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特許7590832安定化された水性懸濁状農薬組成物、その製造方法および施用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】安定化された水性懸濁状農薬組成物、その製造方法および施用方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/04 20060101AFI20241120BHJP
   A01N 25/30 20060101ALI20241120BHJP
   A01N 43/56 20060101ALI20241120BHJP
   A01N 47/18 20060101ALI20241120BHJP
   A01N 47/38 20060101ALI20241120BHJP
   A01N 47/36 20060101ALI20241120BHJP
   A01N 43/90 20060101ALI20241120BHJP
   A01N 41/10 20060101ALI20241120BHJP
   A01P 13/00 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
A01N25/04 102
A01N25/30
A01N43/56 C
A01N47/18 101B
A01N47/38 A
A01N47/36 101E
A01N43/90 103
A01N41/10 A
A01P13/00
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020148109
(22)【出願日】2020-09-03
(65)【公開番号】P2021042200
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】P 2019160970
(32)【優先日】2019-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】303020956
【氏名又は名称】三井化学クロップ&ライフソリューション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】二宮 千恵
(72)【発明者】
【氏名】宋 慶盛
(72)【発明者】
【氏名】佐飛 寛
(72)【発明者】
【氏名】中川 春美
【審査官】石田 傑
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-180982(JP,A)
【文献】特開2001-089307(JP,A)
【文献】国際公開第2017/188070(WO,A1)
【文献】特開2011-126786(JP,A)
【文献】特開2016-069304(JP,A)
【文献】特開2010-241757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)除草活性成分を含有する微粒子と、
(2)アルキルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物の塩と、
を含み、
前記除草活性成分はピラゾレートを含み、
体積分布積算での比表面積が80,000cm/cm以上である、水性懸濁状農薬組成物。
【請求項2】
前記比表面積が90,000cm/cm以上である、請求項1に記載の水性懸濁状農薬組成物。
【請求項3】
前記比表面積が100,000cm/cm以上である、請求項1又は2に記載の水性懸濁状農薬組成物。
【請求項4】
さらに、(3)ポリオキシエチレン(モノ、ジ若しくはトリ)スチリルフェニルエーテル燐酸モノ又はジエステルを含む、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の水性懸濁状農薬組成物。
【請求項5】
前記除草活性成分が、さらにシクロピリモレート、ピラクロニル、ベンゾビシクロン、メタゾスルフロン、フェントラザミド及びプロピリスルフロンからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の水性懸濁状農薬組成物。
【請求項6】
前記除草活性成分が、ピラゾレートである、請求項1ないしのいずれか一項に記載の水性懸濁状農薬組成物。
【請求項7】
前記アルキルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物の塩が、アルキルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のアルカリ金属塩、アルキルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のアルカリ土類金属塩、アルキルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のアンモニウム塩、又はアルキルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のアミン塩である、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の水性懸濁状農薬組成物。
【請求項8】
前記ポリオキシエチレン(モノ、ジ若しくはトリ)スチリルフェニルエーテル燐酸モノ又はジエステルが、ポリオキシエチレン(モノ、ジ若しくはトリ)スチリルフェニルエーテル燐酸モノエステル、又はポリオキシエチレン(モノ、ジ若しくはトリ)スチリルフェニルエーテル燐酸ジエステルである、請求項4に記載の水性懸濁状農薬組成物。
【請求項9】
水性懸濁状農薬組成物100重量部に対して、前記除草活性成分を0.1~30重量部の量で含む、請求項1ないし8のいずれか一項に記載の水性懸濁状農薬組成物。
【請求項10】
(1)除草活性成分を含有する微粒子と、
(2)アルキルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物の塩と、
を含む、混合液を湿式粉砕し、前記混合液の体積分布積算での比表面積を80,000cm/cm以上に調整する工程を含み、
前記除草活性成分はピラゾレートを含む、水性懸濁状農薬組成物の製造方法。
【請求項11】
前記除草活性成分が、さらにシクロピリモレート、ピラクロニル、ベンゾビシクロン、メタゾスルフロン、フェントラザミド及びプロピリスルフロンからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項10に記載の水性懸濁状農薬組成物の製造方法。
【請求項12】
水田に、請求項1ないし9のいずれか一項に記載の水性懸濁状農薬組成物を手で直接散布する、または農薬散布機を用いて散布する、水性懸濁状農薬組成物の施用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農薬分野、殊に除草剤における新しい製剤技術に関する。より詳しくは、本発明は除草活性成分の分解が抑制された水性懸濁状農薬組成物、その製造方法および施用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、農薬の省力散布の要望が高まることで、製剤の施用量を減ずる少量施用剤の需要が増大し、農薬活性成分を高濃度で含む製剤が主流になっている。このような背景から、農薬活性成分の安定性に対する要望は近年さらに高まっている。
【0003】
従来、農薬製剤の主たる剤型は、水和剤、水溶剤、乳剤、水溶液、粒剤などであった。この中で、水和剤や水溶剤には、粉立ちによる作業者の健康への影響や、環境中への拡散等の問題があり、乳剤には溶媒や乳化剤による環境汚染や、有機溶媒による火災等の問題がある。また、農薬活性成分の多くは、水に溶けにくいものが多く、水溶剤への製剤化は難しい。以上のことから、近年の製剤は、このような問題の少ない水性懸濁状農薬組成物や顆粒状水和剤に置き換わりつつある。
【0004】
