(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/36 20100101AFI20241120BHJP
H01M 50/46 20210101ALI20241120BHJP
H01M 4/60 20060101ALI20241120BHJP
H01M 4/04 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
H01M10/36 Z
H01M50/46
H01M4/60
H01M4/04 A
(21)【出願番号】P 2024071587
(22)【出願日】2024-04-25
【審査請求日】2024-05-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517228881
【氏名又は名称】テックスインターナショナル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004163
【氏名又は名称】弁理士法人みなとみらい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 竹春
(72)【発明者】
【氏名】盧 紹芫
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-219723(JP,A)
【文献】特開2014-143171(JP,A)
【文献】特開2018-018634(JP,A)
【文献】特開昭62-015770(JP,A)
【文献】特開2001-266885(JP,A)
【文献】特開2013-131327(JP,A)
【文献】特開2014-011000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04-10/39
H01M 4/02- 4/62
H01M 50/46
H01M 12/08
H01M 8/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池の製造方法であって、
正極用高分子樹脂金属錯体を製造する正極用混合物製造工程と、
前記正極用高分子樹脂金属錯体を含む層を正極集電板に形成することで正極板を製造する、正極板製造工程と、
負極用高分子樹脂金属錯体を製造する負極用混合物製造工程と、
前記負極用高分子樹脂金属錯体を含む層を負極集電板に形成することで負極板を製造する、負極板製造工程と、
前記正極板と前記負極板を用いてセルを製造する、セル製造工程とを含み、
前記正極用混合物製造工程は、アクリル樹脂材料と、金属元素を含む化合物と、を混合し正極用高分子樹脂金属錯体を得ることを含み、
前記負極用混合物製造工程は、アクリル樹脂材料又はポリビニルアルコールと、酸化数が2価から3価の間で増減する金属元素を含む化合物と、を混合し負極用高分子樹脂金属錯体を得ることを含む、
電池の製造方法。
【請求項2】
前記正極用混合物製造工程は、アクリル樹脂材料と、酸化数が5価の金属を含む化合物とを混合する工程を含み、
前記負極用混合物製造工程は、アクリル樹脂材料又はポリビニルアルコールと、酸化数が2価の金属を含む化合物とを混合する工程を含む、
請求項1に記載の電池の製造方法。
【請求項3】
前記セル製造工程は、前記正極板と、前記負極板の間にセパレーターを挟む工程である、
請求項1又は2に記載の電池の製造方法。
【請求項4】
前記正極用混合物製造工程は、さらに、カーボンを混合することを含み、
前記負極用混合物製造工程は、さらに、カーボンを混合することを含む、
請求項1又は2に記載の電池の製造方法。
【請求項5】
電池であって、
正極板と、負極板と、セパレーターとを含み、
前記正極板は、正極用高分子樹脂金属錯体と、正極集電板とを有し、
前記正極用高分子樹脂金属錯体は、アクリル樹脂と、金属元素とを含み、
前記負極板は、負極用高分子樹脂金属錯体と、負極集電板とを有し、
前記負極用高分子樹脂金属錯体は、アクリル樹脂と、酸化数が2価から3価の間で増減する金属元素とを含む、
電池。
【請求項6】
前記正極板と前記負極板に前記セパレーターが挟まれた構造となっており、
前記正極板の前記正極用高分子
樹脂金属錯体の塗布面、及び前記負極板の前記負極用高分子
樹脂金属錯体の塗布面は、前記セパレーター側の面となるように積層される、
請求項5に記載の電池。
【請求項7】
負極板の製造方法であって、
負極用高分子樹脂金属錯体を製造する負極用混合物製造工程と、
前記負極用高分子樹脂金属錯体を含む層を負極集電板に形成することで負極板を製造する、負極板製造工程とを含み、
前記負極用混合物製造工程は、アクリル樹脂材料又はポリビニルアルコールと、酸化数が2価から3価の間で増減する金属元素を含む化合物と、を混合し負極用高分子樹脂金属錯体を得ることを含む、
負極板の製造方法。
【請求項8】
負極板であって、
前記負極板は、負極用高分子樹脂金属錯体と、負極集電板とを有し、
前記負極用高分子樹脂金属錯体は、アクリル樹脂又はポリビニルアルコールと、酸化数が2価から3価の間で増減する金属元素とを含む、
