(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】RFIDタグ、パッシブ型RFIDタグセンサー、RFIDタグ用スペーサーおよび補助アンテナ用スペーサー
(51)【国際特許分類】
G06K 19/077 20060101AFI20241120BHJP
G06K 19/07 20060101ALI20241120BHJP
H01Q 1/50 20060101ALI20241120BHJP
H01Q 19/02 20060101ALI20241120BHJP
G08C 17/00 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
G06K19/077 248
G06K19/07 170
G06K19/077 280
H01Q1/50
H01Q19/02
G08C17/00 Z
(21)【出願番号】P 2022147460
(22)【出願日】2022-09-15
【審査請求日】2023-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】720008759
【氏名又は名称】渡辺 明
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 明
【審査官】小林 紀和
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0267769(US,A1)
【文献】特開2020-071807(JP,A)
【文献】特開2022-029374(JP,A)
【文献】特開2002-259934(JP,A)
【文献】特開2020-091291(JP,A)
【文献】特開2015-225543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/077
G06K 19/07
H01Q 1/50
H01Q 19/02
G08C 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の開口を有する導体パターンと、
前記開口の近傍で、前記導体パターンと電気的に接続されたICチップを有するインピーダンス整合部と、
前記インピーダンス整合部から第1端部まで第1方向に延伸する第1アンテナと、
前記インピーダンス整合部から第2端部まで第2方向に延伸する第2アンテナと、
金属表面に対して固定され、前記金属表面に対して角度θ1となる斜面と、前記金属表面に対向する平行面とを有するスペーサーとを備え
たスペーサー付きUHF帯RFIDタグであって、
前記インピーダンス整合部が前記スペーサーの前記斜面内に配置され、
前記第1アンテナが前記スペーサーの前記平行面
の上面に配置され、
前記第2アンテナが前記金属表面に
直接貼付さ
れることを特徴とする
、
スペーサー付きUHF帯RFIDタグ。
【請求項2】
請求項1記載のスペーサー付きUHF帯RFIDタグに備える、補助アンテナ及びその補助アンテナを取り付けるための補助アンテナ用スペーサーで構成されるスペーサー付き補助アンテナであって、
前記補助アンテナ用スペーサーは、
前記金属表面に対向する平行面と、
前記平行面に連なり、前記金属表面に対して角度θ2を有した補助アンテナ用スペーサー斜面と、
前記角度θ2を有した補助アンテナ用スペーサー斜面に連なり、一辺が前記金属表面に接し、前記金属表面に対して角度θ3を有した補助アンテナ用スペーサー斜面とを、備え、
前記角度θ3を有した補助アンテナ用スペーサー斜面が、前記スペーサー付きUHF帯RFIDタグの前記角度θ1となる斜面に対して、前記角度θ3=180-θ1で対向し、
前記補助アンテナが、前記金属表面に対向する平行面と、前記角度θ2を有した補助アンテナ用スペーサー斜面と、前記角度θ3を有した補助アンテナ用スペーサー斜面とに配置され、
前記θ3の角度を有した補助アンテナ用スペーサー斜面に配置された前記補助アンテナの端が、前記角度θ1となる斜面に配置された、前記スペーサー付きUHF帯RFIDタグの前記インピーダンス整合部の近傍で、前記第1アンテナに接合され、
前記第2アンテナ上に配置されることを特徴とする、
スペーサー付き補助アンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFIDタグ、パッシブ型RFIDタグセンサー、RFIDタグ用スペーサーおよび補助アンテナ用スペーサーに関する。
【背景技術】
【0002】
電磁界や電波を用いて非接触でデータの読み書きを行い、それらのデータによって認証を行うRFID(Radio Frequency Identification)技術は、物流管理等の分野で広く用いられている。
【0003】
また、RFIDリーダ・ライタからの電波によって駆動するパッシブ型のRFIDタグによって、電池や外部電源を使用せずに、温度等のセンシングが可能なICチップからの情報をワイヤレスで取得できる、パッシブ型センサーとして機能するRFIDタグが知られている。
【0004】
このようなRFIDタグを金属体に取り付けた場合には、通信距離が低下したり、無線通信が行えなくなったりといった問題があった。
【0005】
そこで、金属に貼付した場合の通信障害対策が施された、金属対応RFIDタグが、これまでに考案されている。例えば、(i)発泡体等のスペーサーによって、RFIDタグと金属面との間に距離を作ることで読み取りを可能にするタイプ(例えば、特許文献1、2、または3参照)、(ii)タグと金属面との間に軟磁性材料からなる磁性シートを設置して、入射磁束の反射方向を変えて読み取りを可能にするタイプ(例えば、特許文献4参照)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-109596号公報
