(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】ターゲット対象物分離装置および方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/26 20060101AFI20241120BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
C12M1/26
C12M1/00 A
(21)【出願番号】P 2023533268
(86)(22)【出願日】2023-03-16
(86)【国際出願番号】 KR2023003496
(87)【国際公開番号】W WO2023210966
(87)【国際公開日】2023-11-02
【審査請求日】2023-05-31
(31)【優先権主張番号】10-2022-0052701
(32)【優先日】2022-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518232386
【氏名又は名称】クリオシス インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】4F, IS BLDG., 10, TEHERAN-RO 38-GIL, GANGNAM-GU, SEOUL 06221, REPUBLIC OF KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】ユン,ホ・ヨン
(72)【発明者】
【氏名】カン,ミョン・ウ
(72)【発明者】
【氏名】シン,テ・ファン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ユ・ジン
(72)【発明者】
【氏名】シン,ソン・ギュ
【審査官】▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-502936(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0108787(US,A1)
【文献】特表2005-509883(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-3/10
B01L 3/00
G01N37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細粒子を含む流体が注入される注入部;
前記注入された流体が流動する過程で、ターゲット対象物が一定方向に集中して流動するようにする通路
部;および
前記一定方向
の終端に集中したターゲット対象物を獲得するターゲット対象物獲得部を含み、
前記通路部は前記流体の主流動方向に垂直な方向に溝形態を有する複数の陰刻構造物を含み、
前記注入部、前記通路部、および前記ターゲット対象物獲得部のうち少なくとも一つは、前記複数の陰刻構造物外の領域に配置される
複数の柱構造物を含
み、
および
前記複数の柱構造物間の間隔は、前記陰刻構造物の長さより広いか同じである、
ターゲット対象物分離装置。
【請求項2】
前記ターゲット対象物分離装置は、ノン-ターゲット(non-target)対象物排出部をさらに含む、請求項1に記載のターゲット対象物分離装置。
【請求項3】
前記ターゲット対象物は、前記複数の陰刻構造物によって前記流体の主流動方向に垂直な方向に二次流動が発生して一定方向に集中する、請求項1に記載のターゲット対象物分離装置。
【請求項4】
前記通路部は、前記注入部から前記ターゲット対象物獲得部間の領域の少なくとも一部に延びて形成される高速チャンネル部を
さらに含む、請求項1に記載のターゲット対象物分離装置。
【請求項5】
前記複数の陰刻構造物は、前記高速チャンネル部以外の通路部に配置される、請求項4に記載のターゲット対象物分離装置。
【請求項6】
前記高速チャンネル部は、前記微細粒子が濃縮され
る前記通路部の一側に深さ方向の溝型チャンネルで形成される、請求項4に記載のターゲット対象物分離装置。
【請求項7】
前記高速チャンネル部は、前記通路部の幅の0.1%ないし50%の幅を有する、請求項4に記載のターゲット対象物分離装置。
【請求項8】
前記複数の陰刻構造物によって形成される微細パターンは曲線形態を有する、請求項1に記載のターゲット対象物分離装置。
【請求項9】
前記複数の陰刻構造物は、前記微細粒子分離装置の底面または天井面に配置され、前記複数の陰刻構造物は、複数個が互いに断絶して形成される、請求項1に記載のターゲット対象物分離装置。
【請求項10】
前記複数の陰刻構造物は、直線形態の微細パターンを形成し、前記直線形態の微細パターンは、前記流体の主流動方向に対して45度ないし135度の角度を有する、請求項1に記載のターゲット対象物分離装置。
【請求項11】
前記複数の陰刻構造物は、開始箇所である第1点から終了箇所である第2点まで形成される曲線形態の微細パターンを形成し、
前記曲線の前記第1点の接線は、前記流体の主流動方向に対して45度ないし135度の角度を有し、
前記曲線の前記第2点の接線は、前記流体の主流動方向に対して0度ないし75度または105度ないし180度の角度を有する、請求項1に記載のターゲット対象物分離装置。
【請求項12】
前記ターゲット対象物が白血球である場合、前記ノン-ターゲット対象物排出部には赤血球が獲得され、
前記ターゲット対象物が血漿である場合、前記ノン-ターゲット対象物排出部では血球が獲得され、
前記ターゲット対象物が細胞である場合、前記ノン-ターゲット対象物排出部では前記細胞が除去された培養液が獲得される、請求項2に記載のターゲット対象物分離装置。
【請求項13】
前
記複数の柱構造物間の間隔は、獲得しようとする微細粒子の直
径より広いか同じである、請求項1に記載のターゲット対象物分離装置。
【請求項14】
ターゲット対象物分離装置を利用して流体からターゲット対象物を分離するターゲット対象物の分離方法であって、
注入部に微細粒子を含む流体を注入させるステップ;および
ターゲット対象物獲得部で、前記注入された流体が通路部で流動する過程で一定方向に集中したターゲット対象物を獲得するステップを含み、
前記通路部は、前記流体の主流動方向に垂直な方向に溝形態を有する複数の陰刻構造物を含み、
前記注入部、前記通路部および前記ターゲット対象物獲得部のうち少なくとも一つは、前記複数の陰刻構造物外の領域に配置される
複数の柱構造物を含
み、
前記複数の柱構造物間の間隔は、前記陰刻構造物の長さより広いか同じである、
ターゲット対象物の分離方法。
【請求項15】
前記ターゲット対象物の分離方法は、ノン-ターゲット(non-target)対象物排出部でノン-ターゲット対象物を獲得するステップをさらに含む、請求項14に記載のターゲット対象物の分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ターゲット対象物分離装置および方法に関し、より具体的に、装置内部に溝、構造物などを配置してターゲット対象物の分離を円滑に遂行する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞などのような微細粒子または血漿を分離および濃縮する試料前処理技術は、生物学的研究,体外診断,治療,製薬など多様な分野において非常に重要な役割をする。このような特定微細粒子または血漿を分離および濃縮するために、主に細胞間密度差を通じて微細粒子または血漿を分離および濃縮する遠心分離機が使用される。しかし、遠心分離機は多くの量のサンプルを処理する際に有用であるが、少ない量を高効率で処理するには限界があり、高価な装備であり、微細粒子または血漿に物理的に損傷を加える危険も存在する。
【0003】
これによって、近年、マイクロ流体チップ基盤の微細粒子または血漿の分離および濃縮技術が開発されているが、これは、数十マイクロメーターから数ミリメートルのチャンネル内に流動を操作することができる任意の構造物を設置して、微細粒子または血漿を分離および濃縮する技術である。マイクロ流体チップ基盤の微細粒子または血漿分離および濃縮技術によると、少ない試薬と少ない動力で分離および濃縮が可能であり、携帯性が高く、低い費用で迅速な分析および検出が遂行され得る。
【0004】
