照)と対応する位置に配置されている。まず、レンズ143をxy平面上で移動させる場合について説明する。例えば、レンズ143を径方向内側に0.16mm移動すると、入射位置Ps13は点P13に移動する。このとき、移動後の出射光の主光線B3は、移動前の主光線B3に対して、(xz平面上を)点P17側(即ち、径方向内側)に3.8°だけ屈折する。このときの移動量Δrは、線分Ps13P13の長さ(0.16mm)に等しくなる。
【0079】
また、例えば、レンズ143を、入射位置Ps13が点P12又は点P14に位置するように移動すると、移動後の出射光の主光線B3は、移動前の主光線B3に対して、点P16側又は点P18側に3.8°だけ屈折する。このときの移動量Δrは、線分Ps13Q11の長さ(0.12mm)に等しくなる。なお、点Q11は、点P12又はP14から線分P13P17上に下ろした垂線の足である。
【0080】
次に、レンズ143を少なくともz軸方向に移動させる場合について説明する。レンズ143を-z軸方向に移動させると、入射位置Ps13は径方向内側(-x軸方向)に移動し、レンズ143を+z軸方向に移動させると、入射位置Ps3は径方向外側(+x軸方向)に移動する。
【0081】
例えば、レンズ143を-z軸方向に2.8mm移動すると、入射位置Ps13は点P17に移動する。このとき、移動後の出射光の主光線B3は、移動前の主光線B3に対して、(xz平面上を)点P13側(即ち、径方向外側)に3.8°だけ屈折する。移動量Δzは2.8mmである。また、例えば、レンズ143を-z軸方向に2.0mm移動すると、入射位置Ps13は点Q12に移動する。点Q12は、線分P18P16と線分P13P17との交点である。この状態から、更にレンズ143を+y軸方向に2.0mm移動すると、入射位置Ps13は点P18に移動する。このとき、移動後の出射光の主光線B3は、移動前の主光線B3に対して、点P16側に3.8°だけ屈折する。移動量Δzは2.0mmである。即ち、この計算では、レンズ143を、入射位置Ps13が点13又は点17に位置するように移動する場合は、レンズ143をz軸方向にのみ移動する。一方、レンズ143を、入射位置Ps13が「点P13及びP17を除く円143a上の任意の点」に位置するように移動する場合は、レンズ143をz軸方向及びy軸方向に移動する。
【0082】
レンズ141、142及び144についても同様の考え方が適用され得る。以上がレンズ141乃至144の移動方向についての説明である。
【0083】
図18Aによれば、レンズ141及び143については、SMF151及び153の回転角度Ψが0°<Ψ<180°のとき、Δrが負となっており、Ψ=90°のときにΔrが最小となっている。レンズ142及び144については、SMF152及び154の回転角度Ψが180°<Ψ<360°のとき、Δrが負となっており、Ψ=270°のときにΔrが最小となっている。
【0084】
図21は、各SMF151乃至154の端面151a乃至154aを正面視した場合において、径方向条件が成立するときの回転角度Ψの角度範囲Rr11乃至Rr14、及び、Δrが最小となるときの斜研磨方向Dr11乃至Dr14を示した図である。
図21では、コアCの図示を省略している。
図21に示すように、角度範囲Rr11乃至Rr14は、外周Cir11乃至Cir14に対応する角度範囲である。ここで、外周Cir11乃至Cir14は、それぞれ、線分Lr11乃至Lr14に対して径方向外側の部分の外周である。線分Lr11乃至Lr14は、それぞれ、端面151a乃至154aの中心を通り、径方向と直交する線分である。径方向条件は、SMF151乃至154の回転角度Ψが、それぞれ、角度範囲Rr11乃至Rr14に含まれる場合に成立する。別言すれば、径方向条件は、斜研磨方向が、端面151a乃至154aの長軸の近位端E2が外周Cir11乃至Cir14上に位置するように設定される場合に成立する。
【0085】
また、斜研磨方向Dr11乃至Dr14は、それぞれ径方向外側を向いており、軸線A1に関して点対称関係が成立している。別言すれば、斜研磨方向Dr11乃至Dr14の向きは、端面151a乃至154aの長軸の近位端E2が、それぞれ、外周Cir11乃至Cir14の中点に位置するように設定されている。
【0086】
なお、別言すれば、線分Lr11乃至Lr14は、それぞれ、「端面151a乃至154aの中心を通り、軸線A1と当該中心とを結ぶ線分と直交する線分」である。また、外周Cir11乃至Cir14は、それぞれ、「端面151a乃至154aの外周のうち、線分Lr11乃至Lr14に対して軸線A1が位置している側とは反対側の部分の外周」である。線分Lr11乃至Lr14、及び、外周Cir11乃至Cir14は、「第1直交線」及び「第1外周」の一例にそれぞれ相当する。
【0087】
一方、
図18Bによれば、レンズ141及び143については、SMF151及び153の回転角度Ψが180°<Ψ<360°のとき、Δzが負となっており、Ψ=270°のときにΔzが最小となっている。また、上記の角度範囲では、レンズ141のΔzのほうがレンズ143のΔzよりも小さい(-z軸方向の移動量が大きい)。これは、レンズ141への入射光の入射角度が、レンズ143への入射光の入射角度よりも小さい(
図16参照)ため、入射位置Ps11(レンズ141への入射光の入射位置)を入射位置Ps13(レンズ143への入射光の入射位置)と同じ距離だけ移動させるには、レンズ141をレンズ143よりも-z軸方向に大きく移動させる必要があるからである。これに対し、レンズ142及び144については、SMF152及び154の回転角度Ψが0°<Ψ<180°のとき、Δzが負となっており、Ψ=90°のときにΔzが最小となっている。また、上記の角度範囲では、レンズ142のΔzのほうがレンズ144のΔzよりも小さい。これは、上記と同様の理由による。
【0088】
図22は、各SMF151乃至154の端面151a乃至154aを正面視した場合において、z軸方向条件が成立するときの回転角度Ψの角度範囲Rz11乃至Rz14、及び、Δzが最小となる(-z軸方向に最大となる)ときの斜研磨方向Dz11乃至Dz14を示した図である。
図22では、コアCの図示を省略している。
