(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】キルン支持装置
(51)【国際特許分類】
F16C 23/06 20060101AFI20241120BHJP
F16C 19/38 20060101ALI20241120BHJP
F16C 19/36 20060101ALI20241120BHJP
F16C 35/07 20060101ALI20241120BHJP
F27B 7/22 20060101ALI20241120BHJP
F27D 21/00 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
F16C23/06
F16C19/38
F16C19/36
F16C35/07
F27B7/22
F27D21/00 A
(21)【出願番号】P 2020094085
(22)【出願日】2020-05-29
【審査請求日】2023-05-09
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】300041192
【氏名又は名称】UBEマシナリー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】506347517
【氏名又は名称】DOWAエコシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【氏名又は名称】村上 友一
(72)【発明者】
【氏名】折出 拓
(72)【発明者】
【氏名】友光 洋介
(72)【発明者】
【氏名】河原 誠二
(72)【発明者】
【氏名】小林 弘和
【審査官】沖 大樹
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-009623(JP,U)
【文献】実開昭58-051190(JP,U)
【文献】特開平02-276938(JP,A)
【文献】実開昭59-163221(JP,U)
【文献】実開昭57-113717(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 23/06
F16C 19/38
F16C 19/36
F16C 35/07
F27B 7/22
F27D 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キルン胴体のタイヤローラを支持ローラで回転自在に支持するキルン支持装置であって、
軸受ケーシング内で前記支持ローラの回転軸を支持し、外輪ところが接触する面を曲面形状の自動調心ころ軸受構造でラジアル荷重を受けるラジアル軸受と、
前記軸受ケーシング内で前記支持ローラの回転軸の軸端を支持し、スラスト荷重を受けるスラスト軸受と、
前記スラスト軸受の外輪と前記軸受ケーシングの蓋体の間に隙間スペーサを取り付けて、前記隙間スペーサが前記蓋体と接触しない隙間を設け、前記スラスト荷重が作用しているときに前記ラジアル軸受からスペーサを介して前記スラスト軸受に荷重が掛かり前記隙間がなくなり前記隙間スペーサと前記蓋体が接触する隙間調整部と、
を有
し、前記隙間調整部は、前記蓋体と前記外輪の間に取り付けたダイアフラム状の隙間スペーサと、前記蓋体の中心孔に螺合して前記回転軸の軸方向に進退移動して先端が前記隙間スペーサと接する調整ボルトを有することを特徴とするキルン支持装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたキルン支持装置であって、
前記隙間調整部に前記スラスト軸受に作用するスラスト荷重を測定する歪み測定部を備えたことを特徴とするキルン支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント製造や廃棄物処理、各種原料の精錬や攪拌などに用いられるロータリーキルンを回転支持するキルン支持装置に関し、特に傾斜(入口側が高所で出口側が低所)配置するキルンから生じるラジアル荷重(重力方向)とスラスト荷重(キルン軸方向)が作用するキルン支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロータリーキルンは、直径数メートルの長尺円筒状のキルン胴体を備え、外周に軸方向に沿って所定間隔で複数のタイヤを取り付け、各タイヤの下部には2個一対の支持ローラを取り付けて回転自在に支持している。支持ローラは軸受を介して架台に支持され、架台は摩耗や経年劣化によりキルン胴体の落ち込み(垂直方向の低下)や支持ローラの片当たりなどが生じることがある。
