(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】塗装システム、及び化粧板の塗装方法
(51)【国際特許分類】
B05B 7/06 20060101AFI20241120BHJP
B05B 7/08 20060101ALI20241120BHJP
B05B 7/14 20060101ALI20241120BHJP
B05B 7/32 20060101ALI20241120BHJP
B05B 15/50 20180101ALI20241120BHJP
B05D 1/02 20060101ALI20241120BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
B05B7/06
B05B7/08
B05B7/14
B05B7/32
B05B15/50
B05D1/02 Z
B05D3/00 D
(21)【出願番号】P 2020107062
(22)【出願日】2020-06-22
【審査請求日】2023-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】503367376
【氏名又は名称】ケイミュー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高鳥毛 健
(72)【発明者】
【氏名】柳郷 正樹
(72)【発明者】
【氏名】松下 聖三
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-062359(JP,A)
【文献】実開平05-085459(JP,U)
【文献】実開平01-069649(JP,U)
【文献】特開平06-320061(JP,A)
【文献】特開平08-141495(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 7/00-7/32
12/16-12/36
14/00-16/80
B05D 1/00-7/26
E04F 13/00-13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料を噴出する塗料噴出口と、
前記塗料噴出口から噴出した塗料を霧化するための霧化用エアを噴出する霧化用エア噴出口と、
前記塗料噴出口から噴出した前記塗料のパターンを調節するためのパターン調整用エアを噴出するパターン調整用エア噴出口と、を備え、
前記霧化用エア噴出口から噴出される前記霧化用エアに水を供給する第1水供給部と、
前記パターン調整用エア噴出口から噴出される前記パターン調整用エアに水を供給する第2水供給部と、を別々に備え、
前記パターン調整用エア噴出口は、前記霧化用エア噴出口と比較して前記塗料噴出口から離れて位置し、前記パターン調整用エアを、前記霧化用エアよりも大きな圧力で噴出
し、
前記霧化用エアと、前記パターン調整用エアと、を互いに平行に噴出する、
塗装システム。
【請求項2】
塗装システムを用いた化粧板の塗装方法であって、
前記塗装システムは、
塗料を噴出する塗料噴出口と、
前記塗料噴出口から噴出した塗料を霧化するための霧化用エアを噴出する霧化用エア噴出口と、
前記塗料噴出口から噴出した前記塗料のパターンを調節するためのパターン調整用エアを噴出するパターン調整用エア噴出口と、を備え、
前記霧化用エア噴出口から噴出される前記霧化用エアに水を供給する第1水供給部と、
前記パターン調整用エア噴出口から噴出される前記パターン調整用エアに水を供給する第2水供給部と、を別々に備えたシステムであり、
前記塗料噴出口を有する塗装機を、化粧板から300mm以上の高さに位置させ、
前記塗料噴出口から噴出した塗料からなるドットを、最大粒径が2.0mm以上4.5mm以下になり、かつ、粒径1mm以上のドットの密度が30個/100cm
2
以上250個/100cm
2
以下になるように化粧板に吹き付ける、
