(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】パワーユニット及びパワーユニットの製造方法
(51)【国際特許分類】
B62M 9/00 20060101AFI20241120BHJP
【FI】
B62M9/00 Z
(21)【出願番号】P 2023568471
(86)(22)【出願日】2023-02-15
(86)【国際出願番号】 JP2023005152
(87)【国際公開番号】W WO2023157859
(87)【国際公開日】2023-08-24
【審査請求日】2023-11-01
(31)【優先権主張番号】P 2022021285
(32)【優先日】2022-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522060021
【氏名又は名称】日本電動株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004163
【氏名又は名称】弁理士法人みなとみらい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 貴志
(72)【発明者】
【氏名】橘 貞一郎
(72)【発明者】
【氏名】横山 修一
(72)【発明者】
【氏名】一柳 健
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/093964(WO,A1)
【文献】特開2018-090209(JP,A)
【文献】特開2016-210312(JP,A)
【文献】特開平04-151389(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機と、クラッチ機構を有する駆動部と、を備え、
前記電動機の出力を前記クラッチ機構に常に増速して伝達する伝達部を有
し、
前記電動機は、回転動力を出力する電動出力軸を有し、
前記駆動部は、回転動力が入力される駆動入力軸を有し、
前記伝達部は、前記電動出力軸に設けられる駆動伝達体と、前記駆動入力軸に設けられる従動伝達体と、を接続し、
前記駆動伝達体の径は、前記従動伝達体の径よりも大きいパワーユニット。
【請求項2】
前記電動出力軸と前記駆動入力軸とが同一の平面を垂直に貫通する
請求項1に記載のパワーユニット。
【請求項3】
前記伝達部は、前記駆動伝達体と前記従動伝達体の間に設けられる巻き掛け式伝達装置である
請求項1に記載のパワーユニット。
【請求項4】
前記電動機と前記駆動部を接続する接続装置を備え、
前記接続装置は、前記電動機を保持するブラケットと、前記伝達部と、を有し、
前記ブラケットは、前記駆動部に設けられている
請求項1から3の何れかに記載のパワーユニット。
【請求項5】
前記駆動部は、前記ブラケットを片持ち支持する
請求項4に記載のパワーユニット。
【請求項6】
前記ブラケットは、
前記電動機を保持する保持板と、
前記駆動部に取付け支持される支持板と、が接続されて設けられ、
前記保持板と前記支持板を接続するリブを有し、
前記リブは、前記保持板の複数の面に接触するように設けられる
請求項5に記載のパワーユニット。
【請求項7】
請求項1~3の何れかに記載のパワーユニットが設けられている、自動二輪車。
【請求項8】
電動機と、クラッチ機構を有する駆動部と、を備え、
前記電動機の出力を前記クラッチ機構に常に増速して伝達する伝達部を有し、
前記電動機は、回転動力を出力する電動出力軸を有し、
前記駆動部は、回転動力が入力される駆動入力軸を有し、
前記伝達部は、前記電動出力軸に設けられる駆動伝達体と、前記駆動入力軸に設けられる従動伝達体と、を接続し、
前記駆動伝達体の径は、前記従動伝達体の径よりも大きいパワーユニットの製造方法であって、
前記電動機を保持するブラケットを前記駆動部に取り付ける支持工程と、
前記伝達部を、
前記クラッチ機構に
接続する伝達部取付け工程を含むパワーユニットの製造方法。
【請求項9】
前記駆動部の一部を切除し、前記駆動部の内部が露出する開口面を設ける切除工程を含む
請求項8に記載のパワーユニットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取り付けることによって車両のパワーユニットを電動化するモジュールおよびその取り付け方法である。ここにおいて車両は、特に二輪車であることが想定される。
【背景技術】
【0002】
オートバイや原動機付き自転車等を含む自動二輪車は、熱機関により走行するものが多くを占めているが、電動機によって走行するものも少なからず存在する。例えば特許文献1や特許文献2には、電動機を利用する二輪車が記載されている。
電動機によって走行する自動二輪車は、熱機関で走行するものに比べて、動作が静音である点、構造が単純である点、走行コストが比較的安く上がる点、排気ガスが直接的には発生しない点等で優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000―38184号公報