被攪拌物を加熱処理するキルン胴体は内部が高温になり軸方向と(主に)その垂直断面方向に熱膨張する。その際、被攪拌物の重量によって不均一な伸びなど胴体変形が回転時に繰り返し発生している。
【0003】
このため特許文献1に開示の支持装置は、支持ローラの軸受の支持体を支持ベース上でキルン胴体の軸線方向に平行してスライド可能に支承している。これによりキルン胴体の熱膨張に伴う軸方向の伸びに対してキルンタイヤ幅より受けローラ幅を大きくしているので、相対すべりによって熱膨張を吸収できる。
しかしながら、傾斜配置したキルン胴体では、内部に受け入れる被攪拌物が重量物の場合、断面方向だけでなくキルン胴体の軸方向の力が大きくなり、これを支持する支持ローラのシャフトに作用するスラスト力も大きくなってしまう。このためローラ部品の点検又は交換作業が多発するが、特許文献1ではスラスト力について何ら開示されていない。
また従来、ラジアル荷重とスラスト荷重の両方が作用するキルンに自動調心ころ軸受けを使用していた。被攪拌物の重量や衝撃荷重が大きい高負荷の場合、軸受のサイズアップで対処することができる。しかし自動調心ころ軸受けはラジアル荷重の負荷能力は高いが、スラスト荷重の負荷能力は小さいため、設計時にスラスト荷重を優先させると軸受けサイズが大きくなりすぎてしまい設置スペースに加えてコスト設計上も好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、上記従来技術の問題点に鑑み、傾斜配置したキルン胴体を支持する支持ローラに作用するスラスト力や、タイヤ又は支持ローラの調整不備による偏角により増加するスラスト力の耐荷重能力を高めたキルン支持装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するための第1の手段として、キルン胴体のタイヤローラを支持ローラで回転自在に支持するキルン支持装置であって、
軸受ケーシング内で前記支持ローラの回転軸を支持し、外輪ところが接触する面を曲面形状の自動調心ころ軸受構造でラジアル荷重を受けるラジアル軸受と、
前記軸受ケーシング内で前記支持ローラの回転軸の軸端を支持し、スラスト荷重を受けるスラスト軸受と、
前記スラスト軸受の外輪と前記軸受ケーシングの蓋体の間に隙間スペーサを取り付けて、前記隙間スペーサが前記蓋体と接触しない隙間を設け、前記スラスト荷重が作用しているときに前記ラジアル軸受からスペーサを介して前記スラスト軸受に荷重が掛かり前記隙間がなくなり前記隙間スペーサと前記蓋体が接触する隙間調整部と、
を有し、前記隙間調整部は、前記蓋体と前記外輪の間に取り付けたダイアフラム状の隙間スペーサと、前記蓋体の中心孔に螺合して前記回転軸の軸方向に進退移動して先端が前記隙間スペーサと接する調整ボルトを有することを特徴とするキルン支持装置を提供することにある。
上記第1の手段によれば、支持ローラにスラスト力が作用したときに外輪と軸受ケーシングの蓋体の隙間がなくなり接触してスラスト軸受で受けることができる。またスラスト軸受から軸受ケーシングを介して架台へ荷重を伝達できる。従ってスラスト力が作用していないときのスラスト軸受の摩耗、変形、損傷などを回避できる。またローラ部品の点検及び交換作業の頻度を低減できる。
また隙間スペーサの取り付け後に調整ボルトの締め付け作業により隙間の調整を容易に行える。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するための第2の手段として、第1の手段であって、前記隙間調整部に前記スラスト軸受に作用するスラスト荷重を測定する歪み測定部を備えたことを特徴とするキルン支持装置を提供することにある。
上記第2の手段によれば、スラスト軸受に作用するスラスト荷重を測定できることに加えて、タイヤ又は支持ローラの調整不備による偏角により増加するスラスト力や、所定の隙間が形成されずスラスト軸受に負荷が掛かっていることを検出でき、スラスト軸受の摩耗、変形、損傷などを予測できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、支持ローラにスラスト力が作用したときに外輪と軸受ケーシングの蓋体の隙間がなくなり接触してスラスト軸受で受けることができる。またスラスト軸受から軸受ケーシングを介して架台へ荷重を伝達できる。従ってスラスト力が作用していないときのスラスト軸受の摩耗、変形、損傷などを回避できる。またローラ部品の点検及び交換作業の頻度を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態のキルン支持装置の断面図である。
【
図2】軸受ケーシングの蓋体とスラスト軸受の外輪の隙間の説明図である。
【
