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  • 特許-回転体用の釣り合わせ装置および方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】回転体用の釣り合わせ装置および方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 1/22 20060101AFI20241120BHJP
【FI】
G01M1/22
【請求項の数】 6
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019187366
(22)【出願日】2019-10-11
(65)【公開番号】P2021063677
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】513248050
【氏名又は名称】バランス システムズ エス.アール.エル.
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ジアンニ トリオンフェッティ
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-074495(JP,A)
【文献】特表2016-532102(JP,A)
【文献】特開平01-187429(JP,A)
【文献】特開2004-177326(JP,A)
【文献】特開2018-077216(JP,A)
【文献】米国特許第05421199(US,A)
【文献】米国特許第04267730(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 1/00~1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣り合わせ装置(1)であって、
-回転中に回転体(4)によって発生する振動応力を検出するように適合しており、3つの互いに垂直な捕捉方向に沿って前記振動応力の前記検出を可能にするような方法で構成される捕捉手段(2)と、
-前記捕捉手段(2)および処理手段(5)を接続するように適合する複数の通信チャネルを含む処理手段(5)とを備える釣り合わせ装置(1)において、
-各前記通信チャネルは、各前記捕捉方向の振動応力を伴い、スイッチおよびポテンショメータを備える
-前記処理手段(5)は、前記振動応力を選択する前記装置(1)の前記回転体(4)に対する位置に対して、前記スイッチによる特定のチャネルに関するシグナルを除外すること、または前記ポテンショメータによる信号を減衰させることによって、前記振動応力に関連した入力信号を重み付けすることを特徴とする釣り合わせ装置(1)。
【請求項2】
釣り合わせ軸(3a)を定め、前記釣り合わせ軸(3a)の周囲で前記回転体(4)の釣り合わせを可能にするように適合する釣り合わせ手段(3)を備え、前記3つの互いに垂直な捕捉方向は、前記釣り合わせ軸(3a)に垂直の捕捉平面を定める、請求項1に記載の装置(1)。
【請求項3】
前記捕捉手段(2)は、前記振動応力のすべての前記捕捉方向に沿って成分を検出するように構成したセンサ(20)を備える、請求項1~2のうち少なくとも一項に記載の装置(1)。
【請求項4】
前記捕捉手段(2)は、各前記捕捉方向用の単一センサ(20)を含む、請求項1~3のうち少なくとも一項に記載の装置(1)。
【請求項5】
釣り合わせ装置(1)を含む回転体(4)の釣合いをとるための方法であり:
-3つの互いに垂直な捕捉方向に沿った回転中に、前記回転体(4)によって発生する振動応力を検出するのに好適な捕捉手段(2)と、
-釣り合わせ軸(3a)を定め、前記釣り合わせ軸(3a)の周囲で前記回転体(4)の前記釣り合わせを可能にするのに好適な釣り合わせ手段(3)と、
-前記振動応力を補正するような方法で、前記釣り合わせ手段(3)を作動させるように構成した前記捕捉手段(2)および前記釣り合わせ手段(3)に動作可能に接続し、複数の通信チャネルを備え、それぞれ、各前記捕捉方向の振動応力に関連し、前記捕捉手段(2)を処理手段(5)に接続するように適合され、スイッチおよびポテンショメータを含んだ、処理手段(5)とを備える方法であって、
前記方法は、それが、
-前記捕捉手段(3)が前記捕捉方向に沿って前記振動応力を検出し、選択ステップにおいて、前記処理手段(5)によって前記振動応力を除外するか、含めるか、または適合することが可能である捕捉ステップと、
