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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】管体の継手構造
(51)【国際特許分類】
   F16L 21/08 20060101AFI20241120BHJP
   F16L 21/03 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
F16L21/08 B
F16L21/03
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020152270
(22)【出願日】2020-09-10
(65)【公開番号】P2021156431
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-06-13
(31)【優先権主張番号】P 2019178258
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020057820
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】従野 友裕
(72)【発明者】
【氏名】山川 英之
(72)【発明者】
【氏名】吉井 孝育
(72)【発明者】
【氏名】安倍 綾香
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-239289(JP,A)
【文献】特開2002-005360(JP,A)
【文献】実開昭56-081283(JP,U)
【文献】国際公開第2015/089313(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第102187140(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 21/08
F16L 21/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管端部に挿口を有する第1の管体と、管端部に受口を有する第2の管体と、係止部材と、を備え、
前記受口が前記挿口を受け入れた状態で前記受口の内周面と前記挿口の外周面との間に前記係止部材が位置し、
前記挿口は前記外周面における前記係止部材よりも前記挿口の管端側に、前記係止部材側に向く第1の係止面を含む段差を有し、
前記受口は前記内周面における前記係止部材よりも前記受口の管端側に、前記係止部材側に向く第2の係止面を含む段差を有し、
前記挿口の外周面上に、前記第1の係止面を有する抜止部材を備え、
前記受口の内周面に、前記第2の係止面を有する第2の溝を有し、
前記受口が前記挿口を受け入れた状態で前記係止部材側に向く前記抜止部材の前記第1の係止面が、前記第1の管体の管端に向かうにつれて高くなる傾斜面となっており、
前記係止部材が、前記受口の内周面と前記挿口の外周面との間を軸線まわりに周回する金属製ワイヤであり、
前記挿口を前記受口から抜く力が加わったときに、前記係止部材に前記第1の係止面と前記第2の係止面が当接して係止する、管体の継手構造。
【請求項2】
前記係止部材が、複数本の素線を撚って束ねたストランドが複数本撚り合わされた形態の金属製ワイヤである、請求項1に記載の管体の継手構造。
【請求項3】
前記受口又は前記挿口に、前記長尺部材を挿入する挿入孔を有する、請求項1又は2に記載の管体の継手構造。
【請求項4】
前記長尺部材の長さが、前記挿口の外周面の周長より長い、請求項1~のいずれか一項に記載の管体の継手構造。
【請求項5】
前記受口の内周面又は前記挿口の外周面の前記第2の係止面よりも前記挿口の管端側に、前記受口の内周面と前記挿口の外周面の両方に密着するシールゴムを備える、請求項1~のいずれか一項に記載の管体の継手構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管体の継手構造に関する。
【背景技術】
【0002】
管体の継手構造においては、管体の抜けを抑制することが求められる。特許文献1には、軸線方向の前部の内面に拡径部を有し、前記拡径部に突条を有するカラー本体を用いて、2つの管体を接続する継手構造が開示されている。
【0003】
前記継手構造では、カラー本体の後部に一方の管体を挿し込んで接着剤で接着し、前部に他方の管体を挿し込んでカラー本体内で管体の端面同士を当接させる。そして、カラー本体の前部の突条よりも外側と他方の管体の間に止水ゴム輪を設ける。この継手構造では、接着剤による接着によって一方の管体の離脱を抑制し、止水ゴム輪によって他方の管体の離脱を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開昭62-24188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のような管体の継手構造では、現場における管体とカラー本体の後部との接着剤による接着が煩雑で作業性が悪く、管体の離脱抑制効果も不十分である。また、施工後に継手構造を解体して再度形成し直すことは困難であり、メンテナンス性も悪い。
【0006】
