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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】空気入りタイヤおよびタイヤサイドゴム
(51)【国際特許分類】
   B60C 13/00 20060101AFI20241120BHJP
【FI】
B60C13/00 E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020155543
(22)【出願日】2020-09-16
(65)【公開番号】P2022049367
(43)【公開日】2022-03-29
【審査請求日】2023-07-07
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】深瀬 謙介
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-073698(JP,A)
【文献】特開2013-086666(JP,A)
【文献】特開2017-056890(JP,A)
【文献】特開2012-218496(JP,A)
【文献】特開昭62-134304(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ幅方向に離間して配置された、一対のビードと、
前記一対のビードにわたってタイヤ幅方向に掛け渡された、カーカスプライと、
前記カーカスプライのタイヤ幅方向外側に配置されており、外表面のタイヤ径方向の内側部分にリムラインが形成された、タイヤサイドゴムと
を備え、
前記タイヤサイドゴムは、
タイヤ径方向外側に位置する、サイドウォールゴムと、
前記サイドウォールゴムに対してタイヤ径方向内側に隣接して位置する、リムストリップゴムと
を含んでおり、
子午線断面における前記サイドウォールゴムと前記リムストリップゴムとの間の界面は、タイヤ径方向内側に向かってタイヤ幅方向外側へ階段状に延び、前記タイヤサイドゴムの外表面において前記リムラインからタイヤ径方向外側へ3mmの位置よりもタイヤ径方向内側に表出しており、
前記界面は、前記タイヤサイドゴムの外表面において前記リムラインよりもタイヤ径方向内側に表出している、空気入りタイヤ。
【請求項2】
タイヤ幅方向に離間して配置された、一対のビードと、
前記一対のビードにわたってタイヤ幅方向に掛け渡された、カーカスプライと、
前記カーカスプライのタイヤ幅方向外側に配置されており、外表面のタイヤ径方向の内側部分にリムラインが形成された、タイヤサイドゴムと
を備え、
前記タイヤサイドゴムは、
タイヤ径方向外側に位置する、サイドウォールゴムと、
前記サイドウォールゴムに対してタイヤ径方向内側に隣接して位置する、リムストリップゴムと
を含んでおり、
子午線断面における前記サイドウォールゴムと前記リムストリップゴムとの間の界面は、タイヤ径方向内側に向かってタイヤ幅方向外側へ階段状に延び、前記タイヤサイドゴムの外表面において前記リムラインからタイヤ径方向外側へ3mmの位置よりもタイヤ径方向内側に表出しており、
前記界面は、
タイヤ径方向の中央部に位置しており、タイヤ径方向に延びる、中央界面と、
前記中央界面のタイヤ径方向の外端部からタイヤ内面側に屈曲してタイヤ径方向外側に延び、前記カーカスプライの外表面に至る、外側界面と、
前記中央界面のタイヤ径方向の内端部からタイヤ外面側に屈曲してタイヤ径方向内側に延び、前記タイヤサイドゴムの外表面に至る、内側界面と
を有しており、
前記中央界面のタイヤ径方向における長さは、前記リムストリップゴムのタイヤ径方向における長さの5%以上20%以下である、空気入りタイヤ。
【請求項3】
タイヤ幅方向に離間して配置された、一対のビードと、
前記一対のビードにわたってタイヤ幅方向に掛け渡された、カーカスプライと、
前記カーカスプライのタイヤ幅方向外側に配置されており、外表面のタイヤ径方向の内側部分にリムラインが形成された、タイヤサイドゴムと
を備え、
前記タイヤサイドゴムは、
タイヤ径方向外側に位置する、サイドウォールゴムと、
前記サイドウォールゴムに対してタイヤ径方向内側に隣接して位置する、リムストリップゴムと
を含んでおり、
子午線断面における前記サイドウォールゴムと前記リムストリップゴムとの間の界面は、タイヤ径方向内側に向かってタイヤ幅方向外側へ階段状に延び、前記タイヤサイドゴムの外表面において前記リムラインからタイヤ径方向外側へ3mmの位置よりもタイヤ径方向内側に表出しており、
