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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】炭素繊維中間基材用処理剤
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/152 20060101AFI20241120BHJP
   C08J 5/04 20060101ALI20241120BHJP
   D06M 101/40 20060101ALN20241120BHJP
【FI】
D06M13/152
C08J5/04 CES
C08J5/04 CET
C08J5/04 CEY
C08J5/04 CEZ
C08J5/04 CFD
C08J5/04 CFG
D06M101:40
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020163648
(22)【出願日】2020-09-29
(65)【公開番号】P2021063327
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2023-05-30
(31)【優先権主張番号】P 2019186773
(32)【優先日】2019-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】阪口 幸矢佳
【審査官】緒形 友美
(56)【参考文献】
【文献】特許第6556968(JP,B1)
【文献】特開平04-209872(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 13/00- 15/715
C08J 5/00- 5/24
D06M 101/00-101/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式量又は数平均分子量が2000以下のモノオール化合物(A)を含有する炭素繊維中間基材用処理剤であって、
前記モノオール化合物(A)が芳香族モノオールのエチレンオキサイド付加物であり、芳香族モノオールがクミルフェノール、ナフトール、アントロール、スチレン化フェノール、スチレン化クレゾール、スチレン化クミルフェノール及びスチレン化ナフトールからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
前記芳香族モノオールのエチレンオキサイド付加物のエチレンオキサイド付加モル数が6~43であり、
さらに界面活性剤(B)を含有し、界面活性剤(B)が、炭素数7~24のアラルキル基を有する非イオン界面活性剤(B12)、炭素数7~24の飽和又は不飽和脂肪族基を有するカルボン酸塩(B21)、炭素数7~24の飽和若しくは不飽和脂肪族基又は炭素数7~62のアラルキル基を有する硫酸エステル塩(B22)及び炭素数12~18の飽和若しくは不飽和脂肪族基又は炭素数7~62のアラルキル基を有するスルホン酸塩(B26)からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
前記モノオール化合物(A)と前記界面活性剤(B)との重量比((A)/(B))は80/20~99/1であり、
炭素繊維中間基材用処理剤のJIS K0067(1992)に従う蒸発残分中の前記モノオール化合物(A)の重量割合が80重量%以上100%未満である炭素繊維中間基材用処理剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素繊維中間基材用処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
様々なマトリックス樹脂と炭素繊維中間基材との複合材料が、スポーツ用具、レジャー用品及び航空機等の分野で広く利用されている。
マトリックス樹脂としてはエポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂が古くから使用されてきたが、近年、耐熱性や加工時間短縮の面から熱可塑性樹脂も使用されている。しかしながら、マトリックス樹脂として熱可塑性樹脂を用いた場合、熱可塑性樹脂の炭素繊維中間基材への含浸不良が起こったり、複合材料にボイドが多く発生し、複合材料の強度が低くなるという課題がある。
この課題に対して、例えば、炭素繊維中間基材が炭素繊維束である場合、炭素繊維束を一旦開繊し、開繊させた炭素繊維束に熱可塑性樹脂を含浸させる方法(例えば特許文献1)等の対策がなされている。
【0003】
