(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】車両の走行制御装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20241120BHJP
B60W 40/02 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
G08G1/16 D
B60W40/02
(21)【出願番号】P 2020072241
(22)【出願日】2020-04-14
【審査請求日】2023-03-10
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】溝口 雅人
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-223941(JP,A)
【文献】特表2016-533289(JP,A)
【文献】国際公開第2019/021421(WO,A1)
【文献】特開2018-160173(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
G01C 21/00 - 21/36
B60W 10/00 - 10/30
B60W 30/00 - 60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行環境情報を収集する走行情報収集装置と、
前記走行情報収集装置により収集された前記走行環境情報に基づいて、前記車両の走行制御を行う走行制御ユニットと、
を有し、
前記走行情報収集装置は、少なくとも自車両の走行情報と、他車両の外観情報を含む前記自車両の周囲環境情報と、前記自車両の走行車線を認識する自車走行車線情報と、を収集し、
前記走行情報収集装置によって収集された各情報に基づいて、非優先車線を走行中の前記自車両
が前記非優先車線から前記非優先車線と平行する平行区間を備えた優先車線へ、前記非優先車線と前記優先車線との境界線を示す第1車線境界線を横切り、前記非優先車線における前記自車両の走行路である第1目標進行路と、前記優先車線における前記自車両の走行路である第2目標進行路とを通って合流するときに、
前記走行制御ユニットは、
前記非優先車線の終端までの残り距離が所定距離以下である場合、前記非優先車線の終端地点において、前記非優先車線の合流方向反対側の境界線を示す第2車線境界線が徐々に前記優先車線側に近づくとき、前記自車両を前記第2車線境界線に沿う曲線を、前記非優先車線の中央寄りに平行移動させた前記第1目標進行路と、前記第1目標進行路の延長線と前記優先車線の幅方向の中央を通る直線との双方に内接する円弧に沿う線に基づいて設定される前記第2目標進行路とを通る第1車線変更制御を実行し、
前記非優先車線の終端までの残り距離が前記所定距離より大きい場合、前記自車両が前記非優先車線の前記終端地点に到達する前に前記優先車線に合流する第2車線変更制御を実行することを特徴とする車両の走行制御装置。
【請求項2】
前記走行制御ユニットは
、前記非優先車線の終端までの残り距離が前記所定距離以下である場合に、前記第1目標進行路を通るとき前記車両の側面が前
記第2車線境界線に平行となるように制御することを特徴とする請求項1に記載の車両の走行制御装置。
【請求項3】
前記走行制御ユニットは、前記走行情報収集装置によって収集された情報に基づいて、前記自車両の進行方向において、設定され
た前記第2目標進行路を通過する予想時刻を特定し、
前記予想時刻に干渉する前記他車両があると判断した場合、前記自車両を前
記第2目標進行路を通過する予想時刻に到達する前に減速制御することを特徴とする請求項1に記載の車両の走行制御装置。
【請求項4】
前記走行制御ユニットは、前記非優先車線の終端までの残り距離に応じて、前記自車両の周囲状況や前記自車両の走行状態の確認項目を変更することを特徴とする請求項1に記載の車両の走行制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の走行制御装置、特に車線合流部における車線変更時の走行制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等の車両においては、車両に搭載した車載カメラユニットやレーダー装置等のセンサ装置を用いて自車両の周囲状況に関する情報(例えば、周囲を走行する他の車両や自転車、歩行者、障害物等を含む車両の周囲環境に関する情報等)を取得し、これにより取得された情報データや、高精度道路地図データベース等から得られる道路地図情報等に基づいて、車両の走行を制御する走行制御装置が、種々提案されている。
【0003】
そして、この種の車両の走行制御装置においては、例えば車線変更時の走行制御等に関する提案として、例えば特開2019-51837号公報等による種々の提案がなされている。
【0004】
一般的な形態の道路においては、支線(いわゆる合流車線)を走行する車両が本線へと合流する際に、安全かつ円滑な合流を行い得るだけの合流車線の長さ(本線と並行する部分を含めた距離)が設定されている。ここで、安全かつ円滑な合流を行い得るだけの合流車線の長さとは、例えば、合流車線側の車両が充分な加速を行い得ると同時に、本線側を走行する他車両を考慮した適切な合流タイミングを決定するための充分な判断時間を確保することを考慮した充分な距離を指す。
【0005】
このように、合流車線の長さが充分に長く設定されている場合は、その合流車線は、本線と並行する部分が長く設定されていることになる。したがって、この場合には、上記特開2019-51837号公報等に開示されている一般的な道路における車線変更時の走行制御と同様の走行制御を適用することができる。
【0006】
しかしながら、道路の周囲環境等、種々の要因によって合流車線の長さを充分に確保することができない場合があることから、実際の道路状況における合流車線の長さは、必ずしも充分な距離設定がなされていない状況が少なからず存在する。
【0007】
