(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】塵芥除去機能付ポンプゲート
(51)【国際特許分類】
F04D 15/00 20060101AFI20241120BHJP
F04D 13/08 20060101ALI20241120BHJP
F04D 29/70 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
F04D15/00 L
F04D13/08 Z
F04D15/00 B
F04D29/70 G
(21)【出願番号】P 2021065927
(22)【出願日】2021-04-08
【審査請求日】2024-01-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000168193
【氏名又は名称】株式会社ミゾタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001759
【氏名又は名称】弁理士法人よつ葉国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100093687
【氏名又は名称】富崎 元成
(74)【代理人】
【識別番号】100168468
【氏名又は名称】富崎 曜
(72)【発明者】
【氏名】穴井 正一
(72)【発明者】
【氏名】有松 勲
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-065274(JP,A)
【文献】特開平09-324799(JP,A)
【文献】特開2009-002162(JP,A)
【文献】特開2007-308976(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 15/00
F04D 13/08
F04D 29/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方に吸込口と他方に吐出口を有したケーシングと、
前記ケーシング内に固定され回転駆動するための電動機と、
前記電動機の出力軸に連結され回転駆動される羽根車と、
前記吐出口の先端面に揺動自在に配置され、前記吐出口からの水の吐出時にのみ前記吐出口を開放するフラップ弁と
からなる水中ポンプを同一ゲートに複数搭載したポンプゲートにおいて、
前記複数の水中ポンプの前記吐出口の内周面を互いに連通するように配管されたポンプ間連通管と、
前記ポンプ間連通管に設置され、前記ポンプ間連通管を連通又は非連通とするためのポンプ間電動仕切弁と、
前記電動機の入力電流、負荷トルク、騒音、及び振動から選択され一つの検出値を検出するための検出装置と、
一方の前記水中ポンプの前記検出値が予め設定された閾値を越えたとき、前記一方の前記水中ポンプの前記電動機の運転を停止させた後、前記ポンプ間電動仕切弁(4)を開け、前記一方の水中ポンプの前記電動機を逆回転させ、他方の前記水中ポンプの前記電動機を正回転させる制御を行う水中ポンプ制御装置と
からなることを特徴とする塵芥除去機能付きポンプゲート。
【請求項2】
請求項1に記載の塵芥除去機能付きポンプゲートにおいて、
前記水中ポンプを搭載したゲートの外水側と前記吐出口の内周面とを連通する外水連通管と、
前記外水連通管に設置され、前記外水連通管を連通又は非連通とするための外水用電動仕切弁と
からなることを特徴とする塵芥除去機能付きポンプゲート。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の塵芥除去機能付きポンプゲートにおいて、
前記検出装置は、前記電動機への入力電流を検知するための電流計測装置である
ことを特徴とする塵芥除去機能付きポンプゲート。
【請求項4】
請求項1
又は2に記載の塵芥除去機能付きポンプゲートにおいて、
前記水中ポンプは、前記一方の前記水中ポンプと、前記他方の前記水中ポンプの2台からなる