本発明は、管体の離脱抑制効果が高く、作業性に優れ、メンテナンス性にも優れた管体の継手構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]管端部に挿口を有する第1の管体と、管端部に受口を有する第2の管体と、係止部材と、を備え、
前記受口が前記挿口を受け入れた状態で前記受口の内周面と前記挿口の外周面との間に前記係止部材が位置し、
前記挿口は前記外周面における前記係止部材よりも前記挿口の管端側に、前記係止部材側に向く第1の係止面を含む段差を有し、
前記受口は前記内周面における前記係止部材よりも前記受口の管端側に、前記係止部材側に向く第2の係止面を含む段差を有し、
前記挿口を前記受口から抜く力が加わったときに、前記係止部材に前記第1の係止面と前記第2の係止面が当接して係止する、管体の継手構造。
[2]前記挿口の外周面上に、前記第1の係止面を有する抜止部材を備え、
前記受口の内周面に、前記第2の係止面を有する第2の溝を有する、[1]に記載の管体の継手構造。
[3]前記挿口の外周面に、前記第1の係止面を有する第1の溝を有し、
前記受口の内周面に、前記第2の係止面を有する第2の溝を有する、[1]に記載の管体の継手構造。
[4]前記係止部材が、前記受口の内周面と前記挿口の外周面との間を軸線まわりに周回する長尺部材である、[1]~[3]のいずれかに記載の管体の継手構造。
[5]前記長尺部材が金属製ワイヤである、[4]に記載の管体の継手構造。
[6]前記受口又は前記挿口に、前記長尺部材を挿入する挿入孔を有する、[4]又は[5]に記載の管体の継手構造。
[7]前記長尺部材の長さが、前記挿口の外周面の周長より長い、[4]~[6]のいずれかに記載の管体の継手構造。
[8]前記受口の内周面又は前記挿口の外周面の前記第2の係止面よりも前記挿口の管端側に、前記受口の内周面と前記挿口の外周面の両方に密着するシールゴムを備える、[1]~[7]のいずれかに記載の管体の継手構造。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、管体の離脱抑制効果が高く、作業性に優れ、メンテナンス性にも優れた管体の継手構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係る管体の継手構造を示す側面図である。
図2図1の管体の継手構造のA-A断面図である。
図3図1の管体の継手構造のB-B断面図である。
図4図1の管体の継手構造の挿入孔を含む部分の縦断面図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る管体の継手構造の一部を示す縦断面図である。
図6】本発明の第3実施形態に係る管体の継手構造の一部を示す縦断面図である。
図7】本発明の第4実施形態に係る管体の継手構造の一部を示す縦断面図である。
図8】本発明の第5実施形態に係る管体の継手構造の一部を示す縦断面図である。
図9】本発明の管体の継手構造に用いる長尺部材の一例である金属製ワイヤを示す側面図である。
図10】金属製ワイヤの防食のための構成を示す断面図である。
図11】金属製ワイヤの防食のための構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の管体の継手構造の実施形態例について、図面を参照して説明する。
なお、以下の説明において例示される図の寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0011】
[第1実施形態]
第1実施形態の管体の継手構造1(以下、単に「継手構造1」とも記す。)は、図1~4に示すように、第1の管体10と、第2の管体12と、係止部材14と、抜止部材16と、シールゴム18と、を備えている。
【0012】
第1の管体10は、管端部に挿口20を有している。第1の管体10としては、例えば円筒形の直管や曲管を例示できる。第1の管体10は、一方の管端部のみに挿口20を有していてもよく、両方の管端部に挿口20を有していてもよい。
【0013】
第1の管体10としては、例えば、ガラス繊維強化プラスチック管(FRP管)、ガラス繊維強化プラスチックと樹脂モルタルとを複合したFRPM管、FRPM管やFRP管の全体を金属で補強した管体、FRPM管やFRP管の挿口20となる管端部を金属で補強した管体を例示できる。
管体を補強する金属としては、例えば、ステンレス鋼、炭素鋼、アルミニウムを例示できる。
【0014】
第2の管体12は、管端部に受口22を有している。第2の管体12は受口22の内外周面が拡径しており、受口22の内部に第1の管体10の挿口20を受け入れることができる。
第2の管体12としては、例えば円筒形の管体を例示でき、直管であってもよく、曲管であってもよい。第2の管体12は、一方の管端部のみに受口22を有していてもよく、両方の管端部に受口22を有していてもよい。第2の管体12は、管に限られず、継手であってもよい。
【0015】
受口22が挿口20を受け入れた状態では、挿口20の軸線と受口22の軸線とが一致する。また、受口22が挿口20を受け入れた状態で、受口22の内周面22aと挿口20の外周面20aとは離間する。
本明細書においては、軸線に直交する方向を径方向とし、軸線回りに周回する方向を周方向とする。
