(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】搬送車の走行制御システム及び搬送車の走行制御方法
(51)【国際特許分類】
G05D 1/244 20240101AFI20241120BHJP
G05D 1/656 20240101ALI20241120BHJP
G05D 1/43 20240101ALN20241120BHJP
【FI】
G05D1/244
G05D1/656
G05D1/43
(21)【出願番号】P 2024532313
(86)(22)【出願日】2024-03-04
(86)【国際出願番号】 JP2024007975
【審査請求日】2024-05-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521293800
【氏名又は名称】株式会社LexxPluss
(74)【代理人】
【識別番号】110002790
【氏名又は名称】One ip弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松田 錬磨
(72)【発明者】
【氏名】王 遠帆
【審査官】神山 貴行
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-107500(JP,A)
【文献】特開2002-123316(JP,A)
【文献】特開平11-353024(JP,A)
【文献】特開2020-119214(JP,A)
【文献】特開平05-333928(JP,A)
【文献】国際公開第2022/149284(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00- 1/87
G08G 1/00- 1/16
B60W 30/00-60/00
B62D 6/00- 6/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
現実のガイドラインに沿って移動可能な搬送車の走行制御システムであって、
前記搬送車の駆動部を制御することにより該搬送車の動作を制御する制御部と、
前記搬送車における特定箇所の現在の前記ガイドラインに対する相対的な位置情報及び前記ガイドラインに対する前記搬送車の姿勢情報を取得する位置姿勢取得部と、
前記搬送車の前記特定箇所に対して異なる位置に設定された仮想検出部の、前記特定箇所に対する相対的な位置情報を予め記憶する記憶部と、
前記搬送車の中心又は旋回中心よりも前側に位置し、現実の前記ガイドラインを検出するガイド検出部と、を備え、
前記仮想検出部は、前記ガイド検出部よりも後側に設定され、
前記搬送車において、前記ガイド検出部よりも後側には、前記ガイドラインを検出するセンサを設けておらず、
前記制御部は、
前記搬送車における前記特定箇所の現在の前記ガイドラインに対する相対的な位置情報及び前記ガイドラインに対する前記搬送車の姿勢情報と、前記仮想検出部の前記特定箇所に対する相対的な位置情報とに基づいて、前記ガイドラインに対する前記仮想検出部のガイドライン相対位置を推定し、推定した前記仮想検出部のガイドライン相対位置に基づいて、前記搬送車の動作を制御し、
前記仮想検出部は、前記搬送車に連結される搬送対象物における所定の位置に設定され、
前記制御部は、前記搬送車の前記特定箇所に対する前記搬送対象物の相対的な位置情報及び前記搬送車に対する前記搬送対象物の相対的な姿勢情報に基づいて、前記仮想検出部の前記特定箇所に対する相対的な位置情報を推定する、走行制御システム。
【請求項2】
前記搬送車には、前記搬送対象物の姿勢を検出する搬送対象物検出部が設けられている、請求項
1に記載の走行制御システム。
【請求項3】
走行制御システムにより、現実のガイドラインに沿って移動可能な搬送車の走行を制御する走行制御方法であって、
前記走行制御システムが、
前記搬送車の駆動部を制御することにより該搬送車の動作を制御する制御部と、
前記搬送車における特定箇所の現在の前記ガイドラインに対する相対的な位置情報及び前記ガイドラインに対する前記搬送車の姿勢情報を取得する位置姿勢取得部と、
前記搬送車の前記特定箇所に対して異なる位置に設定された仮想検出部の、前記特定箇所に対する相対的な位置情報を予め記憶する記憶部と、
前記搬送車の中心又は旋回中心よりも前側に位置し、現実の前記ガイドラインを検出するガイド検出部と、を備え、
前記仮想検出部は、前記ガイド検出部よりも後側に設定され、
前記搬送車において、前記ガイド検出部よりも後側には、前記ガイドラインを検出するセンサを設けておらず、
前記制御部は、
前記搬送車における前記特定箇所の現在の前記ガイドラインに対する相対的な位置情報及び前記ガイドラインに対する前記搬送車の姿勢情報と、前記仮想検出部の前記特定箇所に対する相対的な位置情報とに基づいて、前記ガイドラインに対する前記仮想検出部のガイドライン相対位置を推定し、推定した前記仮想検出部のガイドライン相対位置に基づいて、前記搬送車の動作を制御し、
前記仮想検出部は、前記搬送車に連結される搬送対象物における所定の位置に設定され、
前記制御部は、前記搬送車の前記特定箇所に対する前記搬送対象物の相対的な位置情報及び前記搬送車に対する前記搬送対象物の相対的な姿勢情報に基づいて、前記仮想検出部の前記特定箇所に対する相対的な位置情報を推定する、走行制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、搬送車の走行制御システム及び搬送車の走行制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種製品の製造工場や倉庫内などの施設内における荷物の搬送に自律走行可能な無人搬送車を活用することが実用化されている。例えば、特許文献1には、ガイドラインに沿って走行する搬送車の技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された技術では、搬送車がガイドラインに沿って走行するに際して、搬送車の前側と後側にガイドラインを検出するためのセンサが設けられている。しかしながら、搬送車の小型化等の観点から、センサの数を減らすことが望ましい。
【0005】
そこで、本開示は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、搬送車のガイドライン検出センサの数を減らすことが可能となる搬送車の走行制御システム及び搬送車の走行制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示によれば、現実又は仮想のガイドラインに沿って移動可能な搬送車の走行制御システムであって、
前記搬送車の駆動部を制御することにより該搬送車の動作を制御する制御部と、
前記搬送車における特定箇所の現在の前記ガイドラインに対する相対的な位置情報及び前記ガイドラインに対する前記搬送車の姿勢情報を取得する位置姿勢取得部と、
前記搬送車の前記特定箇所と異なる位置に設定された仮想検出部の、前記特定箇所に対する相対的な位置情報を予め記憶する記憶部と、を備え、
前記制御部は、
前記搬送車の前記ガイドラインに対する位置情報及び姿勢情報と、前記仮想検出部の前記特定箇所に対する相対的な位置情報とに基づいて、前記ガイドラインに対する前記仮想検出部のガイドライン相対位置を推定し、推定した前記仮想検出部のガイドライン相対位置に基づいて、前記搬送車の動作を制御する、走行制御システムが提供される。
【0007】
本開示によれば、走行制御システムにより、現実又は仮想のガイドラインに沿って移動可能な搬送車の走行を制御する走行制御方法であって、
前記走行制御システムが、
前記搬送車の駆動部を制御することにより該搬送車の動作を制御する制御部と、
前記搬送車における特定箇所の現在の前記ガイドラインに対する相対的な位置情報及び前記ガイドラインに対する前記搬送車の姿勢情報を取得する位置姿勢取得部と、
前記搬送車の前記特定箇所と異なる位置に設定された仮想検出部の、前記特定箇所に対する相対的な位置情報を予め記憶する記憶部と、を備え、
前記制御部は、
前記搬送車の前記ガイドラインに対する位置情報及び姿勢情報と、前記仮想検出部の前記特定箇所に対する相対的な位置情報とに基づいて、前記ガイドラインに対する前記仮想検出部のガイドライン相対位置を推定し、推定した前記仮想検出部のガイドライン相対位置に基づいて、前記搬送車の動作を制御する、走行制御方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、搬送車のガイドライン検出センサの数を減らすことが可能となる搬送車の走行制御システム及び搬送車の走行制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る搬送車及びガイドラインの一例を示す平面図である。
【
図2】本実施形態に係る搬送車のハードウェア構成例を示す平面図である。
【
図3】本実施形態に係る搬送車のハードウェア構成の一例を示す斜視図である。
【
