(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】皮膚外用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/368 20060101AFI20241120BHJP
A61K 8/41 20060101ALI20241120BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20241120BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20241120BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20241120BHJP
A61K 31/60 20060101ALI20241120BHJP
A61K 31/14 20060101ALI20241120BHJP
A61K 31/4166 20060101ALI20241120BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20241120BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20241120BHJP
A61P 17/10 20060101ALI20241120BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241120BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20241120BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20241120BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20241120BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20241120BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20241120BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
A61K8/368
A61K8/41
A61K8/86
A61K8/49
A61Q19/00
A61K31/60
A61K31/14
A61K31/4166
A61K47/10
A61K47/44
A61P17/10
A61P43/00 121
A61K9/08
A61K9/10
A61K9/06
A61K9/12
A61K9/20
A61K9/70 401
(21)【出願番号】P 2020148631
(22)【出願日】2020-09-04
【審査請求日】2023-06-14
(31)【優先権主張番号】P 2019161792
(32)【優先日】2019-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306014736
【氏名又は名称】第一三共ヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 史織
(72)【発明者】
【氏名】松澤 優汰
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-187741(JP,A)
【文献】特開平10-087496(JP,A)
【文献】特開2006-022101(JP,A)
【文献】特開2012-062277(JP,A)
【文献】特開2018-154613(JP,A)
【文献】特開昭61-072707(JP,A)
【文献】特表2019-537597(JP,A)
【文献】Brightening Eye Creme(Record ID: 1518465),Mintel GNPD [online], 2011.03, [検索日:2024.06.11], Internet <URL:https://www.gnpd.com>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00 - 8/99
A61Q 1/00 - 90/00
A61K 9/00 - 9/72
A61K 31/00 - 33/44
A61K 47/00 - 47/69
A01N 1/00 - 65/38
A01P 1/00 - 23/00
CAplus/REGISTRY(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)サリチル酸、
(b)ベンゼトニウム塩化物、並びに
(c)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、及びアルキル基の炭素数が14~22であるポリオキシエチレンアルキルエーテルからなる群から選択される1種以上のノニオン性界面活性剤
を含有し、さらに組成物全体に占める低級アルコール濃度が27質量%以下である、
抗ニキビ皮膚外用組成物。
【請求項2】
組成物全体に対し、(a)成分の含有量が0.1~1質量%、(b)成分の含有量が0.01~0.5質量%、及び(c)成分の含有量が0.1~6質量%である、請求項1に記載の抗ニキビ皮膚外用組成物。
【請求項3】
前記ノニオン性界面活性剤の含有量が、皮膚外用組成物全体の1~6質量%である、請求項1又は2に記載の抗ニキビ皮膚外用組成物。
【請求項4】
組成物全体に占める低級アルコール濃度が1~25質量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗ニキビ皮膚外用組成物。