-前記処理手段(5)は、前記振動応力を選択する前記装置(1)の前記回転体(4)に対する位置に対して、前記スイッチによる特定のチャネルに関するシグナルを除外すること、または前記ポテンショメータによる信号を減衰させることによって、前記振動応力に関連する入力信号を重み付けする選択ステップとを備えることを特徴とする方法。
【請求項6】
計算ステップを備え、そこにおいて、各前記振動応力は、得られた振動応力を定めるような方法で、ベクトル的に加算される、請求項5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に明記されている形態の釣り合わせ装置および方法に関する。
【0002】
特に、本発明は、特定の振動検出システムを含み、回転体の最適な釣り合わせを可能にする装置に関する。
【背景技術】
【0003】
広く知られているように、回転体用の釣り合わせ装置は、回転体の不釣合いを修正するためにそれを測定するセンサを一般に使用している。これらのセンサは、通常、振動を測定するのに適している加速度計である。
【0004】
回転体が受けるいかなる振動も検出するために使用されるセンサは、通常回転体の外面に配置されており、回転体に対する半径方向に沿った振動を評価するのに適合している。そのように、振動センサは、優先方向における本体の回転軸に実質的に垂直に働く。
【0005】
一旦、振動が回転中に検出されると、回転体が受ける不釣合いの程度を、半径方向にて評価することができる。一旦、不釣合いが確定されると、予め設定された許容限界の中で本体に付随する振動を相殺するか、または、とにかく減少させるように、回転体内部に内在する釣り合わせ質量を、不釣合いに反した動作を行うような方法で、制御することができる。
【0006】
記載されている従来技術は、いくつかの重大な欠点を有する。
【0007】
工作機械、特に研削機用の、特にギア用のいくつかの用途においては、上記の公知技術は、回転体の変動位置に起因して最適になり得ない。
【0008】
したがって、公知技術の重大な欠点は、いくつかの非常に特殊な場合は別として、どんな場合でも、回転体の極めて高くほぼ完全な釣り合わせ効率が達成できないことである。
【0009】
さらに、変動位置を伴う本体を回転させる方式の機械では、切削方向は、機械加工される加工物、例えば歯車の歯型の形状に依存し得て、したがって、単一軸センサの使用の最適化は、特定の位置に対してのみ行うことができる。
【0010】
機械を異なる位置に適合させるために、最適化を、各本体または位置形態に対して繰り返されなければならず、センサが物理的に位置を移動することを必要とする。しかしながら、これは、この形態の自動機械にとって実行不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2014-074495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
この文脈において、本発明の基礎をなしている技術的課題は、回転体用の釣り合わせ装置を発明することであり、上述の欠点のうち少なくともいくつかを実質的に取り除くことが可能である。
【0013】
上記の技術的目的の範囲内において、本発明の1つの重要な目的は、回転体の極めて正確な釣り合わせを可能にする釣り合わせ装置を提供することである。
【0014】
本発明の別の重要な目的は、非常に短い時間で、回転体が受ける振動に起因した不均衡の効率的な釣り合わせを可能にする釣り合わせ装置を提供することである。
【0015】
結論として、本発明の重要な目的は、物理的な再位置決めを必要とせずに、機械加工されている本体に応じて異なる位置形態にそれ自体を適合させることが可能な装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
技術的な目的および特定の目的を、添付の請求項1に記載の釣り合わせ装置および方法によって達成する。
【0017】
好ましい実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0018】
本発明の特徴および利点は、添付の図面を参照して、本発明のいくつかの好ましい実施形態から以下の詳細な説明で明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明による釣り合わせ装置の機能図を示す。