図4】本実施形態に係る搬送車がガイドラインに沿って後退する場面の一例を示す図である。
【
図5】本実施形態に係る搬送車がガイドラインに沿って後退する場面の他の例を示す図である。
【
図6】本実施形態に係る搬送車及び搬送対象物とガイドラインの位置関係を示す図である。
【
図7】本実施形態に係る搬送車及び搬送対象物がガイドラインに近づくように後退制御する例を示す図である。
【
図8】本実施形態に係る搬送車と牽引台車が結合された際のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図9】本実施形態に係る搬送車と牽引台車が結合された際のハードウェア構成の他の一例を示す図である。
【
図10】本実施形態に係る動作エリアの構成例を示す図である。
【
図11】誘導ライン検出部により誘導ラインを構成する二次元コードを検知した際の誘導ラインと搬送車の位置関係を示す図である。
【
図12】誘導ライン検出部により誘導ラインを構成する磁気テープを検知した際の誘導ラインと搬送車の位置関係を示す下面図である。
【
図13】誘導ラインと搬送車の仮想検出部の位置関係を示す下面図である。
【
図14】本実施形態に係る搬送システムの全体構成図の一例を示す図である。
【
図15】本実施形態における統括制御装置の構成図である。
【
図16】本実施形態に係る搬送車の機能構成図を示す図である。
【
図17】本実施形態における制御システムの制御フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0011】
本実施形態の走行制御システムは、例えば、製造工場や物流倉庫などにおいて、各種製造部品、荷物等の搬送物を搬送するために用いられる無人搬送車(以下、単に「搬送車」とも称する。)の制御に用いられる。なお、本システムは、無人搬送車に限られず、有人及び無人の他の移動体にも適用可能である。
【0012】
本実施形態の走行制御システムは、
図1に示す現実又は仮想のガイドライン111に沿っ
て移動可能な搬送車10の走行制御システムである。現実のガイドラインとは、床面、壁面、または天井面、またはそれらの面から立ち上がる標識板等に設置され、搬送車をガイドするための標識であり、連続した線状であってもよいし、断続的に線状に配置された標識であってもよい。ガイドラインは、例えば、複数の2次元コードを連続してまたは断続的に並べて配置したものとすることができる。また、仮想のガイドラインは、現実空間に対応する2次元または3次元のマップデータ上に設定された仮想的な2次元または3次元のガイドラインとすることができる。何れの場合も、ガイドラインは、搬送車が動作する際に参照することで、搬送車を所定の位置(目的地、経由地)に誘導することができるように設定、配置される。
【0013】
本実施形態の走行制御システムは、搬送車の駆動部を制御することにより搬送車の動作を制御する制御部と、搬送車における特定箇所の現在の前記ガイドラインに対する相対的な位置情報及びガイドラインに対する搬送車の姿勢情報を取得する位置姿勢取得部と、搬送車の特定箇所と異なる位置に設定された仮想検出部の、特定箇所に対する相対的な位置情報を予め記憶する記憶部と、を備える。制御部、位置姿勢取得部、及び記憶部は基本的に搬送車に実装されるが、その一部(記憶部等)が搬送車と通信可能な他の装置に実装されていてもよい。
【0014】
搬送車における特定箇所とは、例えば、
図1の搬送車10におけるライン検出部16(の中心)とすることができる。この場合、ライン検出部16はガイドライン111に平面視で重な
るように、ガイドライン上に位置するので、ガイドライン111に対する相対的な距離(差
分)は0となる。また、ガイドラインが2次元コード等で構成されている場合、ガイドラインの延在方向における位置も2次元コードに紐づけて記憶されるコード情報から取得することができる。あるいは、記憶部のマップ情報におけるガイドラインの位置情報(座標情報)と、センサやカメラから取得した情報に基づいて推定した現在の搬送車の位置情報(座標情報)とを比較することにより、ガイドラインに対する搬送車(特定箇所)の相対位置を推定してもよい。
【0015】
ガイドラインに対する搬送車の姿勢情報は、例えば、
図1の角度θとすることができる。すなわち、ガイドラインの延在方向と、搬送車の前後方向(幅方向の中心線など)との相対角度で表すことができる。例えば、カメラにより二次元コードやバーコードを使った誘導ラインを読み取る画像認識方式の場合には、誘導ラインの検出信号に加えて、検出したコードの情報に基づいて位置情報を生成し、更にコードの画像情報を解析することで誘導ラインと搬送車の相対角度情報(角度θ)を生成することができる。
【0016】
制御部は、搬送車のガイドラインに対する位置情報及び姿勢情報と、仮想検出部の特定箇所に対する相対的な位置情報とに基づいて、ガイドライン111に対する仮想検出部116のガイドライン相対位置を推定する。そして、推定した仮想検出部のガイドライン相対位置に基づいて、搬送車の動作を制御する。このような構成により、ガイドラインを検出するセンサを実際に設けていない位置でも仮想的にガイドライン検出して追従するように搬送車を制御することができる。その結果、搬送車のガイドライン検出センサの数を減らすことが可能となる。
【0017】
搬送車の特定箇所に対する仮想検出部116の相対的な位置情報は、例えば
図2に示すよ
うに、搬送車10のライン検出部16の中心から後側(搬送車の幅方向の中心線に沿って後側に向かう方向)にL1の位置と設定するようにしてもよい。あるいは、搬送車の旋回中心18からの距離L2でもよいし、旋回中心18を原点とした2次元座標系(平面座標系)における特定の座標(x1,y1)と設定するようにしてもよい。仮想検出部116は、左右一
対の駆動輪よりも後側であることが好ましいが、前側でもよく、任意の位置に設定できる。仮想検出部116は、旋回中心18と同じ位置でもよいし、搬送車の中心と同じ位置でもよ
い。なお、本例ではライン検出部16の中心点を特定箇所としているが、仮想検出部116と
異なる位置であれば任意の位置に設定することができる。少なくとも特定箇所は、制御部がその位置情報及び姿勢情報を取得できる位置に設定される。
【0018】
ガイドラインに対する仮想検出部のガイドライン相対位置の推定は、例えば、
図1に示すライン検出部16から仮想検出部116までの距離L1と、上記相対角度θを用いて、ガイドラインから仮想検出部116までの距離Dを算出することができる。算出式としては、D=L1*sinθとすることができる。また、ガイドラインに対する姿勢情報から、仮想検出部116がガイドラインのどちら側に位置するか(例えば、搬送車の左右方向を基準として、ガイドラインの左側か右側か、等)を推定することができる。
【0019】
図1の場合、例えば制御部は、仮想検出部116がガイドライン上に移動するように搬送
車の駆動部を制御する。具体的には、その位置で相対角度θが0°となるまでもしくは仮想検出部116がガイドライン上に位置するまで旋回するようにしてもよいし、まず搬送車
の旋回中心18がガイドライン上に位置するように前進してから相対角度θが0°となるまで旋回するようにしてもよいし、後退しながらゆるやかに旋回して、仮想検出部116がガ
イドライン上に位置するまで移動するようにしてもよい。なお、搬送車の旋回中心18がガイドライン上に位置するように前進する場合、制御部は、その前進距離を、
図2に示すL
1とL2の差として算出することができる。
【0020】
ここで、ライン検出部16がガイドラインを検出している場合、ガイドラインに対するライン検出部16の相対的な位置と姿勢が取得できるので、ガイドラインに対するライン検出部16の相対的な位置と姿勢と、記憶部に記憶されるライン検出部16に対する仮想検出部116の相対的な位置に基づいて、ガイドラインに対する仮想検出部116の相対的な位置を推定することができる。
【0021】
また、ライン検出部16がガイドラインを検出していない場合(ガイドライン上にライン検出部16が位置しない場合)、記憶部に記憶されるマップデータに含まれるガイドラインの位置情報と、推定した自己位置情報(搬送車の特定箇所の位置)との比較によって、ガイドラインに対する搬送車の特定箇所の位置が推定でき、記憶部に記憶される特定箇所に対する仮想検出部116の位置情報に基づいて、ガイドラインに対する仮想検出部116の相対的な位置を推定することができる。この推定処理を繰り返しながら搬送車の駆動部を制御して、旋回、前進、後退等することで、ガイドライン上に仮想検出部が近付き、仮想検出部がガイドラインに沿うように移動させることができる。
【0022】
制御部は、ガイドラインに対する仮想検出部のガイドライン相対位置を推定するに際して、ガイドラインの位置と、仮想検出部の位置との相対的な差分を取得するようにしてもよい。差分とは、上記の距離Dとすることができる。また差分として、ガイドラインの延
在方向に対する搬送車の進行方向(前後方向)の角度を推定するようにしてもよい。
【0023】