図3】軸受ケーシングの蓋体とスラスト軸受の外輪が隙間スペーサを介して接した説明図である。
【
図4】第2実施形態のキルン支持装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のキルン支持装置の実施形態について、図面を参照しながら、以下詳細に説明する。
【0013】
[第1実施形態のキルン支持装置10]
図1は、第1実施形態のキルン支持装置の断面図である。なお
図1中の歪み測定部は省略している。
図2は軸受ケーシングの蓋体とスラスト軸受の外輪の隙間の説明図である。
図3は軸受ケーシングの蓋体とスラスト軸受の外輪が隙間スペーサを介して接した説明図である。
図1に示すように第1実施形態のキルン支持装置10は、支持ローラ12の回転軸14を支持する軸受け及び架台16である。回転軸14の出口側(以下、本実施形態の出口側とはキルン胴体の出口側と同じ側をいう)と入口側(以下、本実施形態の入口側とはキルン胴体の入口側と同じ側をいう)は同一構造であり、以下の本実施形態ではスラスト荷重の掛かる出口側の構造について説明する。その際、出口側の回転軸14は、支持ローラ12の出口側端面と接するツバ部14aを形成し、支持ローラ12が軸から外れない構成を採用している。
【0014】
ラジアル軸受20及びスラスト軸受30を内部に有する筒状の軸受ケーシング18は架台16の上面に取り付けている。
ラジアル軸受20は、内輪22、ころ24、外輪26を有し、内輪22が回転軸14の周面に接し、外輪26が軸受ケーシング18の内面に接している。内輪22及び外輪26の間にはころ24を配置している。このようなラジアル軸受20は、回転軸14を回転自在に支持し、支持ローラ12に作用するラジアル荷重を受ける。またラジアル軸受20は外輪26ところ24の接する面が曲面形状の自動調心ころ軸受けの構造を採用し、支持ローラ12の軸直角に作用せず軸方向に沿って荷重が作用する場合に曲面を揺動して軸方向の荷重をベアリングに作用させないようにしている。
スラスト軸受30は、内輪32、ころ34、外輪36を有し、内輪32が回転軸14の軸端の周面及びスペーサ38に接し、外輪36が後述する隙間調整部40に接している。スペーサ38は、ラジアル軸受20とスラスト軸受30の間に密着するように取り付けて、支持ローラ12にスラスト荷重が作用したときに、ラジアル軸受20からスラスト軸受30へ荷重を伝達する部材である。内輪32及び外輪36の間にはころ34を配置している。このようなスラスト軸受30は、回転軸14の軸端を回転自在に支持し、支持ローラ12に作用するスラスト荷重を受ける。
第1実施形態の隙間調整部40は、軸受ケーシング18の一方の開口を覆う蓋体43と外輪36の間に取り付けて厚みを任意に変更可能な隙間スペーサ42である。
【0015】
隙間スペーサ42は、外輪36の端面とほぼ同じ端面の環状部材であり、厚み幅を任意に変更できる。本実施形態では、蓋体43と外輪36の間に取り付けたときに所定の隙間ができる厚みの隙間スペーサ42を用いている。本実施形態の所定の隙間とはラジアル荷重が作用しているときに隙間スペーサ42が蓋体43とが接触しない隙間をいう。
隙間スペーサ42と対向する蓋体43には貫通孔41と、貫通孔41に挿入可能なコイルばね41aと、コイルばね41aに挿入可能な固定軸41bと、固定軸41bを蓋体43に固定する締結ボルト41cを設けている。コイルばね41aは固定軸41bで貫通孔41内に固定したときに一端が隙間スペーサ42側に突出して隙間スペーサ42の端面と接するように取り付けている。このようなコイルばね41aは環状の隙間スペーサ42と対向する蓋体43に環状に複数取り付けている。これにより、蓋体43と隙間スペーサ42に隙間を保持しながら隙間スペーサ42を支持できる(
図2参照)。
また蓋体43は、ボルト41dを用いて軸受ケーシング18の端面に固定している。
【0016】
歪み測定部50は、隙間調整部40に取り付けてスラスト軸受30に作用するスラスト荷重を測定できる。歪み測定部50は、隙間調整部40の端面又は内部に取り付けて環状に形成できる。このような構成により、蓋体43と隙間スペーサ42に所定の隙間が形成されているとき荷重は検知されず、所定の隙間が形成されずにスラスト軸受30に負荷が掛かっているときに荷重を検出できる。加えて、タイヤ又は支持ローラの調整不備による偏角により増加するスラスト力や、所定の隙間が形成されずスラスト軸受に負荷が掛かっていることを検出でき、スラスト軸受の摩耗、変形、損傷などを予測できる。
【0017】
(作用)
初期取り付け時又は稼働前の隙間スペーサと蓋体43の間にはコイルばね41aの荷重によって隙間スペーサ42がスラスト軸受30の外輪36側へ押し付けられて所定の隙間が構成されている(