しかしながら、特許文献1のように開繊工程を経るだけでは粘度の高い熱可塑性樹脂の含浸性は十分ではない為、複合材料強度がまだ低いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-29912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、強度の高い炭素繊維複合材料を作ることができる炭素繊維中間基材用処理剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち本発明は、化学式量又は数平均分子量が2000以下のモノオール化合物(A)を含有する炭素繊維中間基材用処理剤である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の炭素繊維中間基材用処理剤は、強度の高い炭素繊維複合材料を作ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の炭素繊維中間基材用処理剤は、化学式量又は数平均分子量が2000以下のモノオール化合物(A)を含有する。
【0009】
本発明の炭素繊維中間基材用処理剤は、炭素繊維中間基材へのマトリックス樹脂の浸透性を高めるための処理剤であり、炭素繊維を集束し、複合材料における炭素繊維とマトリックス樹脂との接着性を調節するために用いられる炭素繊維用集束剤(炭素繊維用サイジング剤)とは異なるものである。
本発明において、炭素繊維中間基材とは、複数の炭素繊維から構成されるものであって、マトリックス樹脂を含浸させる前のものを意味し、炭素繊維束{短繊維束(チョップド糸等)}、炭素繊維織物(炭素繊維一方向織物、炭素繊維二次元織物、炭素繊維三次元織物等)、炭素繊維編み物、炭素繊維不織布(フェルト、マット及びペーパー等)及び炭素繊維布帛等が挙げられる。本発明の炭素繊維中間基材用処理剤で処理することにより、これらの複数の炭素繊維から構成される炭素繊維中間基剤の炭素繊維表面にモノオール化合物(A)の膜を形成し、マトリックス樹脂の炭素繊維間での滑性を高め、マトリックス樹脂の炭素繊維中間基材中(炭素繊維間)への浸透性を高くすることができる。
【0010】
本発明において、モノオール化合物(A)は化学式量又は数平均分子量が2000以下である化合物である。
モノオール化合物(A)としては、マトリックス樹脂の浸透性及び複合材料の強度の観点から、フェノール性の水酸基(芳香環に直接結合している水酸基)以外の水酸基を1個有する化合物が好ましい。
モノオール化合物(A)としては、脂肪族モノオール(A1)、脂肪族モノオール(A1)のアルキレンオキサイド(以下、AOと略記する)付加物(A2)、及び芳香環を有するモノオール化合物(A3)等が挙げられる。
モノオール化合物(A)は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0011】
脂肪族モノオール(A1)としては、炭素数(以下、Cと略記する)10~34の飽和直鎖脂肪族モノアルコール(n-デカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール及びモンタニルアルコール等)、C10~34の不飽和直鎖脂肪族モノアルコール(パルミトレイルアルコール、オレイルアルコール、エライジルアルコール、リノレイルアルコール及びリノレニルアルコール等)、C10~34の飽和分岐脂肪族モノアルコール(イソステアリルアルコール等)、C4~34の不飽和分岐脂肪族モノアルコール(メチルビニルカルビノール、3-メチル-6-ヘキセン-2-オール及び4-プロピル-8-オクタデセン-1-オール等)及びC5~34の脂環式モノアルコール(シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロオクタデカノール及び2-メチルシクロヘキサノール等)等が挙げられる。
【0012】
脂肪族モノオールのAO付加物(A2)としては、上記脂肪族モノオール(A1)にAOを付加したもの等が挙げられる。
AOとしては、C2~4のものが含まれ、エチレンオキサイド(以下、EOと略記する)、1,2-プロピレンオキサイド(以下、POと略記する)、1,3-プロピレンオキサイド及び1,2-、1,3-又は1,4-ブチレンオキサイド(以下、BOと略記する)等が挙げられる。これらのAOは2種以上を併用してもよく、2種以上の併用の場合の結合様式は、ブロック付加、ランダム付加及びこれらの併用のいずれでもよい。
これらのうち、マトリックス樹脂の浸透性及び炭素繊維中間基材用処理剤の取扱い性の観点から、EOが好ましい。
AOの付加モル数は、マトリックス樹脂の浸透性及び炭素繊維中間基材用処理剤の取扱い性の観点から、2~40が好ましく、更に好ましくは2~20である。
【0013】
芳香環を有するモノオール化合物(A3)としては、芳香脂肪族モノオール(A31)、芳香脂肪族モノオールのAO付加物(A32)及び芳香族モノオールのAO付加物(A33)等が挙げられる。
【0014】
芳香脂肪族モノオール(A31)としては、C7~34の芳香脂肪族モノオール(ベンジルアルコール、ジフェニルメタノール、ジフェニルエタノール、トリフェニルカルビノール及びシンナミルアルコール等)等が挙げられる。
【0015】
芳香脂肪族モノオールのAO付加物(A32)としては、上記(A31)にAOを付加したもの等が挙げられる。
