(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】イソシアネート組成物、塗料組成物、塗膜及び塗装物品
(51)【国際特許分類】
C08G 18/77 20060101AFI20241120BHJP
C08G 18/40 20060101ALI20241120BHJP
C08G 18/71 20060101ALI20241120BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20241120BHJP
C07C 265/14 20060101ALN20241120BHJP
C07C 311/65 20060101ALN20241120BHJP
【FI】
C08G18/77 010
C08G18/40
C08G18/71
C09D175/04
C07C265/14
C07C311/65
(21)【出願番号】P 2018137933
(22)【出願日】2018-07-23
【審査請求日】2021-03-24
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-16
(31)【優先権主張番号】P 2017142692
(32)【優先日】2017-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【氏名又は名称】宮本 龍
(72)【発明者】
【氏名】東 孝一郎
(72)【発明者】
【氏名】三輪 祐一
【合議体】
【審判長】▲吉▼澤 英一
【審判官】小出 直也
【審判官】松本 直子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第02/42351(WO,A1)
【文献】特開2008-222983(JP,A)
【文献】特表2013-513007(JP,A)
【文献】特開2004-143307(JP,A)
【文献】特開平2-613(JP,A)
【文献】特開昭59-27915(JP,A)
【文献】特開昭58-98326(JP,A)
【文献】国際公開第96/17881(WO,A1)
【文献】特開昭57-198761(JP,A)
【文献】特開2000-336134(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G18, C08L75, C09D175, C09J175
CA/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表されるトリイソシアネート、及び、下記一般式(II)で表される化合物を含
み、
前記一般式(I)で表されるトリイソシアネートの質量に対する前記一般式(II)で表される化合物の含有量が0.50質量%以上5.00質量%以下である、イソシアネート組成物。
【化1】
[一般式(I)中、複数あるY
1は、それぞれ独立に、単結合、又は、エステル構造及びエーテル構造からなる群より選択される1種以上を含んでもよい炭素数1~20の2価の炭化水素基である。複数あるY
1は、それぞれ同一であってもよく異なっていてもよい。R
1は、水素原子又は炭素数1~12の1価の炭化水素基である。]
【化2】
[一般式(II)中、R
2は、水素原子又は炭素数1~12の1価の炭化水素基である。R
3は、イソシアネート基である。]
【請求項2】
前記一般式(I)で表されるトリイソシアネートが、リジントリイソシアネートである請求項1に記載のイソシアネート組成物。
【請求項3】
前記一般式(II)で表される化合物が、p-トルエンスルホニルイソシアネートである請求項1又は2に記載のイソシアネート組成物。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか一項に記載のイソシアネート組成物と、ポリオールとを含む塗料組成物。
【請求項5】
請求項
4に記載の塗料組成物を硬化した塗膜。
【請求項6】
請求項
5に記載の塗膜を備える塗装物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソシアネート組成物、塗料組成物、塗膜及び塗装物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリウレタン塗料から形成されるウレタン塗膜は、非常に優れた可撓性、耐薬品性、耐汚染性を有している。特に、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、「HDI」と称する場合がある)に代表される脂肪族ジイソシアネートから得られる無黄変ポリイソシアネートを硬化剤として用いた塗膜は耐候性にも優れ、その需要は増加している。
【0003】
近年、地球環境保護の高まりから、硬化剤として使用されるポリイソシアネート組成物を低粘度化し、塗料中の有機溶剤の削減を可能とする技術開発が盛んに行われている。その例として、低粘度のトリイソシアネート化合物を単独で用いる方法(例えば、特許文献1~3等参照)等が挙げられる。これらのトリイソシアネート化合物を使用した場合、ポリイソシアネート組成物の低粘度化を達成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特公昭63-015264号公報
【文献】特開昭53-135931号公報
【文献】特開昭60-044561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載のトリイソシアネート化合物を使用した際には、塗膜の乾燥性が十分ではないという課題があった。
また、特許文献2及び3に記載のトリイソシアネート化合物を使用した際には、ある程度の塗膜の乾燥性を満足するものであった。しかしながら、塗料組成物の粘度安定性が不足したり、得られる塗膜の外観、耐溶剤性及び耐候性性能が、十分ではないという課題があった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、粘度安定性が良好な塗料組成物が得られ、且つ、乾燥性及び耐溶剤性が良好な塗膜が得られるイソシアネート組成物を提供する。また、前記イソシアネート組成物を用いた塗料組成物、塗膜及び塗装物品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
本発明の第1態様に係るイソシアネート組成物は、下記一般式(I)で表されるトリイソシアネート、及び、下記一般式(II)で表される化合物を含み、前記一般式(I)で表されるトリイソシアネートの質量に対する前記一般式(II)で表される化合物の含有量が0.50質量%以上5.00質量%以下である。
【0008】
【0009】
[一般式(I)中、複数あるY1は、それぞれ独立に、単結合、又は、エステル構造及びエーテル構造からなる群より選択される1種以上を含んでもよい炭素数1~20の2価の炭化水素基である。複数あるY1は、それぞれ同一であってもよく異なっていてもよい。R1は、水素原子又は炭素数1~12の1価の炭化水素基である。]
【0010】
【0011】
[一般式(II)中、R2は、水素原子又は炭素数1~12の1価の炭化水素基である。R3は、イソシアネート基である。]
前記一般式(I)で表されるトリイソシアネートが、リジントリイソシアネートであってもよい。
前記一般式(II)で表される化合物が、p-トルエンスルホニルイソシアネートであってもよい。