【文献】特表2004-510190号公報
【文献】特許第6286848号公報
【文献】特開2010-72957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
RFIDタグを金属体に貼付した場合に、通信距離CLが大幅に短くなり、通信不能になる現象は、金属体に入射した電磁波による渦電流の発生によって説明されている。この現象は、空気中から金属表面に入射した電磁波の位相の変化から見た場合、固定端反射となり、位相がπずれることで位相反転が起こり、入射波と反射波とが弱めあう現象としても説明できる。特許文献1、2、または3に記載のような、金属対応タグで、発泡体等のスペーサーによって、RFIDタグと金属表面との間に距離を作ることで読み取りを可能にする上記(i)のタイプは、金属表面の固定端反射面からRFIDタグを離すことにより、上記の問題の影響の低減を図っている。特許文献4に記載のような、タグと金属面との間に軟磁性材料からなる磁性シートを設置する上記(ii)のタイプの場合には、入射磁束の反射方向を変えることで、固定端反射での電磁波の干渉の問題の解決を図っている。
【0008】
金属体に取り付けた場合の通信距離の低下が抑制される金属対応RFIDタグとしての機能を得るための手法としては、上記の発泡体等のスペーサーによって、RFIDタグと金属面との間に距離を作ることで読み取りを可能にする方法が、最もシンプルで低コストなものとなる。
【0009】
しかし、温度センシングが可能なICチップを備えたパッシブ型RFIDタグ温度センサーで、金属体表面の温度を計測する場合には、断熱性が高い発泡体等のスペーサーでRFIDタグと金属体表面とが隔離されることで、正確な温度を測定することができないという課題があった。
【0010】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、より正確に温度を計測することができるRFIDタグ、パッシブ型RFIDタグセンサー、RFIDタグ用スペーサーおよび補助アンテナ用スペーサーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
RFIDタグを金属体に貼付した場合に、通信距離CLが大幅に短くなり、通信不能になる原因を、空気中から金属表面(金属体の表面)に入射した電磁波の位相の変化の観点からみた場合、固定端反射面での、位相反転により入射波と反射波とが弱めあう現象と捉えることができる。この場合、RFIDタグのICチップが電気的に結合しているインピーダンス整合部およびアンテナ部と、金属表面とがなす角度が重要となる。
【0012】
上記に加えて、温度等のセンシングが可能なICチップからの情報をワイヤレスで取得できる、パッシブ型センサーとして機能するRFIDタグによって、RFIDタグを設置する金属体の温度の計測を行うことを考えた場合、少なくともRFIDタグの一部が金属体に接触して、伝熱によってインピーダンス整合部のICチップに、金属体の温度の情報が伝達される必要がある。
【0013】
本発明では、上記のような、温度等のセンシングが可能なパッシブ型RFIDタグセンサーを用いた金属体の温度検知における課題を解決するために、アンテナの一部が金属体と接触し、インピーダンス整合部およびアンテナと金属体表面とのなす角度を規定したスペーサーを備えたRFIDタグを提供する。
【0014】
すなわち、本発明に係るRFIDタグは、環状の開口を有する導体パターンと、前記開口の近傍で、前記導体パターンと電気的に接続されたICチップを有するインピーダンス整合部と、前記インピーダンス整合部から第1端部まで第1方向に延伸する第1アンテナと、前記インピーダンス整合部から第2端部まで第2方向に延伸する第2アンテナと、金属表面に対して固定され、前記金属表面に対して角度θ1となる斜面と、前記金属表面に対向する平行面とを有するスペーサーとを備え、前記インピーダンス整合部が前記スペーサーの前記斜面内に配置され、前記第1アンテナが前記スペーサーの前記平行面に配置され、前記第2アンテナが前記金属表面に配置されていることを特徴とする。
【0015】
本発明に係るRFIDタグは、前記スペーサーに対して、前記インピーダンス整合部が、0度より大きく90度以下の角度θ1で配置されていることが好ましい。
【0016】
本発明に係るRFIDタグは、インピーダンス整合部全体がスペーサーの斜面内に配置されるよう、前記スペーサーの斜面の長さが、前記インピーダンス整合部の長さよりも長いことが好ましいが、インピーダンス整合部の一部がスペーサーの斜面からはみ出していてもよく、そのはみ出した部分がスペーサーの平行面に配置されていてもよい。
【0017】
本発明に係るRFIDタグは、前記金属表面に配置された前記第2アンテナ上に設けられた補助アンテナ用スペーサーと、前記補助アンテナ用スペーサー上に配置された補助アンテナとを有し、前記インピーダンス整合部の近傍で、前記第1アンテナと前記補助アンテナの端とが接合されていることが好ましい。
【0018】
本発明に係るパッシブ型RFIDタグセンサーは、本発明に係るRFIDタグを有し、前記金属表面から前記インピーダンス整合部の前記ICチップへの熱伝導を促進するよう、前記第2アンテナが前記金属表面と接しており、前記ICチップからの温度コードによって、温度の検知を行うよう構成されていることを特徴とする。
【0019】