AOとしては、C2~4のものが含まれ、EO、PO、1,3-プロピレンオキサイド及びBO等が挙げられる。これらのAOは2種以上を併用してもよく、2種以上の併用の場合の結合様式は、ブロック付加、ランダム付加及びこれらの併用のいずれでもよい。
これらのうち、マトリックス樹脂の浸透性及び炭素繊維中間基材用処理剤の取扱い性の観点から、EOが好ましい。
AOの付加モル数は、マトリックス樹脂の浸透性及び炭素繊維中間基材用処理剤の取扱い性の観点から、2~43が好ましく、更に好ましくは2~20である。
【0016】
芳香族モノオールのAO付加物(A33)において、芳香族モノオールとしては、フェノール、カルボキシル基を有するフェノール系化合物(2-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸及び2,6-ジカルボキシフェノール等)、C1~20のアルキル基を有するアルキルフェノール(クレゾール、ブチルフェノール、オクチルフェノール及びノニルフェノール等)、アリールフェノール(フェニルフェノール等)、アリールアルキル(C1~15)フェノール(C13~45のものが含まれ、ベンジルフェノール、フェニルエチルフェノール、フェニルプロピルフェノール及びクミルフェノール等が挙げられる)、アルキル(C1~20)アリールフェノール(C13~63のものが含まれ、メチルフェニルフェノール、エチルフェニルフェノール、プロピルフェニルフェノール、メチルベンジルフェノール、エチルベンジルフェノール及びプロピルベンジルフェノール等が挙げられる)、縮合多環フェノール(C10~20のものが含まれ、ナフトール及びアントラノール等が挙げられる)、カルボキシル基を有する縮合多環フェノール系化合物(6-ヒドロキシ-2-ナフタレンカルボン酸等)及びこれらのスチレン化物(C14~87のものが含まれ、スチレン化フェノール、スチレン化ノニルフェノール、スチレン化フェニルフェノール、スチレン化ベンジルフェノール及びスチレン化クミルフェノール等が挙げられる)等が挙げられる。
【0017】
芳香族モノオールのAO付加物(A33)において、AOとしては、C2~4のものが含まれ、EO、PO、1,3-プロピレンオキサイド及びBO等が挙げられる。これらのAOのうち、マトリックス樹脂の浸透性及び炭素繊維中間基材用処理剤の取扱い性の観点から、EOが好ましい。
AOの付加モル数は、マトリックス樹脂の浸透性及び炭素繊維中間基材用処理剤の取扱い性の観点から、2~43が好ましく、更に好ましくは2~30である。
【0018】
モノオール化合物(A)としては、マトリックス樹脂の浸透性及び複合材料の強度の観点から、芳香環を有するモノオール化合物(A3)が好ましく、さらに好ましくは芳香族モノオールのAO付加物(A33)であり、次にさらに好ましくはクミルフェノール、ナフトール、アントロール、スチレン化フェノール、スチレン化クレゾール、スチレン化クミルフェノール及びスチレン化ナフトールからなる群より選ばれる少なくとも1種の芳香族モノオールのAO付加物であり、特に好ましくはクミルフェノール、ナフトール、アントロール、スチレン化フェノール、スチレン化クレゾール、スチレン化クミルフェノール及びスチレン化ナフトールからなる群より選ばれる少なくとも1種の芳香族モノオールのEO付加物である。
【0019】
モノオール化合物(A)中のEO単位の重量割合(EO単位の数×44/化学式量又は数平均分子量)は、マトリックス樹脂の浸透性及び炭素繊維中間基材用処理剤の取扱い性の観点から、10~95重量%が好ましく、更に好ましくは20~80重量%である。
【0020】
モノオール化合物(A)のHLBは、マトリックス樹脂の浸透性及び炭素繊維中間基材用処理剤の取扱い性の観点から、2~19が好ましく、更に好ましくは4~18である。
HLBの値は親水性と親油性のバランスを示す指標であって、例えば「界面活性剤入門」〔2007年三洋化成工業株式会社発行、藤本武彦著〕142頁に記載されているグリフィン法によって、化合物の分子量の値と親水基部分の分子量の値との比率から以下の式で計算することができる。
HLB=20×化合物の親水基部分の分子量/化合物の化学式量又は数平均分子量
モノオール化合物(A)のHLBは、例えば分子中のEO単位の含有量を多くすることにより大きくすることができる。
【0021】
本発明において、モノオール化合物(A)の300℃での重量減少率は、マトリックス樹脂の浸透性及び複合材料の強度の観点から、50重量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは40重量%以下であり、特に好ましくは30重量%以下である。
なお、300℃での重量減少率は、TG-DTAを用いて測定され、具体的には、「TG/DTA6200」[セイコーインスツルメンツ(株)製]を用いて、試料約10mgを、30℃から20℃/分で500℃まで昇温し、TG曲線を解析することにより、測定に用いた試料の重量を基準として、300℃での重量減少率を算出することができる(測定雰囲気;200ml/分 窒素、試料容器;アルミパン)。
300℃での重量減少率は、分子量及び分子量あたりの芳香環含量によって調整することができる。