化粧板の塗装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装システム、及び化粧板の塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、塗装用エアスプレーガンの先端部に取り付けられる塗装用ノズルが開示されている。この塗装用ノズルは、塗料を噴出する塗料噴出口と、塗料噴出口を囲む環状でかつ霧化エアを噴出する霧化エア噴出口とを備えている。この塗装用ノズルでは、液体の塗料に対して霧化エアを衝突及び混合させて塗料を霧化し、このように霧化された霧化塗料を被塗装物に塗着させることで被塗装物を塗装する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した塗装用ノズルでは、塗料噴出口から噴出した塗料が、塗装用ノズルの先端部に付着しやすい。このように塗装用ノズルに付着した塗料は、塗料噴出口からの塗料の噴出や、霧化エア噴出口からの霧化エアの噴出が妨げる恐れがある。また、塗装用ノズルの先端部で硬化した塗料が吹き飛ばされて被塗装物に付着し、塗装に支障を来す恐れがある。
【0005】
本発明は上記事由に鑑みてなされており、噴出した塗料が、塗料噴出口や霧化用エア噴出口に付着し難く、適切な塗装を長時間連続して行うことができる塗装システム及びこの塗装システムを用いた化粧板の塗装方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る塗装システムは、塗料を噴出する塗料噴出口と、前記塗料噴出口から噴出した塗料を霧化するための霧化用エアを噴出する霧化用エア噴出口とを備え、前記霧化用エア噴出口から噴出される霧化用エアに水を供給する。
【0007】
本発明の一態様に係る化粧板の塗装方法は、前記塗装システムを用いた化粧板の塗装方法であって、前記塗料噴出口から噴出した塗料からなるドットを、最大粒径が2.0mm以上4.5mm以下になり、かつ、粒径1mm以上のドットの密度が30個/100cm2以上250個/100cm2以下になるように化粧板に吹き付ける。
【発明の効果】
【0008】
前記一態様に係る塗装システムでは、塗料噴出口や霧化用エア噴出口に、塗料噴出口から噴出した塗料が付着することを抑制でき、適切な塗装を長時間連続して行うことができる。
【0009】
前記一態様に係る化粧板の塗装方法では、前記塗装システムを用いて、化粧板に、ドットがまばらに散らばった塗装を長時間連続して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る塗装システムの構成図である。
【
図2】
図2は、同上の塗装システムを用いて塗装した化粧板の表面の写真である。
【
図3】
図3は、同上の塗装システムを用いて塗装した他の化粧板の表面の写真である。
【
図4】
図4は、同上の塗装システムが有するノズルの先端部を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1)実施形態
図1に示す本実施形態の塗装システム1は、スプレー塗装を行うシステムであって、塗料10を被塗物に向かって噴出すると共に噴出した塗料10を霧化(微粒化)し、霧化した塗料10を被塗物に付着させることで塗装を行う。
【0012】
被塗物は、窯業系のサイディング材であり、セメントを主成分とする水硬性無機質材料の硬化物である。具体的に被塗物は、外壁材として利用される化粧板6である。化粧板6の表面には、例えば、凹凸模様が形成される。
【0013】
なお、被塗物の材料は限定されず、例えば、木質材、金属又はプラスチックなどであってもよい。また、被塗物は、内壁材又は屋根材等として利用される化粧板であってもよい。また、被塗物は、化粧板に限定されない。
【0014】
塗装システム1は、例えば、
図2及び
図3に示すように、ベース色で塗装された化粧板6の表面に、ベース色とは異なる色の塗料10からなるドット60を、まばらに散らばった状態で多数塗布するスパッタ塗装を行う。なお、ドット60は、化粧板6の表面の全体にわたって塗布されてもよいし、化粧板6の表面の一部にのみ塗布されてもよい。また、塗装システム1によって行う塗装は、スパッタ塗装に限定されない。
【0015】
塗装システム1は、例えば、化粧板6のベース色とドット60の色との色差ΔEが、30以上60以下となるよう化粧板6に塗装を行う。なお、化粧板6のベース色とドット60の色との色差ΔEは、限定されない。
【0016】
本実施形態の塗装システム1では、ドット60の最大粒径が2.0mm以上4.5mm以下になり、かつ、ドット60の密度が30個/100cm2以上250個/100cm2以下になるように化粧板6の表面に塗料10を吹き付ける。なお、化粧板6に塗装されるドット60の径及び密度は、限定されない。
【0017】