搬送車は、特定箇所に配置され現実のガイドラインを検出するガイド検出部を備え、位置姿勢取得部は、ガイド検出部の検出情報に基づいて搬送車における特定箇所の現在のガイドラインに対する相対的な位置情報及びガイドラインに対する搬送車の姿勢情報を推定するようにしてもよい。ガイド検出部は、上記ライン検出部16とすることができる。
【0024】
記憶部には、現実空間に対応するマップデータ(地図データ)と、該マップデータ上に設定される仮想のガイドラインの位置データとが予め記憶され、位置姿勢取得部は、マップデータ上での仮想のガイドラインの位置データと、搬送車の現在の位置情報及び姿勢情報に基づいて、搬送車における特定箇所の現在のガイドラインに対する相対的な位置情報及びガイドラインに対する搬送車の姿勢情報を推定するようにしてもよい。搬送車の特定箇所(例えば搬送車の中心、または位置センサの位置等)の、現在の位置情報及び姿勢情報は、例えば、後述する位置推定部265及び姿勢検出部235により取得可能である。マップデータ及びガイドラインの位置情報は、予め記憶部に記憶されていてもよいし、搬送車が走行しながら取得したセンサデータに基づいて生成してもよい。その場合、例えば、LiDAR等のセンサデータを用いたSLAM (Simultaneous Localization and Mapping)技術を採用
することができる。
【0025】
仮想検出部は、特定箇所よりも搬送車の後側の位置に設定されるようにしてもよい。例えば、仮想検出部116は、特定箇所としてのライン検出部16、旋回中心18、または搬送車
の中心よりも後側に位置する。特定箇所は、左右一対の駆動輪よりも前側に位置してもよいし、後側に位置してもよい。
【0026】
制御部は、搬送車が後退する際に、仮想検出部がガイドライン上に位置するか否かを判定し、仮想検出部がガイドライン上に位置する場合には、仮想検出部がガイドラインに沿って移動するように搬送車の動作を制御し、仮想検出部がガイドライン上に位置していない場合には、仮想検出部がガイドラインに近づくように搬送車の動作を制御するようにしてもよい。
【0027】
駆動部は、左右一対の駆動輪を有するようにしてもよい。駆動部が左右一対の駆動輪で構成され、それぞれ個別に制御できる場合、左右の駆動輪の中間点が旋回中心となるように旋回可能である。駆動部は、他の構成であってもよい。
【0028】
制御部は、予め定められる一定期間ごとに、ガイドラインに対する仮想検出部の位置を推定するようにしてもよい。一定期間とは、例えば、0.1秒、1秒、5秒等の任意の数
値を設定できる。あるいは、一定期間ではなく、他の条件に基づいて、繰返しガイドラインに対する仮想検出部の位置を推定するようにしてもよい。他の条件とは、例えば、所定距離だけ移動することや速度が変化したこと、など、移動の距離や速度に基づく条件でもよい。搬送車が繰返しガイドラインに対する位置を確認することで、移動の精度を高めることができる。
【0029】
路面、壁面又は天井面に設置されたガイドラインとしての2次元コードをスキャンすることにより、搬送車の現在位置を取得するようにしてもよい。ARマーカー等の2次元コー
ドを利用することで、推定精度を高めることができる。
【0030】
<搬送車の構成>
図3は、本実施形態に係る搬送車のハードウェア構成例を示す斜視図である。本例の搬送車は無人搬送車であるが、人が乗ることが可能な各種車両にも適用可能である。
図3の矢印15は搬送車の進行方向(前方)を示している。進行方向は、基本的に搬送車の前方であるが、状況に応じて後方でもあり得る。
図3に示す通り、搬送車は、台車との連結と非連結状態を切り替えるための連結部11、搬送車周辺の物体を検出する物体位置検出部12、駆動輪13、非駆動輪14を備えている。
【0031】
例えば、搬送車の上面側には、連結部11と、物体位置検出部12が搭載されている。連結部11は、例えばアクチュエータで構成され、台車と連結する場合にはアクチュエータを上側に伸ばして台車側の連結受け部(図示しない)と連結し、連結を解除する場合にはアクチュエータを縮めて連結部と台車側の連結受け部との連結を解除できるように構成されている。また、連結部11は、平面上で搬送車の駆動輪13を取り囲む4か所の位置に配置され、台車と5か所で連結可能となっている。本実施形態では4つの連結部を有する例を説明するが、連結部の数は必ずしも5個である必要は無く、1個以上の任意の数を選択可能である。搬送車と被搬送物との連結構造は特に限定されず、任意の連結構造を採用可能である。
【0032】
物体位置検出部12は、搬送車から物体までの距離を検出する装置である。物体位置検出部12の一例としては、レーザー光を照射して物体に当たって跳ね返ってくるまでの時間を計測することで物体までの距離や方向を計測するレーザー距離センサ(LiDAR(Light detection and ranging)など)、ミリ波の送信信号と物体に反射して戻ってくる受信信号に基づいて物体までの距離を検出するミリ波レーダー、または、カメラで物体を撮影して撮影画像を解析することで物体までの距離を計測するカメラ式距離センサ、などを適用することができる。本実施形態では、物体位置検出部12を搬送車の上面部の進行方向前方に配置する例を示したが、これに替えて進行方向の前方側面に配置しても良い。また、前方だけでなく進行方向の後方側面や左右両側面に配置しても良い。
【0033】
物体位置検出部12は、搬送車に連結される台車等の搬送対象物の位置、姿勢(搬送車に対する相対的な位置、角度)を検出することができる。物体位置検出部12は、車体の前後にそれぞれ設けてもよく、前側は障害物や人を検出し、後側は搬送対象物を検出するようにしてもよいし、その逆でもよい。
【0034】
物体位置検出部12は、搬送車の周囲360度に対して物体を検出するようにしても良いが
、少なくとも搬送車の進行方向15に対して物体を検出できるように構成されている。進行方向15は、搬送車の前方であっても後方であってもよい。
【0035】
図2は、本実施形態に係る搬送車のハードウェア構成例を示す下面図である。搬送車の底面には、搬送車の進行方向15に対する左右両側の位置に駆動輪13が設けられ、各駆動輪13の前後の位置にはそれぞれ非駆動輪14が設けられる。駆動輪13は、モータの回転軸に接続されて駆動される車輪であり、右側の駆動輪と左側の駆動輪はそれぞれ個別に制御される。制御部は、駆動輪の回転速度を制御することにより、搬送車の速度を制御することができる。また制御部は、各駆動輪の回転速度や回転方向を個別に制御することにより、搬送車をカーブさせて走行させたり、その場で搬送車を回転させて向きを変えたり、停止させたり、後退させたりすることが可能となる。非駆動輪14は、駆動されない車輪で構成され駆動輪13により搬送車が移動することで受動的に回転する車輪である。非駆動輪14は、例えば、車輪と車軸を固定するフォークを有し、フォークは搬送車の底面部材と旋回可能に接続される回転キャスターで構成される。そのため、搬送車の進行方向や回転動作に応じて非駆動輪14の車輪回転方向が受動的に変化する。
図2では、2つの駆動輪と、四隅に4つの非駆動輪を備える搬送車のハードウェア構成を例示したが、本発明は当該ハードウェア構成に限定されるものではなく、駆動輪2つと非駆動輪2つの計4輪の構成を採用することも可能であり、また当該4輪構成において前輪がステアリング可能となる構成を採用することも可能である。
【0036】
搬送車の底面には、誘導ライン(ガイドライン)を検出する誘導ライン検出部16が設けられている。誘導ライン検出部16は、望ましくは駆動輪13よりも搬送車の進行方向前方に設けられる。これにより、誘導ラインがカーブしている位置を走行する場合に誘導ラインに追従して走行しやすくなり、また搬送車及び牽引する台車が進行する際にいち早く誘導ラインから情報を受信することでいち早く停止等の処理が実行できる。誘導ライン検出部は、上述したような誘導方式のタイプに応じたセンサが用いられる。誘導方式として、電磁誘導方式を用いる場合はピックアップコイル、磁気誘導方式を用いる場合は磁気センサ、画像認識方式を用いる場合はカメラが誘導ライン検出部のセンサとして用いられる。ガイドラインは、床面に限られず、建物の側壁面、天井面等に設けられていてもよく、当該ガイドラインを認識可能な位置(搬送車の下面、側面、上面等)に搬送車のセンサ(カメラを含む)を設置することができる。また、ガイドラインは、2次元又は3次元のマップデータ上に仮想的に設けられた軌道であってもよい。搬送車の制御部は、予め記憶部に記憶されるマップ情報及び軌道情報(移動経路情報)と、カメラやセンサ等の情報に基づいて推定した現在の自己位置情報と、に基づいて、仮想的なガイドラインに沿って搬送車の走行を制御するようにしてもよい。
【0037】
本実施形態では、搬送車の所定箇所に仮想検出部116が設定される。
図2に仮想的に示
すように、仮想検出部116は、搬送車の特定箇所に位置するライン検出部16とは異なる位
置に設定される。仮想検出部116は、搬送車の中心(または旋回中心)から見て誘導ライ