負極板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池の製造方法、電池、正極の製造方法、正極、負極の製造方法、負極に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電池としてリチウムイオン電池が知られている(特許文献1)。
しかし、リチウムイオン電池は可燃性のため、発火の危険等の問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の問題点から、リチウムイオン電池に代わる新たな電池が求められている。
本発明の課題は、新規な電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、前記課題を解決する本発明は、
電池の製造方法であって、
正極用高分子樹脂金属錯体を製造する正極用混合物製造工程と、
前記正極用高分子樹脂金属錯体を含む層を正極集電板に形成することで正極板を製造する、正極板製造工程と、
負極用高分子樹脂金属錯体を製造する負極用混合物製造工程と、
前記負極用高分子樹脂金属錯体を含む層を負極集電板に形成することで負極板を製造する、負極板製造工程と、
前記正極板と前記負極板を用いてセルを製造する、セル製造工程とを含み、
前記正極用混合物製造工程は、アクリル樹脂材料と、金属元素を含む化合物と、を混合し正極用高分子樹脂金属錯体を得ることを含み、
前記負極用混合物製造工程は、アクリル樹脂材料又はポリビニルアルコールと、酸化数が2価から3価の間で増減する金属元素を含む化合物と、を混合し負極用高分子樹脂金属錯体を得ることを含む、
電池の製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、新規な電池の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下本発明の実施の形態について説明し、本発明の理解に供する。ただし、本発明は以下の好ましい実施形態に限定されず、本発明の範囲内で自由に変更することができるものである。
【0009】
本発明は、電池の製造方法であって、
正極用高分子樹脂金属錯体を製造する正極用混合物製造工程と、
前記正極用高分子樹脂金属錯体を含む層を正極集電板に形成することで正極板を製造する、正極板製造工程と、
負極用高分子樹脂金属錯体を製造する負極用混合物製造工程と、
前記負極用高分子樹脂金属錯体を含む層を負極集電板に形成することで負極板を製造する、負極板製造工程と、
前記正極板と前記負極板を用いてセルを製造する、セル製造工程とを含み、
前記正極用混合物製造工程は、アクリル樹脂材料と、金属元素を含む化合物と、を混合し正極用高分子樹脂金属錯体を得ることを含み、
前記負極用混合物製造工程は、アクリル樹脂材料又はポリビニルアルコールと、酸化数が2価から3価の間で増減する金属元素を含む化合物と、を混合し負極用高分子樹脂金属錯体を得ることを含む、
電池の製造方法である。
【0010】
本発明に係る電池の製造方法によって製造された電池は、難燃性である。また、本発明に係る電池の製造方法によって製造された電池は長寿命である。
【0011】
また、本発明の好ましい形態では、前記正極用混合物製造工程は、アクリル樹脂材料と、酸化数が5価から4価の間で増減する金属元素を含む化合物と、を混合し正極用高分子樹脂金属錯体を得ることを含む。
【0012】
本発明の好ましい形態では、前記正極用混合物製造工程は、アクリル樹脂材料と、酸化数が5価の金属を含む化合物とを混合する工程を含み、
前記負極用混合物製造工程は、アクリル樹脂材料と、酸化数が2価の金属を含む化合物とを混合する工程を含む。
【0013】
また、本発明の好ましい形態では、前記セル製造工程は、前記正極板と、前記負極板の間にセパレーターを挟む工程である。
【0014】
また、本発明の好ましい形態では、前記正極用混合物製造工程は、さらに、カーボンを混合することを含み、
前記負極用混合物製造工程は、さらに、カーボンを混合することを含む。
【0015】
また、本発明は、電池であって、
正極板と、負極板と、セパレーターとを含み、
前記正極板は、正極用高分子樹脂金属錯体と、正極集電板とを有し、
前記正極用高分子樹脂金属錯体は、アクリル樹脂と、金属元素とを含み、
前記負極板は、負極用高分子樹脂金属錯体と、負極集電板とを有し、
前記負極用高分子樹脂金属錯体は、アクリル樹脂又はポリビニルアルコールと、酸化数が2価から3価の間で増減する金属元素とを含む、
電池でもある。
【0016】
本発明に係る電池は、難燃性である。また、本発明に係る電池は、長寿命である。
【0017】
また、前記正極用高分子樹脂金属錯体は、好ましくは、アクリル樹脂と、酸化数が5価から4価の間で増減する金属元素とを含む。
また、より前記正極用高分子樹脂金属錯体は、好ましくは、アクリル樹脂と、酸化数が5価から3価の間で増減する金属元素とを含む。
【0018】
本発明の好ましい形態では、前記正極板と前記負極板に前記セパレーターが挟まれた構造となっており、
前記正極板の前記正極用高分子錯体の塗布面、及び前記負極板の前記負極用高分子錯体の塗布面は、前記セパレーター側の面となるように積層される。
【0019】
また、本発明は、正極板の製造方法であって、
正極用高分子樹脂金属錯体を製造する正極用混合物製造工程と、