【文献】特開平4―90979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電動機は通常の原動機と比較すると、トルクが弱く、発進することが難しい。また、アイドリングも行わない。この点において、特許文献1、2は電動機からの出力を減速し、回転数を減少させる代わりにトルクを増加させることでこの課題を解決している。
特に特許文献1に記載のパワーユニットでは、無段変速機構を採用し、電動機の回転が遅い時には大きく減速を行い、回転が速くなるにつれて減速比を小さくすることで走行性能を高めている。
しかしながら、上述の方法では加速がスムーズに行いにくく、停車が多い街乗りや坂が多い道での利用に不便だった。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑み、街乗りや坂の多い道での利用に適し、乗車時の快適性を高める二輪車用パワーユニットの提供及び該パワーユニットを従来品に取り付ける方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本願発明は、電動機と、クラッチ機構を有する駆動部と、を備え、前記電動機の出力を前記クラッチ機構に常に増速して伝達する伝達部を有するパワーユニットである。
このように、電動機の増速した出力を、クラッチを介して駆動部に伝えるようにすることで、出力部分に係る負担を少なくすることができると同時に、電動機の出力をクラッチに素早く伝達することができるようになり、低速でも加速をスムーズに行うことができる。
【0007】
本発明の好ましい形態では、前記電動機は、回転動力を出力する電動出力軸を有し、前記駆動部は、回転動力が入力される駆動入力軸を有し、前記伝達部は、前記電動出力軸の端部に設けられる駆動伝達体と、前記駆動入力軸の端部に設けられる従動伝達体と、を接続し、前記駆動伝達体の径は、前記従動伝達体の径よりも小さい。
このように、駆動伝達体と従動伝達体の径を調整することによって、シンプルな構成で確実に増速機構を設けることができる。
【0008】
本発明の好ましい形態では、前記伝達部は、前記駆動伝達体と前記従動伝達体の間に設けられる巻き掛け式伝達装置である。
このようにすることで、伝達部の設計の自由度を高め、修理や取り付けを容易にすることができる。
【0009】
本発明の好ましい形態では、前記電動機と前記駆動部を接続する接続装置を備え、前記接続装置は、前記電動機を保持するブラケットと、前記伝達部と、を有し、前記ブラケットは、前記駆動部に設けられている。
このように、ブラケットを設けることによって、伝達部の取り付けや修理を容易にすることができる。
【0010】
本発明の好ましい形態では、前記電動出力軸と前記駆動入力軸とが同一の平面を垂直に貫通する。
このような構成によって、該同一の平面上に2つの回転の軸が位置するようになるため、前記伝達部の接続を容易にすることができる。
【0011】
本発明の好ましい形態では、前記駆動部は、前記ブラケットを片持ち支持する。
ここにおいて片持ち支持は、前記ブラケット及び前記電動機が前記駆動部との接続点以外で自由端になっている状態を言う。これによって、前記ブラケットの取り付け自由度を向上させ、取付けを容易にすることができる。
【0012】
前記ブラケットは、前記電動機を保持する保持板と、前記駆動部に取付け支持される支持板と、が接続されて設けられ、前記保持板と前記支持板を接続するリブを有し、前記リブは、前記保持板の複数の面に接触するように設けられる。
このように前記リブと前記保持板の表面積を増やす構成によって、前記リブの位置決め及び強固な接続を容易にすることができるため、前記ブラケットの強度が上がる。
【0013】
本発明は、電動機を保持するブラケットを駆動部に取り付ける支持工程と、前記電動機から出力される動力を前記駆動部に伝達する伝達部を、前記駆動部が有するクラッチ機構に常に増速するように接続する伝達部取付け工程を含むパワーユニットの製造方法である。
このような構成によって、パワーユニットの駆動源を電動機に簡単な構成かつ簡単な方法で変更することができる。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記駆動部の一部を切除し、前記駆動部の内部が露出する開口面を設ける切除工程を含む。
このような構成によって、種々の形状を持つパワーユニットに対応して前記ブラケットを容易に取付けることができるようになる。
【発明の効果】
【0015】
上記課題を解決する本発明は、特に街乗りや坂の多い道での利用に適し、乗車時の快適性を高める二輪車用パワーユニットの提供及び該パワーユニットを従来品に取り付ける方法の提供を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第一の実施形態に係るパワーユニットが取り付けられている、自動二輪車を表す側面図である。