前記界面は、
タイヤ径方向の中央部に位置しており、タイヤ径方向に延びる、中央界面と、
前記中央界面のタイヤ径方向の外端部からタイヤ内面側に屈曲してタイヤ径方向外側に延び、前記カーカスプライの外表面に至る、外側界面と、
前記中央界面のタイヤ径方向の内端部からタイヤ外面側に屈曲してタイヤ径方向内側に延び、前記タイヤサイドゴムの外表面に至る、内側界面と
を有しており、
子午線断面において、前記リムラインを通り、前記カーカスプライの外表面に直交する直線が、前記中央界面を通る、空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記界面は、前記タイヤサイドゴムの外表面において前記リムラインからタイヤ径方向内側へ6mmの位置よりもタイヤ径方向外側に表出している、
請求項1から3のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤおよびタイヤサイドゴムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、空気入りタイヤのタイヤサイド部のうち外表面側を構成するタイヤサイドゴムは、タイヤ径方向外側に位置するサイドウォールゴムと、サイドウォールゴムに対してタイヤ径方向内側に隣接して位置するリムストリップゴムとを含んでいる。タイヤサイドゴムの外表面には、ホイールリムに適正に組み付けられたときにホイールリムの外周部に対してタイヤ径方向外側(例えば1mm外側)に同芯状に位置するリムラインが形成されている。
【0003】
特許文献1には、サイドウォールゴムとリムストリップゴムとの間の界面が、タイヤサイド部の外表面において、リムラインに表出している空気入りタイヤが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-187980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
グリーンタイヤを金型で加硫成型して製造される空気入りタイヤにおいて、加硫成形時にリムラインの近傍に割れが発生することがある。
【0006】
本発明は、加硫成型時にタイヤサイド部に割れが発生することを抑制できる、空気入りタイヤを提供することを課題とする。
【0007】
本発明は、
タイヤ幅方向に離間して配置された、一対のビードと、
前記一対のビードにわたってタイヤ幅方向に掛け渡された、カーカスプライと、
前記カーカスプライのタイヤ幅方向外側に配置されており、外表面のタイヤ径方向の内側部分にリムラインが形成された、タイヤサイドゴムと
を備え、
前記タイヤサイドゴムは、
タイヤ径方向外側に位置する、サイドウォールゴムと、
前記サイドウォールゴムに対してタイヤ径方向内側に隣接して位置する、リムストリップゴムと
を含んでおり、
子午線断面における前記サイドウォールゴムと前記リムストリップゴムとの間の界面は、タイヤ径方向内側に向かってタイヤ幅方向外側へ階段状に延び、前記タイヤサイドゴムの外表面において前記リムラインからタイヤ径方向外側へ3mmの位置よりもタイヤ径方向内側に表出しており、
前記界面は、前記タイヤサイドゴムの外表面において前記リムラインよりもタイヤ径方向内側に表出している、空気入りタイヤを提供する。
【0008】
加硫成型時の割れの原因の1つとして、本願発明者は、グリーンタイヤの形状が金型の成型面と大きく相違しておりグリーンタイヤを金型の成型面に沿わせるように変形させることを要する場合に、グリーンタイヤに局所的な歪集中が生じ、該歪集中に起因して割れが発生することがあることを見出した。例えば、グリーンタイヤの形成方法によっては、タイヤサイド部がタイヤ径方向内側に向かってタイヤ幅方向外側に傾斜するように形成されることが知られている。
【0009】
グリーンタイヤのタイヤサイド部は、タイヤ径方向外側にサイドウォールゴムが配置されており、タイヤ径方向内側にサイドウォールゴムよりも剛性の高いビードおよびリムストリップゴムが配置されている。その結果、グリーンタイヤのタイヤサイド部を金型の成型面に沿わせるように変形させた場合、剛性の低いサイドウォールゴムは全体的に金型に沿うように全体的に変形しやすいため局所的な歪集中が生じにくい一方で、剛性の高いビード周辺では局所的に湾曲することによってリムライン近傍に局所的な歪集中が生じて割れが発生すると考えられる。