ン検出部16の逆側(例えば、搬送車の前後、左右の中心線に対して線対称、中心点に対して点対称等の対称位置でもよい)にあることが好ましい。例えば、誘導ライン検出部16が搬送車の中心よりも前側に位置する場合、仮想検出部を搬送車の後側に設定することができ、その逆でもよい。これによれば、ライン検出部16を設けていない位置に設定した仮想検出部116を有効に活用して走行制御することができる。誘導ライン検出部16が搬送車の
後側に位置する場合、仮想検出部を搬送車の前側に設定することができる。誘導ライン検出部16又は仮想検出部の位置は、搬送車の旋回中心であってもよい。仮想検出部は、1つ
に限られず、複数設定されてもよい。仮想検出部は任意の位置に設定でき、例えば、搬送車の4隅(前右側、前左側、後右側、後左側)の何れか又は全ての位置に設定してもよい。仮想検出部の位置の情報は、記憶部に予め記憶される。位置の情報は、例えば搬送車の中心、旋回中心またはライン検出部16の中心等の特定箇所に対する相対的な位置情報とすることができる。なお、ライン検出部の位置は3次元の座標で設定してもよい。
図2に示すように、左右の駆動輪13の間の中心点(中間点)が旋回中心18である。本例では、旋回中心が搬送車の中心と一致するが、ずれていてもよい。旋回中心18から仮想検出部116
までの距離L2、搬送車の中心から仮想検出部116までの距離L3といったように、旋回
中心18、搬送車の中心、仮想検出部116の相対的な位置関係に関するも予め記憶部に記憶
される。
【0038】
ここで、例えば
図4、5に示すように、搬送車は、目的に応じて、ガイドラインに沿って後退する状況がある。例えば
図4の場合、搬送対象物を牽引してガイドラインに沿って停止位置まで搬送した後、搬送対象物を逆側に移動する必要がある場合、一度連結を解除して、搬送車のみが搬送対象物の逆側に移動し、再度搬送対象物を連結することがある。その場合、搬送対象物を再度連結する際には、搬送対象物に向けてガイドラインに沿って搬送車を後退させる。
図5は、搬送対象物が連結された搬送車をガイドラインに沿って後退させて、所定の位置に搬送対象物を停止させる例を示す。
【0039】
何れの場合も、仮想検出部116のガイドラインに対する相対位置及び角度を繰り返し推
定しながら、仮想検出部116がガイドライン上に位置するように駆動部を制御することで
、意図した方向(ガイドラインに沿う方向)に搬送車を後退させることができる。その結果、例えば、スムーズな搬送対象物の連結が可能となったり、後方に位置する左右の障害物への衝突の可能性を低下させたりすることができる。なお、後退する場合に限られず、前進する場合、左右に移動する場合であっても、同様に仮想検出部116がガイドライン上
に位置するように駆動部を制御することが可能である。
【0040】
仮想検出部は、搬送車に連結される搬送対象物における所定の位置に設定され、制御部は、搬送車に対する搬送対象物の相対的な位置情報及び姿勢情報に基づいて、仮想検出部の位置を推定するようにしてもよい。
【0041】
例えば
図6、7に示すように、搬送車が、搬送車に連結される搬送対象物を搬送する場合、例えば、搬送対象物の後部(搬送車から遠い側)など、任意の位置に仮想検出部を設定してもよい。搬送車と搬送対象物が揺動不可能に固定されている場合、搬送車と搬送対象物の相対的な位置が変化しないので、上記の搬送車に仮想検出部116を設定した場合と
同様の制御が可能である。一方で、搬送車に対して上下方向の軸部を支点に揺動(回動)可能に連結されている場合など、搬送車に対する搬送対象物の相対的な位置関係が変化する場合には、搬送車を基準とする搬送対象物の相対的な位置を角度センサ等で検出することが好ましい。
【0042】
具体的には、搬送車の軸部に設けたエンコーダで、予め定めた状態からの変位角度を測定したり、搬送車に設けた距離センサを用いて、搬送車から搬送対象物の左右それぞれの特定点までの距離を測定して相対角度を推定したりしてもよい。そして、
図6に示すように搬送車の特定箇所から軸線A(搬送車と搬送対象物の連結部に設けられた揺動軸の軸線
)までの距離L4と、軸線Aから仮想検出部までの距離L5と、角度αを用いて、特定箇所
に対する仮想検出部の相対的な位置を推定することができる。そして、ガイドラインに対する特定箇所の相対位置姿勢と、特定箇所に対する仮想検出部の相対位置姿勢とに基づいて、ガイドラインに対する仮想検出部の相対的な位置(距離D)を算出することができる
。これによれば、搬送車に回動可能に連結された搬送対象物に仮想検出部を設定し、当該仮想検出部がガイドラインに沿って移動するように、搬送車を走行制御することができる。その場合、仮想検出部がガイドライン上に位置するまで搬送車を前進させて、仮想検出部がガイドライン上に位置し、且つ、搬送車及び搬送対象物の幅方向中心線がガイドラインの延在方向と平行、さらに搬送車に対する搬送対象物の相対角度αが0となった状態から後退してもよい。なお、例えば搬送車のライン検出部16がガイドライン上に位置するようにして、ガイドラインに沿ってまっすぐに搬送車を前進させると、牽引される搬送対象物もガイドライン上に整列されるため、その後に、後退させてもよい。また、
図7に示すように緩やかにカーブしながら後退し、仮想検出部とライン検出部がガイドライン上に位置するように、後退しながら旋回制御するようにしてもよい。
【0043】
搬送車には、搬送対象物の姿勢(例えば相対角度α)を検出する搬送対象物検出部が設けられているようにしてもよい。搬送対象物検出部は、例えば、エンコーダ、測距センサ、レゾルバ等とすることができる。
【0044】
制御部は、搬送対象物が連結されているか否かに基づいて、予め定められた複数の仮想検出部の位置の中から何れかを選択して設定するようにしてもよい。例えば、制御部は、搬送対象物が連結されていない状態では、
図2に示す搬送車の後部に設定し、搬送対象物が連結されている状態では、
図6に示す搬送対象物の後部に仮想検出部を設定することができる。搬送対象物が連結されているか否かは、搬送車に設けたセンサからの情報等により制御部が判定することができる。
【0045】
図8は、本実施形態に係る搬送車と牽引台車が結合された際のハードウェア構成の一例を示しており、具体的には、搬送車10が牽引対象である台車の下側に潜り込んだ状態で台車と連結する例を示している。この際、円錐形上の連結部11と対応する位置にすり鉢状の連結受け部が台車の底面に配置されており、連結部11を上側に伸ばすことで台車と連結でき、連結部11を縮めることで台車との連結を解除できる。搬送車10が台車の前側に連結されてもよいし、中央でも後側でもよい。
【0046】
図9は、本実施形態に係る搬送車と牽引台車が結合された際のハードウェア構成の他の一例を示している。牽引台車等の搬送対象物は、搬送車に対して軸部を支点に揺動(回動)可能に連結されていてもよいし、搬送者に対して揺動不能な状態で固定されていてもよい。
図9に示す例では、搬送車は台車2000の横(台車の真下ではなく、前後左右の何れかにずれた位置)に位置する状態で台車と連結する例を示している。台車は、搬送車の連結部11の少なくとも一部と連結する連結受け部2010を備えており、連結部11を上側に伸ばすことで台車と連結でき、連結部11を縮めることで台車との連結を解除できる。
図8や
図9では、搬送車の上面にアクチュエータ等で構成される連結部11を上下方向に伸縮させることで、台車との連結と連結解除を行う例を示したが、搬送車と台車の連結方法はこれに限られず、他の連結方法であっても良い。また、搬送車と連結される搬送物は、台車に限られず、例えば、車輪を有さないパレットやキャビネット、コンベアやロボットアーム等であっても良い。パレットやキャビネットを搬送する場合には、搬送車はパレットやキャビネットの下側に潜り込んで、パレットやキャビネットを持ち上げた状態で連結される。
【0047】
図10は、本実施形態に係る動作エリア130の構成例を示す図である。
図10に示す通
り、動作エリア130内には、誘導ライン131(ガイドライン)が敷設されており、自律走行モードで走行する搬送車が予め設定された走行モード切替位置132において誘導ライン131を検出した場合には、自律走行モードから誘導走行モードに走行制御モードが切り替えられる。また、逆に誘導ライン上を誘導走行モードで走行する搬送車が予め設定された走行モード切替位置132に入った場合には、誘導走行モードから自律走行モードに走行制御モ
ードが切り替えられる。荷物が収納されている棚やベルトコンベヤや作業員の作業位置の近接位置に搬送車を誘導するために、誘導ライン131で構成される軌道は、複数の分岐点
を介して、棚や作業位置と近接する位置に敷設されている。
【0048】
誘導ラインの敷設されていない自律走行エリアを自律走行モードで走行している搬送車10は、走行モード切替位置132に進入し、かつ誘導ライン131を検出することを条件に誘導ラインに追従する誘導走行モードに走行モードを変更する。他方、誘導ライン上を誘導走行モードで走行する搬送車が走行モード切替位置132に進入した場合には、誘導走行モー
ドから自律走行モードに走行制御モードが切り替わり、搬送車は誘導ラインを離脱して、自律走行を開始する。
【0049】