分子量が大きいほど、分子量あたりの芳香環含量が高いほど、300℃での重量減少率は低くなる。
300℃での重量減少率は、例えばクミルフェノールEO6モル付加物(10重量%)、クミルフェノールEO30モル付加物(1重量%)、スチレン化(2.75モル)フェノールEO4モル付加物(4重量%)、スチレン化(2.75モル)フェノールEO5モル付加物(4重量%)、スチレン化(2モル)フェノールEO17モル付加物(1.5重量%)、スチレン化(1.1モル)フェノールEO5モル付加物(12重量%)、スチレン化(2モル)クレゾールEO10モル付加物(3重量%)、スチレン化(1モル)クミルフェノールEO5モル付加物(5重量%)、スチレン化(1モル)クミルフェノールEO10モル付加物(3重量%)、スチレン化(1モル)クミルフェノールEO25モル付加物(1重量%)、β-ナフトールEO7モル付加物(10重量%)、β-ナフトールEO20モル付加物(1重量%)、スチレン化(1モル)β-ナフトールEO10モル付加物(10重量%)、アントロールEO10モル付加物(3重量%)及び4-(2-ヒドロキシエトキシ)安息香酸DBU塩(33重量%)である。
【0022】
モノオール化合物(A)は化学式量又は数平均分子量が2000以下の化合物であり、マトリックス樹脂の浸透性及び複合材料の強度の観点から、好ましくは1500以下であり、さらに好ましくは1000以下である。同様の観点から、下限は、100以上が好ましく、さらに好ましくは200以上である。
なお、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPC)法により測定される。
モノオール化合物(A)の数平均分子量の測定に使用されるGPCの条件は、例えば以下の条件である。
機種 :HLC-8220GPC(東ソー株式会社製液体クロマトグラフ)
カラム:TSK gel Super H4000
+TSK gel Super H3000
+TSK gel Super H2000(いずれも東ソー株式会社製)
カラム温度:40℃
検出器 :RI(Refractive Index)
溶媒 :テトラヒドロフラン
流速 :0.6ml/分
試料濃度 :0.25重量%
注入量 :10μl
標準 :ポリスチレン(東ソー株式会社製;TSK STANDARD
POLYSTYRENE
【0023】
炭素繊維中間基材用処理剤は、さらに界面活性剤(B)を含有していることが好ましい。
界面活性剤(B)としては、モノオール化合物(A)を除く非イオン界面活性剤(B1)、アニオン界面活性剤(B2)、カチオン界面活性剤(B3)及び両性界面活性剤(B4)等の界面活性剤が挙げられる。界面活性剤(B)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
界面活性剤(B)としては、複合材料(成形体)としたときの強度の観点から、非イオン界面活性剤(B1)、アニオン界面活性剤(B2)及びこれらの併用が好ましい。
【0024】
モノオール化合物(A)を除く非イオン界面活性剤(B1)としては、特に制限なく使用でき、例えば、C7~24のアルキル基を有するもの(B11)及びC7~24のアラルキル基を有するもの(B12)が含まれる。
【0025】
(B11)としては、数平均分子量が2000を超えるC7~24のモノアルコールのAO付加物(付加モル数=43~100){モノアルコールとしては、下記の飽和又は不飽和脂肪族アルコールが好ましく、具体的には、ドデシルアルコールのEO60モル付加物等}及びジオール{(ポリ)オキシアルキレン((ポリ)オキシエチレン、(ポリ)オキシプロピレン及び(ポリ)オキシブチレン等)等}と脂肪酸(C7~24)とのエステル{脂肪酸としては、下記の飽和又は不飽和脂肪酸が好ましく、具体的には、モノステアリン酸ポリエチレングリコール等}、多価(3価~10価又はそれ以上)アルコールの脂肪酸(C7~24)エステル{脂肪酸としては、下記の飽和又は不飽和脂肪酸が好ましく、具体的には、モノステアリン酸グリセリン及びモノラウリン酸ソルビタン等}、多価アルコールのAO(アルキレン基の炭素数は2~4)付加物(付加モル数=1~100)の脂肪酸(C7~24)エステル{脂肪酸としては、下記の飽和又は不飽和脂肪酸が好ましく、具体的には、(ポリ)オキシエチレン(平均付加モル数=1~100)ソルビタンモノラウリ酸エステル等}及び脂肪酸(C7~24)とアルカノールアミン(C1~10)とのアミド化物{ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、1:1型ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド及び1:1型ラウリン酸ジエタノールアミド等}等が挙げられる。
【0026】
(B12)において、アラルキル基としては、C1~18のアルキル基の水素原子の1つがアリール基(フェニル基、ベンジル基、トリル基及びキシル基等のC6~18のものが含まれる)で置換されているものが含まれ、ベンジル基、フェニルエチル基及びフェニルプロピル基等が挙げられる。