図22に示すように、角度範囲Rz11乃至Rz14は、それぞれ、外周Ciz11乃至Ciz14に対応する角度範囲である。ここで、外周Ciz11乃至Ciz14は、それぞれ、線分Lz11乃至Lz14に対して径方向内側(軸線A1が位置している側)の部分の外周である。z軸方向条件は、SMF151乃至154の回転角度Ψが、それぞれ、角度範囲Rz11乃至Rz14に含まれる場合に成立する。別言すれば、z軸方向条件は、斜研磨方向が、端面151a乃至154aの長軸の近位端E2が外周Ciz11乃至Ciz14上に位置するように設定される場合に成立する。なお、線分Lz11乃至Lz14は、それぞれ、端面151a乃至154aの中心を通り、基準線Lbと直交する線分ということもできる。
【0089】
また、斜研磨方向Dz11及びDz13は、それぞれ-x軸方向(即ち、基準線Lbに沿って軸線A1に向かう方向)を向いており、斜研磨方向Dz12及びDz14は、それぞれ+x軸方向(即ち、基準線Lbに沿って軸線A1に向かう方向)を向いている。即ち、斜研磨方向Dz11乃至Dz14は、軸線A1に関して点対称関係が成立している。別言すれば、斜研磨方向Dz11乃至Dz14の向きは、端面151a乃至154aの長軸の近位端E2が、それぞれ、外周Ciz11乃至Ciz14の中点に位置するように設定されている。
【0090】
なお、線分Lz11乃至Lz14、及び、外周Ciz11乃至Ciz14は、「第2直交線」及び「第3外周」の一例にそれぞれ相当する。また、基準線Lbは、各SMF151乃至154の中心を通過している。このため、「デバイス110に例示されるように各SMF151乃至154が配置される場合」は、「第2の場合」の一例に相当する。
【0091】
図23は、検討に用いられたMCF220の端面220aを示す図である。MCF220は、MCF20とコア数及びコア配置のみが異なるMCFである。
図23に示すように、MCF220は、7つのコアC1乃至C7と、これらのコアC1乃至C7を取り囲む共通のクラッドCLと、を備える。コアC4は、MCF220の中心軸線に沿って延在している(以下、「中心コアC4」とも称する。)。コアC1乃至C3並びにC5乃至C7は、中心コアC4を中心とした正六角形の頂点に位置しており、軸線方向に沿って延在している(以下、それぞれ、「周辺コアC1乃至C3並びにC5乃至C7」とも称する。)。コアピッチは38μmである。MCF220のコアC1乃至C7は、「第1コア」の一例に相当する。
【0092】
図24は、MCF220を用いたデバイス210の側面図である。
図25は、デバイス210の比較例としてのデバイス510の側面図である。以下では、まず、デバイス510の構成について、デバイス310(
図4及び
図5参照)との相違点を主に説明し、その後、デバイス210の構成について説明する。
【0093】
図25に示すように、デバイス510は、MCF220と、第1レンズ30と、第2レンズ群240と、SMF群550と、を備える。
図25では、MCF220のコアC1、C4及びC7から出射される光線の主光線B1、B4及びB7のみを図示している。第2レンズ群240は、レンズ241乃至247を有する(
図25では、レンズ241、244及び247のみを図示)。レンズ241乃至247は、何れもレンズ41乃至44と同一のコリメートレンズであるが、それらの位置が異なっている。
【0094】
具体的には、レンズ241乃至247の主点Cs1乃至Cs7(図示省略)は、同一平面上に位置しており、当該平面は軸線A1と直交している。主点Cs4は、軸線A1上に位置している。主点Cs1乃至Cs3並びにCs5乃至Cs7は、それぞれ軸線A1(主点Cs4)を中心とする正六角形の頂点に位置している。より具体的には、レンズ241乃至247は、「第1レンズ30から出射されたMCF220の各コアC1乃至C7からの光線の主光線B1乃至B7」が、対応するレンズ241乃至247の焦点(図示省略)を通過するように配置されている。これにより、レンズ241乃至247に入射した主光線B1乃至B7は、レンズ241乃至247の光軸と平行な光線としてそれぞれ出射する。また、レンズ241乃至247への主光線B1乃至B7の入射位置Ps21乃至Ps27(図示省略)は、入射位置Ps21乃至23並びに25乃至27が、入射位置Ps24を中心とする正六角形の頂点にそれぞれ位置する位置関係となっている。これは、MCF220のコア配置によるものである(
図23参照)。即ち、入射位置Ps21乃至23並びに25乃至27は、軸線A1(入射位置Ps24)に関して対称関係にある。
【0095】
SMF群550は、SMF551乃至557を有する(
図25では、SMF551、554及び557のみを図示)。SMF551乃至557は、何れもSMF351乃至354と同一のSMFである。SMF551乃至557の端面551a乃至557aは、対応するレンズ241乃至247から出射されたコアC1乃至C7からの光線が、コアCの中心上で収束する位置にそれぞれ配置されている。即ち、SMF551乃至557は、主光線B1乃至B7がコアCの中心に入射するようにそれぞれ配置されている。SMF551乃至557の-z軸方向の端部は、それぞれ、円筒状のフェルール561乃至567に挿通されて保持されている(
図25では、フェルール561、564及び567のみを図示)。
【0096】
第1レンズ30及び第2レンズ群240は、MCF220とSMF群550とを光学的に結合しており、デバイスの結合部として機能する。以上が、比較例としてのデバイス510の構成についての説明である。
【0097】
続いて、デバイス210の構成について説明する。
図24に示すように、デバイス210は、SMF群250を除いて、デバイス510で用いられた部材と同一の部材を用いている。
【0098】
SMF群250は、SMF251乃至257を有する(
図24では、SMF251、5254及び257のみを図示)。SMF251乃至257は、それらの端面251a乃至257aが斜研磨されている点でSMF551乃至557と相違している。SMF251乃至257は、何れもSMF51乃至54と同一のSMFである。SMF251乃至257の-z軸方向の端部は、円筒状のフェルール261乃至267に挿通されて保持されている(
図24では、フェルール261、264及び267のみを図示)。SMF254は、MCF220の中心コアC4からの出射光が第1レンズ30及び第2レンズ群240を経由して入射することになるSMFである。このため、以下では、SMF254を「中心SMF」と称し、他のSMF251乃至253並びに255乃至257を「周辺SMF」と称する場合がある。
【0099】
図24の例では、SMF257の回転角度Ψは0°であり、SMF251の回転角度Ψは180°である(SMF254については後述)。また、
