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特許7590829ゴム組成物及びその製造方法、並びにそれを用いたゴム製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】ゴム組成物及びその製造方法、並びにそれを用いたゴム製品
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/26 20060101AFI20241120BHJP
   C08L 91/00 20060101ALI20241120BHJP
   C08F 8/46 20060101ALI20241120BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
C08L23/26
C08L91/00
C08F8/46
C08J3/20 Z CES
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020135003
(22)【出願日】2020-08-07
(65)【公開番号】P2022030774
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2023-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000005061
【氏名又は名称】バンドー化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中山 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】松田 和朗
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】特公平06-049813(JP,B2)
【文献】特開2004-269608(JP,A)
【文献】国際公開第2020/122054(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/074070(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 - 101/14
C08K 3/00 - 13/08
C08F 8/46
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボン酸変性エチレン-α-オレフィンエラストマーとカルボキシル基含有オイルとを含むゴム組成物であって、
前記カルボキシル基含有オイルがカルボン酸変性オイルを含み、
前記カルボン酸変性オイルにおける変性前のオイルがパラフィンオイル及びナフテンオイルを含むゴム組成物
【請求項2】
請求項に記載されたゴム組成物において、
前記カルボン酸変性オイルが、無水マレイン酸変性オイル又はマレイン酸変性オイルを含むゴム組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されたゴム組成物において、
前記変性前のオイルが、アロマオイルを更に含むゴム組成物。
【請求項4】
請求項1乃至のいずれかに記載されたゴム組成物において、
前記カルボン酸変性エチレン-α-オレフィンエラストマーが、無水マレイン酸変性エチレン-α-オレフィンエラストマー又はマレイン酸変性エチレン-α-オレフィンエラストマーを含むゴム組成物。
【請求項5】
請求項1乃至のいずれかに記載されたゴム組成物において、
カルボジイミドを更に含むゴム組成物。
【請求項6】
請求項1乃至のいずれかに記載されたゴム組成物において、
カルボン酸変性されていないエチレン-α-オレフィンエラストマーを更に含むゴム組成物。
【請求項7】
請求項1乃至のいずれかに記載されたゴム組成物で製品本体が形成されたゴム製品。
【請求項8】
エチレン-α-オレフィンエラストマーをカルボン酸変性させてカルボン酸変性エチレン-α-オレフィンエラストマーを調製する工程と、
前記調製したカルボン酸変性エチレン-α-オレフィンエラストマーとカルボキシル基含有オイルとを混練する工程と、
を含み、
前記カルボキシル基含有オイルがカルボン酸変性オイルを含み、
前記カルボン酸変性オイルにおける変性前のオイルがパラフィンオイル及びナフテンオイルを含むゴム組成物の製造方法。
【請求項9】
請求項に記載されたゴム組成物の製造方法において、
オイルをカルボン酸変性させて前記カルボキシル基含有オイルに含まれることとなるカルボン酸変性オイルを調製する工程を更に含むゴム組成物の製造方法。
【請求項10】
請求項に記載されたゴム組成物の製造方法において、
前記エチレン-α-オレフィンエラストマーと前記オイルとを混練しながら、それらをカルボン酸変性させることにより、前記カルボン酸変性エチレン-α-オレフィンエラストマーを調製する工程及び前記カルボン酸変性オイルを調製する工程を単一工程で同時に行うゴム組成物の製造方法。
【請求項11】
請求項に記載されたゴム組成物の製造方法において、
前記カルボン酸変性エチレン-α-オレフィンエラストマーを調製する工程及び前記カルボン酸変性オイルを調製する工程をそれぞれ相互に独立した工程で別々に行うゴム組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物及びその製造方法、並びにそれを用いたゴム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
カルボン酸を用いてエチレン-α-オレフィンエラストマーを変性させることが知られている。例えば、特許文献1には、エチレンプロピレンコポリマー(EPM)に無水マレイン酸と有機過酸化物を添加し、有機過酸化物の分解温度まで昇温させることで、EPMに無水マレイン酸をグラフトさせることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭62-41245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、レゾルシン・ホルムアルデヒド・ラテックス(RFL)接着剤との接着性に優れるゴム組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、カルボン酸変性エチレン-α-オレフィンエラストマーとカルボキシル基含有オイルとを含むゴム組成物であって、前記カルボキシル基含有オイルがカルボン酸変性オイルを含み、前記カルボン酸変性オイルにおける変性前のオイルがパラフィンオイル及びナフテンオイルを含む