一方、水田用農薬製剤としては、従来から主として粒剤が用いられている。粒剤は、以前は10アール当り3~4kg施用されるのが主流であったが、近年の農薬の省力散布への要望の高まりに応じて、製剤の施用量を減じた1kg粒剤などの少量散布剤が普及している。
【0005】
水田用除草剤の分野では、散布時の省力化・効率化を図る目的で、水性懸濁組成物が開発されている。この剤型は、畑地、非農耕地などで使われる水性懸濁組成物とは異なり、製剤を希釈することなく容器から直接水田に滴下または注下するので、特別な散布機器を必要としない。また、処理量も10アール当たり100ミリリットル乃至1リットル程度と少ないので、軽くて扱いやすいという特徴を有する。水性懸濁組成物は、圃場の面積によっては、畦畔から振込み処理したり(いわゆる額縁処理)、圃場への入水時に水口からかん注するだけで処理することができ(いわゆる水口処理)、極めて省力的であるため、一定のシェアを獲得している。
【0006】
農薬活性成分の中で、例えばピラゾール系活性成分、トリケトン系活性成分、スルホニルウレア系活性成分などは、多くの多年生雑草や広葉雑草に対して防除活性を示し、広く使用されている。しかしながら、これらの活性成分は、水性懸濁組成物中で比較的不安定で、保存中に分解する場合が多い。
【0007】
このため、農薬製剤中での農薬活性成分の安定化について、これまでいくつかの方法が提案されている。即ち、一般的に農薬活性成分の分解を抑制する対策としては、農薬活性成分の分解防止剤を添加する方法(例えば、特許文献1)などが提案されている。特許文献1には、(1)硫酸ナトリウム、酢酸カルシウムおよび硫酸アンモニウムからなる群より選ばれる塩の少なくとも1種、(2)アニオン界面活性剤(ここにおいて、常温におけるpHは、5以下である)の少なくとも1種、(3)塩酸並びに(4)農薬有効成分を含有する農薬組成物において、水中で農薬活性成分の分解が抑制され、安定な懸濁状態を保つことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2017-149713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
環境蓄積性の低い、すなわち安定性の低い農薬活性成分を成形した製剤は、温度条件などの環境条件に応じて農薬活性成分が経時的に分解する場合がある。そして過度に分解が生じた場合には、当該製剤は、農薬活性成分の分解による薬効の低下や薬害の助長を引き起こす可能性もある。さらに分解が顕著である製剤は、有効期限における農薬活性成分の含量値の保証が困難となり、商品化が不可能となる場合や、商品価値を大きく損なうという問題があった。特に中央値管理による農薬活性成分の含量管理が必要な製剤は、農薬中の農薬活性成分含量が大きくなるにつれて管理幅が小さくなり、より高い安定性を有する農薬製剤が必要となる。
【0010】
水田用農薬製剤の中でも、水田用除草剤の分野において、水性懸濁組成物は、水中に農薬活性成分を分散又は乳化させた製剤であるので、水で分解しやすい活性成分を水中に懸濁させる製剤であるという性質上、完全に安定化することは難しく、これらの技術では相当程度の分解を避けることができなかった。
【0011】
特許文献1に記載の組成物では、塩酸やpHが5以下のアニオン界面活性剤が必須成分として含まれるため、製剤のpHが酸性となり、安全面や、原料の使用が制限される点で課題があった。
そこで、本発明では、酸性の成分を必須としなくとも、有効成分の安定性に優れた農薬組成物を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するべく、鋭意研究を行った結果、除草活性成分を含む微粒子と、アルキルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物の塩とを含有し、体積分布積算での比表面積が80,000cm/cm以上である水性懸濁状農薬組成物において、当該除草活性成分の分解が抑制され、保存安定性が改善されることを見出だした。特に、一部の除草活性成分によっては完全に分解を抑えるほどに保存安定性を向上できることも見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0013】
[1] (1)少なくとも1種の除草活性成分を含有する微粒子と、
(2)アルキルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物の塩と、
を含み、
体積分布積算での比表面積が80,000cm/cm以上である、水性懸濁状農薬組成物。
[2] 前記比表面積が90,000cm/cm以上である、[1]に記載の水性懸濁状農薬組成物。
[3] 前記比表面積が100,000cm/cm以上である、[1]又は[2]に記載の水性懸濁状農薬組成物。
[4] さらに、(3)ポリオキシエチレン(モノ、ジ若しくはトリ)スチリルフェニルエーテル 燐酸モノ又はジエステルを含む、[1]ないし[3]のいずれかに記載の水性懸濁状農薬組成物。
[5] 前記除草活性成分が、ピラゾレート、シクロピリモレート、ピラクロニル、ベンゾビシクロン、メタゾスルフロン、フェントラザミド、及びプロピリスルフロンからなる群より選択される少なくとも1種である、[1]ないし[4]のいずれかに記載の水性懸濁状農薬組成物。
[6] 前記除草活性成分が、ピラゾレートである、[1]ないし[5]のいずれかに記載の水性懸濁状農薬組成物。
[7] 前記アルキルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物の塩が、アルキルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のアルカリ金属塩、アルキルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のアルカリ土類金属塩、アルキルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のアンモニウム塩、又はアルキルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のアミン塩である、[1]ないし[6]のいずれかに記載の水性懸濁状農薬組成物。
[8] 前記ポリオキシエチレン(モノ、ジ若しくはトリ)スチリルフェニルエーテル 燐酸モノ又はジエステルが、ポリオキシエチレン(モノ、ジ若しくはトリ)スチリルフェニルエーテル燐酸モノエステル、又はポリオキシエチレン(モノ、ジ若しくはトリ)スチリルフェニルエーテル燐酸ジエステルである、[4]に記載の水性懸濁状農薬組成物。
[9] 水性懸濁状農薬組成物100重量部に対して、前記除草活性成分を0.1~30重量部の量で含む、[1]ないし[8]のいずれかに記載の水性懸濁状農薬組成物。
[10] (1)少なくとも1種の除草活性成分を含有する微粒子と、
(2)アルキルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物の塩と、
を含む混合液を湿式粉砕し、前記混合液の体積分布積算での比表面積を80,000cm/cm以上に調整する、水性懸濁状農薬組成物の製造方法。
[11] 水田に、[1]ないし[9]のいずれかに記載の水性懸濁状農薬組成物を手で直接散布する、または農薬散布機を用いて散布する、水性懸濁状農薬組成物の施用方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の水性懸濁状農薬組成物は、除草活性成分の分解が抑制されており、保存安定性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書で使用する各種の用語について説明する。
【0016】
「除草活性成分」とは、本発明の効果を奏することができれば特に制限はないが、白化型除草性化合物もしくはその塩、プロトポルフィリノーゲンオキシダーゼ(以下、PPOという)阻害型除草性化合物もしくはその塩、超長鎖脂肪酸伸長酵素(以下、VLCFAEという)阻害型除草性化合物もしくはその塩、アセトラクテート合成酵素(以下、ALSという)阻害型除草性化合物もしくはその塩等が挙げられるが、好ましくは白化型除草性化合物、さらに好ましくはピラゾレートである。