図24では図示を省略しているが、SMF255及び256の回転角度Ψは0°であり、SMF252及び253の回転角度Ψは180°である。
図24及び
図25に示すように、デバイス210のレンズ247(並びにレンズ245及び246)は、デバイス510のレンズ247(並びにレンズ245及び246)に対して-y軸方向(即ち、軸線A1に接近する方向)に移動している。これにより、レンズ245乃至247からそれぞれ出射される主光線B5乃至B7が、移動前と比較して、yz平面上で-y軸方向に傾斜する。また、デバイス210のレンズ241(並びにレンズ242及び243)は、デバイス510のレンズ241(並びにレンズ242及び243)に対して+y軸方向(即ち、軸線A1に接近する方向)に移動している。これにより、レンズ241乃至243からそれぞれ出射される主光線B1乃至B3が、移動前と比較して、yz平面上で+y軸方向に傾斜する。一方、SMF254の回転角度Ψは0°である。デバイス210のレンズ244は、デバイス510のレンズ244に対して-y軸方向に移動している。これにより、レンズ244から出射される主光線B4は、移動前と比較して、yz平面上で-y軸方向に傾斜する。
【0100】
本例では、レンズ241乃至247からの出射光の主光線B1乃至B7の光線角度θ1が、何れも3.8°となるようにレンズ241乃至247を移動させている(即ち、入射位置Ps21乃至Ps27を移動させている)。このため、この構成によれば、
図24に示すように、レンズ241乃至247からの出射光(
図24では主光線のみ図示)は、SMF251乃至257の端面251a乃至257aに適切に入射する。
【0101】
図26Aは、デバイス210における回転角度Ψと移動量Δrとの関係を規定したグラフであり、
図26Bは、デバイス210における回転角度Ψと移動量Δzとの関係を規定したグラフである。以下では、
図26A及び
図26Bのグラフについて説明する前に、回転角度Ψとレンズ241乃至247の移動方向について、レンズ245を例に挙げて説明する。
図27は、レンズ245を正面視した図である。
図28A及び
図28Bは、
図27の範囲R3の部分拡大図である。
図27乃至
図28Bに示す円245aは、入射位置Ps25を中心とする半径0.16mmの円である。なお、これらの図における入射位置Ps25は、比較例としてのデバイス510のレンズ245に主光線B5が入射するときの入射位置である。入射位置Ps25は、軸線A1(図示省略)と主点Cs5とを結ぶ半直線上に位置している。
【0102】
図28A及び
図28Bに示すように、円245a上には、12個の点P21乃至P32がこの順に反時計回りに等間隔で配置されている。点P21は、入射位置Ps25から+y軸方向に位置している。点P21乃至P32は、レンズ245上の固定点である。まず、
図27及び
図28Aを参照して、レンズ245をxy平面上で移動させる場合について説明する。例えば、レンズ245を径方向内側に0.16mm移動すると、入射位置Ps25は点P23に移動する。このとき、移動後の出射光の主光線B5は、移動前の主光線B5に対して、点P29側(即ち、径方向内側)に3.8°だけ屈折する。このときの移動量Δrは、線分Ps25P23の長さ(0.16mm)に等しくなる。
【0103】
また、例えば、レンズ245を、入射位置Ps25が点P22又は点P24に位置するように移動すると、移動後の出射光の主光線B5は、移動前の主光線B5に対して、点P28側又は点P30側に3.8°だけ屈折する。このときの移動量Δrは、線分Ps25Q21の長さ(0.14mm)に等しくなる。なお、点Q21は、点P22又はP24から線分P23P29上に下ろした垂線の足である。
【0104】
次に、
図27及び
図28Bを参照して、レンズ245を少なくともz軸方向に移動させる場合について説明する。レンズ245を-z軸方向に移動させると、入射位置Ps25は径方向内側に移動し、レンズ245を+z軸方向に移動させると、入射位置Ps25は径方向外側に移動する。
【0105】
例えば、レンズ245を-z軸方向に6.0mm移動すると、入射位置Ps25は点P29に移動する。このとき、移動後の出射光の主光線B5は、移動前の主光線B5に対して、点P23側(即ち、径方向外側)に3.8°だけ屈折する。このときの移動量Δzは6.0mmである。この状態から、更にレンズ245を+x軸方向に0.28mm移動すると、入射位置Ps25は点P25に移動する。このとき、移動後の出射光の主光線B5は、移動前の主光線B5に対して、点P31側に3.8°だけ屈折する。このときの移動量Δzも6.0mmである(x軸方向における移動距離は無視するため)。
【0106】
また、例えば、レンズ245を-z軸方向に12mm移動すると、入射位置Ps25は点Q22に移動する。点Q22は、直線P23P29と、点P27における円245aの接線との交点である。この状態から、更にレンズ245を+x軸方向に0.28mm移動すると、入射位置Ps3は点P27に移動する。このとき、移動後の出射光の主光線B5は、移動前の主光線B5に対して、点P21側に3.8°だけ屈折する。このときの移動量Δzは12mmである。即ち、この計算では、レンズ245を、入射位置Ps25が点23又は点29に位置するように移動する場合は、レンズ245をz軸方向にのみ移動する。一方、レンズ245を、入射位置Ps25が「点P23及びP29を除く円245a上の任意の点」に位置するように移動する場合は、レンズ245をz軸方向及びx軸方向に移動する。
【0107】
SMF255の斜研磨方向は、移動後のレンズ245からの出射光の主光線B5の屈折方向に応じて設定され得る。具体的には、レンズ245を、入射位置Ps25が点Pj(j:21~32の整数)に位置するように移動する場合(
図28A及び
図28B参照)、SMF255の回転角度Ψは、30×(j-21)°に設定され得る。
【0108】
レンズ241乃至243並びにレンズ246及び247についても、同様の考え方が適用され得る。これに対し、レンズ244については考え方が若干異なる。つまり、レンズ244をxy平面上で移動させる場合、基本的には同様の考え方が適用され得る。しかしながら、