本発明に係るRFIDタグ用スペーサーは、本発明に係るRFIDタグの前記スペーサーから成ることを特徴とする。また、本発明に係る補助アンテナ用スペーサーは、補助アンテナを有する本発明に係るRFIDタグの、前記補助アンテナ用スペーサーから成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、金属表面に取り付けても通信距離の低下を起こさず、RFIDタグのアンテナの一部が金属体に接触していることで、伝熱によってインピーダンス整合部のICチップに金属体の温度の情報が伝達され、金属体の温度計測に用いることのできるRFIDタグ、パッシブ型RFIDタグセンサー、RFIDタグ用スペーサーおよび補助アンテナ用スペーサーを提供することができる。特に、本発明によれば、より正確に温度を計測することができるRFIDタグ、パッシブ型RFIDタグセンサー、RFIDタグ用スペーサーおよび補助アンテナ用スペーサーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施の形態1に係るRFIDタグ(形状A)の(a)平面図、及び(b)断面図である。
【
図2】本発明に関する比較例1に係るRFIDタグ(形状B)の(a)平面図、及び(b)断面図である。
【
図3】本発明の実施の形態の、RFIDタグの通信距離の測定方法を示す斜視図である。
【
図4】本発明の実施の形態1に係るRFIDタグの、通信距離の測定におけるRFIDリーダ・ライタのアンテナと金属板上に配置したRFIDタグとの、それぞれの角度での通信距離(a)CL(θ1)、(b)CL((1/2)θ1)、(c)CL(θ1)を示す平面図である。
【
図5】本発明の実施の形態1に係るRFIDタグ(形状A)、および、本発明に関する比較例1に係るRFIDタグ(形状B)の、金属板へのRFIDタグの配置形状と通信距離との関係を示す表である。
【
図6】本発明に関する比較例2に係るRFIDタグ(形状C)の(a)平面図、及び(b)断面図である。
【
図7】本発明に関する比較例2に係るRFIDタグ(形状D)の(a)平面図、及び(b)断面図である。
【
図8】本発明に関する比較例2に係るRFIDタグ(形状E)の(a)平面図、及び(b)断面図である
【
図9】本発明に関する比較例2に係るRFIDタグ(形状F)の(a)平面図、及び(b)断面図である
【
図10】本発明に関する比較例2に係るRFIDタグの、金属板へのRFIDタグの配置形状と通信距離との関係を示す表である。
【
図11】本発明の実施の形態2に係るRFIDタグ(形状G)の(a)平面図、及び(b)断面図である。
【
図12】本発明の実施の形態2に係るRFIDタグ(形状H)の(a)平面図、及び(b)断面図である。
【
図13】本発明の実施の形態2に係るRFIDタグ(形状GおよびH)の、金属板へのRFIDタグの配置形状と通信距離との関係を示す表である。
【
図14】本発明の実施の形態3に係る、補助アンテナを備えたRFIDタグ(形状A)の(a)平面図、及び(b)断面図である。
【
図15】本発明の実施の形態3に係る、補助アンテナを備えたRFIDタグ(形状A)の、金属板へのRFIDタグの配置形状と通信距離との関係を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分については同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。理解の容易のため、図面における各部の縮尺は、実際とは異なる場合がある。平行、直角、直交、水平、垂直、上下、左右などの方向、ならびに、同一および等しいなどの用語には、実施形態の作用及び効果を損なわない程度のずれが許容される。X軸方向、Y軸方向、Z軸方向は、それぞれ、X軸に平行な方向、Y軸に平行な方向、Z軸に平行な方向を表す。X軸方向とY軸方向とZ軸方向は、互いに直交する。
【0023】
本発明の実施の形態のRFIDタグは、UHF帯RFIDタグの構成要素である、インピーダンス整合部、ICチップ、第1アンテナ、第2アンテナ、およびインピーダンス整合部を金属表面(金属体の表面)に対して或る角度で保持するためのスペーサーからなり、インピーダンス整合部がスペーサーの斜面に配置され、第1アンテナがスペーサーの金属表面に対向する平行面に配置され、第2アンテナが金属表面に配置される。
【0024】
金属表面に対するスペーサーの斜面の角度は、金属表面での反射波が、インピーダンス整合部の入出力波を、干渉効果により弱めない角度が好ましい。これを満たす場合の条件の一つとして、金属表面での反射波と、インピーダンス整合部の入出力波とが、直交している条件が考えられる。
【0025】
次に、上記のRFIDタグの各要素を詳述する。
【0026】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態1に係るRFIDタグ(形状A)の平面図及び断面図である。RFIDタグ(形状A)は、ICチップ20を有するインピーダンス整合部10と、インピーダンス整合部10から第1端部まで第1方向に延伸する第1アンテナ11と、インピーダンス整合部10から第2端部まで第2方向に延伸す第2アンテナ12と、スペーサー101とを有している。
図1では、第1方向はX軸の正の方向に、第2方向は、X軸の負の方向になっている。RFIDタグ(形状A)では、インピーダンス整合部10は、金属板(金属体)40に対してθ1=90度の角度となっているスペーサー101の斜面13に配置されている。第1アンテナ11は、RFIFリーダ・ライタアンテナからの電波を受けるために、金属板40に対向する平行面となっているスペーサー101の上面に配置されている。第2アンテナ12は、伝熱によってICチップ20に金属板40の温度を伝えるために、金属板40の表面に、直接貼付されている。
【0027】
図1に示すRFIDタグ(形状A)で、インピーダンス整合部10の入出力波が、金属体40の表面から反射してくる電波と直交して、干渉効果により弱め合いが起こらないようにするためには、インピーダンス整合部10全体が、スペーサー101の斜面13に配置されていることが必要となる。そのため、スペーサー101の斜面13の長さが、インピーダンス整合部10の長さよりも長いことが必要となる。
