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▶ ミリムジーン カンパニー,リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】WARS中和抗体及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/40 20060101AFI20241120BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20241120BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20241120BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20241120BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20241120BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20241120BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241120BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20241120BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20241120BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241120BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20241120BHJP
   A61K 31/7036 20060101ALN20241120BHJP
【FI】
C07K16/40 ZNA
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
G01N33/53 D
A61K39/395 N
A61P29/00
A61K31/7036
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2023527238
(86)(22)【出願日】2021-10-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-21
(86)【国際出願番号】 KR2021014301
(87)【国際公開番号】W WO2022092644
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2023-05-16
(31)【優先権主張番号】10-2020-0140371
(32)【優先日】2020-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0136547
(32)【優先日】2021-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】523159878
【氏名又は名称】ミリムジーン カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ジン,ミリム
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ユン ヒ
【審査官】田中 晴絵
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2021-0010236(KR,A)
【文献】特表2020-504759(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/00-16/46
C12N 15/00-15/90
C12P 21/08
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列表配列番号重鎖CDR1、配列表配列番号重鎖CDR2、及び配列表配列番号重鎖CDR3を含む重鎖可変領域(VH)と、配列表配列番号軽鎖CDR1、配列表配列番号軽鎖CDR2、及び配列表配列番号軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域(VL)と、を含むWARSに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
配列表配列番号重鎖可変領域(VH)、及び配列表配列番号軽鎖可変領域(VL)を含むトリプトファニルtRNA合成酵素(Tryptophanyl-tRNA Synthetase、WARS)に特異的に結合する、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項3】
前記抗体又はその抗原結合断片は、配列表配列番号21CL配列、配列表配列番号22CH1配列、配列表配列番号23ヒンジ配列、配列表配列番号24CH2配列、及び配列表配列番号25CH3配列で構成された群から選ばれる1以上の配列を含むことを特徴とする、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項4】
前記断片は、Fab、F(ab’)2、Fd、sdFv、Fv、scFv及びテトラマーからなる群から選ばれる断片又は前記断片とFcの結合形態であることを特徴とする、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項5】
請求項1の抗体又はその抗原結合断片をコードするポリヌクレオチド。
【請求項6】
請求項5のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項7】
請求項6のベクターで形質転換された細胞。
【請求項8】
請求項7の細胞を、ポリヌクレオチドが発現される条件下で培養し、ポリペプチドを回収する段階を含む、WARSに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片の製造方法。
【請求項9】
請求項1の抗体又はその抗原結合断片を試料と接触させる段階を含む、WARSの特異的検出方法。
【請求項10】
請求項1の抗体又はその抗原結合断片を含む、WARSの特異的検出用組成物。
【請求項11】
請求項1の抗体又はその抗原結合断片を含む感染疾患の診断用組成物。
【請求項12】
前記感染疾患は、感染性炎症疾患であることを特徴とする、請求項11に記載の診断用組成物。
【請求項13】
前記感染性炎症疾患は、敗血症又は敗血症性ショックであることを特徴とする、請求項12に記載の診断用組成物。
【請求項14】
請求項1の抗体又はその抗原結合断片、前記抗体又はその抗原結合断片をコードするポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含むベクター又は前記ベクターで形質転換された細胞を含む感染疾患の治療用薬剤学的組成物。
【請求項15】
前記感染疾患は、感染性炎症疾患であることを特徴とする、請求項14に記載の感染疾患の治療用薬剤学的組成物。
【請求項16】
前記感染性炎症疾患は、敗血症又は敗血症性ショックであることを特徴とする、請求項1に記載の感染疾患の治療用薬剤学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、WARSタンパク質に特異的に結合する抗体及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
アミノアシルtRNA合成酵素(Aminoacyl-tRNA Synthetase、ARS)は、アミノ酸を特異的にtRNAに結合させる反応を媒介する酵素であって、タンパク質の生成に中枢的な役割を担う。近年、これらのARSは、本質的な機能以外にも、細胞死滅(Apoptosis)、血管形成(Angiogenesis)、炎症反応などの多様な生命現象に関与していることが知られている。特に、ヒトトリプトファニルtRNA合成酵素1(Tryptophanyl-tRNA Synthetase 1、WARS1)の一般的な機能は、タンパク質の合成のためにトリプトファンを認知するtRNAと連結するアミノアシルtRNA合成酵素であるが、最近の関心事は、感染に対する宿主防御メカニズムにおけるWARS1の役割である。本発明者等は、以前に、感染してから数分以内に、単核球がデノボ(de novo)合成なしで既存に存在するWARS1を細胞外空間に直ぐ分泌することを報告した(Young Ha Ahn.et al.Secreted Tryptophanyl-tRNA Synthetase as a primary defence system against infection.Nature Microbiology 2:16191(2016))。
【0003】