(B12)として具体的には、化学式量又は数平均分子量が2000を超えるものであって、フェノール類(フェノール、クミルフェノール及びクレゾール等)のスチレン化物(C14~62)のAO付加物[スチレン化フェノール(C14~62)のAO付加物、スチレン化クミルフェノールのAO付加物及びスチレン化クレゾール(C15~61)のAO付加物等]及びC7~32のアルキルフェノールのAO付加物等が挙げられる。
【0027】
モノオール化合物(A)を除く非イオン界面活性剤(B1)のうち、複合材料の強度の観点から、C7~24の飽和又は不飽和脂肪族アルコールのAO付加物及びC7~24のアラルキル基を有するもの(B12)が好ましく、更に好ましくはC7~12の飽和又は不飽和脂肪族アルコールのAO付加物及びフェノール類のスチレン化物のAO付加物である。
【0028】
アニオン界面活性剤(B2)としては、アニオン性基としてカルボキシル基、硫酸エステル基、スルホン酸基及びリン酸エステル基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有するものが含まれ、具体的には、アニオン性基としてカルボキシル基を有するもの{C7~24の飽和又は不飽和脂肪族基を有するカルボン酸塩(B21)}、アニオン性基として硫酸エステル基を有するもの{C7~24の飽和若しくは不飽和脂肪族基又はC7~62のアラルキル基を有する硫酸エステル塩(B22)、(B22)以外の硫酸化油の中和塩(B23)、(B22)以外の不飽和脂肪酸アルキル(C1~22)エステルの硫酸化物の中和塩(B24)、C12~18のオレフィンの硫酸化物の中和塩(B25)}、アニオン性基としてスルホン酸基を有するもの{C12~18の飽和若しくは不飽和脂肪族基又はC7~62のアラルキル基を有するスルホン酸塩(B26)}及びアニオン性基としてリン酸エステル基を有するもの{C7~60のアルキル基又はC14~66のアラルキル基を有するリン酸エステル塩(B27)}が含まれる。
【0029】
(B21)としては、C7~24の飽和脂肪酸(カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ヘンイコシル酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸及びモンタン酸等)、C7~24の不飽和脂肪酸(ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、エルカ酸、ネルボン酸、リノール酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸、リノレン酸、ピノレン酸、エレオステアリン酸、ミード酸、エイコサトリエン酸、ステアリドン酸、アラキドン酸及びエイコサテトラエン酸等)、C7~24の飽和又は不飽和脂肪族アルコール(オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セタノール、パルミトレイルアルコール、ヘプタデカノール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、エライジルアルコール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、エライドリノレイルアルコール、リノレニルアルコール、エライドリノレニルアルコール、リシノレイルアルコール、ノナデシルアルコール、アラキジルアルコール、ヘンエイコサノール、ベヘニルアルコール、エルシルアルコール、リグノセリルアルコール、セリルアルコール、ヘプタコサノール及びモンタニルアルコール等)のカルボキシメチル化物、前記C7~24の飽和又は不飽和脂肪族アルコールのAO(C2~4のものが含まれ、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド及びブチレンオキサイド等、以下において同じ。)付加物(付加モル数=1~20)のカルボキシメチル化物等のカルボキシル基を有する化合物のアンモニウム塩又はアミン塩が挙げられる。
【0030】
(B22)としては、前記C7~24の飽和又は不飽和脂肪族アルコール硫酸エステル、前記C7~24の飽和又は不飽和脂肪族アルコールのAO付加物(付加モル数=1~10)の硫酸エステル、C3~13のアルキル基を有するアルキルフェノール(n-プロピルフェノール、i-プロピルフェノール、n-ブチルフェノール、sec-ブチルフェノール、t-ブチルフェノール、n-ヘキシルフェノール、2-エチルヘキシルフェノール、n-オクチルフェノール及びn-ノニルフェノール等)の硫酸エステル、前記アルキルフェノールのAO付加物(付加モル数=1~20)の硫酸エステル、アリールアルキルフェノール{スチレン化フェノール(C14~62)、スチレン化クミルフェノール及びスチレン化クレゾール(C15~61)等}のAO付加物(付加モル数1~20)の硫酸エステル等の硫酸エステル基を有する化合物のアンモニウム塩又はアミン塩等が挙げられる。
【0031】