【
図2】本発明の第一の実施形態に係るA-A’断面における、パワーユニットの断面図及び側面図である。
【
図3】本発明の第一の実施形態に係るパワーユニットに取り付けられる接続装置の、分解斜視図である。
【
図4】本発明の第一の実施形態に係るパワーユニットに取り付けられる接続装置の、組み立てた状態の斜視図である。
【
図5】本発明の第一の実施形態に係るパワーユニットに取り付けられる接続装置の、電動機を保持している様子を表す斜視図である。
【
図6】本発明の第一の実施形態に係るパワーユニットに取り付けられる接続装置の、油密部を接続している状態を表す斜視図である。
【
図7】本発明の第二の実施形態に係るパワーユニットの断面図である。
【
図8】本発明の第三の実施形態に係るパワーユニットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を用いて、本発明の各実施形態に係るパワーユニット及び接続装置について説明する。説明は、実施形態の構成、実施の方法、他の実施例の順に詳述する。また、本実施形態において、符号Bは二輪車、符号Pはパワーユニット、符号Xは接続装置を表す。
なお、以下に示す実施形態は本発明の一例であり、本発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、出願書類中の「略」は、その後に続く形状に面取りや丸め加工がなされていること、また形状を構成する要素がその構成の機能を阻害しない範囲内で変形や長さ変更されているものを含むことを意味する概念である。また、二輪車は、いわゆる鞍乗りの車両を意味するもので三輪以上の車両であってもよい。
【0018】
図1は、本実施形態に係る発明に係るパワーユニットPが取り付けられた二輪車Bを表している。
二輪車Bは、自動二輪車であって、車体を構成するフレームB1に様々な部品が取り付けられて構成されている。フレームB1の前方においては、前輪B2がフロントフォークB3を介して設けられており、ハンドルB4によって操作可能となっている。また、フレームB1の上方においてはシートB5が設けられており、ここにおいて人間が跨って走行できる。さらにフレームB1の後方においては後輪B6があり、フレームB1に固定されているサイドカバーB7及びシートB5の後方から下方へ伸びるスイングアームB8によって支持されている。
フレームB1の側方には、パワーユニットPや使用者が足を乗せるステップB9が固定されている。パワーユニットPにおいて発生する適切な回転動力は、サイドカバーB7内部にあるドライブチェーンによって後輪B6が有するスプロケットに伝達され、二輪車Bを駆動する。
【0019】
パワーユニットPは、適切な回転動力を発生させる動力機関であって、電動で回転動力を発生させる電動機1と、電動機1で発生させた回転動力を走行に適切なトルク・回転数の動力に調整する駆動部2と、電動機1と駆動部2とを接続する接続装置Xと、によって構成されている。
【0020】
電動機1は、回転動力を発生させる電動機本体11と、回転動力を出力する電動出力軸12と、発生した熱を放出する放熱部13と、を有する。
【0021】
電動機本体11には、電動出力軸12が軸受け111に軸支された状態で貫通し、さらに電磁力を発生させるコア112と、キー溝等によって協働回転するように篏合している。
コア112には、コイル113が適切に巻き回されており、周囲を取り囲むように磁性体であるステーター114が設けられている。さらに、電動機本体11には、コイル113が所定位置にあるときに所定方向の電力を供給するコミテーター115が設けられている。
コミテーター115がコイル113に電流を流すことによってコア112が電磁石となり、ステーター114との相互作用によって、回転動力が連続的に発生する。
【0022】
電動出力軸12は、上述の電動機本体11からの回転動力を外部に出力するシャフトの役割を行う部材であって、外部に向けて突出して設けられている。また、後述するアジャスター412と接続して、駆動スプロケット41を回転させる。
【0023】
放熱部13は、電動機本体11に貼り付けて表面積を大きくする金属製のヒートシンクであって、周囲を網状の保護部品で取り囲んでいる。
なお、放熱部13は、発生する熱をファンによって外部に放出する構成であってもよく、バイクの走行によって生じる空力を取り入れて熱を冷ます構成であってもよい。
【0024】
接続部14は、電動機1とブラケット3を接続するための部材であって、ボルトやねじ等を貫入可能な取り付け用の固定孔313が複数設けられ、また、電動出力軸12を貫通させる孔が中心に設けられている。
【0025】
駆動部2は、入力された回転動力を走行において適切な回転動力に変換する駆動機構Dと、それを格納するハウジング21によって構成されている。