【0012】
本発明の第2態様に係る塗料組成物は、上記第1態様に係るイソシアネート組成物と、ポリオールとを含む。
【0013】
本発明の第3態様に係る塗膜は、上記第2態様に係る塗料組成物を硬化したものである。
【0014】
本発明の第4態様に係る塗装物品は、上記第3態様に係る塗膜を備える。
【発明の効果】
【0015】
上記態様によれば、粘度安定性が良好な塗料組成物が得られ、且つ、乾燥性及び耐溶剤性が良好な塗膜が得られるイソシアネート組成物を提供することができる。また、前記イソシアネート組成物を用いた塗料組成物、塗膜及び塗装物品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0017】
なお、本明細書において、「トリイソシアネート」とは、1分子中に3つのイソシアネート基(-NCO)を有する単量体化合物を意味する。
本明細書において、「ポリオール」とは、2つ以上のヒドロキシ基(-OH)を有する化合物を意味する。
【0018】
本明細書において、特に断りがない限り、「(メタ)アクリル」はメタクリルとアクリルとを包含する。また、「(メタ)アクリレート」はメタクリレートとアクリレートとを包含するものとする。
【0019】
≪イソシアネート組成物≫
本発明の一実施形態に係るイソシアネート組成物は、下記一般式(I)で表されるトリイソシアネート(以下、「トリイソシアネート化合物(I)」と称する場合がある)、及び、下記一般式(II)で表される化合物(以下、「化合物(II)」と称する場合がある)を含む。
【0020】
【0021】
[一般式(I)中、複数あるY1は、それぞれ独立に、単結合、又は、エステル構造及びエーテル構造からなる群より選択される1種以上を含んでもよい炭素数1~20の2価の炭化水素基である。複数あるY1は、それぞれ同一であってもよく異なっていてもよい。R1は、水素原子又は炭素数1~12の1価の炭化水素基である。]
【0022】
【0023】
[一般式(II)中、R2は、水素原子又は炭素数1~12の1価の炭化水素基である。R3は、ハロゲン原子又はイソシアネート基である。]
【0024】
本実施形態のイソシアネート組成物によれば、粘度安定性が良好な塗料組成物が得られる、また、本実施形態のイソシアネート組成物によれば、乾燥性及び耐溶剤性が良好な塗膜が得られる。
本実施形態のイソシアネート組成物の物性及び構成成分について、以下に詳細を説明する。
【0025】
<物性>
[黄変度]
本実施形態のイソシアネート組成物は、長期間保存してもほとんど黄変しないことが好ましい。
具体的には、本実施形態のイソシアネート組成物を60℃で1週間保存した場合におけるハーゼン色数(APHA)の上限値が100未満であることが好ましく、50未満であることがより好ましく、30未満であることがさらに好ましく、10未満であることが特に好ましい。
一方、本実施形態のイソシアネート組成物におけるハーゼン色数(APHA)の下限値は、特に限定はないが、例えば0以上であればよい。
本実施形態のイソシアネート組成物におけるハーゼン色数が上記範囲である場合、保存時における黄変度が少ないと判断できる。
ハーゼン色数は、ISO 6271-2:2004で規定されている紫外可視分光光度計を用いたハーゼン色数試験により測定することができる。
【0026】
[粘度]
本実施形態のイソシアネート組成物の25℃における粘度は、特に制限を受けないが1mPa・s以上1000mPa・s以下であることが好ましく、2mPa・s以上500mPa・s以下がより好ましく、5mPa・s以上100mPa・s以下がさらに好ましい。25℃における粘度が上記下限値以上であることにより、硬化性がより優れる傾向があり、25℃における粘度が上記上限値以下であることにより、作業性がより優れる傾向がある。
粘度は、E型粘度計(トキメック社製)を用いることによって測定することができる。
【0027】
<構成成分>
[トリイソシアネート化合物(I)]
本実施形態のイソシアネート組成物に含まれるトリイソシアネート化合物(I)は、上記一般式(I)で表される。
【0028】
(Y1)
一般式(I)中、複数あるY1は、それぞれ独立に、単結合、又は、エステル構造及びエーテル構造からなる群より選択される1種以上を含んでもよい炭素数1~20の2価の炭化水素基である。複数あるY1は、それぞれ同一であってもよく異なっていてもよい。
【0029】
前記炭素数1~20の2価の炭化水素基としては、脂肪族基であってもよく、芳香族基であってもよい。前記脂肪族基は、直鎖状、分岐状又は環状のいずれであってもよい。
前記直鎖状又は分岐状の脂肪族基としては、例えば、アルカンジイル基(アルキレン基)、アルキリデン基等が挙げられる。
前記環状の脂肪族基としては、例えば、シクロアルキレン基等が挙げられる。
前記芳香族基としては、例えば、フェニレン基等のアリーレン基が挙げられる。
中でも、炭素数1~20の2価の炭化水素基としては、アルキレン基が好ましい。
前記アルキレン基としては、メチレン基、ジメチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基等が挙げられる。
中でも、前記アルキレン基としては、テトラメチレン基が好ましい。
【0030】
また、Y1における前記エステル構造及びエーテル構造からなる群より選択される1種以上を含んでもよい炭素数1~20の2価の炭化水素基としては、例えば、下記一般式(III)で表される基(以下、「基(III)」と称する場合がある)が挙げられる。
-(CH2)n1-X-(CH2)n2- ・・・(III)
【0031】
基(III)において、-(CH2)n1-のXと反対の結合手が上記一般式(I)中のCと結合しており、-(CH2)n2-のXと反対の結合手が上記一般式(I)中のNCOと結合している。また、1≦n1+n2≦20となる整数である。すなわち、n1及びn2の両方とも0になることはなく、NCOと結合している側であるn2は1以上であることが好ましい。
中でも、n1及びn2はそれぞれ独立して、0~20の整数であることが好ましく、0~4の整数であることがより好ましく、0~2の整数であることがさらに好ましい。
n1及びn2の組み合わせとしては、例えば、n1=0、n2=2の組み合わせ、n1=2、n2=2の組み合わせが好ましい。
【0032】
基(III)において、Xは、エステル構造又はエーテル構造である。中でも、反応速度が上がることから、Xはエステル構造であることが好ましい。
【0033】
また、複数あるY1のうち少なくとも1つが、脂肪族基及び芳香族基からなる群の1種以上を有する場合、本実施形態のイソシアネート組成物をより低粘度とすることができ、且つ、本実施形態のイソシアネート組成物を塗料組成物の硬化剤として使用して製造された塗膜の耐候性をより良好にすることができる。
また、複数あるY1のうち少なくとも1つが、エステル構造を有する場合、本実施形態のイソシアネート組成物耐熱性をより向上させることができ、且つ、本実施形態のイソシアネート組成物を塗料組成物の硬化剤として使用して製造された塗膜の硬化性をより良好にすることができる。
【0034】
(R1)
R1は、水素原子、又は、炭素数1~12の1価の炭化水素基である。R1における炭化水素基としては、特に限定されず、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。中でも、R1としては、水素原子が好ましい。