また、道路設計上では、充分に長い合流車線が設定されている場合であっても、合流車線を走行中に適切な合流タイミングを逸してしまったり、合流車線上等に障害物(例えば工事用車両等の他の車両や工事用ポール等のほか道路破損箇所あるいは落下物など)が存在する状況が現出する場合も考えられる。このような場合には、利用できる合流車線の距離が短くなってしまうことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、上記特開2019-51837号公報等によって開示されている従来の車両の走行制御装置においては、合流車線の長さや形状、若しくは道路状況等については考慮されておらず、例えば、合流車線が短い場合等の条件下では、車線合流部における車線変更時の走行制御を、安全かつ円滑に行うことができない可能性があるという問題点がある。
【0010】
本発明は、上述した点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、車線合流部における車線変更時の走行制御を、常に安全かつ円滑に、そして違和感なく実行することができる車両の走行制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の一態様の車両の走行制御装置は、車両の走行環境情報を収集する走行情報収集装置と、前記走行情報収集装置により収集された前記走行環境情報に基づいて、前記車両の走行制御を行う走行制御ユニットと、を有し、前記走行情報収集装置は、少なくとも自車両の走行情報と、他車両の外観情報を含む前記自車両の周囲環境情報と、前記自車両の走行車線を認識する自車走行車線情報と、を収集し、前記走行情報収集装置によって収集された各情報に基づいて、非優先車線を走行中の前記自車両が前記非優先車線から前記非優先車線と平行する平行区間を備えた優先車線へ、前記非優先車線と前記優先車線との境界線を示す第1車線境界線を横切り、前記非優先車線における前記自車両の走行路である第1目標進行路と、前記優先車線における前記自車両の走行路である第2目標進行路とを通って合流するときに、前記走行制御ユニットは、前記非優先車線の終端までの残り距離が所定距離以下である場合、前記非優先車線の終端地点において、前記非優先車線の合流方向反対側の境界線を示す第2車線境界線が徐々に前記優先車線側に近づくとき、前記自車両を前記第2車線境界線に沿う曲線を、前記非優先車線の中央寄りに平行移動させた前記第1目標進行路と、前記第1目標進行路の延長線と前記優先車線の幅方向の中央を通る直線との双方に内接する円弧に沿う線に基づいて設定される前記第2目標進行路とを通る第1車線変更制御を実行し、前記非優先車線の終端までの残り距離が前記所定距離より大きい場合、前記自車両が前記非優先車線の前記終端地点に到達する前に前記優先車線に合流する第2車線変更制御を実行する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、車線合流部における車線変更時の走行制御を、常に安全かつ円滑に、そして違和感なく実行することができる車両の走行制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態の走行制御装置の概略構成を示すブロック構成図、
【
図2】本発明の一実施形態の走行制御装置を搭載し合流車線を走行する車両が車線変更により本線へと合流する際の状況の一例を示す概念図(合流車線が長い場合)
【
図3】本発明の一実施形態の走行制御装置を搭載し合流車線を走行する車両が車線変更により本線へと合流する際の状況の他の一例を示す概念図(合流車線が長い場合の終端地点)
【
図4】本発明の一実施形態の走行制御装置を搭載し合流車線を走行する車両が車線変更により本線へと合流する際の状況の一例を示す概念図(合流車線が短い場合)
【
図5】本発明の一実施形態の走行制御装置における車線変更制御処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図示の実施の形態によって本発明を説明する。以下の説明に用いる各図面は模式的に示すものであり、各構成要素を図面上で認識できる程度の大きさで示すために、各部材の寸法関係や縮尺等を構成要素毎に異ならせて示している場合がある。したがって、本発明は、各図面に記載された各構成要素の数量や各構成要素の形状や各構成要素の大きさの比率や各構成要素の相対的な位置関係等に関して、図示の形態のみに限定されるものではない。
【0015】
本発明の一実施形態の車両の走行制御装置は、自動車等の車両の走行を制御して、運転者の運転操作を支援するために車両に搭載される装置である。つまり、本実施形態の走行制御装置は、例えば、車載カメラユニットやレーダー装置等のセンサ装置を用いて自車両の周囲状況に関する情報(例えば、周囲を走行する他車両(外観情報を含む各種情報等)や自転車、歩行者、障害物等を含む車両の周囲環境に関する情報等;周囲環境情報)を取得し、これにより取得された情報データや、高精度道路地図データベース等から得られる道路地図情報等に基づいて、先行車両や各種障害物等のほか道路状況等を認識し、それらの認識情報を、運転者の運転操作を支援するための走行制御を実行する際の情報として利用する。そして、本実施形態の走行制御装置においては、車線合流部における車線変更時の走行制御について特徴を持たせている。
【0016】
まず、本発明の一実施形態の走行制御装置の概略構成について、
図1のブロック構成図を用いて、以下に説明する。
【0017】
なお、本実施形態の走行制御装置1の構成は、従来の形態の走行制御装置と基本的には、略同様である。したがって、本実施形態の走行制御装置1の構成を説明するのに際しては、当該装置の主要構成のみについて簡単に説明し、細部の構成については従来の走行制御装置と同様であるものとして、その説明は省略する。また、
図1においても、本実施形態の走行制御装置の主要構成のみを図示するに留め、その他の細部構成については図示を省略している。
【0018】