図1では、スペーサー101の厚さD1=15mmが、スペーサー101の斜面13の長さと等しくなっている。
【0028】
スペーサー101の斜面13の幅は、インピーダンス整合部10の金属体40の表面となす角度を規定できればよく、限定されない。第1アンテナ11を配置する、金属体40の表面に対向するスペーサー101の平行面の幅および長さは、第1アンテナ11を保持できればよく、限定されない。
【0029】
スペーサー101の材質は、特に限定はされないが、低密度の材料が好ましい。例えば、発泡スチロール樹脂(発泡ポリスチレン樹脂)、発泡ポリプロピレン、発泡ポリエチレンなどに代表される発泡ポリオレフィン、発泡ウレタン、発泡塩化ビニルなどの、その他一般の樹脂を発泡成形した発泡樹脂が好ましい。その他、できるだけ誘電率の低い樹脂や、スポンジ、繊維、ゴム、熱可塑性エラストマー、各種プラスチック、木材、紙材、などの多孔質体が挙げられる。さらに、ダンボールなどの紙材、木材、ガラス、ガラス繊維、粘土系材料なども使用可能である。以上の他に、上記の材料を用いて成型された中空を有するような構造物をスペーサー101とすることも可能である。
【0030】
図2に、本発明の比較例1に係るRFIDタグ73を金属板40に直接貼り付けた状態となる形状Bの平面図および断面図を示した。LIはインピーダンス整合部10の長さで、ICチップ20を有するRFIDタグ73の場合には、略14mmである。LA1およびLA2は、それぞれ第1アンテナ11および第2アンテナ12の長さであり、どちらも略37mmである。
【0031】
図1および
図2に示すように、インピーダンス整合部10は、開口を有する略四辺形の形状の導体パターンが絶縁体フィルム上に形成されているもので、ICチップ20は、インピーダンス整合部10の開口の近傍で、インピーダンス整合部10の環状導体パターンに電気的に接続された半導体部品である。ICチップ20は、RFIDタグの外部に存在するRFIDリーダ・ライタ等の通信機器との間で、RFIDタグのアンテナによって送受信するように構成されている。ICチップ20は、インピーダンス整合部10およびアンテナを介して、センサーにより検知された状態を表す温度等のセンシング情報を送信するように構成されている。
【0032】
インピーダンス整合部10は、ICチップ20と略四辺形の開口を有する環状導体パターンとからなるループ回路を形成しており、開口の形状や大きさ等を調整して、複素インピーダンスの虚部(リアクタンス)を制御することで、アンテナとICチップ20との間での信号の入出力におけるインピーダンス整合を担っている。或る種のICチップ(ICチップ20)は、温度センサー機能を有し、温度コードとして温度情報をRFIDリーダ・ライタ側に送信する機能を有している。
【0033】
図3は、UHF帯RFIDタグの通信距離CLの測定方法を示す概念図である。測定装置70は、RFIDリーダ・ライタ71とRFIDリーダ・ライタ71のアンテナ72とを有する。通信距離CLは、アンテナ72の表面とRFIDタグのICチップ20との間の距離として計測される。測定においてRFIDタグを固定するために、金属板40がベースプレート74として用いられている。
【0034】
図4は、実施の形態1に係るRFIDタグの、通信距離の測定におけるRFIDリーダ・ライタ71のアンテナ72と金属板40上に配置したRFIDタグとの角度 、およびそれら角度での通信距離(a)CL(θ1)、(b)CL((1/2)θ1)、(c)CL(θ1)を示す平面図である。
【0035】
図4(a)で示される通信距離CL(θ1)は、金属板40とスペーサー101の斜面13に配置したRFIDタグのインピーダンス整合部10がRFIDリーダ・ライタ71のアンテナ72と平行な位置関係にある場合の通信距離である。
図4(b)で示される通信距離CL((1/2)θ1)は、RFIDリーダ・ライタ71のアンテナ72に平行な面と金属板40との角度が、(1/2)θ1である場合の通信距離である。この時、RFIDリーダ・ライタ71のアンテナ72の面への法線に対して、RFIDタグのインピーダンス整合部10および金属板40は、ともに(1/2)(180-θ1)度の角度で配置される。
図4(c)で示される通信距離CL(0)は、金属板40がRFIDリーダ・ライタ71のアンテナ72と平行な位置関係にある場合の通信距離である。RFIDリーダ・ライタ71との通信が可能となるような、RFIDリーダ・ライタ71のアンテナ72の面とRFIDタグのインピーダンス整合部10のICチップ20との間の最長距離を通信距離CLとした。
【0036】
図5は、本発明の実施の形態1および比較例1に係るRFIDタグの、金属板40へのRFIDタグの配置形状と通信距離との関係を示す表である。金属板40へのRFIDタグの配置形状が、形状AのRFIDタグの場合、通信距離CL(θ1)、CL((1/2)θ1)、およびCL(θ1)は、それぞれ、384,924,および370cmであった。本発明の実施の形態1の形状Aの場合では、インピーダンス整合部10が金属板40と直交しているために、干渉による信号の弱め合いが起こらないため、
図4(b)の配置形状での良好な通信距離を得ることができる。
【0037】
これに対して、比較例1に係る形状Bの場合の、金属板40に直接貼付したRFIDタグ73においては、通信障害が起こり、通信距離はいずれの配置形状でも、0cmであった。
【0038】
形状AのRFIDタグの場合に、通信距離CL((1/2)θ1)よりも通信距離CL(θ1)のほうが小さな値となるのは、θ1=90度の場合には、
図4(a)の配置形状においては、RFIDタグの第1アンテナ11の面が、RFIDリーダ・ライタ71のアンテナ72の面と直交しているためである。
【0039】