ことを特徴とする塵芥除去機能付きポンプゲート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲートに水中ポンプを搭載したポンプゲートにおいて、塵芥除去機能付ポンプゲートに関する。更に詳しくは、ゲートに搭載した水中ポンプの羽根車等に塵芥が絡まったとき、自動的に塵芥を取り除くことができる、塵芥除去機能付ポンプゲートに関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人が開発し提案したゲートポンプ(登録商標)は、一般的にはポンプゲートと呼ばれているが、通常は排水のために水門のゲートに水中ポンプを搭載したものである。このポンプゲートは、塵芥等が水中ポンプの羽根車等に絡まないように、上流側にスクリーン、除塵機等の塵芥を取り除くための除塵設備が設置されている。しかし、この除塵設備をすり抜けた塵芥が水中ポンプの羽根車等に絡み、水中ポンプの運転が停止して、塵芥を手動で除去しなければならないことがある。この塵芥の除去のために、ゲートを引き揚げて水中ポンプを水面上から出して、羽根車等に絡んだ紐状等の塵芥を人力で除去している。
【0003】
他方、水中ポンプにおいて、可撓性のビニール等の紐状の異物が、羽根車、インペラ等に絡んだとき、これを駆動する電動機の負荷が閾値を越すと、この電動機を逆回転させて、羽根車、インペラ等から紐状の異物を取り外すものが提案されている(特許文献1)。更に、排水用のポンプゲートではないが、並列に複数台設置された汚水用ポンプにおいて、各ポンプの吐出側に開閉弁を介して互いに接続し、一方のポンプに異物が絡んだとき、このポンプを休止して、他方のポンプを起動して、この起動しているポンプから休止しているポンプに吐出流を逆流させて、休止させたポンプの異物を除去するものも提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-336593号公報
【文献】特開昭57-46086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポンプゲートの水中ポンプに絡んだ塵芥を手動で除去する方法は、ゲートを引き揚げる必要があり、このとき、例えば、紐状の異物等が複雑に絡んでいる場合、人力では容易に除去できず、この作業に長時間を要する。この作業時間は内水側からの排水を停止することになり、場合によってはゲートの内水側が浸水する恐れもある。また、水中ポンプの羽根車等に紐状の異物等が絡んだとき、特許文献1に記載された水中ポンプを逆転させる方法は、ポンプゲートの水中ポンプには適用できない。即ち、通常のポンプゲートの水中ポンプは、その吐出口に一方弁であるフラップ弁を備えている。この状態で水中ポンプの逆回転を行うと、フラップ弁は閉じた状態となり、水は流れず閉塞運転となる。この閉塞運転の負荷は、電動機の定格電流をオーバーし、水中ポンプに損傷を生じる恐れがあり、ポンプゲートの水中ポンプでは水中ポンプの逆回転による塵芥の除去は避けなればならない。
【0006】
特許文献2に記載された並列に複数台設置された汚水用ポンプにおける塵芥の除去方法は、各水中ポンプが独立して運転されるポンプゲートの水中ポンプでは、水中ポンプの吐出側及び流入側に開閉弁等を設置することはできないので、この汚水用ポンプにおける塵芥の除去方法は適用できない。
本発明は、以上のような背景により以下の目的を達成するものである。
本発明の目的は、ポンプゲートの水中ポンプに絡んだ塵芥を自動的に除去することができる、塵芥除去機能付ポンプゲートを提供することにある。
本発明の他の目的は、ポンプゲートの水中ポンプの異常、故障等を事前に防ぐことができる、塵芥除去機能付ポンプゲートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するために、次の手段を採る。
即ち、本発明1の塵芥除去機能付きポンプゲートは、
一方に吸込口と他方に吐出口を有したケーシングと、
前記ケーシング内に固定され回転駆動するための電動機と、
前記電動機の出力軸に連結され回転駆動される羽根車と、
前記吐出口の先端面に揺動自在に配置され、前記吐出口からの水の吐出時にのみ前記吐出口を開放するフラップ弁と
からなる水中ポンプを同一ゲートに複数搭載したポンプゲートにおいて、
前記複数の水中ポンプの前記吐出口の内周面を互いに連通するように配管されたポンプ間連通管と、
前記ポンプ間連通管に設置され、前記ポンプ間連通管を連通又は非連通とするためのポンプ間電動仕切弁と、
前記電動機の入力電流、負荷トルク、騒音、及び振動から選択され一つの検出値を検出するための検出装置と、
一方の前記水中ポンプの前記検出値が予め設定された閾値を越えたとき、前記一方の前記水中ポンプの前記電動機の運転を停止させた後、前記ポンプ間電動仕切弁(4)を開け、前記一方の水中ポンプの前記電動機を逆回転させ、他方の前記水中ポンプの前記電動機を正回転させる制御を行う水中ポンプ制御装置とからなることを特徴とする。