本実施形態における駆動機構Dには、駆動機構Dに回転動力を入力する駆動入力軸22と、クラッチ操作によって回転の伝達制御を可能とするクラッチ機構23と、入力された回転動力を適切な回転数にしてトルクを増大させる減速機構24と、調整した回転動力をパワースプロケット26に伝達する駆動出力軸25と、を有する。
【0026】
ハウジング21は、駆動機構Dを格納する部分であって、金属製で略直方体の箱状に形成される。図に示すように、適切な位置に軸受け等の部品を取り付け可能な突起や溝を有しており、さらに、隔壁211を設けることによって、部材の取付けの自由度を上げている。
また、ハウジング21の内部は、ギアオイル等の潤滑剤が充填されることで、伝達性や冷却性を高めている。
【0027】
駆動入力軸22は、伝達部4から伝達された回転動力を駆動機構Dに入力する部分であって、隔壁211及び、隔壁211に装着された軸受けに軸支されてクラッチ機構23と接続している。
駆動入力軸22には、元のクランクシャフトを利用することも想定されるが、好ましくは駆動機構Dに挿入される側の端部形状を該クランクシャフトと同一とした円柱のシャフトを使用する。
【0028】
クラッチ機構23は、駆動機構Dの一部である。駆動入力軸22及び減速機構24と接続されており、駆動入力軸から所定の回転動力が入力されたときに摩擦力等によって減速機構24に駆動を伝達できるように構成されている。また、伝達部4との位置関係では隔壁211を介した別室に設けられている。
さらに、クラッチ機構23は二輪車Bに設けられるクラッチ操作部によって操作可能にしていてもよく、遠心クラッチとして所定の回転速度のときに自動で接続を切替え可能であるようにしてもよい。
【0029】
減速機構24は、複数の減速ギアからなり、駆動入力軸22から入力された回転動力を減速する駆動機構Dの一部分である。減速ギアは、小減速ギア241を駆動ギアとし、小減速ギア241に比べて歯数の多い大減速ギア242を従動ギアとすることによって減速をすることができるように構成されており、これらの構成を連続して設けることによって高い減速比を達成している。さらに、
図2に示す通り、プーリー243と減速ベルト244を用いて無段変速機構(CVT)が設けられていても良く、クラッチ機構23から動力伝達がされていないときに接続される減速ギアを歯数の異なるものに変更できる機構を設けていてもよい。なお、
図2(a)はA-A’断面における断面図を表し、
図2(b)は後述する伝達部4以外を破線で表した側面図を表す。
【0030】
駆動出力軸25は、減速機構24と接続されており、減速機構24からの回転動力をパワーユニットPの外部へ伝達する金属製のシャフト部材である。駆動出力軸25は、一端がハウジング21の内側において軸支されており、他端がハウジング21から突出して、ハウジング21の外部に設けられるパワースプロケット26と接続している。
【0031】
接続装置Xは、電動機1と、駆動部2とを接続して動力を伝える部品であり、電動機1を保持するとともに駆動部2と接続されるブラケット3と、電動機1で発生する回転動力を駆動部2に伝達する伝達部4と、伝達部4の周辺を油密に構成するための油密部5と、により構成されている。
【0032】
ブラケット3は、
図3及び
図4に示すように、電動機1を保持する保持板31と、支持板32と、保持板31と支持板32とを上下から挟み込んで支持するリブ33と、によって構成されている。
ここで、
図3(a)は、ブラケット3の分解斜視図を表し、
図3(b)は、下方に取り付けられるリブ33の角度を変えて見た図を表し、
図4はブラケット3を組み立てた状態を表す斜視図である。
【0033】
保持板31は、電動機1を保持する平板状の部材であって、電動機1と密着して保持する電動機支持部分311と、電動機支持部分311から突出し、支持板32及びリブ33と接続する突出部分312とが一体となって設けられている。なお、
図3においてその境界部分を破線で示している。
【0034】
電動機支持部分311は、一面が接続部14と略同一の面積を持つ面を有する略8角形の部分であって、当該面において電動機1と略密着して固定する。
また、ボルトやねじを貫入して電動機1を固定するための固定孔313が複数個所に設けられており、またその中心には、電動出力軸12を貫入可能とする大径孔314が設けられている。
【0035】
突出部分312は、電動機支持部分311の一側面から突出して設けられている直方体の部分である。ここにおいて、電動機支持部分311と突出部分312が共有する辺の長さは、電動機支持部分311において突出部分312が設けられる辺の長さよりも短い。これによって、電動機支持部分311の突出部分312が設けられる面において、その一部が露出する露出面315が上方及び下方に生じる。
また、突出部分312の上面及び底面は、後述するリブ支持面333を乗せ置かれるよう平面として形成されており、さらにリブ33をボルト等によって取り付けるための孔であるリブ孔316が設けられている。
【0036】