しかし、現存するマイクロ流体チップは、チップの製造工程上の熱変形によるチャンネル中央部の垂れ現象が発生し、一部に逆方向流線によって細胞濃縮効果が低下する問題点がある。これによって、優れた微細粒子分離および濃縮機能を遂行しながらもチャンネル中央部の垂れ現象および逆方向流線による濃縮効果低下現象を解決するための研究が必要な実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】韓国公開特許第2011-0005963号公報(公開日:2011.01.20.)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の一実施例は、優れたターゲット対象物の分離および濃縮機能を遂行するターゲット対象物分離装置および方法を提供するためのものである。
また、本開示の一実施例は、マイクロ流体チップのチャンネル中央部の垂れ現象を解決しようとする。
また、本開示の一実施例は、逆方向流線によって濃縮効果が低下する現象を解決しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施例は、優れたターゲット対象物分離および濃縮機能を遂行するターゲット対象物分離装置および方法を提供しようとする。
【0008】
本開示の一実施例は、微細粒子を含む流体が注入される注入部;前記注入された流体が流動する過程で、ターゲット対象物が一定方向に集中して流動するようにする通路部を含むターゲット対象物分離装置を提供しようとする。前記通路部は、前記流体の主流動方向に垂直な方向に溝形態を有する複数の陰刻構造物を含むことができる。また、ターゲット対象物分離装置は、前記一定方向に集中したターゲット対象物を獲得するターゲット対象物獲得部をさらに含み、前記注入部、前記通路部および前記ターゲット対象物獲得部のうち少なくとも一つは、前記複数の陰刻構造物外の領域に配置される柱構造物を含むことができる。
【0009】
一実施例において、前記ターゲット対象物分離装置は、ノン-ターゲット(non-target)対象物排出部をさらに含むことができる。
【0010】
一実施例において、前記ターゲット対象物は、前記複数の陰刻構造物によって前記流体の主流動方向に垂直な方向に二次流動が発生して一定方向に集中することができる。
【0011】
一実施例において、前記ターゲット対象物分離装置は、前記注入部から前記ターゲット対象物獲得部間の領域の少なくとも一部に延びて形成される高速チャンネル部を含むことができる。
【0012】
一実施例において、前記複数の陰刻構造物は、前記高速チャンネル部には配置されなくてよい。例えば、複数の陰刻構造物は、高速チャンネル部以外の通路部に配置されることができる。
【0013】
一実施例において、前記高速チャンネル部は、前記微細粒子が濃縮される方向に対応される前記通路部の一側に深さ方向の溝型チャンネルで形成されることができる。
【0014】
一実施例において、前記高速チャンネル部は、前記通路部の幅の0.1%ないし50%の幅を有することができる。
【0015】
一実施例において、前記複数の陰刻構造物によって形成される微細パターンは曲線形態を有することができる。
【0016】
一実施例において、前記複数の陰刻構造物は、前記微細粒子分離装置の底面または天井面に配置され、前記複数の陰刻構造物は、複数個が互いに断絶して形成されることができる。
【0017】
一実施例において、前記複数の陰刻構造物は、直線形態の微細パターンを形成し、前記直線形態の微細パターンは、前記流体の主流動方向に対して45度ないし135度の角度を有することができる。
【0018】
一実施例において、前記複数の陰刻構造物は、開始箇所である第1点から終了箇所である第2点まで形成される曲線形態の微細パターンを形成し、前記第1点の接線は、前記流体の主流動方向に対して45度ないし135度の角度を有し、前記第2点の接線は、前記流体の主流動方向に対して0度ないし75度または105度ないし180度の角度を有することができる。
【0019】
一実施例において、前記ターゲット対象物が白血球である場合、前記ノン-ターゲット対象物排出部には赤血球が獲得され、前記ターゲット対象物が血漿である場合、前記ノン-ターゲット対象物排出部では血球が獲得され、前記ターゲット対象物が細胞である場合、前記ノン-ターゲット対象物排出部では前記細胞が除去された培養液が獲得され得る。
【0020】
一実施例において、前記柱構造物の高さは前記通路部の高さに対応され、前記柱構造物は、円,楕円,流線形または丸い多角形の断面を有する柱形態を有し、前記柱形態の断面の最大長さは、(前記通路部の高さ)/(前記断面の最大長さ)が特定値を超えないように決定することができる。
【0021】
一実施例において、前記柱構造物が複数個存在する場合、複数の柱構造物間の間隔は、獲得しようとする微細粒子の直径または前記陰刻構造物の長さより広いか同一とすることができる。
【0022】
本開示の一実施例は、ターゲット対象物分離装置を利用して流体からターゲット対象物を分離するターゲット対象物の分離方法であって、注入部に微細粒子を含む流体を注入させるステップ;およびターゲット対象物獲得部で、前記注入された流体が通路部で流動する過程で一定方向に集中したターゲット対象物を獲得するステップを含み、前記通路部は、前記流体の主流動方向に垂直な方向に溝形態を有する複数の陰刻構造物を含み、前記注入部、前記通路部、および前記ターゲット対象物獲得部のうち少なくとも一つは、前記複数の陰刻構造物外の領域に配置される柱構造物を含む、ターゲット対象物の分離方法を提供しようとする。
【0023】
一実施例において、前記ターゲット対象物の分離方法は、ノン-ターゲット(non-target)対象物排出部でノン-ターゲット対象物を獲得するステップをさらに含むことができる。
【0024】
一実施例において、前記ターゲット対象物は、前記複数の陰刻構造物によって前記流体の主流動方向に垂直な方向に流動が発生して一定方向に集中することができる。
【0025】
一実施例において、前記ターゲット対象物分離装置は、前記注入部から前記ターゲット対象物獲得部間の領域の少なくとも一部に延びて形成される高速チャンネル部を含むことができる。
【発明の効果】
【0026】
本開示の一実施例によれば、ターゲット対象物を効率的に分離および濃縮することができる。
【0027】
また、本開示の一実施例によれば、マイクロ流体チップのチャンネル中央部の垂れ現象を解決することができる。
【0028】
また、本開示の一実施例によれば、逆方向流線によって濃縮効果が低下する現象を解決することができる。
【0029】
また、本開示の一実施例によれば、マイクロ流体チップには曲線形態の傾斜構造物である微細パターンが形成されており、曲線形態の傾斜構造物は直線形態の傾斜構造物に比べて二次流動の流速を大きく向上させることができ、この向上した流速は、血漿、細胞または微細粒子の分離性能を大きく増加させ得る効果を有する。またこのような効果を有する本開示によるマイクロ流体チップを使用することで、既存の細胞分離および濃縮技術より使用性に優れ、細胞の損傷を最小化することができ、さらにマイクロ流体チップ技術基盤の細胞分離および濃縮技術は一般的な細胞培養基盤の実験過程から幹細胞および免疫細胞治療剤の開発/生産工程まで適用可能な効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1a】本開示の一実施例によるターゲット対象物分離装置の構成を概略的に示した図である。
【
図1b】
図1aのターゲット対象物分離装置の一部を拡大した図である。
【
図1c】
図1aのターゲット対象物分離装置の微細パターンの傾斜度を説明する図である。
【
図2a】本開示の一実施例によるターゲット対象物分離装置の構成を概略的に示した図である。
【
図2b】
図2aのターゲット対象物分離装置の一部を拡大した図である。
【
図2c】
図2aのターゲット対象物分離装置の微細パターンの傾斜度を説明する図である。
【
図3】本開示の一実施例による微細粒子分離装置の断面を概略的に示した図である。
【
図4】本開示の一実施例による高速チャンネル部を含む微細粒子分離装置の断面を概略的に示した図である。
【
図5】本開示の一実施例によるチャンネル中央部の垂れ現象が存在するターゲット対象物分離装置の断面を概略的に示した図である。
【
図6】本開示の一実施例によるチャンネル中央部の垂れ現象を解決したターゲット対象物分離装置の断面を概略的に示した図である。
【