【0035】
本実施形態において、トリイソシアネート化合物(I)で好ましいものとして具体的には、例えば、特公平4-1033号公報(参考文献1)に開示されているビス(2-イソシアナトエチル)2-イソシアナトグルタレート(以下、「GTI」と称する、分子量311)、特開昭53-135931号公報(参考文献2)に開示されているリジントリイソシアネート(以下、「LTI」と称する、分子量267)、国際公開第1996/17881号(参考文献3)に開示されている4-イソシアネートメチル-1,8-オクタメチレンジイソシアネート(以下、「NTI」と称する、分子量251)等が挙げられる。
【0036】
中でも、トリイソシアネート化合物(I)としては、イソシアネート基の反応性がより高く、且つ、極性溶剤との相溶性をより向上できることから、LTIが好ましい。
【0037】
(トリイソシアネート化合物の分子量)
本実施形態のイソシアネート組成物に含まれるトリイソシアネート化合物(I)の分子量は、139以上1000以下であること好ましく、150以上800以下であることがより好ましく、180以上600以下であることがさらに好ましく、200以上400以下であることが特に好ましい。
トリイソシアネート化合物(I)の分子量が上記下限値以上であることにより、結晶化をより抑制することができ、上記上限値以下であることにより、低粘度化をより達成しやすくなる。
【0038】
[トリイソシアネート化合物(I)の製造方法]
本実施形態のイソシアネート組成物に含まれるトリイソシアネート化合物(I)は、例えば、アミノ酸誘導体、エーテルアミン等のアミンをイソシアネート化して得ることができる。
【0039】
前記アミノ酸誘導体としては、例えば2,5-ジアミノ吉草酸、2,6-ジアミノヘキサン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等が挙げられる。これらアミノ酸誘導体はジアミンモノカルボン酸又はモノアミンジカルボン酸である。そのため、カルボキシ基を、例えばエタノールアミン等のアルカノールアミンでエステル化することで、アミノ基数を制御することができる。又は、カルボキシ基を、例えばメタノール等のアルコールでエステル化することで、アミノ基数を制御することができる。
得られたエステル基を有するアミンは、アミンのホスゲン化等により、エステル構造を含むトリイソシアネート化合物とすることができる。
【0040】
前記エーテルアミンとしては、例えば、ポリオキシアルキレントリアミンである三井化学ファイン社の商品名「D403」等が挙げられる。これらエーテルアミンはトリアミンであり、アミンのホスゲン化等により、エーテル構造を含むトリイソシアネート化合物とすることができる。
【0041】
[化合物(II)]
本実施形態のイソシアネート組成物に含まれる化合物(II)は、上記一般式(II)で表される。
【0042】
(R2)
R2は、水素原子、又は、炭素数1~12の1価の炭化水素基である。R2における炭化水素基としては、特に限定されず、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。アルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基としては、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、環状(脂肪族環基)であってもよい。これらの基の炭素数は、1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい。
前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基(tert-ブチル基)、ペンチル基、イソアミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等が挙げられる。
前記アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、1-プロペニル基、イソプロペニル基、2-ブテニル基、1,3-ブタジエニル基、2-ペンテニル基、2-ヘキセニル基等が挙げられる。
前記アルキニル基としては、例えば、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、イソプロピニル基、1-ブチニル基、イソブチニル基等が挙げられる。
中でも、R2としては、メチル基が好ましい。
【0043】
(R3)
R3は、ハロゲン原子又はイソシアネート基である。
前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
中でも、R3としては、イソシアネート基が好ましい。
【0044】
本実施形態において、化合物(II)で好ましいものとして具体的には、例えば、p-トルエンスルホニルイソシアネート、p-トルエンスルホニルクロライド、p-トルエンスルホニルブロマイド等が挙げられる。
【0045】
中でも、化合物(II)としては、本実施形態のイソシアネート組成物の保存時、塗料組成物製造時、及び、塗膜形成時に有毒なガスの発生がないことから、p-トルエンスルホニルイソシアネートが好ましい。
【0046】
(化合物(II)の含有量)
本実施形態のイソシアネート組成物に含まれる化合物(II)の含有量は、イソシアネート化合物(I)の質量に対して、0.01質量%以上10質量%未満であることが好ましく、0.1質量%以上7質量%未満であることがより好ましく、0.2質量%以上3質量%未満であることがさらに好ましい。
本実施形態のイソシアネート組成物に含まれる化合物(II)の含有量が上記下限値以上であることにより、本実施形態のイソシアネート組成物を含む塗料組成物の粘度安定性、並びに、得られる塗膜の外観(鮮鋭性)及び耐溶剤性がより優れる傾向にある。一方、本実施形態のイソシアネート組成物に含まれる化合物(II)の含有量が上記上限値未満であることにより、本実施形態のイソシアネート組成物を含む塗料組成物の保存時における耐黄変性、並びに、得られる塗膜の外観(鮮鋭性)、耐溶剤性及び紫外線照射時の塗膜の光沢保持率(耐候性)がより優れる傾向にある。
【0047】
[化合物(II)の製造方法]
本実施形態のイソシアネート組成物に含まれる化合物(II)は、例えば、トルエン等の芳香族化合物にハロゲン化スルホン酸、イソシアン酸クロロスルホニル等の上述のR3基及びスルホニル基を有する化合物を反応させて得ることができる(下記反応式(1)参照)。なお、反応式(1)中のX’は、ハロゲン原子又は水酸基である。
R2C6H5 + X’SO2R3
→ p-R2C6H4SO2R3 + HX’ ・・・(1)
【0048】
具体的には、例えば、p-トルエンスルホニルイソシアネートは、トルエンにイソシアン酸クロロスルホニルを反応させて得ることができる(下記反応式(2)参照)。
CH3C6H5 + ClSO2NCO
→ p-CH3C6H4SO2NCO + HCl ・・・(2)
【0049】
[その他イソシアネート化合物]
本実施形態のイソシアネート組成物は、上述のトリイソシアネート化合物(I)及び上述の化合物(II)の他に、さらに異なるイソシアネート化合物を含むことができる。