図2参照)。
一方、ロータリーキルンの所定時間の稼働時の熱膨張によって、支持ローラ12にスラスト荷重が掛かるとラジアル軸受20からスペーサ38を介してスラスト軸受30に荷重が掛かり、外輪36が隙間スペーサ42を介して蓋体43に接して隙間がなくなる(
図3参照)。このときラジアル軸受20と共にスラスト軸受30により支持ローラ12を回転させることができる。また
図1中の矢印に示すように、回転軸14の軸方向に沿ってスラスト荷重が作用して、スラスト荷重がスラスト軸受30に伝達する。このときスラスト軸受30は、隙間スペーサ42を介して蓋体43と接触しているため蓋体43を固定した軸受ケーシング18に荷重が伝達される。
また歪み測定部50により荷重の変化を検知し、荷重の測定値が大きく変化したときにラジアル軸受20又は/及びスラスト軸受30の摩耗、変形、損傷などを予測でき、適切なローラ部品の交換作業を行える。
【0018】
[第2実施形態のキルン支持装置10A]
図4は、第2実施形態のキルン支持装置の断面図である。図示のように第2実施形態のキルン支持装置10Aは、第1実施形態のキルン支持装置10と基本構成は同じであるが、蓋体43A、隙間調整部40A、歪み測定部50Aの構成が異なる。
第2実施形態の隙間調整部40Aは、蓋体43Aと外輪36の間に取り付けた隙間スペーサ42Aと、蓋体43Aの中心孔44に螺合して回転軸14の軸方向に進退移動して先端が隙間スペーサ42Aと接する調整ボルト45を有している。
隙間スペーサ42Aは、軸受ケーシング18の出口側の開口とほぼ同じ大きさのダイアフラム状の円盤部材である。隙間スペーサ42Aは外周側と中心側の厚みを厚く形成し、それ以外を薄く形成し、一方の主面(入口側)がスラスト軸受30の外輪36端面と接している。そして隙間スペーサ42Aは他方の主面(出口側)と蓋体43Aの間に所定の隙間ができるような厚みに形成している。
蓋体43Aは軸受ケーシング18の出口側の開口を塞ぐ部材であり、ボルト41dを用いて軸受ケーシング18に固定している。
【0019】
調整ボルト45は、蓋体43Aの中心孔44に螺合して回転軸14の軸方向に沿って進退移動して締め付け位置を固定できるナットを備えたボルトである。調整ボルト45は、締め込むと先端が隙間スペーサ42Aの中心に接して蓋体43Aと隙間スペーサ42Aに隙間を保持しながら隙間スペーサ42Aを支持できる。
第2実施形態の歪み測定部50Aは、隙間スペーサ42Aの中心と蓋体43Aの中心の間に設けた歪みゲージである。歪み測定部50Aは、第1実施形態の環状の歪み測定部50と比べて隙間スペーサ42A中心の一か所でスラスト軸受30にかかるスラスト荷重を測定できる。
このような構成の第2実施形態のキルン支持装置10Aは、第1実施形態のキルン支持装置10と同様に作用する。すなわち
図4中の矢印に示すように、回転軸14の軸方向に沿ってスラスト荷重が作用して、スラスト荷重がスラスト軸受30に伝達する。このときスラスト軸受30は、隙間スペーサ42Aの中心及び調整ボルト45を介して蓋体43と接触しているため蓋体43を固定した軸受ケーシング18に荷重が伝達される。
また、調整ボルトは隙間スペーサ42Aの隙間を保持するのみならず、ラジアル軸受20の摩耗等によりギャップ(隙間)が生じた場合に、締め付けることにより解消することができる。
【0020】
このような本発明によれば、支持ローラにスラスト力が作用したときに外輪と軸受ケーシングの蓋体が接触してスラスト軸受で受けることができる。またスラスト軸受から軸受ケーシングを介して架台へ荷重を伝達できる。従ってスラスト軸受の摩耗、変形、損傷などを回避できる。またローラ部品の点検及び交換作業の頻度を低減できる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明した。しかしながら、本発明は、上記実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の変更が可能である。
また、本発明は、実施形態において示された組み合わせに限定されることなく、種々の組み合わせによって実施可能である。
【符号の説明】
【0021】
10,10A キルン支持装置
12 支持ローラ
14 回転軸
14a ツバ部
16 架台
18 軸受ケーシング
20 ラジアル軸受
22 内輪
24 ころ
26 外輪
30 スラスト軸受
32 内輪
34 ころ
36 外輪
38 スペーサ
40,40A 隙間調整部
41 貫通孔
41a コイルばね
41b 固定軸
41c 締結ボルト
41d ボルト
42,42A 隙間スペーサ
43,43A 蓋体
44 中心孔
45 調整ボルト
50,50A 歪み測定部