本発明に関する比較例2に係るRFIDタグ形状C、D、E、およびFの平面図および断面図を、それぞれ
図6、7、8、および9に示した。それぞれのスペーサー102、103、104、105の厚さD1は15mmで、形状Aの場合と同様とした。
図6において、LI/MおよびLA2/Mは、金属板40と接触しているインピーダンス整合部10および第2アンテナ12の長さであり、それぞれ、略38mmおよび略14mmである。
【0040】
図7において、インピーダンス整合部10は金属板40とは接触しておらず、厚さD1=15mmの、金属板40に対向するスペーサー103の平行面に配置されている。金属板40と接触している第2アンテナ12の長さLA2/Mは、略22mmである。
【0041】
図8において、インピーダンス整合部10は金属板40とは接触しておらず、厚さD1=15mmの、金属板40に対向するスペーサー104の平行面に配置されている。金属板40と接触している第2アンテナ12の長さLA2/Mは、略10mmである。
【0042】
図9において、インピーダンス整合部10は金属板40とは接触しておらず、厚さD1=15mmの、金属板40に対向するスペーサー105の平行面に配置されている。金属板40と接触している第2アンテナ12の長さLA2/Mは、略4mmである。
【0043】
図10には、本発明に関する比較例2に係るRFIDタグ形状C、D、E、およびFの配置形状の場合の通信距離を示した。通信距離の測定においては、インピーダンス整合部10および第1アンテナ11が、RFIDリーダ・ライタ71のアンテナ72と平行になる配置とした。
【0044】
形状Cの場合、インピーダンス整合部10が金属板40と接触しているために、通信距離CLは0であった。形状D、E、およびFの場合の通信距離は、それぞれ、186,152,および152cmであり、本発明の実施の形態1の形状Aの場合に比べて、1/5程度の値であった。金属板40からインピーダンス整合部10が離れているほど、金属体40の表面からの反射波とインピーダンス整合部10への入射波との干渉は起こりづらく、通信距離の面では有利ではあるものの、形状D、E、およびFでは、インピーダンス整合部10が金属板40と平行であるために、金属体40の表面からの反射波とインピーダンス整合部10への入射波との干渉が起こってしまう。それに加えて、金属板40に接触した第2アンテナ12での損失が起こってしまうために、通信距離CLの低下が生じてしまう。
【0045】
これに対して、本発明の実施の形態1の形状Aの場合には、インピーダンス整合部10が金属板40と直交しているために、干渉による信号の弱め合いが起こらないため、良好な通信距離を得ることができる。
【0046】
[実施の形態2]
本発明の実施の形態2に係るRFIDタグ形状GおよびHの平面図および断面図をそれぞれ、
図11および12に示した。実施の形態1のRFIDタグ形状Aと、実施の形態2に係るRFIDタグ形状GおよびHとの違いは、それぞれのスペーサー101、106、107の斜面13と金属板40とのなす角度θ1となっている。
【0047】
図13は、本発明の実施の形態2に係るRFIDタグ形状GおよびHの通信距離を示す表である。RFIDタグ形状G(θ1=60度)およびH(θ1=30度)ともに、実施の形態1に係るRFIDタグ形状A(θ1=90度)と同様な、良好な通信距離を得ることができた。通信距離CL((1/2)θ1)の比較においては、A(θ1=90度)が、もっとも長い通信距離となっているが、これは、形状A(θ1=90度)の場合には、インピーダンス整合部10が金属板40と直交しているために、干渉による信号の弱め合いが起こらないが、形状G(θ1=60度)および形状H(θ1=30度)の場合には、干渉による信号の弱め合いの影響が幾分生じるためである。
【0048】
通信距離CL(θ1)の比較においては、RFIDタグ形状G(θ1=60度)およびH(θ1=30度)が、形状A(θ1=90度)よりも長い通信距離を示した。これは、
図4(a)で示される配置においては、形状A(θ1=90度)のRFIDタグの第1アンテナ11の面が、RFIDリーダ・ライタ71のアンテナ72の面と直交しているため、第1アンテナ11による信号の送受信が、形状G(θ1=60度)およびH(θ1=30度)に比べて不利なためである。
【0049】
金属体40の表面からの反射波の干渉の影響の低減の効果は、θ1の角度範囲を、0度よりも大きくすることで得られ、θ1=90度で最大となることから、インピーダンス整合部10は、金属体40の表面に対して、0度より大きく90度以下の角度θ1で配置されていることが好ましい。ここで重要なのは、イオンピーダンス整合部10と金属板40とが平行な条件(θ1=0)から外れているほど、干渉の影響による信号の低減が起こらないということであって、角度θ1は、第1アンテナ11の側での角度で表すと、0度より大きく90度以下の角度となるが、第2アンテナ12の側でも同様であり、これを含めれば、0度より大きく179度よりも小さい角度ということになる。
【0050】
[実施の形態3]
図14は、本発明の実施の形態3に係る補助アンテナ30を備えたRFIDタグ(形状A)の平面図および断面図である。金属体40の表面に配置された第2アンテナ12上に、補助アンテナ用スペーサー109が備えられ、その上に補助アンテナ30が配置され、インピーダンス整合部10の近傍で、第1アンテナ11と補助アンテナ30の端とが、第1アンテナ/補助アンテナ接合点33で接合されている。補助アンテナ用スペーサー109の材質は、特に限定はされないが、スペーサー101と同様な材質とすることができる。
【0051】