TLR4とTLR2の内因性リガンドとして機能することによって、分泌されたWARS1は、大食細胞を活性化し、先天的な免疫活性化を誘導する。また、WARS1は、TNF-α、IL-6、MIP-1α、IL-8及びIFN-γを含む前炎症性サイトカイン及びケモカインの生産を開始し、好中球の浸潤を誘発する。その後、WARS1遺伝子の発現がIFN-γによって活性化され、WARS1の持続的な分泌を維持する。このような発見と一致するように、WARS1は、敗血症患者の血液で高度に高くなるが、無菌性慢性炎症障害ではそうではなく、グラム陽性及び陰性細菌、ウイルス及びカビなどの病原体の類型とは関係なく分泌されることを確認した。
【0004】
前記細菌、ウイルス及び/又はカビによる感染性炎症疾患の治療のために、これに対する抗体を開発する戦略が考えられるが、WARS1を含む各ARSは、タンパク質の構造上、類似する点が多いので、免疫反応で得られる抗体は、他のARSにも交差反応を示すように、高感度の抗体が生成されない場合が多い。
【0005】
したがって、他のARSに対する交差反応がなく、WARS1にのみ特異的に結合し、これを効果的に中和できる抗体の開発が切実な状況である。
【0006】
上記のような背景技術として説明した各事項は、本発明の背景に対する理解を増進するためのものに過ぎなく、この技術分野で通常の知識を有する者に既に知られている従来技術に該当するものと認めてはならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者等は、敗血症などの感染疾患の患者において、その発現量が著しく増加するWARSに特異的に結合する抗体又はその断片を発掘するために鋭意努力した。その結果、WARSに特異的に結合し、他のARS類との交差反応性がなく、WARS検出及び発現抑制能力に優れた抗体を発掘することによって、本発明を完成するに至った。
【0008】
したがって、本発明の目的は、トリプトファニルtRNA合成酵素(Tryptophanyl-tRNA Synthetase、WARS)に特異的に結合する抗体又はその断片を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、前記抗体又はその断片を暗号化するポリヌクレオチドを提供することにある。
【0010】
本発明の更に他の目的は、前記ポリヌクレオチドを含むベクターを提供することにある。
【0011】
本発明の更に他の目的は、前記ベクターで形質転換された細胞を提供することにある。
【0012】
本発明の更に他の目的は、前記細胞を、ポリヌクレオチドが発現される条件下で培養し、ポリペプチドを回収する段階を含む、WARSに特異的に結合する抗体又はその断片の製造方法を提供することにある。
【0013】
本発明の更に他の目的は、前記抗体又はその断片、ポリヌクレオチド、ベクター又は細胞を試料と接触させる段階を含む、WARSの特異的検出方法を提供することにある。
【0014】
本発明の更に他の目的は、前記抗体又はその断片、ポリヌクレオチド、ベクター又は細胞を含む、WARSの特異的検出用組成物を提供することにある。
【0015】
本発明の更に他の目的は、前記抗体又はその断片、ポリヌクレオチド、ベクター又は細胞を含む感染疾患の診断用組成物を提供することにある。
【0016】
本発明の更に他の目的は、前記抗体又はその断片、ポリヌクレオチド、ベクター又は細胞を含む感染疾患の予防又は治療用薬剤学的組成物を提供することにある。
【0017】
本発明の更に他の目的は、前記抗体又はその断片、ポリヌクレオチド、ベクター又は細胞、及び追加的な抗生剤を含む感染疾患の予防又は治療用薬剤学的組成物を提供することにある。
【0018】
本発明の他の目的及び利点は、下記の発明の詳細な説明、特許請求の範囲及び図面によってより明確になる。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の一様態によると、本発明は、トリプトファニルtRNA合成酵素(Tryptophanyl-tRNA Synthetase、WARS)に特異的に結合する抗体又はその断片を提供する。
【0020】
本発明者等は、敗血症などの感染疾患の患者において、その発現量が著しく増加するWARSに特異的に結合する抗体又はその断片を発掘するために努力した結果、WARSに特異的に結合し、他のARS類との交差反応性がなく、WARS検出及び活性抑制能力に優れた抗体を発掘した。
【0021】
本明細書において、「WARS」という用語は、トリプトファニルtRNA合成酵素(Tryptophanyl-tRNA Synthetase)を意味し、トリプトファンtRNA連結酵素(Tryptophan-tRNA Ligase)、TrpRS、WRSなどとしても知られている。WARSは、アミノ酸トリプトファンとtRNAのアミノアシレーション(Aminoacylation)反応を媒介する酵素である。WARSは、ヒトではWARS遺伝子によって暗号化され、タンパク質のアミノ酸配列とmRNA塩基配列は、Genbankアクセッション番号(accession number)NP_004175.2(タンパク質)、Genbankアクセッション番号NM_004184.3(mRNA塩基配列)などとして公知となっている。WARSは、細胞質型(Cytoplasmic form)(WARS1又はTryptophanyl-tRNA Synthetase 1、Cytoplasmic)とミトコンドリア型(Mitochondrial form)(WARS2又はTryptophanyl-tRNA Synthetase 2、Mitochondrial)の二つのアイソフォーム(isoform)を有する。
【0022】
本発明の好ましい具現例によると、本発明のWARSはWARS1である。
【0023】
本明細書において、「抗体」という用語は、当業界の用語であり、本明細書で相互交換的に使用可能であり、抗原に特異的に結合する抗原結合部位を有する分子を意味する。本明細書で使用されたこの用語は、全体の抗体及び任意の断片(すなわち、「抗原-結合部分」)又はその単一鎖を含む。本発明の一具現例によると、「抗体」は、二硫化物結合によって相互連結された少なくとも2個の重鎖(H)及び2個の軽鎖(L)を含む糖タンパク質又はその抗原結合部分を言う。本発明の他の具現例によると、「抗体」は、単一可変領域(ドメイン)、例えば、VHドメインを含む単一鎖抗体を言う。各重鎖は、重鎖可変領域(VH)及び重鎖定常領域からなる。一般に、重鎖定常領域は、3個のドメイン、CH1、CH2及びCH3を含み、各軽鎖は、軽鎖可変領域(VLと略記する)及び軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、一つのドメイン、すなわち、CLを含む。
【0024】
VH及びVL領域は、相補性決定領域(CDR)と命名された、超可変領域にさらに細分化可能であり、これは、フレームワーク領域(FR)と命名された、さらに保存された各領域の間に位置する。各VH及びVLは、3個のCDR及び4個のFRからなり、これらは、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3及びFR4の順にアミノ-末端からカーボキシ-末端に配列される。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系の多様な細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的補体システムの第1成分(C1q)を含む、免疫グロブリンと宿主組織又は因子の結合を媒介することができる。
【0025】
本明細書において、「Fc」という用語は、免疫系の多様な細胞(例えば、エフェクター細胞)上に位置したFc受容体又は古典的補体システムの第1成分(C1q)との結合を含む、免疫グロブリンと宿主組織又は因子の結合を媒介する抗体重鎖のC-末端領域を言う。よって、Fcは、第1定常領域免疫グロブリンドメイン(例えば、CH1又はCL)を除いた抗体の定常領域を含む。IgG、IgA及びIgD抗体のアイソタイプにおいて、Fc領域は、抗体の二つの重鎖の第2(CH2)及び第3(CH3)定常ドメインから由来した二つの同一のタンパク質断片を含み、IgM及びIgE Fc領域は、各ポリペプチド鎖で3個の重鎖定常ドメイン(CHドメイン2-4)を含む。本明細書に提示されたFcは、任意のアロタイプ変異体を含む自生配列Fc又はFc変異体(例えば、非-自然発生Fc)であり得る。また、Fcは、「Fc融合タンパク質」(例えば、抗体又は免疫接合体)とも言う「Fc領域を含む結合タンパク質」などのFc-含有タンパク質ポリペプチドであり得る。
【0026】