図10で示した誘導ライン131としては、後述するような、従来から利用されている様
々な誘導方式の誘導ラインを適用することができる。具体的には、例えば、誘導ラインとして設置した金属線に微弱な交流電流を流すことで生じる磁場を搬送車側のピックアップコイルで検出する電磁誘導方式、誘導ラインとして床面に敷設した磁気テープを搬送車側の磁気センサで読み取る磁気誘導方式、または誘導ラインとして床面に敷設したコード(バーコード、二次元コードなど)の画像を搬送車側のカメラで撮影して画像処理を行う画像認識方式などを適用することができる。
【0050】
図11は、誘導ライン検出部16により誘導ラインを構成する二次元コードを検知した際の誘導ラインと搬送車の位置関係を示している。誘導ラインは二次元コード1000に示すような二次元平面上にコード情報が印刷された複数の二次元コードが誘導ラインの敷設方向に向かって並んで印刷されている。誘導ライン検出部16は、二次元コードを検出すると、当該二次元コードから取得したコード情報に基づいて、当該二次元コードの位置情報を取得する。
【0051】
図12は、誘導ライン検出部16により誘導ラインを構成する磁気テープを検知した際の誘導ラインと搬送車の位置関係を示している。
図12に示す誘導ライン検出部16は、磁気テープを検出する磁気センサ17を搬送車の進行方向に向かって横方向に複数備える構成となっている。誘導ライン検出部16に設けられた複数の磁気センサ17は、それぞれ磁気テープを検出したか否かの検出信号を出力する。
図12に示す場合では、誘導ライン検出部16の中央に位置する3つの磁気センサ17Aが磁気テープを検出しており、誘導ライン検
出部16の両脇のそれぞれ2つの磁気センサ17Bが磁気テープを検出していない。これに
より、誘導ライン検出部16の範囲(複数の磁気センサを含む全体領域)の中で、どこに誘導ラインが位置するか(右寄り、左寄り、中央等)を検出できる。
【0052】
図13に示すように、仮想検出部116においても、上記磁気センサ17と同様に、複数の
仮想センサが設定され、記憶部に仮想センサの位置情報が設定され、各仮想センサのガイドラインに対する位置を推定するようにしてもよい。この場合、仮想検出部を用いたガイドラインに対する位置推定の精度を高めることができる。
【0053】
<搬送システムの構成>
次に、本実施形態の搬送システムの構成を説明する。
図14は、本実施形態に係る搬送システムの全体構成図の一例を示す図である。搬送システム1000は、複数の搬送車(10a,
10b)、搬送物である台車2000、搬送車の状態を表示又は搬送車へ指令を入力可能な操縦機3000、搬送車の運行に必要な情報を管理する統括制御装置4000、統括制御装置の情報を表示し統括制御装置に情報を入力する入出力装置5000、複数の搬送車(10a, 10b)と操縦機3000と統括制御装置4000を通信可能に接続する通信ネットワーク6000を備える。操縦機3000、統括制御装置4000、入出力装置5000等の各種装置は、それぞれ別の装置としてもよいし、一部又は全体を一体の装置として形成してもよい。
【0054】
また、搬送システム1000は通信ネットワーク6000を介して外部システム7000と接続させることもできる。搬送システム1000を製造工場に導入して、製造に必要な部品を収納庫から製造ラインに搬送する場合には、搬送システム1000は、外部システム7000として製造管理システムとシステム間連携を行う。この場合、製造管理システムから製造作業の稼働進捗状況に関する情報を取得すれば、搬送車による輸送量や輸送経路を製造作業の作業進捗状況に応じて動的に調整することができる。
【0055】
別の例として、搬送システム1000を物流倉庫に導入して、トラック等で荷物が倉庫に搬入される際に搬入物を搬入口から収納庫に搬送し、また倉庫から荷物を出荷する際に収納庫から出荷される荷物を搬出口へ搬送する場合には、搬送システム1000は、外部システム7000として物流管理システムとシステム間連携を行う。この場合、物流管理システムから搬入に関する情報や出荷に関する情報を取得すれば、搬送車による輸送量や輸送経路を変更することができる。
【0056】
搬送システムが導入される施設では、一般的に複数の搬送車(10a, 10b)が稼働するため、それぞれの搬送車は通信ネットワーク6000を介して他搬送車や他構成要素と通信可能に連結される。例えば、搬送車は自機の検出部で検出した各種検出情報やその他の制御情報を操縦機3000や統括制御装置4000や他搬送車10に送信する。また搬送車10は台車2000と電気的に接続又は近距離通信手段で通信可能に接続され、台車から連結状態に関する情報や台車の識別情報などを受信可能に構成される。
【0057】
操縦機3000は、各搬送車の状態情報を表示する機能と、指定した搬送車へ指令を入力する機能を備えている。例えば、操縦機に表示される搬送車の状態情報としては、各搬送車の識別情報、位置(座標、マップ上での位置)、速度、向き、走行履歴、搬送車に搭載されて搬送車の電源となるバッテリの充電量の情報、搬送車が搬送する台車等の搬送物の識別情報などである。搬送車へ入力する指令としては、例えば、搬送車の目的地(目的位置)に関する指令情報、台車との連結や連結解除の動作指令、搬送車の走行開始指令、搬送車の停止指令、充電ステーションへの帰還指令などである。
【0058】
図15に本実施形態における統括制御装置4000の構成図を示す。統括制御装置4000は、施設エリアで運行される複数の搬送車の状態情報を記録する状態情報記録部4010と、複数の搬送車の動作シナリオを管理する動作シナリオ管理部4020と、搬送車の誘導ライン検出部により取得された誘導ラインの検出情報を含む搬送車の検出情報に基づいて作業エリアのマップを生成及び更新するマップ管理部4030と、搬送車の検出情報に基づいて誘導ライン及び搬送車の異常を判定する異常判定部4040と、外部の入出力装置5000及び通信ネットワーク6000と通信を行う通信部4050と、を有している。
【0059】
状態情報記録部4010で記録される搬送車の状態情報は、例えば、運行中の複数の搬送車により検出される障害物検出位置、誘導ライン検出位置、搬送車の走行位置の履歴情報、更には、バッテリ充電量の情報、複数の搬送車と連結された台車の識別情報、複数の搬送車の動作モード(誘導走行モードまたは自律走行モード、仮想センサ利用モード)、その他搬送車の検出部230で検出される各種検出情報、作業エリアのマップ情報などである。
動作シナリオ管理部4020で管理される動作シナリオは、例えば、複数の搬送車それぞれの目的地の情報、目的地に行き着くまでに実行する複数の動作内容、複数動作の動作順序、複数動作の切替条件を含んでいる。
【0060】
マップ管理部4030は、搬送車により検出される障害物検出位置、誘導ライン検出位置、搬送車の走行位置の履歴情報に基づいて、作業エリア内の障害物と誘導ラインの位置情報を含むマップを生成する。更に、マップ管理部4030は、1台又は複数台の搬送車により蓄積された誘導ラインの検出位置の情報に基づいて、マップに登録されている誘導ラインや作業エリアの情報を更新する。
【0061】
異常判定部4040は、マップ情報に登録されている誘導ラインの位置情報と、搬送車で検出される誘導ラインの検出位置情報を含む搬送車の検出情報に基づいて、誘導ライン及び搬送車の異常を判定する。
【0062】
入出力装置5000は、統括制御装置4000の状態情報記録部4010に記録された情報、マップ情報(マップの更新情報を含む)及び異常判定部による判定結果などを表示するとともに、動作シナリオ管理部4020で管理される動作シナリオを入力することで新規に動作シナリオを追加したり、更新したりすることができる。入出力装置5000に入力される情報は、例えば、任意の搬送車の目的地が誘導走行エリア110の作業エリアAであることや、誘導走行エリア110に進入して作業エリアAに行き着くための動作内容、動作切替条件などを含んでいる。
【0063】
<搬送車の機能>
図16を用いて搬送車の有する機能を説明する。
図16は本実施形態に係る搬送車の機能構成図を示す図である。搬送車10は、搬送車外部の台車2000や通信ネットワーク6000と通信を行う通信部210と、記録部220(記憶部を含む)、後述する各種センサを備えた検出部230、台車と連結するための連結部11、車輪を駆動させる車輪駆動部280、入力部240、
表示部250、車輪駆動部280などの動作を制御する制御部260、を備えている。
【0064】
記録部220は、通信部210が外部から受信した情報、検出部230が検出した検出情報、制
御部が生成、出力した情報を記録する機能を有する。記録部220は、搬送車の特定箇所、
仮想検出部の位置情報、連結される搬送対象物の種類に応じた仮想検出部の情報等を記憶する。記録部220は、搬送車の目的位置、移動経路、移動履歴等の情報を記憶することが
できる。記録部220は、目的位置までの距離に応じた速度情報、当該速度情報を算出する
ための算出式(プログラム)情報等を記憶することができる。
【0065】