補助アンテナ用スペーサー109は、2つの補助アンテナ用スペーサー斜面31、32と、金属板40の表面に対向する平行面とを有しており、補助アンテナ用スペーサー斜面31は、金属板40の表面に対してθ2の角度を有し、補助アンテナ用スペーサー斜面32は、金属板40の表面に対してθ3の角度を有している。補助アンテナ30は、金属板40の表面に対向する平行面と補助アンテナ用スペーサー斜面31に配置され、補助アンテナ30の端は、補助アンテナ用スペーサー斜面32に配置されている。
【0052】
第1アンテナ11と補助アンテナ30の端とを、第1アンテナ/補助アンテナ接合点33で接合させるために、補助アンテナ用スペーサー斜面31の金属板40の表面に対する角度θ3は、θ3=180-θ1となっている。
【0053】
補助アンテナ用スペーサー斜面31と金属板40の表面とがなす角度であるθ2は、0度より大きく90度より小さいことが好ましく、20度以上、80度以下であることがより好ましく、30度以上60度以下であることがさらに好ましい。
【0054】
図14では、補助アンテナ30は、平面視で複数の折れ曲がりを有するメアンダライン型の形状となっている。しかし、補助アンテナ30の形状は、図示の形態に限られず、例えば、X軸方向を長手方向とする矩形状、短冊状の略矩形形状が片端でつながった形状でもよく、矩形以外の形状でもよく、限定されない。また、メアンダライン型形状における屈曲の回数や、メアンダラインの幅、およびX軸方向とY軸方向の幅は限定されない。
【0055】
補助アンテナ30の材質は、特に限定はされないが、導電性を有する導体から形成されている。例えば、アルミニウム、銅、金、白金、銀、ニッケル、クロム、亜鉛、鉛、タングステン、鉄等の金属であってもよい。補助アンテナ30の材質は、酸化スズもしくはITO(酸化インジウムスズ)等の金属酸化物、金、銀もしくは銅等の金属ナノワイヤーを用いた導電膜、樹脂に金属粉や導電性カーボン材料を混合した導電性樹脂混合物、または導電性樹脂のフィルム等であってもよい。導体層の厚さは、柔軟性、強度の観点から、0.01~1000μmが好ましく、1~100μmがより好ましい。
【0056】
ここで、補助アンテナ30とは、RFIDタグの構造に加えることで、RFIDタグの通信距離を向上させるための構成要素である。補助アンテナ30は、第1アンテナ11と、インピーダンス整合部10近傍の第1アンテナ/補助アンテナ接合点33で接合される。
【0057】
図15は、本発明の実施の形態3に係る補助アンテナ30を備えたRFIDタグ(形状A)の、金属板40へのRFIDタグの配置形状と通信距離との関係を示す表である。補助アンテナ30を有さないRFIDタグ(形状A)においては、
図5に示されるように、金属板40がRFIDリーダ・ライタ71のアンテナ72と平行な位置関係にある場合の通信距離である通信距離CL(0)が370cmであったのに対して、補助アンテナ30を備えることによって、CL(0)が1032cmと、大きく増加している。インピーダンス整合部10のICチップ20への伝熱のために金属板40の表面に貼付されて配置される第2アンテナ12の代わりに、補助アンテナ30を配して機能させることで、通信距離を改善することができる。
【0058】
図15に示すように、補助アンテナ30を備えるRFIDタグ(形状A)は、通信距離CL((1/2)θ1)に関しても、880cmと良好な特性となっており、補助アンテナ30を有さないRFIDタグ(形状A)に比べて、より広い角度範囲からの信号に対して良好な送受信特性を有している。
【0059】
本発明により、第2アンテナ12の一部が金属体40と接触して、伝熱によってICチップ20に金属体40の温度を伝えることができ、また、インピーダンス整合部10をスペーサー101、106、107の斜面13に配置することで、金属体40の表面からの反射波の干渉の影響を低減でき、また、第1アンテナ11を金属板40に対向する平行面となっているスペーサー101、106、107の上面に配置することで、RFIDリーダ・ライタ71のアンテナ72との送受信を良好に行うことのできる、パッシブ型RFIDタグ温度センサーで金属体40の温度を計測するための、金属対応RFIDタグおよびRFIDタグ用スペーサーを提供できる。また、補助アンテナ用スペーサー109上に配置された補助アンテナ30を備えることで、さらに特性を向上させた、パッシブ型RFIDタグ温度センサーで金属体40の温度を計測するための、金属対応RFIDタグを提供できる。
【0060】
[具体例]
次に、本発明の実施の形態の具体的な実施例及び、比較の形態の具体的な比較例について説明する。本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。なお、具体例で使用した材料および装置は、以下のとおりである。
【0061】
[材料]
(1)ICチップ20:AXZON社製;Magnus-S3、サイズ 1.6BSC×1.6BSC、厚さ 0.35mm。
(2)UHF帯RFIDタグ73:Avery Dennison Smartrac社;Temperature Sensor Dogbone、ICチップ:Axzon Magnus-S3、周波数帯:UHF 860-960MHz、ICチップ:ICチップ20(Magnus-S3)。
(3)金属板40:泰豊; 鉄板 縦100mm横200mm 厚1mm。
(4)3Mスコッチ はってはがせる両面テープ:スリーエム製;667-1-19D、厚さ略0.065mm。
(5)発泡スチロールボード:ダイソー製;発泡ポリスチレン、厚さ5mm
(6)アルミ箔/PET複合フィルム:パナック製;AL-PET9-100、アルミ箔厚 9μm、PET膜厚100μm。
(7)接着剤:コニシ株式会社製;ボンド ウルトラ多用途SU。
【0062】
[装置]
(8)UHF帯RFIDリーダ・ライタ:タカヤ株式会社製;UTR-S201,特定小電力無線局タイプ、送信周波数 916.8MHz~923.2MHz(18チャンネル)、送信出力 10dBm(10mW)~24dBm(250mW)、インターフェース USBインターフェース基板TR3-IF-U1C。