前記正極用高分子樹脂金属錯体を含む層を正極集電板に形成することで正極板を製造する、正極板製造工程とを含み、
前記正極用混合物製造工程は、アクリル樹脂材料と、金属元素を含む化合物と、を混合し正極用高分子樹脂金属錯体を得ることを含み、
正極板の製造方法でもある。
【0020】
また、好ましくは、前記正極用混合物製造工程は、アクリル樹脂材料と、酸化数が5価から4価の間で増減する金属元素を含む化合物と、を混合し正極用高分子樹脂金属錯体を得ることを含む。
また、より好ましくは、前記正極用混合物製造工程は、アクリル樹脂材料と、酸化数が5価から3価の間で増減する金属元素を含む化合物と、を混合し正極用高分子樹脂金属錯体を得ることを含む。
【0021】
また、本発明は、正極板であって、
前記正極板は、正極用高分子樹脂金属錯体と、正極集電板とを有し、
前記正極用高分子樹脂金属錯体は、アクリル樹脂と、金属元素とを含む、
正極板でもある。
【0022】
また、本発明は、好ましくは、
前記正極用高分子樹脂金属錯体は、アクリル樹脂と、酸化数が5価から4価の間で増減する金属元素とを含む。
【0023】
また、本発明は、負極板の製造方法であって、
負極用高分子樹脂金属錯体を製造する負極用混合物製造工程と、
前記負極用高分子樹脂金属錯体を含む層を負極集電板に形成することで負極板を製造する、負極板製造工程とを含み、
前記負極用混合物製造工程は、アクリル樹脂材料又はポリビニルアルコールと、酸化数が2価から3価の間で増減する金属元素を含む化合物と、を混合し負極用高分子樹脂金属錯体を得ることを含む、
負極板の製造方法でもある。
【0024】
また、本発明は、負極板であって、
前記負極板は、負極用高分子樹脂金属錯体と、負極集電板とを有し、
前記負極用高分子樹脂金属錯体は、アクリル樹脂又はポリビニルアルコールと、酸化数が2価から3価の間で増減する金属元素とを含む、
負極板でもある。
【0025】
<1> 電池の製造方法
本発明は、電池の製造方法であって、
正極用高分子樹脂金属錯体を製造する正極用混合物製造工程(S1)と、
前記正極用高分子樹脂金属錯体を含む層を正極集電板(11)に形成することで正極板(1)を製造する、正極板製造工程(S2)と、
負極用高分子樹脂金属錯体を製造する負極用混合物製造工程(S3)と、
前記負極用高分子樹脂金属錯体を含む層を負極集電板(21)に形成することで負極板(2)を製造する、負極板製造工程(S4)と、
前記正極板(1)と前記負極板(2)を用いてセルを製造する、セル製造工程(S5)とを含み、
前記正極用混合物製造工程(S1)は、アクリル樹脂材料と、金属元素を含む化合物と、を混合し正極用高分子樹脂金属錯体を得ることを含み、
前記負極用混合物製造工程(S3)は、アクリル樹脂材料又はポリビニルアルコールと、酸化数が2価から3価の間で増減する金属元素を含む化合物と、を混合し負極用高分子樹脂金属錯体を得ることを含む、
電池の製造方法である。
【0026】
また、前記正極用混合物製造工程(S1)は、好ましくはアクリル樹脂材料と、酸化数が5価から4価の間で増減する金属元素を含む化合物と、を混合し正極用高分子樹脂金属錯体を得ることを含む。
【0027】
電池の製造方法のフローチャートを
図1に示す。
以下、各工程について詳細に説明する。
【0028】
<1-1>正極用混合物製造工程(S1)
正極用混合物製造工程(S1)においては、正極用高分子樹脂錯体を製造する。また、正極用混合物製造工程(S1)は、アクリル樹脂材料と、金属元素を含む化合物と、を混合し正極用高分子樹脂金属錯体を得ることを含む。
前記金属元素を含む化合物は、好ましくは酸化数が5価から4価の間で増減する金属元素を含む化合物である。
【0029】
アクリル樹脂材料は、アクリル酸エステルモノマーの重合体を主要な成分として含むことが好ましい。
【0030】
アクリル樹脂材料の平均分子量は、好ましくは3000以上、より好ましくは4000以上、より好ましくは4500以上である。また、アクリル樹脂材料の平均分子量は、好ましくは7000以下、より好ましくは6000以下、さらに好ましくは5500以下である。
アクリル樹脂材料の平均分子量を上記範囲内とすることで、好ましい粘性の正極用混合物が得られる。
【0031】
アクリル樹脂材料は、アクリル酸モノマーと他のモノマー(例えばメタクリル酸エステル)の共重合体を含んでいてもよい。共重合体を含むことにより、硬度、耐久性、対候性などの特性を改善することができる。
【0032】
さらに、アクリル樹脂材料は、分散剤を含んでいてもよい。分散剤は、樹脂粒子同士が凝集せずに均一に分散することを促進する。
分散剤として、アニオン系分散剤、カチオン系分散剤、非イオン系分散剤が挙げられる。
アニオン系分散剤は、樹脂粒子表面に帯電したアニオン基を持つ分子で、これにより樹脂粒子同士が反発し合い、凝集を防ぐ。アニオン系分散剤として、カルボキシル酸塩や、スルホン酸塩などが挙げられる。
カチオン系分散剤は、樹脂粒子表面に帯電したカチオン基を持つ分子で、これにより樹脂粒子同士が反発しあい、凝集を防ぐ。カチオン系分散剤として、アミン化合物や四級アンモニウム塩などが挙げられる。
非イオン系分散剤は、帯電していない分子でありながら、樹脂粒子の表面に吸着して分散を助ける作用を持つ。非イオン系分散剤として、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコールなどが挙げれられる。