【0016】
継手構造1における挿口20の長さは、適宜設定でき、例えば、50mm以上、1000mm以下とすることができる。継手構造1における受口22の長さは、適宜設定でき、例えば、50mm以上、1200mm以下とすることができる。
なお、受口22の長さは、第2の管体12の管端部において挿口20を受け入れるために内部が拡径した部分の軸線方向の長さである。挿口20の長さは、第1の管体10の管端部において受口22に受け入れられる部分の最大長さである。
【0017】
第2の管体12は、受口22の内周面22aの管端12a寄りに、受口22を周方向に周回する第2の溝24を有している。継手構造1では、第2の溝24の受口22の管端12a側の段差が、受口22の内周面22aにおける係止部材14よりも受口22の管端12a側に位置する、係止部材14側に向く第2の係止面26bを含む段差である。
第2の係止面26bは、継手構造1に挿口20を受口22から抜く力が加わったときに、係止部材14に当接して係止する面である。
【0018】
第2の溝24の軸線方向に切断した断面形状は、この例では矩形状である。なお、第2の溝24の断面形状は、第2の係止面26bを有する形状であればよく、矩形状には限定されない。第2の溝24の断面形状は、例えば、半円状であってもよく、矩形の角部が丸みを帯びた形状であってもよい。
【0019】
軸線方向において、第2の溝24の幅は、係止部材14の最大幅と同じか、又はそれよりも大きくする。第2の溝24の幅と係止部材14の最大幅との差は、0mm以上、10mm以下が好ましく、2mm以上、5mm以下がより好ましい。前記の差が前記範囲の下限値以上であれば、係止部材14を挿入でき、係止できる。前記の差が前記範囲の上限値以下であれば、受口22が長くなりすぎずに経済的であるし、必要以上に係止部材14が第2の溝24の中で動いたり、ねじれたりすることがない。
なお、第2の溝24の幅は、第2の溝24の軸線方向における縁同士の距離である。
【0020】
径方向において、第2の溝24の最深部と挿口20の外周面20aとの距離は、係止部材14の最大高さと同じか、又はそれよりも大きくすることが好ましい。第2の溝24の最深部と挿口20の外周面20aとの径方向における距離と係止部材14の最大高さとの差は、0mm以上、5mm以下が好ましく、1mm以上、3mm以下がより好ましい。前記の差が前記範囲の下限値以上かつ上限値以下であれば、係止部材14を挿入でき、係止できる。
【0021】
第2の管体12としては、例えば、FRPM管、FRP管、鋼管の外面を樹脂で被覆した管体、FRPM管やFRP管の内面を金属で補強した管体を例示できる。
鋼管の外面を被覆する樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂を例示できる。
管体を補強する金属としては、第1の管体10で例示したものと同じものを例示できる。
【0022】
係止部材14は、受口22が挿口20を受け入れた状態の受口22の内周面22aと挿口20の外周面20aとの間に位置している。この例の係止部材14は、長尺部材であり、受口22の内周面22aと挿口20の外周面20aとの間を軸線周りに第2の溝24に沿って周回している。
【0023】
継手構造1では、第2の管体12が受口22に長尺部材である係止部材14を挿入する挿入孔23を有している。長尺部材である係止部材14は、挿入孔23から挿口20と受口22の間に挿入できる。
【0024】
挿入孔23の正面視形状は、係止部材14を抜き挿しできるように適宜設定すればよく、例えば、長方形、円形、楕円形を例示できる。
挿入孔23の孔径は、係止部材14の直径よりも1~5mm程度大きいことが好ましい。なお、挿入孔23の孔径は、挿入孔23の正面視形状が真円でない場合、挿入孔23の長さ方向に垂直な断面形状の外接円の直径とする。係止部材14の直径は、係止部材14の断面形状が真円でない場合、係止部材14の長さ方向に垂直な断面形状の外接円の直径とする。
第2の管体12の径方向と挿入孔23の中心軸とがなす角度は、45度以上90度未満が好ましい。
【0025】
長尺部材である係止部材14としては、受口22と挿口20の間を周回できる柔軟性ひいては可撓性と、継手構造1に挿口20を受口22から抜く力が加わったときに係止できる硬さとせん断強度を兼ね備えた部材を使用できる。
【0026】
長尺部材である係止部材14に挿口20を受口22から抜く力が加わった際、周方向の単位長さあたりに耐えられるせん断荷重は、50N/mm以上が好ましく、200N/mm以上がより好ましい。長尺部材の単位長さあたりに耐えられるせん断荷重が前記の値以上であれば、挿口20を受口22から抜く力が加わったときに係止することができる。
【0027】
長尺部材の長さLは、第1の管体10の管端部の挿口20の外周面の周長より長いことが好ましい。また、長尺部材の長さLは、第2の溝24の底面の周長よりも長いことが好ましく、第2の溝24の底面の周長よりも50~200mm長いことがより好ましい。このような長尺部材を用いることで、挿入後の長尺部材の端部が挿入孔23から外に飛び出た状態となる。そのため、挿入をやり直す際には長尺部材を抜き取りことが容易になる。また、挿入孔23から飛び出た長尺部材の端部が目印となるため、長尺部材の挿入が完了していることを目視で確認しやすい。