図25に示すように、移動前のレンズ244への主光線B4の入射位置Ps24(図示省略)はレンズ244の正面視において主点Cs4と一致しているため、径方向を規定することができない。従って、この計算では、「入射位置Ps24を中心とする半径0.16mmの円上の任意の点に入射位置Ps24が位置するようにレンズ244を移動させたときのレンズ244の移動距離(即ち、当該円の半径)」を、便宜上、Δrとして計算している。つまり、レンズ244については、Δrは回転角度Ψによらず一定である。一方、レンズ244をz軸方向に移動させる場合、
図24に示すように、レンズ244への入射光の主光線B4は、軸線A1に平行である。このため、レンズ244をz軸方向に移動させても、レンズ244への入射位置Ps24は変化しない(移動しない)。即ち、Δzを一義的に決定することができない。従って、この計算では、レンズ244のΔzは計算していない。以上が斜研磨回転角度Ψとレンズ241乃至247の移動方向との関係についての説明である。
【0109】
図26Aによれば、レンズ241については、SMF251の回転角度Ψが90°<Ψ<270°のとき、Δrが負となっており、Ψ=180°のときにΔrが最小となっている。レンズ242については、SMF252の回転角度Ψが30°<Ψ<210°のとき、Δrが負となっており、Ψ=120°のときにΔrが最小となっている。レンズ243については、SMF253の回転角度Ψが150°<Ψ<330°のとき、Δrが負となっており、Ψ=240°のときにΔrが最小となっている。レンズ244については、回転角度Ψによらず、Δrが正の一定値を有する。レンズ245については、SMF255の回転角度Ψが330°<Ψ<150°(即ち、330°<Ψ≦360°、0°≦Ψ<150°)のとき、Δrが負となっており、Ψ=60°のときにΔrが最小となっている。レンズ246については、SMF256の回転角度Ψが210°<Ψ<30°(即ち、210°<Ψ≦360°、0°≦Ψ<30°)のとき、Δrが負となっており、Ψ=300°のときにΔrが最小となっている。レンズ247については、SMF257の回転角度Ψが270°<Ψ<90°のとき、Δrが負となっており、Ψ=360°のときにΔrが最小となっている。
【0110】
図29は、各SMF251乃至253並びに255乃至257(周辺SMF)の端面251a乃至253a並びに255a乃至257aを正面視した場合において、径方向条件が成立するときの回転角度Ψの角度範囲Rr21乃至23並びにRr25乃至27、及び、Δrが最小となるときの斜研磨方向Dr21乃至23並びにDr25乃至27を示した図である。
図29では、周辺SMFのコアCの図示を省略している。なお、レンズ244については径方向条件が成立しないため、
図29ではSMF254(中心SMF)の図示を省略している。
図29に示すように、角度範囲Rr21乃至23並びにRr25乃至27は、それぞれ、外周Cir21乃至23並びにCir25乃至27に対応する角度範囲である。ここで、当該外周は、それぞれ、線分L21乃至23並びにL25乃至27に対して径方向外側の部分の外周である。当該線分は、それぞれ、端面251a乃至253a並びに255a乃至257aの中心を通り、径方向と直交する線分である。径方向条件は、周辺SMFの回転角度Ψが、それぞれ、角度範囲Rr21乃至23並びにRr25乃至27に含まれる場合に成立する。別言すれば、径方向条件は、斜研磨方向が、端面251a乃至253a並びに255a乃至257aの長軸の近位端E2が外周Cir21乃至23並びにCir25乃至27上にそれぞれ位置するように設定される場合に成立する。
【0111】
また、斜研磨方向Dr21乃至23並びにDr25乃至27は、それぞれ径方向外側を向いており、軸線A1に関して点対称関係が成立している。別言すれば、当該斜研磨方向は、端面251a乃至253a並びに255a乃至257aの長軸の近位端E2が、それぞれ、外周Cir21乃至23並びにCir25乃至27の中点に位置するように設定されている。
【0112】
なお、別言すれば、線分L21乃至23並びにL25乃至27は、それぞれ、「端面251a乃至253a並びに255a乃至257aの中心を通り、軸線A1と当該中心とを結ぶ線分と直交する線分」である。また、外周Cir21乃至23並びにCir25乃至27は、それぞれ、「端面251a乃至253a並びに255a乃至257aの外周のうち、線分L21乃至23並びにL25乃至27に対して軸線A1が位置している側とは反対側の部分の外周」である。周辺SMFの上記線分及び外周は、「第1直交線」及び「第1外周」の一例にそれぞれ相当する。
【0113】
一方、
図26Bによれば、レンズ241乃至243については、SMF251乃至253の回転角度Ψが270°<Ψ<90°のとき、Δzが負となっており、Ψ=0°(360°)のときにΔzが最小となっている。また、上記の角度範囲では、レンズ242及び243のΔzのほうがレンズ241のΔzよりも小さい(-z軸方向の移動量が大きい)。これは、レンズ242及び243への入射光の入射角度が、レンズ241への入射光の入射角度よりも小さいため、入射位置Ps22及びPs23(レンズ242及び243への入射光の入射位置)を入射位置Ps21(レンズ241への入射光の入射位置)と同じ距離だけ移動させるには、レンズ242及び243をレンズ241よりも-z軸方向に大きく移動させる必要があるからである。これに対し、レンズ245乃至247については、SMF255乃至257の回転角度Ψが90°<Ψ<270°のとき、Δzが負となっており、Ψ=180°のときにΔzが最小となっている。また、上記の角度範囲では、レンズ245及び246のΔzのほうがレンズ247のΔzよりも小さい。これは、上記と同様の理由による。
【0114】
図30は、周辺SMFの端面251a乃至253a並びに255a乃至257aを正面視した場合において、z軸方向条件が成立するときの回転角度Ψの角度範囲Rz21乃至23並びにRz25乃至27、及び、Δzが最小となる(-z軸方向に最大となる)ときの斜研磨方向Dz21乃至23並びにDz25乃至27を示した図である。
図30では、周辺SMFのコアCの図示を省略している。なお、レンズ244についてはΔzが計算されないため、
図30ではSMF254(中心SMF)の図示を省略している。
図30に示すように、角度範囲Rz21乃至23並びにRz25乃至27は、それぞれ、外周Ciz21乃至23並びにCiz25乃至27に対応する角度範囲である。ここで、当該外周は、それぞれ、線分Lz21乃至23並びにLz25乃至27に対して軸線A1が位置している側の部分の外周である。また、当該線分は、それぞれ、端面251a乃至253a並びに255a乃至257aの中心を通り、基準線Lbと平行な線分である。z軸方向条件は、周辺SMFの回転角度Ψが、それぞれ、角度範囲Rz21乃至23並びにRz25乃至27に含まれる場合に成立する。別言すれば、z軸方向条件は、斜研磨方向が、端面251a乃至253a並びに255a乃至257aの長軸の近位端E2が外周Ciz21乃至23並びにCiz25乃至27上にそれぞれ位置するように設定される場合に成立する。