(9)UHF帯外付けアンテナ(直線偏波型):タカヤ株式会社製;UTR-UA1709
-1。
(10)355nmナノ秒パルスレーザー光源:Inngu laser社;Pulse 355-3A,355nm、3W、繰り返し周波数 30kHz、パルス幅 13ns。
(11)ガルバノスキャナー:MASTER LASER社製;Model GH2D10C f‐θレンズ焦点距離 100mm、制御ソフトウェア BJJCZ社製 EzCAD。
[ソフトウェア]
(12)UHF帯RFIDリーダ・ライタ用ソフトウェア:タカヤ株式会社製;UTRRWManager Version1.3.2
【実施例1】
【0063】
[RFIDタグの作成]
発泡スチロールボード(厚さ5mm)を3枚、両面テープで張り合わせることで、厚さD1=15mmとした後に、幅W1=25mmの帯状にカットし、さらに、角度θ1の斜面を有するように、発泡スチロールボード(厚さ15mm、幅W1=25mm)の断面をカットして、スペーサー101を作成した。それらスペーサー101に、RFIDタグ73を貼付することで、金属板40に貼付するためのRFIDタグを作成した。
【0064】
図1には、RFIDタグ(形状A)の平面図および断面図を示した。スペーサー101の斜面の角度θ1=90度、幅W1=略25mm、厚さD1=略15mm、金属板40と対向する平行面となるスペーサー101の上面に貼付される第1アンテナ11の長さLA1=略37mm、スペーサー101の斜面13内に貼付されるインピーダンス整合部10の長さLI=14mm、金属板40と接触して貼付される第2アンテナ12の長さLA2=略37mmとした。
図1において、平面図では、金属板40の表示は省略されている。
【0065】
図2は、RFIDタグ73を金属板40に直接貼付した形状Bの平面図および断面図を示した。第1アンテナ11の長さLA1=略37mm、インピーダンス整合部10の長LI=14mmで、第2アンテナ12の長さLA2=略37mmとなっている。
図2において、平面図では、金属板40の表示は省略されている。
【0066】
[RFIDタグの特性評価]
図3に示す測定装置70での測定において、通信距離CLは、RFIDリーダ・ライタ71の出力が24dBm(250mW)の時の値とした。アンテナ72には直線偏波型のUHF帯外付けアンテナを用いた。通信距離CLは、アンテナ72の表面とRFIDタグのICチップ20との間の距離として計測した。
【0067】
アンテナ72は直線偏波型のUHF帯外付けアンテナであり、直線偏波が床面に対して平行になるように、三脚上に設置した。測定においては、RFIDタグの長手方向が、床面に対して平行になるように、偏波方向を合わせて保持した。UHF帯RFIDリーダ・ライタ用ソフトウェアでの通信が可能となるように、RFIDタグの位置を調整しながら測定を行い、通信が可能な最長距離を、通信距離CLとした。
【0068】
RFIDリーダ・ライタ71のUHF帯外付けアンテナとしては、円偏波型のものも、本発明の実施の形態のRFIDタグとの通信に用いることができる。円偏波型のアンテナを用いた場合には、直線偏波型のアンテナを用いた場合に比べて、通信距離は減少するが、RFIDタグに対して、より広い角度からの電波照射での通信が可能となる。
【0069】
図4は、実施の形態1に係るRFIDタグの、通信距離の測定におけるRFIDリーダ・ライタ71のアンテナ72と金属板40上に配置したRFIDタグの角度、およびそれら角度での通信距離(a)CL(θ1)、(b)CL((1/2)θ1)、(c)CL(θ1)を示す平面図である。
【0070】
図4(a)で示される通信距離CL(θ1)は、金属板40とスペーサー101に配置したRFIDタグのインピーダンス整合部10が、RFIDリーダ・ライタ71のアンテナ72と平行な位置関係にある場合の通信距離である。
図4(b)で示される通信距離CL((1/2)θ1)は、RFIDリーダ・ライタ71のアンテナ72に平行な面と金属板40との角度が、(1/2)θ1である場合の通信距離である。この時、RFIDリーダ・ライタ71のアンテナ72の面への法線に対して、RFIDタグのインピーダンス整合部10および金属板40は、ともに(1/2)(180-θ1)度の角度で配置される。
図4(c)で示される通信距離CL(0)は、金属板40がRFIDリーダ・ライタ71のアンテナ72と平行な位置関係にある場合の通信距離である。RFIDリーダ・ライタ71との通信が可能となるような、RFIDリーダ・ライタ71のアンテナ72の面とRFIDタグのインピーダンス整合部10のICチップ20との間の最長距離を通信距離CLとした。
【0071】
図5には、本発明の実施の形態1に係るRFIDタグの、金属板40へのRFIDタグの配置形状と通信距離との関係を示す表を示した。金属板40へのRFIDタグの配置形状が、形状AのRFIDタグの場合、通信距離CL(θ1)、CL((1/2)θ1)、およびCL(θ1)は、それぞれ、384,924,および370cmであった。CL((1/2)θ1)の配置形状でもっと長い通信距離となった。
【0072】
[比較例1:RFIDタグを金属板に貼付した場合の特性評価]
図2で示される形状Bであるような、金属板40に直接貼付したRFIDタグ73においては、通信障害が起こり、
図5に示されるように通信距離はいずれの配置形状でも0cmであった。
【0073】
[比較例2:インピーダンス整合部がスペーサーの斜面以外の部分に配置され、第2アンテナが金属板に接触しているRFIDタグの特性評価]
比較例2に係るRFIDタグ形状C、D、E、およびFの平面図および断面図を、それぞれ