【0017】
白化型除草性化合物は、雑草を白化させて枯死させる、よく知られた除草剤である。白化型除草性化合物としては、例えば、ピラゾール系除草性化合物およびトリケトン系除草性化合物が広く知られている。
【0018】
ピラゾール系除草性化合物は、例えば、ピラゾレート、ピラゾキシフェン、ベンゾフェナップであり、それぞれThe Pesticide Manual 13th Edition 844-845、848-849、81頁に記載されている。
【0019】
トリケトン系除草性化合物は、例えば、メソトリオン、スルコトリオン、ベンゾビシクロンであり、それぞれThe Pesticide Manual 13th Edition 631-632、908-909、80頁に記載されている。また、テフリルトリオン(CAS No. 473278-76-1)、フェンキノトリオン(CAS No. 1342891-70-6)、ランコトリオン(CAS No. 1486617-22-4)、ビシクロピロン(CAS No. 352010-68-5)もトリケトン系除草性化合物である。
【0020】
ピラゾール系除草性化合物及びトリケトン除草性化合物以外では、例えば、クロマゾン(CAS No. 81777-89-1)やシクロピリモレート(CAS No. 499231-24-2)も白化型除草性化合物である
【0021】
PPO阻害型除草性化合物は、PPOを阻害することで褐変症状を引き起こして雑草を枯死させる、よく知られた除草性化合物である。PPO阻害型除草性化合物は、例えば、オキサジアルギル、オキサジアゾン、ペントキサゾンであり、それぞれThe Pesticide Manual 13th Edition 725-726、727-728、757-758頁に記載されている。また、ピラクロニル(CAS No. 158353-15-2)やシクロピラニル(CAS No. 1651191-47-7)もPPO阻害型除草性化合物である。
【0022】
VLCFAE阻害型除草性化合物は、VLCFAEを阻害することで脂肪酸の合成を阻害し雑草を枯死させる、よく知られた除草性化合物である。VLCFAE阻害型除草性化合物は、例えば、ブタクロール、プレチラクロール、テニルクロール、メフェナセットであり、それぞれThe Pesticide Manual 13th Edition 118-120、799-800、956、621-622頁に記載されている。また、カフェンストロール(CAS No. 125306-83-4)、フェントラザミド(CAS No. 158237-07-1)、フェノキサスルホン(CAS No. 639826-16-7)、イプフェンカルバゾン(CAS No. 212201-70-2)もVLCFAE阻害型除草性化合物である。
【0023】
ALS阻害型除草性化合物は、ALSを阻害することで必須アミノ酸であるバリン、ロイシン及びイソロイシンの合成を阻害し雑草を枯死させる、よく知られた除草性化合物である。ALS阻害型除草性化合物としては、例えば、スルホニルウレア系除草性化合物、ピリミジニルサリチル酸系除草性化合物及びトリアゾロピリミジン系除草性化合物が広く知られている。
【0024】
スルホニルウレア系除草性化合物は、例えば、アジムスルフロン、ベンスルフロンメチル、シクロスルファムロン、ハロスルフロンメチル、エトキシスルフロン、イマゾスルフロン、ピラゾスルフロンエチル、クロリムロンエチル、シノスルフロン、メトスルフロンメチルであり、それぞれThe Pesticide Manual 13th Edition 46-47、73-74、222-223、523-524、386-387、560-561、847-848、161-162、184-185、677-678頁に記載されている。また、フルセトスルフロン(CAS No.412928-75-7)、プロピリスルフロン(CAS No.570415-88-2)、メタゾスルフロン(CAS No.868680-84-6)も、スルホニルウレア系除草性化合物である。
【0025】
ピリミジニルサリチル酸系除草性化合物は、例えば、ビスピリバック、ピリベンゾキシム、ピリフタリド、ピリミノバックメチルであり、それぞれThe Pesticide Manual 13th Edition 96-97、852-853、860-861、863-864頁に記載されている。また、ピリミスルファン(CAS No.221205-90-9)、トリアファモン(CAS No.874195-61-6)も、ピリミジニルサリチル酸系除草性化合物である。
【0026】
トリアゾロピリミジン系除草性化合物は、例えば、ペノキススラムであり、The Pesticide Manual 13th Edition 753-754頁に記載されている。
【0027】
「アルキルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物の塩」とは、例えば、(モノ又はジ)C1~C6アルキルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物の塩などを意味し、モノC1~C6アルキルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物の塩若しくはジC1~C6アルキルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物の塩などである。具体的には、例えば、メチルナフタレンスルホン酸、エチルナフタレンスルホン酸、プロピルナフタレンスルホン酸、イソプロピルナフタレンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸若しくはイソブチルナフタレンスルホン酸などのモノアルキルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物の塩;例えば、ジメチルナフタレンスルホン酸、ジエチルナフタレンスルホン酸、ジイソプロピルナフタレンスルホン酸、ジブチルナフタレンスルホン酸若しくはジイソブチルナフタレンスルホン酸などのジアルキルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物の塩;あるいは例えばメチルノニルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物の塩を挙げることができる。
また、ホルマリン縮合物の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩やマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩又はアミン塩等を挙げることができる。これらの中でもアルカリ金属塩が好ましく、特にナトリウム塩が好ましい。特に、アルキルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩が好ましい。
【0028】
アルキルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物の塩の具体例としては、例えば、(モノ又はジ)C1~C6アルキルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩などを挙げることができる。汎用されているアルキルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物の塩の代表例としては、例えば、Supragil(登録商標)MNS90、Supragil(登録商標)RM/210EI(ローディア日華社製)、デモール(登録商標)RN、デモール(登録商標)SNB(花王社製)など、好ましくは、ラベリン(登録商標)FA-N(第一工業製薬社製)など、特に好ましくは、Morwet(登録商標)D-425 Powder(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製)などが挙げられる。
【0029】