【0033】
また、アクリル樹脂材料は、安定化剤を含んでいてもよい。安定化剤は、樹脂が劣化するのを防ぐことができる。
安定化剤として、酸化防止剤、光安定剤、金属錯体、赤外線吸収剤が挙げられる。
酸化防止剤は、酸素との反応を防ぎ、樹脂の劣化を遅らせる役割を果たし、樹脂の寿命が延びる。
光安定剤は、紫外線などの光による劣化を防ぎ、色あせや劣化を防ぐ。
金属錯体は、酸化や光による劣化を防ぐ役割があり、特に銅や鉄などの金属イオンが樹脂中で触媒として作用することを防ぐ。赤外線吸収剤は、赤外線による劣化を防ぎ、劣化を遅らせることができる。
【0034】
アクリル樹脂材料は、常温(25℃)で液体であることが好ましい。常温で液体であるアクリル樹脂材料を用いることにより、容易に正極用高分子樹脂金属錯体を含む層を正極集電板(11)に形成することができる。
【0035】
アクリル樹脂材料として、アクリル酸メチル(methyl acrylate)、アクリル酸エチル(ethyl acrylate)、アクリル酸ブチル(butyl acrylate)、アクリル酸n-ブチル(n-butyl acrylate)、アクリル酸2-エチルヘキシル(2-ethylhexyl acrylate)、アクリル酸2-ジメチルアミノエチル(Acrylic acid 2-(dimethylamino)ethyl)、アクリル酸2-ヒドロキシエチル(2-hydroxyethyl acrylate)から選ばれる1又は2以上のモノマーの重合体、及び/又は前記モノマーと他のモノマー(例えばメタクリル酸エステル)の共重合体を用いることができる。
【0036】
酸化数が5価から4価の間で増減する金属元素として、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)が挙げられるが、好ましくはバナジウム(V)を用いることができる。
【0037】
酸化数が5価から4価の間で増減する金属元素は、酸化数が2価から3価の間でも増減することが好ましい。
【0038】
本実施形態において、正極用混合物製造工程は、アクリル樹脂材料と、酸化数が5価の金属を含む化合物とを混合する工程を含むことが好ましい。
【0039】
酸化数が5価の金属を含む化合物として、酸化バナジウム(V2O5)、バナジウム酸塩、メタバナジン酸(HVO3)が挙げられるが、好ましくは酸化バナジウム、及びバナジウム酸塩を用いることができる。
バナジウム酸塩として、バナジウム酸アンモニウム(NH4VO3)、ナトリウムバナジウム酸(NaVO3)、カリウムバナジン酸(KaVO3)が挙げられるが、好ましくはバナジウム酸アンモニウム(NH4VO3)を用いることができる。
【0040】
正極用混合物製造工程(S1)において、金属元素が酸素原子と配位結合し、アクリル酸のカルボキシル基やメチル基と錯体を形成しアクリル酸塩錯体を形成する。
【0041】
また、本実施形態において、正極用混合物製造工程は、アクリル樹脂材料と、酸化数が4価の金属を含む化合物とを混合する工程を含んでもよい。
【0042】
アクリル樹脂材料と金属元素の比率は、アクリル樹脂材料を過剰とすることが好ましい。すなわち、アクリル樹脂材料と酸化数が5価の金属を含む化合物の比率は、アクリル樹脂材料を過剰とすることが好ましい。
具体的には、アクリル樹脂材料と酸化数が5価又は4価の金属を含む化合物の重量比は、好ましくは1:0.03~0.20、より好ましくは1:0.05~0.15、さらに好ましくは1:0.08~0.12である。
アクリル樹脂材料を十分量加えることができ、より確実に、本発明にかかる電池を製造することができる。
【0043】
正極用混合物(12)としては、正極用高分子樹脂錯体以外のものを含んでもよい。
【0044】
正極用混合物製造工程(S1)は、さらに、カーボンを混合することを含むことが好ましい。カーボンは、好ましくはカーボンの粉体である。
【0045】
アクリル樹脂材料と酸化数が5価又は4価の金属を含む化合物とカーボンの比率は、好ましくは1:0.03~0.20:0.03~0.20、より好ましくは1:0.05~0.15:0.05~0.15、さらに好ましくは1:0.08~0.12:0.08~0.12である。
上記数値範囲とすることにより、アクリル樹脂材料を十分量加えることができ、より確実に、本発明にかかる電池を製造することができる。
【0046】
<1-2>正極板製造工程(S2)
本発明は、正極用高分子樹脂金属錯体を含む層を正極集電板(11)に形成することで正極板を製造する、正極板製造工程(S2)を含む。
【0047】
正極集電板(11)として、銅板、又はカーボングラファイト板を好ましく用いることができるが、好ましくはカーボングラファイトを用いることができる。
【0048】
正極集電板(11)の厚さは、好ましくは0.01mm以上、より好ましくは0.03mm以上、さらに好ましくは0.05mm以上である。また、正極集電板(11)の厚さは、好ましくは0.015以下、より好ましくは0.12以下、さらに好ましくは0.1mm以下である。
正極集電板(11)の厚さを上記範囲内とすることで、電池の効率を上げることができる。