本実施形態の走行制御装置1は、自動運転を行うための走行制御を行う走行制御装置であって、自車両に搭載されている。この走行制御装置1は、自車位置を検出するロケータユニット11と、自車両の進行方向(前方)の走行環境を認識し情報として取得し収集する走行環境取得部であり走行情報収集装置の一部としてのカメラユニット21と、カメラユニット21を含む走行情報収集装置により収集された走行環境に関する情報(走行環境情報という)に基づいて自車両の走行制御を行う走行制御ユニット26等を備えている。
【0019】
ロケータユニット11は、道路地図上の自車両の位置(自車位置)を推定すると共に、この自車位置の前方の道路地図情報を取得する走行情報収集装置である。
【0020】
一方、カメラユニット21は、自車両の走行車線の左右を区画する区画線(車線境界線)の中央の道路曲率を求めると共に、この左右区画線の中央を基準とする自車両の車幅方向の横位置偏差を検出する。
【0021】
また、カメラユニット21は、自車両の前方の先行車両や、直前を横切ろうとする歩行者、自転車、自動二輪車などの移動体(以下、単に動体等という)を含む立体物、信号現示(点灯色,点滅状態,矢印方向など)、道路標識、停止線、車線境界線等の道路標示等のほか、道路周辺状況(道路に隣接する建造物,塀,防音壁,ガードレールなど)を認識する。
【0022】
ロケータユニット11は、地図ロケータ演算部12と、記憶部としての高精度道路地図データベース16とを有している。
【0023】
地図ロケータ演算部12と、後述する前方走行環境認識部21dと、走行制御ユニット26とは、例えば、CPU(Central Processing Unit),RAM(Random Access Memory),ROM(Read Only Memory)や不揮発性記憶部等を備える周知のマイクロコンピュータ及びその周辺機器で構成されており、ROMにはCPUで実行するプログラムやデータテーブル等の固定データ等が予め記憶されている。
【0024】
地図ロケータ演算部12の入力側に、自車位置取得部としてのGNSS(Global Navigation Satellite System;全球測位衛星システム)受信機13、運転状態取得部としての自律走行センサ14及びルート情報入力装置15が接続されている。
【0025】
GNSS受信機13は複数の測位衛星から発信される測位信号を受信する。又、自律走行センサ14は、トンネル内走行等GNSS衛生からの受信感度が低く測位信号を有効に受信することのできない環境において、自律走行を可能にするもので、車速センサ、ヨーレートセンサ及び前後加速度センサ等で構成されている。
【0026】
すなわち、地図ロケータ演算部12は、車速センサで検出した車速、ヨーレートセンサで検出したヨーレート(ヨー角速度)及び前後加速度センサで検出した前後加速度等に基づき移動距離と方位からローカライゼーションを行う。
【0027】
ルート情報入力装置15は、例えば運転者又は搭乗者が操作する端末装置である。このルート情報入力装置15は、目的地や経由地(高速道路のサービスエリア等)の設定等、地図ロケータ演算部12において走行ルートを設定する際に必要とする一連の情報を集約して入力することができる。
【0028】
ルート情報入力装置15は、具体的には、カーナビゲーションシステムの入力部(例えば、モニタのタッチパネル)、スマートフォン等の携帯端末、パーソナルコンピュータ等であり、地図ロケータ演算部12に対して、有線或いは無線で接続されている。
【0029】
運転者又は搭乗者がルート情報入力装置15を操作して、目的地や経由地の情報(施設名、住所、電話番号等)の入力を行うと、この入力情報が地図ロケータ演算部12で読込まれる。
【0030】
地図ロケータ演算部12は、目的地や経由地が入力された場合、その位置座標(緯度、経度)を設定する。地図ロケータ演算部12は、自車位置を推定する自車位置推定部としての自車位置推定演算部12aと、自車位置から目的地(及び経由地)までの走行ルートを設定する走行ルート設定演算部12bとを備えている。
【0031】
さらに、地図ロケータ演算部12は、自車位置推定演算部12aにより推定された自車位置を道路地図上にマップマッチングして自車両の現在地を特定し、その周辺の環境情報を含む道路地図情報を取得したり、自車両の目標とする進行路(目標進行路)を設定する機能をも備えている。
【0032】
また、高精度道路地図データベース16はHDD(Hard Disk Drive),SSD(Solid State Drive)等の大容量記憶媒体であり、周知の高精度な道路地図情報(ローカルダイナミックマップ)が記憶されている。この高精度道路地図情報は、基盤とする最下層の静的情報階層上に、自動走行をサポートするために必要な付加的地図情報が重畳された階層構造をなしている。ここで、付加的地図情報としては、道路の種別(一般道路、高速道路等)、道路形状、左右区画線(車線境界線)、高速道路やバイパス道路等の出口、ジャンクションやサービスエリアに繋がる分岐車線や合流車線の出入口長さ(開始位置と終了位置)等の静的な位置情報のほか、渋滞情報や事故或いは工事による通行規制等の動的な位置情報が含まれている。
【0033】
自車位置推定演算部12aは、GNSS受信機13で受信した測位信号に基づき自車両の現在の位置座標(緯度、経度)を取得し、この位置座標を地図情報上にマップマッチングして、道路地図上の自車位置(現在位置)を推定する。また、自車走行車線を特定し、地図情報に記憶されている走行車線や合流車線などの道路形状を取得し、逐次記憶させる。
【0034】
さらに、自車位置推定演算部12aは、トンネル内走行等のようにGNSS受信機13の感度低下により測位衛星からの有効な測位信号を受信することができない環境では、自律航法に切換え、自律走行センサ14によりローカライゼーションを行う。
【0035】
走行ルート設定演算部12bは、自車位置推定演算部12aで推定した自車位置の位置情報(緯度、経度)と、入力された目的地(及び経由地)の位置情報(緯度、経度)とに基づき、高精度道路地図データベース16に格納されているローカルダイナミックマップを参照する。そして、走行ルート設定演算部12bは、ローカルダイナミックマップ上で、自車位置と目的地(経由地が設定されている場合は、経由地を経由した目的地)とを結ぶ走行ルートを、予め設定されているルート条件(推奨ルート、最速ルート等)に従って構築する。