抗体は、免疫グロブリン分子の任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA又はIgY)、又は任意のサブクラス(例えば、ヒトにおけるIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4、又はマウスにおけるIgG1、IgG2a、IgG2b及びIgG3など)を有することができる。免疫グロブリン、例えば、IgG1は、いくつかのアミノ酸が互いに異なるいくつかのアロタイプで存在する。本明細書に開示された抗体は、通常知られているアイソタイプ、類型、サブクラス及びアロタイプのうちいずれか一つから由来し得る。特定の具体例において、本明細書に提示された抗体は、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4サブクラス、又はこれらの任意のハイブリッドに属する。特定の具体例において、抗体は、IgG2、IgG4又はIgG2/IgG4サブクラスに属する。
【0027】
抗体の例としては、自然発生又は非-自然発生抗体;単一クローン又は多クローン抗体;キメラ又はヒト化抗体;ヒト又は非-ヒト抗体;完全合成抗体;単一鎖抗体;単一特異的抗体;及び多重特異的抗体(二重又は三重特異的抗体を含む)を含む。
【0028】
本明細書において、「中和抗体」という用語は、病原体や感染性粒子が身体に浸透したときに生物学的に及ぼす影響を中和し、細胞を防御する抗体を意味する。中和抗体は、ウイルス、バクテリア、カビ及び微生物毒素に対する後天免疫系の免疫反応の一部である。中和抗体は、感染性粒子の表面構造に特化された形態で生成されながら結合し、感染性抗原が宿主細胞と相互作用することを防止することによって免疫を達成する。
【0029】
本明細書において、「断片」という用語は、抗原に特異的に結合する能力を保有した抗体の一つ以上の断片又は前記「抗原に特異的に結合する能力を保有した抗体の一つ以上の断片」と他の分子(同一又は他の抗体の一部分(Fcなど)を含む)が結合された全ての形態を含む意味で解釈される。断片の例としては、VL、VH、CL及びCH1ドメインで構成された1価断片(Fab断片);ヒンジ領域で二硫化物ブリッジによって連結された2個のFab断片を含む2価断片(F(ab’)2断片);VH及びCH1ドメインで構成されたFd断片;抗体の一つのアーム(arm)のVL及びVHドメイン、及び二硫化物-連結されたFv(sdFv)で構成されたFv断片;VHドメインで構成されたdAb断片;及び分離された相補性決定領域(CDR)又はリンカーによって選択的につながり得る二つ以上の分離されたCDRの組み合わせを含む。また、VLとVH領域は、ペアをなして1価分子(単鎖Fv(scFv))を形成した単一タンパク質鎖をなすようにリンカーによってつながり得る。このような単一鎖抗体も抗体の断片に含まれる。また、前記抗体又は抗体の断片は、2個の重鎖分子及び2個の軽鎖分子を含むテトラマー抗体;抗体軽鎖モノマー;抗体重鎖モノマー;抗体軽鎖ダイマー;抗体重鎖ダイマー;イントラボディー;1価抗体;ラクダ抗体;及び単一-ドメイン抗体(sdAb)を含む。
【0030】
本発明の好ましい具現例によると、本発明の抗体の断片は、Fab、F(ab’)2、Fd、sdFv、Fv、dAb、scFv、sdAb及びテトラマーからなる群から選ばれる断片又は前記断片とFcの結合形態である。
【0031】
本発明の好ましい具現例によると、本発明の抗体又はその断片は、配列リストの第3配列の重鎖CDR1、配列リストの第4配列の重鎖CDR2、及び配列リストの第5配列の重鎖CDR3を含む重鎖可変領域(VH)を含む。
【0032】
本発明の好ましい具現例によると、本発明の抗体又はその断片は、配列リストの第6配列の軽鎖CDR1、配列リストの第7配列の軽鎖CDR2、及び配列リストの第8配列の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0033】
本発明の好ましい具現例によると、本発明の前記CDR配列で構成された各抗体(その断片を含む)は、WARSに特異的に結合し、ARSファミリーを含む他のタンパク質との交差反応性がないものである。
【0034】
本発明の好ましい具現例によると、本発明の抗体又はその断片は、配列リストの第1配列の重鎖可変領域(VH)、及び配列リストの第2配列の軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0035】
本発明の好ましい具現例によると、本発明の抗体又はその断片は、配列リストの第21配列のCL配列、配列リストの第22配列のCH1配列、配列リストの第23配列のヒンジ(Hinge)配列、配列リストの第24配列のCH2配列、及び配列リストの第25配列のCH3配列で構成された群から選ばれる1以上の配列を含む。
【0036】
本発明の好ましい具現例によると、本発明の抗体又はその断片は、配列リストの第21配列のCL配列、配列リストの第22配列のCH1配列、配列リストの第23配列のヒンジ配列、配列リストの第24配列のCH2配列、及び配列リストの第25配列のCH3配列を全て含む。
【0037】
本発明の他の様態によると、本発明は、前記抗体又はその断片を暗号化するポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含むベクター又は前記ベクターで形質転換された細胞を提供する。
【0038】
本明細書において、「ポリヌクレオチド」又は「核酸分子」という用語は、DNA分子及びRNA分子を含む。本発明のポリヌクレオチド又は核酸分子は、単離されたり又は組み換えられたものであってもよく、単一鎖及び二重鎖形態のDNA及びRNAのみならず、対応する相補性配列を含む。「単離された核酸」は、天然生成起源から単離された核酸の場合、核酸が単離された個体のゲノムに存在する周辺遺伝配列から分離された核酸である。鋳型から酵素的に又は化学的に合成された核酸、例えば、PCR産物、cDNA分子、又はオリゴヌクレオチドの場合、このような手順から生成された核酸が単離された核酸分子であると理解され得る。単離された核酸分子は、別途の断片の形態又はさらに大きい核酸構築物の成分としての核酸分子を示す。核酸は、他の核酸配列との機能的な関係で配置されるときに「作動可能に連結」される。例えば、プレ配列又は分泌リーダー(leader)のDNAは、ポリペプチドが分泌される前の形態であるプレタンパク質(preprotein)として発現される場合、ポリペプチドのDNAに作動可能に連結され、プロモーター又はエンハンサーは、ポリペプチド配列の転写に影響を与える場合にコーディング配列に作動可能に連結され、又は、リボソーム結合部位は、翻訳を促進するように配置されるときにコーディング配列に作動可能に連結される。一般に、「作動可能に連結された」は、連結される各DNA配列が隣接して位置することを意味し、分泌リーダーの場合、隣接しながら同一のリーディングフレーム内に存在することを意味する。しかし、エンハンサーは、隣接して位置する必要はない。連結は、便利な制限酵素部位でライゲーションによって達成される。このような部位が存在しない場合、合成オリゴヌクレオチドアダプター又はリンカーを通常の方法によって使用する。
【0039】
本明細書において、「ベクター」という用語は、前記ポリヌクレオチド(核酸)配列を複製できる細胞への導入のためにポリヌクレオチド配列を挿入できる伝達体を意味する。ポリヌクレオチド配列は、外因性(Exogenous)又は異種(Heterologous)であり得る。ベクターとしては、プラスミド、コスミドベクター及びウイルスベクター(レトロウイルス、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルスベクターなど)を挙げることができるが、これに制限されない。当業者は、標準的な組換え技術によってベクターを構築することができる(Maniatis,et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1988;及びAusubel et al.,In:Current Protocols in Molecular Biology,John,Wiley & Sons,Inc,NY,1994など)。
【0040】
本明細書において、「発現ベクター」という用語は、転写される遺伝子産物のうち少なくとも一部分をコーディングするヌクレオチド配列を含むベクターを意味する。一部の場合は、その後、RNA分子がタンパク質、ポリペプチド、又はペプチドに翻訳される。発現ベクターは、多様な調節配列を含むことができる。転写及び翻訳を調節する調節配列と共に、ベクター及び発現ベクターには、更に他の機能を提供する核酸配列も含まれ得る。
【0041】
本明細書において、「細胞」という用語は、真核細胞及び原核細胞を含み、前記ベクターを複製できたり、ベクターによってコーディングされる遺伝子を発現できる任意の形質転換可能な細胞を意味する。細胞は、前記ベクターによって形質感染(Transfected)、形質導入(Transduced)又は形質転換(Transformed)されてもよく、これは、外因性のポリヌクレオチド(核酸分子)が宿主細胞内に伝達又は導入される過程を意味する。本明細書において、「形質転換」という用語は、前記形質感染(Transfected)及び形質導入(Transduced)を含む意味で使用される。