(B23)としては、天然の不飽和油脂(ヒマシ油、オリーブ油、大豆油及びニシン油等)又は不飽和ロウ(マッコウクジラ油等)の硫酸化物をアンモニア又はアミンで中和したもの等が挙げられる。
【0032】
(B24)としては、前記不飽和脂肪酸とC1~4のアルコール(メタノール及びエタノール等)とのエステル化物の不飽和結合を硫酸化してアンモニア又はアミンで中和したもの等が挙げられる。
【0033】
(B25)としては、C12~18のオレフィン(ドデセン、トリデセン、テトラデセン、ペンタデセン、ヘキサデセン及びオクタデセン等)の不飽和結合を硫酸化してアンモニア又はアミンで中和したもの等が挙げられる。
【0034】
(B26)としては、C1~20のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸(メチルベンゼンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、プロピルベンゼンスルホン酸、ブチルベンゼンスルホン酸、ペンチルベンゼンスルホン酸、ヘキシルベンゼンスルホン酸、ジメチルベンゼンスルホン酸、ジプロピルベンゼンスルホン酸等)、C1~20のアルキル基を有するアルキルナフタレンスルホン酸、スルホコハク酸とC4~20のアルコールのジエステル(ジオクチルスルホコハク酸等)、C12~18のα-オレフィンスルホン酸、イゲポンT型スルホン酸等のスルホン酸基を有する化合物のアンモニウム塩又はアミン塩等が挙げられる。
【0035】
(B27)としては、前記飽和又は不飽和脂肪族アルコールのリン酸エステル、飽和又は不飽和脂肪族アルコールのAO付加物(付加モル数=1~20)のリン酸エステル、前記C3~13のアルキル基を有するアルキルフェノールのリン酸エステル、C3~13のアルキル基を有するアルキルフェノールのAO付加物(付加モル数=1~20)のリン酸エステル等のリン酸エステル基を有する化合物のアンモニウム塩又はアミン塩等が挙げられる。
【0036】
(B2)において、塩としては、複合材料(成形体)の強度の観点から、アルカリ金属塩以外が好ましく、更に好ましくはアンモニウム塩及び/又はアミン塩であり、特に好ましくは第3級モノアミンである。
アミンとしては、一部ヒドロキシル基で置換されていてもよいC1~20のアルキル基を有するモノアミン及びC1~20のポリアミンが含まれる。
アミンとして具体的には、第1級モノアミン(メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン、ノナデシルアミン、イコシルアミン、モノエタノールアミン、モノエタノールアミン及びモノプロパノールアミン等)、第2級モノアミン(ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、ジドデシルアミン、ジトリデシルアミン、ジテトラデシルアミン、ジペンタデシルアミン、ジヘキサデシルアミン、ジヘプタデシルアミン、ジオクタデシルアミン、ジノナデシルアミン、ジイコシルアミン、メチルエチルアミン、ジメタノールアミン及びジエタノールアミン等)、第3級モノアミン(トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、トリドデシルアミン、トリトリデシルアミン、トリテトラデシルアミン、トリペンタデシルアミン、トリヘキサデシルアミン、トリヘプタデシルアミン、トリオクタデシルアミン、トリノナデシルアミン、トリイコシルアミン、ジメチルエチルアミン、メチルジメタノールアミン、メチルジエタノールアミン、エチルジエタノールアミン及びトリエタノールアミン等)、ポリアミン{C2~20の非環状ポリアミン(エチレンジアミン及びジエチレントリアミン等)、C4~20の環状ポリアミン(ジアザビシクロウンデセン及びジアザビシクロノネン等)等}等が挙げられる。
【0037】
(B2)のうち、複合材料の強度の観点から、C7~24の飽和若しくは不飽和脂肪族基又はC7~62のアラルキル基を有する硫酸エステル塩(B22)が好ましく、更に好ましくはC7~24の飽和又は不飽和脂肪族アルコールのAO付加物の硫酸エステル塩である。
【0038】
(B2)としては、複合材料の強度の観点から、C7~24の飽和若しくは不飽和脂肪族基又はC7~62のアラルキル基を有する硫酸エステルアンモニウム塩又はアミン塩が好ましく、更に好ましくはC7~24の飽和又は不飽和脂肪族アルコールのAO付加物の硫酸エステルのアンモニウム塩又はアミン塩である。
【0039】
本発明の炭素繊維中間基材用処理剤中のモノオール化合物(A)と界面活性剤(B)との重量比((A)/(B))は、マトリックス樹脂の浸透性及び複合材料の強度の観点から、80/20~99/1が好ましく、更に好ましくは90/10~99/1である。
【0040】
炭素繊維中間基材用処理剤はさらにポリエステル樹脂(C)を含有していることが好ましい。
ポリエステル樹脂(C)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ポリエステル樹脂(C)としては、マトリックス樹脂の浸透性及び複合材料の強度の観点から、HLBが4~18であることが好ましく、更に好ましくは5~17である。