【0008】
本発明2の塵芥除去機能付きポンプゲートは、本発明1において、前記水中ポンプを搭載したゲートの外水側と前記吐出口の内周面とを連通する外水連通管と、前記外水連通管に設置され、前記外水連通管を連通又は非連通とするための外水用電動仕切弁とからなることを特徴とする。
【0009】
本発明3の塵芥除去機能付きポンプゲートは、本発明1又は2において、前記検出装置は、前記電動機への入力電流を検知するための電流計測装置であることを特徴とする。
【0010】
本発明4の塵芥除去機能付きポンプゲートは、本発明1又は2において、前記水中ポンプは、前記一方の前記水中ポンプと、前記他方の前記水中ポンプの2台からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の塵芥除去機能付ポンプゲートは、水中ポンプの逆回転と水中ポンプへの注水を行うため、羽根車等に絡まった塵埃の除去能力が向上する。また、早めに過負荷検出を行うため、塵埃の除去が容易で、短時間に復旧運転が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施の形態の塵芥除去機能付ポンプゲートを示し、
図1(a)はポンプゲートの正面図、
図1(b)は
図1(a)のA-A断面図である。
【
図2】
図2は、
図1の塵芥除去機能付ポンプゲートの水中ポンプを示し、
図2(a)は
図2(b)のB-B断面図、
図2(b)は
図2(a)のC-C断面図である。
【
図3】
図3は、
図1の塵芥除去機能付ポンプゲートの水中ポンプの運転方法を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、
図1の塵芥除去機能付ポンプゲートの水中ポンプの運転動作を示す動作説明図である。
【
図5】
図5は、本発明の第2の実施の形態の塵芥除去機能付ポンプゲートの水中ポンプを示し、
図5(a)は
図5(b)のP矢視図、
図5(b)は
図5(a)のD-D断面図である。
【
図6】
図6は、
図5の塵芥除去機能付ポンプゲートの水中ポンプの運転動作を示す動作説明図である。
【
図7】
図7は、本発明の第3の実施の形態の塵芥除去機能付ポンプゲートの水中ポンプを示し、
図7(a)は
図7(b)のQ矢視図、
図7(b)は
図7(a)のE-E断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔塵芥除去機能付ポンプゲートの第1の実施の形態〕
図1は、本発明の第1の実施の形態の塵芥除去機能付ポンプゲート1を示し、
図1(a)はポンプゲートの正面図であり、水の流れ方向に対して垂直に切った断面を示し、
図1(b)は
図1(a)のA-A断面図であり、水の流れ方向に沿って切った断面を示す。
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態の塵芥除去機能付ポンプゲート1は、ゲート11と、水中ポンプ12(第1の水中ポンプ)、水中ポンプ13(第2の水中ポンプ)とを備えている。ゲート11は、水路14を上下方向に移動して水路14を開閉可能に設置されている。すなわち、ゲート11が上下に移動することで、水路14が開閉される。ゲート11を上に移動させることで水路14が開放され、ゲート11を下に移動させることで水路14が閉止される。
【0014】
ゲート11を貫通するように第1の水中ポンプ12、第2の水中ポンプ13が設けられている。第1の水中ポンプ12、第2の水中ポンプ13は、それぞれ、ゲート11の一方の側(
図1(b)の左側の内水側)から、他方の側(
図1(b)の右側の外水側)へ水を排出する。第1の水中ポンプ12、第2の水中ポンプ13は横軸水中ポンプである。第1の水中ポンプ12、第2の水中ポンプ13は、ゲート11の同一の高さ位置に設けられている。高さ位置とは、ポンプゲートの水路14の底面141からの高さ(水位)である。水路14の上流側には塵埃を除去するスクリーン15が設置されているが、このスクリーン15をすり抜けた塵埃(特に紐状の塵埃)が第1の水中ポンプ12、第2の水中ポンプ13に絡まり、第1の水中ポンプ12、第2の水中ポンプ13を停止させる場合がある。
【0015】
図2は
図1の塵芥除去機能付ポンプゲート1の第1の水中ポンプ12、第2の水中ポンプ13を示し、