【請求項5】
組成物全体に占める低級アルコール濃度が0.1質量%未満である、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗ニキビ皮膚外用組成物。
【請求項6】
アラントインをさらに含有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗ニキビ皮膚外用組成物。
【請求項7】
多価アルコールをさらに含有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗ニキビ皮膚外用組成物。
【請求項8】
剤形が外用液剤、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、スプレー剤、外用固形剤又は貼付剤である、請求項1~7のいずれか一項に記載の抗ニキビ皮膚外用組成物。
【請求項9】
剤形が外用液剤である、請求項1~7のいずれか一項に記載の抗ニキビ皮膚外用組成物。
【請求項10】
ポリオレフィン製容器に収容された、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗ニキビ皮膚外用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サリチル酸とベンゼトニウム塩化物とノニオン性界面活性剤とを含有する皮膚外用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
サリチル酸は、角質を軟化させ、毛穴を開いてつまった皮脂を排出させる作用を有する。また、抗真菌作用を有し、特に白癬菌に対して1000~4000倍発育を阻止するという特徴を有することでも知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
ベンゼトニウム塩化物は陽イオン性界面活性剤(逆性石鹸)として分類される第四級アンモニウム塩であり、殺菌作用が強力で、一般的細菌(大腸菌や黄色ブドウ球菌等)に対して殺菌作用を有する(例えば、非特許文献2参照)。
【0004】
近年、サリチル酸やベンゼトニウム塩化物は、それぞれ角質溶解作用及び抗菌・殺菌作用を示す薬効成分として、抗ニキビ、殺菌消毒、及び抗皮膚炎等を用途とする皮膚外用の医薬品・医薬部外品等に広く用いられている。
【0005】
特許文献1は、(a)ベンゼトニウム塩;及び(b)(i)デヒドロ酢酸又はその塩;及び(ii)サリチル酸又はその塩の相乗効果性混合物を含む防腐剤製剤を開示し、サリチル酸及びデヒドロ酢酸がベンゼトニウム塩の殺真菌性効果を高めることを記載する。特許文献2は、抗アクネ剤としてのサリチル酸、抗菌剤としての塩化ベンザルコニウム、及び、乳酸セチル、C12-15乳酸アルキル及びこれらの組み合わせから選ばれた乳酸エステルを含むことを特徴とする組成物を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2004-524320号公報(特許第4361735号)
【文献】特開2006-22101号公報(特許第5047476号)
【非特許文献】
【0007】
【文献】医薬品インタビューフォーム(寄生性・角化性皮膚疾患用剤 サリチル酸原末「マルイシ」)2015年1月改訂(第2版)
【文献】医薬品インタビューフォーム(日本薬局方 ベンゼトニウム塩化物液 ハイアミン液10%)2015年3月改訂(第4版)
【文献】メンソレータム(登録商標)アクネス(登録商標)25メディカルローション添付文書(ロート製薬株式会社)
【文献】ペアアクネリキッド治療薬添付文書(ライオン株式会社、2014年3月改訂)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
サリチル酸を含有する抗ニキビ剤が市販されている(非特許文献3及び4)が、サリチル酸とベンゼトニウム塩化物を同時に配合できればさらなる有効性が保たれると期待される。しかし、これらを同時に配合した抗ニキビ剤は知られていない。そこで本発明者らはサリチル酸とベンゼトニウム塩化物とを組み合わせた皮膚外用組成物の創出を試みた。
【0009】
しかしながら、本発明者らは、サリチル酸とベンゼトニウム塩化物などの第四級アンモニウム塩とを組み合わせて含む水溶液中に不溶物が生じることを見出した。不溶物の出現は、製剤外観の見た目が悪いというばかりでなく、有効成分の化学的変化等により本来期待されるはずの薬理効果が十分に得られないのではないかとの懸念が生じるという問題がある。
【0010】
サリチル酸とベンゼトニウム塩化物との組み合わせにより不溶物が生じることは、本出願以前には知られていなかった事象であるので、不溶物の出現を抑制する方法についても知られていない。そこで、本発明は、サリチル酸とベンゼトニウム塩化物との組み合わせによる不溶物の出現が抑制された組成物を得ることを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ノニオン性界面活性剤を用いることにより、サリチル酸とベンゼトニウム塩化物との組み合わせによる不溶物の出現が抑制された組成物を製造することに成功した。本発明は、上記の知見に基づいて完成したものである。
【0012】
すなわち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1]下記(a)~(c)を含有する皮膚外用組成物。
(a)サリチル酸
(b)ベンゼトニウム塩化物
(c)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルからなる群から選択される1種以上のノニオン性界面活性剤。