【0041】
ポリエステル樹脂(C)の30℃での粘度は、マトリックス樹脂の浸透性及び複合材料の強度の観点から、10~1,000,000Pa・sが好ましく、さらに好ましくは20~500,000Pa・sである。
【0042】
本発明において、ポリエステル樹脂(C)の粘度は複素粘度であり、例えば、粘弾性測定装置(例えば、レオメトリックサイエンティフィック社製のARES)にて測定できる。測定条件を以下に示す。
<ポリエステル樹脂(C)の粘度の測定条件>
サンプル固定治具:直径25mm円盤
ギャップ間距離:0.25mm
歪み:1%
周波数:1Hz
温度:30℃
【0043】
ポリエステル樹脂(C)は、ジカルボン酸(a1)及び/又はジカルボン酸の無水物(a2)とジオール(b)との縮重合体であることが好ましい。
【0044】
ジカルボン酸(a1)としては、鎖式飽和ジカルボン酸、鎖式不飽和ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、ダイマー酸及び芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
鎖式飽和ジカルボン酸としては、C2~22の直鎖又は分岐の鎖式飽和ジカルボン酸(シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、メチルコハク酸、エチルコハク酸、ジメチルマロン酸、α-メチルグルタル酸、β-メチルグルタル酸、2,4-ジエチルグルタル酸、イソプロピルマロン酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、トリデカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、イコサンジカルボン酸、デシルコハク酸、ドデシルコハク酸及びオクタデシルコハク酸等)等が挙げられる。
鎖式不飽和ジカルボン酸としては、C4~22の直鎖又は分岐の鎖式不飽和ジカルボン酸(マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、ドデセニルコハク酸、ペンタデセニルコハク酸及びオクタデセニルコハク酸等)等が挙げられる。
脂環式ジカルボン酸としては、C7~14の脂環式ジカルボン酸(1,3-又は1,2-シクロペンタンジカルボン酸、1,2-、1,3-又は1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-、1,3-又は1,4-シクロヘキサンジ酢酸及びジシクロヘキシル-4,4’-ジカルボン酸等)等が挙げられる。
ダイマー酸としては、C8~24の鎖式不飽和カルボン酸(オレイン酸、リノール酸及びリノレン酸等)の二量体等が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸としては、C8~14の芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、フェニルマロン酸、フェニルコハク酸、β-フェニルグルタル酸、α-フェニルアジピン酸、β-フェニルアジピン酸、ビフェニル-2,2’-及び4,4’-ジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、5-スルホイソフタル酸ナトリウム及び5-スルホイソフタル酸カリウム等)等が挙げられる。
【0045】
ジカルボン酸の無水物(a2)としては、上記ジカルボン酸(a1)の無水物であり、無水コハク酸、無水マレイン酸及び無水フタル酸等が挙げられる。
【0046】
ジカルボン酸(a1)及びジカルボン酸の無水物(a2)は、単独でも2種以上を併用してもよい。これらのうち、複合材料の強度の観点から、鎖式飽和ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸が好ましく、更に好ましくはシュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸及びこれらのうちの2種以上の併用であり、特に好ましくはアジピン酸、テレフタル酸、イソフタル酸及びこれらのうちの2種以上の併用である。
【0047】
ジオール(b)としては、脂肪族アルカンジオール及びそのAO付加物、脂環式ジオール及びそのAO付加物、1級アミンのAO付加物並びに芳香環含有2価フェノールのAO付加物等が挙げられる。
【0048】
脂肪族アルカンジオールとしては、C2~16のもの、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、ヘキサデカンジオール、ネオペンチルグリコール及び2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール等が挙げられる。