支持板32は、略直方体平板状の部材であって、実際に駆動部2に取り付けられる面には伝達部4を貫入するための伝達孔321が設けられており、また、上面にはリブ孔316が設けられている。
【0037】
リブ33は、使用状態において曲がらない程度の剛性を有する平面視台形状の部材であって、リブ本体部分331と、リブ本体部分331の上面あるいは底面の一部が隆起することによって形成される隆起部分332とが一体になって構成されている。なお、
図3においては二部分の境界線を破線で示している。
【0038】
リブ本体部分331は、直方体の一角に面取り処理を施した略台形柱状の部材である。リブ本体部分331の上面において、隆起部分332が設けられないリブ支持面333は、幅を突出部分312及び支持板32の厚みと略同一としたL字状となり、そこに複数のリブ孔316が設けられている。また、リブ本体部分331の厚みは、露出面315の高さと略同一になるように構成されており、面取りによって辺の長さが短くなった辺を含む側面の一つが露出面315と接触する第一接触面334となる。
【0039】
隆起部分332は、
図3(b)に示すように、リブ本体部分331の上面において垂直に隆起する個所であって、当該個所には面取りされた辺を含み、平面視で略台形柱状となる。
リブ支持面333上において、隆起部分332によって露出形成される2つの面は、第二接触面335と第三接触面336となり、それぞれ支持板32と保持板31と接触する。
隆起部分332は、リブ支持面333が設けられていれば、リブ本体部分331の他の個所に設けられていてもよく、特にリブ支持面333を挟むように隆起部分332を設ければ、位置決め精度が上がり、強度も高くなる。なお、隆起部分332は、CNC等によって切削加工で設けられることが好ましい。
【0040】
また、保持板31に対して支持板32が平面視でT字型になるように取り付けても良い。この場合、リブ33には、T字状の部分に合わせて隆起部分332及びリブ支持面333が設けられる。
【0041】
伝達部4は、電動機1で発生した回転動力を駆動部2に増速して伝達する部分であって、電動出力軸12と協働して回転する駆動伝達体4Aとしての駆動スプロケット41と、駆動入力軸22と協働して回転する従動伝達体4Bとしての従動スプロケット42と、駆動スプロケット41と従動スプロケット42とを接続するベルト部43と、によって、常に増速する巻き掛け式伝達装置として構成されている。
図5には、ブラケット3に電動機1及び駆動スプロケット41を接続し、さらにチェーン式のベルト部43を取り付けた状態を表している。
図6は、油密部5を取り付けた状態を表している。なお、図中においては駆動部2並びに従動スプロケット42の記載は省略している。
【0042】
駆動スプロケット41は、キー溝等によって電動出力軸12と協働して回転可能に構成されており、ベルト部43とかみ合う歯を有する駆動スプロケット本体411と電動出力軸12と駆動スプロケット41との位置の調整を行うアジャスター412と、によって構成されている。
【0043】
駆動スプロケット本体411は、ベルト部43にかみ合う歯車部材であって、その中心においてアジャスター412の先端が貫入し、溝を介して回転動力を伝達可能にしている。
また、駆動スプロケット本体411の両面には、取り付け用の円盤部材がそれぞれ設けられている。それぞれの円盤部材には、中心においてアジャスター412が貫入するやや大きい孔が設けられており、また、中心から離間した位置において2つの孔部が対向して設けられている。これらの孔部に対応する孔が駆動スプロケット本体411にも設けられており、それぞれにそれぞれボルトを貫入することによって、回転の際の重心を安定させつつ駆動スプロケット本体411への回転動力の伝達をより強固に行うことができる。
【0044】
アジャスター412は、駆動スプロケット41と軸方向において結合している略円筒形の部材であって、内部に有するキー溝等によって電動出力軸12と協働して回転する。また、アジャスター412の先端部は細径で複数の溝部が設けられており、駆動スプロケット本体411の中心とかみ合い接続する。
このように、アジャスター412を介すことによって、駆動スプロケット41と、従動スプロケット42とを、同一平面上にあるように調整することができる。
アジャスター412は、電動出力軸12の周囲に円筒の部材を二重に取り囲ませ、二つの円筒部材の間に軸受けを設けることによって内側の芯のみが回転する構成としており、この回転が駆動スプロケットに伝達される。軸受けと円筒部材の間には、パッキンが設けられることによって油密になるようにしてある。
これによって、使用者が誤ってアジャスター412に接触したときに巻き込まれることを防止できる。
さらに、アジャスター412は、大径孔314に貫通可能な大きさとなるように設けられており、これによって取り付けを容易にすることができる。なお、アジャスター412は、従動スプロケット42に設けられていてもよい。
【0045】
従動スプロケット42は、