【0036】
一方、カメラユニット21は、自車両の車室内前部の上部中央に固定されており、車幅方向中央を挟んで左右対称な位置に配設されているメインカメラ21a及びサブカメラ21bからなる車載カメラ(ステレオカメラ)と、画像処理ユニット(IPU;Image Processing Unit)21c及び前方走行環境認識部21dとを有している。このカメラユニット21は、メインカメラ21aで基準画像データを撮像し、サブカメラ21bで比較画像データを撮像する。
【0037】
二つのカメラ21a,21bによって取得された2つの画像データは、IPU21cにて所定の画像処理が施される。前方走行環境認識部21dは、IPU21cで画像処理された基準画像データと比較画像データとを読込んで、両画像間の視差に基づいて両画像中の同一対象物を認識すると共に、その距離データ(自車両から対象物までの距離)を、三角測量の原理を利用して算出して、前方走行環境情報を認識する。この前方走行環境情報には、自車両が走行する進行路(合流車線や走行車線など)の道路形状(左右を区画する区画線であり車線を示す車線境界線、区画線間中央の道路曲率[1/m]及び左右区画線間の幅(車線幅))、高速道路やバイパス道路等の出入口、ジャンクションに繋がる合流車線や分岐車線側の区画線間の車線幅、交差点、横断歩道、信号機、道路標識、及び路側障害物(電柱、電信柱、駐車車両等)が含まれている。
【0038】
なお、本実施形態の走行制御装置1においては、進行路情報を検出する検出手段としての自律センサとして、カメラユニット21のほかにも、例えばレーダー装置を備えていてもよい。このレーダー装置は、具体的には、ミリ波レーダー、レーザーレーダー、ライダー(LIDER:Light Detection and Ranging)などのセンシングデバイスの種々のレーダーによる検出手段としての自律センサを有するものである。
【0039】
また、走行制御ユニット26は、入力側にカメラユニット21の前方走行環境認識部21dが接続されていると共に、地図ロケータ演算部12と、車内通信回線(例えばCAN:Controller Area Network;不図示)等を通じて双方向通信自在に接続されている。なお、レーダー装置を備えている場合は、レーダー装置もまた、走行制御ユニット26に接続される。
【0040】
走行制御ユニット26の出力側には、自車両を走行ルートに沿って走行させる操舵制御部31と、強制的なブレーキにより自車両を減速させるブレーキ制御部32と、自車両の車速を制御する加減速制御部33と、モニタやスピーカ等の報知装置34等が接続されている。
【0041】
走行制御ユニット26は、走行ルート設定演算部12bで設定した走行ルートに、自動運転制御が許可された自動運転区間が設定されている場合、当該自動運転区間に自動運転を行うための目標進行路を設定する。そして、自動運転区間においては、操舵制御部31、ブレーキ制御部32、加減速制御部33を所定に制御して、GNSS受信機13で受信した自車位置を示す測位信号に基づき、自車両を目標進行路に沿って自動走行させる。
【0042】
その際、走行制御ユニット26は、前方走行環境認識部21dで認識した前方走行環境情報に基づき、周知の追従車間距離制御(ACC(Adaptive Cruise Control)制御)及び車線維持(ALK;Active Lane Keep)制御等により、先行車が検出された場合は先行車に追従し、先行車が検出されない場合は制限速度内のセット車速で自車両を走行させる。
【0043】
さらに、走行制御ユニット26は、前方走行環境認識部21dで認識した前方走行環境情報などに基づいて、自車両の直前を横切ろうとする動体等を検出した場合のほか、一時停止を指示する規定の道路標識や一時停止線等の道路標示等を認識した場合には、適宜、認識した情報に応じてブレーキ制御部32を作動させて自車両を規定の位置に停車させる制御を行う。
【0044】
報知装置34は、走行制御ユニット26が前方走行環境認識部21dで認識した前方走行環境情報などに基づいて、認識された状況に応じた警報(例えば警報音,計器パネルへの警報表示等)を、運転者に対して通知する通知部であり通知装置である。
【0045】
また、報知装置34は、場合によっては、運転者に対して行うべき操作を示唆するための表示(例えばブレーキペダルを踏む、ステアリングの修正操作を行うなど)を、聴覚的に若しくは視覚的に運転者に知覚させる手段による各種の表示を行うようにしてもよい。
【0046】
上述のように、走行制御ユニット26は、前方走行環境認識部21dやGNSS受信機13からの出力情報に基づいて、操舵制御部31、ブレーキ制御部32、加減速制御部33、報知装置34等を制御するための各種の判断を行う判断部として機能する。本実施形態の走行制御装置1の概略構成は、以上である。
【0047】
このように構成された本実施形態の走行制御装置1の作用を以下に説明する。
本実施形態においては、走行制御装置1による車両の走行制御のうち、特に車線合流部における車線変更走行制御に関し、具体的には、非優先車線である支線(いわゆる合流車線;以下、合流車線という)を走行する車両が、優先車線である本線へと合流する際の走行制御に関して説明する。
【0048】
自動運転を行うために適宜設定されている目標進行路において、例えば合流車線を走行する車両が本線へと合流するために車線変更を行なう場合、まず、車線変更を実行する際の目標車速や、車線変更を行うタイミング等を設定する。この場合、目標車速や車線変更タイミングは合流車線において本線と並行する部分の距離によって相違する。
【0049】
図2~
図4は、合流車線を走行する車両が車線変更により本線へと合流する際の状況を示す概念図である。このうち、
図2,
図3は、合流車線における本線との並行部分が充分に長く設定されている場合の例を示している。さらに、このうち
図2は、通常の車線変更制御がなされる際の車両の走行路の一例を示している。また、