【0006】
本発明は、本発明に係るゴム組成物で製品本体が形成されたゴム製品である。
【0007】
本発明は、エチレン-α-オレフィンエラストマーをカルボン酸変性させてカルボン酸変性エチレン-α-オレフィンエラストマーを調製する工程と、前記調製したカルボン酸変性エチレン-α-オレフィンエラストマーとカルボキシル基含有オイルとを混練する工程と、を含み、前記カルボキシル基含有オイルがカルボン酸変性オイルを含み、前記カルボン酸変性オイルにおける変性前のオイルがパラフィンオイル及びナフテンオイルを含むゴム組成物の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、カルボン酸変性エチレン-α-オレフィンエラストマーとカルボキシル基含有オイルとを含むことにより、レゾルシン・ホルムアルデヒド・ラテックス(RFL)接着剤との優れた接着性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】接着試験用試験片の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について詳細に説明する。
【0011】
実施形態に係るゴム組成物は、ゴム成分を含有する。ゴム成分は、その主成分としてエチレン-α-オレフィンエラストマーを含む。ゴム成分におけるエチレン-α-オレフィンエラストマーの含有量は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、更に好ましくは100質量%である。なお、ゴム成分は、エチレン-α-オレフィンエラストマー以外に、クロロプレンゴム(CR)、水素化ニトリルゴム(H-NBR)等を含んでいてもよい。
【0012】
ゴム成分に含まれるエチレン-α-オレフィンエラストマーは、その一部又は全部がカルボン酸変性エチレン-α-オレフィンエラストマーである。以下、カルボン酸変性エチレン-α-オレフィンエラストマーにおける変性前のエチレン-α-オレフィンエラストマーを「エラストマーA」という。
【0013】
エラストマーAとしては、例えば、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)、エチレンプロピレンコポリマー(EPM)、エチレンブテンコポリマー(EBM)、エチレンオクテンコポリマー(EOM)等が挙げられる。エラストマーAは、これらのうち1種又は2種以上を含むことが好ましく、EPDM及びEPMのうち少なくとも一方を含むことがより好ましい。
【0014】
エラストマーAのエチレン含量は、好ましくは40質量%以上85質量%以下、より好ましくは50質量%以上80質量%以下である。
【0015】
エラストマーAがEPDMの場合、そのジエン成分としては、例えば、エチリデンノボルネン(ENB)、ジシクロペンタジエン(DCPD)、1,4-ヘキサジエン等が挙げられる。ジエン成分は、これらのうちのエチリデンノボルネン(ENB)又はジシクロペンタジエン(DCPD)が好ましい。ジエン成分がENBの場合、EPDMのENB含量は、好ましくは0.5質量%以上20.0質量%以下、より好ましくは1.5質量%以上15.0質量%以下である。また、ジエン成分がDCPDの場合、EPDMのDCPD含量は、好ましくは0.5質量%以上10.0質量%以下、より好ましくは1.5質量%以上8.0質量%以下である。
【0016】
エラストマーAのカルボン酸変性に用いられるカルボン酸としては、例えば、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、無水イタコン酸、イタコン酸、オレイン酸等が挙げられる。カルボン酸は、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましく、無水マレイン酸及びマレイン酸のうちの少なくとも一方を含むことがより好ましい。カルボン酸変性エチレン-α-オレフィンエラストマーにおけるカルボン酸の含有量は、エラストマーA100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上5.0質量部以下、より好ましくは0.05質量部以上3.0質量部以下である。
【0017】
カルボン酸変性エチレン-α-オレフィンエラストマーは、エラストマーAとカルボン酸と有機過酸化物とを所定温度で混練することにより得ることができる。このとき、有機過酸化物の作用により、エラストマーAの分子鎖にラジカルが生成し、そのラジカルにカルボン酸がグラフトする。市販の有機過酸化物としては、例えば、化薬アクゾ社製のパーカドックス16等が挙げられる。このときの有機過酸化物の配合量は、エラストマーA100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上5.0質量部以下、より好ましくは0.05質量部以上3.0質量部以下である。
【0018】
ゴム成分に含まれるエチレン-α-オレフィンエラストマーは、その一部がカルボン酸変性エチレン-α-オレフィンエラストマーであり、残部がカルボン酸変性されていないエチレン-α-オレフィンエラストマー(以下「エラストマーB」という。)であってもよい。
【0019】
エラストマーBとしては、エラストマーAと同様、例えば、EPDM、EPM、EBM、EOM等が挙げられる。エラストマーBは、これらのうち1種又は2種以上を含むことが好ましく、EPDM及びEPMのうち少なくとも一方を含むことがより好ましい。エラストマーBは、エラストマーAと同一であることが好ましい。
【0020】
エラストマーBのエチレン含量は、好ましくは40質量%以上85質量%以下、より好ましくは質量50%以上80質量%以下である。エラストマーBのエチレン含量は、エラストマーAのエチレン含量と同一であるか又はエラストマーAのエチレン含量よりも高いことが好ましい。
【0021】