【0042】
本発明の(宿主)細胞としては、これに制限されないが、好ましくは、バクテリア細胞、昆虫細胞又は哺乳動物細胞、より好ましくは、昆虫細胞の場合はSf9、哺乳動物細胞の場合は、HEK293細胞、HeLa細胞、ARPE-19細胞、RPE-1細胞、HepG2細胞、Hep3B細胞、Huh-7細胞、C8D1a細胞、Neuro2A細胞、CHO細胞、MES13細胞、BHK-21細胞、COS7細胞、COP5細胞、A549細胞、MCF-7細胞、HC70細胞、HCC1428細胞、BT-549細胞、PC3細胞、LNCaP細胞、Capan-1細胞、Panc-1細胞、MIA PaCa-2細胞、SW480細胞、HCT166細胞、LoVo細胞、A172細胞、MKN-45細胞、MKN-74細胞、Kato-III細胞、NCI-N87細胞、HT-144細胞、SK-MEL-2細胞、SH-SY5Y細胞、C6細胞、HT-22細胞、PC-12細胞、NIH3T3細胞などを用いることができる。
【0043】
本発明の(宿主)細胞は、好ましくは、胚性幹細胞を除外した細胞である。
【0044】
本発明の好ましい具現例によると、本発明の宿主細胞は、単離又は分離された宿主細胞である。
【0045】
本発明の更に他の様態によると、本発明は、前記細胞を、ポリヌクレオチドが発現される条件下で培養し、ポリペプチドを回収する段階を含む、WARSに特異的に結合する抗体又はその断片を製造する方法を提供する。
【0046】
本発明の製造方法の内容のうち、抗体又はその断片、ヌクレオチド、ベクター、細胞などに対しては、上述した通りである。前記製造方法のポリペプチドは、本発明の抗体又はその断片(抗原結合断片)であったり、これを含むことができる。
【0047】
本発明の好ましい具現例によると、本発明は、(a)前記ポリヌクレオチドを含む発現ベクター(組換え発現ベクター)で宿主細胞を形質転換する段階;(b)形質転換された宿主細胞を培養し、抗体又はその断片を生産する段階;及び(c)宿主細胞で生産された抗体又はその断片を収得する段階;を含む。
【0048】
本発明の更に他の様態によると、本発明は、前記抗体又はその断片、ポリヌクレオチド、ベクター又は細胞を試料と接触させる段階を含む、WARSの特異的検出方法を提供する。
【0049】
本発明の更に他の様態によると、本発明は、前記抗体又はその断片、ポリヌクレオチド、ベクター又は細胞を含む、WARSの特異的検出用組成物を提供する。
【0050】
本発明の抗体又はその断片は、WARSと特異的に結合するので、例えば、特定の細胞、組織、又は血清内のWARSタンパク質の発現を検出して定量するための診断分析に有用である。
【0051】
本明細書において、「試料」という用語は、被検体(例えば、感染疾患又は感染合併症の有無を診断しようとする被検体)から採取された細胞や組織、血液、全血、血清、血漿、脳脊髄液などであってもよい。前記抗体又はその断片、ポリヌクレオチド、ベクター又は細胞を用いてタンパク質を検出する方法としては、ウェスタンブロット、免疫ブロット、ドットブロット、免疫組織化学染色(Immunohistochemistry)、酵素免疫分析(ELISA)、放射能免疫検定法(Radioimmunoassay)、競争的結合分析、免疫沈澱などがあるが、これに制限されない。
【0052】
本発明の更に他の様態によると、本発明は、前記抗体又はその断片、ポリヌクレオチド、ベクター又は細胞を含む感染疾患の診断用組成物を提供する。
【0053】
本発明の更に他の様態によると、本発明は、前記抗体又はその断片、ポリヌクレオチド、ベクター又は細胞を含む感染疾患の診断キットを提供する。
【0054】
本発明の更に他の様態によると、本発明は、前記抗体又はその断片、ポリヌクレオチド、ベクター又は細胞を含む感染疾患の予防又は治療用薬剤学的組成物を提供する。
【0055】
本発明の更に他の様態によると、本発明は、前記抗体又はその断片、ポリヌクレオチド、ベクター又は細胞を含むWARS過剰発現による疾患の治療用薬剤学的組成物を提供する。
【0056】
本発明の診断用組成物又は薬剤学的組成物の内容のうち、抗体又はその断片、ヌクレオチド、ベクター、細胞などに対しては、上述した通りである。
【0057】
本発明が予防、改善又は治療しようとする疾患は、制限されないが、好ましくは、WARSの発現又は活性と関連した全ての疾患を含む。
【0058】
前記WARSの発現又は活性と関連した疾患は、制限されないが、好ましくは感染疾患を含む。
【0059】
WARSは、バクテリア、ウイルス又はカビ(Fungi)などによる感染で発現レベルが感染初期から急速に増加し、感染合併症として肺炎や敗血症などの症状が現れる場合、正常人対照群より著しく増加すると報告されたことがある。さらに、敗血症患者の場合、WARS発現レベルは敗血症の重症度及び予後と高い相関関係を有しており、WARSは、感染性炎症でのみ増加するので、感染性炎症疾患と非感染性炎症疾患を迅速且つ正確に区分することができ、新しい感染疾患及び感染合併症での診断マーカーとしての価値が非常に高い。特に、バクテリア又はカビ(Fungi)感染による敗血症又は敗血症性ショック患者の血清では、WARSの量が健康な正常人対照群の血清に比べて著しく増加し、グラム-陰性菌バクテリア、グラム-陽性菌バクテリア及びカビ感染による敗血症患者のそれぞれにおいてWARSの増加傾向に統計学的に有意な差がないので、グラム-陰性菌バクテリア、グラム-陽性菌バクテリア又はカビ感染による敗血症の診断にWARSが全て有用に使用され得る。また、WARSのレベルは、敗血症患者より敗血症性ショック患者でさらに増加し、WARSの発現レベルが敗血症重症度とも関連している。すなわち、WARSの発現レベルが高いほど、敗血症の症状が深刻であると判断することができる(韓国公開特許第10-2017-0027313)。すなわち、本発明のWARS特異的抗体を用いると、生物学的試料のうちWARSの発現程度を高い正確度で検出することによって、感染疾患又は感染合併症を診断するのに有用な情報を提供し、その予後を予測することができる。
【0060】
本発明に係る抗体又はその断片は、分析キット又は診断キットとして提供されてもよく、前記キットは、当業界に抗体又は特定の結合ドメインを有するペプチドを構成品として提供する分析キットとして知られたものであれば、その種類が特に制限されないが、例えば、ウェスタンブロット、ELISA、放射性免疫分析法、放射免疫拡散法、オクタロニー免疫拡散法、ロケット免疫電気泳動、組織免疫染色、免疫沈澱分析法、補体固定分析法、FACS又はタンパク質チップ用キットなどを含む。
【0061】
本発明の感染疾患としては、肺炎、肺結核、結核、敗血症(Sepsis)、敗血症性ショック(Septic Shock)、サルモネラ症(Salmonellosis)、食中毒、腸チフス、尿路感染、膀胱炎、腎盂腎炎、尿道炎、前立腺炎、上気道感染、中耳炎、後天性免疫欠乏症(AIDS)ウイルス及びコロナウイルスなどのウイルス性感染疾患などがあるが、これに制限されない。
【0062】
前記コロナウイルスは、重症急性呼吸器症侯群ウイルス(SARS-CoV)、中東呼吸器症侯群ウイルス(MERS-CoV)、COVID-19(corona virus disease 19)の原因となった新型コロナウイルス-2(SARS-CoV-2)、伝染性気管支炎ウイルス(Infectious bronchitis virus、IBV)、豚伝染性胃腸炎ウイルス(TGE)、豚流行性下痢ウイルス(PED)、牛コロナウイルス(BCoV)、猫/犬コロナウイルス(FCoV/CCoV)、マウス肝炎ウイルス(MHV)などを含むが、これに制限されない。
【0063】
本発明の好ましい具現例によると、前記感染疾患は感染性炎症疾患である。
【0064】
感染性炎症疾患は、炎症を伴う感染疾患であって、感染の原因病原体(ウイルス、細菌、カビなど)の増殖を抑制したり、炎症を調節することによって所期の治療効果を達成することができる。
【0065】
本発明の好ましい具現例によると、前記感染性炎症疾患は、敗血症又は敗血症性ショックである。
【0066】
前記敗血症は、初期敗血症、重症敗血症、敗血症性ショック及び敗血症に伴う多臓器機能障害症侯群(Multiple Organ Dysfunction Syndrome、MODS)、播種性血管内凝固症侯群(DIC)、急性呼吸窮迫症侯群(ARDS)又は急性腎不全(AKI)の発病を含むが、これに制限されない。
【0067】
本発明の組成物は、WARSを高い敏感度で検出できるだけでなく、感染によって増加したWARSの量を有意に低下させることができ、炎症性サイトカイン(例えば、IL-8、IL-6、MIP-1α、TNF-αなど)の発現量を低下させ、診断と治療を同時に達成できるという長所を有する。
【0068】
本明細書において、「サイトカイン」という用語は、免疫細胞から分泌されるタンパク質免疫調節剤を意味し、ケモカイン(Chemokine)を含む意味で使用される。
【0069】