[2]上記ノニオン性界面活性剤の含有量が、皮膚外用組成物全体の0.1~20質量%である、[1]に記載の皮膚外用組成物。
【0013】
[3]アラントインをさらに含有する、[1]又は[2]に記載の皮膚外用組成物。
[4]多価アルコールをさらに含有する、[1]~[3]のいずれか一に記載の皮膚外用組成物。
[5]低級アルコールをさらに含有する、[1]~[4]のいずれか一に記載の皮膚外用組成物。
[6]剤形が外用液剤、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、スプレー剤、外用固形剤又は貼付剤である、[1]~[5]のいずれか一に記載の皮膚外用組成物。
[7]剤形が外用液剤である、[1]~[6]のいずれか一に記載の皮膚外用組成物。
[8]抗ニキビ用である、[1]~[7]のいずれか一に記載の皮膚外用組成物。
[9]ポリオレフィン製容器に収容された、[1]~[8]のいずれか一項に記載の皮膚外用組成物。
【発明の効果】
【0014】
本発明の皮膚外用組成物は、サリチル酸とベンゼトニウム塩化物との組み合わせによる不溶物の出現が抑制されている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に記載する本発明の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は「~」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。本明細書において、特に記載しないかぎり、「%」は質量基準である。
【0016】
本発明の皮膚外用組成物は、下記(a)~(c)を含有する。
(a)サリチル酸
(b)ベンゼトニウム塩化物
(c)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルからなる群から選択される1種以上のノニオン性界面活性剤。
【0017】
本発明の皮膚外用組成物は、サリチル酸とベンゼトニウム塩化物との組み合わせによる不溶物の出現が抑制されている点で優れている。また、本発明の皮膚外用組成物は、サリチル酸とベンゼトニウム塩化物との組み合わせによる不溶物の出現を抑制したまま保存することができ、保存安定性に優れている。本発明の皮膚外用組成物は、有効成分の化学的変化等により薬効が低下することなく、本来期待されるはずの薬理効果を十分に得ることが出来る。
【0018】
本発明の皮膚外用組成物に用いられる「サリチル酸」は、サリチル酸又はその塩であり、好ましくはサリチル酸又はサリチル酸ナトリウムであり、より好ましくはサリチル酸である。本発明のサリチル酸は、第17改正日本薬局方に掲載されている。
【0019】
本発明の皮膚外用組成物は、成分(a)のサリチル酸を組成物全体の0.1~5質量%の範囲で含むことができ、0.1~1質量%の範囲で含むことが好ましい。
【0020】
本発明の皮膚外用組成物に用いられる「ベンゼトニウム塩化物」は、第17改正日本薬局方に掲載されている。
【0021】
本発明の皮膚外用組成物は、成分(b)のベンゼトニウム塩化物を組成物全体の0.01~2質量%の範囲で含むことができ、0.01~0.5質量%の範囲で含むことが好ましい。
【0022】
本発明の皮膚外用組成物は、(a)サリチル酸と(b)ベンゼトニウム塩化物に加えて、(c)ノニオン性界面活性剤を含む。ノニオン性界面活性剤は、一般に、安定化剤、界面活性剤、可溶化剤、基剤、湿潤剤、懸濁(化)コーティング剤、乳化剤、賦形剤、分散剤、崩壊剤、崩壊補助剤、溶解剤、溶解補助剤、溶剤の用途で外用剤に用いられ、これらの具体例は医薬品添加物辞典2016に収載されている。
【0023】
本発明の皮膚外用組成物に用いることができる成分(c)のノニオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルからなる群から選択される1種以上である。本発明の皮膚外用組成物は、ノニオン性界面活性剤として、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルからなる群から選択される1種を含むものでもよいし、2種以上を組み合わせて含むものでもよい。
【0024】
本発明において、成分(c)のノニオン性界面活性剤は、サリチル酸とベンゼトニウム塩化物とが配合された組成物中での不溶物の出現を抑制する目的で使用することができる。
【0025】
本発明において、成分(c)として用いることができるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油としては、特に制限はされないが、酸化エチレンの平均付加モル数が10~100の範囲のものであってもよく、20~80の範囲のものが好ましい。特に、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油について、酸化エチレンの平均付加モル数が10、20、30、40、50、60、70又は80のものが好ましい。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は1種単独で又は2種以上を組み合わせて成分(c)のノニオン性界面活性剤として用いることができる。
【0026】