エラストマーBがEPDMの場合、そのジエン成分としては、例えば、ENB、DCPD、1,4-ヘキサジエン等が挙げられる。ジエン成分は、これらのうちのENB又はDCPDが好ましい。ジエン成分がENBの場合、ENB含量は、好ましくは0.5質量%以上20.0質量%以下、より好ましくは1.5質量%以上15.0質量%以下である。また、ジエン成分がDCPDの場合、DCPD含量は、好ましくは0.5質量%以上10.0質量%以下、より好ましくは1.5質量%以上8.0質量%以下である。エラストマーA及びエラストマーBがいずれもEPDMの場合、エラストマーBのジエン含量(ENB含量又はDCPD含量)は、エラストマーAのジエン含量と同一であることが好ましい。
【0022】
ゴム成分におけるエラストマーBの含有量は、エラストマーAの含有量と同一であるか又はエラストマーAの含有量よりも多いことが好ましい。
【0023】
実施形態に係るゴム組成物は、オイル成分を含有する。オイル成分は、その一部又は全部がカルボキシル基含有オイルである。カルボキシル基含有オイルとしては、カルボキシル基を有する油脂及びカルボン酸変性オイルが挙げられる。カルボキシル基含有オイルは、これらのうちの少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0024】
カルボキシル基を有する油脂としては、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、パルミトレイン酸、ペトロセリン酸、エライジン酸、リシノール酸、リノエライジン酸、アラキドン酸、ステアリドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ドコサテトラエン酸、バクセン酸、パウリン酸、エルカ酸、ネルボン酸及びサピエン酸等からなる群より選ばれる1種類以上が挙げられる。また、カルボキシル基を有する油脂が、エラストマーAのカルボン酸変性に用いられるカルボン酸と同一であってもよい。
【0025】
カルボン酸変性オイルにおける変性前のオイル(以下「オイルP」という。)としては、例えば、パラフィンオイル、ナフテンオイル、アロマオイル等が挙げられる。オイルPは、パラフィンオイル、ナフテンオイル、及びアロマオイルのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましく、パラフィンオイル及びナフテンオイルの2種を含むことがより好ましく、3種全てを含むことが更に好ましい。
【0026】
パラフィンオイルは、飽和鎖状化合物のパラフィン系炭化水素を多量に含む。市販のパラフィンオイルとしては、例えば、ダイアナプロセスオイルPW-90(出光興産社製)、ダイアナプロセスオイルPW-380(出光興産社製)等が挙げられる。
【0027】
ナフテンオイルは、1分子中に少なくとも1個の飽和環(ナフテン環)を有する炭化水素のナフテン系炭化水素を多量に含む。市販のナフテンオイルとしては、例えば、ダイアナプロセスオイルNS90S(出光興産社製)、ダイアナプロセスオイルNS100(出光興産社製)等が挙げられる。
【0028】
アロマオイルは、1分子中に少なくとも1個の芳香族環を有する炭化水素の芳香族炭化水素を多量に含む。市販のアロマオイルとしては、例えば、ダイアナプロセスオイルAC-12(出光興産社製)、ダイアナプロセスオイルAC-460(出光興産社製)、ダイアナプロセスオイルAH-16(出光興産社製)等が挙げられる。
【0029】
オイルPがパラフィンオイル及びナフテンオイルの2種を含む場合、パラフィンオイルの含有量は、ナフテンオイルの含有量よりも多いことが好ましい。オイルPに対するパラフィン系炭化水素成分の質量比は、好ましくは60%以上95%以下、より好ましくは70%以上90%以下である。オイルPに対するナフテン系炭化水素成分の質量比は、好ましくは5%以上40%以下、より好ましくは10%以上30%以下である。なお、オイルPに対する各炭化水素成分の質量比(%)は、ASTM D3238に基づいて測定される(以下、同じ)。
【0030】
オイルPがパラフィンオイル、ナフテンオイル、及びアロマオイルの3種を含む場合、パラフィンオイルの含有量は、ナフテンオイルの含有量よりも多いことが好ましく、また、ナフテンオイルの含有量は、アロマオイルの含有量よりも多いことが好ましい。オイルPに対するパラフィン系炭化水素成分の質量比は、好ましくは55%以上90%以下、より好ましくは60%以上85%以下である。オイルPに対するナフテン系炭化水素成分の質量比は、好ましくは9.9%以上38%以下、より好ましくは14%以上34%以下である。オイルPに対する芳香族炭化水素成分の質量比は、好ましくは0.1%以上7%以下、より好ましくは1%以上6%以下である。
【0031】
オイルPのカルボン酸変性に用いられるカルボン酸としては、例えば、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、無水イタコン酸、イタコン酸等が挙げられる。カルボン酸は、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましく、無水マレイン酸変性オイル及びマレイン酸変性オイルのうちの少なくとも一方を含むことがより好ましい。オイルPのカルボン酸変性に用いられるカルボン酸は、エラストマーAのカルボン酸変性に用いられるカルボン酸と同一であることが好ましい。カルボン酸変性オイルにおけるカルボン酸の含有量は、オイルP100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上5.0質量部以下、より好ましくは0.05質量部以上3.0質量部以下である。
【0032】
カルボン酸変性オイルは、オイルPとカルボン酸と有機過酸化物とを所定温度で混合することにより得ることができる。このとき、有機過酸化物の作用により、オイルPの分子にラジカルが生成し、そのラジカルにカルボン酸が結合する。市販の有機過酸化物としては、例えば、化薬アクゾ社製のパーカドックス16等が挙げられる。このときの有機過酸化物の配合量は、オイルP100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上5.0質量部以下、より好ましくは0.05質量部以上3.0質量部以下である。
【0033】
オイル成分は、その一部がカルボキシル基含有オイルであり、残部がカルボキシル基を含有しないオイル(以下「オイルQ」という。)であってもよい。オイルQとしては、オイルPと同様、例えば、パラフィンオイル、ナフテンオイル、アロマオイル等が挙げられる。オイルQは、パラフィンオイル、ナフテンオイル、及びアロマオイルのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましい。