図3は、周囲状況等の影響により合流車線の並行部分の残り距離が少なくなった状況で、車線変更制御を行う際の車両の走行路の一例を示している。そして、
図4は、合流車線における本線との並行部分の設定距離が短い場合の一例を示している。
【0050】
図2~
図4に示す例は、合流車線R3,R3aが、片側二車線(第1走行車線R1、第2走行車線R2)からなる本線の第1走行車線R1に並行して接続されている設定の道路の状況を示している。ここで、
図2,
図3の合流車線R3は、本線との並行部分の距離が長い設定の場合である。また、
図4の合流車線R3aは、本線との並行部分の距離が短い設定の場合である。
【0051】
なお、
図2,
図3に示す符号D及び
図4に示す符号Daは合流車線R3,R3aの並行部分の長さ(距離)を指している。また、
図3において示す符号Dxは合流車線R3を走行中の車両M2から見て前方の合流車線R3における並行部分の残りの距離(車両M2から合流車線R3の終端までの距離)を指している。そして、
図2~
図4において示す符号L1,L1aは各車線の境界線(即ち車線境界線)を示している。なお、符号L1aで示される車線境界線は、特に、合流車線R3の終端地点の車線境界線を指すものとする。詳述すると、合流車線R3の終端地点の車線境界線L1aとは、路肩側(走行車両の両側面のうち車両幅方向において本線に対する面とは反対側の面に対向する側)の車線境界線を指している。この車線境界線L1aは、他の車線境界線L1に対して斜行形状となっている。
【0052】
また、同
図2~
図4において示す符号L2は合流車線R3の車線境界線L1の外側(走行車両の両側面のうち車両幅方向において本線に対する面とは反対側の面に対向する側の道路外の領域)に設けられている構造物(例えば防音壁,ガードレールなど)の境界線を指すものとする。さらに、
図2に示す符号M1,M1aと、
図3に示す符号M2,M2aと、
図4に示す符号M3,M3aとは、いずれも自車両を指しており、各所定の時点における車両の位置を示している(詳細は後述する)。さらにまた、
図2に示す符号Mcは、本線を走行している他車両を示している。そして、
図2に示す符号G1と、
図3に示す符号G2と、
図4に示す符号G3とは、各対応する状況における目標進行路を指している。
【0053】
まず、
図2,
図3に示す合流車線R3は、当該合流車線R3の並行部分を走行中の車両が、本線へと合流するための車線変更を、余裕をもって行い得るだけの充分な距離の並行部分が設定されている場合の例示である。
【0054】
このような設定の合流車線R3の並行部分の距離Dは、例えば200m程度以上を想定している。したがって、本実施形態においては、この距離数値=200mを第1閾値Dth1(後述;
図5参照)として規定する。
【0055】
一般に、合流車線を走行する車両が本線へと合流するために車線変更を行う場合、合流車線において充分な加速を行って、本線を走行する車両と同等の車速とした上で、車線変更を行なうのが望ましい。このことを考慮して、余裕をもって車線変更を行うためには、例えば10秒前後の時間が必要とされる。そこで、走行する車両が10秒前後で進む距離を目安として、上述の第1閾値Dth1を設定している。具体的には、例えば、車速80km/hで走行する車両は約9秒間で約200m進む。また、車速100km/hで走行する車両は約7秒間で約200m進む。このことから、本実施形態の以下の説明では、第1閾値Dth1=200mと規定している。そして、このような状況下で車線変更を行う際の第1目標車速V1=80-100km/hと規定する。
【0056】
図2において、合流車線R3へと進入しつつある自車両M1は、充分に長い距離Dの合流車線R3の並行部分内で充分な加速を行い、所定の第1目標車速V1に到達したら、所定の車線変更制御処理に従って、本線の第1走行車線R1へと合流する走行制御がなされる。この場合において、自車両M1が合流車線R3の並行部分を走行中には、第1目標車速V1となるような加減速制御を行いつつ、周囲状況の確認を行う。そうして、当該自車両M1は、周囲状況の確認結果(他車両の有無等)や自車の車両状況(第1目標車速V1に到達しているか等)の各種情報に基づいて、所定の車線変更制御を行うことになる。なお、このときの目標進行路は符号G1で示すようになる。
【0057】
一方、
図3示す状況は、合流車線R3を走行中の自車両M2が、周囲状況の確認結果等(例えば本線を走行する他車両Mcの存在などの影響等)によって、通常の車線変更制御に移行できないまま走行を続け、合流車線R3の終端までの残りの距離Dxが、第2の所定距離(例えば30m)より短くなってしまった場合の状況である(
図3参照)。
【0058】
このような状況にあるときに、安全に車線変更を行い得るためには、合流車線R3の終端までの残りの距離Dxが、例えば30m程度あることが望ましい。したがって、本実施形態においては、この距離数値=30mを第2閾値Dth2(後述;
図5参照)として規定する。
【0059】
一般に、車線変更を開始してから完了するまでに必要とする距離は、約30m程度であると考えられている。一方、例えば車速40km/hで走行する車両は約3秒間で約30m進む。これらのことから、本実施形態の以下の説明では、第2閾値Dth2=30mと規定し、この状況下で車線変更を行う際の第2目標車速V2=40km/hと規定する。
【0060】
他方、
図4に示すように、合流車線R3aの並行部分の距離が短く設定されている場合がある。このような設定の合流車線R3の並行部分の距離Daは、例えば30m程度を想定している。したがって、この場合にも、当該距離数値=30mを第2閾値Dth2(後述;
図5参照)として規定する。
【0061】
このような各状況下において、合流車線(非優先車線)を走行する車両が、本線(優先車線)へと合流するために車線変更を行なう際の走行制御について、
図5のフローチャートを用いて、以下に説明する。
【0062】
なお、以下の説明においては、本実施形態の走行制御装置1を搭載した車両であって、合流車線を走行し車線変更を行って本線へと合流する側の車両を、自車両と呼称する。
【0063】