【0049】
正極用高分子樹脂金属錯体は、正極用混合物製造工程(S1)で製造したものを用いることができる。
【0050】
正極用高分子樹脂金属錯体を含む層の厚さは、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは20μm以上である。また、正極用高分子樹脂金属錯体を含む層の厚さは、好ましくは150μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは80μm以下である。
正極用高分子樹脂金属錯体を含む層の厚さを上記範囲内とすることで、電池の効率を上げることができる。
【0051】
正極板製造工程においては、好ましくは、正極用高分子金属錯体を含む層を正極集電板に形成した後、遠赤外線を照射する。
【0052】
また、正極板製造工程においては、
図7に示すように、正極集電板のロールを広げ、コータを用いて正極用高分子錯体(正極用混合物)を含む層を形成し、遠赤外線を照射した後、正極用高分子錯体(正極用混合物)を含む層を内側にして再びロール状にすることが好ましい。
【0053】
<1-3>負極用混合物製造工程(S3)
負極用混合物製造工程(S3)においては、負極用高分子樹脂錯体を製造する。また、負極用混合物製造工程(S3)は、アクリル樹脂材料又はポリビニルアルコールと、酸化数が2価から3価の間で増減する金属元素を含む化合物と、を混合し負極用高分子樹脂金属錯体を得ることを含む。
【0054】
アクリル樹脂材料は、<1>の<1-1>で説明したものと同様のものを用いることができる。
【0055】
酸化数が2価から3価の間で増減する金属元素として、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)が挙げられるが、好ましくは鉄(Fe)を用いることができる。
【0056】
本実施形態において、負極用混合物製造工程は、アクリル樹脂材料と、酸化数が2価の金属を含む化合物とを混合する工程を含むことが好ましい。特に、正極用混合物製造工程において、酸化数が5価の金属を含む化合物を用いる場合、酸化数が2価の金属を含む化合物を用いることが好ましい。
一方、特に、正極用混合物製造工程において、酸化数が4価の金属を含む化合物を用いる場合、酸化数が3価の金属を含む化合物を用いることが好ましい。
【0057】
酸化数が2価の金属を含む化合物として、酸化鉄(FeO)、硫酸鉄(FeSO4)、塩化鉄(FeCl2)、が挙げられるが、好ましくは酸化鉄(FeO)を用いることができる。
【0058】
以下、負極混合物製造工程(S3)において、酸化数が2価から3価の間で増減する金属元素が酸素原子と配位結合し、アクリル酸又はポリビニルアルコールのカルボキシル基やメチル基と錯体を形成し、アクリル酸塩錯体を形成する。
【0059】
本実施形態において、負極用混合物製造工程は、アクリル樹脂材料又はポリビニルアルコールと、酸化数が3価の金属を含む化合物とを混合する工程を含んでもよい。
【0060】
アクリル樹脂材料又はポリビニルアルコールと、酸化数が2価から3価の間で増減する金属元素の比率は、アクリル樹脂材料又はポリビニルアルコールを過剰とすることが好ましい。すなわち、アクリル樹脂材料又はポリビニルアルコールと、酸化数が2価の金属を含む化合物の比率も、アクリル樹脂材料を過剰とすることが好ましい。
具体的には、アクリル樹脂材料又はポリビニルアルコールと、酸化数が2価又は3価の金属を含む化合物の比率は、好ましくは1:0.03~0.20、より好ましくは1:0.05~0.15、さらに好ましくは1:0.08~0.12である。
比率を上記範囲内とすることで、アクリル樹脂材料又はポリビニルアルコールを十分量加えることができ、より確実に、本発明にかかる電池を製造することができる。
【0061】
負極用混合物(22)としては、負極用高分子樹脂錯体以外のものを含んでもよい。
【0062】
負極混合物製造工程(S3)は、さらに、カーボンを混合することを含むことが好ましい。カーボンは、好ましくはカーボンの粉体である。
【0063】
アクリル樹脂材料又はポリビニルアルコールと、酸化数が2価又は3価の金属を含む化合物とカーボンの比率は、好ましくは1:0.03~0.20:0.03~0.20、より好ましくは1:0.05~0.15:0.05~0.15、さらに好ましくは1:0.08~0.12:0.08~0.12である。
比率を上記範囲内とすることで、アクリル樹脂材料又はポリビニルアルコールを十分量加えることができ、より確実に、本発明にかかる電池を製造することができる。
【0064】
<1-4>負極板製造工程(S4)
本発明は、負極用高分子樹脂金属錯体を含む層を負極集電板(21)に形成することで負極板(2)を製造する、負極板製造工程(S4)を含む。
【0065】
負極集電板(21)として、アルミ板、又はカーボングラファイト板を好ましく用いることができるが、好ましくはカーボングラファイトを用いることができる。
【0066】
負極集電板(21)の厚さは、好ましくは0.01mm以上、より好ましくは0.03mm以上、さらに好ましくは0.05mm以上である。また、負極集電板(11)の厚さは、好ましくは0.15mm以下、より好ましくは0.12mm以下、より好ましくは0.1mm以下である。