前記異なるイソシアネート化合物としては、例えば、脂肪族、脂環族又は芳香族のイソシアネート基を2つ有するジイソシアネート等が挙げられる。又は、例えば、脂肪族、脂環族又は芳香族のイソシアネート基を1つ以上有するイソシアネート化合物を、触媒を用いた反応又は加熱により得られる反応物であるポリイソシアネートであってもよい。
【0050】
前記ジイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート(TMDI)、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4-トリメチルヘキサン-1,6-ジイソシアネート、2-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート(MPDI)、1,3-ビス(イソシアナトメチル)-シクロヘキサン(1,3-H6-XDI)、3(4)-イソシアナトメチル-1-メチル-シクロヘキシルイソシアネート(IMCI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアナトメチル)-ノルボルナン(NBDI)、1,3-ビス(イソシアナトメチル)-ベンゼン、1,3-ビス(2-イソシアナトプロピル-2)ベンゼン、4,4‘-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、リジンジイソシアネート(LDI)等が挙げられる。これらジイソシアネートを単独で含有してもよく、2種以上組み合わせて含有してもよい。
中でも、ジイソシアネートとしては、得られる塗膜の耐候性、工業的入手の容易さから、HDI又はIPDIが好ましい。
【0051】
前記ポリイソシアネートとしては、上述のジイソシアネートを反応させて得られる反応物であることが好ましい。
また、前記ポリイソシアネートは分子中に、例えば、イソシアヌレート基、ウレトジオン基、アロファネート基、イミノオキサジアジンジオン基、ウレタン基、ビュレット基等が含まれる。
中でも、前記ポリイソシアネートとしては、耐候性の観点から、イソシアヌレート基を含むものが好ましい。
【0052】
≪塗料組成物≫
本発明の一実施形態に係る塗料組成物は、上述のイソシアネート組成物と、ポリオールとを含む。
【0053】
本実施形態の塗料組成物は、上述のイソシアネート組成物を含むことで、経時的な粘度安定性が良好である。また、本実施形態の塗料組成物によれば、乾燥性及び耐溶剤性が良好な塗膜が得られる。
本実施形態の塗料組成物の物性及び構成成分について、以下に詳細を説明する。
【0054】
<物性>
[粘度上昇率]
本実施形態の塗料組成物は、経時的に粘度がほとんど変化せず、安定している。
具体的には、本実施形態の塗料組成物の粘度上昇率の上限値は、2.0未満であることが好ましく、1.5未満であることがより好ましく、1.3未満であることがさらに好ましい。
一方、本実施形態の塗料組成物の粘度上昇率の下限値は、特に限定はないが、例えば1.0以上であればよい。
本実施形態の塗料組成物の粘度上昇率が上記範囲である場合、粘度上昇率が安定していると判断できる。
粘度上昇率は、製造直後の25℃における粘度(A)に対する製造から3時間後の25℃における粘度(B)の比(下記式(a)参照)により算出することができる。
塗料粘度上昇率=製造3時間後の粘度(B)/製造直後の粘度(A) ・・・(a)
また、各25℃における粘度は、E型粘度計(トキメック社製)を用いることによって測定することができる。
【0055】
<構成成分>
本実施形態の塗料組成物に含まれるイソシアネート組成物は、上述のとおりである。
また、本実施形態の塗料組成物は、樹脂成分としてポリオールを含む。
ポリオールは、活性水素を分子内に2個以上有する化合物であり、上述のイソシアネート組成物のイソシアネート基と反応性を有する。
ポリオール以外の活性水素を分子内に2個以上有する化合物としては、例えば、ポリアミン、ポリチオール等が挙げられる。
中でも、本実施形態の塗料組成物に含まれる活性水素を分子内に2個以上有する化合物としては、ポリオールが好ましい。
【0056】
[ポリオール]
前記ポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、ポリオレフィンポリオール、フッ素ポリオール等が挙げられる。
中でも、ポリオールとしては、得られる塗膜の耐候性、耐溶剤性及び硬度の観点からは、アクリルポリオールが好ましい。又は、ポリオールとしては、得られる塗膜の機械強度及び耐油性の観点からは、ポリエステルポリオールが好ましい。
【0057】
(ポリエステルポリオール)
前記ポリエステルポリオールは、例えば、二塩基酸の単独又は2種類以上の混合物と、多価アルコールの単独又は2種類以上の混合物とを、縮合反応させることによって得ることができる。
前記二塩基酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等のカルボン酸等が挙げられる。
前記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチルペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、2-メチロールプロパンジオール、エトキシ化トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0058】
ポリエステルポリオールの具体的な製造方法としては、例えば、上記の成分を混合し、約160℃~220℃で加熱することによって、縮合反応を行うことができる。
又は、例えば、ε-カプロラクトン等のラクトン類を、多価アルコールを用いて開環重合して得られるようなポリカプロラクトン類等もポリエステルポリオールとして用いることができる。
これらのポリエステルポリオールは、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、及びこれらから得られるポリイソシアネート等を用いて変性させることができる。
中でも、本実施形態の塗料組成物の耐黄変性及び得られる塗膜の耐候性等の観点から、ポリエステルポリオールは、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、及びこれらから得られるポリイソシアネートを用いて変性させることが好ましい。
【0059】
また、本実施形態の塗料組成物を水系ベース塗料として用いる場合には、ポリエステルポリオール中の二塩基酸等に由来する一部のカルボン酸を残存させておき、アミン、アンモニア等の塩基で中和することで、ポリエステルポリオールを水溶性又は水分散性の樹脂とすることができる。
【0060】
(ポリエーテルポリオール)
前記ポリエーテルポリオールは、例えば、以下(1)~(3)のいずれかの方法等を用いて得ることができる。
(1)触媒を使用して、アルキレンオキシドの単独又は混合物を、多価ヒドロキシ化合物の単独又は混合物に、ランダム又はブロック付加して、ポリエーテルポリオール類を得る方法。
(2)ポリアミン化合物にアルキレンオキシドを反応させて、ポリエーテルポリオール類を得る方法。
(3)(1)又は(2)で得られたポリエーテルポリオール類を媒体としてアクリルアミド等を重合して、いわゆるポリマーポリオール類を得る方法。
【0061】