図5は、本実施形態の走行制御装置1によって実行される合流部車線変更制御処理の流れを示すフローチャートである。
【0064】
まず、本実施形態の走行制御装置1を搭載した自車両が、通常の走行制御処理(不図示)を実行しつつ道路上を走行しているものとする。このとき、当該走行制御装置1は、走行情報収集装置(カメラユニット21,ロケータユニット11等)によって走行環境情報や道路地図情報等を取得しながら、自車両の走行制御を行って当該自車両を走行させている。
【0065】
この場合において、走行制御装置1の走行制御ユニット26は、随時、継続的に入力される走行環境情報や道路地図情報等に基づいて、自車両の走行状況を認識している。
【0066】
このとき、走行制御ユニット26は、例えば自車両が優先車線に合流している非優先車線である合流車線に進入したことを認識すると、
図5の合流部車線変更制御処理の実行を開始する。そして、
図5のステップS11において、走行制御ユニット26は、合流車線に進入したか否かの確認を行う。ここで、合流車線への進入が確認された場合は、次のステップS12の処理に進む。また、合流車線への進入が確認されない場合は、本制御処理を抜けて元の処理に戻る(リターン)。
【0067】
図5のステップS12において、走行制御ユニット26は、前方走行環境認識部21dやロケータユニット11(走行情報収集装置)から入力される走行環境情報や道路地図情報等に基づいて、合流車線R3の距離Dが、所定の第1閾値Dth1よりも大であるか否かを確認する(D>Dth1)。
【0068】
即ち、侵入した合流車線R3の距離Dが所定距離(例えば200m)より長いか否かの判定を行う。ここで、合流車線R3の距離D>第1閾値Dth1であることが確認された場合(合流車線R3の距離Dが例えば200mより長い場合)には、ステップS13の処理に進む。また、合流車線R3の距離D>第1閾値Dth1ではないことが確認された場合(合流車線R3の距離Dが例えば200m未満である場合)には、ステップS18の処理に進む。
【0069】
ステップS13において、走行制御ユニット26は、第1目標車速V1(例えば80-100km/h)を設定する。
【0070】
次に、ステップS14において、走行制御ユニット26は、入力される走行環境情報や道路地図情報等に基づいて、自車両の周囲状況(例えば合流車線を先行する他車両や本線側を走行する他車両、車線境界線、障害物など)や、自車両の走行状態(車速の経時変化や目標車速に到達したかどうかなど)の確認を行う。
【0071】
続いて、ステップS15において、走行制御ユニット26は、上述のステップS14の処理にて確認された各種情報に基づいて、自車両が車線変更を行い得る状態にあるか否か、即ち車線変更条件が満たされているかどうかの判定を行う。ここで、車線変更条件とは、例えば、周囲に他車両が存在しておらず、障害物がなく、第1目標車速V1に到達している等の各種条件をいう。
【0072】
そして、このステップS15において、車線変更条件が満たされていると判定された場合には、次のステップS16の処理に進む。また、車線変更条件が満たされていない場合には、上述のステップS14の処理に戻り、以降の処理を繰り返す。
【0073】
一方、車線変更条件が満たされている状態であると判定されて、ステップS16の処理に進むと、このステップS16において、走行制御ユニット26は、入力される走行環境情報や道路地図情報等に基づいて、自車両が走行中の合流車線R3の終端までの距離Dxが、第2閾値Dth2よりも大であるか否かを確認する(Dx>Dth2)。ここで、終端までの距離Dxが、第2閾値Dth2よりも大ではない(小である)場合(Dx>Dth2を満たさない場合)とは、例えば30m未満であるので、ステップS18の処理へ進む。
【0074】
また、終端までの距離Dxが、第2閾値Dth2よりも大である(Dx>Dth2を満たす)場合は、例えば、終端までの距離Dxが30~200mであるので、ステップS17の処理に移行する。そして、ステップS17において、走行制御ユニット26は、通常の車線変更制御処理を実行する。
【0075】
上述のステップS17において実行される通常の車線変更処理は、従来一般に行われている周知の処理シーケンスが適用される。例えば、自車両の走行制御装置1は、自車両が走行している合流車線R3における第1目標進行路と、自車両が車線変更後に走行する本線の第1走行車線R1における第2目標進行路とを生成する。
【0076】
この場合において、走行制御装置1は、まず、車両の位置と、合流車線R3及び第1走行車線R1の車線境界線とを特定する。
【0077】
次に、特定された車両の位置と車線境界線とを用いて、各目標進行路に沿って車両を移動させたときの各車線の幅方向における車両の各移動量(即ち、走行中の車両中心から車線境界までの距離(各車線毎の目標移動量))を算出する。
【0078】
そして、算出された各目標移動量と、各目標進行路における車線の幅方向の車両の加速度の変化率(躍度)とを用いて第1目標進行路及び第2目標進行路を生成する。
【0079】
さらに、このとき、自車両の周囲環境に応じて、適宜、第1目標進行路及び第2目標進行路の補正を行う。
【0080】
こうして生成された第1目標進行路及び第2目標進行路の各情報に基づいて、車線変更制御に必要な指示値(例えば操舵角目標値など)を生成し、生成された指示値に基づいて、操舵制御などを行って車線変更制御を実行する。
【0081】
このようにして、通常の車線変更制御処理(ステップS17の処理)による車線変更が完了したら、元の処理に戻る(リターン)。
【0082】
一方、上述のステップS12の処理にて、合流車線R3の距離D>第1閾値Dth1ではないことが確認された場合(つまり、合流車線R3の距離Dが例えば200m未満である場合)、及び上述のステップS16の処理にて、合流車線R3の終端までの距離Dx>第2閾値Dth2ではないことが確認された場合(つまり、合流車線R3の終端までの距離Dxが例えば30m未満の場合)には、上述したように、ステップS18の処理に進む。
【0083】
この場合、ステップS18において、走行制御ユニット26は、第2目標車速V2(例えば40km/h)を設定する。