図2に示すように、ベルト部43とかみ合う歯車部材であって、駆動スプロケット本体411と同一のモジュール径となるように構成される。ここにおいて、駆動スプロケット本体411と異なる歯数にすることによって減速比の調整を行っている。本実施形態においては、駆動スプロケット本体411の歯数が従動スプロケット42の歯数の1.5倍となるように構成されている。これによって駆動スプロケットの動力が、従動スプロケットに増速して伝達され、クラッチ機構23が作動しやすくなる。
【0046】
また、従動スプロケット42の代わりにベルトが渡されたプーリーの間隔を変更することで減速比を調整できる機構(CVT)を設けていても良く、この場合、駆動側のプーリー(駆動伝達体4A)の径を従動側のプーリー(従動伝達体4B)の径よりも大きくし、さらに駆動側のプーリーの最小の巻き掛け径が従動側のプーリーにおける最小の巻き掛け径よりも大きくなるようにする。好ましくは駆動側のプーリーの最小の巻き掛け径が従動側のプーリー(従動伝達体4B)の径よりも大きくなるようにする。
なお、回転動力が伝達される高さを調整するアジャスターを介して従動スプロケット42が接続されていてもよい。
【0047】
ベルト部43は、
図5に示すように金属製のチェーンで構成された環状の巻き掛け部材であって、駆動スプロケット本体411及び従動スプロケット42の歯とかみ合う間隔で隙間を有する。
一方、ベルト部43は、タイミングベルトによって構成されていてもよく、これによれば噛み合い時の騒音を抑えるとともに、ベルト部43の交換を容易にすることができる。
【0048】
油密部5は、内部にギアオイル等の潤滑油が充填されている部分又はそれを達成するための部品であって、伝達部4を格納する。これにより、スプロケットやチェーンの摩耗を抑えるとともに、騒音を低減することができる。
油密部5は、駆動スプロケット本体411及びベルト部43を格納する油密箱51と、油密箱51とブラケット3とを接続する油密支持部52と、駆動部2の内部を油密にするための油密蓋53と、部材同士の隙間を埋めて油密とするガスケット54と、油密箱51と油密箱51に貫入されるアジャスター412との間の隙間を埋めるパッキン55と、によって構成されている。
【0049】
油密箱51は、内部に駆動スプロケット本体411とベルト部43とを組み合わせた状態で格納する部品であって、第一油密箱511と第二油密箱512の所定の面を合わせ、所定位置に設けられた油密孔513にボルトやねじを取り付けることによって箱体を形成する。なお、第一油密箱511と第二油密箱512の間にはガスケット54が入れ込まれており、内部を油密にしている。
第一油密箱511と第二油密箱512が分割される方向は電動出力軸12に垂直に交わる面と平行であることが好ましく、これによって油密箱51を分解した際に駆動スプロケット本体411の全体が露出し、取り付けを容易にできる。
また、組み立てられた状態の油密箱51は、その一面において伝達孔321と略同一の形状に開口する部分を有し、支持板32に組付け支持された状態において当該開口する部分と伝達孔321とが接続して設けられる。
【0050】
油密支持部52は、保持板31の一面から突出して設けられ、油密箱51をその端部で支持する。支持の方法はボルトやねじ等を油密孔513に入れ込んでの螺着や接着などが想定されるがこれに限られず、またリブ33に固定して設けてもよい。なお、第二油密箱512と一体形成されていてもよい。
【0051】
油密蓋53は、駆動部2の側面に設けられる板状の部材であって、ガスケット54を介して駆動部2に固定されるており、これにより駆動部2の内部を油密にする。
【0052】
ガスケット54は、油密部内部からの油漏れを防ぐために、所定の形状に切り抜かれた薄板状のシール材である。シリコンまたはゴムによって形成され、部材同士に挟まれることによって部材間の隙間を油密としている。本実施形態においては、第一油密箱511と第二油密箱512の間、支持板32と駆動部2の間、油密蓋53と駆動部2の間、油密箱51と支持板32の間に設けられている。
【0053】
パッキン55は、アジャスター412の周辺を取り囲むように設けられたリング状の弾性部材であって、アジャスター412から油が漏れることがないようにする。
【0054】
以下、
図2~6を用いて、本発明の接続装置Xを用いて熱機関によって動作するパワーユニットPを、電動機1によって動作するように接続装置を取り付ける方法を示す。本発明は、上記の目的をもって取り付けを行う製造者によって実施される。また、以下に示す実施の方法は一例であり、その順番は前後してもよい。
【0055】
(切除工程)
まず、製造者は、熱機関が取り付けてあるパワーユニットPにおいて、熱機関に係る部品をハウジング21から切除し、駆動機構Dの一部を露出させる。これにより、後述する支持工程にあたって適切な位置に、伝達孔321を包含するのに十分な大きさを持つ、開口を有する平面状部分である開口面を設け、その開口を通して駆動入力軸22の一部を視認可能な状態とする。具体的に切除する部品としては、シリンダーヘッド、シリンダー、エアファンネル、フエルインジェクション、キャブレター等が挙げられ、切除せずに残すものにはクラッチ機構23や、減速機構24などの駆動機構Dが挙げられる。