【0115】
また、斜研磨方向Dz21乃至Dz23は、それぞれ+y軸方向(即ち、基準線Lbに向かって垂直に延びる方向)を向いており、斜研磨方向Dz25乃至Dz27は、それぞれ-y軸方向(即ち、基準線Lbに向かって垂直に延びる方向)を向いている。即ち、斜研磨方向Dz21乃至23並びにDz25乃至27は、軸線A1に関して点対称関係が成立している。別言すれば、斜研磨方向Dz21乃至23並びにDz25乃至27の向きは、端面251a乃至253a並びに255a乃至257aの長軸の近位端E2が、それぞれ、外周Ciz21乃至23並びにCiz25乃至27の中点に位置するように設定されている。
【0116】
なお、周辺SMFの上記線分及び外周は、「平行線」及び「第2外周」の一例にそれぞれ相当する。また、基準線Lbは、各周辺SMFの中心を通過していない。このため、「デバイス210に例示されるように各周辺SMFが配置される場合」は、「第1の場合」の一例に相当する。
【0117】
以上の計算結果によれば、任意の或るコア数及びコア配置を有するMCFと、第2レンズと同数のSMFと、を備えるFIFOデバイスにおいて、各周辺SMFを正面視した場合に、「各周辺SMFの端面の中心を通り、径方向(軸線A1と各第2レンズの主点とを結ぶ半直線に沿った方向)と直交する線分である第1直交線に対して径方向外側の部分の外周に対応する角度範囲に斜研磨回転角度Ψが含まれる」ように斜研磨方向を設定することにより、FIFOデバイスの結合部を径方向に小型化できる。また、斜研磨方向が径方向外側を向くように当該方向を設定することにより、当該結合部を径方向に最も小型化できる。
【0118】
一方、本実施形態に記載した方法で第2レンズを少なくともz軸方向に移動させる場合において、各周辺SMFを正面視したときに基準線Lbが各周辺SMFの中心を通過していないときは(
図14及び
図30参照)、「各周辺SMFの端面の中心を通り、基準線Lbと平行な線分である平行線に対して軸線A1が位置している側の部分の外周に対応する角度範囲に斜研磨回転角度Ψが含まれる」ように斜研磨方向を設定することにより、FIFOデバイスの結合部をz軸方向に小型化できる。また、斜研磨方向が、基準線Lbに向かって垂直に延びる方向となるように当該方向を設定することにより、当該結合部をz軸方向に最も小型化できる。
【0119】
或いは、本実施形態に記載した方法で第2レンズを少なくともz軸方向に移動させる場合において、各周辺SMFを正面視したときに基準線Lbが各周辺SMFの中心を通過しているときは(
図22参照)、「各周辺SMFの端面の中心を通り、基準線Lbと直交する線分である第2直交線に対して軸線A1が位置している側の部分の外周に対応する角度範囲に斜研磨回転角度Ψが含まれる」ように斜研磨方向を設定することにより、FIFOデバイスの結合部をz軸方向に小型化できる。また、斜研磨方向が、基準線Lbに沿って軸線A1に向かう方向となるように当該方向を設定することにより、当該結合部をz軸方向に最も小型化できる。
【0120】
以上説明したように、第1実施形態に係るFIFOデバイスによれば、各第2レンズを「軸線A1に接近する方向」又は「第1レンズ30に接近する方向」に移動させたときの各第2レンズからの出射光が、対応する周辺SMFに適切に入射するように各周辺SMFの斜研磨方向を設定することにより、反射戻り光を低減しつつ、FIFOデバイスを小型化することが可能となる。
【0121】
(変形例)
続いて、
図31A及び
図31Bを参照して変形例に係るFIFOデバイスについて説明する。
図31A及び
図31Bは、FIFOデバイスのうちMCF20p及び第1レンズ30のみを示す図である。
図31Aに示すように、MCF20pは、端面20apがその中心軸線と直交する面(xy平面)に対して所定の傾斜方向(後述)に所定の研磨角度(本例では、8°)だけ傾斜するように斜研磨されている。より具体的には、MCF20pの端面20apは、フェルール22pの端面22apとともに一括して斜研磨されている。MCF20pを斜研磨することにより、MCF20pの端面20apにおける反射光に起因した反射戻り光を低減している。なお、MCF20pのコア数及びコア配置は、MCF20と同様である。上記傾斜方向及び上記研磨角度は、それぞれ「第2傾斜方向」及び「第2研磨角度」の一例に相当する。
【0122】
本実施形態では、MCF20pは円柱状である。このため、斜研磨されたMCF20pの端面20apは、当該端面20apに垂直な方向から見ると楕円形状となっている。従って、斜研磨基準軸は、端面20apの長軸であり、対応する第1レンズ30からより離間している一端(遠位端E3)からより近接している他端(近位端E4)に向かう方向を端面20apの中心軸線に沿って見たときの方向が、「MCF20pの斜研磨方向」である。以下では、端面20apを正面視したときに、任意の或る斜研磨方向が、「端面20apの中心を通り、+y軸方向に向かう基準方向Dm0」から反時計回りに成す角を、「正の値を有する斜研磨回転角度Ψm」と規定する。本例では、MCF20pのΨmは0°である。
【0123】
MCF20pを斜研磨すると、その端面20apから出射される各コアC1乃至C4(図示省略)からの光線の主光線(本変形例では、主光線B1及びB3のみを図示)は、軸線に対して所定の向きに所定の角度だけ傾斜する。ここで、
図31Aに示すように、MCF20pが、その中心軸線が軸線A1と一致するように配置されていると、第1レンズ30から出射される光線の主光線B1乃至B4の光線角度θ1にばらつきが生じ、第1レンズ30からの出射光が第2レンズ群(図示省略)に適切に入射しない可能性がある。即ち、FIFOデバイスが適切に機能しない可能性がある。
【0124】
そこで、本変形例では、
図31Bに示すように、MCF20pを所定の距離だけ-y軸方向に移動している。具体的には、MCF20pの端面20apの中心から延びる主光線B1及びB3と平行な仮想線VLが第1レンズ30の焦点f1を通過するようにMCF20pを移動している。これにより、第1レンズ30から出射される各コアC1乃至C4からの光線の主光線B1乃至B4の光線角度θ1が互いに等しくなる。この構成によれば、反射戻り光を更に低減しつつ、FIFOデバイスの結合部を小型化することが可能となる。なお、この構成は、MCF20p以外のMCF(例えば、MCF120又はMCF220の端面が斜研磨されたMCF)に適用されてもよい。