【0034】
この場合、オイル成分におけるオイルQの含有量は、オイルPの含有量よりも少ないことが好ましい。オイルQの含有量のオイルPの含有量に対する比は、好ましくは0.01以上0.5以下、より好ましくは0.05以上0.4以下である。
【0035】
実施形態に係るゴム組成物におけるオイル成分の含有量は、RFL接着剤との接着性を高める観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上50.0質量部以下、より好ましくは1.0質量部以上30.0質量部以下である。カルボキシル基含有オイルの含有量は、RFL接着剤との接着性を高める観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.25質量部以上25.0質量部以下、より好ましくは0.5質量部以上15.0質量部以下である。
【0036】
ここで、「RFL接着剤」とは、ポリエステル等の繊維部材とゴムとを接着させるものである。RFL接着剤は、繊維部材を、レゾルシン(R)とホルマリン(F)との初期縮合物(RF)とラテックス(L)とを混合したRFL水溶液に浸漬した後に加熱することにより、繊維部材の表面に付着する。このRFL接着剤を介して繊維部材とゴムとが接着される。なお、本明細書において、RFL接着剤とは、実施形態に係るゴム組成物が接着する接着対象物をいう。
【0037】
RFL水溶液におけるレゾルシン(R)のホルマリン(F)に対するモル比(R/F)は、例えば1/2以上1/1以下である。RFL水溶液におけるレゾルシン(R)とホルマリン(F)との初期縮合物(RF)のラテックス(L)に対する固形分質量比(RF/L)は、例えば1/20以上1/5以下である。RFL水溶液の固形分濃度は、例えば3質量%以上30質量%以下である。
【0038】
ラテックス(L)としては、例えば、ビニルピリジン・スチレンブタジエン共重合体ゴム(VP-SBR)ラテックス、クロロプレンゴム(CR)ラテックス、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)ラテックス、2,3-ジクロロブタジエン重合体ゴム(2,3-DCB)ラテックス、ニトリルブタジエンゴム(NBR)ラテックス等が挙げられる。ラテックス(L)は、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましく、実施形態に係るゴム組成物とRFL接着剤との接着性を高める観点から、ビニルピリジン・スチレンブタジエン共重合体ゴム(VP-SBR)ラテックスを含むことがより好ましい。
【0039】
繊維部材のRFL水溶液への浸漬時間は、例えば0.5秒以上10秒以下である。RFL水溶液への浸漬後の加熱温度(加熱炉設定温度)は、例えば200℃以上280℃以下であり、加熱時間は、例えば30秒以上600秒以下である。
【0040】
実施形態に係るゴム組成物では、ゴム成分のゴム分子間が架橋している。この架橋は、架橋剤として有機過酸化物が用いられていてもよく、また、架橋剤として硫黄が用いられていてもよく、更に、それらが併用されていてもよい。実施形態に係るゴム組成物は、RFL接着剤との接着性を高める観点から、これらのうち架橋剤として少なくとも有機過酸化物を用いられていることが好ましい。その場合、架橋前の未架橋ゴム組成物における有機過酸化物の配合量は、同様の観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上8.0質量部以下、より好ましくは1.0質量部以上6.0質量部以下である。また、ゴム成分の架橋に用いられる有機過酸化物は、エラストマーA又はオイルPのカルボン酸変性に用いられる有機過酸化物と異なることが好ましい。ゴム成分の架橋に用いられる有機過酸化物は、エラストマーA又はオイルPのカルボン酸変性に用いられる有機過酸化物よりも分解温度が高いことが好ましい。
【0041】
実施形態に係るゴム組成物は、RFL接着剤との接着性を高める観点から、ゴム配合剤として、カルボジイミドを更に含むことが好ましい。カルボジイミドには、分子内に1個のカルボジイミド基を有するモノカルボジイミド及び分子内に2個以上のカルボジイミド基を有するポリカルボジイミドがある。
【0042】
モノカルボジイミドとしては、例えば、ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、ジ-β-ナフチルカルボジイミド、N,N′-ジイソプロピルカルボジイミド、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド等が挙げられる。
【0043】
ポリカルボジイミドとしては、例えば、ポリ(1,6-ヘキサメチレンカルボジイミド)、ポリ(4,4′-メチレンビスシクロヘキシルカルボジイミド)、ポリ(1,3-シクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(1,4-シクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(4,4′-ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)等が挙げられる。
【0044】
カルボジイミドは、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましく、RFL接着剤との接着性を高める観点から、モノカルボジイミドを含むことが好ましく、ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)カルボジイミドを含むことが更に好ましい。
【0045】
実施形態に係るゴム組成物におけるカルボジイミドの含有量は、RFL接着剤との接着性を高める観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.25質量部以上25.0質量部以下、より好ましくは0.5質量部以上15.0質量部以下である。
【0046】
実施形態に係るゴム組成物は、カルボジイミド以外にも、ゴム配合剤として、カーボンブラックや短繊維などの補強材、加工助剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、可塑剤等を含有していてもよい。