検出部230は、物体位置検出部12、誘導ライン検出部16、走行距離検出部233、衝突検出部234、姿勢検出部235、充電量検出部236を備えている。物体位置検出部12は、前述した
通り、レーザー光を照射して物体に当たって跳ね返ってくるまでの時間を計測することで物体までの距離や方向を計測するレーザー距離センサ(LiDAR(Light detection and ranging)など)、ミリ波の送信信号と物体に反射して戻ってくる受信信号に基づいて物体までの距離を検出するミリ波レーダー、または、カメラで物体を撮影して撮影画像を解析することで物体までの距離を計測するカメラ式距離センサ、などで構成される。制御部は、検出部の情報に基づいて、搬送車の現在位置、現在速度の情報を推定することができる。検出部230は、搬送車の現在位置を検出するGNSS等を含む位置センサ、搬送車の速度を検
出する速度センサを備える。
【0066】
誘導ライン検出部16は、上述したように誘導方式のタイプに応じたセンサが用いられる。誘導方式として、電磁誘導方式を用いる場合はピックアップコイル、磁気誘導方式を用いる場合は磁気センサ、画像認識方式を用いる場合はカメラが誘導ライン検出部のセンサとして用いられる。誘導ライン検出部は、誘導ラインの直上に位置している場合に誘導ラインを検出して検出信号を出力する。また、カメラにより二次元コードやバーコードを使った誘導ラインを読み取る画像認識方式の場合には、誘導ラインの検出信号に加えて、検出したコードの情報に基づいて位置情報を生成し、更にコードの画像情報を行うことで誘導ラインと搬送車の相対角度情報(角度θ)を生成することができる。
【0067】
走行距離検出部233は、非駆動輪14または駆動輪13の回転数を検出し、当該回転数の検
出情報と非駆動輪または駆動輪の直径(または円周長)の情報に基づいて搬送車の走行距離及び走行速度を計測することができる(この場合、走行距離検出部233が、速度センサ
として機能し得る)。また、代替手段として、ミリ波を水平方向の任意の方向(壁面や床面でもよい)に照射して反射波を検出するミリ波センサを用いて、搬送車の走行速度を検出し、当該走行速度を積分することで走行距離を推定する手段を適用することも可能である。また、上記した方法以外のあらゆる走行距離を計測したり、走行速度を取得したりする方法を適用可能である。
【0068】
衝突検出部234は、搬送車が物体や人に衝突したことを検出する機能を有する。具体的
には、ジャイロセンサなどにより加速度を検出して、加速度の急変を検出した場合に衝突が発生したと判断することができる。代替手段として、搬送車の進行方向前方にバンパーと共に物理スイッチを設け、当該物理スイッチが押されたことにより衝突が発生したと判断する手段を適用することも可能である。また、上記以外の衝突検知方法を適用することができる。衝突検出部234が衝突を検出した場合には、搬送車を停止させ、衝突発生情報
と衝突発生位置の少なくともいずれかの情報を記録部に記録すると共に、当該情報を統括制御装置4000及び操縦機3000に情報を通知する。姿勢検出部235は、磁気コンパス又は左
右駆動輪の回転数の情報又は車輪のステアリング情報に基づいて、自車の向き(姿勢)を検出する。
【0069】
充電量検出部236は、搬送車の電源であるバッテリの充電量を検出する。充電量検出部236で検出した充電量が所定値以下となった場合には、充電が必要と判断して、充電量減少の検知情報を記録部に記録すると共に、当該情報を統括制御装置4000及び操縦機3000に情報を通知する。更に、充電量が所定値以下であることを検出した場合に、上記処理に加えて充電スポットへ自動で移動して充電を行うようにしても良い。なお、充電量検出部236
が要充電と判断するための前記所定値は、当該搬送車に設定された目的地までの距離と当該搬送車に連結された搬送物の重量の少なくともいずれかに基づいて予め設定された値であっても良い。
【0070】
入力部240は、搬送車に搭載された物理スイッチ又はタッチパネル等で構成され、ユー
ザは動作指令等を直接搬送車に入力することができる。表示部250は、例えば、搬送車に
搭載された液晶パネル等で構成され、搬送車の状態情報(検出部230での各種検出情報、
走行モードの種別、現在実行中の動作シナリオなど)を表示することができる。
【0071】
制御部260は、動作判定部261と、モード切替部262と、連結制御部263と、表示制御部264と、位置推定部265と、走行制御部266を備えている。動作判定部261は、動作シナリオ管理部4020から取得した自搬送車の動作シナリオに基づいて搬送車の動作を判定する。
【0072】
モード切替部262は、動作シナリオ等により予め定められた条件、または入力部240で入力された指令に基づいて、搬送車の走行モードを誘導走行モードと自律走行モードの間でモードの切り替えを行う。連結制御部263は、動作シナリオ等で予め定められた条件、ま
たは入力部240で入力された指令に基づいて、連結部11の動作を制御して、台車等の搬送
物との連結/非連結を制御する。表示制御部264は、前述した入力部240の入力IF及び表示部250を制御する。
【0073】
位置推定部265は、走行距離検出部233で検出した走行距離と、姿勢検出部235で検出し
た自車の向きの情報と、記録部220に記録されているエリア全体のマップ情報に基づいて
、走行エリア全体における自車の現在位置、現在姿勢を含む所定時刻の位置、姿勢を推定することができる。または、物体位置検出部12で計測した自車から物体までの距離や方向の情報と、記録部220に記録されているエリア全体のマップ情報に基づいて走行エリア全
体における自車の位置、姿勢を推定することも可能である。マップ情報にガイドラインが含まれる場合、ガイドラインに対する相対的な位置及び姿勢も推定可能である。あるいは、二次元コードで構成された誘導ライン上を走行している場合には、二次元コードの識別情報と上記マップ情報とに基づいて走行エリア全体における自車の位置、姿勢を推定することも可能である。位置推定部265は、搬送車に設けたGNSS等によって位置情報を取得す
ることも可能である。
【0074】
位置推定部265は、推定した自車位置情報と、物体位置検出部12で検出した自車から物
体までの距離情報に基づいて、物体が存在する位置を推定することができる。また、誘導ライン検出部16で誘導ラインを検出した際の自車位置情報、姿勢情報に基づいて、誘導ラインの設置位置、延在角度を推定することも可能である。
【0075】
走行制御部266は、動作判定部261、モード切替部262による判定情報の少なくともいず
れかに基づいて、搬送車の走行を制御する。走行制御部266は、搬送車の前進、後退、停
止、旋回、及び移動速度、旋回速度を制御することができる。具体的には、車輪駆動部280の有する右輪駆動部281、左輪駆動部282をそれぞれ個別に制御する。右輪駆動部281と左輪駆動部282は例えばモーターで構成され、各駆動輪の回転速度や回転方向を個別に制御
することで、搬送車を任意の軌跡半径でカーブさせて走行させたり、搬送車をその場で回転させて向きを変えたりすることが可能となる。
【0076】
制御部260は、例えばガイドラインに沿って移動する際に、ガイドラインの延在方向に
おける搬送車の現在位置と目的位置との差分の距離に基づいて、搬送車の走行速度を制御する走行制御処理、を実行することができる。制御部260は、搬送車の現在位置情報及び
目的位置情報に基づいて、ガイドラインの延在方向における搬送車の現在位置と目的位置との差分の距離を算出する距離推定処理を行ってもよい。
【0077】
距離推定処理は、例えば搬送車の現在位置情報としての位置座標と、及び目的位置情報としての目的位置の位置座標との差分を算出することにより、ガイドラインの延在方向における搬送車の現在位置と目的位置との差分の距離を推定することができる。
【0078】
なお、搬送車が目的位置に向けて前進する際に、目的位置までの距離に基づいて走行制御処理を実行するとともに、搬送車が目的位置を通り過ぎた場合には、距離に基づいて後退方向に、前進の場合と同様に速度制御する走行制御処理を実行するようにしてもよい。この場合、仮に目的位置を通り過ぎたとしても、後退しながら前進時と同様に高い精度で効率よく目的位置に到達することができる。
【0079】
搬送車に設けたセンサからの情報に基づいて、ガイドラインの延在方向に対する搬送車の角度を推定する角度推定処理と、搬送車に設けたセンサからの情報に基づいて、ガイドラインの延在方向に垂直な方向におけるガイドラインと搬送車の特定箇所との相対位置を推定する相対位置推定処理と、搬送車の角度及び相対位置に基づいて、搬送車の向きを制御するようにしてもよい。例えば、カメラにより二次元コードやバーコードを使ったガイドラインを読み取る画像認識方式の場合には、誘導ラインの検出信号に加えて、検出したコードの情報に基づいて位置情報を生成し、更にコードの画像情報を行うことで誘導ラインと搬送車の相対角度情報を生成するようにしてもよい。制御部260は、最終的に搬送車