【0125】
(第2実施形態)
次に、
図32A乃至
図33Bを参照して、第2実施形態に係るFIFOデバイスについて説明する。第2実施形態では、「第2レンズを少なくともz軸方向に移動させる方法」が第1実施形態と相違している。本実施形態では、FIFOデバイス10のレンズ43、及び、FIFOデバイス210のレンズ245を例に挙げて説明する。
【0126】
図32Aは、
図10(デバイス10のレンズ43を示す図)の範囲R1の部分拡大図である。第1実施形態では、レンズ43を、z軸方向及びx軸方向に移動させることにより入射位置Ps3を移動させるが、本実施形態では、レンズ43を、z軸方向及び「径方向と直交する直交方向」に移動させることにより入射位置Ps3を移動させる。以下では、レンズ43自体を、入射位置Ps3から点P8に向かって移動させる方向を正の直交方向と規定し、入射位置Ps3から点P4に向かって移動させる方向を負の直交方向と規定する。
【0127】
例えば、レンズ43を-z軸方向に4.3mm移動すると、入射位置Ps3は点Q3に移動する。点Q3は、点P5又はP7から線分P2P6上に下ろした垂線の足である。その後、レンズ43を負の直交方向に0.12mm移動すると、入射位置Ps3は点P5に移動する。この場合、直交方向の移動距離はz軸方向の移動距離に比べて極めて短いため、この計算では、レンズ43の直交方向における移動距離は無視している(別言すれば、デバイス10の結合部のz軸方向における小型化を優先している。)。即ち、Δz=4.3mmである。レンズ41、42及び44についても、同様の考え方が適用され得る。
【0128】
図32Bは、各SMF51乃至54の端面51a乃至54aを正面視した場合において、z軸方向条件が成立するときの回転角度Ψの角度範囲Rz31乃至Rz34、及び、Δzが最小となる(-z軸方向に最大となる)ときの斜研磨方向Dz31乃至Dz34を示した図である。
図32Bでは、コアCの図示を省略している(
図33Bについても同様)。
図32Bに示すように、角度範囲Rz31乃至Rz34は、外周Ciz31乃至Ciz34に対応する角度範囲である。ここで、外周Ciz31乃至Ciz34は、それぞれ、線分L1乃至L4(
図13参照)に対して径方向内側(軸線A1が位置している側)の部分の外周である。z軸方向条件は、SMF51乃至54の回転角度Ψが、それぞれ、角度範囲Rz31乃至Rz34に含まれる場合に成立する。別言すれば、z軸方向条件は、斜研磨方向が、端面51a乃至54aの長軸の近位端E2が外周Ciz31乃至Ciz34上に位置するように設定される場合に成立する。なお、外周Ciz31乃至Ciz34は、「第4外周」の一例に相当する。
【0129】
また、斜研磨方向Dz31乃至Dz34は、それぞれ径方向内側を向いており、軸線A1に関して点対称関係が成立している。別言すれば、斜研磨方向Dz31乃至Dz34の向きは、端面51a乃至54aの長軸の近位端E2が、それぞれ、外周Ciz31乃至Ciz34の中点に位置するように設定されている。
【0130】
図33Aは、
図27(デバイス210のレンズ245を示す図)の範囲R3の部分拡大図である。この例では、正の直交方向は、レンズ245自体を、入射位置Ps25から点P32に向かって移動させる方向であり、負の直交方向は、レンズ245自体を、入射位置Ps25から点P26に向かって移動させる方向である。
【0131】
例えば、レンズ245を-z軸方向に3.0mm移動すると、入射位置Ps25は点Q23に移動する。点Q23は、点P27又はP31から線分P23P29上に下ろした垂線の足である。その後、レンズ43を正の直交方向に0.14mm移動すると、入射位置Ps25は点P27に移動する。この場合、Δz=3.0mmである。レンズ241乃至243並びに246及び247についても、同様の考え方が適用され得る。
【0132】
図33Bは、周辺SMFの端面251a乃至253a並びに255a乃至257aを正面視した場合において、z軸方向条件が成立するときの回転角度Ψの角度範囲Rz41乃至43並びにRz45乃至47、及び、Δzが最小となるときの斜研磨方向Dz41乃至43並びにDz45乃至47を示した図である。
図33Bに示すように、角度範囲Rz41乃至43並びにRz45乃至47は、外周Ciz41乃至43並びにCiz45乃至47に対応する角度範囲である。ここで、当該外周は、それぞれ、線分L21乃至23並びにL25乃至27(
図29参照)に対して径方向内側(軸線A1が位置している側)の部分の外周である。z軸方向条件は、周辺SMFの回転角度Ψが、それぞれ、角度範囲Rz41乃至43並びにRz45乃至47に含まれる場合に成立する。別言すれば、z軸方向条件は、斜研磨方向が、端面251a乃至253a並びに255a乃至257aの長軸の近位端E2が外周Ciz41乃至43並びにCiz45乃至47上に位置するように設定される場合に成立する。なお、上記外周は、「第4外周」の一例に相当する。
【0133】
また、斜研磨方向Dz41乃至43並びにDz45乃至47は、それぞれ径方向内側を向いており、軸線A1に関して点対称関係が成立している。別言すれば、当該斜研磨方向は、端面251a乃至253a並びに255a乃至257aの長軸の近位端E2が、それぞれ、外周Ciz41乃至43並びにCiz45乃至47の中点に位置するように設定されている。
【0134】
以上説明したように、本実施形態に記載した方法で第2レンズを少なくともz軸方向に移動させる場合、各周辺SMFを正面視したときに、「各周辺SMFの端面の中心を通り、径方向と直交する線分である第1直交線に対して径方向内側の部分の外周に対応する角度範囲に斜研磨回転角度Ψが含まれる」ように斜研磨方向を設定することにより、FIFOデバイスの結合部をz軸方向に小型化できる。また、斜研磨方向が径方向内側を向くように設定することにより、当該結合部をz軸方向に最も小型化できる。
【0135】
(第3実施形態)
次いで、
図34A乃至
図35を参照して、第3実施形態に係るFIFOデバイスについて説明する。第3実施形態では、変形例と同様に、FIFOデバイスがMCF20の代わりにMCF20pを備える(
図31A及び