なお、長尺部材の長さLが挿口20の外周面の周長や第2の溝24の底面の周長と同程度で、挿入後の長尺部材の端部が挿入孔23から外に飛び出さない態様であってもよい。
【0028】
長尺部材の具体例としては、例えば、ステンレス鋼(SUS)製ワイヤ、チタン製ワイヤ、タングステン製ワイヤ、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)製ワイヤ、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製ワイヤを例示できる。長尺部材としては、鋼線に樹脂を被覆又は含浸した部材、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、シリコンゴム等のゴム製の長尺部材、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂製の長尺部材、チェーン等を使用してもよい。
【0029】
長尺部材としては、圧縮に対して変形しにくく抜け止め効果が安定して発現する点、受口22の内周に沿うように曲げやすく長尺部材の挿入や取り出しが容易になる点から、金属製ワイヤが好ましい。また、金属製ワイヤは、以下の点でも有利である。
【0030】
地震の発生等によって継手構造1に離脱力が加わると、多くの場合、第1の管体10の挿口20はその軸線方向が第2の管体12の受口22の軸線方向に対して斜めになった状態で受口22から抜けようとする。従来の離脱抑制機構の1つである金属製ロックリングは管体の軸線方向における柔軟性が小さいことから、それを採用した場合、受口に設けた溝状のロックリング収容部にロックリングが点接触して離脱力が集中し、受口が破損するおそれがある。これに対し、金属製ワイヤは金属製ロックリングに比べて管体の軸線方向における柔軟性に優れる。これにより、第1の管体10の挿口20が第2の管体12の受口22に対して斜めに抜けようとしても、金属製ワイヤと受口22との接触面積がより大きくなるため、離脱力が集中しにくく受口22の破損が抑制される。
【0031】
また、樹脂材料は長期間にわたって離脱荷重が加わるとクリープ変形しやすく、また温度が高いほどクリープ変形が顕著であるため、離脱抑制効果が低下しやすい傾向がある。加えて、樹脂材料は低温環境下で脆性破壊が生じやすく、脈動等で衝撃が加わると破損しやすい傾向がある。これに対し、金属製ワイヤは、クリープ変形が生じにくく、また低温環境下でも脆性破壊が生じにくく破損しにくいため、離脱抑制効果が長期間にわたって安定して得られる。例えば、金属製ワイヤの材質がSUS304等の場合、0度に対する衝撃値に対して-196度においても80%以上の強度を確保できる。
【0032】
金属製ワイヤとしては、耐食性を有するSUS製ワイヤが特に好ましい。
金属製ワイヤの形態としては、特に限定されず、例えば、複数本の素線を撚って束ねたストランドが複数本撚り合わされた形態が挙げられる。
【0033】
長尺部材の長さ方向に垂直な断面形状は、特に限定されず、例えば、円形、矩形、台形、ひし形を例示できる。
径方向における長尺部材の最大高さは、第2の溝24の幅や、最深部と挿口20の外周面20aとの距離、受口22の内周面22aと挿口20の外周面20aとの距離等に応じて設定すればよい。径方向における長尺部材の最大高さは、受口22の内周面22aと挿口20の外周面20aとの距離の1.2倍以上、2.5倍以下が好ましく、1.8倍以上、2.2倍以下がより好ましい。径方向における長尺部材の最大高さが前記範囲の下限以上であれば、挿口20が受口22から抜けることを抑制しやすい。長尺部材の直径が前記範囲の上限以下であれば、受口22の外径が大きくなりすぎない。
【0034】
図9に示すように、長尺部材である係止部材14として金属製ワイヤ14Aを用いる場合、金属製ワイヤ14Aの両側の端部15a,15bは被覆材40によって被覆されていることが好ましい。また、この場合、金属製ワイヤ14Aの端部15a,15bの先端よりも先まで被覆材40が設けられていることが好ましい。
【0035】
一般に金属製ワイヤの端部はほつれが生じやすいが、金属製ワイヤ14Aの両側の端部15a,15bを被覆材40で被覆することで、ほつれを抑制できる。また、ほつれが抑制されることで、挿入孔23から金属製ワイヤ14Aを挿口20と受口22の間に挿入する際の抵抗が小さくなって引っ掛かりにくくなるため、金属製ワイヤ14Aの挿入が容易になる。金属製ワイヤ14Aの挿入性をさらに高めるために、金属製ワイヤ14Aの端部15a,15bを被覆する被覆材40の表面に滑剤を塗布してもよい。さらに、後述の抜止部材16がゴム製の場合でも、金属製ワイヤ14Aの挿入時や引き抜き時に金属製ワイヤ14Aの端部15a,15bによって抜止部材16が傷付くことが抑制される。
【0036】
上述したように、金属製ワイヤ14Aの長さLは、第1の管体10の管端部の挿口20の外周面の周長より長いことが好ましい。また、金属製ワイヤ14Aの長さLは、第2の溝24の周長より長いことが好ましく、第2の溝24の周長より50~200mm長いことがより好ましい。これにより、挿入後の金属製ワイヤ14Aの端部が挿入孔23から外に飛び出た状態になるため、挿入をやり直す際に抜き取りやすく、飛び出た端部が挿入完了の目印にもなる。