の角度(向き)がガイドラインの延在方向に一致(または角度の差が予め定められた所定値(例えば1°、3°、5°等)以下)するように、また、ガイドラインの延在方向に垂直な方向におけるガイドラインと搬送車とのずれが予め定めた所定値以下であるように、搬送車を走行制御する。例えば、ガイドラインに対して垂直な方向におけるガイドラインと搬送車とのずれが所定値を超えていると判定した場合に、搬送車がガイドラインに近づくように、搬送車の向き(角度)をガイドライン側に向け、前進又は後退するよう駆動制御することができる。また、ガイドラインに対して垂直な方向におけるガイドラインと搬送車とのずれが所定値以下である場合には、ガイドラインの向きと、搬送車が同じ向きとなるよう駆動制御することができる。
【0080】
制御部260は、距離推定処理において、位置推定部から取得する現在位置と、記憶部か
ら取得する目的位置との差分に基づいて、現在位置から目的位置までの距離を算出するようにしてもよい。あるいは、床や壁に設けられた2次元コードを画像認識して、当該2次元コードに関連付けられた、上記距離(現在位置から目的位置までの距離)の情報を取得してもよい。
【0081】
制御部260は、搬送車の速度センサで取得する速度情報に基づいて、走行制御処理を実
行するようにしてもよい。速度センサの種類は特に限定されず、例えば駆動輪の回転数や回転速度を検出するセンサ等の任意のセンサや、カメラを速度センサとして用いることができる。制御部260は、予め定められる一定期間ごとに、搬送車の速度を検出し、当該速
度が目標速度に一致しているかを判定して、繰り返し調整しながら走行制御することができる。すなわち、制御部260は、実際の速度と目標速度との差が所定値(予め定められた
閾値等)以下であるか否かを判定し、所定値以下であれば制御を維持し、所定値を超えている場合には、目標速度に近づくように減速又は加速制御することができる。このような速度調整処理を繰り返すことで、目標速度からのずれを抑制(低減)することができる。
【0082】
制御部260は、予め定められる一定期間ごとに、繰り返し距離推定処理を実行すること
ができる。同様に、一定期間ごとに、ガイドラインに対する仮想検出部の位置及び姿勢の推定処理を実行したり、差分を算出したりしてもよい。これにより、仮想検出部がガイドライン上に位置した状態で後退する際の精度をさらに高めることができる。
【0083】
制御部260は、路面に設置された2次元コードをセンサ(カメラ)でスキャンすること
により、2次元コードに関連付けられた現在位置、目的位置までの距離、及び/又はその地点での目標速度等の情報を取得するようにしてもよい。例えば、2次元コードに目標速度の情報を関連付けておけば、搬送車は2次元コードから目標速度の情報を取得し、上記
速度制御を実行することができる。
【0084】
本実施形態の走行制御方法において、制御部260は、例えば
図17に示すように、所定
の条件を満たす場合に、通常の動作モードから、仮想検出部がガイドライン上に位置するように搬送車を動作させる仮想センサ利用モードに切り替える(S101)。所定条件は、例えば、後退する場合とすることができるが、これに限られない。ユーザから切替を要求する入力を受け付けた場合や、カメラ(センサ)で読み取った二次元コードに予め関連付けられた切替指示情報を認識した場合であってもよい。通常の動作モードは、ガイドラインをライン検出部16で検出しながらガイドラインに沿って前進するモードとすることができるが、自律走行モードなど、他のモードであってもよい。
【0085】
そして、制御部260(位置姿勢取得部)は、ガイドラインに対するライン検出部16の相
対位置及び相対角度θを推定する。例えば、ライン検出部16がガイドライン上に位置する場合、ガイドラインからライン検出部16までの距離は0(ゼロ)である。
【0086】
制御部は、搬送車のガイドラインに対する位置情報及び姿勢情報と、特定箇所に対する仮想検出部の相対的な位置情報とに基づいて、ガイドラインに対する仮想検出部のガイドライン相対位置を推定する(S102)。制御部は、例えば、ガイドラインからライン検出部16までの距離(相対位置)及び相対角度θ予め記憶部に記憶されるライン検出部16から仮想検出部116までの距離L1とに基づいて、ガイドラインから仮想検出部116の特定箇所(中心等)までの距離Dを推定する。距離Dは、D=L1×sinθの式で求めることができ
る。なお、ライン検出部16がガイドライン上に位置しない場合、上記のL1×sinθに、ガ
イドラインからライン検出部16までの距離を(ガイドラインから見た方向に応じて)加算又は減算することにより距離Dを求めることができる。
【0087】
制御部は、推定した仮想検出部のガイドライン相対位置に基づいて、搬送車の動作を制御する(S103)。例えば、仮想検出部がガイドライン上に位置するようになるまで搬送車を旋回させるようにしてもよいし、後退しながら徐々に旋回し、仮想検出部をガイドラインに近づけるようにしてもよい。制御部260は、上記S102、103の処理を繰り
返して、目的位置に到達したことを検知すると搬送車を停止させ、目的位置までの移動処理が終了する。
【0088】
制御部は、ライン検出部16でガイドラインを読み取りながら前進する場合と同様に、距離Dが予め定めた特定値(例えば、5mm以下、1mm以下、0.5mm以下、0mmなど)となるように、駆動部を制御することができる。例えば、左右の駆動輪を逆方向に回転させたり、異なる回転数で回転させたりすることにより、仮想検出部116がガイドライ
ンに近づく方向に搬送車を旋回させることで、距離Dを予め定めた特定値以下にすることができる。その際、搬送車が前方や後方に進んでもよい。
【0089】
制御部は、所定期間ごとに繰り返し、仮想検出部のガイドラインに対する相対位置を取得し、仮想検出部の位置がガイドラインからずれている場合にはガイドライン上に位置するように駆動部を制御して、搬送車は後退しながら目的位置まで移動する。なお、後退する場合に限らず、前進する場合においても、仮想検出部のガイドラインに対する相対位置を取得し、仮想検出部がガイドライン上に位置するように駆動部を制御してもよい。
【0090】
制御部260は、位置推定部265から取得する現在位置と、記憶部から取得する目的位置との差分に基づいて、搬送車の現在位置から目的位置までの距離を算出する処理を実行するようにしてもよい。あるいは、床面に敷設される二次元コードに距離dの情報を関連付け、当該コードを搬送車で読み取ることにより、距離dを取得するようにしてもよい。
【0091】
制御部260は、搬送車の速度センサで取得する速度情報に基づいて、搬送車の走行速度
を制御するようにしてもよい。例えば、制御部260は、距離dに基づいて決定した目標速
度と、現在の搬送車の速度とを比較して、目標速度よりも現在速度が小さい場合には加速するよう制御し、目標速度よりも現在速度が大きい場合には、減速するよう制御する。
【0092】
制御部260は、予め定められる一定期間ごとに、目的位置までの距離を算出したり、目
標速度を決定したり、速度を制御したりする処理を実行するようにしてもよい。一定期間は、例えば0.01秒、0.02秒、0.05秒、0.1秒、1秒等とすることができ、予め記憶部に記
憶するようにしてもよい。制御部260は、一定期間に限られず、距離dが小さくなる(つ
まり、目的地に近づく)につれて、短い期間で距離dを算出する処理を実行するようにしてもよい。一方で、距離dが大きいほど、短い期間で距離dを算出する処理を実行するようにしてもよい。制御部260は、距離dの算出処理と同様に、一定期間又は一定でない所
定期間ごとに、自己位置を取得または推定したり、速度を取得または推定したりすることができる。
【0093】
制御部260は、走行速度vに基づいて、駆動輪を駆動するモータの適正トルク値を算出
するようにしてもよい。例えば、予め記憶部に記憶される走行速度vとモータトルク値との関係式に基づいて、走行速度vに対応するトルク値を算出するようにしてもよい。当該適正トルク値に基づいて、モータを制御することで、さらに停止精度を高めることができる。
【0094】
制御部260は、路面に設置された2次元コードをスキャンすることにより、前記現在位置を取得するようにしてもよい。これにより、簡易な方法で迅速に現在位置の情報を取得することができる。なお、制御部は、現在位置の情報に基づいて、搬送車が目的位置を通り過ぎたことを検出した場合には、目的位置まで戻るよう走行制御することも可能である。制御部260は、
図7に示すように、搬送車が後退しながら目的位置まで移動する際にも、前進する場合と同様の速度制御をすることができる。また、後退しながら目的位置まで移動する場合、前進する場合とは異なる制御をしてもよい。
【0095】