【0010】
本発明によれば、サイドウォールゴムとリムストリップゴムとの間の界面が、タイヤサイドゴムの外表面においてリムラインからタイヤ径方向外側へ3mmの位置よりもタイヤ径方向内側に表出しているので、リムストリップゴムの体積が過大になることが抑制される。この結果、ビード周辺における剛性過大が抑制される。
【0011】
界面が表出する位置とリムラインとの間の距離が3mmを超過すると、リムストリップゴムの体積の低減代が不足し、ビード周辺における剛性過大の抑制効果が不足しやすい。
【0012】
また、界面は、タイヤ径方向内側に向かってタイヤ幅方向外側に階段状に延びているので、直線状に形成する場合に比して、タイヤ径方向に長大化させやすい。これによって、界面をリムラインよりもタイヤ径方向内側に表出させつつも、ビード周辺の剛性が過度に低下することが抑制される。さらに、タイヤサイドゴムは、リムストリップゴムからサイドウォールゴムへの遷移領域がタイヤ径方向に長大化されるので、ビードからタイヤ径方向外側に向かって剛性を緩やかに低減させやすい。
【0013】
すなわち、タイヤサイド部において、ビード周辺の剛性が過大とならないと共に、ビードからタイヤ径方向外側に向かって剛性が緩やかに変化(低減)するので、加硫成型時にタイヤサイド部を全体的に金型の成型面に沿わせて変形させやすい。この結果、加硫成型時におけるリムライン近傍の局所的な歪集中が抑制されるので、加硫成型時のリムライン近傍における割れが抑制される。
【0015】
界面がタイヤサイドゴムの外表面においてリムラインよりもタイヤ径方向内側に表出していることによって、界面が、タイヤサイドゴムの外表面においてリムラインよりタイヤ径方向外側に表出する場合に比して、リムストリップゴムの体積をさらに低減しやすい。よって、ビード周辺の剛性過大がさらに抑制される。
【0016】
また、前記界面は、前記タイヤサイドゴムの外表面において前記リムラインからタイヤ径方向内側へ6mmの位置よりもタイヤ径方向外側に表出していてもよい。
【0017】
本構成によれば、リムストリップゴムを、リム組みされるホイールリムに対して適切に配置しやすく、リムストリップゴムによってホイールリムを適切に支持できる。
【0018】
一方、界面が表出する位置とリムラインとの間の距離が6mmを超過すると、ホイールリムにリム組みされた状態で、ホイールリムとの当接部に、サイドウォールゴムが位置する領域が増大する。一般的に、サイドウォールゴムはリムストリップゴムに比してゴム硬度が低いので、サイドウォールゴムのリムフランジへの嵌合部において、リムホイールの支持剛性が不足しやすい。この場合、例えば、制動時に、ホイールリムに対して空気入りタイヤが回転方向に変位する、リムずれが生じやすい。
【0021】
本発明の他の態様は、
タイヤ幅方向に離間して配置された、一対のビードと、
前記一対のビードにわたってタイヤ幅方向に掛け渡された、カーカスプライと、
前記カーカスプライのタイヤ幅方向外側に配置されており、外表面のタイヤ径方向の内側部分にリムラインが形成された、タイヤサイドゴムと
を備え、
前記タイヤサイドゴムは、
タイヤ径方向外側に位置する、サイドウォールゴムと、
前記サイドウォールゴムに対してタイヤ径方向内側に隣接して位置する、リムストリップゴムと
を含んでおり、
子午線断面における前記サイドウォールゴムと前記リムストリップゴムとの間の界面は、タイヤ径方向内側に向かってタイヤ幅方向外側へ階段状に延び、前記タイヤサイドゴムの外表面において前記リムラインからタイヤ径方向外側へ3mmの位置よりもタイヤ径方向内側に表出しており、
前記界面は、
タイヤ径方向の中央部に位置しており、タイヤ径方向に延びる、中央界面と、
前記中央界面のタイヤ径方向の外端部からタイヤ内面側に屈曲してタイヤ径方向外側に延び、前記カーカスプライの外表面に至る、外側界面と、
前記中央界面のタイヤ径方向の内端部からタイヤ外面側に屈曲してタイヤ径方向内側に延び、前記タイヤサイドゴムの外表面に至る、内側界面と
を有しており、
記中央界面のタイヤ径方向における長さは、前記リムストリップゴムのタイヤ径方向における長さの5%以上20%以下である、空気入りタイヤを提供する
【0022】
本構成によれば、界面を、タイヤ径方向に長大化させつつ、外側界面および内側界面のタイヤ径方向に対する角度が過度に小さくなることが抑制される。これによって、タイヤサイドゴムの製造性が向上する。