図1に示すように、塗装システム1は、空気霧化式の塗装機2と、塗装機2に塗料10を供給する塗料供給系3と、塗装機2に霧化用エアを供給する霧化用エア供給系4とを備えている。塗装機2は、塗料供給系3から供給された塗料10を噴出すると共に、この噴出した塗料10に霧化用エア供給系4から供給された霧化用エアを当てて塗料10を霧化する。このように塗装機2によって霧化された塗料10が化粧板6に吹き付けられることで、化粧板6が塗装される。
【0018】
塗料供給系3は、塗料源30、塗料供給路31、戻路32、ポンプ33、サージタンク34、ラインフィルター35、レギュレーター36、三方弁37及び流量計38を有している。塗料源30は、塗料10を貯留するタンク又は容器等である。本実施形態では、塗料10として、有機エナメル塗料を希釈した塗料が用いられる。塗料10の原料は、有機エナメル塗料に限定されず、無機エナメル塗料又はクリア塗料等であってもよい。
【0019】
塗料10は、例えば、有機エナメル塗料を水や有機溶媒で希釈することで得られる。塗料10の希釈率は、霧化した塗料10が塗装機2に付着することを抑制するため、40%以上であることが好ましいが、40%未満であってもよい。
【0020】
塗料10には、骨材が含まれてもよい。骨材は、例えば、扁平マイカ又は色砂などである。骨材の粒径は、0.5mm以上2mm以下であることが好ましい。また、骨材は、ベース塗料(希釈前の塗料)に対して、2質量%以下の範囲で添加することが好ましい。なお、骨材の種類及び粒径は限定されず、また、塗料に対する骨材の添加量も限定されない。また、塗料10には、骨材が含まれなくてもよい。
【0021】
塗料供給路31は、塗料源30と塗装機2とを接続している。塗料供給路31には、ポンプ33、サージタンク34、ラインフィルター35、レギュレーター36及び流量計38が設けられている。ポンプ33は、塗料源30に貯留された塗料10を塗装機2に供給する。ポンプ33としては、例えば、ダイヤフラムポンプが用いられる。
【0022】
サージタンク34は、ポンプ33よりも下流に位置している。サージタンク34は、塗料10を貯留することで、ポンプ33の駆動によって生じる塗料10の脈動がサージタンク34の下流側に伝わることを抑制する。これにより、塗装機2から噴出する塗料10が少量であっても、良好な塗装を実現できる。
【0023】
ラインフィルター35は、サージタンク34の下流に位置している。ラインフィルター35は、塗料10に含まれる不純物を除去する。レギュレーター36は、ラインフィルター35よりも下流に位置しており、ポンプ33から圧送された塗料10の圧力を安定させる。流量計38は、レギュレーター36よりも下流に位置しており、塗料供給路31を流れる塗料10の流量を計測する。
【0024】
戻路32は、塗料供給路31におけるレギュレーター36よりも下流でかつ流量計38よりも上流の箇所と、塗料源30とを接続している。三方弁37は、塗料供給路31と戻路32との接続部分に設けられており、ポンプ33から供給された塗料10の流れを、塗装機2側(下流の塗料供給路31側)と戻路32側とに切り換える。ポンプ33を駆動し、三方弁37を塗装機2側に切り換えることで、塗料源30に貯留された塗料10が塗装機2に供給される。ポンプ33を駆動し、三方弁37を戻路32側に切り換えることで、塗料源30に貯留された塗料10は、塗料供給路31における三方弁37よりも上流側の部分及び戻路32において循環する。
【0025】
霧化用エア供給系4は、空気圧源40、霧化用エア供給路41、レギュレーター42、流量計43及び逆止弁44を有している。空気圧源40は、例えば、コンプレッサー又は圧縮空気ボンベ等である。霧化用エア供給路41は、空気圧源40と塗装機2とを接続している。空気圧源40の圧縮空気は、霧化用エアとして、霧化用エア供給路41に供給され、塗装機2に供給される。
【0026】
霧化用エア供給路41には、レギュレーター42、流量計43及び逆止弁44が設けられている。レギュレーター42は、空気圧源40から圧送された霧化用エアの圧力を安定させる。流量計43は、レギュレーター36よりも下流に位置しており、霧化用エア供給路41を流れる霧化用エアの流量を測定する。逆止弁44は、流量計43よりも下流に位置しており、霧化用エア供給路41におけるエアの逆流を抑制する。なお、霧化用エア供給系4の構成は、適宜変更可能である。
【0027】