【0037】
金属製ワイヤ14Aの端部15a,15bを被覆する被覆材40の金属製ワイヤ14Aの長さ方向の長さL1は、適宜設定でき、例えば、20~500mmとすることができる。また、被覆材40の金属製ワイヤ14Aの先端よりも先の部分の長さL2は、適宜設定でき、例えば、5~30mmとすることができる。金属製ワイヤ14A全体を被覆材40で覆い、防食性を高めてもよい。
【0038】
被覆材40としては、金属製ワイヤ14Aの端部15a,15bを被覆してほつれを防止できるものであればよく、例えば、熱収縮チューブ、キャップ、目地材等が挙げられ、熱収縮チューブが好ましい。
【0039】
熱収縮チューブの材質としては、特に限定されず、例えば、ポリオレフィン、フッ素系ポリマー、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。キャップの材質としては、特に限定されず、例えば、各種のゴム、シリコーン等が挙げられる。目地材としては、特に限定されず、例えば、変成シリコン、ウレタン、アクリル等が挙げられる。
【0040】
金属製ワイヤ14Aを用いる場合、図10に示すように、金属製ワイヤ14Aの外周面全体をポリエチレン樹脂からなる樹脂層42で被覆してもよい。これにより、継手構造1を腐食性の高い土壌に適用する場合であっても金属製ワイヤ14Aの腐食を充分に抑制できる。また、この場合、金属製ワイヤ14Aの両側の端面15c,15dは、保護層44を設けて保護することが好ましい。
保護層44を形成する保護材としては、エポキシ接着剤、アクリル接着剤等の接着剤、ゴム栓、エンドキャップ、防水テープ、防食テープ等が使用できる。
【0041】
また、図11に示すように、金属製ワイヤ14Aの外周面全体を熱収縮チューブ40Aによって被覆して腐食を抑制することもできる。この場合も金属製ワイヤ14Aの両側の端面15c,15dを保護層44によって保護することが好ましい。例えば、熱収縮チューブ40Aを金属製ワイヤ14Aよりも長くし、熱収縮チューブ40Aの両端部が金属製ワイヤ14Aの両端側で余る構成とする。そして、熱収縮チューブ40Aの両端部に保護材を充填して保護層44を形成し、金属製ワイヤ14Aの両側の端面15c,15dを保護する。
【0042】
抜止部材16は、第1の管体10の挿口20の外周面20a上における軸線方向の係止部材14よりも管端10a側に位置し、外周面20aに取り付けられている。抜止部材16は、断面台形状であり、係止部材14側に第1の係止面26aを有している。このように、継手構造1は、挿口20の外周面20aにおける係止部材14よりも挿口20の管端10a側に、係止部材14側に向く第1の係止面26aを含む段差を有している。
第1の係止面26aは、継手構造1に挿口20を受口22から抜く力が加わったときに、係止部材14に当接して係止する面である。
【0043】
継手構造1は、受口22の内周面22aと挿口20の外周面20aとの間を周回する環状の抜止部材16を有していてもよく、周方向に断続的に存在する複数の抜止部材16を有していてもよい。
【0044】
抜止部材16を挿口20の外周面20aに固定する方法としては、接着剤で接着する方法、ボルトやナットで機械的に固定する方法を例示できる。なかでも、抜止部材16の固定が容易な点から、接着剤で接着する方法が好ましい。
抜止部材16を固定する接着剤としては、例えば、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤を例示できる。接着剤は、充填剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0045】
この例の抜止部材16の軸線方向に沿って切断した断面形状は、挿口20の外周面20aから受口22の内周面22aに向かうにつれて幅が狭くなる台形状である。なお、抜止部材16の断面形状は、台形状には限定されず、半円状、矩形状等であってもよい。
【0046】
抜止部材16の断面形状としては、第1の係止面26aが第1の管体10の管端10aに向かうにつれて高くなる傾斜面となる形状が好ましい。これにより、第1の係止面26aが係止部材14に当接して係止したときに、抜止部材16が挿口20の外周面20aから剥がれにくくなる。
【0047】
抜止部材16の軸線方向に沿って切断した断面における挿口20の外周面20aに対する第1の係止面26aの傾斜角度θ(図4)は、30°以上、60°以下が好ましく、40°以上、45°以下がより好ましい。第1の係止面26aの傾斜角度が前記範囲の下限値以上であれば、挿口20が受口22から抜けることを抑制しやすい。第1の係止面26aの傾斜角度が前記範囲の上限値以下であれば、抜止部材16の挿口20の外周面20aからの剥離を抑制しやすい。
【0048】
抜止部材16の断面形状における第1の係止面26aと反対側は、第1の管体10の管端10aに向かうにつれて低くなる傾斜面17であることが好ましい。これにより、挿口20を受口22内に挿し込む際に抜止部材16が引っ掛かりにくく、容易に挿し込むことができる。
【0049】