図7a】本開示の一実施例による溝形態を有する複数の陰刻構造物によって微細粒子が分離する過程を示す図である。
【
図7b】本開示の一実施例による溝形態を有する複数の陰刻構造物によって微細粒子が分離する過程を示す図である。
【
図7c】本開示の一実施例による溝形態を有する複数の陰刻構造物によって微細粒子が分離する過程を示す図である。
【
図8】本開示の一実施例による複数の陰刻構造物の配列と配置を示す概略図である。
【
図9a】本開示の一実施例による直線形態を有する微細パターンの形状による細胞分離性能をシミュレーションした図である。
【
図9b】本開示の一実施例による曲線形態を有する微細パターンの形状による細胞分離性能をシミュレーションした図である。
【
図10a】本開示の一実施例による曲線形態を有する微細パターンの形状による細胞分離性能を実験した結果を示す図である。
【
図10b】本開示の一実施例による曲線形態を有する微細パターンの形状による細胞分離性能を実験した結果を示す図である。
【
図11a】本開示の一実施例による高速チャンネル部が存在しない場合のターゲット対象物の分離性能を示す図である。
【
図11b】本開示の一実施例による高速チャンネル部が存在する場合のターゲット対象物の分離性能を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本開示の技術的思想を明確にするために、添付の図面を参照して本開示の実施例を詳細に説明する。本開示を説明するに当たり、関連した公知機能または構成要素に対する具体的な説明が本開示の要旨を不要に曇らすことができると判断される場合、その詳細な説明を省略する。図面のうち実質的に同一の機能構成を有する構成要素に対しては、たとえ他の図面上に示されるとしても、できるだけ同一の参照番号および符号を付与した。説明の便宜のために、必要な場合には装置と方法を一緒に叙述するようにする。本開示の各動作は、必ずしも記載した順序どおり遂行されなければならない必要はなく、並列的、選択的、または個別的に遂行されてよい。
【0032】
本開示の実施例で使用される用語は、本開示の機能を考慮してできるだけ現在広く使用される一般的な用語を選択したが、これは当分野に携わる技術者の意図または判例、新たな技術の出現などによって変わり得る。また、特定の場合は、出願人が任意に選定した用語もあり、この場合、該当する実施例の説明部分で詳細にその意味を記載するだろう。したがって、本明細書で使用される用語は単なる用語の名称ではなく、その用語が有する意味と本開示の全般に亘った内容に基づいて正義されなければならない。
【0033】
本開示の全体で単数の表現は、文脈上明白に異なるように意図しない限り、複数の表現を含むことができる。「含む」または「有する」などの用語は、特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、ステップ、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないものと理解されなければならない。すなわち、本開示全体で、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、これは特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0034】
「少なくとも一つの」のような表現は、構成要素のリスト全体を修飾し、そのリストの構成要素を個別的に修飾しない。例えば、「A、B、およびCのうち少なくとも一つ」および「A、B、またはCのうち少なくとも一つ」は、ただA、ただB、ただC、AとBのいずれも、BとCのいずれも、AとCのいずれも、AとBとCのいずれも、またはその組み合わせを示す。
【0035】
また、本開示に記載された「...部」、「...モジュール」などの用語は、少なくとも一つの機能または動作を処理する単位を意味し、これは、ハードウェアまたはソフトウェアで具現されるか、ハードウェアとソフトウェアの結合で具現されることができる。
【0036】
本開示全体において、ある部分が他の部分と「連結」されているとするとき、これは、「直接的に連結」されている場合だけではなく、その中間に他の素子を介して「電気的に連結」されている場合も含む。また、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、これは特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0037】
本開示全体において使用された表現「~するように構成された(または設定された)(configured to)」は、状況によって、例えば、「~に適合した(suitable for)」、「~する能力を有する(having the capacity to)」、「~するように設計された(designed to)」、「~するように変更された(adapted to)」、「~するように作られた(made to)」、または「~ができる(capable of)」に置き換えて使用されてよい。用語「~するように構成された(または設定された)」は、ハードウェア的に「特別に設計された(specifically designed to)」ことのみを必ずしも意味しなくてよい。代わりに、ある状況においては、「~するように構成されたシステム」という表現は、そのシステムが他の装置または部品とともに「~することができる」ことを意味してよい。例えば、文句「A、BおよびCを遂行するように構成された(または設定された)プロセッサ」は、該当動作を遂行するための専用プロセッサ(例:エンベデッドプロセッサ)、またはメモリーに格納されている一つ以上のソフトウェアプログラムを実行することで、該当動作を遂行することができる汎用プロセッサ(generic-purpose processor)(例:CPUまたはapplication processor)を意味してよい。
【0038】
本開示において使用される用語「約」は、与えられた数値または範囲の10%以内、好ましくは5%以内、さらに好ましくは1%以内を意味する。
【0039】
本開示の一実施例は、細胞などのような特定微細粒子または血漿を所望する方向に分離および/または濃縮するためのターゲット対象物分離装置および方法を提供しようとする。
【0040】
また、本開示の一実施例によれば、ターゲット対象物分離装置は、チャンネルの天井または底面で流体流動に垂直な方向に二次流動(Secondary flow)を誘導して、血漿、細胞または微細粒子などを分離および/または濃縮することができる。
【0041】
また、本開示の一実施例によれば、ターゲット対象物分離装置は、曲線形態の傾斜構造物を利用して直線形態の傾斜構造物を利用するときより二次流動の流速を大きく向上させることができる。また、向上した流速によってターゲット対象物に対する分離性能が向上することができる。
【0042】
また、本開示の一実施例によるターゲット対象物分離装置は、既存の微細粒子分離および濃縮装置より使用性に優れ、細胞のような微細粒子の損傷を最小化することができる。また、本開示の一実施例によるターゲット対象物分離装置および方法は、一般的な細胞培養基盤の実験過程から幹細胞および免疫細胞治療剤の開発/生産工程まで多様に適用されることができる。
【0043】
本開示の一実施例は、ターゲット対象物分離装置のパターン形状を利用してターゲット対象物を所望する方向に分離することができる。また、ターゲット対象物分離装置のパターン形状を通じて安価且つ簡便にターゲット対象物が特定方向に分離できる。
【0044】
本開示全体において、「ターゲット対象物」または「ターゲット対象」は、ターゲット対象物分離装置を通じて分離しようとする目標対象として、例えば微細粒子、血漿などを含むことができる。ここで、微細粒子は、赤血球、血小板、白血球、循環腫瘍細胞、幹細胞、無力になった保管された赤血球(effete stored erythrocytes)、自家T-細胞膨張から由来するT-細胞、有機微細粒子、無機微細粒子、有機金属性微細粒子、金属性微細粒子、エアロゾル粒子、バクテリア、酵母、真菌、海藻類、ウイルス、微細無脊椎動物またはこれの卵(egg)、花粉、細胞または組織断片、細胞塊、細胞破片(例えば、DNAまたはRNA精製と関連した細胞破片)、生物反応期-生産細胞または粒状体、タンパク質、タンパク質凝集物、プリオン、小胞、リポソーム、析出物(例えば、血液または血液分画からの析出物、産業用工程析出物、廃水析出物など)、発酵食品からの粒状体または細胞(例えば、発酵飲料からの粒状体または細胞)、巨大分子、巨大分子凝集物、DNA、細胞器官、胞子、気泡、液滴およびエキソゾームなどを含むことができる。