前記サイトカインは、IL-8、IL-6、MIP-1α、INF-γ、TNF-α、IL-1β、IL-10などを含む。
【0070】
本発明の好ましい具現例によると、前記薬剤学的組成物は、薬剤学的に許容可能な担体を含む。
【0071】
本発明の好ましい具現例によると、本発明の薬剤学的組成物は、前記抗体又はその断片、ポリヌクレオチド、ベクター又は細胞、及び追加的な抗生剤を含む。
【0072】
前記抗生剤は、好ましくは、ゲンタマイシン(Gentamycin)、アンピシリン(Ampicillin)、カナマイシン(Kanamycin)、クロラムフェニコール(Chloramphenicol)、ストレプトマイシン(Streptomycin)、テトラサイクリン(Tetracycline)、エリスロマイシン(Erythromycin)、バンコマイシン(Vancomycin)、ペニシリン(Penicillin)、スペクチノマイシン(Spectinomycin)、クロラムフェニコール(Chloramphenicol)、スルファジアジン(Sulfaciazine)、及びトリメトプリム(Trimethoprim)を含むが、これに制限されない。
【0073】
本発明の一実施例によると、抗生剤の投与後に本発明のWARS特異的抗体を1回以上投与したり、抗生剤と組み合わせて投与したり、前記抗体の投与後に抗生剤を投与する方式などによって感染疾患を保有した個体の生存率を増加させることができる。
【0074】
本発明の薬剤学的組成物に含まれる薬剤学的に許容される担体は、製剤時に通常用いられるものであって、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微細結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、滑石、ステアリン酸マグネシウム及びミネラルオイルなどを含むが、これに限定されない。本発明の薬剤学的組成物は、前記各成分以外に、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などをさらに含むことができる。適合した薬剤学的に許容される担体及び製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(19th ed.,1995)に詳細に記載されている。
【0075】
本発明の薬剤学的組成物は、経口又は非経口で投与することができ、好ましくは、非経口投与、例えば、静脈内注入、経皮投与、皮下注入、筋肉内注入、硝子体内注入(Intravitreal Injection)、網膜下注入(Subretinal Injection)、脈絡膜上腔注入(Suprachoroidal Injection)、点眼投与(Eye Drop Administration)、脳室内注入(Intracerebroventricular Injection)、髄腔内注入(Intrathecal Injection)、羊膜内注入(Intraamniotic Injection)、動脈内注入(Intraarterial Injection)、関節腔内注入(Intraarticular Injection)、心臓内注入(Intracardiac Injection)、陰茎海綿体内注入(Intracavernous Injection)、脳内注入(Intracerebral Injection)、脳槽内注入(Intracisternal Injection)、冠動脈内注入(Intracoronary Injection)、頭蓋内注入(Intracranial Injection)、硬膜内注入(Intradural Injection)、硬膜外注入(Epidural Injection)、海馬内注入(Intrahippocampal Injection)、鼻腔内注入(Intranasal Injection)、骨腔内注入(Intraosseous Injection)、腹腔内注入(Intraperitoneal Injection)、胸腔内注入(Intrapleural Injection)、脊髓内注入(Iintraspinal Injection)、胸郭内注入(Intrathoracic Injection)、胸腺内注入(Intrathymic Injection)、子宮内注入(Intrauterine Injection)、膣内注入(Intravaginal Injection)、心室内注入(Intraventricular Injection)、膀胱内注入(Intravesical Injection)、結膜下注入(Subconjunctival Injection)、腫瘍内注入(Intratumoral Injection)、局所注入及び腹腔注入(Intraperitoneal Injection)などで投与することができる。
【0076】
本発明の薬剤学的組成物の適合した投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性別、病的状態、食餌、投与時間、投与経路、排泄速度及び反応感応性などの各要因によって多様であり、普通に熟練した医者であれば、所望の治療又は予防に効果的な投与量を容易に決定及び処方することができる。
【0077】
本発明の組成物は、診断又は予防、改善、治療を目的とする対象に薬剤学的に有効な量で投与され得る。前記「薬剤学的に有効な量」とは、陰性対照群に比べてそれ以上の反応を示す量を言う。本発明の抗体又はその断片の総有効量は、単一投与量(Single Dose)で患者に投与されてもよく、多重投与量(Multiple Dose)で長期間投与される分割治療方法(Fractionated Treatment Protocol)によって投与されてもよい。本発明の抗体又はその断片の人体に対する1日投与量は、一般に0.0001~100mg/kgである。しかし、本発明の抗体又はその断片の用量は、薬剤学的組成物の投与経路及び治療回数だけでなく、患者の年齢、体重、健康状態、性別、疾患の重症度、食餌及び排泄率などの多様な要因を考慮した上で患者に対する有効投与量が決定されるので、このような点を考慮するとき、当分野で通常の知識を有する者であれば、本発明の抗体又はその断片に対して本発明の特定の用途による適切な有効投与量を決定することができる。
【0078】
本発明の薬剤学的組成物は、当該発明の属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できる方法によって、薬剤学的に許容される担体及び/又は賦形剤を用いて製剤化することによって単位用量の形態で製造されたり、又は多用量容器内に入り込ませて製造され得る。このとき、剤形は、オイル又は水性媒質中の溶液、懸濁液又は乳化液の形態であったり、エキス剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤又はカプセル剤の形態であってもよく、分散剤又は安定化剤をさらに含むことができる。
【0079】
本発明の更に他の様態によると、本発明は、前記抗体又はその断片、ポリヌクレオチド、ベクター又は細胞の治療用途(for use in therapy)を提供する。
【0080】
本発明の更に他の様態によると、本発明は、前記抗体又はその断片、ポリヌクレオチド、ベクター又は細胞の有効量を対象(Subject)に投与する段階を含む、疾患の治療方法を提供する。
【0081】
本発明において、「対象」という用語は、本発明の組成物を投与する必要がある個体を意味し、哺乳類、鳥類、逝虫類、両生類、魚類などの投与対象に制限がない。
【0082】
本発明の好ましい具現例によると、本発明の治療方法は、抗生剤を投与する段階をさらに含む。
【0083】
本発明の好ましい具現例によると、本発明の治療方法は、前記抗体又はその断片、ポリヌクレオチド、ベクター又は細胞を抗生剤と同時に、抗生剤の投与前、又は抗生剤の投与後に1回以上投与する段階を含む。
【0084】
前記抗生剤は、好ましくは、ゲンタマイシン、アンピシリン、カナマイシン、クロラムフェニコール、ストレプトマイシン、テトラサイクリン、エリスロマイシン、バンコマイシン、ペニシリン、スペクチノマイシン、クロラムフェニコール、スルファジアジン、及びトリメトプリムを含むが、これに制限されない。
【0085】
本発明の一実施例によると、抗生剤の投与後に本発明のWARS特異的抗体を1回以上投与したり、抗生剤と組み合わせて投与したり、前記抗体の投与後に抗生剤を投与する方式などによって感染疾患を保有した個体の生存率を増加させることができる。
【発明の効果】
【0086】
本発明の特徴及び利点を要約すると、次の通りである:
(i)本発明は、トリプトファニルtRNA合成酵素(Tryptophanyl-tRNA Synthetase、WARS)に特異的に結合する抗体又はその断片を提供する。
(ii)本発明の抗体又はその断片は、WARSに特異的に結合する能力に非常に優れるので、他のARS類との交差反応性がなく、WARS検出及び活性抑制能力に優れることによって、感染疾患の診断及び/又は治療用途に効果的に使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0087】