また、中央界面のタイヤ径方向における長さリムストリップゴムのタイヤ径方向における長さの5%以上20%以下であるので、界面を、タイヤ径方向に適度に長大化させやすい。中央界面の長さがリムストリップゴムの長さの5%未満であると、リムストリップゴムをタイヤ径方向に長大化させにくく、リムストリップゴムによるビードの支持剛性が不足しやすい。中央界面の長さがリムストリップゴムの長さの20%を超過すると、リムストリップゴムがタイヤ径方向に過度に長大化してリムストリップゴムの体積の低減代が不足し、ビードの剛性過大の抑制効果が低減する。
【0023】
本発明のさらなる他の態様は、
タイヤ幅方向に離間して配置された、一対のビードと、
前記一対のビードにわたってタイヤ幅方向に掛け渡された、カーカスプライと、
前記カーカスプライのタイヤ幅方向外側に配置されており、外表面のタイヤ径方向の内側部分にリムラインが形成された、タイヤサイドゴムと
を備え、
前記タイヤサイドゴムは、
タイヤ径方向外側に位置する、サイドウォールゴムと、
前記サイドウォールゴムに対してタイヤ径方向内側に隣接して位置する、リムストリップゴムと
を含んでおり、
子午線断面における前記サイドウォールゴムと前記リムストリップゴムとの間の界面は、タイヤ径方向内側に向かってタイヤ幅方向外側へ階段状に延び、前記タイヤサイドゴムの外表面において前記リムラインからタイヤ径方向外側へ3mmの位置よりもタイヤ径方向内側に表出しており、
前記界面は、
タイヤ径方向の中央部に位置しており、タイヤ径方向に延びる、中央界面と、
前記中央界面のタイヤ径方向の外端部からタイヤ内面側に屈曲してタイヤ径方向外側に延び、前記カーカスプライの外表面に至る、外側界面と、
前記中央界面のタイヤ径方向の内端部からタイヤ外面側に屈曲してタイヤ径方向内側に延び、前記タイヤサイドゴムの外表面に至る、内側界面と
を有しており、
午線断面において、前記リムラインを通り、前記カーカスプライの外表面に直交する直線が、前記中央界面を通っている、空気入りタイヤを提供する
【0024】
本構成によれば、界面を、タイヤ径方向に長大化させつつ、外側界面および内側界面のタイヤ径方向に対する角度が過度に小さくなることが抑制される。これによって、タイヤサイドゴムの製造性が向上する。
また、子午線断面において、リムラインを通り、カーカスプライの外表面に直交する直線が、中央界面を通っているので、リムラインの近傍に中央界面が位置するので、リムライン近傍におけるリムストリップゴムの肉厚がタイヤ周方向に略均一化される。この結果、ビード周辺の剛性をリムライン近傍においてタイヤ周方向に均一化しやすく、リム組みされたときに、リムライン近傍に位置しておりリムホイールに当接する部分の支持剛性をタイヤ周方向に均一化しやすい。これによって、空気入りタイヤをリムホイールに適切にリム組みしやすく、リムずれが抑制される。
【0026】
本発明によれば、界面をタイヤサイドゴムの幅方向に長大化させつつ、界面のタイヤサイドゴムの幅方向に対する角度が過度に小さくなることが抑制される。これによって、タイヤサイドゴムを口金から押し出して成型する場合に、口金のリムストリップゴムを押し出す開口部分が過度に小さい角度になることが抑制されるので、リムストリップゴムを安定して押し出すことができる。特に、流動性が低いストリップゴムを押し出すときに、本発明の効果が好適に発揮される。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、加硫成型後にタイヤサイド部に割れが発生することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤのビード周辺を示す子午線断面図。
図2】タイヤサイドゴムを概略的に示す断面図。
図3】変形例に係る空気入りタイヤのビード周辺を示す子午線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。また図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは相違している。
【0030】