「ポリオキシエチレン(モノ、ジ若しくはトリ)スチリルフェニルエーテル」とは、アリール基が1~3であるポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルを意味する。具体的には、ポリオキシエチレンモノスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテルが挙げられ、特に好ましくはポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルが挙げられる。
【0030】
「燐酸モノ又はジエステル」とは、有機基を1又は2有する燐酸エステルを意味する。具体的には、例えば、燐酸モノエステル、燐酸ジエステルなどが挙げられる。
本発明の農薬組成物における除草活性成分の含有量は、懸濁製剤が製剤可能な量であればよく、通常、本発明組成物100重量部に対して、0.1~30重量部である。
【0031】
本発明の水性懸濁状農薬組成物は、水と、(1)少なくとも1種の除草活性成分を含有する微粒子と、(2)アルキルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物の塩と、必要に応じて(3)ポリオキシエチレン(モノ、ジ若しくはトリ)スチリルフェニルエーテル 燐酸モノ又はジエステルとを含み、さらに種々の目的でその他の補助剤を配合することができる。その他の補助剤としては、例えば、湿潤剤、分散剤、増粘剤、消泡剤、防黴剤、溶剤又は安定化剤すなわち、着色剤、増量剤、防腐剤、pH調節剤などの補助剤成分を添加することができる。また、製剤可能な量で、例えば、塩酸を含んでも含まなくてもよい。
【0032】
本発明の水性懸濁状農薬組成物に用いられる湿潤剤又は分散剤としては、通常の農薬に用いられるものであれば特に限定はなく、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤又は両性イオン性界面活性剤などのいずれの界面活性剤をも用いることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0033】
陰イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキル燐酸エステル塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル燐酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルアリール燐酸エステル塩、アルキルアリール硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル燐酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩、アルキルフェノール燐酸塩、アルキルフェノール燐酸エステル塩、アルキルフェノール硫酸塩、アルキルフェノール硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェノール燐酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェノール燐酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェノール硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェノール硫酸エステル塩、スチリルフェノール燐酸塩、スチリルフェノール燐酸エステル塩、スチリルフェノール硫酸塩、スチリルフェノール硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンスチリルフェノール燐酸塩、ポリオキシアルキレンスチリルフェノール燐酸エステル塩、ポリオキシアルキレンスチリルフェノール硫酸塩、ポリオキシアルキレンスチリルフェノール硫酸エステル塩、ジスチリルフェノール燐酸塩、ジスチリルフェノール燐酸エステル塩、ジスチリルフェノール硫酸塩、ジスチリルフェノール硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンジスチリルフェノール燐酸塩、ポリオキシアルキレンジスチリルフェノール燐酸エステル塩、ポリオキシアルキレンジスチリルフェノール硫酸塩、ポリオキシアルキレンジスチリルフェノール硫酸エステル塩、トリスチリルフェノール燐酸塩、トリスチリルフェノール燐酸エステル塩、トリスチリルフェノール硫酸塩、トリスチリルフェノール硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレントリスチリルフェノール燐酸塩、ポリオキシアルキレントリスチリルフェノール燐酸エステル塩、ポリオキシアルキレントリスチリルフェノール硫酸塩、ポリオキシアルキレントリスチリルフェノール硫酸エステル塩、アルキルサクシネートスルホン酸塩、ジアルキルサクシネートスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンジアルキルサクシネートスルホン酸塩、モノアルキルスルホコハク酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、またはポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸塩などが挙げられ、好適には、アルキル燐酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル燐酸エステル塩、アルキルアリール燐酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル燐酸エステル塩、アルキルフェノール燐酸塩、スチリルフェノール燐酸エステル塩、ポリオキシアルキレンスチリルフェノール燐酸エステル塩、ジスチリルフェノール燐酸塩、ジスチリルフェノール燐酸エステル塩、ポリオキシアルキレンジスチリルフェノール燐酸塩、ポリオキシアルキレンジスチリルフェノール燐酸エステル塩、トリスチリルフェノール燐酸塩、トリスチリルフェノール燐酸エステル塩、ポリオキシアルキレントリスチリルフェノール燐酸塩、ポリオキシアルキレントリスチリルフェノール燐酸エステル塩、またはジアルキルスルホコハク酸塩などが挙げられる。
【0034】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪族アルコールアルキレンオキサイド付加物、ポリアルキレンオキシ脂肪酸エステル、ソルビタン系界面活性剤もしくはそのアルキレンオキサイド付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アルキルポリサッカライド系界面活性剤、シュクログリセライド、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシアルキレンスチリルフェノールエーテル、ポリオキシアルキレンジスチリルフェノールエーテル又はポリオキシアルキレントリスチリルフェノールエーテルなどが挙げられ、好適には、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシアルキレンスチリルフェノールエーテル、ポリオキシアルキレンジスチリルフェノールエーテル又はポリオキシアルキレントリスチリルフェノールエーテルなどが挙げられる。
なお、これらエチレンオキサイドを付加したタイプの界面活性剤においては、その一部にプロピレンオキサイドを含有してもよい。
【0035】
陽イオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪族第三級アミンもしくはその塩、脂肪族第三級アミン脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物もしくはその塩又は脂肪族第四級アミン塩などが挙げられる。
【0036】