前記触媒としては、例えば、水酸化物(リチウム、ナトリウム、カリウム等)、強塩基性触媒(アルコラート、アルキルアミン等)、複合金属シアン化合物錯体(金属ポルフィリン、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛錯体等)等が挙げられる。
【0062】
前記アルキレンオキシドとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド等が挙げられる。
【0063】
前記多価ヒドロキシ化合物としては、例えば、以下のものが挙げられる。
(i)ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等。
(ii)エリトリトール、D-トレイトール、L-アラビニトール、リビトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ガラクチトール、ラムニトール等の糖アルコール系化合物。
(iii)アラビノース、リボース、キシロース、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、ラムノース、フコース、リボデソース等の単糖類。
(iv)トレハロース、ショ糖、マルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、メリビオース等の二糖類。
(v)ラフィノース、ゲンチアノース、メレチトース等の三糖類。
(vi)スタキオース等の四糖類。
【0064】
前記ポリアミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン類等が挙げられる。
【0065】
(アクリルポリオール)
前記アクリルポリオールは、例えば、一分子中に1個以上の活性水素を有する重合性モノマーを重合させる、又は、一分子中に1個以上の活性水素を有する重合性モノマーと、必要に応じて、当該重合性モノマーと共重合可能な他のモノマーとを、共重合させることによって得ることができる。
【0066】
前記一分子中に1個以上の活性水素を有する重合性モノマーとしては、例えば、以下のものが挙げられる。これらを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(i)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸-2-ヒドロキシブチル等の活性水素を有するアクリル酸エステル類。
(ii)メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸-2-ヒドロキシブチル、メタクリル酸-3-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸-4-ヒドロキシブチル等の活性水素を有するメタクリル酸エステル類。
(iii)グリセリンやトリメチロールプロパン等のトリオールの(メタ)アクリル酸モノエステル等の多価活性水素を有する(メタ)アクリル酸エステル類。
(iv)ポリエーテルポリオール類(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等)と上記の活性水素を有する(メタ)アクリル酸エステル類とのモノエーテル。
(v)グリシジル(メタ)アクリレートと一塩基酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、p-tert-ブチル安息香酸等)との付加物。
(vi)上記の活性水素を有する(メタ)アクリル酸エステル類の活性水素にラクトン類(例えば、ε-カプロラクタム、γ-バレロラクトン等)を開環重合させることにより得られる付加物。
【0067】
前記重合性モノマーと共重合可能な他のモノマーとしては、例えば、以下のものが挙げられる。これらを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(i)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸-n-ブチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸-n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸-n-ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸グリシジル等の(メタ)アクリル酸エステル類。
(ii)アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸類。
(iii)アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等の不飽和アミド類。
(iv)ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の加水分解性シリル基を有するビニルモノマー類。
(v)スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリルニトリル、フマル酸ジブチル等のその他の重合性モノマー。
【0068】
アクリルポリオールの具体的な製造方法としては、例えば、上記の単量体(モノマー)成分を、公知の過酸化物やアゾ化合物等のラジカル重合開始剤の存在下で溶液重合し、必要に応じて有機溶剤等で希釈することによって、アクリルポリオールを得る方法等が挙げられる。
【0069】
本実施形態の塗料組成物を水系ベース塗料として用いる場合には、上記の単量体(モノマー)成分を溶液重合し、水層に転換する方法や乳化重合等の公知の方法を用いることで、水系ベースのアクリルポリオールを製造することができる。その場合、アクリル酸、メタアクリル酸等のカルボン酸含有モノマーやスルホン酸含有モノマー等の酸性部分を、アミンやアンモニアで中和することによって、アクリルポリオールに水溶性又は水分散性を付与することができる。
【0070】
(ポリオレフィンポリオール)
前記ポリオレフィンポリオールとしては、例えば、水酸基を2個以上有するポリブタジエン、水酸基を2個以上有する水素添加ポリブタジエン、水酸基を2個以上有するポリイソプレン、水酸基を2個以上有する水素添加ポリイソプレン等が挙げられる。
また、ポリオレフィンポリオールにおいて、水酸基の数は、より高い塗膜強度を得られることから、3個であることが好ましい。
【0071】
(フッ素ポリオール)
本明細書において、「フッ素ポリオール」とは、分子内にフッ素を含むポリオールを意味する。フッ素ポリオールとして具体的には、例えば、特開昭57-34107号公報(参考文献4)、特開昭61-275311号公報(参考文献5)等で開示されているフルオロオレフィン、シクロビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、モノカルボン酸ビニルエステル等の共重合体等が挙げられる。
【0072】
(ポリオールの水酸基価及び酸価)
ポリオールの水酸基価は、特に限定されないが、10mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であることが好ましく、20mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であることがより好ましく、30mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であることがさらに好ましい。