また、搬送車は、上記のようなガイドラインに沿う速度制御と同時に、移動経路の延在方向に対する(例えば、誘導ラインの延在方向に対する)搬送車の姿勢(角度)を検出して、搬送車が移動経路方向に対して予め定められた所定値(例えば1°、5°など)以上ずれている場合に、姿勢を移動経路方向に近づけるように姿勢制御(旋回)するようにしてもよい。このように、角度のずれを確認して修正することで、停止位置の精度をさらに高めることができる。また、このような姿勢の検出は、所定期間(予め定められた一定期間、あるいは一定ではない所定期間)ごとに繰返し行うようにしてもよい。また、制御部は、例えば、搬送車の姿勢センサ等により、進行方向(搬送車の正面方向)を検出することができる。また、制御部は、検出部によりガイドラインの延在方向を検出するようにしてもよいし、予め記憶部のマップにガイドラインの位置及び延在方向のデータが記憶されていてもよい。
【0096】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示の技術的範囲はかかる例に限定されない。本開示の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0097】
本明細書において説明した装置は、単独の装置として実現されてもよく、一部または全部がネットワークで接続された複数の装置(例えばクラウドサーバ)等により実現されてもよい。例えば、搬送車の制御部260および記録部220は、互いにネットワークで接続された異なるサーバにより実現されてもよい。また、本明細書において説明した搬送システムでは、操縦機3000、統括制御装置4000、入出力装置5000がそれぞれネットワークを介して接続された別個のハードウェアで構成される例を説明したが、操縦機3000、統括制御装置4000、入出力装置5000の機能の一部又は全部が搬送車10に実装されていても良い。
【0098】
本明細書において説明した装置による一連の処理は、ソフトウェア、ハードウェア、及びソフトウェアとハードウェアとの組合せのいずれを用いて実現されてもよい。本実施形態に係る制御部260の各機能を実現するためのコンピュータプログラムを作製し、PC等に実装することが可能である。また、このようなコンピュータプログラムが格納された、コンピュータで読み取り可能な記録媒体も提供することができる。記録媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリ等である。また、上記のコンピュータプログラムは、記録媒体を用いずに、例えばネットワークを介して配信されてもよい。
【0099】
また、本明細書においてフローチャート図を用いて説明した処理は、必ずしも図示された順序で実行されなくてもよい。いくつかの処理ステップは、並列的に実行されてもよい。また、追加的な処理ステップが採用されてもよく、一部の処理ステップが省略されてもよい。
【0100】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、または上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【0101】
なお、以下のような構成も本開示の技術的範囲に属する。
(項目1)
現実又は仮想のガイドラインに沿って移動可能な搬送車の走行制御システムであって、
前記搬送車の駆動部を制御することにより該搬送車の動作を制御する制御部と、
前記搬送車における特定箇所の現在の前記ガイドラインに対する相対的な位置情報及び前記ガイドラインに対する前記搬送車の姿勢情報を取得する位置姿勢取得部と、
前記搬送車の前記特定箇所と異なる位置に設定された仮想検出部の、前記特定箇所に対する相対的な位置情報を予め記憶する記憶部と、を備え、
前記制御部は、
前記搬送車の前記ガイドラインに対する位置情報及び姿勢情報と、前記仮想検出部の前記特定箇所に対する相対的な位置情報とに基づいて、前記ガイドラインに対する前記仮想検出部のガイドライン相対位置を推定し、推定した前記仮想検出部のガイドライン相対位置に基づいて、前記搬送車の動作を制御する、走行制御システム。
(項目2)
前記制御部は、
前記ガイドラインに対する前記仮想検出部のガイドライン相対位置を推定するに際して、前記ガイドラインの位置と、前記仮想検出部の位置との相対的な差分を取得する、項目1に記載の走行制御システム。
(項目3)
前記搬送車は、前記特定箇所に配置され現実のガイドラインを検出するガイド検出部を備え、
前記位置姿勢取得部は、前記ガイド検出部の検出情報に基づいて前記搬送車における特定箇所の現在の前記ガイドラインに対する相対的な位置情報及び前記ガイドラインに対する前記搬送車の姿勢情報を推定する、項目1に記載の走行制御システム。
(項目4)
前記記憶部には、現実空間に対応するマップデータと、該マップデータ上に設定される仮想のガイドラインの位置データとが予め記憶され、
前記位置姿勢取得部は、前記マップデータ上での仮想のガイドラインの位置データと、前記搬送車の現在の位置情報及び姿勢情報に基づいて、前記搬送車における特定箇所の現在の前記ガイドラインに対する相対的な位置情報及び前記ガイドラインに対する前記搬送車の姿勢情報を推定する、項目1に記載の走行制御システム。
(項目5)
前記仮想検出部は、前記特定箇所よりも前記搬送車の後側の位置に設定される、項目1に記載の走行制御システム。
(項目6)
前記制御部は、前記搬送車が後退する際に、前記仮想検出部が前記ガイドライン上に位置するか否かを判定し、
前記仮想検出部が前記ガイドライン上に位置する場合には、前記仮想検出部が前記ガイドラインに沿って移動するように前記搬送車の動作を制御し、
前記仮想検出部が前記ガイドライン上に位置していない場合には、前記仮想検出部が前記ガイドラインに近づくように前記搬送車の動作を制御する、項目1に記載の走行制御システム。
(項目7)
前記駆動部は、左右一対の駆動輪を有する、項目1に記載の走行制御システム。
(項目8)
前記特定箇所は、前記左右一対の駆動輪よりも前側に位置する、項目7に記載の走行制御システム。
(項目9)
前記仮想検出部は、前記左右一対の駆動輪よりも後側に位置する、項目7に記載の走行制御システム。
(項目10)
前記制御部は、予め定められる一定期間ごとに、前記前記ガイドラインに対する前記仮想検出部の位置を推定する、項目1に記載の走行制御システム。
(項目11)
路面、壁面又は天井面に設置された前記ガイドラインとしての2次元コードをスキャンすることにより、前記搬送車の現在位置を取得する、項目1又は2に記載の走行制御システム。
(項目12)
前記仮想検出部は、前記搬送車に連結される搬送対象物における所定の位置に設定され、
前記制御部は、前記搬送車に対する前記搬送対象物の相対的な位置情報及び姿勢情報に基づいて、前記仮想検出部の位置を推定する、項目1又は2に記載の走行制御システム。(項目13)
前記搬送車には、前記搬送対象物の姿勢を検出する搬送対象物検出部が設けられている、項目12に記載の走行制御システム。
(項目14)
前記制御部は、前記搬送車に搬送対象物が連結されているか否かに基づいて、予め記憶された複数の前記仮想検出部の位置情報から何れかを選択する、項目1又は2に記載の走行制御システム。
(項目15)
走行制御システムにより、現実又は仮想のガイドラインに沿って移動可能な搬送車の走行を制御する走行制御方法であって、
前記走行制御システムが、
前記搬送車の駆動部を制御することにより該搬送車の動作を制御する制御部と、
前記搬送車における特定箇所の現在の前記ガイドラインに対する相対的な位置情報及び前記ガイドラインに対する前記搬送車の姿勢情報を取得する位置姿勢取得部と、
前記搬送車の前記特定箇所と異なる位置に設定された仮想検出部の、前記特定箇所に対する相対的な位置情報を予め記憶する記憶部と、を備え、
前記制御部は、
前記搬送車の前記ガイドラインに対する位置情報及び姿勢情報と、前記仮想検出部の前記特定箇所に対する相対的な位置情報とに基づいて、前記ガイドラインに対する前記仮想検出部のガイドライン相対位置を推定し、推定した前記仮想検出部のガイドライン相対位置に基づいて、前記搬送車の動作を制御する、走行制御方法。
【符号の説明】
【0102】
10 搬送車、 11 連結部、 12 物体位置検出部、 13 駆動輪、 14 非駆動輪、 16 誘導ライン検出部、 17 磁気センサー、 116 仮想検出部 1
30 動作エリア、 131 誘導ライン、 132 走行モード切替位置、 210 通信部、 220 記録部、 230 検出部、 240 入力部、 250 表示部、
260 制御部、 280 車輪駆動部、2000 台車、 2010 連結受け部、
3000 操縦機、4000 統括制御装置、 5000 入出力装置、 6000 通信ネットワーク、 7000 外部システム
【要約】
搬送車のガイドライン検出センサの数を減らすことが可能となる搬送車の走行制御システム及び搬送車の走行制御方法を提供する。
本開示は、現実又は仮想のガイドラインに沿って移動可能な搬送車の走行制御システムであって、制御部と、位置姿勢取得部と、記憶部と、を備え、前記制御部は、前記搬送車の特定箇所の前記ガイドラインに対する位置情報及び姿勢情報と、仮想検出部(116)の前記特定箇所に対する相対的な位置情報とに基づいて、前記ガイドラインに対する前記仮想検出部のガイドライン相対位置を推定し、推定した前記仮想検出部のガイドライン相対位置に基づいて、前記搬送車の動作を制御する。