負極集電板(21)の厚さを上記範囲内とすることで、電池の効率を上げることができる。
【0067】
負極用高分子樹脂金属錯体は、負極用混合物製造工程(S3)で製造したものを用いることができる。
【0068】
負極用高分子樹脂金属錯体を含む層の厚さは、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは20μm以上である。また、正極用高分子樹脂金属錯体を含む層の厚さは、好ましくは150μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは80μm以下である。
負極用高分子樹脂金属錯体を含む層の厚さを上記範囲内とすることで、電池の効率を上げることができる。
【0069】
負極板製造工程においては、好ましくは、負極用高分子金属錯体を含む層を負極集電板に形成した後、遠赤外線を照射する。
【0070】
また、負極板製造工程においては、
図7に示すように、負極集電板のロールを広げ、コータを用いて負極用高分子錯体(負極用混合物)を含む層を形成し、遠赤外線を照射した後、負極用高分子錯体(負極用混合物)を含む層を内側にして再びロール状にすることが好ましい。
【0071】
<1-5>セル製造工程(S5)
セル製造工程(S5)は、前記正極板(1)と、前記負極板(2)の間にセパレーター(3)を挟む工程であることが好ましい。
【0072】
正極板(1)の正極用混合物(12)の塗布面、負極板(2)の負極用混合物(22)の塗布面は、セパレーター(3)側の面となるように積層することが好ましい。
【0073】
セパレーター(3)としては、酢酸セルロースを好ましく用いることができる。
酢酸セルロースを用いることで、より確実に本発明に係る電池を製造することができる。
【0074】
さらに、セパレーターには電解液を噴霧することが好ましい。電解液として、例えば有機ゲルマニウム液を用いることができる。
有機ゲルマニウム液を用いることで、より確実に本発明に係る電池を製造することができる。
【0075】
セパレーター(3)の厚さは、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1.0μm以上、さらに好ましくは2.0μm以上である。また、セパレーター(3)の厚さは、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。
セパレーター(3)が薄いほど、内部抵抗を小さくすることができる。
【0076】
セル製造工程(S5)では、さらに、正極板(1)又は負極板(2)の外側に絶縁体(4)を積層することが好ましい。例えば、
図6に示すように、正極板(1)(正極用混合物(12)の塗布面がセパレーター側の面)、セパレーター(3)、負極板(2)(負極用混合物(22)の塗布面がセパレーター側の面)、絶縁体(4)、の順に積層することが好ましい。
【0077】
その後、積層したものを、圧接ローラーを用いて圧接することが好ましい。
【0078】
セル製造工程においては、
図8に示すように、正極板(1)、セパレーター(3)、負極板(2)、絶縁体(4)のロールを広げ、圧接ロールにて圧接した後、積層したものをロールとして巻き取ることが好ましい。
【0079】
その後、得られた積層物を巻き、ポリカーボネート缶に入れ、電解液を追加し、密閉することが好ましい。積層物は、負極板(2)側に絶縁体(4)を積層した場合、正極板(1)と絶縁体(4)のどちらを外側にして巻いてもよい。また、正極板(1)に絶縁体(4)を積層した場合は、負極板(2)と絶縁体(4)のどちらを外側にして巻いてもよい。
【0080】
<2> 電池
本発明は、電池であって、
正極板(1)と、負極板(2)と、セパレーター(3)とを含み、
前記正極板(1)は、正極用高分子樹脂金属錯体と、正極集電板(11)とを有し、
前記正極用高分子樹脂金属錯体は、アクリル樹脂と、金属元素とを含み、
前記負極板(2)は、負極用高分子樹脂金属錯体と、負極集電板(21)とを有し、
前記負極用高分子樹脂金属錯体は、アクリル樹脂と、酸化数が2価から3価の間で増減する金属元素とを含む、
電池である。
【0081】
前記正極用高分子樹脂金属錯体は、好ましくは、アクリル樹脂と、酸化数が5価から4価の間で増減する金属元素とを含む。
【0082】
以下、各部品について詳述する。
【0083】
<2-1> 正極板(1)
正極板の構造を
図4に示す。
正極板(1)は、正極用高分子樹脂金属錯体と、正極集電板(11)とを有し、正極用高分子樹脂金属錯体は、アクリル樹脂と、金属元素とを含む。
【0084】
正極用高分子樹脂金属錯体は、好ましくは、アクリル樹脂と、酸化数が5価から4価の間で増減する金属元素とを含む。
【0085】
正極板(1)は、好ましくは正極集電板(11)正極用混合物(12)とを含み、正極用混合物(11)は、正極用高分子樹脂金属錯体を含む。
【0086】
正極集電板(11)として、<1>の<1-2>で説明したものを用いることができる。
【0087】
アクリル樹脂として、<1>の<1-1>で説明したものを用いることができる。
【0088】
金属として、<1>の<1-1>で説明したものを用いることができる。
【0089】