【0047】
以上の構成の実施形態に係るゴム組成物によれば、RFL接着剤との優れた接着性を得ることができる。これは、実施形態に係るゴム組成物がカルボキシル基含有オイルを含むことにより、RFL水溶液に含まれるラテックスと実施形態に係るゴム組成物との親和性が良くなるためであると考えられる。
【0048】
以上の実施形態に係るゴム組成物は、例えば、伝動ベルト、コンベアベルト、タイヤ、ホース等のゴム製品のRFL接着剤を介して繊維部材と複合した製品本体を形成する材料として用いることができる。
【0049】
次に、実施形態に係るゴム組成物の製造方法について説明する。
【0050】
[製造方法例1]
製造方法例1では、カルボキシル基含有オイルとしてカルボキシル基を有する油脂を用いる。
【0051】
まず、バンバリーミキサー等の混練機にエラストマーAを投入して素練りし、そこにカルボン酸及び有機過酸化物を投入して昇温することにより、エラストマーAのカルボン酸変性処理を行う。このカルボン酸変性処理の処理温度は、好ましくは60℃以上130℃以下である。
【0052】
次いで、混練機から混練物を排出して冷却した後、未反応のカルボン酸を昇華させて除去することにより、カルボン酸変性エチレン-α-オレフィンエラストマーを得る。
【0053】
続いて、バンバリーミキサー等の混練機に、得られたカルボン酸変性エチレン-α-オレフィンエラストマーを含むゴム成分を投入して素練りし、そこにカルボキシル基を有する油脂及び架橋剤を含む各種ゴム配合剤を投入して混練する。
【0054】
次いで、混練機から混練物を排出して冷却することにより、未架橋ゴム組成物を得る。
【0055】
そして、得られた未架橋ゴム組成物を所定温度及び所定圧力の条件下に所定時間保持してゴム成分を架橋させることにより、実施形態に係るゴム組成物を得る。
【0056】
なお、カルボキシル基を有する油脂がエラストマーAのカルボン酸変性に用いられるカルボン酸と同一である場合には、エラストマーAにカルボン酸としてカルボキシル基を有する油脂を過剰に投入して、カルボン酸変性エチレン-α-オレフィンエラストマーとカルボキシル基を有する油脂との混合物を得ることができるため、得られたカルボン酸変性エチレン-α-オレフィンエラストマーに更にカルボキシル基を有する油脂を投入する工程は不要である。
【0057】
[製造方法例2]
製造方法例2では、カルボキシル基含有オイルとしてカルボン酸変性オイルを用いる。このとき、カルボン酸変性エチレン-α-オレフィンエラストマーを調製する工程とカルボン酸変性オイルを調製する工程を単一工程で同時に行う。
【0058】
まず、バンバリーミキサー等の混練機にエラストマーAを投入して素練りし、そこにオイルPを投入して混練する。
【0059】
得られた混練物に、カルボン酸及び有機過酸化物を投入して昇温することにより、エラストマーA及びオイルPのカルボン酸変性処理を行う。このカルボン酸変性処理の処理温度は、好ましくは60℃以上190℃以下である。
【0060】
次いで、混練機から混練物を排出して冷却した後、未反応のカルボン酸を昇華させて除去することにより、カルボン酸変性エチレン-α-オレフィンエラストマー及びカルボン酸変性オイルを得る。
【0061】
続いて、バンバリーミキサー等の混練機に、得られたカルボン酸変性エチレン-α-オレフィンエラストマー及びカルボン酸変性オイルを含むゴム成分を投入して混練し、そこに架橋剤を含む各種ゴム配合剤を投入して更に混練する。
【0062】
以降は、製造方法例1と同一である。
【0063】
[製造方法例3]
製造方法例3では、カルボキシル基含有オイルとしてカルボン酸変性オイルを用いる。このとき、カルボン酸変性エチレン-α-オレフィンエラストマーを調製する工程とカルボン酸変性オイルを調製する工程をそれぞれ相互に独立した工程で別々に行う。
【0064】
まず、バンバリーミキサー等の混練機にエラストマーAを投入して素練りし、そこにカルボン酸及び有機過酸化物を投入して昇温することにより、エラストマーAのカルボン酸変性処理を行う。このカルボン酸変性処理の処理温度は、好ましくは60℃以上130℃以下である。
【0065】
次いで、混練機から混練物を排出して冷却した後、未反応のカルボン酸を昇華させて除去することにより、カルボン酸変性エチレン-α-オレフィンエラストマーを得る。
【0066】
また、サンプル管等に、オイルP、カルボン酸及び有機過酸化物を投入して混合し、昇温することにより、オイルPのカルボン酸変性処理を行う。このカルボン酸変性処理の処理温度は、好ましくは60℃以上130℃以下である。これにより、カルボン酸変性オイルを得る。
【0067】
続いて、バンバリーミキサー等の混練機に、得られたカルボン酸変性エチレン-α-オレフィンエラストマー及び得られたカルボン酸変性オイルを含むゴム成分を投入して混練し、そこに架橋剤を含む各種ゴム配合剤を投入して更に混練する。
【0068】
以降は、製造方法例1と同一である。
【実施例
【0069】
[試験評価1]
実施例1-1乃至1-7及び比較例1-1の未架橋ゴム組成物を作製した。それぞれの構成については表1にも示す。
【0070】
<実施例1-1>
まず、オープンロールにEPM(EP11 JSR社製、エチレン含量52質量%)100質量部を投入して素練りし、そこにオイル(1)10質量部を投入して混練した。このオイル(1)には、パラフィンオイル、ナフテンオイル及びアロマオイルが含まれており、パラフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素及び芳香族炭化水素が、73:23:4の質量比で含まれている。
【0071】
次いで、バンバリーミキサーに得られた混練物を投入し、ローターの回転数を30rpmとして、1分間混練した後、EPM100質量部に対して無水マレイン酸0.8質量部を投入し、1分間混練した。更に、EPM100質量部に対して有機過酸化物(パーカドックス16 化薬アクゾ社製)0.8質量部を投入し、ローターの回転数を30rpmとして、100℃に達するまで混練した。ここで、100℃で7分間保持し、無水マレイン酸変性処理を行った。なお、回転数は、100℃を保持するように調整した。
【0072】