本発明において、成分(c)として用いることができるポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、特に限定されないが、酸化エチレンの平均付加モル数が特定範囲のポリオキシエチレンアルキルエーテルであることができ、又は酸化エチレンの平均付加モル数が特定範囲であり且つアルキル基の炭素数が特定範囲のポリオキシエチレンアルキルエーテルであることができる。本発明に用いることができるポリオキシエチレンアルキルエーテルについて、酸化エチレンの平均付加モル数としては、2~50の範囲であることができ、4~30の範囲であることが好ましい。特に、ポリオキシエチレンアルキルエーテルについて、酸化エチレンの平均付加モル数が2、3、4、5、6、7、9、10、12、15、20、21、23、25、30、40、又は50のものが好ましい。本発明に用いることができるポリオキシエチレンアルキルエーテルについて、アルキル基の炭素数としては、12~22の範囲であることができる。特に、ポリオキシエチレンアルキルエーテルについて、アルキル基の炭素数としては、12、14、16、18、又は22のものが好ましい。ポリオキシエチレンアルキルエーテルは1種単独で又は2種以上を組み合わせて成分(c)ノニオン性界面活性剤として用いることができる。
【0027】
本発明において、成分(c)として用いることができるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルとしては、特に限定されないが、酸化エチレン及び酸化プロピレンの各々の平均付加モル数が特定範囲のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルであることができ、又は酸化エチレン及び酸化プロピレンの各々の平均付加モル数が特定範囲であり且つアルキル基の炭素数が特定範囲のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルであることができる。本発明に用いることができるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルについて、酸化エチレンの平均付加モル数としては、1~30の範囲であり、10~20の範囲であることが好ましい。また、酸化プロピレンの平均付加モル数としては、1~10の範囲であり、4~8の範囲であることが好ましい。本発明に用いることができるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルについて、アルキル基の炭素数としては、12~22の範囲であることができる。特に、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルについて、アルキル基の炭素数としては、12、14、16、18、又は22のものが好ましい。ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルは1種単独で又は2種以上を組み合わせて成分(c)ノニオン性界面活性剤として用いることができる。
【0028】
本発明の皮膚外用組成物における成分(c)のノニオン性界面活性剤の含有量は特に限定されないが、組成物全体の0.1~20質量%の範囲であることが好ましく、0.5~10質量%の範囲であることがより好ましく、1~6質量%の範囲であることがさらに好ましい。2種以上の成分(c)のノニオン性界面活性剤を用いる場合は、上記含有量の範囲は、2種以上の成分(c)のノニオン性界面活性剤の合計の含有量であることができる。
【0029】
本発明の皮膚外用組成物は水性組成物であることができる。本発明において水性組成物は水を含む組成物を意味する。本発明の皮膚外用組成物は水を組成物全体の5質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、25質量%以上、30質量%以上、35質量%以上、40質量%以上、45質量%以上、50質量%以上、55質量%以上、60質量%以上、65質量%以上、70質量%以上、75質量%以上、80質量%以上、85質量%以上、90質量%以上、95質量%以上含有することができる。本発明の水性組成物に用いられる水としては、特に限定されないが、例えば、蒸留水、常水、精製水、滅菌精製水、注射用水、注射用蒸留水等を挙げることができる。
【0030】
本発明の皮膚外用組成物が水溶液である場合において、不溶物の出現を評価するために、外観からみる透明性を、後記の実施例に記載のように目視で観察することができる。また、分光光度計を用いて透過率を測定してもよい。具体的には、透過率は、減圧脱泡した皮膚外用組成物サンプルを、石英セルを用いて、分光光度計(吸光度、例えば600nm)にて測定することができる。
【0031】
本発明の皮膚外用組成物のpHは2.0~8.0の範囲であり、3.0~7.0の範囲であることが好ましい。なお、このpHは、例えば後記のpH調節剤の使用により調節することができる。
【0032】
本発明の皮膚外用組成物は、抗炎症作用や殺菌作用等を有する他の薬剤として、特に限定されないが、アラントイン、イブプロフェンピコノール、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸モノアンモニウム、イソプロピルメチルフェノール、クロルヘキシジン塩酸塩、イオウ、レゾルシン等をさらに含有することができる。本発明の皮膚外用組成物における上記他の薬剤の含有量は特に限定されないが、組成物全体の0.01~5質量%の範囲で含むことが好ましい。上記他の薬剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0033】
本発明の好ましい実施形態において、皮膚外用組成物は、アラントインをさらに含有することできる。アラントインは、5-ウレイドヒダントインともいう化合物であり、抗炎症作用、細胞賦活作用、止血作用、殺菌作用、抗潰瘍作用等を有することが知られている薬剤である。本発明の皮膚外用組成物におけるアラントインの含有量は特に限定されないが、組成物全体の0.01~5質量%の範囲で含むことが好ましく、0.05~2質量%の範囲で含むことがより好ましい。