本実施形態の塗装機2は、噴出した塗料10のパターン(被塗物に塗布されたときの形状)を調整するためのパターン調整用エアを噴出可能である。塗装システム1は、塗装機2にパターン調整用エアを供給するパターン調整用エア供給系5を更に備えている。
【0028】
パターン調整用エア供給系5は、空気圧源50、パターン調整用エア供給路51、レギュレーター52、流量計53及び逆止弁54を有している。空気圧源50は、例えば、コンプレッサー又は圧縮空気ボンベ等である。パターン調整用エア供給路51は、空気圧源50と塗装機2とを接続している。空気圧源50の圧縮空気は、パターン調整用エアとしてパターン調整用エア供給路51に供給され、塗装機2に供給される。
【0029】
パターン調整用エア供給路51には、レギュレーター52、流量計53及び逆止弁54が設けられている。レギュレーター52は、空気圧源50から圧送されたパターン調整用エアの圧力を安定させる。流量計53は、レギュレーター52よりも下流に位置しており、パターン調整用エア供給路51を流れるパターン調整用エアの流量を測定する。逆止弁54は、流量計53よりも下流に位置しており、パターン調整用エア供給路51におけるエアの逆流を防止する。なお、パターン調整用エア供給系5の構成は、適宜変更可能である。
【0030】
塗装機2は、圧送式のスプレーガンであり、自動塗装機又は塗装ロボット等に搭載され、操作信号に基づいて作動する自動スプレーガンである。なお。塗装機2は、自動スプレーガンに限定されず、ハンドスプレーガンであってもよい。
【0031】
塗装機2は、
図4に示すノズル20を有している。ノズル20は、塗料噴出口200を有している。塗料噴出口200は、中心軸方向がノズル20の軸方向と平行な孔であり、ノズル20の先端面において開口している。塗料噴出口200は、塗料供給系3から塗装機2に供給された液体の塗料10をノズル20の軸方向と略平行な方向に噴出する。
【0032】
ノズル20は、複数の霧化用エア噴出口211を更に有している。複数の霧化用エア噴出口211は、ノズル20の軸方向に見て、塗料噴出口200の周囲に位置している。各霧化用エア噴出口211は、ノズル20の先端部に形成された孔であり、ノズル20の先端面(ノズル20と反対側の面)において開口している。なお、ノズル20が有する霧化用エア噴出口211の数、位置又は形状等は限定されない。
【0033】
各霧化用エア噴出口211は、霧化用エア供給系4から塗装機2に供給された霧化用エアを噴出する。各霧化用エア噴出口211から霧化用エアを噴出する方向は、噴出した霧化用エアが塗料噴出口200から噴出した塗料10に外側から当たるように、塗料噴出口200から塗料10を噴出する方向に対して傾斜している。
【0034】
ノズル20は、複数のパターン調整用エア噴出口212を更に有している。複数のパターン調整用エア噴出口212は、ノズル20の軸方向に見て、複数の霧化用エア噴出口211の周囲に位置している。各パターン調整用エア噴出口212は、ノズル20の先端面において開口している。各パターン調整用エア噴出口212は、パターン調整用エア供給系5から塗装機2に供給されたパターン調整用エアを噴出する。
【0035】
ノズル20の先端面において複数の霧化用エア噴出口211の周囲に位置する部分には、対向する一対の突出部213が形成されている。本実施形態では、各突出部213にパターン調整用エア噴出口212が形成されている。
【0036】
各パターン調整用エア噴出口212からパターン調整用エアを噴出する方向は、パターン調整用エアによって霧化された塗料10に外側から当たるように、塗料噴出口200から塗料10を噴出する方向に対して傾斜している。なお、ノズル20が有するパターン調整用エア噴出口212の数、位置又は形状等は、限定されない。また、ノズル20の形状等も適宜変更可能である。
【0037】
図示は省略するが、塗装機2は、塗料噴出口200から噴出する塗料10の流量、複数の霧化用エア噴出口211から噴出する霧化用エアの流量及び複数のパターン調整用エア噴出口212から噴出するパターン調整用エアの流量々を調整する調整器を有している。
【0038】
空気圧源40,50の加圧空気の圧力及びノズル20の形状等は、各パターン調整用エア噴出口212から噴出されるパターン調整用エアの圧力が、各霧化用エア噴出口211から噴出される霧化用エアの圧力よりも大きくなり、かつ、各パターン調整用エア噴出口212から噴出されるパターン調整用エアの流量が、各霧化用エア噴出口211から噴出される霧化用エアの流量よりも大きくなるように設定されている。