【0045】
図1aは、本開示の一実施例によるターゲット対象物分離装置の構成を概略的に示した図である。
【0046】
図1aを参照すると、ターゲット対象物分離装置100は、注入口110、注入部115、通路部120、ターゲット対象物獲得部130a、ノン-ターゲット(non-target)対象物排出部130bなどを含むことができる。一実施例において、微細粒子を含む流体は、注入口110を通じてターゲット対象物分離装置100に注入することができる。注入部115は注入口110近くの流体流動通路と称することができる。一実施例において、注入された流体が注入部115および通路部120を通過して流動することによって、ターゲット対象物が集中的に一定方向に分離することができる。また、分離したターゲット対象物はターゲット対象物獲得部130aに集中することができる。また、ターゲット対象物ではないノン-ターゲット対象物は、ノン-ターゲット対象物排出部130bに集中することができる。
【0047】
以下においては、流体が注入口110に注入されてターゲット対象物獲得部130aでターゲット対象物が集中する過程についてより具体的に説明する。
【0048】
一実施例において、注入口110には、微細粒子を含む流体を注入することができる。例えばチューブ、注射器、ピペットなどを介して流体を注入することができる。また、例えば流体は、白血球または血漿獲得を目的とする全血を含むことができる。または、流体は、細胞培養液を含むことができる。
【0049】
一実施例において、注入された流体が注入部115および通路部120で流動する間、ターゲット対象物を特定方向に分離することができる。これによって、ターゲット対象物分離装置100の一定方向の終端にターゲット対象物獲得部130aを備えることで、分離したターゲット対象物が獲得され得る。また、ターゲット対象物分離装置100の流体通路の終端には、ノン-ターゲット対象物排出部130bが備えられてノン-ターゲット対象物が獲得され得る。
【0050】
または、ターゲット対象物分離装置100の流体通路の終端にターゲット対象物獲得部が備えられ、ターゲット対象物分離装置100の一定方向の終端にノン-ターゲット対象物獲得部を備えてもよい(図示しない)。例えば、ノン-ターゲット対象物獲得部は、ターゲット対象物分離装置100の流体通路の中間に備えられるようにチャンネルを形成することができる。また、ノン-ターゲット対象物獲得部は、複数個備えられてもよい。
【0051】
例えば、ターゲット対象物分離装置100が血漿を分離するための装置である場合、注入口110に血液を注入すると、ターゲット対象物獲得部130aには血漿が集中し、ノン-ターゲット対象物排出部130bには血球(例えば白血球、赤血球、血小板など)が集中することができる。これによって、血漿分離装置によって血漿を分離しても、血球などが捨てられずに使用され得る。
【0052】
また、例えば、ターゲット対象物分離装置100が白血球を分離するための装置である場合、注入口110に血液を注入すると、ターゲット対象物獲得部130aを通じて白血球が抽出され、ノン-ターゲット対象物排出部130bを通じて赤血球が抽出されることができる。
【0053】
また、例えばターゲット対象物分離装置100が細胞を分離するための装置である場合、注入口110に細胞培養液または細胞浮遊液を注入すると、ターゲット対象物獲得部130aを通じて濃縮された細胞が抽出され、ノン-ターゲット対象物排出部130bを通じて特定細胞が除去された培養液を抽出することができる。
【0054】
一実施例において、ターゲット対象物分離装置100のターゲット対象物は、ターゲット対象物分離装置100の流体通路パターンによって変わり得る。
【0055】
本開示の一実施例においては、ターゲット対象物獲得部130aおよびノン-ターゲット対象物排出部130bがそれぞれ1個ずつである場合を示したが、これは一例示であって、ターゲット対象物獲得部およびノン-ターゲット対象物排出部のうち少なくとも一つは複数個であってよい。例えば、ターゲット対象物分離装置100は、2個以上、例えば4個ないし10個のターゲット対象物獲得部を含むことができる。また、他の例において、ターゲット対象物分離装置100は3個以上、例えば4個ないし30個、より具体的には8個ないし15個のノン-ターゲット対象物排出部を含むことができる。このようなターゲット対象物獲得部およびノン-ターゲット対象物排出部のそれぞれの個数は、ターゲット対象物によって同一であるか、または異なって決定することができる。
【0056】
また、ターゲット対象物獲得部130aを第1ターゲット対象物獲得部と称し、ノン-ターゲット対象物排出部130bを第2ターゲット対象物獲得部と称することもできる。ターゲット対象物獲得部130aまたはノン-ターゲット対象物排出部130bの個数に関する構成は、別に言及がなくても、以下に言及される各実施例によるターゲット対象物分離装置のターゲット対象物獲得部およびノン-ターゲット対象物排出部にも同一に適用することができる。
【0057】
一実施例において、ターゲット対象物分離装置100には複数個のチャンネルが形成できる。チャンネルとは、注入口からターゲット対象物獲得部またはノン-ターゲット対象物排出部まで続く通路であって、ターゲット対象物によってチャンネルの個数が同一であるか、または異なるように決定することができる。チャンネルの個数は1個ないし40個、詳細には2個ないし30個、より詳細には5個ないし20個であってよい。例えば注入口からターゲット対象物獲得部までのチャンネル個数において、白血球分離装置は前記チャンネル個数が6個であり、血漿分離装置は前記チャンネル個数が6個であり、細胞分離装置は前記チャンネル個数が2個であってよい。ただし、これは一例示であって、多様な個数のチャンネルでターゲット対象物分離装置100が形成できる。
【0058】
一実施例において、それぞれのチャンネルは、注入口から始まってターゲット対象物獲得部またはノン-ターゲット対象物排出部に繋がる通路中間に複数個のチャンネルに分かれてよく、これによって、追加チャンネルが生成され得る。例えば、チャンネルの中間に別途のチャンネルが生成されてその末端にはノン-ターゲット対象物排出部が形成できる。例えば、ノン-ターゲット対象物排出口が8個存在する場合、注入口から始まったチャンネルで8個の追加チャンネルが生成され得る。
【0059】
図1bは、
図1aのターゲット対象物分離装置の一部を拡大した図である。
【0060】
図1bを参照すると、
図1aの通路部120の一部140が拡大された図が示される。一実施例において、ターゲット対象物の分離は、ターゲット対象物分離装置100内に流体の主運動方向に対して所定の角度で傾斜度を有した一定パターンを利用して遂行されることができる。パターンの種類、大きさ、配置などは、流体の主運動方向とターゲット対象物を分離させようとする特定方向に基づいて決まることができる。例えば、ターゲット対象物分離装置100の微細パターンは、流体の主流動方向を基準に、ターゲット対象物を分離させようとする特定方向に対して傾いた傾斜度を有することができ、傾斜度は、流体の主運動方向に対して45ないし135度の傾斜度を含むことができる。このような傾斜度によって、微細粒子を含む流体がターゲット対象物分離装置100に注入されると、流体が傾斜したパターン溝に垂直な方向に移動するようになり、これによってターゲット対象物が一定方向に集中して流動することができる。
【0061】
一実施例において、ターゲット対象物分離装置100内の微細パターンは、複数の溝によって形成されることができる。溝の形態は、分離させようとするターゲット対象物の種類によって決まることができる。ここで、溝の形態は、溝の高さ、幅、長さ、通路部120の高さなどを含むことができる。例えば、溝の高さと幅は、ターゲット対象物の直径の0.5倍ないし2倍以内、溝の長さは、ターゲット対象物の直径の3倍ないし10倍以内、通路部の高さは、ターゲット対象物の直径の1倍ないし3倍以内であってよい。ここで、微細粒子直径は微細粒子の平均径を含むことができる。また、通路部120内のパターンは、溝が一定間隔で配列されて形成されることを含むことができる。例えば、一定間隔は、約1ないし70μm(micrometer)内外、例えば、約5ないし40μm、または約10ないし20μmを含むことができる。溝の形態は、長方形、菱形、三角形、楕円形、星形などであってよいが、これに限定されるものではない。一実施例において、溝は、陰刻チャンネル部または陰刻構造物と称することができる。すなわち、ターゲット対象物の分離は、通路部120内に備えられたチャンネルの天井または底面に配置された複数の陰刻構造物によって遂行されることができる。陰刻構造物と関連して