図1は、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤ1の子午線断面図であって、タイヤサイド部5のうちビード部3の周辺が拡大して示されている。図1に示されるように、空気入りタイヤ1は、トレッド(不図示)と、このタイヤ幅方向の両側部からタイヤ径方向内側に延びる一対のタイヤサイド部5と、一対のタイヤサイド部5それぞれのタイヤ径方向内側に位置する一対のビード部3とを有している。
【0031】
一対のビード部3にはそれぞれビード10が埋設されている。タイヤ幅方向に離間して配置された一対のビード10(図1において一方側のみ示されている)にわたってタイヤ幅方向にカーカスプライ13が掛け渡されている。カーカスプライ13のタイヤ幅方向外側には、タイヤサイドゴム20が配置されている。
【0032】
カーカスプライ13の外表面側には、ビード10の周囲においてチェーファ14がさらに配置されている。また、カーカスプライ13の内表面側にはインナーライナ15が配置されている。
【0033】
ビード10は、鋼線等の収束体をゴム被覆してなるビードコア11と、ビードコア11の外周面に貼り付けられた断面略三角形状をなす硬質ゴム製のビードフィラー12とを含んでいる。カーカスプライ13は、本実施形態では1枚であり、平行に配設された複数本のカーカスコードがトッピングゴムで被覆されて構成されている。
【0034】
タイヤサイドゴム20は、カーカスプライ13のタイヤ径方向外側に配置される不図示のトレッドゴムのタイヤ幅方向端部からタイヤ幅方向の内側に延びており、タイヤサイド部5の外表面を構成している。
【0035】
タイヤサイドゴム20には、外表面20bのタイヤ径方向の内側部分に円環状のリムライン20aが形成されている。リムライン20aは、子午線断面において、外表面20bからタイヤ幅方向外側に突出しており、規定のホイールリム50にリム組みされたとき、ビード部3がリムフランジ51に適正に収まっているかどうかを確認するためのラインである。具体的には、空気入りタイヤ1が適正にリム組みされたとき、タイヤ側面視で、リムライン20aはホイールリム50のリムフランジ51に対してタイヤ径方向外側に僅かの間隔(例えば約1mm)を空けて同心状に位置するように形成されている。
【0036】
すなわち、空気入りタイヤ1をリム組みしたときに、リムライン20aがリムフランジ51に対して、タイヤ径方向内側に落ち込んだり、部分的にタイヤ径方向外側にせり上がったりすることなく、外周側に等間隔で同心状に位置することを確認することにより、空気入りタイヤ1がホイールリム50に適正にリム組みされていることを確認できる。
【0037】
タイヤサイドゴム20は、タイヤ径方向外側に位置するサイドウォールゴム21と、サイドウォールゴム21に対してタイヤ径方向内側に隣接して位置するリムストリップゴム26とを含んでいる。具体的には、サイドウォールゴム21のタイヤ径方向内側に位置する内径側部分21aに対して、リムストリップゴム26のタイヤ径方向外側に位置する外径側部分26aが、タイヤ幅方向内側から隣接している。
【0038】
サイドウォールゴム21は耐候性に優れたゴムが使用されている。リムストリップゴム26は、サイドウォールゴム21に比して耐摩滅性に優れた硬質ゴムが使用されている。例えば、サイドウォールゴムの100%モジュラス値は4.0MPa以上8.0MPa以下であり、リムストリップゴム26の100%モジュラス値は10.2MPa以上16.7MPa以下である。なお、各部材の100%モジュラス値は、JIS K6251:2010 3.7に定める試験片に100%の伸びを与えたときの引張力を試験片の初期断面積で除した値である。尚、試験片は、ダンベル状3号形を使用した。
【0039】
サイドウォールゴム21とリムストリップゴム6との間の界面30は、カーカスプライ13の外表面13aに隣接する内面側端部30aからタイヤサイドゴム20の外表面20bに表出する外面側端部30bまで、タイヤ径方向内側に向かってタイヤ幅方向外側へ階段状に延びている。界面30は、外側界面31と、中央界面32と、内側界面33とを、タイヤ径方向外側から順に有している。
【0040】
中央界面32は、界面30のうちタイヤ径方向の中央部に位置しており、カーカスプライ13の外表面13aに沿って略平行にタイヤ径方向内側に延びている。本実施形態では、中央界面32が位置するタイヤ径方向位置において、タイヤサイドゴム20は略一定肉厚であるので、中央界面32は、タイヤサイドゴム20の外表面20bにも沿って平行に延びている。
【0041】