【0039】
なお、各パターン調整用エア噴出口212から噴出されるパターン調整用エアの圧力は、各霧化用エア噴出口211から噴出される霧化用エアの圧力よりも小さくてもよいし、同じであってもよい。また、各パターン調整用エア噴出口212から噴出されるパターン調整用エアの流量は、各霧化用エア噴出口211から噴出される霧化用エアの流量よりも小さくてもよいし、同じであってもよい。
【0040】
図1に示す塗装システム1を用いて化粧板6の塗装を行う場合、ポンプ33を駆動し、三方弁37を塗装機2側に切り換えて塗装機2の塗料噴出口200から塗料10を噴出すると共に、霧化用エア供給系4から塗装機2に供給された霧化用エアを塗装機2の複数の霧化用エア噴出口211から噴出する。このとき、パターン調整用エア供給系5から塗装機2に供給されたパターン調整用エアを噴出することで、塗装機2から噴出した塗料10のパターンを調整することができる。塗装機2から噴出した塗料10のパターンは、パターン調整用エアにより、例えば、円形状や楕円形状にしたり、パターンの幅を変更したりすることができる。
【0041】
塗装機2は、例えば、コンベアによって搬送中の化粧板6の搬送方向と交差する水平方向に移動しつつ、霧化した塗料10を化粧板6の表面に吹き付ける。これにより、被塗物である化粧板6の表面に、微粒化した塗料10からなるドット60が多数塗布される。
【0042】
以下、塗装システム1において、塗料噴出口200から噴出した塗料10が塗装機2に付着することを抑制するための構成について詳述する。
【0043】
霧化用エア供給系4は、霧化用エア噴出口211から噴出される霧化用エアに水を供給するための水供給部45を更に有している。以下、水供給部45を第1水供給部45という。第1水供給部45は、水源450、水供給路451、注入ポンプ452及び逆止弁453を有している。以下、水源450、水供給路451及び注入ポンプ452を、それぞれ、第1水源450、第1水供給路451及び第1注入ポンプ452という。
【0044】
第1水源450は、水を貯留するタンク又は容器等である。第1水供給路451は、霧化用エア供給路41における逆止弁44よりも下流の箇所と、第1水源450とを接続している。第1水供給路451には、第1注入ポンプ452及び逆止弁453が設けられている。第1注入ポンプ452は、第1水源450に貯留された水を霧化用エア供給路41に供給する。逆止弁453は、第1水供給路451における水の逆流を抑制する。
【0045】
第1水供給部45は、前述した化粧板6の塗装時において、第1注入ポンプ452を駆動することで、第1水源450に貯留された水を霧化用エア供給路41に供給する。これにより、霧化用エア供給路41を流れる霧化用エアに水が混合され、液体の水を含む霧化用エアが複数の霧化用エア噴出口211から噴出する。このようにして各霧化用エア噴出口211から噴出した霧化用エアに含まれる水は、
図4に示す霧化用エア噴出口211及びパターン調整用エア噴出口212が形成されたノズル20の先端面や、塗料噴出口200に付着する。このため、塗料噴出口200から噴出した後の塗料10が、ノズル20の先端面や塗料噴出口200等に付着し難くなり、ノズル20の先端面等に付着した塗料10によって、霧化用エア噴出口211からの霧化用エアの噴出が妨げられたり、塗料噴出口200からの塗料10の噴出が妨げられたりすることが抑制される。また、ノズル20の先端面等に付着した塗料10が乾燥して硬化すると、この塗料10が霧化用エア等によって吹き飛ばされて化粧板6に付着する可能性があるが、これを抑制することもできる。また、塗料10に骨材が含まれている場合、塗料噴出口200で塗料の詰まりが起きる可能性があるが、塗料噴出口200に水を供給することで塗料10の流動性が高まり、塗料詰まりを抑制することが可能である。したがって、本実施形態の塗装システム1では、長時間連続して適切な塗装を行うことができる。
【0046】
図1に示すように、パターン調整用エア供給系5は、パターン調整用エア噴出口212から噴出されるパターン調整用エアに水を供給するための水供給部55を更に有している。以下、水供給部55を第2水供給部55という。
【0047】