切除にあたって、ハウジング21がその部品用の容器を分解可能に構成している場合は、それに従って分解することが好ましく、切除に切断を要する場合にはジグソーやディスクグラインダーを用いて切断を行う。
【0056】
(従動スプロケット取り付け工程)
次に、製造者は、従動スプロケット42を駆動入力軸22に取り付ける。
なお、駆動入力軸22は、クランクシャフトが篏合されていた穴に、端部を該クランクシャフトと同一形状としたシャフトを想定しているが、クランクシャフトのシャフト部分を用いてもよい。
製造者は駆動入力軸22を駆動機構Dと接続した後、従動スプロケット42を駆動入力軸22の端部に篏合して接続する。
【0057】
(支持工程)
次に、製造者は、ハウジング21が有する開口に、伝達孔321を合わせて支持板32を取り付ける。ここにおいて、伝達孔321を平面視した際に、従動スプロケット42の少なくとも一部、好ましくは全体が視認可能となるように取り付けを行う。取り付けは、取付け孔322にボルトやねじを入れ込むことによって行う。
【0058】
(ブラケット組立工程)
次に製造者は、ブラケット3の組立を行う。
製造者は保持板31と支持板32を直角に接触させ、その状態において上下からリブ33を取り付け、リブ孔316にボルトやねじを入れ込むことによって保持板31と支持板32とを接続する。
この際、保持板31及び支持板32の上面部分とリブ支持面333、露出面315と第一接触面334、支持板32の表面と第二接触面335、保持板31の表面と第三接触面336がそれぞれ接触する。
このように、リブ33と他の部材が接触する表面積を増やすことによって、位置決めを確実に行うことができるとともに、ブラケット3を強固に固定することができる。特に、第一接触面334と第二接触面335は互いに平行に位置し、別々の部材と接触することによって互いに押し付け合う力が発生するため、位置決めをより確実に行うことができる。
【0059】
(電動機取り付け工程)
次に、製造者は、保持板31に電動機1を取り付ける。この際、大径孔314の中心部において電動出力軸12が貫入するようにする。
製造者は、接続部14と保持板31の表面を接触させ、その状態において2つの部材の対応位置に設けられた複数の固定孔313のそれぞれにボルトやナットを入れ込むことによって、電動機1を取り付ける。
【0060】
(伝達部取り付け工程)
次に、製造者は、伝達部4を取り付ける。
製造者は、電動出力軸12の端部にアジャスター412を篏合させて取り付け、アジャスター412を油密支持部52と結合した第二油密箱512に油密に貫入させる。その後、アジャスター412の先端に駆動スプロケット本体411を回転動力伝達可能に取り付ける。この際、駆動スプロケット本体411の両面を円盤部材で挟み込み、中心部及び相対して設けられる2つのボルトで固定する。これによって回転動力を確実に伝達する。
続けて、製造者は、駆動スプロケット本体411及び従動スプロケット42の間を、ベルト部43によって接続する。
【0061】
(油密工程)
最後に、製造者は、油密部5を取り付ける。
製造者は、第二油密箱512に第一油密箱511を油密に取り付けることによって油密箱51を形成する。油密箱51は、取付け孔322にボルトやねじを入れ込むことによって支持板32及びハウジング21と固定する。
続いて、製造者は、ハウジング21において、切除工程で穴が開いた個所に油密蓋53を取り付けることによって、ハウジング21の内部を油密にする。
そして、製造者は、油密部5の内部をギアオイルで満たすことによって、伝達部4を潤滑油で覆うようにする。
【0062】
上記工程の組み合わせによって、様々な形状のパワーユニットPの熱機関を電動機1に変更することができるようになる。すなわち、支持板32の形状や、アジャスター412及び油密支持部52の長さを変更するだけで、外部に露出するどのような駆動部2にも電動機1を取り付けることができるようになる。
駆動入力軸22は、伝達部4とベベルギア等を介して接続されることによって、回転が伝達される角度を適宜変更してもよい。例えば、ブラケットを
図1の紙面前方に突出するように設けてもよい。
【0063】
好ましくは、ブラケット3は、シリンダーヘッドがあった位置に設けられる。
通常、シリンダーヘッドは取り外し可能に構成されており、取り外した面が平面状の開口面となる。さらにシリンダーヘッドの近傍には駆動入力軸22にあたるクランクシャフトが設けられているため、この位置において支持板32を取り付けることで、その後の伝達部4等の取り付けを簡便にすることができる。
【0064】
好ましくは、伝達孔321に対して垂直となる面と平行に開放面を有するようにハウジング21を切除する。これによって、従動スプロケット42の取り付けを容易に行うことができる。