両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウムなどのアミノ酸型両性界面活性剤;ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジジヒドロキシエチルベタインなどのベタイン型両性界面活性剤などのカルボン酸塩型両性界面活性剤;硫酸エステル塩型両性界面活性剤;スルホン酸塩型両性界面活性剤;又は燐酸エステル塩型両性界面活性剤などが挙げられる。
【0037】
本発明の水性懸濁状農薬組成物の1つの実施形態で用いられる界面活性剤の量は、通常、農薬組成物中に、0.01~20重量%であり、好適には、0.1~10重量%である。
【0038】
増粘剤としては、通常農薬製剤に用いられるものであれば特に限定はないが、例えば、ホワイトカーボン、アルミノ珪酸塩、ベントナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、アタパルジャイトのような鉱物;アラビアガム、トラガントガム、キサンタンガム、グアーガム、ローストビーンガム、カゼイン、アルギン酸、セルロース系ポリッサッカライド、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースのような高分子増粘剤などが挙げられ、好適には、高分子増粘剤であり、より好適には、キサンタンガムである。
【0039】
消泡剤としては、通常農薬製剤に用いられるものであれば特に限定はないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、sec-ブタノール、ブタノールのような低級アルコール系消泡剤;アミルアルコール、ジイソブチルカルビトール、トリブチルフォスフェート、オレイン酸、トール油、金属セッケン、HLBの低い界面活性剤(例えば、ソルビタンラウリン酸モノエステル、ソルビタンラウリン酸トリエステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、アセチレングリコール誘導体、プルロニック型非イオン界面活性剤など)、アセチレングリコール誘導体のような有機極性化合物系消泡剤;鉱物油の界面活性剤配合品、鉱物油と脂肪酸金属塩の界面活性剤配合品のような鉱物油系消泡剤;シリコーン樹脂、シリコーン樹脂の界面活性剤配合品、シリコーン樹脂の無機粉末配合品のようなシリコーン樹脂系消泡剤などが挙げられる。
【0040】
防黴剤としては、通常農薬製剤に用いられるものであれば特に限定はないが、例えば、パラクロロメタキシレノール、ポリへサメチレンビグアニジドハイドロクロライド、1,2-ベンジソチアゾリン-3-オン、メチルパラヒドロキシベンゾエート、エチルパラヒドロキシベンゾエート、プロピルパラヒドロキシベンゾエート、ブチルパラヒドロキシベンゾエート、ヘプチルパラヒドロキシベンゾエート、ベンジルパラヒドロキシベンゾエート、パラオキシ安息香酸エステル、ソルビン酸、オルソフェニルフェノール、ソディウムオルソフェニルフェネート、グルタルジアルデヒド、第四級アンモニウム化合物、トリ-(N-クロロヘキシルジアゼニウムジオキシ)-アルミニウム、テトラヒドロ-3,5-ジメチル-2H-1,3,5-チアジアジン-2-チオン、2,5-ジメトキシテトラヒドロフラン、ジメチロール尿素、N-メチルジチオカルバミン酸ナトリウム、フェノキシエタノール、グリオキサール、グルタルアルデヒド、1,3,5-トリス(2-ヒドロキシエチル)-1,3,5-ヘキサヒドロトリアジン、塩化ベンザルコニウム、フェノキシプロパノール、テトラメチルアセチレンジ尿素、ポビドンイオディン、ソルビン酸カリウム、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール又はチアゾロンなどが挙げられる。
【0041】
溶剤としては、通常農薬に用いられるものであれば特に限定はないが、第2石油類以上の引火点を有するものが望ましい。例えば、アルキルベンゼン、メチルナフタレン、流動パラフィン、リグロイン、ケロシン、灯油、n-デカン、イソドデカン、テトラリン、デカリン、テレピン油、パイン油、アジピン酸、グルコン酸、マレイン酸、乳酸、安息香酸、フタル酸、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、ラウリン酸、オレイン酸、やし油脂肪酸、シクロヘキサノン、シクロへキセニルシクロヘキサノン、アセチルアセトン、アセトフェノン、メチルブチルケトン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、エピクロールヒドリン、ジグリシジールエーテ、ジオキサン、リン酸トリエチル、リン酸トリブチル、大豆油、なたね油、ゴマ油、コメ油、やし油、サンフラワー油、いわし油、鯨油、ジメチルスルホキサイド、N,N-ジメチルアセトアミド又はN-メチルピロリドンなどが挙げられる。
【0042】
着色剤としては、通常農薬に用いられるものであれば特に限定はなく、例えば、色素が挙げられ、好適には、ブリリアントブルーFCF、シアニングリーンG又はエリオグリーンGである。用いられる着色剤の量は、通常、水性懸濁状農薬組成物中に、0.05~0.5重量%であり、好適には、0.1~0.3重量%である。
【0043】
防腐剤としては、通常農薬に用いられるものであれば特に限定はなく、好適には、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、パラクロロメタキシレノ-ル、パラオキシ安息香酸ブチル又はデヒドロ酢酸ナトリウムである。用いられる防腐剤の量は、通常、水性懸濁状農薬組成物中に、0.1~3重量%であり、好適には、0.2~2重量%である。
【0044】
pH調節剤としては、通常農薬に用いられるものであれば特に限定はなく、例えば、リン酸のような無機酸;クエン酸、フタル酸、コハク酸のような有機酸;クエン酸ナトリウム、フタル酸水素カリウムのような有機金属塩;リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ホウ酸ナトリウムのような無機金属塩;水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのような水酸化物;又はトリエタノールアミンのような有機アミン類などを挙げることができ、好適には、無機酸、無機金属塩又は水酸化物などであり、より好適には、塩酸、クエン酸、コハク酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又は炭酸ナトリウムなどである。また、使用されるpH調節剤は、1種又は2種以上を併用することができる。
【0045】
本発明の水性懸濁状農薬組成物は、
(1)少なくとも1種の除草活性成分を含有する微粒子と、
(2)アルキルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物の塩と、
を含む。
さらに、本発明の効果の観点から(3)ポリオキシエチレン(モノ、ジ若しくはトリ)スチリルフェニルエーテル 燐酸モノ又はジエステルを含むことも好ましい。
必要に応じて上述の他の成分やその微粒子を含むことができる。
【0046】
除草活性成分は、本発明の効果を発揮することができれば特に制限されず、上述の除草活性成分から適宜選択することができるが、本発明においては、本発明の効果の観点から、ピラゾレート、シクロピリモレート、ピラクロニル、ベンゾビシクロン、フェントラザミド、メタゾスルフロン及びプロピリスルフロンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、ピラゾレートを含むことがより好ましい。
【0047】
本発明においては、水性懸濁状農薬組成物中に含まれる微粒子の体積分布換算での比表面積は80,000cm/cm以上である。微粒子の比表面積をこの範囲とすることで、除草活性成分の分解が抑制され保存安定性が向上するという効果がある。比表面積としては、90,000cm/cm以上がさらに好ましく、100,000cm/cm以上が特に好ましい。
【0048】