図7を参照し、陰刻構造物によって形成される微細パターンと関連して
図1cを参照して詳細に後述する。
【0062】
一実施例において、特定方向に移動されたターゲット対象物は、流体の層流(Laminar Flow)によって、一定パターンがない部分でも通路部120の垂直な方向への位置を保持するようになるので、終端に位置したターゲット対象物獲得部130aを通じて高濃度で濃縮されたターゲット対象物を含む流体が獲得され得る。すなわち、通路部120によってターゲット対象物が集中的に一定方向に分離して流動することができるので、一定方向の終端にターゲット対象物獲得部130aを設置して分離したターゲット対象物を獲得することができる。
【0063】
例えば、ターゲット対象物獲得部130aを有するターゲット対象物分離装置100を通じて、全血を利用した白血球分離が遂行され得る。すなわち、通路部120を通じた分離流動過程を利用してターゲット対象物獲得部130aでは高い割合の白血球が獲得され、ターゲット対象物獲得部130aに白血球が密集されて移動されることによって、ノン-ターゲット対象物排出部130bでは相対的に高い割合の赤血球が獲得され得る。ターゲット対象物獲得部130aおよびノン-ターゲット対象物排出部130bの直径は、それぞれターゲット対象物およびノン-ターゲット対象物が何であるかによって決定することができる。例えば、ターゲット対象物が白血球であり、ノン-ターゲット対象物が赤血球である場合、ターゲット対象物獲得部130aの直径は、ノン-ターゲット対象物排出部130bの直径より大きくてよい。
【0064】
一実施例において、ターゲット対象物分離装置100は、ポリマー(PS(polystyrene),PC(polycarbonate),PMMA(polymethylmethacrylate)、PDMS(polydimethylsiloxane)など)等に基づいて製作することができ、表面が疎水性である場合にもターゲット対象物を分離および整列することができるが、流体の流動を考慮してその表面は親水性を有するようにすることが好ましい。
【0065】
図1cは、
図1aのターゲット対象物分離装置の微細パターンの傾斜度を説明する図である。
【0066】
図1cを参照すると、ターゲット対象物分離装置100の微細パターンは、流体の主流動方向を基準に、45ないし135度の角度で形成され得る。例えば、流体の主流動方向をx軸に取る場合、微細パターンの角度(θ)は約45度ないし約135度の角度を有することができる。このとき、微細パターンの角度(θ)はターゲット対象物が何であるかによって決定することができる。例えば、ターゲット対象物によって、ターゲット対象物分離装置内の一チャンネルにおける微細パターンの角度(θ)は約45度であり、他のチャンネルにおける微細パターンの角度(θ)は約135度であってよい。また他の例において、一チャンネルにおける微細パターンの角度(θ)は約60度であり、他のチャンネルは約120度であってよい。また他の例において、一チャンネルにおける微細パターンの角度(θ)は約75度であり、他のチャンネルは約105度であってよい。ただし、これは一例示であって、ターゲット対象物によって微細パターンの角度(θ)は適切に選択することができる。
【0067】
一実施例において、微細パターンはターゲット対象物分離装置100の陰刻構造物によって形成されることができる。例えば、微細粒子を含む流体がターゲット対象物分離装置100に注入されると、流体が傾斜した陰刻チャンネル部によって流体の主流動方向に垂直な方向に移動するようになり、微細パターンの角度によってターゲット対象物が一定方向に集中して流動することができる。
【0068】
図2aは、本開示の一実施例によるターゲット対象物分離装置の構成を概略的に示した図である。
【0069】
図2aを参照すると、ターゲット対象物分離装置200は、
図1aを参照して前述したターゲット対象物分離装置100と比較して、高速チャンネル部250をさらに含み、微細パターンの形態が互いに異なってよい。このような相違点または相違点で発生する部分の他においては、ターゲット対象物分離装置200は
図1を参照して前述したターゲット対象物分離装置100の特徴を有することができる。
【0070】
図1aないし
図1cにおいては、直線形態の微細パターンを含むターゲット対象物分離装置100が示され、
図2aないし
図2cにおいては、曲線形態の微細パターンおよび高速チャンネル部250を含むターゲット対象物分離装置200が示されるが、ターゲット対象物分離装置の形態がこれに限定されるものではなく、任意のターゲット対象物分離装置は直線形態の微細パターン、曲線形態の微細パターン、および高速チャンネル部のうち少なくとも一つを含むことができる。
【0071】
一実施例において、ターゲット対象物分離装置200は、微細粒子を含む流体が注入される注入口210、注入口210の近くの流体流動通路である注入部215、注入された流体が流動する過程でターゲット対象物が一定方向に集中して流動するようにする通路部220、一定方向に集中したターゲット対象物を獲得するターゲット対象物獲得部230a、ノン-ターゲット対象物排出部230b、高速チャンネル部250などを含むことができる。本開示の一実施例においては、ターゲット対象物獲得部230aが1個である場合を示したが、これは一例示であって、ターゲット対象物獲得部230aは2個であってもよく、3個以上、例えば4個ないし10個の微細粒子獲得部を含むことができる。同様に、ノン-ターゲット対象物排出部230bも一つである場合が
図2aに示されたが、複数個であってもよい。例えばターゲット対象物分離装置100は、3個以上、例えば4個ないし30個、より具体的には8個ないし15個のノン-ターゲット対象物排出部を含むことができる。このようなターゲット対象物獲得部およびノン-ターゲット対象物排出部のそれぞれの個数は、ターゲット対象物によって同一であるか、または異なって決まることができる。
【0072】
一実施例において、ターゲット対象物獲得部230aおよびノン-ターゲット対象物排出部230bは、それぞれ第1ターゲット対象物獲得部および第2ターゲット対象物獲得部と称することもでき、第1ターゲット対象物獲得部230aが複数個であり、第2ターゲット対象物排出部230bが複数個であってもよい。注入口210、注入部215および通路部220は、それぞれ
図1aを参照して前述した注入口110、注入部115および通路部120に対応することができる。また、ターゲット対象物獲得部230aおよびノン-ターゲット対象物排出部230bは、それぞれ
図1を参照して前述したターゲット対象物獲得部130aおよびノン-ターゲット対象物排出部130bに対応することができる。よって、注入口210、注入部215、通路部220、ターゲット対象物獲得部230aおよびノン-ターゲット対象物排出部230bに対する詳しい説明は省略する。ただし、ターゲット対象物分離装置200の微細パターンとターゲット対象物分離装置100の微細パターンの構造、形態、配置位置、個数などが異なる場合がある。
【0073】
一実施例において、微細パターンは、流体の主流動方向に垂直な方向に溝形態を有する陰刻構造物によって形成されることができる。
【0074】
一実施例において、注入部215、通路部220、ターゲット対象物獲得部230aおよびノン-ターゲット対象物排出部230bのうち少なくとも一つは、流体の主流動方向に垂直な方向に溝形態を有する複数の陰刻構造物を含むことができる。
【0075】
一実施例において、注入口210を通じてターゲット対象物分離装置200に注入された流体が注入部215および通路部220で流動することによって、ターゲット対象物を集中的に一定方向に分離することができる。このようなターゲット対象物の分離は、通路部220内に備えられたチャンネルの天井または底面に配置された複数の陰刻構造物によって遂行することができる。一実施例において、陰刻構造物は、陰刻チャンネル部または溝と称することもできる。陰刻構造物によってターゲット対象物が分離する過程と関連して、