また、ポリオールの酸価は、0mgKOH/g以上30mgKOH/g以下であることが好ましい。
水酸基価及び酸価は、JIS K1557に準拠して測定することができる。
【0073】
(NCO/OH)
前記ポリオールの水酸基に対する、上述のイソシアネート組成物のイソシアネート基のモル当量比(NCO/OH)は、0.2以上5.0以下が好ましく、0.4以上3.0以下がより好ましく、0.5以上2.0以下がさらに好ましい。当該モル当量比が上記下限値以上であることで、より一層強靱な塗膜を得ることが可能となる。当該モル当量比が上記上限値以下であることで、得られる塗膜の平滑性をより一層向上させることができる。
【0074】
[その他添加剤]
本実施形態の塗料組成物は、上述のイソシアネート組成物及び上述のポリオール以外に、その目的や用途に応じて、本実施形態の効果を損なわない範囲で、さらに、有機溶剤、硬化促進用の触媒、顔料、レベリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、界面活性剤等の当該技術分野で使用されている各種添加剤を含んでいてもよい。
【0075】
(有機溶剤)
前記有機溶剤としては、水酸基及びイソシアネート基と反応する官能基を有しないものが好ましい。また、上述のイソシアネート組成物と相溶するものが好ましい。
有機溶剤として具体的には、例えば、エステル化合物、エーテル化合物、ケトン化合物、芳香族化合物、エチレングリコールジアルキルエーテル系の化合物、ポリエチレングリコールジカルボキシレート系の化合物、炭化水素系溶剤、芳香族系溶剤等の一般に塗料溶剤として用いられている有機溶剤が挙げられる。
【0076】
(硬化促進用の触媒)
硬化促進用の触媒としては、例えば、ジブチルスズジラウレート、2-エチルヘキサン酸スズ、2-エチルヘキサン酸亜鉛、コバルト塩等の金属塩;トリエチルアミン、ピリジン、メチルピリジン、ベンジルジメチルアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N-メチルピペリジン、ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N’-エンドエチレンピペラジン、N,N’-ジメチルピペラジン等の3級アミン類等が挙げられる。
【0077】
<塗料組成物の製造方法>
本実施形態の塗料組成物は、溶剤ベース塗料として使用してもよく、水系ベース塗料として使用してもよい。
本実施形態の塗料組成物を溶剤ベース塗料として用いる場合には、以下の方法により製造することができる。
まず、ポリオール、又はその溶剤希釈物に、必要に応じて、その他の樹脂、硬化促進用の触媒、顔料、レベリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、界面活性剤等の添加剤を加える。次いで、上述のイソシアネート組成物を硬化剤として添加し、必要に応じて、更に溶剤を添加して、粘度を調整する。次いで、手攪拌又はマゼラー等の攪拌機器を用いて攪拌することによって、溶剤ベース塗料を得ることができる。
【0078】
本実施形態の塗料組成物を水系ベース塗料として用いる場合には、以下の方法により製造することができる。
まず、ポリオールを含有する樹脂の水分散体、又は水溶物に、必要に応じて、その他の樹脂、硬化促進用の触媒、顔料、レベリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、界面活性剤等の添加剤を加える。次いで、上述のイソシアネート組成物を硬化剤として添加し、必要に応じて、更に水や溶剤を添加して、粘度を調整する。次いで、マゼラー等の攪拌機器により強制攪拌することによって、水系ベース塗料を得ることができる。
【0079】
<用途>
本実施形態の塗料組成物は、ロール塗装、カーテンフロー塗装、スプレー塗装、ベル塗装、静電塗装等の塗料として用いることができる。
また、本実施形態の塗料組成物は、例えば、金属(鋼板、表面処理鋼板等)、プラスチック、木材、フィルム、無機材料等の素材に対するプライマーや上中塗り塗料として有用である。
また、本実施形態の塗料組成物は、防錆鋼板を含むプレコートメタル、自動車の塗装部等に美粧性、耐候性、耐酸性、防錆性、耐チッピング性等を付与するための塗料としても有用である。
また、本実施形態の塗料組成物は、接着剤、粘着剤、エラストマー、フォーム、表面処理剤等のウレタン原料としても有用である。
【0080】
≪塗膜≫
本発明の一実施形態に係る塗膜は、上述の塗料組成物を硬化したものである。
【0081】
本実施形態の塗膜は、上述の塗料組成物を、ロール塗装、カーテンフロー塗装、スプレー塗装、ベル塗装、静電塗装等の公知の方法を用いて塗装し、常温乾燥又は焼付け工程を経て、硬化させることで得られる。
本実施形態の塗膜は、乾燥性及び耐溶剤性が良好である。
【0082】
≪塗装物品≫
本発明の一実施形態に係る塗装物品は、上述の塗膜を備える。
【0083】
本実施形態の塗装物品は、上述の塗料組成物を、ロール塗装、カーテンフロー塗装、スプレー塗装、ベル塗装、静電塗装等の公知の方法を用いて、任意の物品の表面に塗装し、常温乾燥又は焼付け工程を経て、硬化させて物品表面上に塗膜を形成させることで得られる。
本実施形態の塗装物品は、乾燥性及び耐溶剤性が良好な上述の塗膜を備えており、美粧性、耐酸性、防錆性、耐チッピング性、密着性等が付与されている。
【実施例】
【0084】
以下、具体的な実施例及び比較例を挙げて本実施形態をより具体的に説明するが、本実施形態はその要旨を超えない限り、以下の実施例及び比較例によって何ら限定されるものではない。以下において、実施例1、5、6、7、11、12は参考例とする。
【0085】
≪試験項目≫
以下に示す方法に従い、実施例及び比較例で製造されたイソシアネート組成物、該イソシアネート組成物を含む塗料組成物、及び、該塗料組成物から得られる塗膜について、以下に示す各物性の測定及び各評価を行った。
【0086】
<物性1:NCO含有率>
NCO含有率(質量%)は、各イソシアネート組成物中のイソシアネート基を過剰の2Nアミンで中和した後、1N塩酸による逆滴定によって求めた。
【0087】
<イソシアネート組成物の評価1:イソシアネート組成物の保存時黄変性>
イソシアネート組成物を60℃で1週間保存した。保存後のサンプルを、細孔サイズ3μmのメンブレンフィルターで濾過した。次いで、濾過したサンプルを長さ5cmのセルに投入し、測定機器としてLovibond PFXi-195を用いて、25℃の環境下におけるハーゼン色数(APHA)を測定した。
測定結果から、下記評価基準に従い、保存時黄変性を評価した。
(評価基準)
◎:10未満
○:10以上、30未満
△:30以上、50未満
×:50以上
【0088】
<塗料組成物の評価1:塗料粘度上昇率>
実施例及び比較例で製造された各塗料組成物の、製造直後の粘度(A)と製造3時間後の粘度(B)とを、E型粘度計(トキメック社製)を用いて25℃で測定した。測定に際しては、標準ローター(1°34’×R24)を用い、回転数は以下のとおりとした。
100rpm(128mPa・s未満の場合)
50rpm(128mPa・s以上256mPa・s未満の場合)
20rpm(256mPa・s以上640mPa・s未満の場合)
10rpm(640mPa・s以上1280mPa・s未満の場合)