【0034】
本発明の皮膚外用組成物は、多価アルコールをさらに含有することができる。本発明における多価アルコールは、可溶化剤、基剤、湿潤剤、粘稠剤、溶剤、溶解補助剤等の用途で外用剤に用いられる、分子内に水酸基が2個以上あるアルコールであり、例えば、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、マクロゴール(ポリエチレングリコールともいう)、D‐ソルビトール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、ポリプロピレングリコールを挙げることができ、これらは医薬品添加物辞典2016に収載されている。本発明の多価アルコールとしては、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、及び1,3-ブチレングリコールが好ましい。多価アルコールは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0035】
本発明の皮膚外用組成物における多価アルコールの含有量は特に限定されないが、組成物全体の0.5~25質量%の範囲で含むことが好ましく、1~20質量%の範囲で含むことがより好ましく、1~10質量%の範囲で含むことがさらに好ましい。2種以上の多価アルコールを用いる場合は、上記含有量の範囲は、2種以上の多価アルコールの合計の含有量であることができる。
【0036】
本発明の皮膚外用組成物は、低級アルコールをさらに含有することができる。本発明における低級アルコールとは、可溶化剤、基剤、保存剤、溶剤、溶解補助剤等の用途で外用剤に用いられる炭素数1~4個の脂肪族アルコール類であり、例えば、メタノール、エタノール(エチルアルコールとも言う)、プロパノール、イソプロパノール(イソプロピルアルコールとも言う)、ブチルアルコール等である。本発明の低級アルコールとしては、好ましくはエタノール又はイソプロパノールであり、より好ましくはエタノールである。エタノール含量が99.5体積%以上のものは無水エタノールとも呼ばれるが、本発明におけるエタノールにはこれも含まれる。低級アルコールは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0037】
本発明の皮膚外用組成物における低級アルコールの含有量は特に限定されないが、組成物全体の0.1~40質量%の範囲で含むことができ、1~27質量%の範囲で含むことが好ましく、1~10質量%の範囲で含むことがより好ましく、1~5質量%の範囲で含むことがさらに好ましい。
【0038】
本発明の皮膚外用組成物は、低級アルコールを実質的に含有しないものであってもよい。後記の実施例に示すように、サリチル酸とベンゼトニウム塩化物とを組み合わせて含む水溶液は、エタノール濃度が低い場合に不溶物が生じることが明らかとなった。具体的には、実施例の表2の条件では、エタノール濃度30%では不溶物が生じなかったが、エタノール濃度25%以下では不溶物が生じた。しかしながら、本発明の、(a)サリチル酸、(b)ベンゼトニウム塩化物、及び(c)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルからなる群から選択される1種以上のノニオン性界面活性剤を含有する皮膚外用組成物は、低級アルコールを実質的に含有せずとも、不溶物が出現せず、白濁しない。本明細書中、低級アルコールを実質的に含有しないとは、組成物全体に対する低級アルコールの含有量が0.1質量%未満であることを意味する。組成物全体に対する低級アルコールの含有量は0質量%であってもよい。
【0039】
本発明の皮膚外用組成物は、エタノールを実質的に含有せずとも、不溶物が出現せず、白濁しないため、エタノールを用いずに製造することができる。そのため、エタノールを用いずに製造された本発明の皮膚外用組成物は、アルコール過敏症等のエタノールに対してアレルギー反応を起こす患者にも使用することができ、幅広い患者への適用が可能である。
【0040】
本発明の皮膚外用組成物に配合することができる上記成分以外の医薬品添加物は、例えば、経時的な含量安定性や使用感の更なる向上等を目的として必要に応じて添加するものであり、例えば、血行改善成分、キレート剤、pH調節剤、保存剤、ゲル化剤、増粘剤、油性基剤、乳化剤、保湿成分、清涼化剤や抗酸化剤等を挙げることができる。
【0041】
上記血行改善成分としては、特に限定されないが、例えば、トコフェロール酢酸エステル、ニコチン酸ベンジルエステル等を挙げることができる。血行改善成分は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0042】
キレート剤としては、特に限定されないが、例えば、エデト酸ナトリウム、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸三ナトリウム、グルコン酸、フィチン酸、ヒドロキシエタンジホスホン酸四ナトリウム、ピロリン酸塩、ヘキサメタリン酸塩等を挙げることができる。キレート剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0043】