続いて、バンバリーミキサーから混練物を排出し、カレンダーロールにてシート状にして冷却した後、それを加熱したロールに巻き付けて加温し、未反応の無水マレイン酸を昇華させて除去し、再度カレンダーロールにてシート状にした。これにより、実施例1-1の未架橋ゴム組成物を作製した。
【0073】
<実施例1-2>
まず、バンバリーミキサーに、EPDM(1)(Nordel IP 4640 Dow Chemical社製、エチレン含量55%、ENB含量4~5%)100質量部を投入し、ローターの回転数を30rpmとして、1分間素練りした。そこに、EPDM(1)100質量部に対して無水マレイン酸0.8質量部を投入して1分間混練し、更に、EPDM(1)100質量部に対して有機過酸化物0.8質量部を投入し、ローターの回転数を30rpmとして、100℃に達するまで混練した。ここで、100℃で7分間保持し、無水マレイン酸変性処理を行った。なお、回転数は、100℃を保持するように調整した。
【0074】
次いで、バンバリーミキサーから混練物を排出し、カレンダーロールにてシート状にして冷却した後、それを加熱したロールに巻き付けて加温し、未反応の無水マレイン酸を昇華させて除去し、再度カレンダーロールにてシート状にした。これにより、変性EPDMを作製した。
【0075】
続いて、サンプル管にオイル(1)100質量部、無水マレイン酸1.5質量部及び有機過酸化物(パーカドックス16 化薬アクゾ社製)1.5質量部を投入して混合し、加温した。ここで、液内を100℃で7分間保持し、無水マレイン酸変性処理を行った。これにより、変性オイル(1)を作製した。なお、変性オイル(1)の構成については、表2にも示す。
【0076】
オープンロールに、変性EPDM100質量部を投入して素練りし、そこに変性オイル(1)4.1質量部を投入して混練し、カレンダーロールにてシート状にした。これにより、実施例1-2の未架橋ゴム組成物を作製した。
【0077】
<実施例1-3>
EPMに代えてEPDM(1)を用いたこと、及び、オイル(1)の配合量をEPDM(1)100質量部に対して4質量部に変更したことを除いて実施例1-1と同様にして作製した未架橋ゴム組成物を実施例1-3とした。
【0078】
<実施例1-4>
EPMに代えてEPDM(2)(EPT1045 三井化学社製、エチレン含量58%、DCPD含量5%)を用いたことを除いて実施例1-1と同様にして作製した未架橋ゴム組成物を実施例1-4とした。
【0079】
<実施例1-5>
EPMに代えてEPDM(2)を用いたこと、及び、無水マレイン酸の配合量をEPDM(2)100質量部に対して1.6質量部に変更したことを除いて実施例1-1と同様にして作製した未架橋ゴム組成物を実施例1-5とした。
【0080】
<実施例1-6>
まず、オープンロールに、EPDM(2)100質量部を投入して素練りし、そこにオレイン酸2.3質量部を投入して混練した。
【0081】
次いで、バンバリーミキサーに得られた混練物を投入し、ローターの回転数を30rpmとして、1分間混練した後、EPDM(2)100質量部に対して有機過酸化物0.8質量部を投入し、ローターの回転数を30rpmとして、100℃に達するまで混練した。ここで、100℃で7分間保持し、オレイン酸変性処理を行い、オレイン酸変性EPDMとオレイン酸との混合物を得た。なお、回転数は、100℃を保持するように調整した。
【0082】
続いて、バンバリーミキサーから混練物を排出し、カレンダーロールにてシート状にした。これにより、オレイン酸変性EPDMとオレイン酸を含む実施例1-6の未架橋ゴム組成物を作製した。
【0083】
<実施例1-7>
オイル(1)に代えてオイル(2)を用いたことを除いて実施例1-2で作製した変性オイル(1)と同様にして変性オイル(2)を作製した。オイル(2)には、パラフィンオイル及びナフテンオイルが含まれており、パラフィン系炭化水素とナフテン系炭化水素が72:28の質量比で含まれている。なお、変性オイル(2)の構成については、表2にも示す。
【0084】
実施例1-2の変性オイル(1)に代えて変性オイル(2)を用いたことを除いて実施例1-2と同様にして作製した未架橋ゴム組成物を実施例1-7とした。
【0085】
<比較例1-1>
実施例1-2の変性オイル(1)に代えて未変性のオイル(1)を用いたことを除いて実施例1-2と同様にして作製した未架橋ゴム組成物を比較例1-1とした。
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【0088】
(試験評価方法)
実施例1-1乃至1-7及び比較例1-1について、それぞれの未架橋ゴム組成物を常温で2週間放置した。その後、それぞれの未架橋ゴム組成物に触れることでブリードの発生を確認した。手にオイルが付着した場合はA、手にオイルが付着しなかった場合はB、と判定した。
【0089】
(試験評価結果)
試験結果を表1に示す。
【0090】
表1によれば、変性オイル(1)や変性オイル(2)のようなカルボキシル基含有オイルを含まない比較例1-1のゴム組成物には、ブリードが発生しているのに対し、カルボキシル基含有オイルを含む実施例1-1乃至1-7のゴム組成物には、ブリードが発生していないことが分かる。
【0091】
[試験評価2]
実施例2-1乃至2-9及び比較例2-1乃至2-4のゴム繊維複合体を作製した。また、実施例2-10及び比較例2-5のゴム組成物を作製した。それぞれの構成については表3にも示す。
【0092】
<実施例2-1>
まず、バンバリーミキサーに、実施例1-1に係る配合番号[1]の未架橋ゴム組成物55.8質量部及びEPDM(2)50質量部を投入して混練し、そこに、酸化亜鉛5質量部、ステアリン酸1.5質量部、金属石鹸-脂肪酸アミド化合物0.5質量部、カーボンブラック35質量部、シリカ20質量部、不飽和カルボン酸化合物10質量部、不溶性硫黄0.1質量部及び有機過酸化物(1)(ペロキシモンF40 日油社製、過酸化物成分40%)4質量部を投入して更に混練することにより、各種ゴム配合剤を含む未架橋ゴム組成物を調製した。なお、前記配合番号[1]の未架橋ゴム組成物は、EPM50質量部とオイル(1)5質量部を含み、EPMとオイル(1)が無水マレイン酸変性されている。また、前記各種ゴム配合剤を含む未架橋ゴム組成物は、ゴム成分として、配合番号[1]の未架橋ゴム組成物に含まれる変性前のEPM50質量部と未変性のEPDM(2)50質量部を含む。
【0093】
ポリエステル繊維製の撚り糸にプライマー処理及びRFL処理を施した。