抜止部材16の断面形状における挿口20の外周面20aに対する第1の係止面26aと反対側の傾斜面17の傾斜角度φ(図4)は、60°以下が好ましく、45°以下がより好ましい。傾斜面17の傾斜角度が前記範囲の上限値以下であれば、挿口20を受口22内に容易に挿し込むことができる。
【0050】
軸線方向における抜止部材16の幅は、20mm以上、50mm以下が好ましく、30mm以上、40mm以下がより好ましい。抜止部材16の幅が前記範囲の下限値以上であれば、剥離しにくい。抜止部材16の幅が前記範囲の上限値以下であれば、挿口20が長くなりすぎず経済的である。
なお、抜止部材16の幅は、抜止部材16の軸線方向における縁同士の平均の距離である。
【0051】
径方向において、抜止部材16が位置している挿口20の外周面20aと受口22の内周面22aとの距離に対する抜止部材16の最大高さの比は、抜止部材16がゴム等の大きな変形が可能である場合、0.8以上、1.5以下が好ましく、1.0以上、1.2以下がより好ましい。抜止部材16が金属や樹脂等の大きな変形が困難である場合の前記比は、0.3以上、1.0以下が好ましく、0.8以上、0.9以下がより好ましい。前記抜止部材16の高さの比が前記範囲の下限値以上であれば、挿口20が受口22から抜けることを抑制しやすい。前記抜止部材16の高さの比が前記範囲の上限値以下であれば、挿口20を受口22内に容易に挿し込むことができる。
なお、抜止部材16の最大高さは、挿口20の外周面20aと抜止部材16の径方向の受口22側の先端との距離である。
【0052】
抜止部材16の材質としては、例えば、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、シリコンゴム等のゴム製、ステンレス鋼等の鋼材、繊維強化プラスチック(FRP)、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂等の樹脂を例示できる。抜止部材16としては、鋼板に樹脂を被覆した部材を使用することもできる。
【0053】
シールゴム18は、受口22の内周面22aと挿口20の外周面20aとの間における、抜止部材16よりも第1の管体10の管端10a側に位置し、内周面22aに取り付けられている。シールゴム18は、環状であり、受口22の内周面22aと挿口20の外周面20aの両方に密着した状態で周回している。
シールゴム18により、継手構造1の受口22が挿口20を受け入れた部分を通過する水等が漏れることが抑制される。
【0054】
継手構造1では、シールゴム18は、受口22の内周面22aにおける第2の係止面26bよりも第1の管体10の挿口20の管端10a側に位置している。この例では、第2の管体12が、受口22の内周面22aにおける第2の係止面26bよりも挿口20の管端10a側に挿口20を周回する凹条28を有している。そして、シールゴム18が凹条28に嵌合している。
なお、本発明では、挿口20の外周面20aにおける第2の係止面26bよりも挿口20の管端10a側にシールゴム18を固定していてもよい。
【0055】
シールゴム18の軸線方向に沿って切断した断面形状は、受口22への挿口20の挿入性とシール性を考慮して適宜設定すればよい。
シールゴム18の材質としては、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等の合成ゴムを例示できる。シールゴム18の材質としては、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0056】
シールゴム18を受口22の内周面22aに固定する方法としては、抜止部材16を挿口20の外周面20aに固定する方法と同じ方法を例示でき、接着剤で接着する方法が好ましい。
シールゴム18を固定する接着剤としては、抜止部材16を固定する接着剤と同じものを例示できる。
【0057】
継手構造1は、以下の方法で容易に形成できる。第2の管体12のシールゴム18を備える受口22に、第1の管体10の抜止部材16を備える挿口20を挿入する。次いで、受口22の外側から、挿入孔23を通じて係止部材14を挿口20と受口22の間に挿入する。
【0058】
継手構造1では、例えば、地震の発生時や圧送時に挿口20を受口22から抜く力が加わったときに、係止部材14の軸線方向の両側に第1の係止面26aと第2の係止面26bが当接して係止する。これにより、受口22からの挿口20の予期せぬ離脱が抑制される。
【0059】
このように、継手構造1は、作業性に優れ、管体の離脱抑制効果が高い。例えば、第2の管体12が両方の管端部に受口22を有する曲管であり、両方の受口22に直管である第1の管体10の挿口20を受け入れる場合、地震の発生時や圧送時には大きなスラスト力が加わる。この場合でも、継手構造1であれば、受口22からの挿口20の離脱を十分に抑制できる。
【0060】
また、継手構造1では、施工後に挿口20と受口22の間に位置する係止部材14を引き抜いて解体し、再度係止部材14を挿し込んで継手構造1を形成することもできるため、メンテナンス性にも優れている。特に長尺部材が金属製ワイヤ14Aで、その長さLが挿口20の外周面の周長や第2の溝24の周長よりも50~200mm長いと、挿入後に金属製ワイヤ14Aの端部が挿入孔23から外に飛び出た状態になるため、メンテナンス性に優れ、挿入のやり直しも容易である。長尺部材(金属製ワイヤ)を長く設定し、挿入後の端部が挿入孔から飛び出た状態にする利点は、他の実施形態でも同様である。