第2水供給部55は、第1水供給部45と同様の構成を有している。第2水供給部55は、水源550、水供給路551、注入ポンプ552及び逆止弁553有している。以下、水源450、水供給路551及び注入ポンプ552を、それぞれ、第2水源550、第2水供給路551及び第2注入ポンプ552という。
【0048】
第2水源550は、水を貯留するタンク又は容器等である。第2水供給路551は、パターン調整用エア供給路51における逆止弁54よりも下流の箇所と、第2水源550とを接続している。第2水供給路551には、第2注入ポンプ552及び逆止弁553が設けられている。第2注入ポンプ552は、第2水源550に貯留された水をパターン調整用エア供給路51に供給する。逆止弁553は、第2水供給路551における水の逆流を抑制する。
【0049】
第2水供給部55は、前述した化粧板6の塗装時において、第2注入ポンプ552を駆動することで、第2水源550に貯留された水を、パターン調整用エア供給路51に供給する。これにより、パターン調整用エア供給路51を流れるパターン調整用エアに水が混合され、液体の水を含むパターン調整用エアが複数のパターン調整用エア噴出口212から噴出する。このようにして各パターン調整用エア噴出口212から噴出したパターン調整用エアに含まれる水は、霧化用エアに含まれる水と同様に、ノズル20の先端面や、塗料噴出口200等に付着する。このため、塗料噴出口200から噴出した後の塗料10は、ノズル20の先端面等に一層付着し難くなる。
【0050】
第2水供給部55からパターン調整用エア供給路51に供給される水の流量は、第1水供給部45から霧化用エア供給路41に供給される水の流量と同じである。なお、第2水供給部55からパターン調整用エア供給路51に供給される水の流量は、第1水供給部45から霧化用エア供給路41に供給される水の流量よりも少なくてもよいし、多くてもよい。
【0051】
パターン調整用エア噴出口212は、パターン調整用エアを霧化用エアよりも大きな圧力で噴出する。このため、パターン調整用エア噴出口212が霧化用エア噴出口211と比較して塗料噴出口200から離れて位置するにもかかわらず、パターン調整用エアに含まれる水は、塗料噴出口200の近傍部分にまで運ばれる。したがって、ノズル20の先端面等に付着した塗料10によって、塗料噴出口200からの塗料10の噴出が妨げられたり、霧化用エア噴出口211からの霧化用エアの噴出が妨げられたりすることが一層抑制される。
【0052】
なお、パターン調整用エア噴出口212は、パターン調整用エアを、霧化用エアと同じ圧力で噴出してもよいし、霧化用エアよりも小さい圧力で噴出してもよい。また、本実施形態の塗装システム1は、化粧板6の塗装時において第1注入ポンプ452と第2注入ポンプ552とを同時に駆動することで、霧化用エアとパターン調整用エアとの両者に水を供給するが、霧化用エアにのみ水を供給してもよい。すなわち、塗装システム1は、霧化用エア噴出口211から噴出する霧化用エア及びパターン調整用エア噴出口212から噴出するパターン調整用エアのうちの少なくとも霧化用エアに水を供給すればよく、第2水供給部55を備えなくてもよい。
【0053】
(2)具体例
表1及び表2に、本実施形態の塗装システム1を用いてコンベアで搬送中の化粧板6の表面を塗装したときの条件を示す。
【0054】
【0055】
【0056】
表2における塗料10の流量、霧化用エアの流量及びパターン調整用エアの流量は、それぞれ、流量計38、流量計43及び流量計53で測定した。また、塗料供給路31、霧化用エア供給路41及びパターン調整用エア供給路51の各々を構成する配管の各々の外径は、6mmである。
【0057】
本実施形態の塗装システム1では、表2から明らかなように、塗料10の流量を変更することで、化粧板6の表面に、ドット粒径及びドット密度を異ならせて塗装することができた。また、条件1~条件4のいずれの条件でも、化粧板6の表面に、ドットがまばらに散らばった風合のある塗装を行うことができた。なお、
図2は、条件1で塗装を行ったときの化粧板6の表面を示し、
図3は、条件3で塗装を行ったときの化粧板6の表面を示す。
【0058】
表3に化粧板6の表面のベースの色とドット60の色との色差を示す。色差は、隠蔽紙に塗料を塗布し、乾燥後に分光式測色計を用いて測定した。
【0059】
【0060】
(3)比較例及び実施例1~3