一般に、水性懸濁状農薬組成物中に含まれる除草活性成分を含有する微粒子の比表面積が増大すれば、除草効果が向上するものの、水や酸素等と接触する面積が大きくなるため除草活性成分の分解が促進され保存安定性が低下する。すなわち、水性懸濁状農薬組成物において、除草活性成分の除草効果向上と保存安定性とはトレードオフの関係にあった。しかしながら、本発明者らは、(1)除草活性成分を含有する微粒子と、(2)アルキルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物の塩と、を含む水性懸濁状農薬組成物において、該組成物中に含まれる微粒子の比表面積を所定値以上とすることにより、微粒子(1)に含まれる除草活性成分の分解が抑制され、さらに除草効果が効果的に発現することを見出し、本発明を完成したのである。
【0049】
微粒子(1)の体積分布換算での比表面積は80,000cm/cm以上、好ましくは90,000cm/cm以上、さらに好ましくは100,000cm/cm以上である。これにより、成分(2)の作用によって微粒子(1)に含まれる除草活性成分の分解が効果的に抑制され、保存安定性がさらに向上する。
【0050】
「体積分布換算での比表面積」とは、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製 LA-960)を用いて得られる体積分布積算での比表面積を意味する。
【0051】
次に、本発明の水性懸濁状農薬組成物の製造方法について説明する。本発明の水性懸濁状農薬組成物は、通常の農薬製剤の製造に用いられる混合、粉砕などの公知の製剤化工程によって製造することができる。例えば、農薬活性成分を湿式粉砕する場合に、農薬活性成分、界面活性剤および消泡剤を水に添加して混合懸濁させたのち、下記のような湿式粉砕機を用いて、所定の粒度まで湿式粉砕し、次いで、予め加えて混合し分散・溶解したものを加えて均一化し、更に、pH調節剤により組成物のpHを調整することにより、本発明の水性懸濁状農薬組成物を得ることができる。
【0052】
湿式粉砕機は、例えば、アトライタ(登録商標)(三井鉱山(株))などのアトリションミル;ダイノミル(登録商標)(シンマルエンタープライゼス(株))、リサーチラボTM(シンマルエンタープライゼス(株))、サンドグラインダー(登録商標)(五十嵐機械社製造(株))、アペックスミル(登録商標)(コトブキ技研工業(株))、スーパーアペックスミル(登録商標)(コトブキ技研工業(株))、ウルトラアペックスミル(登録商標)(コトブキ技研工業(株))、ダイヤモンドファインミル(登録商標)(三菱重工(株))、コボールミル(登録商標)(神鋼パンテック(株))、ドライスヴェルケパールミル(日本アイリッヒ(株))などのビーズミル;コロイドミル(登録商標)(特殊機化工業(株))、ウエットアトマイザー(登録商標)(不二パウダル(株))などのハンマーミルが挙げられる。
【0053】
活性成分の粉砕は、湿式粉砕に限らず、例えば、活性成分を、必要があれば、鉱物質担体やその他の助剤類と共に混合し、乾式粉砕機を用いて、所定の粒度まで粉砕することも可能である。得られた粉砕物は、界面活性剤、消泡剤、増粘剤、凍結防止剤、防菌剤およびその他の補助剤と共に水中に加えて懸濁分散させ、混合・均一化することにより、本発明の水性懸濁状農薬組成物を得ることができる。
【0054】
乾式粉砕機は、例えば、SK-ジェット・オー・ミル(登録商標)((株)セイシン企業)、シングルトラック・ジェットミル(登録商標)((株)セイシン企業)などのジェットミル;ACMパルペライザー(登録商標)(ホソカワミクロン(株))、サンプルミルTM(不二パウダル(株))などのハンマーミル;ピンミル(登録商標);ボールミル(登録商標);ターボミル(登録商標)などが挙げられる。
【0055】
更に、農薬活性成分の粉砕は、これらの各粉砕機による粉砕を適宜組み合わせることができる。例えば、予めコロイドミルTMやウエットアトマイザー(登録商標)などの湿式粉砕機で予備粉砕した後、ビーズミルで微粉砕することや、予め乾式粉砕した活性成分を界面活性剤や消泡剤と共に水中に懸濁分散させ、これを更に上記の湿式粉砕機を用いて微粉砕することも可能である。又、アトライタ(登録商標)のようなバッチ式の粉砕機で予備粉砕した後、連続式ビーズミルで微粉砕することも可能である。
【0056】
農薬活性成分の粉砕の程度は、湿式粉砕および乾式粉砕のいずれによる場合も、通常は、活性成分の大部分が10μm以下になるように粉砕し、好ましくは0.1~5μmの重量中位径になるように粉砕する。
【0057】
本発明の水性懸濁状農薬組成物は、(1)少なくとも1種の除草活性成分を含有する微粒子と、(2)アルキルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物の塩と、必要に応じて(3)ポリオキシエチレン(モノ、ジ若しくはトリ)スチリルフェニルエーテル 燐酸モノ又はジエステルと、を含む混合液を湿式粉砕して調製することが好ましい。この粉砕工程において、当該混合液に含まれる微粒子の体積分布換算での比表面積を80,000cm/cm以上に調整する。微粒子の比表面積をこの範囲とすることで、除草活性成分の分解が抑制され保存安定性が向上する。比表面積としては、90,000cm/cm以上がさらに好ましく、100,000cm/cm以上が特に好ましい。
【0058】
本発明の水性懸濁状農薬組成物は、通常、直接散布剤として用いることができる。調製した水性懸濁状農薬組成物を希釈して、当該農薬組成物を含有する水性組成物を製造するときは、上記の水に加えて、農業用水、工業用水、井戸水、水道水など当該農薬組成物の機能・性能を阻害しない限り、使用することができる。水性組成物を調製する際の希釈倍率は、使用の対象となる、作物、土壌などにより、適宜選択して使用することができるが、10倍から5000倍、好ましくは50倍から2000倍で行うことができる。
【0059】
また、直接散布に用いる場合、水性懸濁状農薬組成物を内栓に穴の空いた100~1000mLのプラボトルなどに入れ、稀釈せずにそのまま手で振り込み処理する方法、薬剤吐出機器、農薬散布機等により機械散布する方法などにより処理することができるが、これらに限定されるものではない。また、水性懸濁状農薬組成物および水性懸濁状農薬組成物を含有する水性組成物の施用量、施用時期は、配合する農薬有効成分に応じて適宜決定することができる。
【0060】
上記の「農薬散布機」とは、エンジンやモーターを動力とする、例えば、無人ヘリコプター、ドローン、動力散布機等などを示す。
【0061】
本発明の組成物および防除方法は、例えば、下記の種類の雑草に対して有効である。
雑草としては、水田において問題となる種々の雑草、例えば、タイヌビエのようなイネ科雑草;アゼナ、アゼトウガラシ、キカシグサ、ミゾハコベ、アブノメ、ヒメミソハギ、コナギのような広葉雑草;タマガヤツリ、ホタルイ、マツバイ、ミズガヤツリ、シズイ、クログワイのようなカヤツリグサ科雑草;及び、ウリカワ、オモダカ、ヘラオモダカのようなオモダカ科雑草、非農耕地、畑地及び果樹園で問題となる種々の雑草、例えば、イヌホウズキ及びチョウセンアサガオのようなナス科雑草、イチビ及びアメリカキンゴジカのようなアオイ科雑草、マルバアサガオ及びセイヨウヒルガオのようなヒルガオ科雑草、イヌビユ及びアオゲイトウのようなヒユ科雑草、オナモミ、ブタクサ、ノボロギク及びヒメジョオンのようなキク科雑草、カラシナ及びナズナのようなアブラナ科雑草、シロザ及びアカザのようなアカザ科雑草、フィールドパンジーのようなスミレ科雑草、ハコベのようなナデシコ科雑草、シロツメクサ、クサネム及びエビスグサのようなマメ科雑草、スベリヒユのようなスベリヒユ科雑草、オオイヌノフグリのようなゴマノハグサ科雑草、ホトケノザのようなシソ科雑草、コニシキソウのようなトウダイグサ科雑草、イヌビエ、セイバンモロコシ、メヒシバ、オヒシバ、スズメノカタビラ、スズメノテッポウ、カラスムギ、ボウムギ、ライグラス、エノコログサ及びギョウギシバのようなイネ科雑草、コゴメガヤツリ及びキハマスゲのようなカヤツリグサ科雑草、ツユクサ及びマルバツユクサのようなツユクサ科雑草、スギナのようなトクサ科雑草などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【実施例
【0062】