【0094】
プライマー処理では、プライマー溶液として、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(住化バイエルウレタン社製 商品名:スミジュール44V20)をトルエンに溶解させた固形分濃度が16質量%の溶液を用いた。撚り糸のプライマー溶液への浸漬時間は0.5秒、浸漬後の加熱温度(加熱炉設定温度)は245±11℃及び加熱時間は60秒とした。
【0095】
RFL処理では、ビニルピリジン・スチレンブタジエン共重合体ゴム(VP-SBR)ラテックスを用いたRFL水溶液を調製した。レゾルシン(R)のホルマリン(F)に対するモル比(R/F)を1/1.4、レゾルシン(R)とホルマリン(F)との初期縮合物(RF)のラテックス(L)に対する固形分質量比(RF/L)を1/6.1及び固形分濃度を16.1質量%とした。撚り糸のRFL水溶液への浸漬時間は1.0秒、浸漬後の加熱温度(加熱炉設定温度)は230±10℃及び加熱時間は60秒とした。
【0096】
前記各種ゴム配合剤を含む未架橋ゴム組成物並びに前記プライマー処理及び前記RFL処理を施した撚り糸を用いて、図1に示すような7本の撚り糸11が、前記各種ゴム配合剤を含む未架橋ゴム組成物で形成された板状の板ゴム12の表層に間隔をおいて平行に延びるように埋設された接着試験用試験片10をプレス成型した。なお、プレス成型条件は、温度160℃、圧力4MPa、及び時間40分とした。接着試験用試験片10は、架橋後のゴム組成物がRFL接着剤を介して撚り糸11と接着しているゴム繊維複合体であり、この接着試験用試験片10を、実施例2-1とした。
【0097】
<実施例2-2>
配合番号[1]の未架橋ゴム組成物に代えて実施例1-4に係る配合番号[4]の未架橋ゴム組成物40.2質量部を用いたこと、及び、EPDM(2)の配合量を64質量部に変更したことを除いて実施例2-1と同様の接着試験用試験片10を作製し、これを実施例2-2とした。なお、配合番号[4]の未架橋ゴム組成物は、EPDM(2)36質量部とオイル(1)3.6質量部を含み、EPDM(2)とオイル(1)が無水マレイン酸変性されている。また、各種ゴム配合剤を含む未架橋ゴム組成物は、ゴム成分として、配合番号[4]の未架橋ゴム組成物に含まれる変性前のEPDM(2)36質量部と未変性のEPDM(2)64質量部を含む。
【0098】
<実施例2-3>
配合番号[1]の未架橋ゴム組成物に代えて実施例1-5に係る配合番号[5]の未架橋ゴム組成物56.2質量部を用いたこと、及び、脂肪酸エステル1質量部を更に加えたことを除いて実施例2-1と同様の接着試験用試験片10を作製し、これを実施例2-3とした。なお、配合番号[5]の未架橋ゴム組成物は、EPDM(2)50質量部とオイル(1)5質量部を含み、EPDM(2)とオイル(1)が無水マレイン酸変性されている。また、各種ゴム配合剤を含む未架橋ゴム組成物は、ゴム成分として、配合番号[5]の未架橋ゴム組成物に含まれる変性前のEPDM(2)50質量部と未変性のEPDM(2)50質量部を含む。
【0099】
<実施例2-4>
配合番号[1]の未架橋ゴム組成物に代えて実施例1-6に係る配合番号[6]の未架橋ゴム組成物25.8質量部を用いたこと、及び、EPDM(2)の配合量を75質量部に変更したことを除いて実施例2-1と同様の接着試験用試験片10を作製し、これを実施例2-4とした。なお、配合番号[6]の未架橋ゴム組成物は、EPDM(2)25質量部とオレイン酸0.6質量部を含み、EPDM(2)がオレイン酸変性され、オレイン酸変性EPDM(2)とオレイン酸の混合物からなる。また、各種ゴム配合剤を含む未架橋ゴム組成物は、ゴム成分として、配合番号[6]の未架橋ゴム組成物に含まれる変性前のEPDM(2)25質量部と未変性のEPDM(2)75質量部を含む。
【0100】
<実施例2-5>
配合番号[1]の未架橋ゴム組成物及びEPDM(2)に代えて実施例1-2に係る配合番号[2]の未架橋ゴム組成物104.1質量部を用いたことを除いて実施例2-1と同様の接着試験用試験片10を作製し、これを実施例2-5とした。なお、配合番号[2]の未架橋ゴム組成物は、EPDM(1)98質量部とオイル(1)4質量部を含み、EPDM(1)とオイル(1)が無水マレイン酸変性されている。また、各種ゴム配合剤を含む未架橋ゴム組成物は、ゴム成分として、配合番号[2]の未架橋ゴム組成物に含まれる変性前のEPDM(1)98質量部を含む。
【0101】
<実施例2-6>
配合番号[1]の未架橋ゴム組成物に代えて実施例1-4に係る配合番号[4]の未架橋ゴム組成物27.9質量部を用いたこと、EPDM(2)の配合量を75質量部に変更したこと、及び、カルボジイミド化合物2質量部とオイル(1)2.5質量部を更に加えたことを除いて実施例2-1と同様の接着試験用試験片10を作製し、これを実施例2-6とした。なお、配合番号[4]の未架橋ゴム組成物は、EPDM(2)25質量部とオイル(1)2.5質量部を含み、EPDM(2)とオイル(1)が無水マレイン酸変性されている。また、各種ゴム配合剤を含む未架橋ゴム組成物は、ゴム成分として、配合番号[4]の未架橋ゴム組成物に含まれる変性前のEPDM(2)25質量部と未変性のEPDM(2)75質量部を含む。
【0102】
<実施例2-7>
配合番号[1]の未架橋ゴム組成物に代えて実施例1-5に係る配合番号[5]の未架橋ゴム組成物28.1質量部を用いたこと、EPDM(2)の配合量を75質量部に変更したこと、並びに、脂肪酸エステル0.5質量部、カルボジイミド化合物2質量部及びオイル(1)2.5質量部を更に加えたことを除いて実施例2-1と同様の接着試験用試験片10を作製し、これを実施例2-7とした。なお、配合番号[5]の未架橋ゴム組成物は、EPDM(2)25質量部とオイル(1)2.5質量部を含み、EPDM(2)とオイル(1)が無水マレイン酸変性されている。また、各種ゴム配合剤を含む未架橋ゴム組成物は、ゴム成分として、配合番号[5]の未架橋ゴム組成物に含まれる変性前のEPDM(2)25質量部と未変性のEPDM(2)75質量部を含む。
【0103】
<実施例2-8>