5rpm(1280mPa・s以上2560mPa・s未満の場合)
【0089】
次いで、測定された製造直後の粘度(A)と製造3時間後の粘度(B)とを用いて、塗料粘度上昇率を、下記式(a)より算出した。
塗料粘度上昇率=製造3時間後の粘度(B)/製造直後の粘度(A) ・・・(a)
【0090】
また、算出された塗料組成物の粘度上昇率について、下記評価基準に従い、評価した。
(評価基準)
◎:1.0以上1.3未満
○:1.3以上1.5未満
△:1.5以上2.0未満
×:2.0以上
【0091】
<塗膜の評価1:塗膜乾燥性(ゲル分率)>
実施例及び比較例で製造された各塗膜約0.1gを精秤した。次いで、約0.1gの各塗膜をアセトン10gに投入し、23℃で1時間振とうさせた。次いで、振盪後の各塗膜を含むアセトン溶液を、325メッシュの金属メッシュでろ過した。次いで、メッシュ上に残った塗膜の不溶分を120℃の熱風乾燥器で1時間乾燥させ、その乾燥重量を精秤した。次いで、アセトン不溶分の乾燥重量を元の重量0.1gで割って、ゲル分率を算出した。算出されたゲル分率について、下記評価基準に従い、塗膜乾燥性を評価した。
(評価基準)
◎:95%以上
○:90%以上95%未満
△:85%以上90%未満
×:85%未満
【0092】
<塗膜の評価2:塗膜外観(鮮鋭性)>
実施例及び比較例で製造された各塗膜に蛍光灯を当てた際、塗膜に反射して見える蛍光灯の鮮明度を相対比較した。次いで、下記評価基準に従い、塗膜外観(鮮鋭性)性を評価した。
(評価基準)
蛍光灯の反射像の鮮明度(相対比較): 良 ◎>○>△>× 悪
【0093】
<塗膜の評価3:耐溶剤性(キシレン)>
実施例及び比較例で製造された各塗膜上に、キシレンを十分にしみこませたコットンを置き、23℃で5分間放置した。次いで、コットンを取り除き、塗膜上のキシレンをふき取って塗膜表面を観察した。次いで、下記評価基準に従い、耐溶剤性(キシレン)を評価した。
(評価基準)
◎:試験の痕跡が無かった
○:わずかに試験の痕跡があった
△:試験の痕跡があった
×:試験の痕跡があり、塗膜の劣化があった
【0094】
<塗膜の評価4:塗膜の耐候性(QUV)>
実施例及び比較例で製造された各塗膜について、以下の条件にてQUV試験を実施した。(QUV試験条件)
装置:デューパネル 光コントロールウェザーメーター(型式FDP、スガ試験機製)
放射照度:28W/m2
サイクル:60℃×10%RH×4時間→暗転:50℃×95%RH×4時間
テスト時間:1000時間
【0095】
試験前後における塗膜の光沢値から光沢保持率を測定した。次いで、下記評価基準に従い、塗膜の耐候性(QUV)を評価した。
(評価基準)
◎:95%以上
○:90%以上95%未満
△:85%以上90%未満
×:85%未満
【0096】
[合成例1]LTIの合成
撹拌機、温度計、ガス導入管を取り付けた4ツ口フラスコ内にエタノールアミン122.2g、o-ジクロロベンゼン100mL、トルエン420mLを入れ、氷冷化塩化水素ガスを導入し、エタノールアミンを塩酸塩に転換した。次いで、リジン塩酸塩182.5gを添加し、反応液を加熱して80℃まで昇温し、エタノールアミン塩酸塩を溶解させ、塩化水素ガスを導入してリジン二塩酸塩とした。次いで、塩化水素ガスを20から30mL/分で通過させ、反応液を加熱して116℃まで昇温し、水が留出しなくなるまでこの温度を維持した。次いで、生成した反応混合物をメタノール及びエタノールの混合液中で再結晶してリジンβ-アミノエチルエステル三塩酸塩165gを得た。このリジンβ-アミノエチルエステル三塩酸塩100gを微粉末としてo-ジクロロベンゼン1200mLに懸濁させ、かきまぜながら反応液を昇温した。次いで、反応液が120℃に達した時点でホスゲンを0.4モル/時間の速度にて吹込みはじめ、10時間保持した。次いで、反応液を150℃まで昇温し、反応液中のリジンβ-アミノエチルエステル三塩酸塩をほとんど溶解させた。次いで、冷却後ろ過し、減圧下にて溶存ホスゲン及び溶媒を留去した。次いで、真空蒸留することにより、沸点155~157℃/0.022mmHgの無色透明なLTI 80.4gを得た。LTIのNCO含有率は、47.1重量%であった。
【0097】
[合成例2]NTIの合成
撹拌機、温度計、ガス導入管を取り付けた4ツ口フラスコ内に4-アミノメチル-1,8-オクタメチレンジアミン(以下、「トリアミン」と称する場合がある)1060gをメタノール1500gに溶かし、これに35%濃塩酸1800mLを冷却しながら徐々に滴下した。減圧下にてメタノール及び水を除去して濃縮し、60℃/5mmHgにて24時間乾燥したところ、白色固体のトリアミン塩酸塩が得られた。得られたトリアミン塩酸塩650gを微粉末としてo-ジクロルベンゼン5000gに懸濁させ、かきまぜながら反応液を昇温した。100℃に達した時点でホスゲンを200g/Hrの速度にて吹込みはじめ、さらに昇温を続けて180℃に保持し、12時間ホスゲンを吹込み続けた。減圧下にて溶存ホスゲン及び溶媒を留去したのち、真空蒸留することにより、沸点161~163℃/1.2mmHgの無色透明な4-イソシアネートメチル-1,8-オクタメチレンジイソシアネート(以下、「NTI」と称する場合がある)420gが得られた。NTIのNCO含有率50.0重量%であった。
【0098】
[実施例1~6]イソシアネート組成物PI-a1~PI-a6、塗料組成物C-a1~C-a6及び塗膜T-a1~T-a6の製造
(1)イソシアネート組成物PI-a1~PI-a6の製造
合成例1で得られたLTIの質量に対するp-トルエンスルホニルイソシアネート(和光純薬工業株式会社製)の含有量が表1に示す値となるように混合して、イソシアネート組成物PI-a1~PI-a6(以下、単に「PI-a1」~「PI-a6」と称する場合がある)を得た。
得られたPI-a1~PI-a6の保存時の黄変性を、上記評価方法に従い、評価した。結果を以下の表1に示す。
【0099】
(2)塗料組成物C-a1~C-a6の製造
次いで、(1)で製造したPI-a1~PI-a6を23℃で1か月間静置した。
次いで、各イソシアネート組成物とアクリルポリオール(Nuplex Resin社の商品名「SETALUX1753」、樹脂分濃度70%、水酸基価138.6mgKOH/g)とを、イソシアネート基/水酸基の当量比1.1となるように配合した。次いで、酢酸ブチルで固形分60質量%になるように調整して、塗料組成物C-a1~C-a6を得た。
得られた塗料組成物C-a1~C-a6の粘度上昇率を、上記評価方法に従い、評価した。結果を以下の表1に示す。
【0100】
(3)塗膜T-a1~T-a6の製造
次いで、(2)で得られた各塗料組成物を、23℃/50%RHで3時間静置した。次いで、各塗料組成物を、ガラス板上に乾燥膜厚60μmになるように塗装した。次いで、23℃/50%RHで60分、120℃の熱風乾燥器で1時間処理して硬化させて、塗膜1~6を得た。
得られた塗膜T-a1~T-a6の乾燥性(ゲル分率)、外観(鮮鋭性)及び耐候性を、上記評価方法に従い、評価した。結果を以下の表1に示す。
【0101】
[比較例1~2]イソシアネート組成物PI-b1、塗料組成物C-b1~C-b2及び塗膜T-b1~T-b2の製造
(1)イソシアネート組成物PI-b1の製造
合成例1で得られたLTIの質量が表2に示す値となるように混合して、イソシアネート組成物PI-b1(以下、単に「PI-b1」と称する場合がある)を得た。