金属元素が酸素原子と配位結合し、アクリル酸のカルボキシル基やメチル基と錯体を形成し、正極用高分子金属錯体を形成する。
【0090】
アクリル樹脂材料と金属元素の比率は、アクリル樹脂材料を過剰とすることが好ましい。すなわち、アクリル樹脂材料と酸化数が5価の金属を含む化合物の比率も、アクリル樹脂材料を過剰とすることが好ましい。
具体的には、アクリル樹脂材料と酸化数が5価の金属を含む化合物の比率は、好ましくは1:0.03~0.20、より好ましくは1:0.05~0.15、さらに好ましくは1:0.08~0.12である。
【0091】
正極用混合物(12)は、さらに、カーボンを含むことが好ましい。カーボンは、好ましくはカーボンの粉体である。
【0092】
アクリル樹脂材料と酸化数が5価の金属を含む化合物とカーボンの比率は、好ましくは1:0.03~0.20:0.03~0.20、より好ましくは1:0.05~0.15:0.05~0.15、さらに好ましくは1:0.08~0.12:0.08~0.12である。
【0093】
<2-2> 負極板(2)
負極板(2)の構造を
図5に示す。
負極板(2)は、負極用高分子樹脂金属錯体と、負極集電板(21)とを有し、負極用高分子樹脂金属錯体は、アクリル樹脂又はポリビニルアルコールと、酸化数が2価から3価の間で増減する金属元素とを含む。
【0094】
負極板(2)は、好ましくは負極集電板(21)負極用混合物(22)とを含み、負極用混合物(21)は、負極用高分子樹脂金属錯体を含む。
【0095】
負極集電板(21)として、<1>の<1-4>で説明したものを用いることができる。
【0096】
アクリル樹脂として、<1>の<1-1>で説明したものを用いることができる。
【0097】
酸化数が2価から3価の間で増減する金属として、<1>の<1-3>で説明したものを用いることができる。
【0098】
酸化数が2価から3価の間で増減する金属元素が酸素原子と配位結合し、アクリル酸のカルボキシル基やメチル基と錯体を形成し、負極用高分子金属錯体を形成することができる。
【0099】
アクリル樹脂材料又はポリビニルアルコールと酸化数が2価から3価の間で増減する金属元素の比率は、アクリル樹脂材料を過剰とすることが好ましい。すなわち、アクリル樹脂材料又はポリビニルアルコールと酸化数が2価の金属を含む化合物の比率も、アクリル樹脂材料又はポリビニルアルコールを過剰とすることが好ましい。
具体的には、アクリル樹脂材料又はポリビニルアルコールと、酸化数が2価の金属を含む化合物の比率は、好ましくは1:0.05~0.15、より好ましくは1:0.08~0.12である。
比率を上記範囲内とすることで、アクリル樹脂材料又はポリビニルアルコールを十分量加えることができ、より確実に、本発明にかかる電池を製造することができる。
【0100】
負極用混合物(22)は、さらに、カーボンを含むことが好ましい。カーボンは、好ましくはカーボンの粉体である。
【0101】
アクリル樹脂材料又はポリビニルアルコールと、酸化数が2価の金属を含む化合物とカーボンの比率は、好ましくは1:0.05~0.15:0.05~0.15、より好ましくは1:0.08~0.12:0.08~0.12である。
比率を上記範囲内とすることで、アクリル樹脂材料又はポリビニルアルコールを十分量加えることができ、より確実に、本発明にかかる電池を製造することができる。
【0102】
<2-3> セパレーター(3)
セパレーターとして、<1>の<1-5>で説明したものを用いることができる。
【0103】
<2-4> 電池
電池の構造を
図6に示す。
本実施形態に係る電池は、正極板(1)と負極板(2)にセパレーター(3)が挟まれた構造となっていることが好ましい。また、正極板(1)の正極用混合物(12)の塗布面、負極板(2)の負極用混合物(22)の塗布面は、セパレーター(3)側の面となるように積層されることが好ましい。
【0104】
本実施形態に係る電池は、さらに、絶縁体(4)を含むことが好ましい。具体的には、正極板(1)または負極板(2)の外側に絶縁体(4)を積層することが好ましい。
【0105】
本実施形態に係る電池は、好ましくは、正極板(1)、セパレーター(3)、負極板(2)、絶縁体(4)の積層物を、正極板(1)又は絶縁体(4)が外側になるように巻いたものである。より好ましくは、それをポリカーボネート缶に入れ、電解液を追加し、密閉されたものである。
【0106】
充電時には、正極で酸化反応が起こり、負極では還元反応が起こる。
【0107】
放電時には、正極で還元反応が起こり、負極では酸化反応が起こる。
【実施例】
【0108】
<材料>
・ポリアクリル酸(5,000Polyacrylic Acid):和光一級、富士フイルム和光純薬(株)、分子式[-CH2CH(COOH)-]、平均分子量約5,000
・バナジン酸(V)アンモニウム:富士フイルム和光純薬(株)
・カーボングラファイト:東洋炭素、0.05mm~0.1mm
・銅板
・塩化鉄(II)四水和物(Iron(II) Chloride Tetrahydrate)、試薬特級、 富士フイルム和光純薬(株)、分子式:FeCl2・4H2O
・ホルムアルデヒド
・アルミ板
・酢酸セルロース:三菱製紙、NanoBase2
・ふっ素樹脂(ふっ素樹脂・PTFE・4フッ化エチレン)、厚さ0.05mm