【0065】
好ましくは、電動機1及びブラケット3は、二輪車Bに接触しないように設ける。すなわち、二輪車Bとの間に固定部品を設けないことによって、電動機1及びブラケット3をハウジング21に片持ち支持させる。上記構成によって、様々な二輪車Bに接続装置Xに対応させることができる。
【0066】
また、パワーユニットPをその全体を覆う箱体に格納してもよい。これにより、騒音の低減ができ、さらに見栄えをよくすることができる。
この場合においては、箱体とブラケット3とを接続できるように構成することが好ましい。
【0067】
《第二の実施形態》
以下、
図7を用いて本発明の第二の実施形態について詳述する。第一の実施形態と同様の構成については、同じ符号を用いて説明を省略する。
本実施形態のパワーユニットPは、電動機1と、ハウジング21に格納される駆動機構Dを有する駆動部2と、電動機1と駆動部2とを接続する接続装置Xを備え、接続装置Xは、電動機1の動力を駆動部2に伝達する伝達部4を有する。
【0068】
電動機1は、電動出力軸12がハウジング21の内部に貫通するようにハウジング21の外側に中空のブラケット3を介して取付られており、電動出力軸12の延長線が、駆動機構Dのうち駆動入力軸22の延長線と交差するように設けられ、より好ましくは直交するように設けられている。
【0069】
伝達部4は、電動出力軸12の突端部に設けられ、電動出力軸12と協働して回転する駆動伝達体4Aとしての駆動ベベルギア44と、駆動入力軸22の突端部に設けられ、駆動入力軸22と協働して回転する従動伝達体4Bとしての従動ベベルギア45と、を有する。
【0070】
駆動ベベルギア44と、従動ベベルギア45と、は同一のモジュール径となるように設けられた傘歯の歯車であって、それぞれが当接することで動力が伝達される。ここにおいて、各ギアを平面視したとき、駆動ベベルギア44の径は、従動ベベルギア45の径よりも大きくなるように設けられている。このようにベベルギアを用いることによって、設計の自由度をより高めることができる。
【0071】
《第三の実施形態》
以下、
図8を用いて本発明の第三の実施形態について詳述する。ここにおいて、第一の実施形態と同様の構成については、同じ符号を用いて説明を省略する。
本実施形態のパワーユニットPは、電動機1と、ハウジング21に格納される駆動機構Dを有する駆動部2と、電動機1と駆動部2とを接続する接続装置Xを備え、接続装置Xは、電動機1の動力を駆動部2に伝達する伝達部4を有する。
【0072】
電動機1は、電動出力軸12がハウジング21の内部に貫通するようにハウジング21の外側に中空のブラケット3を介して取付られており、電動出力軸12と、駆動機構Dのうち駆動入力軸22とが平行に設けられ、より好ましくはハウジング21の1面と平行な面上において平行に設けられている。
【0073】
伝達部4は、電動出力軸12上に設けられ、電動出力軸12と協働して回転する駆動伝達体4Aとしての駆動歯車46と、駆動入力軸22上に設けられ、駆動入力軸22と協働して回転する従動伝達体4Bとしての従動歯車47と、を同一平面上に有する。
【0074】
駆動歯車46と従動歯車47は、同一のモジュール径となるように設けられた平歯車であって、それぞれが当接することで動力が伝達される。ここにおいて、駆動歯車46の歯数は従動歯車47の歯数よりも多く、その径は駆動歯車46の方が大きい。このように歯車を用いることによって、構成をよりコンパクトにすることができる。
【符号の説明】
【0075】
B 二輪車
B1 フレーム
B2 前輪
B3 フロントフォーク
B4 ハンドル
B5 シート
B6 後輪
B7 サイドカバー
B8 スイングアーム
B9 ステップ
P パワーユニット
1 電動機
11 電動機本体
111 軸受け
112 コア
113 コイル
114 ステーター
115 コミテーター
12 電動出力軸
13 放熱部
14 接続部
2 駆動部
21 ハウジング
211 隔壁
D 駆動機構
22 駆動入力軸
23 クラッチ機構
24 減速機構
241 小減速ギア
242 大減速ギア
25 駆動出力軸
26 パワースプロケット
X 接続装置
3 ブラケット
31 保持板
311 電動機支持部分
312 突出部分
313 固定孔
314 大径孔
315 露出面
316 リブ孔
32 支持板
321 伝達孔
322 取付け孔
33 リブ
331 リブ本体部分
332 隆起部分
333 リブ支持面
334 第一接触面
335 第二接触面
336 第三接触面
4 伝達部
41 駆動スプロケット
411 駆動スプロケット本体
412 アジャスター
42 従動スプロケット
43 ベルト部
4A 駆動伝達体
4B 従動伝達体
5 油密部
51 油密箱
511 第一油密箱
512 第二油密箱
513 油密孔
52 油密支持部
53 油密蓋
54 ガスケット
55 パッキン