得られたPI-b1の保存時の黄変性を、上記評価方法に従い、評価した。結果を以下の表2に示す。
【0102】
(2)塗料組成物C-b1~C-b2の製造
次いで、(1)で製造したPI-b1を23℃で1か月間静置した。次いで、イソシアネート組成物PI-b1とアクリルポリオール(Nuplex Resin社の商品名「SETALUX1753」、樹脂分濃度70%、水酸基価138.6mgKOH/g)とを、イソシアネート基/水酸基の当量比1.1となるように配合した。さらに、塗料組成物C-b2については、p-トルエンスルホニルイソシアネートを0.17質量部配合した。次いで、酢酸ブチルで固形分60質量%になるように調整して、塗料組成物C-b1~C-b2を得た。
得られた塗料組成物C-b1~C-b2の粘度上昇率を、上記評価方法に従い、評価した。結果を以下の表2に示す。
【0103】
(3)塗膜T-b1~T-b2の製造
次いで、(2)で得られた各塗料組成物を用いて、実施例1~6の(3)と同様の方法を用いて、塗膜T-b1~T-b2を得た。
得られた塗膜T-b1~T-b2の乾燥性(ゲル分率)、外観(鮮鋭性)及び耐候性を、上記評価方法に従い、評価した。結果を以下の表2に示す。
【0104】
[実施例7~12]イソシアネート組成物PI-a7~PI-a12、塗料組成物C-a7~C-a12及び塗膜T-a7~T-a12の製造
(1)イソシアネート組成物PI-a7~PI-a12の製造
合成例2で得られたNTIの質量に対するp-トルエンスルホニルイソシアネート(和光純薬工業株式会社製)の含有量が表3に示す値となるように混合して、イソシアネート組成物PI-a7~PI-a12を得た。
得られたPI-a7~PI-a12の保存時の黄変性を、上記評価方法に従い、評価した。結果を以下の表3に示す。
【0105】
(2)塗料組成物C-a7~C-a12の製造
次いで、(1)で製造したPI-a7~PI-a12を用いた以外は、実施例1~6の(2)と同様の方法を用いて、塗料組成物C-a7~C-a12を得た。
得られた塗料組成物C-a7~C-a12の粘度上昇率を、上記評価方法に従い、評価した。結果を以下の表3に示す。
【0106】
(3)塗膜T-a7~T-a12の製造
次いで、(2)で得られた各塗料組成物を用いて、実施例1~6の(3)と同様の方法を用いて、塗膜T-a7~T-a12を得た。
得られた塗膜T-a7~T-a12の乾燥性(ゲル分率)、外観(鮮鋭性)及び耐候性を、上記評価方法に従い、評価した。結果を以下の表3に示す。
【0107】
[比較例3~4]イソシアネート組成物PI-b3、塗料組成物C-b3~C-b4及び塗膜T-b3~T-b4の製造
(1)イソシアネート組成物PI-b3の製造
合成例1で得られたLTIの質量が表4に示す値となるように混合して、イソシアネート組成物PI-b3(以下、単に「PI-b3」と称する場合がある)を得た。
得られたPI-b3の保存時の黄変性を、上記評価方法に従い、評価した。結果を以下の表4に示す。
【0108】
(2)塗料組成物C-b3~C-b4の製造
次いで、(1)で製造したPI-b3を23℃で1か月間静置した。次いで、イソシアネート組成物PI-b3とアクリルポリオール(Nuplex Resin社の商品名「SETALUX1753」、樹脂分濃度70%、水酸基価138.6mgKOH/g)とを、イソシアネート基/水酸基の当量比1.1となるように配合した。さらに、塗料組成物C-b4については、p-トルエンスルホニルイソシアネートを0.17質量部配合した。次いで、酢酸ブチルで固形分60質量%になるように調整して、塗料組成物C-b3~C-b4を得た。
得られた塗料組成物C-b3~C-b4の粘度上昇率を、上記評価方法に従い、評価した。結果を以下の表4に示す。
【0109】
(3)塗膜T-b3~T-b4の製造
次いで、(2)で得られた各塗料組成物を用いて、実施例1~6の(3)と同様の方法を用いて、塗膜T-b3~T-b4を得た。
得られた塗膜T-b3~T-b4の乾燥性(ゲル分率)、外観(鮮鋭性)及び耐候性を、上記評価方法に従い、評価した。結果を以下の表4に示す。
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
実施例1~12から、トリイソシアネートとしてLTI又はNTIとp-トルエンスルホニルイソシアネートとを含むイソシアネート組成物PI-a1~PI-a12を含む塗料組成物C-a1~C-a12は、粘度上昇率が2.0未満であり、粘度安定性が良好であった。
さらに、前記塗料組成物C-a1~C-a12を硬化して得られた塗膜T-a1~T-a12は、乾燥性及び耐溶剤性が良好であった。
また、イソシアネート組成物PI-a1~PI-a5及びPI-a7~PI-a11は、APHAが50未満であり、保存時における黄変度が特に少なかった。
さらに、前記イソシアネート組成物PI-a1~PI-a5及びPI-a7~PI-a12を含む塗料組成物C-a1~C-a5及びC-a7~C-a12を硬化して得られた塗膜T-a1~T-a5及びT-a7~T-a12は、外観についても特に良好であった。
さらに、前記イソシアネート組成物PI-a1~PI-a5及びPI-a7~PI-a11を含む塗料組成物C-a1~C-a5及びC-a7~C-a11を硬化して得られた塗膜T-a1~T-a5及びT-a7~T-a11は、耐候性についても特に良好であった。
【0115】
一方、比較例1~4から、トリイソシアネートのみからなるイソシアネート組成物PI-b1及びPI-b3は、APHAが50未満であり、保存時における黄変度が少なかった。
しかしながら、前記イソシアネート組成物PI-b1及びPI-b3を含む塗料組成物C-b1及びC-b3は、粘度上昇率が2.0以上であり、粘度安定性が劣った。
また、前記イソシアネート組成物PI-b1及びPI-b3を含み、p-トルエンスルホニルイソシアネートを後から添加した塗料組成物C-b2及びC-b4についても粘度上昇率が2.0以上であり、粘度安定性が劣った。
さらに、前記塗料組成物C-b1及びC-b2を硬化して得られた塗膜T-b1及びT-b2は、乾燥性及び耐候性は良好であったが、外観及び耐溶剤性が劣っていた。
さらに、前記塗料組成物C-b3及びC-b4を硬化して得られた塗膜T-b3及びT-b4は、乾燥性、耐溶剤性及び耐候性は良好であったが、外観が劣っていた。
【0116】
以上のことから、本実施形態のイソシアネート組成物によれば、粘度安定性が良好な塗料組成物が得られ、且つ、乾燥性及び耐溶剤性が良好な塗膜が得られることが確かめられた。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本実施形態のイソシアネート組成物は、塗料組成物の硬化剤として好適に用いられる。前記塗料組成物は、ロール塗装、カーテンフロー塗装、スプレー塗装、ベル塗装、静電塗装等の塗料として利用することができる。
また、前記塗料組成物は、鋼板、表面処理鋼板等の金属、及び、プラスチック、木材、フィルム、無機材料等の素材へのプライマーや上中塗り塗料として用いることができる。
また、前記塗料組成物は、防錆鋼板を含むプレコートメタル、自動車の塗装部等に耐熱性、美粧性(表面平滑性、鮮鋭性)等を付与する塗料としても有用である。
また、前記塗料組成物は、接着剤、粘着剤、エラストマー、フォーム、表面処理剤等のウレタン原料としても有用である。