図7を参照して詳細に後述する。
【0076】
一実施例において、複数の陰刻構造物は、複数個が互いに断絶して形成された構造を有することができる。一実施例によれば、陰刻構造物は、流体が主に流動する方向に垂直な方向に二次流動(secondary flow)を誘導して、効率的に微細粒子を分離および濃縮することができる。
【0077】
一実施例において、陰刻構造物は、流体の主流動方向を基準に、微細粒子を分離させようとする特定方向に対して傾いた傾斜度を有することができ、すなわち、陰刻構造物は、傾斜構造物を含むことができる。傾斜度は、流体の主流動方向に対して45ないし135度の傾斜度を含むことができる。一実施例によれば、ターゲット対象物分離装置200に微細粒子を含む流体を流すことになると、微細粒子は、傾斜した陰刻構造物に垂直な方向に移動することで一定方向に集中して流動することができる。
【0078】
一実施例において、陰刻構造物は長さ方向に曲線形態を有する傾斜構造物であってよい。例えば、複数の陰刻構造物によって形成される微細パターンは曲線形態であってよい。例えば、曲線は、円の少なくとも一部、楕円の少なくとも一部、サイクロイド形状の少なくとも一部、任意の曲線形態などを含むことができる。
【0079】
一実施例において、ターゲット対象物分離装置200には、複数個のチャンネルが形成できる。チャンネルとは、注入口からターゲット対象物獲得部またはノン-ターゲット対象物排出部まで続く通路であって、ターゲット対象物によってチャンネルの個数を決定することができる。チャンネルの個数は1個ないし40個、詳細には2個ないし30個、より詳細には5個ないし20個であってよい。例えば、注入口からターゲット対象物獲得部までのチャンネル個数において、白血球分離装置はチャンネル個数が6個であり、血漿分離装置はチャンネル個数が6個であり、細胞分離装置はチャンネル個数が2個であってよい。ただし、これは一例示であって、多様な個数のチャンネルでターゲット対象物分離装置200が形成できる。
【0080】
一実施例において、それぞれのチャンネルは、注入口から始まってターゲット対象物獲得部またはノン-ターゲット対象物排出部に繋がる通路中間に複数個のチャンネルに分かれてよく、これによって、追加チャンネルが生成され得る。例えば、チャンネルの中間に別途のチャンネルが生成されて、その末端にはノン-ターゲット対象物排出部が形成できる。例えば、ノン-ターゲット対象物排出口が8個存在する場合、注入口から始まったチャンネルで8個の追加チャンネルが生成され得る。
【0081】
一実施例において、注入口210からターゲット対象物獲得部間の領域の少なくとも一部には、高速チャンネル部250が形成できる。また、高速チャンネル部250には陰刻構造物が配置されず、高速チャンネル部250以外の領域にのみ複数の陰刻構造物を配置することができる。高速チャンネル部250と関連して、
図2b、
図3および
図4を参照して詳細に後述する。
【0082】
一実施例において、注入部215、通路部220、ターゲット対象物獲得部230aおよびノン-ターゲット対象物排出部230bのうち少なくとも一つは、少なくとも一つの柱構造物を含むことができる。例えば、白血球を分離するためのターゲット対象物分離装置には注入部215に柱構造物が存在し、血漿を分離するためのターゲット対象物分離装置には注入部215および通路部220に柱構造物が存在し、細胞を分離するためのターゲット対象物分離装置には注入部215、通路部220、ターゲット対象物獲得部230a、ノン-ターゲット対象物排出部230bのすべてに柱構造物が存在することができる。また、各領域に柱構造物は複数個存在してもよい。ただし、これは一例示であって、柱構造物はターゲット対象物分離装置の多様な領域に多様な個数で存在することができる。柱構造物と関連して、
図5および
図6を参照して詳細に後述する。
【0083】
図1aないし
図2cには、ターゲット対象物分離装置の終端にターゲット対象物獲得部またはノン-ターゲット対象物排出部が配置されることを示したが、これは例示であって、ターゲット対象物獲得部およびノン-ターゲット対象物排出部のうち少なくとも一つはターゲット対象物分離装置の中間部分に位置してもよいことはもちろんである。例えば、ターゲット対象物分離装置が血漿分離装置である場合、ターゲット対象物である血漿獲得部は血漿分離装置の終端に位置し、ノン-ターゲット対象物である赤血球または白血球排出口は分離装置の中間部分に位置してよい。類似して、ターゲット対象物分離装置が白血球分離装置である場合、ターゲット対象物である白血球獲得部は分離装置の終端に位置し、ノン-ターゲット対象物である赤血排出口は分離装置の中間部分に位置してよい。
【0084】
図2bは、
図2aのターゲット対象物分離装置の一部を拡大した図である。
【0085】
図2bを参照すると、
図2aの通路部220の一部240が拡大された図が示される。一実施例において、通路部は複数の陰刻構造物と高速チャンネル部250とを含むことができる。
【0086】
一実施例において、通路部の天井面または底面の少なくとも一部に複数の陰刻構造物を配置することで流体が流動する方向に垂直な方向に二次流動が誘導され得る。また、二次流動に基づいてターゲット対象物を分離および濃縮することができる。陰刻構造物は、流体の主流動方向に対して所定の傾斜度を有することができ、傾斜度は、流体の主流動方向と微細粒子を分離させようとする特定方向に基づいて決定することができる。また、複数の陰刻構造物は、複数個を互いに断絶して形成することができる。
【0087】
一実施例において、複数の陰刻構造物は長さ方向に曲線形態を有し、このような陰刻構造物によって曲線の微細パターンが形成できる。例えば、
図2cと同様に、複数の陰刻構造物によって形成される微細パターンは、アーク形態を有することができる。また、例えば、曲線は円の少なくとも一部、楕円の少なくとも一部、サイクロイド形状の少なくとも一部、任意の曲線形態などを含むことができる。
【0088】
一実施例において、高速チャンネル部250には陰刻構造物が配置されず、複数の陰刻構造物は、高速チャンネル部250以外の通路部にのみ配置することができる。一実施例によれば、高速チャンネル部250は、微細粒子が濃縮される方向に深さ方向に形成される溝型チャンネルであって、溝型チャンネルを形成することによってターゲット対象物の濃縮効率を高め、反対方向への損失を減少させることができる。すなわち、高速チャンネル部250は、微細粒子を閉じ込めるための構造物としての役割を遂行することができる。
【0089】
一実施例において、高速チャンネル部250は、注入部からターゲット対象物獲得部までの領域の少なくとも一部に形成することができる。一実施例によれば、高速チャンネル部250の存在により流体抵抗が低下し、局部的流速を増加させることができる。また、これによって圧力が減少して高速チャンネル部250方向への流れが発生してターゲット対象物の濃縮効率を増加させることができる。高速チャンネル部250の役割は、
図3および
図4を参照してより詳細に後述する。また、ターゲット対象物の濃縮効率は
図9aおよび
図9bを参照してより詳細に後述する。
【0090】
図2cは、
図2aのターゲット対象物分離装置の微細パターンの傾斜度を説明する図である。
【0091】
図2cを参照すると、ターゲット対象物分離装置200の微細パターンは、曲線形態で形成することができる。一実施例において、曲線形態はアーク形態であってよい。下記においては、通路部の一部270を例示して微細パターンについて説明する。流体の主流動方向をx軸にして、通路部の一部270に形成される微細パターンの曲線の始点における接線のx軸に対する角度をθ
1とするとき、始点における微細パターンの角度(θ
1)は45度ないし135度の角度を形成することができる。また、通路部の一部270に形成される微細パターンの曲線の終点における接線のx軸に対する角度をθ
2とするとき、終点における微細パターンの角度(θ
2)は0度ないし75度または105度ないし180度を形成することができる。このとき、微細パターンの角度(θ
1、θ
2)は、ターゲット対象物が何であるかによって決定することができる。