図1a】GKB101をIgG抗体に変換するために使用したベクターの模式図である。図1aは重鎖ベクターを示し、図1bは軽鎖ベクターを示す。
図1b図1aの欄を参照。
図2a】GKB101のターゲット結合力を測定した結果を示す図である。図2aは、GE Biacore T200を使用してヒト及びマウスのWARS1に対するGKB101の結合力を測定した結果を示し、図2bは、ELISAによる吸光度の測定結果を示す。
図2b図2aの欄を参照。
図3a】GKB101を用いたin vitro上での中和能検証結果を示す図である。図3aは、TNF-αの分泌を、図3bは、mCXCL2(ヒトIL-8の同族体)の分泌を減少させた結果を示す。
図3b図3aの欄を参照。
図4a】WARS1特異的抗体が、バクテリア感染したネズミの生存率に及ぼす影響を確認した結果を示す図である。図4aは、ネズミの腹腔にCS(Cecal Slurry)を注入し、重症敗血症を誘発したネズミにPBS又はGKB101を注射した後で生存率を分析した結果を示す。図4b及び図4cは、GKB101の投与によってWARS1の濃度が減少することを確認した結果を示す(図4b:プラズマ、図4c:腹腔液)。図4d乃至図4gは、GKB101の投与によって腹腔液内に分泌されたIL-8(図4e)、IL-6(図4f)、MIP-1α(図4d)、TNF-α(図4g)の濃度が減少することを確認した結果を示す。図4h乃至図4kは、GKB101の投与によってALT(図4h)、AST(図4i)、BUN(図4j)、クレアチニン(Creatinine)(図4k)の濃度が相対的に減少することを確認した結果を示す(円は正常群;四角はPBS群;三角はGKB101群を示す)。
図4b図4aの欄を参照。
図4c図4aの欄を参照。
図4d図4aの欄を参照。
図4e図4aの欄を参照。
図4f図4aの欄を参照。
図4g図4aの欄を参照。
図4h図4aの欄を参照。
図4i図4aの欄を参照。
図4j図4aの欄を参照。
図4k図4aの欄を参照。
図5a】WARS1特異的抗体が、バクテリア感染したネズミの生存率に及ぼす影響を確認した結果を示す図である。図5aは、ネズミの腹腔にCS(Cecal slurry)を注入し、重症敗血症を誘発したネズミにアイソタイプIgG又はGKB101を注射した後で生存率を分析した結果を示す。図5b及び図5cは、GKB101の投与によってWARS1の濃度が減少することを確認した結果を示す(図5b:プラズマ、図5c:腹腔液)。図5d乃至図5gは、GKB101の投与によって腹腔液内に分泌されたIL-8(図5e)、IL-6(図5f)、MIP-1α(図5d)、TNF-α(図5g)の濃度が減少することを確認した結果を示す。図5i乃至図5kは、GKB101の投与によってALT(図5h)、AST(図5i)、BUN(図5j)、クレアチニン(図5k)の濃度が相対的に減少することを確認した結果を示す。
図5b図5aの欄を参照。
図5c図5aの欄を参照。
図5d図5aの欄を参照。
図5e図5aの欄を参照。
図5f図5aの欄を参照。
図5g図5aの欄を参照。
図5h図5aの欄を参照。
図5i図5aの欄を参照。
図5j図5aの欄を参照。
図5k図5aの欄を参照。
図6a】重症敗血症のマウスモデルを用いてGKB101と抗生剤の併用効果を検証した結果を示す図である。図6aは、ゲンタマイシンとGKB101の注入スケジュールを示し、図6bは、ゲンタマイシンとGKB101の注入後の時間による生存率グラフを示す。
図6b図6aの欄を参照。
図7a】マーモセットのエンドトキセミアモデル(Endotoxemia model)を用いたGKB101の効能を検証した結果を示す図である。図7aは、PBSとGKB101の注入スケジュールを示し、図7b乃至図7eは、LPS誘導後のPBS又はGKB101投与群の時間による体温(図7b)、体重(図7c)、血液内のWBC(図7d)及び好中球(Neutrophil)(図7e)の変化を示す。図7fは、GKB101の投与によるプラズマ内のWARS1のレベルを示し、図7gは、TNF-αのレベルを測定した結果を示す。
図7b図7aの欄を参照。
図7c図7aの欄を参照。
図7d図7aの欄を参照。
図7e図7aの欄を参照。
図7f図7aの欄を参照。
図7g図7aの欄を参照。
【発明を実施するための形態】
【0088】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明する。これらの実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものに過ぎなく、本発明の要旨に従って、本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されないことは、当業界で通常の知識を有する者にとって自明であろう。
【実施例
【0089】
実施例1.scFv抗体のIgG1抗体への転換
WARS1(配列リストの第26配列)に対して特異的に結合するscFv抗体として、重鎖CDR1(配列リストの第3配列)、重鎖CDR2(配列リストの第4配列)、及び重鎖CDR3(配列リストの第5配列)を含む重鎖可変領域(Heavy chain variable region、配列リストの第1配列)と、軽鎖CDR1(配列リストの第6配列)、軽鎖CDR2(配列リストの第7配列)、及び軽鎖CDR3(配列リストの第8配列)を含む配列リストの第2配列の軽鎖可変領域(Light chain variable region)とを含むscFv抗体を選別した。選別されたscFv抗体は、重鎖ベクター(Heavy chain vector)(図1a)と軽鎖ベクター(Light chain vector)(図1b)に挿入し、プラスミド(plasmid)DNAベクターをクローニングした。まず、scFvを暗号化するポリヌクレオチドをPCRで増幅した。前記scFvのCDR領域の遺伝子を増幅するのに使用したプライマーの塩基配列は、次の通りである:
フォワード(Forward)(gtggccacagcggccgatgtccactcggaagtacagttggtcgaaagtggc、配列リストの第9配列)、
リバース(Reverse)(gaagaccgatgggcccttggtgctagccgatgagacggtcactaaagtgcc、配列リストの第10配列)。
【0090】
scFvのVL領域の遺伝子を増幅するのに使用したプライマーの塩基配列は、次の通りである:
フォワード(gccacagcggccgatgtccactcggacattcaaatgacgcagagtccctc、配列リストの第11配列)、
リバース(gaagacagatggtgcagccacagatcttttaatttccactttagttccctgcc、配列リストの第12配列)。
【0091】
前記scFv抗体を用いた単一クローン抗体(以下、GKB101と命名する)の製造のために使用したIgG変換(conversion)方法は、次の通りである:
【0092】
GKB101のIgG変換のための重鎖と軽鎖は、ハーセプチン(Herceptin)を発現する親ベクターであるpOptiVECとpcDNA 3.3でそれぞれ遺伝子を増幅した(図1a及び図1b)。前記CH(VH3-23)とCL領域の遺伝子を増幅するのに使用したプライマー塩基配列は、次の通りである:
CHフォワード(ggcactttagtgaccgtctcatcggctagcaccaagggcccatcggtcttc、配列リストの第13配列)、
CHリバース(gccactttcgaccaactgtacttccgagtggacatcggccgctgtggccac、配列リストの第14配列)、
CLフォワード(ggcagggaactaaagtggaaattaaaagatctgtggctgcaccatctgtcttc、配列リストの第15配列)、
CLリバース(gagggactctgcgtcatttgaatgtccgagtggacatcggccgctgtggc、配列リストの第16配列)。
【0093】
GKB101のIgG変換のためのFab2(VH-1-69)は、PCRを通じて増幅させ、挿入(Insert)としては、VH1-69_Forward(gtggccacagcggccgatgtccactcgcaagttcagctggtccagagcggc、配列リストの第17配列)、VH1-69_Reverse(gaagaccgatgggcccttggtgctagccgatgagacggtaaccagagtaccc、配列リストの第18配列)を、ベクター(Vector)としては、CH1-69_Forward(gccgctctggaccagctgaacttgcgagtggacatcggccgctgtggccacc、配列リストの第19配列)、CH1-69_Reverse(gggtactctggttaccgtctcatcggctagcaccaagggcccatcggtcttc、配列リストの第20配列)を用いた。