表4に、比較例及び実施例1~3の塗装条件を示す。ただし、比較例及び実施例1~3では、表4に示す条件の他は、表2の条件2で塗装を行った。表4における塗料10の粘度は、イワタカップで測定した。表4における連続塗装安定時間は、塗料10がノズル20に付着することによる不具合が生じない状態で、連続して塗装を実施できた時間である。また、水供給路451及び水供給路551の各々を構成する配管の外径は、4mmである。
【0061】
【0062】
霧化調整用エア及びパターン調整用エアのうち、霧化調整用エアにのみ水を混合した実施例1では、霧化調整用エア及びパターン調整用エアのいずれにも水を混合しなかった比較例と比較して、連続塗装安定時間が長くなった。100%の希釈率で希釈した塗料10を用いた実施例2では、50%の希釈率で希釈した塗料10を用いた実施例1と比較して、連続塗装安定時間が長くなった。霧化調整用エア及びパターン調整用エアの両者に水を混合した実施例3では、霧化調整用エア及びパターン調整用エアのうち、霧化調整用エアにのみ水を混合した実施例2と比較して、連続塗装安定時間が長くなった。
【0063】
なお、表2の条件1、条件3及び条件4での塗装は、塗料10の流量が、条件2と異なるが、実施例1~3において条件1、条件3及び条件4で塗装を行った場合も、実施例1~3と同様に、連続塗装時間を長くすることが予想できる。
【0064】
(4)態様
以上の説明から明らかなように、本発明の第1の態様の塗装システム1は、以下に示す構成を有する。塗装システム1は、塗料10を噴出する塗料噴出口200と、塗料噴出口200から噴出した塗料10を霧化するための霧化用エアを噴出する霧化用エア噴出口211とを備える。塗装システム1は、霧化用エア噴出口211から噴出される霧化用エアに水を供給する。
【0065】
この態様によれば、霧化用エア噴出口211から噴出される霧化用エアに水を混合し、この水を塗料噴出口200や霧化用エア噴出口211に付着させることができる。このため、塗料噴出口200や霧化用エア噴出口211には、塗料噴出口200から噴出した塗料10が付着し難くなり、付着した塗料10によって塗料噴出口200からの塗料10の噴出が妨げられたり、霧化用エア噴出口211からの霧化用エアの噴出が妨げられたりすることが抑制され、長時間連続して適切な塗装を行うことができる。
【0066】
第2の態様の塗装システム1は、第1の態様との組み合わせにより実現され得る。第2の態様の塗装システム1は、塗料噴出口200から噴出した塗料10のパターンを調整するためのパターン調整用エアを噴出するパターン調整用エア噴出口212を更に備える。塗装システム1は、パターン調整用エア噴出口212から噴出されるパターン調整用エアに水を供給する。
【0067】
この態様によれば、パターン調整用エア噴出口212から噴出されるパターン調整用エアに水を混合し、この水を塗料噴出口200や霧化用エア噴出口211に付着させることができる。このため、塗料噴出口200や霧化用エア噴出口211には、塗料噴出口200から噴出した塗料10が一層付着し難くなる。
【0068】
第3の態様の塗装システム1は、第1又は第2の態様との組み合わせにより実現され得る。第3の態様では、塗料10に骨材が含まれる。
【0069】
この態様によれば、骨材を含んだ塗料10を用いて、被塗物を塗装できる。また、塗料10に骨材が含まれている場合、塗料噴出口200で塗料の詰まりが起きる可能性があるが、塗料噴出口200に水を供給することで塗料10の流動性が高まり、塗料詰まりを抑制することができる。
【0070】
第4の態様の化粧板6の塗装方法は、第1~第3のいずれか一つの態様の塗装システム1を用いた化粧板6の塗装方法であって、以下に示す構成を有する。化粧板6の塗装方法では、塗料噴出口200から噴出した塗料10からなるドット60を、最大粒径が2.0mm以上4.5mm以下にあり、かつ、粒径1mm以上のドット60の密度が30個/100cm2以上250個/100cm2以下になるように化粧板6に吹き付ける。
【0071】
この態様によれば、第1~第3のいずれか一つの態様の塗装システム1を利用して、例えば、化粧板6に、ドット60がまばらに散らばった風合のある塗装を長時間連続して行うことができる。
【符号の説明】
【0072】
1 塗装システム
10 塗料
200 塗料噴出口
211 霧化用エア噴出口
212 パターン調整用エア噴出口
60 ドット