外側界面31は、中央界面32のタイヤ径方向の外端部32aからタイヤ内面側に屈曲して、タイヤ径方向外側に向かってタイヤ幅方向内側に傾斜した方向に延びて、内面側端部30aに至っている。
【0042】
内側界面33は、中央界面32のタイヤ径方向の内端部32bからタイヤ外面側に屈曲して、タイヤ径方向内側に向かってタイヤ幅方向外側に傾斜した方向に延びて、外面側端部30bに至っている。
【0043】
界面30の内面側端部30aは、リムライン20aよりもタイヤ径方向外側に位置している。具体的には、タイヤ径方向において、内面側端部30aは、リムライン20aから不図示のタイヤ最大幅位置の間に位置している。界面30の外面側端部30bは、リムライン20aからタイヤ径方向外側へ3mmの位置P1よりもタイヤ径方向内側に位置している。好ましくは、外面側端部30bは、リムライン20aよりもタイヤ径方向内側に位置している。さらに好ましくは、外面側端部30bは、リムライン20aからタイヤ径方向内側へ6mmの位置P2よりもタイヤ径方向外側に位置している。
【0044】
中央界面32は、タイヤ径方向における長さD1が、リムストリップゴムのタイヤ径方向における長さD0の5%以上20%以下である。リムライン20aの頂点を通り、カーカスプライ13の外表面13aに直交する直線L1は中央界面32を通っている。本実施形態では、直線L1は中央界面32の内端部32bを通っている。
【0045】
サイドウォールゴム21の内径側部分21aには、タイヤ径方向内側に向かって厚みが漸減する第1厚み漸減部22と、第1厚み漸減部22に連続してタイヤ径方向内側に延びており厚みが略一定となる厚み一定部23と、厚み一定部23に連続してタイヤ径方向内側に延びており厚みが漸減する第2厚み漸減部24とが含まれている。
【0046】
リムストリップゴム26の外径側部分26aには、タイヤ径方向内側に向かって厚みが漸増する第1厚み漸増部27と、第1厚み漸増部27に連続してタイヤ径方向内側に延びており厚みが略一定となる厚み一定部28と、厚み一定部28に連続してタイヤ径方向内側に延びており厚みが漸増する第2厚み漸増部29とが含まれている。
【0047】
外側界面31は、サイドウォールゴム21の第1厚み漸減部22とリムストリップゴム26の第1厚み漸増部27との間に構成されている。中央界面32は、サイドウォールゴム21の厚み一定部23とリムストリップゴム26の厚み一定部28との間に構成されている。内側界面33は、サイドウォールゴム21の第2厚み漸減部24とリムストリップゴム26の厚み第2漸増部29との間に構成されている。
【0048】
図2は、タイヤサイドゴム20の単体断面図であって、グリーンタイヤを形成する成型ドラムに貼り付けられる前の、帯状部材の状態が示されている。以下、空気入りタイヤ1におけるタイヤサイドゴム20と区別するため、帯状部材のタイヤサイドゴムを帯状タイヤサイドゴム60として説明する。本実施形態では、帯状タイヤサイドゴム60は、押し出し成型により形成されており、帯状サイドウォールゴム61と帯状リムストリップゴム66とが不図示の口金から一体的に押し出されて形成されている。
【0049】
以下の説明では、便宜上、帯状タイヤサイドゴム60の幅方向のうち、図2の右方をY1、左方をY2と称する。同様に、帯状タイヤサイドゴム60の厚み方向のうち、図2の上方をZ1、下方をZ2と称する。帯状タイヤサイドゴム60の幅方向Y1,Y2は、空気入りタイヤ1の径方向に対応しており、Y1はタイヤ径方向内側、Y2はタイヤ径方向外側にそれぞれ対応している。帯状タイヤサイドゴム60の厚み方向Z1,Z2は、空気入りタイヤ1のタイヤ幅方向に対応しており、Z1はタイヤ外面側、Z2はタイヤ内面側にそれぞれ対応している。
【0050】
帯状タイヤサイドゴム60では、幅方向Y2側に帯状サイドウォールゴム61が位置しており、帯状サイドウォールゴム61のY1側に帯状リムストリップゴム66が隣接している。帯状サイドウォールゴム61の幅方向Y1側の端部61aは、厚みが段階的に減少している。帯状リムストリップゴム66の幅方向Y2側の端部66aは、厚みが段階的に減少している。
【0051】
帯状サイドウォールゴム61の端部61aに対して、帯状リムストリップゴム66の端部66aは厚み方向Z2側に積層されており、これらの間に界面70が形成されている。界面70は、第1界面71と、第2界面72と、第3界面73とを、幅方向Y1に向かって順に有している。
【0052】