図2(a)は
図2(b)のB-B断面図、
図2(b)は
図2(a)のC-C断面図である。第1の水中ポンプ12、第2の水中ポンプ13は、一方(
図2(a)の左側)に吸込口21、他方(
図2(a)の右側)に吐出口22を有した筒状のケーシング2を有している。ケーシング2の軸心には電動機23が固定され、電動機23の出力軸に連結された羽根車24が回転駆動され、吸込口21から吸い込んだ水を吐出口22から吐出する。吐出口22の先端面には、揺動自在に一種の逆止弁であるフラップ弁25が配置され、吐出口22からの水の吐出時にのみ吐出口22を開放する。第1の水中ポンプ12、第2の水中ポンプ13のケーシング2、2には、第1の水中ポンプ12、第2の水中ポンプ13の吐出口22、22の内周面22A、22Aを互いに連通するように筒状のポンプ間連通管3が配管されている。ポンプ間連通管3には、ポンプ間連通管3を連通又は非連通とするためのポンプ間電動仕切弁4が設置されている。
図1に示すように、ポンプ間電動仕切弁4は水中ポンプ制御装置16に接続されている。また、第1の水中ポンプ12、第2の水中ポンプ13の電動機23、23の入力電流を検出するための電流計測装置(検出装置)17が水中ポンプ制御装置16に接続されている。電流計測装置17の検出値に応じて、ポンプ間電動仕切弁4の開閉、第1の水中ポンプ12、第2の水中ポンプ13各々の起動、停止、正回転、逆回転を制御している。
【0016】
図3は、本発明の第1の実施の形態の塵芥除去機能付ポンプゲート1の第1の水中ポンプ12、第2の水中ポンプ13の運転方法を示すフローチャート、
図4は、本発明の第1の実施の形態の塵芥除去機能付ポンプゲート1の第1の水中ポンプ12、第2の水中ポンプ13の運転動作を示す動作説明図である。
図3に示すように、スタート時は、ゲート11は全閉状態で、ステップS102で第1の水中ポンプ12は正回転で運転する。ステップS103で第1の水中ポンプ12に塵埃が絡まり、電流計測装置17で第1の水中ポンプ12の入力電流が定格電流の105%(又は、設定電流値)を超えたことが検出されると、ステップS104で水中ポンプ制御装置16が第1の水中ポンプ12を停止させる。第1の水中ポンプ12の水の流れが止まるため、
図4(a)に示すように、第1の水中ポンプ12のフラップ弁25が閉じる。
【0017】
ステップS111で水中ポンプ制御装置16がポンプ間電動仕切弁4に開指令を出す。ステップS112でポンプ間電動仕切弁4が全開すると、ステップS113で第1の水中ポンプ12に逆回転指令を出し、ステップS114で第1の水中ポンプ12を逆回転で運転する。第1の水中ポンプ12のフラップ弁25は閉じているが、ポンプ間連通管3、ポンプ間電動仕切弁4により第1の水中ポンプ12の閉塞運転が避けられるので、第1の水中ポンプ12の損傷を回避できる。
【0018】
その後、ステップS115でタイマーT1で数秒程度カウントした後、ステップS116で第1の水中ポンプ12を停止する。すなわち、第1の水中ポンプ12の逆回転を数秒程度行った後、第1の水中ポンプ12を停止する。ステップS118でタイマーT2で10秒程度カウントした後、ステップS119でポンプ間電動仕切弁4に閉指令を出す。ステップS120でポンプ間電動仕切弁4が全閉すると、ステップS121で第1の水中ポンプ12に正回転指令を出し、ステップS122で第1の水中ポンプ12を正回転する。
図4(c)に示すように、第1の水中ポンプ12の吸込口21から吐出口22に向かって水が流れフラップ弁25が開く。ステップS123で電流計測装置17で第1の水中ポンプ12の入力電流が定格電流の105%未満(又は、設定電流値)であることが検出されると、第1の水中ポンプ12の塵埃が除去されたと判断し、第1の水中ポンプ12の正回転の運転を継続して、一連の塵埃除去動作が完了する。
【0019】
しかし、ステップS123で第1の水中ポンプ12の入力電流が定格電流の105%(又は、設定電流値)を超えたことが検出されると、第1の水中ポンプ12の塵埃が除去されていないと判断し、ステップS124で第1の水中ポンプ12の正回転の運転を停止する。その後、前記したステップS111からステップS123の二回目の塵埃除去動作(ポンプ間電動仕切弁4が全開、第1の水中ポンプ12が逆回転、第1の水中ポンプ12が停止、ポンプ間電動仕切弁4が全閉、第1の水中ポンプ12が正回転)を繰り返す。ステップS123で第1の水中ポンプ12の入力電流が定格電流の105%未満(又は、設定電流値)であることが検出されると、第1の水中ポンプ12の塵埃が除去されたと判断し、第1の水中ポンプ12の正回転の運転を継続して、一連の塵埃除去動作が完了する。