【0092】
一例において、微細パターンの始点における角度(θ1)は85度であり、終点における角度(θ2)は45度であってよい。また他の例において、微細パターンの始点における角度(θ1)は105度、終点における角度(θ2)は135度であってよい。また他の例において、ターゲット対象物分離装置内一チャンネルにおける微細パターンの始点における角度(θ1)は60度であり、微細パターンの終点における角度(θ2)は30度であり;他のチャンネルにおける微細パターンの始点における角度(θ1)は120度であり、終点における角度(θ2)は150度であってよい。
【0093】
ただし、これは一例示であって、ターゲット対象物によって微細パターンの角度(θ1、θ2)は適切に選択することができる。
【0094】
図3は、本開示の一実施例による微細粒子分離装置の断面図を概略的に示した図である。
【0095】
図3を参照すると、ターゲット対象物分離装置の一例として、微細粒子分離装置300、より具体的に細胞分離装置を例として説明するが、これは単に例示であって、
図3の微細粒子分離装置300の実施例は細胞だけでなく、血漿分離装置など多様なターゲット対象物分離装置にも適用することができる。一実施例において、微細粒子分離装置300は複数の陰刻構造物310,320,330,340,350,360を含むことができる。一実施例において、微細粒子分離装置300の注入部に注入された流体は、流動する過程で特定方向に移動するとともに微細粒子が特定方向に集中することができる。
図3においては、微細粒子が右側方向に集中することを例示して説明する。微細粒子を含む流体は、複数の陰刻構造物によって形成される一定形態のパターンに基づいて右側方向に集中することができる。ただし、複数の陰刻構造物によって逆方向流線を発生させることができるが、この場合、逆方向流線によって微細粒子の濃縮効率が低くなることがある。
【0096】
一実施例においては、逆方向流線による微細粒子濃縮効率低下を解決するために、微細粒子が濃縮される側(例えば、
図3においては右側)に、深さ方向の溝型チャンネルである高速チャンネル部を含む微細粒子分離装置を提供することができる。
【0097】
図4は、本開示の一実施例による高速チャンネル部を含む微細粒子分離装置の構成を概略的に示した図である。
【0098】
図4を参照すると、ターゲット対象物分離装置の一例として、微細粒子分離装置400、より具体的に細胞分離装置を例として説明するが、これは単に例示であって、
図4の微細粒子分離装置400の実施例は細胞だけでなく、血漿分離装置など多様なターゲット対象物分離装置にも適用することができる。一実施例において、微細粒子分離装置400は複数の陰刻構造物410,420,430,440,450および高速チャンネル部460を含むことができる。一実施例において、高速チャンネル部460には、陰刻構造物が配置されなくてよい。また、高速チャンネル部460は、微細粒子が濃縮される側に深さ方向の溝型チャンネルで形成することができる。例えば、
図4においては、通路部の右側に高速チャンネル部460が形成できる。一実施例によれば、高速チャンネル部には、陰刻構造物を形成する傾斜構造物が配置されないことによって、高速チャンネル部460における逆方向流線が発生しないため、濃縮された微細粒子の逆方向移動確率が低くなることがある。これによって、高速チャンネル部は、濃縮効率を高めて反対方向への損失を減少させることができる。
【0099】
一実施例によれば、高速チャンネル部460には、陰刻構造物を形成する傾斜構造物が配置されないため、高速チャンネル部においては、傾斜構造物が存在する場合より流体抵抗が減少することがある。これによって、局所的に流速を増加させることができ、圧力を減少させることができる。圧力が減少すると、高速チャンネル部460方向に流体の流れがさらに発生して、細胞の濃縮効率を増加させることができる。
【0100】
一実施例において、高速チャンネル部の幅は微細粒子分離装置のチャンネル幅の0.1%ないし50%の任意の値で形成することができる。例えば、血漿分離装置の高速チャンネル部の幅をチャンネル幅の約20%ないし約30%、例えば約27%で形成し、細胞分離装置の高速チャンネル部の幅をチャンネル幅の約0.1ないし5%、例えば約2%で形成することができる。ただし、これは一例示であるだけであって、ターゲット対象物を効率的に濃縮および分離させるための適切な幅が選択され得る。
【0101】
図5は、本開示の一実施例によるチャンネル中央部の垂れ現象が存在するターゲット対象物分離装置の断面図を概略的に示した図である。
【0102】
図5を参照すると、ターゲット対象物分離装置500には、ターゲット対象物分離装置600の製作過程でプラスチックの熱変形などによるチャンネル中央部の垂れ現象が発生することがある。これにより、微細流体チャンネルの段差が変化してターゲット対象物の分離効率に影響を及ぼすことになる。本開示の一実施例は、チャンネル中央部の垂れ現象を防止するために、
図6のような柱構造物を含むターゲット対象物分離装置600を提供することができる。本開示の一実施例によれば、チャンネル中央部の垂れ現象によるチャンネル変形を防止することができる。また、チャンネル中央部の垂れ現象防止とともに、ターゲット対象物の損傷または流動に対する悪影響を防止することができる。
【0103】
本開示の一実施例は、チャンネル中央部の垂れ現象を防止するためのターゲット対象物分離装置を提供しようとする。
【0104】
図6は、本開示の一実施例によるチャンネル中央部の垂れ現象を解決したターゲット対象物分離装置の断面図を概略的に示した図である。
【0105】
図6を参照すると、チャンネル中央部の垂れ現象を防止するために、ターゲット対象物分離装置600に柱構造物630を設置することができる。一実施例において、柱構造物630は、注入部、通路部、ターゲット対象物獲得部、ノン-ターゲット対象物排出部のうち少なくとも一つに配置することができ、複数個の柱構造物630を配置することもできる。例えば、白血球を分離するためのターゲット対象物分離装置600には、柱構造物630を注入部にのみ配置することができる。また、例えば、血漿を分離するためのターゲット対象物分離装置600には、注入部および通路部に柱構造物630を配置することができる。また、例えば、細胞を分離するためのターゲット対象物分離装置600には、注入部、通路部、ターゲット対象物獲得部のすべてに柱構造物630を配置することができる。例えば、柱構造物630は、チャンネルの中央に配置されるか、適正間隔で配置されるか、陰刻構造物の間に配置されるか、チャンネル中央部に適正間隔で柱構造物630を設置することができる。
【0106】
一実施例において、柱構造物630は、複数の陰刻構造物外の領域に配置することができる。例えば柱構造物630は、陰刻構造物を形成する傾斜構造物の少なくとも一部の間に配置することができる。一実施例において、柱構造物630は、溶血(hemolysis)現象が現れず、流動に影響を与えない線で配置されなければならない。これによって、柱構造物の高さは通路部の高さと同一であるが、流体の主運動方向をx軸、チャンネルの幅方向をy軸に置くとき、xy平面に切った断面は、円,楕円,流線形(例:船型),丸い多角形などであってよい。断面が多角形である場合、頂点部分の断面積が小さく、頂点に細胞などのようなターゲット対象物またはノン-ターゲット対象物が接触する場合、衝撃量が大きいためこれらの損傷を引き起こすことがある。したがって、柱構造物630が頂点を含む多角形である場合、柱構造物630の断面は頂点部分を丸くした丸い多角形に形成するとよい。
【0107】
一実施例において、柱構造物630の高さは通路部の高さと同一であってよい。これによって、柱構造物630は、円柱,楕円柱,流線形柱または丸い多角形柱の形態を有することができる。
【0108】
一実施例において、複数の柱構造物630が存在する場合、微細粒子の損傷を防止するために複数の柱構造物間の間隔は微細粒子の直径より広くなければならない。これは、柱構造物による微細粒子の挟み込み現象と、溶血のような微細粒子の損傷を防止するためである。
【0109】