以下に、本発明に使用する農薬組成物の製剤例を示し具体的に説明するが、本発明はこれらに限られるものではない。なお、下記製剤例において、「%」とあるのは、質量%を示し、「部」とあるのは、重量部を示す。
【0063】
(実施例1)
ピラゾレート原体(純度94.5%)128.57部、シクロピリモレート原体(純度98.50%)59.83部、Morwet(登録商標)D-425 Powder(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製、アルキルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩)3.00部、ニューコール(登録商標)607-PDE(日本乳化剤社製、ポリオキシエチレン モノ、ジ若しくはトリスチリルフェニルエーテル 燐酸モノ又はジエステル)4.50部、サーフィノール(登録商標)104PG50(エボニック・ジャパン社製、アルキレンジオール)0.60部、AF(登録処方)-128(10%水溶液)(旭化学工業社製、シリコーン消泡剤)0.60部および水道水102.90部を混合し、アトライター(登録商標)0.1S 型(三井金属鉱山社製)にて湿式粉砕し、ピラゾレート/シクロピリモレートプレミックススラリーを得た。次いで、硫酸アンモニウム1.50部、アグリゾールG-200(花王社製、アニオン系特殊高分子界面活性剤)45.00部、ニューコールPB60(日本乳化剤社製、ポリスチリルフェニルエーテル・ホルマリン縮合物)4.50部、Morwet(登録商標)D-425 Powder30.00部および水道水219.00部を混合溶解し、分散剤混合液を得た。また、ベントナイト(クニピア(登録商標)F、クニミネ工業社製)11.20部、キサンタンガム(ロードポール(登録商標)23、ローディア日華社製)2.80部、プロピレングリコール186.64部および水道水599.36部を加えて混合し、増粘剤混合液を得た。ピラゾレート/シクロピリモレートプレミックススラリー280.00部、分散剤混合液200.00部、増粘剤混合液300.00部、フェントラザミド原末(純度71.90%)62.59部、プロクセル(登録商標)GXL-S(アーチケミカルズ・ジャパン社製)を2.0部および水道水155.41部を加えて混合し、比表面積が94,400cm/cmである水性懸濁状農薬組成物を得た。
【0064】
(実施例2)
ピラゾレート原体(純度94.5%)105.79部、シクロピリモレート原体(純度98.40%)49.59部、プロピリスルフロン原体(純度98.3%)16.16部、Morwet(登録商標)D-425 Powder(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製、アルキルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩)3.60部、VEEGUM R(登録商標)(Vanderbilt Minerals社製、ケイ酸アルミニウムマグネシウム)0.60部、ニューコール(登録商標)607-PDE(日本乳化剤社製、ポリオキシエチレン モノ、ジ若しくはトリスチリルフェニルエーテル 燐酸モノ又はジエステル)4.50部、ニューコール(登録商標) 291-PG (日本乳化剤社製、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム塩)0.15部、AF(登録処方)-128(10%水溶液)(旭化学工業社製、シリコーン消泡剤)3.00部および水道水116.61部を混合し、アトライター(登録商標)0.1S 型(三井金属鉱山社製)にて湿式粉砕し、ピラゾレート/シクロピリモレート/プロピリスルフロンプレミックススラリーを得た。次いで、硫酸アンモニウム6.00部、ポリティー(登録商標)A540(ライオン社製、ポリアクリル酸塩)60.00部および水道水234.00部を加えて混合溶解し、分散剤混合液を得た。また、ベントナイト(クニピア(登録商標)F、クニミネ工業社製)5.50部、キサンタンガム(ロードポール(登録商標)23、ローディア日華社製)2.00部、プロピレングリコール133.35部および水道水359.15部を加えて混合し、増粘剤混合液を得た。ピラゾレート/シクロピリモレート/プロピリスルフロンプレミックススラリー272.00部、分散剤混合液200.00部、増粘剤混合液240.00部、プロクセル(登録商標)GXL-S(アーチケミカルズ・ジャパン社製)を1.60部および水道水86.40部を加えて混合し、比表面積が93,600cm/cmである水性懸濁状農薬組成物を得た。
【0065】
(実施例3)
ピラゾレート原体(純度94.2%)177.18部、プロピリスルフロン原体(純度98.2%)10.05部、Morwet(登録商標)D-425 Powder(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製、アルキルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩)2.40部、ニューコール(登録商標)607-PDE(日本乳化剤社製、ポリオキシエチレン モノ、ジ若しくはトリスチリルフェニルエーテル 燐酸モノ又はジエステル)3.00部、サーフィノール(登録商標)104PG50(エボニック・ジャパン社製、アルキレンジオール)0.30部、KM(登録処方)-68-1F(10%水溶液)(信越化学工業社製、ソルビタン脂肪酸エステル)0.30部および水道水106.77部を混合し、アトライター(登録商標)0.1S 型(三井金属鉱山社製)にて湿式粉砕し、ピラゾレート/プロピリスルフロンプレミックススラリーを得た。次いで、硫酸アンモニウム3.99部、アグリゾールG-200(花王社製、アニオン系特殊高分子界面活性剤)80.01部、Morwet(登録商標)D-425 Powder60.00部、および水道水を156.00部を加えて混合溶解し、分散剤混合液を得た。また、ベントナイト(クニピア(登録商標)F、クニミネ工業社製)3.96部、キサンタンガム(ロードポール(登録商標)23、ローディア日華社製)1.44部、プロピレングリコール55.56部および水道水239.04部を加えて混合し、増粘剤混合液を得た。ピラゾレート/プロピリスルフロンプレミックススラリー148.20部、分散剤混合液22.50部、増粘剤混合液81.00部、プロクセル(登録商標)GXL-S(アーチケミカルズ・ジャパン社製)を0.60部および水道水47.70部を加えて混合し、比表面積が135,200cm/cmである水性懸濁状農薬組成物を得た。
【0066】
(実施例4)
ピラゾレート原体(純度94.0%)131.61部、ピラクロニル原体(純度97.5%)22.35部、ベンゾビシクロン原体(純度98.0%)24.66部、Morwet(登録商標)D-425 Powder(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製、アルキルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩)3.00部、KP(登録商標)-1436(25)(花王社製、ポリオキシエチレンスチレン化フェノールリン酸エステル塩)3.00部、サーフィノール(登録商標)104E(エボニック・ジャパン社製、アルキレンジオール)0.30部、AF(登録処方)-128(10%水溶液)(旭化学工業社製、シリコーン消泡剤)0.30部、VEEGUM R(登録商標)(Vanderbilt Minerals社製、ケイ酸アルミニウムマグネシウム)0.60部および水道水114.18部を混合し、アトライター(登録商標)0.1S 型(三井金属鉱山社製)にて湿式粉砕し、ピラゾレート/ピラクロニル/ベンゾビシクロンプレミックススラリーを得た。次いで、アグリゾールG-200(花王社製、アニオン系特殊高分子界面活性剤)90.00部、ニューコールPB60(日本乳化剤社製、ポリスチリルフェニルエーテル・ホルマリン縮合物)9.00部、Morwet(登録商標)D-425 Powder60.00部および水道水141.00部を混合溶解し、分散剤混合液を得た。また、ベントナイト(クニピア(登録商標)F、クニミネ工業社製)3.15部、キサンタンガム(ロードポール(登録商標)23、ローディア日華社製)1.14部、プロピレングリコール63.15部、VEEGUM R(登録商標)(Vanderbilt Minerals社製、ケイ酸アルミニウムマグネシウム)5.04部および水道水227.55部を加えて混合し、増粘剤混合液を得た。ピラゾレート/ピラクロニル/ベンゾビジクロンプレミックススラリー150.00部、分散剤混合液30.00部、増粘剤混合液71.25部、プロクセル(登録商標)GXL-S(アーチケミカルズ・ジャパン社製)を0.60部および水道水48.15部を加えて混合し、比表面積が105,000cm/cmである水性懸濁状農薬組成物を得た。