配合番号[1]の未架橋ゴム組成物に代えて実施例1-6に係る配合番号[6]の未架橋ゴム組成物51.6質量部を用いたこと、ステアリン酸を加えなかったこと、及び、カルボジイミド化合物2質量部を更に加えたことを除いて実施例2-1と同様の接着試験用試験片10を作製し、これを実施例2-8とした。なお、配合番号[6]の未架橋ゴム組成物は、EPDM(2)50質量部とオレイン酸1.2質量部を含み、EPDM(2)がオレイン酸変性され、オレイン酸変性EPDM(2)とオレイン酸の混合物からなる。また、各種ゴム配合剤を含む未架橋ゴム組成物は、ゴム成分として、配合番号[6]の未架橋ゴム組成物に含まれる変性前のEPDM(2)50質量部と未変性のEPDM(2)50質量部を含む。
【0104】
<実施例2-9>
配合番号[1]の未架橋ゴム組成物の配合量を111.6質量部に変更したこと、EPDM(2)を加えなかったこと、及び、カルボジイミド化合物2質量部を更に加えたことを除いて実施例2-1と同様の接着試験用試験片10を作製し、これを実施例2-9とした。なお、配合番号[1]の未架橋ゴム組成物は、EPM100質量部とオイル(1)10質量部を含み、EPMとオイル(1)が無水マレイン酸変性されている。また、各種ゴム配合剤を含む未架橋ゴム組成物は、ゴム成分として、配合番号[1]の未架橋ゴム組成物に含まれる変性前のEPM100質量部を含む。
【0105】
<実施例2-10>
まず、オープンロールに、実施例1-3に係る配合番号[3]の未架橋ゴム組成物105.6質量部を巻き付け、そこに、酸化亜鉛5質量部を加え、酸化亜鉛が取り込まれるまで放置した。次いで、炭酸カルシウム100質量部を加え、炭酸カルシウムが取り込まれるまで放置した。切り返しを行った後にロールを冷却して、ゴム組成物を常温にした。オープンロールにゴム組成物を巻き付け、有機過酸化物(パークミルD 日油社製、過酸化物成分98%以上)1質量部を加えた。更に、左右1回ずつ切り返しを行い、厚みが約0.6mmのシート状のゴム組成物を得た。これにより、実施例2-10のゴム組成物を作製した。なお、配合番号[3]の未架橋ゴム組成物は、EPDM(1)100質量部とオイル(1)4質量部を含み、EPDM(1)とオイル(1)が無水マレイン酸変性されている。また、各種ゴム配合剤を含む未架橋ゴム組成物は、ゴム成分として、配合番号[3]の未架橋ゴム組成物に含まれる変性前のEPDM(1)100質量部を含む。
【0106】
<比較例2-1>
配合番号[1]の未架橋ゴム組成物に代えてEPM50質量部を用いたこと、及び、オイル(1)5質量部を加えたことを除いて実施例2-1と同様の接着試験用試験片10を作製し、これを比較例2-1とした。なお、各種ゴム配合剤を含む未架橋ゴム組成物は、ゴム成分として、未変性のEPM50質量部と未変性のEPDM(2)50質量部を含む。
【0107】
<比較例2-2>
配合番号[1]の未架橋ゴム組成物を加えずに、EPDM(2)の配合量を100質量部に変更したこと、及び、オイル(1)3.6質量部を加えたことを除いて実施例2-1と同様の接着試験用試験片10を作製し、これを比較例2-2とした。なお、各種ゴム配合剤を含む未架橋ゴム組成物は、ゴム成分として、未変性のEPDM(2)100質量部を含む。
【0108】
<比較例2-3>
配合番号[1]の未架橋ゴム組成物及びEPDM(2)に代えてEPDM(1)100質量部を用いたこと、並びに、オイル(1)4質量部を加えたことを除いて実施例2-1と同様の接着試験用試験片10を作製し、これを比較例2-3とした。なお、各種ゴム配合剤を含む未架橋ゴム組成物は、ゴム成分として、未変性のEPDM(1)100質量部を含む。
【0109】
<比較例2-4>
配合番号[1]の未架橋ゴム組成物を加えずに、EPDM(2)の配合量を100質量部に変更したこと、ステアリン酸を加えなかったこと、及び、オレイン酸2.3質量部を加えたことを除いて実施例2-1と同様の接着試験用試験片10を作製し、これを比較例2-4とした。なお、各種ゴム配合剤を含む未架橋ゴム組成物は、ゴム成分として、未変性のEPDM(2)100質量部を含む。
【0110】
<比較例2-5>
配合番号[3]の未架橋ゴム組成物に代えてEPDM(1)100質量部を用いたこと、及び、オイル(1)4質量部を加えたことを除いて実施例2-10と同様にして作製したゴム組成物を比較例2-5とした。なお、各種ゴム配合剤を含む未架橋ゴム組成物は、ゴム成分として、未変性のEPDM(1)100質量部を含む。
【0111】
【表3】
【0112】
(試験評価方法)
<接着性評価試験>
実施例2-1乃至2-9及び比較例2-1乃至2-4のそれぞれの接着試験用試験片10について、23℃の温度雰囲気下で24時間以上静置した後に、引張試験機の一方のチャックに板状ゴム12を固定すると共に、他方のチャックに板状ゴム12に埋設された7本の撚り糸11のうち1本置きに配置された3本の撚り糸11を折り返して板状ゴム12に対して180°の角度をなす方向に引き出して固定し、剥離スピードを100mm/minとして板状ゴム12から3本の撚り糸11を100mm剥離した。そして、JIS K6274に基づいて測定した値を常温接着力とした。
【0113】
<粘弾性特性評価試験>
実施例2-10及び比較例2-5について、それぞれのゴム組成物から厚さ1mm、幅3mm、長さ20mmの試験片を切り出した。そして、試験片を23℃及び120℃において、歪み振幅0.1%、周波数10Hzで貯蔵弾性係数(E’)及び損失係数(tanδ)を測定した。測定には、UBM社製の動的粘弾性測定装置Rheogel-E4000を用いた。
【0114】
(試験評価結果)
試験結果を表3に示す。接着性評価試験の結果によれば、実施例2-1乃至2-9は、比較例2-1乃至2-4よりも、常温接着力が著しく高いことが分かる。このため、カルボキシル基含有オイルを含むゴム組成物は、RFL接着剤との接着性に優れることが分かる。また、実施例2-1乃至2-9のうち、カルボジイミドを含む実施例2-6乃至2-9は、カルボジイミドを含まない実施例2-1乃至2-5よりも常温接着力が高いことが分かる。このため、カルボジイミドを更に含むゴム組成物は、RFL接着剤との接着性により優れることが分かる。
【0115】
粘弾性特性評価試験の結果によれば、実施例2-10は、比較例2-5よりも、貯蔵弾性係数(E’)及び損失係数(tanδ)のいずれも低いことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明は、ゴム組成物及びその製造方法、並びにそれを用いたゴム製品の技術分野について有用である。
【符号の説明】
【0117】
10 接着試験用試験片
11 撚り糸
12 板状ゴム
図1