pH調節剤としては、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等アルカリ金属の水酸化物、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等アルカノールアミン、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、コハク酸、マレイン酸、酢酸等の有機酸及びそれらの塩、塩酸、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸、リン酸三ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸二水素カリウム等の無機酸及びそれらの塩等、その他、炭酸グアニジン、炭酸アンモニウム、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、L-アルギニン等を挙げることができる。pH調節剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0044】
保存剤としては、特に限定されないが、例えば、安息香酸、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸メチル、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸、フェノキシエタノール等が挙げることができる。保存剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0045】
ゲル化剤としては、特に限定されないが、例えば、カルボキシビニルポリマー、アクリルコポリマー、例えばアクリラート/アクリル酸アルキルのコポリマー、ポリアクリルアミド、多糖類等を挙げることができる。ゲル化剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0046】
増粘剤としては、特に限定されないが、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、カラギーナン、グァーガム、ゼラチン、デキストリン、シクロデキストリン、ペクチン等の増粘多糖類、カルメロースナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム、軽質無水ケイ酸等を挙げることができる。増粘剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0047】
油性基剤としては、特に限定されないが、例えば、ワセリン、パラフィン、流動パラフィン、軽質イソパラフィン、流動イソパラフィン、オゾケライト、セレシン、ハードファット、マイクロクリスタリンワックス、スクワラン、αーオレフィンオリゴマー、ポリエチレン末等の炭化水素;ステアリルアルコール、セタノール、ベヘニルアルコール、セトステアリルアルコール、ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、オレイルアルコール、デシルテトラデカノール、ミリスチルアルコール等の高級アルコール;パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸セチル、トリ2-エチルヘキシル酸グリセリル、中鎖脂肪酸トリグリセリド等のエステル油;ジメチルポリシロキサン、ジメチルシロキサン等の重合型シリコーン;オリーブ油等の植物油等を挙げることができる。油性基剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0048】
乳化剤としては、特に限定されないが、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、水素添加大豆リン脂質等が挙げられる。乳化剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0049】
保湿成分としては、特に限定されないが、例えば、ヒアルロン酸ナトリウム、コラーゲン、エラスチン、ケラチン、キチン、キトサン等の高分子化合物;グリシン、アスパラギン酸、アルギニン等のアミノ酸;乳酸ナトリウム、尿素、ピロリドンカルボン酸ナトリウム等の天然保湿因子;セラミド、コレステロール、リン脂質等の脂質等が挙げられる。保湿成分は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0050】
清涼化剤としては、特に限定されないが、例えば、カンフル、dl-カンフル、ハッカ油、l-メントール、ユーカリ油等を挙げることができる。清涼化剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0051】
抗酸化剤としては、特に限定されないが、例えば、アスコルビン酸、アスコルビン酸グルコシド、テトラヘキシルデカン酸アスコルビル等を挙げることができる。抗酸化剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0052】
本発明の皮膚外用組成物の剤形は、特に限定されないが、例えば、外用液剤、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、スプレー剤、外用固形剤、及び貼付剤を挙げることができる。これらは、各剤形に適した添加剤や基剤を適宜使用し、日本薬局方などに記載される通常の方法に従い、製造することができる。
【0053】
外用液剤は、頭皮を含む皮膚又は爪に塗布する液状の製剤であり、リニメント剤、ローション剤を含む。外用液剤は、通常、有効成分に溶剤、添加剤などを加え、溶解、乳化、又は懸濁し、必要に応じて濾過することにより製造することができる。リニメント剤とは、皮膚にすり込んで用いる液状又は泥状の外用液剤をいう。ローション剤とは、有効成分を水性の液に溶解又は乳化もしくは微細に分散させた外用液剤をいい、通常、有効成分、添加剤、及び精製水を用いて、溶液、懸濁液、又は乳濁液として全体を均質とすることにより製造することができる。