【0020】
しかし、ステップS123で第1の水中ポンプ12の入力電流が定格電流の105%(又は、設定電流値)を超えたことが検出されると、二回の塵埃除去動作を行っても第1の水中ポンプ12の塵埃が除去されていないと判断し、ステップS124で第1の水中ポンプ12の正回転の運転を停止する。その後、ステップS109、ステップS117で、塵埃の除去が不可能と判断し,重故障表示が水中ポンプ制御装置16に表示される。この重故障表示が出ると、塵芥除去機能付ポンプゲート1の運転管理者は、ゲート11を上に移動し、人力によって第1の水中ポンプ12に絡まった塵埃を除去する。水中ポンプの電動機は、一般的に、電動機の定格電流の120%~130%において、数秒~数十秒以内で確実に過電流を検出するように設計されている。しかし、本発明の実施の形態では、塵埃除去動作を行わせる過電流を電動機定格電流の105%に設定している。従って、早めに過負荷検出を行うため、塵埃の絡まりが強固になって、塵埃の除去が困難になる前に水中ポンプを逆回転させて塵埃の除去動作を行うことが可能となり、塵埃の除去が容易で、短時間に行うことが可能となる。上記した運転方法では、第1の水中ポンプ12に塵埃が絡まった場合について説明したが、第2の水中ポンプ13に塵埃が絡まった場合も第2の水中ポンプ13の塵埃除去動作が上記運転方法と同様に行われる。
【0021】
〔塵芥除去機能付ポンプゲートの第2の実施の形態〕
図5は本発明の第2の実施の形態の塵芥除去機能付ポンプゲート100の水中ポンプを示し、
図5(a)は
図5(b)のP矢視図、
図5(b)は
図5(a)のD-D断面図である。
図6は
図5の塵芥除去機能付ポンプゲート100の水中ポンプの運転動作を示す動作説明図である。第2の実施の形態の塵芥除去機能付ポンプゲート100は、第1の実施の形態の塵芥除去機能付ポンプゲート1のポンプ間連通管3に代えて、第1の水中ポンプ12、第2の水中ポンプ13各々に外水連通管5、5を配管したものである。
図5に示すように、第2の実施の形態の塵芥除去機能付ポンプゲート100の第1の水中ポンプ12、及び第2の水中ポンプ13は、第1の実施の形態の塵芥除去機能付ポンプゲート1の水中ポンプと基本構造は全く同一であり、一方(
図5(a)の左側)に吸込口21、他方(
図5(a)の右側)に吐出口22を有した筒状のケーシング2を有している。ケーシング2の軸心には電動機23が固定され、電動機23の出力軸に連結された羽根車24が回転駆動され、吸込口21から吸い込んだ水を吐出口22から吐出する。吐出口22の先端面には揺動自在にフラップ弁25が配置され、吐出口22からの水の吐出時にのみ吐出口22を開放する。
【0022】
第1の水中ポンプ12、及び第2の水中ポンプ13のケーシング2、2には、外水連通管5、5が各々配管されている。外水連通管5,5は、第1の水中ポンプ12、第2の水中ポンプ13の吐出口22、22の内周面22A、22Aと外水(吐出口22側)142を連通している。外水連通管5、5の外水142側の先端は90度上方向に曲げられて、先端開口部51は上方向に向いている。外水連通管5、5には、外水連通管5、5を内周面22A、22Aと連通又は非連通とするための外水用電動仕切弁6、6が設置されている。第1の実施の形態の塵芥除去機能付ポンプゲート1と同様に、外水用電動仕切弁6、6は、水中ポンプ制御装置(
図1参照)16に接続されている。また、第1の水中ポンプ12、第2の水中ポンプ13の電動機23、23の入力電流を検出するための電流計測装置(
図1参照)17が、水中ポンプ制御装置16にそれぞれ接続されている。電流計測装置17の検出値に応じて、外水用電動仕切弁6、6の開閉、第1の水中ポンプ12、第2の水中ポンプ13各々の起動、停止、正回転、逆回転を制御している。
【0023】
第2の実施の形態の塵芥除去機能付ポンプゲート100は、外水側水位が内水側水位より高い場合には、第1の水中ポンプ12、第2の水中ポンプ13による強制排水運転が行われる。また、外水側水位が内水側水位より低い場合には、ゲート11を上に移動させて自然流下による排水を行う。すなわち、第1の水中ポンプ12、第2の水中ポンプ13による強制排水運転中に塵埃が水中ポンプに絡まる状況は、外水側水位が内水側水位より高い場合である。従って、塵埃が水中ポンプに絡まった時に外水用電動仕切弁6、6を開くと、内外水位差によって外水連通管5、5を通して、第1の水中ポンプ12、第2の水中ポンプ13の内周面22A、22Aに注水が行われる。そのため、フラップ弁25、25が閉じていても、吸込口21、21側に向かって水を流すことが可能になる。