図2】本発明による釣り合わせ装置からなる処理手段の略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書において、手段、値、形状、および幾何学的基準(例えば直角度および平行度)は、「約(about)」、または「おおよそ(approximately)」もしくは「実質的に(substantially)」といった他の類似した用語と併用するとき、測定誤差または生成および/または製造誤差による誤りを除くように、とりわけ、本明細書と関連する数値、手段、形状、または幾何学的基準とのわずかな相異を除き理解されるべきである。例えば、これらの用語は、数値と関連している場合、上記値の10%以下の相違を示すことが好ましい。
【0021】
さらに、「第1(first)」、「第2(second)」、「より高い(higher)」、「より低い(lower)」、「主な(main)」および「第2の(secondary)」といった用語が使用されるときは、必ずしも順序、優先順位関係、または相対位置を特定するわけではないが、互いに異なる構成要素をより明確に区別するために単に使用される。
【0022】
本原文に含まれる測定値およびデータは、特に指示がない限り、ICAO国際標準大気(ISO 2533:1975)において実施されるように考慮されるべきである。
【0023】
図を参照すると、本発明による釣り合わせ装置が、数字1によって全体として示される。
【0024】
装置1は、好ましくは回転体4に作用する加工機に付随するように適合している。
【0025】
回転体4は、例えば砥石車のような機械加工工具を運ぶスピンドルなど、いかなる形態のものも可能であり、1つもしくは複数のギアまたは標準的に機械加工された他の加工物を備える回転シャフトと相互作用するように適合することができる。したがって、加工機は、例えば除去加工用の回転体4を使用するように適合する研削機または別のタイプの機械であることができる。
【0026】
装置1は、好ましくは捕捉手段2をさらに備える。
【0027】
捕捉手段2は、回転中の回転体4によって発生する振動応力を検出するように適合している。したがって、これらの振動応力は、いかなる方向にも延在することができる。例えば、それらは回転体4に対して半径方向に延在することができ、または、回転体4自体と実質的に平行する成分を発現することができる。
【0028】
好ましくは、捕捉手段2は、少なくとも2つの互いに交差しない捕捉方向に沿って振動応力の検出を可能にするような方法で構成される。
【0029】
より詳細には、捕捉手段2は、順序付いた三つ組を定める3つの互いに垂直な捕捉方向に沿って振動応力の検出を可能にするような方法で構成される。
【0030】
異なる方向で応力を検出するために、捕捉手段2は、1つまたは複数のセンサ20を含み得る。
【0031】
センサ20は、少なくとも1つの捕捉方向で振動応力を検出するように適合したセンサである。それは好ましくは加速度計である。
【0032】
したがって、装置1は、各捕捉方向用の複数のセンサ20を含み、特に振動応力の単一成分専用のセンサ20を実質的に有することができる。
【0033】
さもなければ、装置1は、応力の全捕捉方向に沿って成分を検出するように構成されるセンサ20を含むことができる。
【0034】
詳細には、センサ20は、好ましくは多軸加速度計、より好ましくは2軸加速度計、最も好ましくは3軸加速度計である。このようなセンサの例には、PCB社製IMI加速度計-モデル354C03が挙げられる。
【0035】
適切にいえば、センサ20は、回転体4に配置されて、回転体4自体の全振動を記録するような方法で、それとともに一体的に動く。装置1は、釣り合わせ手段3をさらに含む。
【0036】
釣り合わせ手段3は、現行技術において公知のバランシングヘッドであり、様々な形態の技術を含むことができる。
【0037】
例えば、バランシングヘッドは、出願人の特許文献1に記載されている形態のものであり得る。
【0038】
一般に、バランシングヘッドは、力の不均衡を補正する可動質量を用いて、回転体4が受けるいかなる振動応力も補正するように適合した機器である。
【0039】
その場合、釣り合わせ手段3は、回転体4の回転シャフト内側、または、回転シャフトに配置され、あるいはその外側に配置される。
【0040】
好ましくは、釣り合わせ手段3は、釣り合わせ軸3aを定める。
【0041】
釣り合わせ軸3aは、回転体4の回転軸に実質的に相当し、その周囲で釣り合わせ質量が移動する軸である。
【0042】
したがって、好ましくは、釣り合わせ手段3は、釣り合わせ軸3a周囲で回転体4の釣り合いをとるように適合する。