図31B参照)。この場合、上述したように、MCF20pを所定の距離だけ-y軸方向に移動することにより、第1レンズ30からの出射光の主光線B1乃至B4の光線角度θ1を揃えている。このようなFIFOデバイスにおいて、MCF20pが第1レンズ30に対して位置ずれする場合がある。これは、例えば、周囲の温度上昇によりデバイスの各構成部材が熱膨張すること、及び/又は、デバイスが外的要因で振動し続けることにより各構成部材の位置関係が経時的に変化すること、等に起因する。MCF20pが第1レンズ30に対して位置ずれすると、上述したように、第1レンズ30から出射される光線の主光線B1乃至B4の光線角度θ1にばらつきが生じ、光学特性に影響を与える。
【0136】
そこで、本願発明者らは、MCF20pの2種類の斜研磨方向(斜研磨回転角度Ψm)について、MCF20pの位置ずれ量Δdと、光線角度θ1のばらつきΔθ1と、の関係を調べることにより、「位置ずれ量Δdの変化に伴うばらつきΔθ1の増大」を抑制できる斜研磨方向を検討した。
図34A及び
図34Bは、検討に用いられるMCF20pの端面20apを示す図である。
図34Aの例では、MCF20pは、Ψm=0°となる斜研磨方向Dm1で斜研磨されている。
図34Bの例では、MCF20pは、Ψm=45°となる斜研磨方向Dm2で斜研磨されている。
【0137】
図35は、MCF20pの位置ずれ量Δdと、光線角度θ1のばらつきΔθ1と、の関係を規定したグラフである。Δdは、MCF20pの中心軸線が軸線A1に一致するようにMCF20pが配置されている状態(
図31A参照)からの斜研磨方向に沿った位置ずれ量として規定される。MCF20pが斜研磨方向と反対方向に位置ずれするとき、Δdは正の値を有する。Δθ1は、各主光線B1乃至B4の光線角度θ1のうち、最小の光線角度θ1minと最大の光線角度θ1maxとの差分として規定される(θ1max-θ1min)。本例では、Δθ1は、主光線B1の光線角度θ1と、主光線B3の光線角度θ1との差分である。
【0138】
図35に示すように、斜研磨方向が方向Dm1のときのほうが、方向Dm2のときと比較して、「位置ずれ量Δdの変化に伴うばらつきΔθ1の増大」を抑制できている。例えば、Δd=0.07mmの場合、斜研磨方向が方向Dm1のときのほうが、方向Dm2のときと比べて、Δθ1を約45%低減できている。これは、斜研磨方向とMCF20pのコア配置との関係によるものだと考えられる。以下、具体的に説明する。まず、端面20aを正面視したときに、端面20aの中心を通り、斜研磨方向に沿って延びる直線を「基準軸」と規定し、MCF20pの中心軸線及び基準軸と直交する直交軸に沿って、基準軸に対して紙面左側に向かう方向を「第1直交方向」と規定し、右側に向かう方向を「第2直交方向」と規定する。
【0139】
この規定によれば、
図34Aの例の場合、基準軸から第1直交方向(即ち、-x軸方向)に最も離間しているコアはコアC2及びC3となり、基準軸から第2直交方向(即ち、+x軸方向)に最も離間しているコアはコアC1及びC4となる。基準軸からコアC2又はC3までの距離と、基準軸からコアC1又はC4までの距離と、の和(離間距離)は、50μmである。一方、
図34Bの例の場合、基準軸から第1直交方向に最も離間しているコアはコアC3となり、基準軸から第2直交方向に最も離間しているコアはコアC1となる。基準軸からコアC3までの距離と、基準軸からコアC1までの距離と、の和(離間距離)は、71μmである。つまり、斜研磨方向が方向Dm1のときのほうが、方向Dm2のときと比較して、離間距離が短い。
【0140】
本願発明者らは、様々なコア配置を有するMCFについて上記の検討を行った。その結果、MCF20pの斜研磨方向を、離間距離が最小となるように設定することにより、「位置ずれ量Δdの変化に伴うばらつきΔθ1の増大」を最大限に抑制できるという知見を得た。このため、本実施形態のFIFOデバイスにおいて、斜研磨方向を、離間距離が最小となる方向に設定することにより、反射戻り光を更に低減しつつ、熱膨張及び/又は振動に対して高いロバスト性を有するFIFOデバイスを実現できる。
【0141】
(第4実施形態)
続いて、
図36乃至
図38を参照して、第4実施形態に係るFIFOデバイスについて説明する。第4実施形態では、第2レンズのレイアウトが第1実施形態と相違している。本実施形態では、FIFOデバイス10のレンズ41乃至44(MCF20に対応するレンズ)を例に挙げて説明する。
【0142】
図36は、本実施形態によるレンズ41乃至44のレイアウトであり、第2レンズ群40が径方向に最も小型化された状態を示す。
図37は、第1実施形態によるレンズ41乃至44のレイアウトであり、第2レンズ群が径方向に最も小型化された状態を示す。
図36及び
図37に示すように、レンズ41乃至44は、それぞれ収容部材71乃至74に収容されている。収容部材71乃至74は、互いに同一の大きさを有する円筒部材であり、内部にレンズ41乃至44をそれぞれ保持している。
【0143】
図37に示すように、第1実施形態では、レンズ41乃至44の主点Cs1乃至Cs4は、同一平面上に位置している。また、4つのレンズ41乃至44は、それらの収容部材71乃至74が、x軸方向及びy軸方向に互いに当接するように配置されている。レンズ41乃至44を軸線A1に沿って見ると、主点Cs1乃至Cs4は、軸線A1を中心とする正方形の頂点に位置している。当該正方形の2本の対角線r3及びr4は、軸線A1上の同じ位置で軸線A1と直交している。
【0144】
これに対し、本実施形態では、
図36に示すように、レンズ41及び43(軸線A1を挟む位置関係のレンズ)の主点Cs1及びCs3は、軸線A1に直交する或る同一平面上に位置しており、レンズ42及び44(軸線A1を挟む位置関係のレンズ)の主点Cs2及びCs4は、軸線A1に直交する別の或る同一平面上に位置している。レンズ41及び43の収容部材71及び73は互いに当接しており、レンズ42及び44の収容部材72及び74は互いに当接している。また、一対のレンズ41及び43の収容部材71及び73と、一対のレンズ42及び44の収容部材72及び74は、z軸方向においても互いに当接している(図示省略)。レンズ41乃至44を軸線A1に沿って見ると、主点Cs1乃至Cs4は、軸線A1を中心とする正方形の頂点に位置している。当該正方形の2本の対角線r1及びr2は、軸線A1上の異なる位置で軸線A1と直交している。対角線r1及びr2の長さは、
図37の対角線r3及びr4の長さよりも短い。
【0145】