【0024】
第2の実施の形態の塵芥除去機能付ポンプゲート100の運転方法を示すフローチャートは、第1の実施の形態の塵芥除去機能付ポンプゲート1のフローチャートとほぼ同一なので省略し、運転動作の要部のみ説明する。すなわち、
図5に示すように、スタート時は、ゲート11は全閉状態で、第1の水中ポンプ12、第2の水中ポンプ13は正回転で運転している。第2の水中ポンプ13は停止していてもよい。第1の水中ポンプ12に塵埃が絡まり、電流計測装置17で第1の水中ポンプ12の入力電流が、定格電流の105%(又は、設定電流値)を超えたことが検出されると、水中ポンプ制御装置16が第1の水中ポンプ12を停止する。第1の水中ポンプ12の水の流れが止まるため、
図6(a)に示すように、第1の水中ポンプ12のフラップ弁25が閉じる。
【0025】
水中ポンプ制御装置16が第1の水中ポンプ12の外水用電動仕切弁6に開指令を出す。外水用電動仕切弁6が全開すると、第1の水中ポンプ12に逆回転指令を出し、第1の水中ポンプ12を逆回転で運転する。
図6(b)に示すように、第1の水中ポンプ12の外水連通管5、第1の水中ポンプ12の外水用電動仕切弁6を通して第1の水中ポンプ12に外水側より水が供給される。従って、
図6(b)に示すように、第1の水中ポンプ12の逆回転で吸込口21側に向かって大きな水流が発生するため、第1の水中ポンプ12の羽根車等に絡まった塵埃の除去能力が向上する。また、第1の水中ポンプ12のフラップ弁25は閉じているが、第1の水中ポンプ12の閉塞運転が避けられるので、第1の水中ポンプ12に損傷を生じる恐れがない。
【0026】
その後、タイマーで数秒程度カウントした後、第1の水中ポンプ12を停止する。その後、タイマーで10秒程度カウントした後、第1の水中ポンプ12の外水用電動仕切弁6に閉指令を出す。第1の水中ポンプ12の外水用電動仕切弁6が全閉すると、第1の水中ポンプ12を正回転する。第1の水中ポンプ12の吸込口21から吐出口22に向かって水が流れフラップ弁25が開く。電流計測装置17で第1の水中ポンプ12の入力電流が定格電流の105%未満であることが検出されると、第1の水中ポンプ12の塵埃が除去されたと判断し、一連の塵埃除去動作が完了し、第1の水中ポンプ12の正回転の運転を継続する。
【0027】
しかし、電流計測装置17で第1の水中ポンプ12の入力電流が定格電流の105%(又は、設定電流値)を超えたことが検出されると、第1の水中ポンプ12の塵埃が除去されていないと判断し、第1の水中ポンプ12の正回転の運転を停止する。その後、二回目の塵埃除去動作(外水用電動仕切弁6が全開、第1の水中ポンプ12が逆回転、外水用電動仕切弁6が全閉、第1の水中ポンプ12が正回転)を繰り返す。電流計測装置17で第1の水中ポンプ12の入力電流が定格電流の105%(又は、設定電流値)未満であることが検出されると、第1の水中ポンプ12の塵埃が除去されたと判断し、第1の水中ポンプ12の正回転の運転を継続し、一連の塵埃除去動作が完了する。
【0028】
しかし、二回目の塵埃除去動作が終わっても、第1の水中ポンプ12の入力電流が定格電流の105%(又は、設定電流値)を超えたことが検出されると、二回の塵埃除去動作を行っても第1の水中ポンプ12の塵埃が除去されていないと判断し、第1の水中ポンプ12の正回転の運転を停止する。その後、水中ポンプ制御装置16が塵埃の除去が不可能と判断し、重故障表示が水中ポンプ制御装置16に表示される。この重故障表示が出ると、塵芥除去機能付ポンプゲート100の運転管理者は、ゲート11を上に移動し、人力によって第1の水中ポンプ12に絡まった塵埃を除去する。上記した運転方法では、第1の水中ポンプ12に塵埃が絡まった場合について説明したが、第2の水中ポンプ13に塵埃が絡まった場合も第2の水中ポンプ13の塵埃除去動作が上記運転方法と同様に行われる。
【0029】
〔塵芥除去機能付ポンプゲートの第3の実施の形態〕
図7は本発明の第3の実施の形態の塵芥除去機能付ポンプゲート200の水中ポンプを示し、