【0043】
したがって、捕捉手段2の少なくとも2つの捕捉方向は、釣り合わせ軸3aに垂直な捕捉平面を定めることが好ましい。
【0044】
捕捉手段2が順序付いた三つ組を定める場合、捕捉方向は、釣り合わせ軸3aと適切に相応し得る。
【0045】
装置1は、処理手段5を更に含む。
【0046】
処理手段5は、捕捉手段2および釣り合わせ手段3に動作的に接続している。特に、それらは、振動応力を補正するような方法で、釣り合わせ手段3を作動するように構成されている。
【0047】
処理手段5は、現行技術においても実質的に公知であり、コンピュータ、CNC、および他の一般的な技術を含み得る。
【0048】
詳細には、処理手段5は、好ましくは複数の通信チャネルを含む。
【0049】
通信チャネルは、捕捉手段および釣り合わせ手段3を接続している電子的接続部からなる。特に、それらは、センサ20を処理手段5に接続する。
【0050】
さらに、各通信チャネルは、好ましくは単一の捕捉方向と関連付けられる。このようにして、振動応力に関連した信号は、個別のチャネルに分けられた処理手段5に到達する。しかしながら、付加的な電子装置は、処理手段5の外で成分の混成を確実にするために提供され、1つまたは複数の得られる信号のみを処理手段5にもたらすことが可能になり得る。
【0051】
好ましくは、通信チャネルは、少なくとも1つのスイッチおよび1つのポテンショメータを各々備える。これらのスイッチおよびポテンショメータは、アナログまたはデジタルのいずれも可能である。処理手段5は、特定のチャネルに関するシグナルを実質的に除外することができるか、またはポテンショメータによる信号を減衰させることができる。
【0052】
したがって、処理手段5は、装置1の位置に対する振動応力に関して入力信号を重み付けすることが可能である。
【0053】
特に、処理手段5は、関連する振動応力を実質的に選択することができる。
【0054】
好ましくは、処理手段5は、釣り合わせ軸3aに垂直に作用する振動応力を選択する。それらは、必要であれば、このような応力のみを選択し得る。
【0055】
いずれにせよ、処理手段5は、各々の振動応力、または―より正確には―捕捉方向における全体の振動応力に付随する成分の各々の振動応力を除外するか、含めるか、または適合することを可能にする。
【0056】
本発明は、回転体4の釣り合いをとるための新たな方法を含む。
【0057】
特に、本方法は、装置1ならびに少なくとも1つの捕捉ステップおよび1つの選択ステップを含む。
【0058】
捕捉ステップにおいて、捕捉手段3は、振動応力が1つ、2つ、3つ、またはそれ以上あるかどうかにかかわらず、捕捉方向に沿って振動応力を検出する。
【0059】
選択ステップにおいて、処理手段5は、好適な方向、例えば、釣り合わせ軸3aに垂直に作用する振動応力を選択する。このようにして、関連する実際の成分は、釣り合わせ手段3が相対的に作動することが可能な方法で、回転体4に対して定められることができる。
【0060】
さらに、選択ステップの間、処理手段5は、各振動応力を除外し得るか、含み得るか、または適合し得る。したがって、捕捉方向に沿った様々な成分を、装置1の位置に応じて、オペレータによる手動によって、または、処理手段5による自動のいずれかによって、重み付けすることができる。
【0061】
あるいは、または、さらに、本方法は、得られる振動応力がベクトル和で測定される計算ステップを含むこともできる。
【0062】
本発明による釣り合わせ装置1は、重要な利点を達成する。
【0063】
実際に、装置1は、機械の位置にしたがって手動でセンサ20の位置決めする必要なく、加工機のあらゆる動作位置に事実上追従することができる。
【0064】
したがって、必然的な利点は、それが機械加工の間に、非常に短い釣合い時間によって、非常に効率的な釣り合わせを可能にするということである。
【0065】
装置1は、区間平面外のいかなる振動も、平面における成分、すなわち、関連性があり、バランシングヘッド内部の釣り合わせ質量が作用することができるそれらの成分のみを考慮すると、正しく評価され、釣り合いが保たれることができるといった事実により、非常に正確な釣り合わせを得ることを可能にする。
【0066】
本発明は、特許請求の範囲に記載の発明の概念の範囲内である変形形態を許容する。
【0067】
本文脈において、全詳細は等価な要素によって入れ替え可能であり、材料、形状、および寸法はいかなる材料、形状、および寸法でもあり得る。
図1
図2