【0061】
[第2実施形態]
第2実施形態の管体の継手構造2(以下、単に「継手構造2」とも記す。)は、図5に示すように、第2の管体12の管端12a近傍の受口22の内周面22aと挿口20の外周面20aの間にシール部材30を備えている。シール部材30は、環状であり、受口22の内周面22aと挿口20の外周面20aの両方に密着した状態で周回している。継手構造2は、シール部材30を有している以外は、継手構造1と同様の態様である。
【0062】
例えば、挿口20の外周面20aにシール部材30を接着剤等で固定することで、第2の管体12の管端12a近傍の受口22の内周面22aと挿口20の外周面20aの間にシール部材30を位置させることができる。また、挿口20を受口22に挿入して接合した後、受口22の管端12a側から受口22の内周面22aと挿口20の外周面20aの間にシール部材30を詰め込んでもよい。これらの態様であれば、第1の管体10と第2の管体12とを接合する際、抜止部材16とシール部材30とが干渉して挿口20の受口22への挿入が困難になることを抑制できる。
シール部材30の材質としては、例えば、シールゴム18で例示したものと同じものを例示できる。
【0063】
継手構造2も継手構造1と同様に容易に形成でき、受口22からの挿口20の予期せぬ離脱を抑制でき、メンテナンス性にも優れている。また、継手構造2では、シール部材30を備えているため、施工後に挿入孔23を塞ぐことで、外部からの水等の浸入を防ぐことができ、その結果、係止部材14の腐食を抑制することができる。また、受口22の管端12a近傍において受口22や挿口20が予期せず変形することを抑制しやすくなる。
なお、本発明の管体の継手構造が受口22の管端12a寄りにシール部材30を備えている場合、挿口20の管端10a寄りのシールゴム18を備えていなくてもよい。
【0064】
[第3実施形態]
第3実施形態の管体の継手構造3(以下、単に「継手構造3」とも記す。)は、図6に示すように、挿口20が外周面20aに第1の係止面26aを有する第1の溝25を有し、受口22が内周面22aに第2の係止面26bを有する第2の溝24を有する。継手構造3は、挿口20の外周面20a上に抜止部材16を備える代わりに、挿口20の外周面20aに第1の溝25を有している以外は、継手構造1と同様の態様である。
【0065】
継手構造3では、第1の溝25の挿口20の管端10a側の段差が、挿口20の外周面20aにおける係止部材14よりも挿口20の管端10a側に位置する、係止部材14側に向く第1の係止面26aを含む段差である。また、第2の溝24の受口22の管端12a側の段差が、受口22の内周面22aにおける係止部材14よりも受口22の管端12a側に位置する、係止部材14側に向く第2の係止面26bを含む段差である。
【0066】
継手構造3でも、挿口20を受口22に挿入した後、受口22の外側から挿入孔23を通じて係止部材14を挿口20と受口22の間に挿入することで容易に形成できる。また、地震の発生時や圧送時に挿口20を受口22から抜く力が加わったときには、係止部材14に第1の係止面26aと第2の係止面26bが当接して係止するため、受口22からの挿口20の予期せぬ離脱が抑制される。また、係止部材14の抜き挿しが容易なため、メンテナンス性にも優れている。
このように、本発明の管体の継手構造は、第1の管体の挿口の外周面上に抜止部材を備えていなくてもよい。
【0067】
[第4実施形態]
第4実施形態の管体の継手構造4(以下、単に「継手構造4」とも記す。)は、図7に示すように、受口22の内周面22a上における係止部材14よりも受口22の管端12a側に抜止部材32を有する。継手構造4は、受口22の内周面22aに第2の溝24を有する代わりに抜止部材32を有する点、及び径方向の抜止部材16の高さを低く設定する点以外は、継手構造1と同様の態様である。
【0068】
継手構造4では、抜止部材32が、係止部材14側に向く第2の係止面26bを有している。
継手構造4は、受口22の内周面22aと挿口20の外周面20aとの間を軸線周りに周回する環状の抜止部材32を有していてもよく、周方向に断続的に存在する複数の抜止部材32を有していてもよい。
【0069】
抜止部材32の態様としては、抜止部材16と同様の態様を例示できる。この例の抜止部材32の軸線方向に沿って切断した断面形状は、受口22の内周面22aから挿口20の外周面20aに向かうにつれて幅が狭くなる台形状である。なお、抜止部材32の断面形状は、台形状には限定されず、半円状、矩形状等であってもよい。
【0070】
抜止部材32の断面形状としては、第2の係止面26bが第2の管体12の管端12aに向かうにつれて高くなる傾斜面となる形状が好ましい。これにより、第2の係止面26bが係止部材14に当接して係止したときに、抜止部材32が受口22の内周面22aから剥がれにくくなる。
抜止部材32の軸線方向に沿って切断した断面における受口22の内周面22aに対する第2の係止面26bの傾斜角度の好ましい範囲は、前記の第1の係止面26aの傾斜角度θの好ましい範囲と同様である。
【0071】