図7(a)は
図7(b)のQ矢視図、
図7(b)は
図7(a)のE-E断面図である。第3の実施の形態の塵芥除去機能付ポンプゲート200は、第1の実施の形態のポンプ間連通管3、ポンプ間電動仕切弁4と、第2の実施の形態の外水連通管5、5、外水用電動仕切弁6、6の両方を配管したものである。第3の実施の形態の塵芥除去機能付ポンプゲート200では、ポンプ間電動仕切弁4、外水用電動仕切弁6、6を併用して使用するため、ポンプ間電動仕切弁4、外水用電動仕切弁6、6のいずれか一方が故障して使用できない場合でも、他方がバックアップするため、塵埃の除去を確実に行うことが可能となる。
第3の実施の形態の塵芥除去機能付ポンプゲート200の運転方法を示すフローチャートは、第1の実施の形態の塵芥除去機能付ポンプゲート1のフローチャートと第2の実施の形態の塵芥除去機能付ポンプゲート100のフローチャートの合成なので省略する。
【0030】
〔塵芥除去機能付ポンプゲートの第4の実施の形態〕
第1の実施の形態の塵芥除去機能付ポンプゲート1もしくは、第3の実施の形態の塵芥除去機能付ポンプゲート200において、塵芥が絡んでいない他方の水中ポンプを運転することで、吐出流の一部を逆流させた水がポンプ間連通管3、ポンプ間電動仕切弁4を通して前記一方の水中ポンプへ注水され、塵埃の除去を確実に行うことが可能となる。
図3に示すように、スタート時は、ゲート11は全閉状態で、ステップS102で第1の水中ポンプ12は正回転で運転する。ステップS103で第1の水中ポンプ12に塵埃が絡まり、電流計測装置17で第1の水中ポンプ12の入力電流が定格電流の105%(又は、設定電流値)を超えたことが検出されると、ステップS104で水中ポンプ制御装置16が第1の水中ポンプ12を停止させる。第1の水中ポンプ12の水の流れが止まるため、
図4(a)に示すように、第1の水中ポンプ12のフラップ弁25が閉じる。
【0031】
ステップS105で第2の水中ポンプ13が運転中か否か判断し、第2の水中ポンプ13が運転中でなければ、ステップS106で第2の水中ポンプ13に運転指令を出し、ステップS107で第2の水中ポンプ13を正回転で運転する。ステップS111で水中ポンプ制御装置16がポンプ間電動仕切弁4に開指令を出す。(ポンプゲート200においては、さらに、第1の水中ポンプ12の外水用電動仕切弁6に開指令を出す。)ステップS112でポンプ間電動仕切弁4が全開すると(ポンプゲート200においては、さらに、第1の水中ポンプ12の外水用電動仕切弁6が全開すると)、ステップS113で第1の水中ポンプ12に逆回転指令を出し、ステップS114で第1の水中ポンプ12を逆回転で運転する。
図4(b)に示すように、正回転中の第2の水中ポンプ13から吐出流の一部を逆流させた水がポンプ間連通管3、ポンプ間電動仕切弁4を通して第1の水中ポンプ12に供給される。従って、
図4(b)に示すように、第1の水中ポンプ12の逆回転で吸込口21側へ向かって大きな水流が発生するため、第1の水中ポンプ12の羽根車等に絡まった塵埃の除去能力が向上する。すなわち、羽根車の逆回転で羽根車に絡んだ塵埃を緩め、大きな水流で塵埃を除去することが可能となる。また、第1の水中ポンプ12のフラップ弁25は閉じているが、ポンプ間連通管3、ポンプ間電動仕切弁4(ポンプゲート200においては、さらに、第1の水中ポンプ12の外水連通管5、第1の水中ポンプ12の外水用電動仕切弁6)により第1の水中ポンプ12の閉塞運転が避けられるので、第1の水中ポンプ12の損傷を回避できる。
【0032】
その後、ステップS115でタイマーT1で数秒程度カウントした後、ステップS116で第1の水中ポンプ12を停止する。すなわち、第1の水中ポンプ12の逆回転を数秒程度行った後、第1の水中ポンプ12を停止する。ステップS118でタイマーT2で10秒程度カウントした後、ステップS119でポンプ間電動仕切弁4に閉指令を出す。(ポンプゲート200においては、さらに、第1の水中ポンプ12の外水用電動仕切弁6に閉指令を出す。)ステップS120でポンプ間電動仕切弁4が全閉すると(ポンプゲート200においては、さらに、第1の水中ポンプ12の外水用電動仕切弁6が全閉すると)、ステップS121で第1の水中ポンプ12に正回転指令を出し、ステップS122で第1の水中ポンプ12を正回転する。