【0094】
それぞれのベクターテンプレート(Vector template)(pcDNA3.3-Herceptin_CL、pOptiVEC-Herceptin_CH)と挿入テンプレート(Insert template)(scFv、Fab phage vector)は、前記プライマー(それぞれ10pmol)を用いて95℃/3min;95℃/30sec、60℃/30sec、72℃/30sec、30cycles;72℃/5minの条件でPCRを行い、GKB101変換のためのGKB101のVH、VL、ハーセプチン発現ベクターのCH、CL及びVH 1-69遺伝子を増幅した。PCR産物は、DpnI制限酵素を用いてIgG生産に使用されるベクターに挿入した。前記製造された、scFvの可変領域を含むIgGの軽鎖と重鎖を暗号化するDNAを含むベクターは、Expi293F細胞に共同で形質転換させ、軽鎖と重鎖が細胞内で共に発現されるようにした。
【0095】
実施例2.一過性トランスフェクション(Transient transfection)及びカラムを用いた分離精製
一時的発現システムを通じたタンパク質の精製のために、ExpiHEK293(Thermofisher)細胞株とFreestype293発現培地(expression media)(Thermofisher)を使用した。トランスフェクション(Transfection)は、Expifectamine 293(Thermofisher)試薬(reagent)と、GKB101の重鎖と軽鎖が1:1の比率のプラスミドDNAを用いた。トランスフェクション後、細胞は、約5日間振盪培養し、細胞培養薬は、遠心分離を通じて上清液のみを回収し、これをタンパク質の分離及び精製過程に用いた。回収した上清液は、Hitrap MabselectSureカラム(GE Healthcare Life Sciences)にローディングした後、PBSで洗浄しながら非特異的結合を除去し、100mMのクエン酸バッファー(Citrate buffer)(pH3.0)+50mMのNaClを用いてカラムに特異的に結合するタンパク質を一次分離した。FPLCで得た溶出液(Elute)は、サイズ排除クロマトグラフィー(Size Exclusion Chromatography)(GE Healthcare Life Sciences)にローディングし、高純度のGKB101を得た。一時的発現システムの最適化コンディションを通じて得たGKB101の最終収得率は、500mlの細胞培養液を基準にして合計37mgで、内毒素は0.002EU/gのレベルであった。
【0096】
前記過程を通じて製造されたGKB101抗体の配列は、次の通りである:
【表1】
【0097】
実施例3.GKB101のターゲット結合力測定
1)SPR:Series S Sensor CM5チップ(GE Healthcare Life Sciences)とGE Bioacore T200を用いて結合力を測定した。バッファーとしては、HBS-EP(GE Healthcare Life Sciences)を使用し、GKB101又は緩衝液の連続希釈液を30μl/minの流速で1分~10分間注入し、分析物によって20分間洗浄した。
【0098】
2)ELISA:GKB101を1μg/mlの濃度で96ウェルプレート(Maxisorp、Thermofisher)にコーティングした後、1%のBSAが含まれているPBSで常温で1時間にわたってブロッキングした。組換えWARS1タンパク質を濃度依存的に希釈し、コーティングされた各ウェルに入れてから常温で1時間にわたって反応させた後、PBST(PBS+Tween20)で4回洗浄した。各ウェルに抗WARS1抗体(Abfrontier)を入れてから常温で1時間にわたって反応させた後、PBSTで4回洗浄した。HRPが付いている2次抗体で(anti-Human IgG、cell-signaling)1時間にわたって反応させた後、PBSTで洗浄した。TMB基質(substrate)(BD)で発色した後、490nmで吸光度を測定した(VersaMax Microplate reader)。
【0099】
3)免疫ブロット(Immunoblot):WARS1ヒト及びマウス組換えタンパク質の各20ngと、LPSで24時間刺激を与えたヒト単核球細胞株THP-1とマウス大食細胞株J774.1Aの細胞培養上清液の各30μgを8%のSDS-PAGEにローディングした後、PVDFメンブレン(membrane)(Millipore)に移動した。メンブレンは、GKB101 1μg/mlで1時間にわたって反応させた後、TBST(TBS+Tween20)で3回洗浄した。2次抗体(anti-human IgG HRP、Millipore)は、1時間にわたって反応させた後、TBSTで3回洗浄した。その後、ECL(West(R) bright ECL、Advanta)を用いて発色させた(LAS-4000、Fujifilm)。
【0100】
4)結果:組換えWARS1タンパク質に対するGKB101の結合力を測定・比較した結果、ELISAとSPRの全てでヒトWARS1に強い結合力を示し、ヒトの組換えタンパク質に対しては約0.2nMのレベル、マウス組換えタンパク質では約3.76nMの高い結合力をそれぞれ示した(図2a)。また、免疫ブロット実験において、組換えタンパク質だけでなく、ヒト単核球及びマウス大食細胞株の培養上清液内のWARS1をGKB101を通じて効果的に検出することができた(図2b)。
【0101】
実施例4.WARS1特異的抗体のin vitro上での中和能検証
WARS1特異的抗体であるGKB101がin vitroで中和能を有するかどうかを調査するために、マウス大食細胞株J774.1Aを用いて実験を進行した。マウス大食細胞の培養液としては、10%のFBS、1%のペニシリン-ストレプトマイシン(penicillin-streptomycin)の高グルコース(high Glucose)DMEM(Gibco)を使用した。1日前に、48ウェル細胞培養プレート(Nunc)に1ウェル当たり8×10の数の細胞を敷いた後、細胞は、抗原-抗体混合物を細胞に処理する2時間前にプレーンDMEMに敷いた。組換えタンパク質WARS1 200nMとGKB101を濃度別に混ぜてから、37℃のインキュベーターで2時間にわたって混合した後、各細胞が敷かれているウェルに混合物をそれぞれ追加的に入れた。約15時間後、培養液を遠心分離しながら上清液を取得し、これを用いてCXCL2(R&D)及びTNF-α(Biolegend)を測定した。ELISAは、各製造社の方法論に従って進行した。
【0102】
マウスの大食細胞において、GKB101は、200nMのWARS1に対してモル数比率依存的に、TNF-αの分泌が1:2.5と1:5で有意に減少した(図3a)。mCXCL2(mouse IL-8 homolog)において1:5と1:2.5で減少する傾向を示し、1:2.5で統計的に有意な差を示した(図3b)。全ての結果は、ANOVA統計プログラムを使用して分析した。
【0103】
実施例5.WARS1特異的抗体が、バクテリア感染したネズミの生存率に及ぼす影響
マウスにCSを注入し、重症敗血症を誘発した後、PBS又はGKB101は、CSを腹腔に注入してから4時間又は20時間に2.5mg/kgでそれぞれi.vで2回ずつ注入し、60時間まで生存分析を実施した。
【0104】
WARS1及びサイトカイン分析:GKB101のWARS1の中和能を確認するために5時間、11時間、18時間及び20時間にわたって腹腔液及び血液を採取し、これを用いてWARS1(in house)及びTNF-α(Biolegend)、MIP-1α(R&D)、mIL-6(Biolegend)、mCXCL2(IL-8 homolog、R&D)をELISAで測定した。WARS1を除外したサイトカインELSIAは、各製造社の方法論に従って進行した。WARS1の測定は、次の通りである:GKB101を1μg/mlの濃度で96ウェル(Maxisorp、Thermofisher)にコーティングした後、1%のBSAが含まれているPBSで常温で1時間にわたってブロッキングした。プラズマ、腹腔液サンプル及び組換えマウス組換えタンパク質を希釈したスタンダードをそれぞれブロッキングしたウェルに入れ、常温で1時間にわたって反応させた後、PBST(PBS+Tween20)で4回洗浄した。各ウェルに抗WARS1抗体(Abfrontier)を入れてから常温で1時間にわたって反応させた後、PBSTで4回洗浄した。HRPが付いている2次抗体で(anti-Human IgG、cell-signaling)1時間にわたって反応させた後、PBSTで洗浄した。TMB基質(BD)で発色した後、490nmで吸光度を測定した(VersaMax Microplate reader)。
【0105】