第2界面72は、界面70のうち幅方向Y1,Y2の略中央部に位置しており、幅方向Y1,Y2に略平行に延びている。第2界面72の幅W1は、帯状リムストリップゴム66の幅W0の、5%以上20%以下に設定されている。第1界面71は、第2界面72の幅方向Y2側の端部から厚み方向Z2側に屈曲して延びて、帯状タイヤサイドゴム60の厚み方向Z2側の表面60aに至っている。第3界面73は、第2界面72の幅方向Y1側の端部から厚み方向Z1側に屈曲して延びて、帯状タイヤサイドゴム60の厚み方向Z1側の表面60bに至っている。
【0053】
すなわち、界面70は、界面70が位置する幅方向Y1,Y2の領域において、帯状リムストリップゴム66の厚みが幅方向Y1側に向かって段階的に増大するように、階段状に形成されている。
【0054】
上記説明した実施形態に係る空気入りタイヤによれば、次の効果を奏する。
【0055】
(1)本発明によれば、サイドウォールゴム21とリムストリップゴム26との間の界面30が、タイヤサイドゴム20の外表面20bにおいてリムライン20aからタイヤ径方向外側へ3mmの位置P1よりもタイヤ径方向内側に表出しているので、リムストリップゴム26が過大になることが抑制される。この結果、ビード10の周辺における剛性過大が抑制される。
【0056】
外面側端部30bとリムライン20aとの間の距離が3mmを超過すると、リムストリップゴム26の体積の低減代が不足し、ビード10周辺における剛性過大の抑制効果が不足しやすい。
【0057】
また、界面30は、タイヤ径方向内側に向かってタイヤ幅方向外側に階段状に延びているので、直線状に形成する場合に比して、タイヤ径方向に長大化させやすい。これにより、界面30をリムライン20aよりもタイヤ径方向内側に表出させつつも、ビード10の周辺の剛性が過度に低下することが抑制される。さらに、タイヤサイドゴム20は、リムストリップゴム26からサイドウォールゴム21への遷移領域がタイヤ径方向に長大化されるので、ビード10からタイヤ径方向外側に向かって剛性を緩やかに低減させやすい。
【0058】
すなわち、タイヤサイド部において、ビード10の周辺の剛性が過大とならないと共に、ビード10からタイヤ径方向外側に向かって剛性が緩やかに変化(低減)するので、加硫成型時にタイヤサイド部を全体的に金型の成型面に沿わせて変形させやすい。この結果、加硫成型時におけるリムライン20a近傍の局所的な歪集中が抑制されるので、加硫成型された空気入りタイヤ1ではリムライン20a近傍における割れが抑制される。
【0059】
(2)本実施形態では、外面側端部30bは、タイヤサイドゴム20の外表面20bにおいてリムライン20aよりもタイヤ径方向内側に位置している。これによって、界面30が、タイヤサイドゴム20の外表面20bにおいてリムライン20aよりタイヤ径方向外側に表出する場合に比して、リムストリップゴムの26体積をさらに低減しやすい。よって、ビード10周辺の剛性過大がさらに抑制される。
【0060】
(3)外面側端部30bは、タイヤサイドゴム20の外表面20bにおいてリムライン20aからタイヤ径方向内側へ6mmの位置P2よりもタイヤ径方向外側に位置しているので、リムストリップゴム26を、リム組みされるホイールリム50に対して適切に配置しやすく、リムストリップゴム26によってホイールリム50を適切に支持できる。
【0061】
一方、外面側端部30bとリムライン20aとの間の距離が6mmを超過すると、ホイールリム50にリム組みされた状態で、ホイールリム50との当接部に、サイドウォールゴム21が位置する領域が増大する。一般的に、サイドウォールゴム21はリムストリップゴム26に比してゴム硬度が低いので、サイドウォールゴム21のリムフランジ51への嵌合部において、ホイールリム50の支持剛性が不足しやすい。この場合、例えば、制動時に、ホイールリム50に対して空気入りタイヤ1が回転方向に変位する、リムずれが生じやすい。
【0062】
(4)界面30は、中央界面32と、中央界面32からタイヤ内面側に屈曲する外側界面31と、中央界面32からタイヤ外面側に屈曲する内側界面33とを有しているので、界面30を、タイヤ径方向に長大化させつつ、外側界面31および内側界面33のタイヤ径方向に対する角度が過度に小さくなることが抑制される。これによって、タイヤサイドゴム20の製造性が向上する。
【0063】