【0054】
クリーム剤は、皮膚に塗布する、水中油型又は油中水型に乳化した半固形の製剤である。軟膏剤は、皮膚に塗布する、有効成分を基剤に溶解又は分散させた半固形の製剤であり、油脂性軟膏剤と水溶性軟膏剤がある。
【0055】
ゲル剤は、皮膚に塗布するゲル状の製剤である。例えば、水性ゲル剤は、有効成分に高分子化合物、その他の添加剤及び精製水を加えて溶解又は懸濁させ、加温及び冷却、又はゲル化剤を加えて架橋させることにより製造することができる。
【0056】
スプレー剤は、有効成分を霧状、粉末状、泡沫状、又はペースト状などとして皮膚に噴霧する製剤であり、外用エアゾール剤、ポンプスプレー剤などが含まれる。スプレー剤は、通常、有効成分の溶液又は懸濁液を調製し、必要に応じて濾過した後、容器に充填することにより製造することができる。
【0057】
貼付剤は、皮膚に貼付する製剤であり、テープ剤、パップ剤を含み、特にパップ剤は水を含む基剤を用いる貼付剤である。
【0058】
本発明の皮膚外用組成物は、医薬品、医薬部外品等として、皮膚外用剤の形態で使用することができる。本発明の皮膚外用組成物は、抗ニキビ用として使用することができる。本発明において抗ニキビ用とは、ニキビの予防及び/又は治療を目的として用いることを意味する。本発明の皮膚外用組成物は、殺菌成分のベンゼトニウム塩化物と角質軟化成分のサリチル酸を含有し、ベンゼトニウム塩化物が患部に浸透し、アクネ菌・二次感染原因菌に効果を示し、ニキビにより生じる角質増殖を抑え、ニキビの悪化を抑制することができる。できはじめのニキビや固くなったニキビに使用することができる。
【0059】
本発明の皮膚外用組成物は1日1回~数回、皮膚患部に塗布することができる。例えば、ボトル、ジャー、チューブ、ポンプ、スティック、ロールオン、エアゾール等の容器から、適量を、直接、又は手に若しくは脱脂綿やガーゼに取った後に、所望の箇所に塗布することができる。より具体的には、1日2回(朝と晩)、脱脂綿やガーゼに適量を取り、肌にしばらくの間(2~3分間)押しあてて使用することができる。顔面、背部、肩部、胸部、上腕、頸部など、ニキビの生じ得る部位に使用することができる。
【0060】
本発明の皮膚外用組成物を収容するために、特に限定されないが、例えば、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン製容器及びポリエチレンテレフタレート等のポリエステル製容器等を含むプラスチック製容器、ガラス容器、並びにアルミ等の金属容器等を使用することができる。
【0061】
以下に、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明する。
【実施例】
【0062】
1.皮膚外用組成物の製造例
(1)試薬
以下の試薬を用いて、皮膚外用組成物を製造した。
サリチル酸(富士フィルム和光純薬工業株式会社)
ベンゼトニウム塩化物(富士フィルム和光純薬工業株式会社)
アラントイン(東京化成工業株式会社)
無水エタノール(今津薬品工業株式会社)
ジプロピレングリコール(関東化学株式会社)
1,3-ブチレングリコール(関東化学株式会社)
プロピレングリコール(丸石製薬株式会社)
【0063】
ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(4)セチルエーテル(NIKKOL PBC-34、日光ケミカルズ株式会社)
ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(8)セチルエーテル(NIKKOL PBC-44、日光ケミカルズ株式会社)
ポリオキシエチレンラウリルエーテル(NIKKOL BL-9EX、BL-21、日光ケミカルズ株式会社)
セトマクロゴール1000(NIKKOL BC-23、日光ケミカルズ株式会社)
【0064】
ポリオキシエチレンセチルエーテル(NIKKOL BC-20、BC-30、日光ケミカルズ株式会社)
ポリオキシエチレンオレイルエーテル(NIKKOL BO-20V、日光ケミカルズ株式会社)
ポリオキシエチレンベヘニルエーテル(NIKKOL BB-20、日光ケミカルズ株式会社)
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(NIKKOL HCO-60、日光ケミカルズ株式会社)
ポリソルベート60(NIKKOL TS-10MV、日光ケミカルズ株式会社)
ポリソルベート80(NIKKOL TO-10MV、日光ケミカルズ株式会社)
【0065】
テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット(NIKKOL GO-460V、日光ケミカルズ株式会社)
モノステアリン酸ポリエチレングリコール(NIKKOL MYS-40V、日光ケミカルズ株式会社)
モノステアリン酸ポリグリセリル(NIKKOL Decaglyn 1-SVEX、日光ケミカルズ株式会社)
クエン酸(東京化成工業株式会社)
クエン酸ナトリウム水和物(関東化学株式会社)
【0066】
(2)製造方法
【0067】
室温にて、サリチル酸及びベンゼトニウム塩化物にエタノール及び/又は多価アルコール及び/又は加温して融解した界面活性剤を加えて溶解し、この液にpH調節剤を溶解した精製水を加えて十分に攪拌し、皮膚外用組成物を得た。
【0068】
(3)皮膚外用組成物の透明性評価
得られた皮膚外用組成物について、製造直後の透明性を目視で確認し、不溶物の出現について以下の基準で評価した。