【0067】
(実施例5)
ピラゾレート原体(純度94.5%)186.18部、ニューコール(登録商標)607-PDE(日本乳化剤社製、ポリオキシエチレン モノ、ジ若しくはトリスチリルフェニルエーテル 燐酸モノ又はジエステル)7.50部、AF(登録処方)-128(10%水溶液)(旭化学工業社製、シリコーン消泡剤)2.25部および水道水104.07部を混合し、アトライター(登録商標)0.1S 型(三井金属鉱山社製)にて湿式粉砕し、ピラゾレートスラリー(1)を得た。次いで、Morwet(登録商標)D-425 Powder30.00部、および水道水を270.00部加えて混合溶解し、分散剤混合液を得た。また、ベントナイト(クニピア(登録商標)F、クニミネ工業社製)3.99部、キサンタンガム(ロードポール(登録商標)23、ローディア日華社製)1.11部、プロピレングリコール69.99部および水道水224.91部を加えて混合し、増粘剤混合液を得た。ピラゾレートスラリー(1)119.70部、分散剤混合液90.00部、増粘剤混合液90.00部およびプロクセル(登録商標)GXL-S(アーチケミカルズ・ジャパン社製)0.30部を加えて混合し、比表面積が101,800cm/cmである水性懸濁状農薬組成物を得た。
【0068】
(実施例6)
実施例5と同様の処方であるが、湿式粉砕時間を調節し、比表面積が91,300cm/cmである水性懸濁状農薬組成物を得た。
【0069】
(実施例7)
実施例5及び6と同様の処方であるが、湿式粉砕時間を調節し、比表面積が81,200cm/cmである水性懸濁状農薬組成物を得た。
【0070】
(実施例8)
ピラゾレート原体(純度94.2%)149.28部、ベンゾビシクロン原体(純度99.5%)27.14部、メタゾスルフロン原体(純度93.7%)9.86部、Morwet(登録商標)D-425 Powder(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製、アルキルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩)3.00部、ニューコール(登録商標)607-PDE(日本乳化剤社製、ポリオキシエチレン モノ、ジ若しくはトリスチリルフェニルエーテル 燐酸モノ又はジエステル)3.00部、ニューコール(登録商標) 291-PG (日本乳化剤社製、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム塩)0.15部、VEEGUM R(登録商標)(Vanderbilt Minerals社製、ケイ酸アルミニウムマグネシウム)0.60部、サーフィノール(登録商標)104PG50(エボニック・ジャパン社製、アルキレンジオール)0.30部、AF(登録処方)-128(10%水溶液)(旭化学工業社製、シリコーン消泡剤)0.30部および水道水106.37部を混合し、アトライター(登録商標)0.1S 型(三井金属鉱山社製)にて湿式粉砕し、ピラゾレート/ベンゾビシクロン/メタゾスルフロンプレミックススラリーを得た。次いで、硫酸アンモニウム0.66部、中性無水芒硝(日本化学工業社製、硫酸ナトリウム)13.30部、ポリティー(登録商標)A540(ライオン社製、ポリアクリル酸塩)33.22部、3N塩酸0.72部および水道水を152.10部を加えて混合溶解し、分散剤混合液を得た。また、KERZAN AP(キサンタンガム、CPケルコ社製)0.78部、キサンタンガム(ロードポール(登録商標)23、ローディア日華社製)0.78部、プロピレングリコール33.33部および水道水265.11部を加えて混合し、増粘剤混合液を得た。ピラゾレート/ベンゾビシクロン/メタゾスルフロンプレミックススラリー200.00部、分散剤混合液150.50部、増粘剤混合液135.00部、プロクセル(登録商標)GXL-S(アーチケミカルズ・ジャパン社製)を1.00部および水道水13.50部を加えて混合し、比表面積が95,000cm/cmである水性懸濁状農薬組成物を得た。
【0071】
(比較例1)
実施例3と同様の処方であるが、湿式粉砕時間を調節し、比表面積が78,000cm/cmである水性懸濁状農薬組成物を得た。
【0072】
(比較例2)
実施例5、6及び7と同様の処方であるが、湿式粉砕時間を調節し、比表面積が52,900cm/cmである水性懸濁状農薬組成物を得た。
【0073】
(比較例3)
実施例5、6、7及び比較例2と同様の処方であるが、湿式粉砕時間を調節し、比表面積が40,600cm/cmである水性懸濁状農薬組成物を得た。
【0074】
(比較例4)
ピラゾレート原体(純度94.5%)186.18部、ニューコール(登録商標)607-PDE(日本乳化剤社製、ポリオキシエチレン モノ、ジ若しくはトリスチリルフェニルエーテル 燐酸モノ又はジエステル)7.50部、AF(登録処方)-128(10%水溶液)(旭化学工業社製、シリコーン消泡剤)2.25部および水道水104.07部を混合し、アトライター(登録商標)0.1S 型(三井金属鉱山社製)にて湿式粉砕し、ピラゾレートスラリー(1)を得た。次いで、ベントナイト(クニピア(登録商標)F、クニミネ工業社製)3.99部、キサンタンガム(ロードポール(登録商標)23、ローディア日華社製)1.11部、プロピレングリコール69.99部および水道水224.91部を加えて混合し、増粘剤混合液を得た。ピラゾレートスラリー(1)119.70部、水道水90.00部、増粘剤混合液90.00部およびプロクセル(登録商標)GXL-S(アーチケミカルズ・ジャパン社製)0.30部を加えて混合し、比表面積が90,100cm/cmである水性懸濁状農薬組成物を得た。
【0075】
(比較例5)
比較例4と同様の処方であるが、湿式粉砕時間を調節し、比表面積が80,600cm/cmである水性懸濁状農薬組成物を得た。
【0076】
(比較例6)
比較例4及び5と同様の処方であるが、湿式粉砕時間を調節し、比表面積が56,500cm/cmである水性懸濁状農薬組成物を得た。
【0077】
(比較例7)
比較例4、5及び6と同様の処方であるが、湿式粉砕時間を調節し、比表面積が35,700cm/cmである水性懸濁状農薬組成物を得た。
【0078】
(試験例)
実施例1~8および比較例1~7で製造した水性懸濁状農薬組成物をプラスチックボトルに封入し、40℃の恒温機中に90日間保存した。経時試験前後における水性懸濁状農薬組成物の有効成分含有量(ピラゾレート、シクロピリモレート、フェントラザミド、プロピリスルフロン、ピラクロニル、ベンゾビシクロン、メタゾスルフロン)を液体クロマトグラフィーで定量し、経時変化を評価した。その結果を経時後の有効成分分解率(下式)より算出した。その結果を表-1に示す。
式:有効成分分解率(%)
=[1-(保存後の有効成分含有量)/(保存前の有効成分含有量)]×100
【0079】
【表1】
【0080】
試験例の結果から明らかなように、本発明による水性懸濁状農薬組成物は比較例として挙げた公知技術などによる製剤では達成困難であった農薬活性成分の安定化を達成することができ、実用性の高い水性懸濁状農薬組成物を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の水性懸濁状農薬組成物は、除草活性成分の分解が抑制されており、非常に保存安定性に優れ、農業資材として、有用な製剤である。