一実施例において、柱構造物630はプラスチックで製作することができる。この場合、柱構造物630の縦横比(高さ/断面の長さ;すなわち、通路部の高さ/断面の最大長さ)は、特定値以下でなければならない。例えば、QDM(Quick Delivery Mold)の方法でターゲット対象物分離装置600を製作する場合、柱構造物630の縦横比が3を超えると製造過程で柱構造物が損傷する可能性がある。これによって、通路部の高さによって構造物の断面の最大長さを決定することができる。例えば、通路部の高さが約40μmである場合、構造物断面の最大長さは約13μm以上でなければならない。
【0110】
一実施例において、チャンネル中央部の垂れ現象を防止するために、チャンネルの両端からチャンネル幅の約50%になる箇所内に少なくとも一つの柱構造物630を配置することができる。例えば、チャンネル中央に柱構造物630が配置されるか、チャンネル両端からチャンネル幅の約1/3、すなわち、約33%になる箇所に柱構造物630を配置することができる。
【0111】
一実施例において、微細粒子の流動に影響を与えないために、柱構造物630が複数個存在する場合、柱構造物630の間隔は陰刻構造物の長さより同じか広くなければならない。ターゲット対象物分離装置の分離原理によると、試料がターゲット対象物分離装置に注入されると、陰刻構造物の傾斜方向に沿って二次流動(defocusing flow)が形成され、通路部では反対方向の流れ(focusing flow)を発生させることができる。このとき、この反対方向の流れによって微細粒子が片方の壁面に偏るようになって粒子を分離することができる。この過程で柱構造物が陰刻構造物の長さに比べて短い間隔で存在するようになると、陰刻構造物方向の流れ(defocusing flow)が柱構造物630によって妨げられるようになり、これにより反対方向の流れ(focusing flow)が弱くなるので、ターゲット対象物分離装置の分離効率に影響を及ぼすことができる。これによって、柱構造物630の間隔は、二次流動を妨げないように陰刻構造物の長さより広く形成することができる。
【0112】
一実施例によれば、柱構造物630を利用してターゲット対象物分離装置のチャンネル中央部の垂れ現象を防止することができる。
【0113】
図7aないし7cは、本開示の一実施例による溝形態を有する複数の陰刻構造物によって微細粒子が分離する過程を示す図である。
図7aないし
図7cの陰刻構造物は、通路部220内に備えられたチャンネルの底面に配置されている。
【0114】
図7aないし
図7cにおいては、ターゲット対象物分離装置を微細粒子分離装置を例として説明するが、微細粒子分離装置に限定されるものではなく、血漿分離装置にも同一の実施例を適用することができる。
【0115】
図7aないし
図7cを参照すると、微細粒子分離装置700は複数の陰刻構造物710,720,730を含むことができる。陰刻構造物710,720,730は、溝形態で凹んだ構造であってよい。また、陰刻構造物710,720,730は傾斜度を有した傾斜構造物の形態を有してよい。一実施例において、傾斜度は流体の主流動方向に対して約45度ないし約135度の傾斜度を含むことができる。例えば血漿分離装置は、約70ないし約80度、例えば約75度の角度を有する陰刻構造物を含むことができる。陰刻構造物710,720,730は陰刻形態、すなわち溝の形態を有するので、主流動方向(bulk flow)に流動が形成され、
図7bのように流体の主流動方向(bulk flow)に垂直な方向に二次流動が形成され、これによって
図7cのように微細粒子の横移動を発生させることができる。また、陰刻構造物710,720,730は互いに断絶した形態で配置されることができる。互いに断絶して配置される陰刻構造物710,720,730が凹んだ構造で形成されているため、微細粒子の集束効果を示すことができる。
【0116】
図8は、本開示の一実施例による複数の陰刻構造物の配列と配置を示す概略図である。
【0117】
図8を参照すると、複数の陰刻構造物に基づいて微細パターンが形成できる。
図8において微細パターン800の長さ方向への長さ(L1)を陰刻構造物の長さと定義し、陰刻構造物間の間隔(L2)を断絶間隔、また陰刻構造物の縦長方向への幅(W)を微細パターンの幅と定義する。
【0118】
一実施例において、曲線形態の陰刻構造物の幅と深さは、分離しようとするターゲット対象物の種類によって変わり得る。例えば、陰刻構造物の高さ,幅,長さ,間隔は、下記の表1のように決定することができる。表1に表示された値は、おおよその値を意味することができ、例えば±20%,±15%,±10%,±5%または±1%の偏差を有し得る。
【0119】
【0120】
一実施例において、微細粒子が5ないし20μmであることに基き、陰刻構造物の高さ,幅,間隔は、微細粒子直径の0.5倍ないし3倍で製作することができる。
【0121】
一実施例において、曲線形態の陰刻構造物の長さは、陰刻構造物の幅の4倍ないし30倍で製作することができ、曲線形態の陰刻構造物の断絶間隔は、微細パターンの幅の0.1倍ないし5倍の間で製作することができる。
【0122】
図9aは、本開示の一実施例による直線形態を有する微細パターンの形状による細胞分離性能をシミュレーションした図であり、
図9bは、本開示の一実施例による曲線形態を有する微細パターンの形状による細胞分離性能をシミュレーションした図である。
【0123】
図9aおよび
図9bは、傾斜構造物の微細パターンの形状による微細粒子の分離領域の差を示す。
【0124】
図9aは、直線形態の微細パターンを示し、
図9bは、曲線形態の微細パターンを示し、CFD(Computational Fluid Dynamics)を利用して直線形態と曲線形態の微細パターンの微細粒子分離性能を比較した結果、曲線形態の微細パターンで微細粒子分離領域が狭くて分離性能にさらに優れたことが示された。
【0125】
図10aおよび
図10bは、本開示の一実施例による曲線形態を有する微細パターンの形状による細胞分離性能を実験した結果を示す図である。
【0126】
図10aおよび
図10bは、実際細胞を利用した実験結果を示す。
図10aは、蛍光に染めた細胞を微細パターンのあるマイクロ流体チャンネルに流動させながら、注入口からの距離がそれぞれ13mm,45mm,75mmである箇所でどれだけ細胞が集中したのかを蛍光顕微鏡で撮影した写真である。
図10aの上側は曲線(Cycloid)形態の微細パターンを有するマイクロ流体チャンネルで細胞が集中する様子であり、
図10aの下側は直線(Straight)形態の微細パターンを有するマイクロ流体チャンネルで細胞が集中する様子である。
【0127】
図10bを参照すると、曲線形態の微細パターンでは、微細パターン通過長さによって細胞が分離して濃縮される幅が次第に減少し、直線形態のパターンに比べて分離性能に優れることが分かる。
【0128】
図11aは、本開示の一実施例による高速チャンネル部が存在しない場合のターゲット対象物の分離性能を示す図であり、
図11bは、本開示の一実施例による高速チャンネル部が存在する場合のターゲット対象物の分離性能を示す図である。
【0129】
図11aおよび
図11bを参照すると、ターゲット対象物が流れた軌跡に応じて色相を表示してある。速度が速やいほど赤い色相(図面で右側)で表現され、遅いほど青い色相(図面で左側)で表示される。すなわち、
図11aより
図11bでターゲット対象物がさらに速い速度で高速チャンネル部を通じて流動していることが確認される。すなわち、高速チャンネル部によって局部的な流速が増加し、微細粒子の濃縮効率を向上させることができる。
【0130】
前述した本開示の説明は例示のためのものであり、本開示の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須的な特徴を変更せずに他の具体的な形態に容易に変形が可能であるということを理解することができるだろう。そのため、以上において記述した実施例は、すべての面で例示的なものであって限定的ではないものと理解しなければならない。例えば、単一型で説明されている各構成要素は、分散して実施してもよく、同様に分散したものと説明されている構成要素も結合された形態で実施してもよい。
【0131】
本開示の範囲は、前記詳細な説明よりは後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味および範囲、そしてその均等概念から導き出されるすべての変更または変形された形態が本開示の範囲に含まれるものと解析されなければならない。