<評価基準>
○:不溶物の出現が全く観察されなかった場合
×:不溶物の出現により、組成物が白く濁っており、透明性がない場合
(4)皮膚外用組成物の保存安定性試験
得られた皮膚外用組成物を室温で24時間静置し、透明性を目視で確認し、上記と同じ基準で評価した。
【0069】
(5)サリチル酸及びベンゼトニウム塩化物の溶解性について
有効成分であるサリチル酸及びベンゼトニウム塩化物の溶解性について、参考例として表1に示す。アラントインの溶解性についても表1に示す。
【0070】
【0071】
サリチル酸は水に溶けないが、ベンゼトニウム塩化物塩とアラントインは水に溶ける(参考例1~3)。参考例1のサリチル酸は全く溶けなかった。
【0072】
22%エタノール水溶液では、サリチル酸、ベンゼトニウム塩化物及びアラントインはそれぞれ単独では、不溶物が出現しなかったが、サリチル酸とベンゼトニウム塩化物の組み合わせでは製造直後から、不溶物が出現し白濁した。サリチル酸とベンゼトニウム塩化物の組み合わせがエタノール水溶液中で不溶物が生じることは、従来知られていなかった。
【0073】
エタノール濃度を変えて、サリチル酸とベンゼトニウム塩化物の組み合わせにより不溶物が生じる条件を検討した。結果を表2に示す。
【0074】
【0075】
水溶液中のエタノール濃度が低い場合に、不溶物が生じることが明らかになった。表2の条件では、エタノール濃度30%では不溶物が生じなかったが、エタノール濃度25%以下では不溶物が生じた。
【0076】
(6)サリチル酸及びベンゼトニウム塩化物の溶解性に関する界面活性剤の影響について
界面活性剤を添加して、エタノール濃度1~25%の水溶液における溶解性を検討した。表3に結果を示す。
【0077】
【0078】
界面活性剤の存在下、エタノール濃度1~25%の水溶液中で、サリチル酸とベンゼトニウム塩化物の組み合わせが不溶物を生じないことが明らかとなった。
【0079】
10%エタノールと5%ジプロピレングリコールを含む水溶液中で各種界面活性剤添加の効果を検討した。結果を表4に示す。
【0080】
【0081】
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、又はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を使用した実施例6~8では、製造直後も24時間後も不溶物が生じなかった。
【0082】
4%エタノールと4%ジプロピレングリコールを含む水溶液中で各種界面活性剤添加の効果を検討した。結果を表5に示す。
【0083】
【0084】
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、又はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を使用した実施例9~16では、製造直後も24時間後も不溶物が生じなかった。ポリソルベート60、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、又はモノステアリン酸ポリグリセリルを使用した比較例1~4では、製造直後も24時間後も不溶物が生じた。また、表5には記載していないが、ポリソルベート60、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、又はモノステアリン酸ポリグリセリルについては、その添加量を2%に増量しても、製造24時間後には不溶物が生じていた。
【0085】
サリチル酸とベンゼトニウム塩化物の溶解性に関するpHの影響を検討した。下記実施例17~19では多価アルコールとして1,3-ブチレングリコールを用いた。結果を表6に示す。
【0086】
【表6】
pH3~5の範囲では、サリチル酸とベンゼトニウム塩化物の溶解性に関するpHの影響は観察されなかった。
【0087】
(7)エタノール不含有の処方における溶解性の検討
各種界面活性剤の存在下、エタノールを含まない水溶液中での溶解性を検討した。結果を表7及び8に示す。
【0088】
【0089】
【0090】
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、又はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を使用した実施例20~33では、エタノール不含有でも、製造直後も24時間後も不溶物が生じなかった。界面活性剤を添加しなかった比較例5では、製造直後も24時間後も不溶物が生じていた。少なくともpH3.0~5.5の酸性域では、サリチル酸とベンゼトニウム塩化物の溶解性に関するpHの影響は観察されなかった。
【0091】
(8)外用液剤の製造例
外用液剤の製造例を表9に示す。表9に記載の成分及び分量をとり、日本薬局方製剤総則「外用液剤」の項に準じて外用液剤を製造することができる。
【0092】
【0093】
(9)ゲル剤の製造例
ゲル剤の製造例を表10に示す。表10に記載の成分及び分量をとり、日本薬局方製剤総則「ゲル剤」の項に準じてゲル剤を製造することができる。
【0094】
【0095】
(10)クリーム剤の製造例
クリーム剤の製造例を表11に示す。表11に記載の成分及び分量をとり、日本薬局方製剤総則「クリーム剤」の項に準じてクリーム剤を製造することができる。
【0096】
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の、サリチル酸及びベンゼトニウム塩化物を含有する皮膚外用組成物は、使用感にも優れ、かつ室温保存下の外観でみる保存安定性に優れるため、極めて有用である。