抜止部材32の断面形状における第2の係止面26bと反対側は、第2の管体12の管端12aに向かうにつれて低くなる傾斜面であることが好ましい。これにより、挿口20を受口22内に挿し込む際に抜止部材32が引っ掛かりにくく、容易に挿し込むことができる。
抜止部材32の断面形状における第2の係止面26bと反対側の傾斜面の受口22の内周面22aに対する傾斜角度の好ましい範囲は、前記の傾斜面17の傾斜角度φの好ましい範囲と同様である。
【0072】
継手構造4においては、抜止部材32の寸法は、抜止部材16の寸法に応じて設定する。具体的には、継手構造4における抜止部材16と抜止部材32の径方向の高さは、挿口20を受口22から抜く力が加わったときに係止でき、かつ挿口20の受口22への挿入時に抜止部材16と抜止部材32とが干渉せず、容易に挿入できるように設定する。
【0073】
径方向において、挿口20の外周面20aと受口22の内周面22aとの距離に対する、抜止部材16の最大高さと抜止部材32の最大高さの合計の比は、抜止部材16と抜止部材32の両方あるいは片方がゴム等の大きな変形が可能である場合、0.8以上、1.5以下が好ましく、1.0以上、1.2以下がより好ましい。抜止部材16と抜止部材32が金属や樹脂等の大きな変形が困難である場合の前記比は、0.3以上、1.0以下が好ましく、0.8以上、0.9以下がより好ましい。前記比が前記範囲の下限値以上であれば、挿口20が受口22から抜けることを抑制しやすい。前記比が前記範囲の上限値以下であれば、挿口20を受口22内に容易に挿し込むことができる。
軸線方向の抜止部材32の幅の好ましい範囲は、抜止部材16の幅の好ましい範囲と同様である。
【0074】
継手構造4は、挿口20を受口22に挿入した後、受口22の外側から挿入孔23を通じて係止部材14を挿口20と受口22の間に挿入することで容易に形成できる。また、地震の発生時や圧送時に挿口20を受口22から抜く力が加わったときには、係止部材14に第1の係止面26aと第2の係止面26bが当接して係止するため、受口22からの挿口20の予期せぬ離脱が抑制される。また、係止部材14の抜き挿しが容易なため、メンテナンス性にも優れている。
挿口20を容易に受口22に挿し込める点では、継手構造4よりも継手構造1~3の方が好ましい。
【0075】
[第5実施形態]
第5実施形態の管体の継手構造5(以下、単に「継手構造5」とも記す。)は、図8に示すように、継手構造1に比べて挿口20及び受口22が長く、軸線方向において、係止部材14と抜止部材16が離れている。これにより、継手構造5は、継手構造1に比べて耐震性に優れる。また、継手構造5も継手構造1と同様に容易に形成でき、受口22からの挿口20の予期せぬ離脱を抑制でき、メンテナンス性にも優れている。
【0076】
継手構造5における挿口20の長さ、受口22の長さ、軸線方向の係止部材14と抜止部材16との距離は、軸線方向の係止部材14と第1の係止面26aとの距離がレベル2の地震動の許容値以上になるように設定できる。例えば、軸線方向の係止部材14と第1の係止面26aとの距離は、50mm以上、450mm以下とすることができる。
継手構造5においては、抜止部材16とシールゴム18との軸線方向の距離が離れていてもよい。
【0077】
なお、本発明の技術的範囲は前記した実施形態例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、継手構造1~5では、係止部材14は長尺部材であったが、係止部材は長尺部材には限定されない。例えば、継手構造1、2、5において抜止部材16が環状で挿口の周囲を周回している態様、継手構造3の態様、継手構造4において抜止部材16、32が環状で挿口の周囲を周回している態様等では、複数の球体からなる係止部材14であってもよい。また、係止部材14は挿入孔23の外にはみ出していてもよい。
【0078】
継手構造1~5は挿入孔23を受口22に有していたが、係止部材を挿入するための挿入孔を挿口に有していてもよい。挿入孔を挿口に有する態様とする場合は、漏水を防止するため、軸線方向における挿入孔よりも受口22の管端12a側にシールゴムを配置する。例えば、第2の溝24、係止部材14及び抜止部材16が挿口20の管端10a寄りに位置し、シールゴム18が受口22の管端12a寄りに位置し、挿入孔23を挿口20に有する態様を例示できる。
挿口を容易に受口に挿し込める点では、継手構造1~5のように、挿入孔23を受口22に有し、シールゴム18が第2の溝24、係止部材14及び抜止部材16よりも挿口20の管端10a側に位置する態様が好ましい。
【0079】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1~5…管体の継手構造、10…第1の管体、10a…管端、12…第2の管体、12a…管端、14…係止部材、14A…金属製ワイヤ、16…抜止部材、18…シールゴム、20…挿口、20a…外周面、22…受口、22a…内周面、23…挿入孔、24…第2の溝、25…第1の溝、26a…第1の係止面、26b…第2の係止面、28…凹条、30…シール部材、32…抜止部材。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9
図10
図11