血液を用いた生化学的検査:血液の一部をクロットアクティベーター(clot activator)が入っているバキュテナー(vacutainer)に注入し、10分乃至15分間常温に放置して凝固させた。その後、3000rpmで10分間遠心分離して得た血清で血液生化学分析機(7180 Hitachi、Japan)を使用してAST(aspartate aminotransferase)、ALT(alanin aminotransferase)、BUN(blood urea nitrogen)、及びクレアチニンを測定した。
【0106】
GKB101がネズミの生存率に及ぼす影響を確認するために、図4aの実験概要によってネズミを用いた動物実験を進行し、生存分析を実施した。ネズミの腹腔にCS(Cecal slurry)を注入し、重症敗血症を誘発したネズミにPBS又はGKB101を4時間及び20時間にそれぞれi.vで注射した。感染後、60時間までネズミの生存率を示した。その結果、CS+PBS(重症敗血症の誘発後にPBS注射)は、生存率が29時間に50%で、41時間に20%であったが、CS+GKB101(重症敗血症の誘発後にGKB101注射)は、生存率が29時間に80%、41時間には50%であって、生存率がPBSより増加した。腹腔液(図4c)及びプラズマ(図4b)において、WARS1の濃度がGKB101によって11時間又は18時間に有意に減少し、腹腔液内に分泌されたIL-8(図4e)、IL-6(図4f)、MIP-1α(図4d)、TNF-α(図4g)も、11時間又は18時間に有意に減少することが確認された。ALT(図4h)、AST(図4i)、BUN(図4j)、クレアチニン(図4k)で相対的に減少した傾向を示し、ALT、BUNの11時間の場合、PBSに比べてGKB101注入群で有意に減少する傾向を示した。全ての結果は、ANOVA統計プログラムを使用して分析した(*、P<0.05;**、P<0.01;***、P<0.001)。
【0107】
実施例6.WARS1特異的抗体が、バクテリア感染したネズミの生存率に及ぼす影響2
マウスにCSを注入し、重症敗血症を誘発した後、アイソタイプIgG又はGKB101は、4時間、8時間及び12時間にそれぞれ5mg/kg、2.5mg/kg、2.5mg/kgで、全てのマウス当たり10mg/kgでそれぞれi.pで3回注入し、72時間まで生存分析を実施した。
【0108】
WARS1及びサイトカイン分析:GKB101のWARS1の中和能を確認するために腹腔に注入した後、2時間後である6時間、10時間及び14時間に腹腔液及び血液を採取し、これを用いてWARS1(in house)及びTNF-α(Biolegend)、MIP-1α(R&D)、mIL-6(Biolegend)、mCXCL2(IL-8 homolog、R&D)をELISAで測定した。WARS1を除外したサイトカインELSIAは、各製造社の方法論に従って進行した。WARS1の測定は、次の通りである:GKB101を1μg/mlの濃度で96ウェルプレート(Maxisorp、Thermofisher)にコーティングした後、1%のBSAが含まれているPBSで常温で1時間にわたってブロッキングした。プラズマ、腹腔液サンプル及び組換えマウス組換えタンパク質を希釈したスタンダードをそれぞれブロッキングしたウェルに入れてから、常温で1時間にわたって反応させた後、PBST(PBS+Tween20)で4回洗浄した。各ウェルに抗WARS1抗体(Abfrontier)を入れてから常温で1時間にわたって反応させた後、PBSTで4回洗浄した。HRPが付いている2次抗体で(anti-Human IgG、cell-signaling)1時間にわたって反応させた後、PBSTで洗浄した。TMB基質(BD)で発色した後、490nmで吸光度を測定した(VersaMax Microplate reader)。
【0109】
GKB101がネズミの生存率に及ぼす影響を確認するために、図5aの実験概要によってネズミを用いた動物実験を進行し、生存分析を実施した。ネズミの腹腔にCS(Cecal slurry)を注入し、重症敗血症を誘発したネズミにアイソタイプIgG又はGKB101を4時間、8時間及び12時間にそれぞれi.pで注射した。感染後、72時間までネズミの生存率を示した。その結果、CS+アイソタイプIgG(重症敗血症の誘発後、アイソタイプIgG注射)は、生存率が28時間に20%で、36時間に10%であったが、CS+GKB101(重症敗血症の誘発後、GKB101注射)は、生存率が28時間に80%、36時間には70%であって、生存率がアイソタイプIgGより著しく増加した(図5a)。腹腔液(図5c)及びプラズマ(図5b)において、WARS1の濃度がGKB101によって6時間、10時間及び14時間に減少し、腹腔液内に分泌されたIL-8(図5e)、IL-6(図5f)、MIP-1α(図5d)、TNF-α(図5g)も、GKB101の注入後に減少する傾向を示し、特に、14時間にIL-8、MIP-1α、TNF-αで有意に減少した。ALT(図5h)、AST(図5i)、BUN(図5j)、クレアチニン(図5k)で相対的に減少した傾向を示し、ALT、BUNの14時間の場合、アイソタイプIgGに比べてGKB101注入群で有意に減少する傾向を示した。全ての結果は、ANOVA統計プログラムを使用して分析した(*、P<0.05;**、P<0.01;***、P<0.001)。
【0110】
実施例7.WARS1特異的抗体及び抗生剤が、バクテリア感染したネズミの生存率に及ぼす影響
CSを注入し、重症敗血症を誘発したマウスに抗生剤(ゲンタマイシン)を投与した後、アイソタイプIgG又はGKB101は、4時間、8時間又は20時間にそれぞれ5mg/kg、2.5mg/kg、2.5mg/kgで、全てのマウス当たり10mg/kgでi.vで注入し、72時間まで生存分析を実施した。
【0111】
CS誘発マウスにおいて、GKB101の抗生剤併用効果による生存率を分析した結果、GKB101投与群では、24時間には80%で、72時間には70%であって、アイソタイプIgG投与群との間で有意な生存率の差を示した。全ての結果は、ANOVA統計プログラムを使用して分析した(図6)。
【0112】
実施例8.マーモセットのエンドトキセミアモデルを用いたGKB101の効能検証
マーモセット(Callithrix jacchus)は、五松先端医療産業振興財団の実験動物センター(忠北、大韓民国)から入手した。全ての一般的なマーモセットは、ステンレススチールケージで飼育された。SPF動物施設において、12時間の夜明けと12時間の夕暮れの条件の温度27±2℃、湿度30%乃至70%で、一般的なマーモセットは、標準マーモセット食餌(非ヒト霊長類-維持管理、#0639;Altromin、Lage、Germany)と水を任意に提供した。全てのプロトコルは、五松先端医療産業振興財団の実験動物センターの動物保護委員会の承認を受けた。LPSをマーモセットに注入した後、エンドトキセミアを誘発した後、PBS又はGKB101を0.2時間及び2時間に2回、合計2mg/kgでi.v注入してから24時間にわたって観察した。
【0113】
マーモセットのエンドトキセミアモデルでの血中免疫細胞の数を確認した結果、抗WARS1抗体を投与した群では、12時間にWBCと好中球が有意に増加した(*、P<0.05、**、P<0.01)。また、血液でGKB101投与がWARS1、サイトカイン及びケモカインの発現に及ぼす影響を比較した結果、血液タンパク質内の抗WARS1抗体であるGKB101を投与した実験群では、WARS1が0.5時間、1時間、2時間、4時間及び8時間に有意に減少し(****、P<0.0001)、TNF-αは1時間及び2時間に有意に減少した(2時間、****、P<0.0001)。全ての結果は、ANOVA統計プログラムを使用して分析した(図7)。
【0114】
前記実施例の各結果によると、GKB101がWARS1にシングルnM以下の強い結合力を有しており、in vivo及びin vitro上でWARS1によって発現されるサイトカインの発現を減少させる中和能を有している。以上説明したように、本発明の組成物は、感染に対して初期過炎症を誘発する最上位物質であるWARS1を特異的に検出し、これを標的に抑制する抗体医薬品としての開発目的で使用され得る、産業上の利用可能性が高いものと期待される。
【0115】
以上、本発明の各実施例に対して説明したが、該当の技術分野で通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載の本発明の思想から逸脱しない範囲内で、構成要素の付加、変更、削除又は追加などによって本発明を多様に修正及び変更可能であり、これも本発明の権利範囲内に含まれると言えるだろう。
図1a
図1b
図2a
図2b
図3a
図3b
図4a
図4b
図4c
図4d
図4e
図4f
図4g
図4h
図4i
図4j
図4k
図5a
図5b
図5c
図5d
図5e
図5f
図5g
図5h
図5i
【図 】
図5j
図5k
図6a
図6b
図7a
図7b
図7c
図7d
図7e
図7f
図7g
【配列表】
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