【0109】
[1]正極用混合物製造工程(S1)
アクリル樹脂80~120gと、バナジン酸(V)アンモニウム8~12gを混合し、反応させた。得られた混合液に、さらにカーボン8~12g、水3gを混合した。
上記反応により、バナジウムが酸素原子と配位結合し、アクリル酸のカルボキシル基やメチル基と錯体を形成する。
【0110】
[2]正極板製造工程(S2)
正極用混合物製造工程(S1)で得られた正極用混合物(12)を、正極集電板(銅板)(11)に塗布した。正極集電板(11)の大きさは60mm(縦)×70mm(横)×0.05mm(厚さ)とした。正極用混合物(12)の塗布の厚さは10μm以上100μm以下とした。
その後、正極集電板(11)に塗布した正極用混合物(12)を完全に乾燥させた。
【0111】
[3]負極用混合物製造工程(S3)
水性アクリル樹脂80~120gと、塩化鉄(II)8~12gを混合し、反応させた。得られた混合液に、さらにカーボン8~12g、水4~6g、ホルムアルデヒド4~6gを混合した。
上記反応により、鉄イオンはアクリル酸のカルボキシル基の酸素原子と配位結合を形成し、錯体を形成する。
【0112】
[4]負極板製造工程(S4)
負極用混合物製造工程(S3)で得られた負極用混合物(22)を、負極集電板(アルミ板)(21)に塗布した。負極集電板(21)の大きさは60mm×70mm×0.05mmとした。負極用混合物(22)の塗布の厚さは10μm以上100μm以下とした。
その後、負極集電板(21)に塗布した負極用混合物(22)を完全に乾燥させた。
【0113】
[5]セル製造工程(S5)
[1]~[2]によって得られた正極板(1)と、[3]~[4]によって得られた負極板(2)と、セパレーター(3)と、フッ素樹脂(絶縁体(4))とを積層して、セルを製造した。
セパレーター(3)として、厚さ0.9μm以上10μm以下の酢酸セルロースを用いた。酢酸セルロースに電解液として有機ゲルマニウム液をスプレーで噴霧した。
【0114】
積層順は、
図6に示す通り、正極板(1)、セパレーター(3)、負極板(2)、絶縁体(4)の順とした。正極板(1)の正極用混合物(12)の塗布面、負極板(2)の負極用混合物(22)の塗布面は、セパレーター(3)側の面となるように積層した。
積層したものを圧接ローラーで圧接した。
【0115】
得られた積層物を、正極が外側になるように巻き、ポリカーボネート缶に入れ、電解液を追加し、密閉した。
【0116】
作成した電池の特性を表1に示す。
【0117】
【0118】
[6]充電
得られた電池を、充電器を用いて充電した。具体的には、正電荷側にプラス極をつないで、10mA以上40mA以下で充電を行った。約20000mW/secで充電を行った。電圧が3.0V以下で充電を停止した。
【0119】
充電時には、正極で酸化反応が起こり、負極で還元反応が起こる。
【0120】
図9に初回充電前の放電データ、
図10に初回充電時の充電電力のデータを示す。
【0121】
図9の縦軸は、各時間の放電電力(mW)を表す。
図9より、充電前であってもわずかに放電があることが分かる。
【0122】
図10の折れ線グラフは、各時間の充電電力(mW)(左側の縦軸に対応)を表し、棒グラフは、その時間までの充電電力の合計(mW)(右側の縦軸に対応)を表す。
図10より、本実施例で製造した電池によって充電ができることが分かる。
【0123】
[7]放電
次に、充電した電池を、出力制限を20mA/secに制限して放電した。
【0124】
放電時には、正極で還元反応が起こり、負極で酸化反応が起こる。
【0125】
図11に、初回充電後の放電データを示す。
棒グラフは、各時間の放電電力(mW)(左側の縦軸に対応)を示す。また、折れ線グラフは、その時間までの合計の放電電力(mW)(右側の縦軸に対応)を示す。
図11より、本実施例で製造した電池によって、放電が可能であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明によれば、新規な電池を提供することができる。
【符号の説明】
【0127】
1:正極板
11:正極集電板
12:正極用混合物
2:負極板
21:負極集電板
22:負極用混合物
3:セパレーター
4:絶縁体
5:電池
【要約】 (修正有)
【課題】本発明の課題は、新規な電池を提供することである。
【解決手段】電池の製造方法であって、正極用高分子樹脂金属錯体を製造する正極用混合物製造工程と、前記正極用高分子樹脂金属錯体を含む層を正極集電板に形成することで正極板を製造する、正極板製造工程と、負極用高分子樹脂金属錯体を製造する負極用混合物製造工程と、前記負極用高分子樹脂金属錯体を含む層を負極集電板に形成することで負極板を製造する、負極板製造工程と、前記正極板と前記負極板を用いてセルを製造する、セル製造工程とを含み、前記正極用混合物製造工程は、アクリル樹脂材料と、金属元素を含む化合物と、を混合し正極用高分子樹脂金属錯体を得ることを含み、前記負極用混合物製造工程は、アクリル樹脂材料又はポリビニルアルコールと、酸化数が2価から3価の間で増減する金属元素を含む化合物と、を混合し負極用高分子樹脂金属錯体を得ることを含む、電池の製造方法。
【選択図】
図1