図6、7、8、および9に示した。それぞれのスペーサー102、103、104、105の厚さD1は15mmで、形状Aの場合と同様とした。スペーサー103の斜面の角度θ1=90度、幅W1=略25mm、厚さD1=略15mmは、RFIDタグ(形状A)と同様とした。
図6、7、8、および9において、平面図では、金属板40の表示は省略されている。
【0074】
図6において、LI/MおよびLA2/Mは、金属板40と接触しているインピーダンス整合部10および第2アンテナ12の長さであり、それぞれ、略38mmおよび略14mmである。
図7において、インピーダンス整合部10は金属板40とは接触しておらず、厚さD1=15mmの、金属板40に対向するスペーサー103の平行面に配置されている。金属板40と接触している第2アンテナ12の長さLA2/Mは、略22mmである。
図8において、インピーダンス整合部10は金属板40とは接触しておらず、厚さD1=15mmの、金属板40に対向するスペーサー104の平行面に配置されている。金属板40と接触している第2アンテナ12の長さLA2/Mは、略10mmである。
図9において、インピーダンス整合部10は金属板40とは接触しておらず、厚さD1=15mmの、金属板40に対向するスペーサー105の平行面に配置されている。金属板40と接触している第2アンテナ12の長さLA2/Mは、略4mmである。
【0075】
図10には、本発明の比較例2に係るRFIDタグ形状C、D、E、およびFの配置形状の場合の通信距離を示した。通信距離の測定においては、インピーダンス整合部10および第1アンテナ11が、RFIDリーダ・ライタ71のアンテナ72と平行になる配置とした。インピーダンス整合部10が金属板40と接触している形状Cの場合、通信距離CLは0cmであった。形状D、E、およびFの場合の通信距離は、それぞれ、186,152,および152cmであり、本発明の形状Aの場合に比べて、1/5程度の値であった。
【実施例2】
【0076】
本発明の実施の形態2に係るRFIDタグ形状GおよびHの平面図および断面図をそれぞれ、
図11および12に示した。実施の形態1のRFIDタグ形状Aと、実施の形態2に係るRFIDタグ形状GおよびHとの違いは、それぞれのスペーサー101、106、107の斜面13と金属板40とのなす角度θ1となっている。
図11および12において、平面図では、金属板40の表示は省略されている。
【0077】
図13は、本発明の実施の形態2に係るRFIDタグ形状GおよびHの通信距離を示す表である。RFIDタグ形状G(θ1=60度)およびH(θ1=30度)ともに、実施の形態1に係るRFIDタグ形状A(θ1=90度)と同様な、良好な通信距離を得ることができた。
【実施例3】
【0078】
本発明の実施の形態3に係る補助アンテナ30を備えたRFIDタグ(形状A)の平面図および断面図を
図14に示した。金属体40の表面に配置された第2アンテナ12上に、補助アンテナ用スペーサー109が備えられ、その上に補助アンテナ30が配置され、インピーダンス整合部10の近傍で、第1アンテナ11と補助アンテナ30の端とが、第1アンテナ/補助アンテナ接合点33で接合されている。補助アンテナ用スペーサー109の厚さD2は15mmとし、スペーサー101の厚さD1と同様となっている。
【0079】
図14に示す、導体からなる補助アンテナ30は、355nmのレーザー光をf‐θレンズで集光し、ガルバノスキャナーで走査することで、アルミ箔/PET複合フィルムのレーザーカットによって作成した。
【0080】
補助アンテナ用スペーサー斜面31は、金属板40の表面に対してθ2=30度の角度を有し、補助アンテナ用スペーサー斜面32は、金属板40の表面に対してθ3=90度の角度を有している。補助アンテナ用スペーサー斜面32の長さD3は5mmであり、補助アンテナ30の端が、補助アンテナ用スペーサー斜面32上で4mmとなるように、補助アンテナ30を補助アンテナス用ペーサー109に両面テープで貼り付けた。この補助アンテナ30の端を、第1アンテナ/補助アンテナ接合点33に、接着剤および両面テープで固定して接合した。
【0081】
図15には、本発明の実施の形態3に係る補助アンテナ30を備えたRFIDタグ(形状A)の、金属板40へのRFIDタグの配置形状と通信距離との関係を示した。RFIDタグ(形状A)の構造に、補助アンテナ30を加えることで、通信距離CL(0)が370cmから、略3倍の1032cmと増加した。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明により、金属表面に取り付けても通信距離の低下を起こさず、RFIDタグのアンテナの一部が金属体に接触していることで、伝熱によってインピーダンス整合部のICチップに金属体の温度の情報が伝達され、金属体の温度計測に用いることのできるRFIDタグおよびRFIDタグ用スペーサーを提供することができ、これらを、金属体の温度をパッシブ型RFIDタグセンサーで検知し管理するために、好適に利用できる。
【0083】
以上、実施形態を説明したが、本発明の技術は上記の実施形態に限定されない。他の実施形態の一部又は全部との組み合わせや置換などの種々の変形及び改良が可能である。
【符号の説明】
【0084】
10 インピーダンス整合部
11 第1アンテナ
12 第2アンテナ
13 (スペーサーの)斜面
20 ICチップ
30 補助アンテナ
31 補助アンテナ用スペーサー斜面
32 補助アンテナ用スペーサー斜面
33 第1アンテナ/補助アンテナ接合点
40 金属板(金属体)
70 測定装置
71 RFIDリーダ・ライタ
72 (RFIDリーダ・ライタの)アンテナ
73 (比較例の)RFIDタグ
74 ベースプレート
101,106、107 スペーサー
102,103,104,105 (比較例の)スペーサー
109 補助アンテナ用スペーサー