(5)中央界面32のタイヤ径方向における長さD1は、リムストリップゴム26のタイヤ径方向における長さD0の5%以上20%以下であるので、界面30を、タイヤ径方向に適度に長大化させやすい。中央界面32の長さD1がリムストリップゴム26の長さD0の5%未満であると、リムストリップゴム26をタイヤ径方向に長大化させにくく、リムストリップゴム26によるビード10の支持剛性が不足しやすい。中央界面32の長さD1がリムストリップゴム26の長さD0の20%を超過すると、リムストリップゴム26がタイヤ径方向に過度に長大化してリムストリップゴム26の体積の低減代が不足し、ビード10の剛性過大の抑制効果が低減する。
【0064】
(6)子午線断面において、リムライン20aを通り、カーカスプライ13の外表面13aに直交する直線L1が、中央界面32を通過する。これによって、リムライン20aの近傍に中央界面32が位置するので、リムライン20a近傍におけるリムストリップゴム26の肉厚がタイヤ周方向に略均一化される。この結果、ビード10周辺の剛性をリムライン20a近傍においてタイヤ周方向に均一化しやすく、リム組みされたときに、リムライン20a近傍に位置しておりホイールリム50に当接する部分の支持剛性をタイヤ周方向に均一化しやすい。これによって、空気入りタイヤ1をホイールリム50に適切にリム組みしやすく、リムずれが抑制される。
【0065】
(7)帯状タイヤサイドゴム60において、帯状サイドウォールゴム61と帯状リムストリップゴム66との間の界面70は、界面70が位置する幅方向Y1,Y2の領域において、帯状リムストリップゴム66の厚みが幅方向Y1側に向かって段階的に増大するように、階段状に形成されている。
【0066】
これによって、界面70を帯状タイヤサイドゴム60の幅方向Y1,Y2に長大化させつつ、界面70の幅方向Y1,Y2に対する角度が過度に小さくなることが抑制される。これによって、帯状タイヤサイドゴム60を口金から押し出して成型する場合に、口金の帯状リムストリップゴム66を押し出す開口部分が過度に小さい角度になることが抑制されるので、帯状リムストリップゴム66を安定して押し出すことができる。特に、流動性が低い帯状ストリップゴム66を押し出すときに、上記効果が好適に発揮される。
【0067】
上記実施形態では、タイヤサイド部5にリムプロテクタが形成されていない空気入りタイヤについて説明したがこれに限らない。図3に示されるように、リムプロテクタ81が形成された空気入りタイヤ80にも適用できる。図3において、空気入りタイヤ80のうち、空気入りタイヤ1の各部と対応する部分には同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0068】
図3に示されるように、空気入りタイヤ80は、タイヤサイド部5のうちタイヤ径方向内側よりにタイヤ幅方向外側に突出するリムプロテクタ81が形成されている。リムプロテクタ81タイヤ幅方向外側における頂部81aが、リムライン20aの役目を兼ねている。
【0069】
空気入りタイヤ80においても、サイドウォールゴム21およびリムストリップゴム26の界面30が、タイヤサイド部5のうちリムプロテクタ81の頂部81aよりタイヤ径方向内側に表出している。また、リムプロテクタ81の頂部81aを通りカーカスプライ13の外表面13aに直交する直線L10は、界面30のうち中央界面32を通過している。また、中央界面32は、カーカスプライ13の外表面13aと、タイヤサイドゴム20の外表面20bそれぞれに対して略等角度で傾斜してタイヤ径方向内側に延びている。
【0070】
したがって、空気入りタイヤ80においても、空気入りタイヤ1と同様に、リムプロテクタ81の頂部81a周辺における割れが抑制される。
【0071】
本発明は、前記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0072】
リムプロテクタを有する空気入りタイヤにも適用できる。
【符号の説明】
【0073】
1 空気入りタイヤ
10 ビード
13 カーカスプライ
20 タイヤサイドゴム
20a リムライン
21 サイドウォールゴム
26 リムストリップゴム
30 界面
30b 外面側端部
31 外側界面
32 中央界面
33 内側界面
50 ホイールリム
51 リムフランジ
60 帯状タイヤサイドゴム
61 帯状サイドウォールゴム
62 帯状リムストリップゴム
70 界面
71 第1界面
72 第2界面
73 第3界面
図1
図2
図3