図4(c)に示すように、第1の水中ポンプ12の吸込口21から吐出口22に向かって水が流れフラップ弁25が開く。ステップS123で電流計測装置17で第1の水中ポンプ12の入力電流が定格電流の105%未満(又は、設定電流値)であることが検出されると、第1の水中ポンプ12の塵埃が除去されたと判断し、第1の水中ポンプ12の正回転の運転を継続する。ステップS129でタイマーT3で10秒程度カウントした後、ステップS130で第2の水中ポンプ13の正回転の運転指令とのAND条件で、ステップS127で第2の水中ポンプ13の停止指令を出し、ステップS128で第2の水中ポンプ13を停止して、一連の塵埃除去動作が完了する。
【0033】
しかし、ステップS123で第1の水中ポンプ12の入力電流が定格電流の105%(又は、設定電流値)を超えたことが検出されると、第1の水中ポンプ12の塵埃が除去されていないと判断し、ステップS124で第1の水中ポンプ12の正回転の運転を停止する。その後、前記したステップS111からステップS123の二回目の塵埃除去動作(ポンプ間電動仕切弁4が全開(ポンプゲート200においては、さらに、第1の水中ポンプ12の外水用電動仕切弁6が全開)、第2の水中ポンプ13が正回転、第1の水中ポンプ12が逆回転、第1の水中ポンプ12が停止、ポンプ間電動仕切弁4が全閉(ポンプゲート200においては、さらに、第1の水中ポンプ12の外水用電動仕切弁6が全閉)、第1の水中ポンプ12が正回転)を繰り返す。ステップS123で第1の水中ポンプ12の入力電流が定格電流の105%未満(又は、設定電流値)であることが検出されると、第1の水中ポンプ12の塵埃が除去されたと判断し、第1の水中ポンプ12の正回転の運転を継続し、ステップS128で第2の水中ポンプ13を停止して、一連の塵埃除去動作が完了する。
【0034】
しかし、テップS123で第1の水中ポンプ12の入力電流が定格電流の105%(又は、設定電流値)を超えたことが検出されると、二回の塵埃除去動作を行っても第1の水中ポンプ12の塵埃が除去されていないと判断し、ステップS124で第1の水中ポンプ12の正回転の運転を停止する。その後、ステップS109、ステップS117で、塵埃の除去が不可能と判断し,重故障表示が水中ポンプ制御装置16に表示される。この重故障表示が出ると、塵芥除去機能付ポンプゲート1の運転管理者は、ゲート11を上に移動し、人力によって第1の水中ポンプ12に絡まった塵埃を除去する。上記した運転方法では、第1の水中ポンプ12に塵埃が絡まった場合について説明したが、第2の水中ポンプ13に塵埃が絡まった場合も第2の水中ポンプ13の塵埃除去動作が上記運転方法と同様に行われる。
【0035】
〔その他の実施の形態〕
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はこの実施の形態に限定されることはない。例えば、前述した実施の形態では、水中ポンプが横軸水中ポンプであるが、軸流ポンプ、斜流ポンプ、渦巻斜流ポンプ、縦軸水中ポンプであってもよい。また、水中ポンプの台数は2台の実施例について説明したが、水中ポンプの台数は2台に限定されるものではなく、2台以上であればよい。また、前述した実施例では、2台の水中ポンプは、ゲートの同一の高さ位置に設けられているが、水中ポンプの高さ位置は異なる高さ位置であってもよい。さらに、検出装置は電流計測装置に限定されるものではなく、電動機の入力電流、負荷トルク、騒音、及び振動のうちの少なくとも一つを検出するための少なくとも一つの検出装置を設け、その検出値によって、ポンプ間電動仕切弁4、外水用電動仕切弁6、6の開閉、水中ポンプ12、13各々の起動、停止を制御してもよい。騒音、及び振動は、電動機ではなく、水中ポンプ、ゲート等の機器、又は周辺地域に設置したセンサーで検知した検出値であっても良い。更に、水中ポンプ12、13の起動、停止の制御回数は2回に限定されるものではなく、使用する電動機の特性に合わせて1回もしくは2回以上であってもよい。
【符号の説明】
【0036】
1、100、200…塵芥除去機能付ポンプゲート
11…ゲート
12…水中ポンプ(第1の水中ポンプ)
13…水中ポンプ(第2の水中ポンプ)
14…水路
141…底面
142…外水
15…スクリーン
16…水中ポンプ制御装置
17…電流計測装置(検出装置)
2…ケーシング
21…吸込口
22…吐出口
22A…内周面
23…電動機
24…羽根車
25…フラップ弁
3…ポンプ間連通管
4…ポンプ間電動仕切弁
5…外水連通管
51…先端開口部
6…外水用電動仕切弁