【0084】
次に、ステップS19において、走行制御ユニット26は、入力される走行環境情報や道路地図情報等に基づいて、自車両の周囲状況(例えば車線境界線、障害物など)や、自車両の走行状態(車速の経時変化や目標車速に到達したかどうかなど)の確認を行う。
【0085】
なお、このステップS19の処理にて行われる確認処理は、上述のステップS14の処理にて行われる確認処理と略同様の処理がなされる。しかしながら、このステップS19の処理が実行される状況では、合流車線距離Dが所定の距離より短い距離Daである場合(例えば、第1所定距離=30m未満;
図4の状況)か、若しくは走行中の合流車線R3の距離Dが長くても合流車線R3の終端までの距離Dxが所定の距離より短い場合(例えば30m未満;
図3の状況)などの状況である。ここで、距離が短いということは、時間的余裕が少ないということに通じる。このため、ステップS19の処理にて実施される確認処理は、上述のステップS14で実施される確認処理に比べて、確認項目を限定した簡略的な処理となっている。
【0086】
続いて、ステップS20において、走行制御ユニット26は、上述のステップS19の処理にて取得された走行環境情報及び道路地図情報等に基づいて、合流車線R3の終端に障害物が存在するか否かの確認を行う。ここで、合流車線R3の終端に障害物の存在が確認された場合には、ステップS24の処理に進む。
【0087】
そして、ステップS24において、走行制御ユニット26は、ブレーキ制御部32を介して自車両を停止させる制動制御を行う。こうして、自車両が停止状態になったら、次のステップS25において、走行制御ユニット26は、運転モードを手動運転モードへと切り換える処理を行う。その後、元の処理に戻る(リターン)。
【0088】
一方、上述のステップS20にて、合流車線R3の終端に障害物の存在が確認されない場合には、ステップS21の処理に進む。
【0089】
続いて、ステップS21において、走行制御ユニット26は、上述のステップS19の処理にて確認された各種情報に基づいて、自車両が車線変更を行い得る状態にあるか否か、即ち車線変更条件が満たされているかどうかの判定を行う。ここで、車線変更条件が満たされていると判定された場合には、ステップS22の処理に進む。
【0090】
そして、ステップS22において、走行制御ユニット26は、車線形状に応じた車線変更制御処理を実行する。
【0091】
ここで、車線形状に応じた車線変更制御処理は、次のような処理シーケンスとしている。まず、自車両の走行制御装置1の走行制御ユニット26は、前方走行環境認識部21dやロケータユニット11(走行情報収集装置)から入力される走行環境情報や道路地図情報等に基づいて、自車両が走行している合流車線R3における第1目標進行路と、自車両が車線変更後に走行する本線の第1走行車線R1における第2目標進行路とを生成する。この場合において、走行制御装置1の走行制御ユニット26は、車両の位置と、合流車線R3及び第1走行車線R1の車線境界線とを特定する。
【0092】
ここで、合流車線R3の車線境界線L1は、終端地点においては、路肩側(走行車両の両側面のうち車両幅方向において本線に対する面とは反対側の面に対向する側)の車線境界線L1a(
図2~
図4参照)が、徐々に本線側に狭まるように引かれている。したがって、
図5のステップS22の処理にて実行される車線形状に応じた車線変更制御処理で必要とされる車線境界線情報は、主に、この車線境界線L1aの形状情報と、本線の第1走行車線R1の車線境界線L1である。
【0093】
そして、特定された車両の位置と車線境界線L1,L1aとを用いて、合流車線R3の終端地点近傍における第1目標進行路を設定する。ここで、合流車線R3の終端地点近傍における第1目標進行路は、車線境界線L1aに沿う曲線を、合流車線R3の中央寄りに平行移動させた進行路に略等しい線となる。この場合の平行移動量は、少なくとも車両の幅寸法の1/2以上であって、例えば合流車線R3の本線との並行部分の車線幅寸法の1/2程度である。したがって、この第1目標進行路に沿って車両が走行するとき、当該車両の側面は車線境界線L1aに平行となる。
【0094】
また、自車両が車線変更後に走行する本線の第1走行車線R1における第2目標進行路は、上述のようにして設定された第1目標進行路の延長線と、本線の第1走行車線R1の幅方向の中央を通る直線との双方に内接する円弧に沿う線に近似するように設定される。
【0095】
こうして生成された第1目標進行路及び第2目標進行路の各情報に基づいて、車線変更制御に必要な指示値(例えば操舵角目標値など)を生成し、生成された指示値に基づいて、操舵制御などを行って車線変更制御を実行する。その場合には、まず、自車両を合流車線R3の終端地点の近傍まで走行させた後、所定のタイミングで第1目標進行路及び第2目標進行路に沿って走行させる制御が行われる。
【0096】
なお、合流車線R3の終端地点近傍において、上述のようにして設定された第1目標進行路及び第2目標進行路に沿う走行制御を行う場合には、さらに、自車両の周囲環境に応じて、適宜、車速の制御を行うようにする。
【0097】
例えば、合流車線R3の終端地点において、設定された第1目標進行路及び第2目標進行路に沿う走行制御を行おうとするとき、走行制御ユニット26は、継続的に入力される走行環境情報や道路地図情報等に基づいて、自車両の進行方向の周囲状況を確認している。この場合において、自車両が第2目標進行路を走行する予想時刻に、本線を走行する他車両が、自車両と干渉することが予想される場合がある。このような場合には、自車両が第2目標進行路を通過する予想時刻に到達する前に、走行制御ユニット26は、ブレーキ制御部32若しくは加減速制御部33を制御して減速制御を行う。これにより、自車両が合流車線R3から本線の第1走行車線R1へ車線変更したときに、本線側を走行する他車両との干渉を避けることができる。
【0098】
このようにして、車線形状に応じた車線変更制御処理(ステップS22の処理)による車線変更が完了したら、元の処理に戻る(リターン)。