図36の第2レンズ群40は、
図37の第2レンズ群40と比較して、径方向により小型化されている。これは、一対のレンズ41及び43と一対のレンズ42及び44とを軸線方向にずらして配置することにより、正方形の対角線上に位置する2つのレンズ(レンズ41及び43、又は、レンズ42及び44)の収容部材を互いに当接させているからである。なお、この場合、FIFOデバイスの結合部をz軸方向にも小型化できる。即ち、各レンズ41乃至44に入射する光線の入射角度は一定であるため、レンズ間の距離が短い(r1,r2<r3,r4)ほうが、レンズ41乃至44へ向かう光線が、光線の出射位置から入射位置までz軸方向に進行する距離を短くできるからである。
【0146】
この構成によれば、FIFOデバイスの結合部を更に小型化することが可能となる。なお、各レンズ41乃至44に対応するSMFの斜研磨方向は、径方向条件又はz軸方向条件のどちらを満たしていてもよいが、z軸方向条件を満たすSMFを用いることにより、当該結合部を、径方向及びz軸方向の両方向に大幅に小型化することが可能となる。
【0147】
なお、
図38に示すように、4つのレンズ41乃至44のうちの3つのレンズ41、42及び44の主点Cs1、Cs2及びCs4が同一平面上に位置しており、残り1つのレンズ43の主点Cs3が当該平面上に位置していない構成であってもよい。このとき、レンズ43の主点Cs3は、「全てのレンズ41乃至44の主点Cs1乃至Cs4が同一平面上に位置していると仮定した場合」におけるレンズ43の主点Cs3(図示省略)と比較して、軸線A1に近接していることが望ましい。この構成によっても、レンズ43が軸線A1に接近した距離だけ、FIFOデバイスの結合部を小型化することが可能となる。また、レンズの焦点距離は必ずしも同一でなくてもよい。
【0148】
上記では、MCF20に対応するレンズを例に挙げて説明したが、この構成は、別のMCFに対応するレンズに適用されてもよい。
【0149】
以上、実施形態及び変形例に係るFIFOデバイスについて説明したが、本発明は上記実施形態及び変形例に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限り、種々の変更が可能である。
【0150】
例えば、シングルモード光ファイバ群の代わりに、マルチモードに対応したシングルコア光ファイバを複数備えるシングルコア光ファイバ群が用いられてもよい。但し、本発明に係るFIFOデバイスは単一のモードの光線を伝搬することを前提としているため、マルチモード・シングルコア光ファイバが用いられる場合であっても、当該光ファイバが伝搬する光線はマルチモードのうちの任意の1つのモードである。
【0151】
また、MCFのコア配置は対称性を有していなくてもよい。コア配置が非対称であっても、第1レンズ30から出射される各コアからの光線に対応した位置に第2レンズ群40、140又は240を配置することにより、第1レンズ30及び第2レンズ群40、140又は240はFIFOデバイスとして適切に機能し得る。
【0152】
更に、SMF及びMCFは、円柱状に限られず、軸線と直交する断面が任意の形状(例えば、楕円又は多角形)を有する柱状であってもよい。
【0153】
更に、MCFの全てのコアが光線の伝搬に使用されなくてもよい。例えば、MCF20のコアC1乃至C3のみが光線の伝搬に使用され、コアC4は光線の伝搬に使用されなくてもよい。この場合、第2レンズ群40及びSMF群50は、コアC1乃至C3に対応する3つの第2レンズ41乃至43及び3つのSMF51乃至53を備えるように構成され得る。即ち、第2レンズ群及びSMF群は、MCFのコアのうち光線の伝搬に使用されるコアの数と同数の第2レンズ及びSMFを備えていればよく、常にMCFのコア数と同数の第2レンズ及びSMFを備える必要はない。
【0154】
更に、SMF群の各SMFの中心軸線は、第2レンズ群の対応する各レンズの光軸と平行でなくてもよい。FIFOデバイス10を例に挙げて説明する。上述したように、SMF51乃至54の端面51a乃至54aの研磨角度が8°であり、光線の波長が1.55μmである場合、主光線B1乃至B4は、端面51a乃至54aに対して78.2°の角度(以下、「入射角度θ2」とも称する。)で入射することが望ましい。上記の実施形態では、各SMFの中心軸線が対応する各レンズの光軸と平行であったため、θ2=78.2°を実現する光線角度θ1は3.8°であり、θ1=3.8°を実現する円43a(
図10、
図11A及び
図11B参照)の半径は0.16mmであった。しかしながら、入射角度θ2=78.2°が担保される構成であれば、各SMFの中心軸線は、対応する各レンズの光軸と平行でなくてもよい。
【0155】
例えば、円43aを拡径してレンズ43を0.30mm移動させる場合、光線角度θ1は3.8°より大きくなると考えられる。この場合、入射角度θ2=78.2°を担保するためにはSMF53を所定の方向(後述)に傾斜させる必要があり、その結果、SMF53の中心軸線はレンズ43の光軸とは平行ではなくなる。このように、「各SMFの中心軸線を、対応する各レンズの光軸と平行にする」という拘束条件を解除すると、各レンズの径方向又はz軸方向の移動量を自由に制御でき、FIFOデバイスの結合部のサイズを小型化する際の自由度が向上する。なお、上記「所定の方向」とは、各SMFの中心軸線が「各SMFの斜研磨基準軸と、対応する各主光線と、を含む平面」上に存在するような方向である。即ち、θ2=78.2°が担保されれば各SMFをどの方向に傾斜させてもよい訳ではない。
【0156】
更に、上記実施形態及び変形例のFIFOデバイス10、110及び210は、MCF20、120及び220から第1レンズ30及び第2レンズ群40、140及び240を経由してSMF群50、150及び250に向かう方向に光線を伝搬したが、この構成に限られず、SMF群50、150及び250から第2レンズ群40、140及び240及び第1レンズ30を経由してMCF20、120及び220に向かう方向に光線を伝搬してもよい。この場合、MCFの第1コアの数は、SMF群が備えるSMFの数以上であればよい。また、第2レンズ群が有する第2レンズの数は、SMFの数と同数であればよい。
【符号の説明】
【0157】
10:FIFOデバイス、20:マルチコア光ファイバ、20a:端面、30:第1レンズ、40:第2レンズ群、41,42,43,44:第2レンズ、50:シングルモード光ファイバ群、51,52,53,54:シングルモード光ファイバ