【0099】
一方、上述のステップS21において、車線変更条件が満たされていないと判定された場合には、ステップS23の処理に進む。
【0100】
そして、ステップS23において、走行制御ユニット26は、入力される走行環境情報及び道路地図情報等に基づいて、自車両が合流車線R3の終端近傍にまで走行したか否かの確認を行う。ここで、自車両が合流車線R3の終端近傍まで走行していると判断された場合には、ステップS24の処理に進む。そして、このステップS24の処理以降の処理シーケンスは、上述した通りである。
【0101】
また、ステップS23において、自車両が合流車線R3の終端近傍まで到達していないと判断された場合には、ステップS19の処理に戻る。
【0102】
なお、ステップS14の処理において、合流車線R3の終端地点近傍に障害物などが確認されることがある。この場合、当該障害物などが、合流車線R3の終端地点近傍における路肩側の車線境界線L1aを遮蔽している可能性がある。そこで、このような場合には、通常の車線変更制御を優先して行うようにしてもよい。
【0103】
ただし、合流車線R3の距離設定が短い場合(
図4に示す状況)、若しくは合流車線R3の終端までの残り距離Dxが短い場合(
図3に示す状況)において、合流車線R3の終端地点近傍に障害物などが確認されて、車線境界線L1aを特定できない状況が現出された場合には、
図5のステップS24の停止処理の後、手動運転モードに切り換えるなどの処理を行うようにすればよい。
【0104】
以上説明したように上記一実施形態によれば、車線合流部における車線変更時の走行制御を行う車両の走行制御装置1において、合流車線R3の並行部分の距離Dの設定が充分に長い場合(例えばD=200m以上の場合)には、通常の車線変更制御による合流走行制御を行う。その一方で、合流車線R3の並行部分の距離Daの設定が短い場合(例えばDa=30m未満の場合)や、合流車線R3の距離Dの設定が長く設定されていても周囲状況によって本線への合流タイミングが遅くなる等の理由によって、合流車線R3の終端までの残り距離Dxが短くなってしまった場合などには、合流車線R3の終端地点の近傍まで自車両を走行させた後、合流車線R3の形状に応じた車線変更制御を行うようにしている。
【0105】
このように、車線変更制御を、合流車線R3の距離に応じて、適宜切り換えることにより、合流車線R3の距離が短い場合(
図3の距離Dx又は
図4の距離Daの場合)であっても、充分な加速と判断時間をもって合流走行を行うことができる。
【0106】
したがって、本実施形態の走行制御装置1によれば、車線合流部における車線変更時の走行制御を、常に安全かつ円滑に違和感なく行うことができると共に、効率的な合流走行を行うことができる。
【0107】
ところで、上述の一実施形態の例示では、合流車線における本線との並行部分が充分に長く設定されている場合に通常の車線変更制御を行うようにしている。この場合における通常の車線変更制御は、周囲の状況(他車両の存在が無いなど)や、充分な加速が行われる等、車線変更を行い得る条件が満たされたタイミングで、車線変更を実行するようにしている。したがって、この場合、車線変更のタイミングは、合流車線の並行部分が長い場合において、合流車線の中途領域で車線変更が行われる場合もあり得る。
【0108】
しかしながら、合流車線を走行する際のルールは、国や地域によっては、走行する車両の周囲状況等に関わらず、合流車線の終端地点の近傍まで走行することが義務または推奨されていることがある。
【0109】
このようなルールのある国や地域においては、合流車線における本線との並行部分が充分に長い場合であっても、通常の車線変更制御を行う際には、例えば、周囲の安全を確保し、かつ充分な加速による車速を確保できた場合にも、できるだけ合流車線の走行を維持させて、合流車線の終端地点に近い部分まで合流車線を走行させるような制御とすればよい。一方、このような国や地域においても、合流車線の設定距離が短い場合や、合流車線の終端地点までの距離が短い場合には、上述の一実施形態と同様に、車線形状に応じた車線変更制御処理を実行すればよい。
【0110】
また、上述の一実施形態においては、車線変更制御を切り換えるための閾値として、第1閾値Dth1=200mと、第2閾値Dth2=30mとを規定した例を示しているが、これらの数値は、上述の例に限られるものではなく、車両を利用する国や地域の交通法規などを鑑みて、適宜設定すればよい。
【0111】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用を実施することができることは勿論である。さらに、上記実施形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせによって、種々の発明が抽出され得る。例えば、上記一実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題が解決でき、発明の効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。この発明は、添付のクレームによって限定される以外にはそれの特定の実施態様によって制約されない。
【符号の説明】
【0112】
1…走行制御装置
11…ロケータユニット
12…地図ロケータ演算部
12a…自車位置推定演算部
12b…走行ルート設定演算部
13…GNSS受信機
14…自律走行センサ
15…ルート情報入力装置
16…高精度道路地図データベース
21…カメラユニット
21a…メインカメラ
21b…サブカメラ
21d…前方走行環境認識部
26…走行制御ユニット
31…操舵制御部
32…ブレーキ制御部
33…加減速制御部
34…報知装置
D,Da…合流車線距離
Dth1…第1閾値
Dth2…第2閾値
Dx…合流車線の残り距離
G1,G2,G3…目標進行路
L1,L1a…車線境界線
L2…構造物境界線
M1,M1a,M2,M2a,M3,M3a…自車両
Mc…他車両
R1…第1走行車線
R2…第2走行車線
R3,R3a…合流車線
V1…第1目標車速
V2…第2目標車速