脂肪族アルカンジオールのAO付加物としては、上記ジオールにC2~4のAOを付加した化合物が挙げられる。C2~4のAOとしては、EO、PO、1,3-プロピレンオキサイド及びBO等が挙げられる。これらのAOは2種以上を併用してもよく、2種以上の併用の場合の結合様式は、ブロック付加、ランダム付加及びこれらの併用のいずれでもよい。
脂肪族アルカンジオール1分子当たりのAOの付加モル数は、複合材料の強度の観点から、1~120モルが好ましい。
【0049】
脂環式ジオールとしては、C4~16のもの、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール及び水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。脂環式ジオールのAO付加物としては、上記ジオールにC2~4のAOを付加した化合物が挙げられる。
【0050】
1級アミンのAO付加物における1級アミンとしては、C1~22の1級アミン、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、デシルアミン及びドデシルアミン等が挙げられる。
1級アミンのAO付加物としては、上記アミンにC2~4のAOを付加した化合物が挙げられる。
【0051】
芳香環含有2価フェノールのAO付加物における芳香環含有2価フェノールとしては、ビスフェノールA、ビスフェノールS、クレゾール及びヒドロキノン等が挙げられる。
芳香環含有2価フェノールのAO付加物としては、上記フェノールにC2~4のAOを付加した化合物が挙げられる。
【0052】
ジオール(b)のうちで、炭素繊維中間基材用処理剤の取扱い性の観点から、好ましいのは、脂肪族アルカンジオール、脂肪族アルカンジオールのAO付加物、脂環式ジオールのAO付加物、1級アミンのAO付加物及び芳香環含有2価フェノールのAO付加物からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、更に好ましいのは、脂肪族アルカンジオール、脂肪族アルカンジオールのAO付加物及び芳香環含有2価フェノールのAO付加物からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0053】
ポリエステル樹脂(C)を製造する方法としては、例えば、ジカルボン酸(a1)及び/又はジカルボン酸の無水物(a2)とジオール(b)を所定モル比で仕込み、反応温度100~250℃、圧力-0.1~1.2MPaで撹拌下、水を溜去させる方法が挙げられる。反応混合物に更にジオール(b)を加えて反応させてもよい。
【0054】
ポリエステル樹脂(C)を製造するときには、触媒をポリエステル樹脂(C)の重量に基づいて0.05~0.5重量%加えることが好ましい。触媒としては、例えばパラトルエンスルホン酸、ジブチルチンオキサイド、テトライソプロポキシチタネート及びシュウ酸チタン酸カリウムが挙げられ、反応性及び環境への影響の観点からテトライソプロポキシチタネート及びシュウ酸チタン酸カリウムが好ましく、更に好ましいのはシュウ酸チタン酸カリウムである。
【0055】
本発明の炭素繊維中間基材用処理剤中のモノオール化合物(A)とポリエステル樹脂(C)との重量比((A)/(C))は、マトリックス樹脂の浸透性及び複合材料の強度の観点から、60/40~99/1が好ましく、更に好ましくは80/20~99/1である。
【0056】
炭素繊維中間基材用処理剤のJIS K0067(1992)に従う105℃で加熱したときの蒸発残分(以下の蒸発残分についても同じ)中の前記モノオール化合物(A)の重量割合は、マトリックス樹脂の浸透性の観点から、100重量%が好ましい。
(B)及び/又は(C)を含有する場合、マトリックス樹脂の浸透性及び複合材料の強度の観点から、炭素繊維中間基材用処理剤の蒸発残分中の前記モノオール化合物(A)の重量割合の上限値は、100重量%未満が好ましく、更に好ましくは99.99重量%以下であり、次に更に好ましくは99.98重量%以下であり、特に好ましくは99.95重量%以下であり、最も好ましくは99.9重量%以下である。
下限値としては、60重量%以上が好ましく、更に好ましくは70重量%以上であり、次に更に好ましくは80重量%であり、特に好ましくは90重量%以上である。
【0057】
本発明の炭素繊維中間基材用処理剤の蒸発残分中の前記界面活性剤(B)の重量割合は、マトリックス樹脂の浸透性及び複合材料の強度の観点から、0.01~20重量%が好ましく、更に好ましくは0.05~10重量%である。
本発明の炭素繊維中間基材用処理剤の蒸発残分中の前記ポリエステル樹脂(C)の重量割合は、マトリックス樹脂の浸透性及び複合材料の強度の観点から、0.01~20重量%が好ましく、更に好ましくは0.05~10重量%である。
【0058】
炭素繊維中間基材用処理剤は水性溶液状、水性エマルション状又は水性懸濁液状となるように水性媒体に希釈又は分散させた液を炭素繊維中間基材に処理することが好ましい。
水性媒体に希釈、分散させると、炭素繊維中間基材用処理剤が含有する固形分の炭素繊維中間基材への付着量を適量にすることが容易であるため、複合材料としたときの強度が更に優れる繊維中間基材を得ることができる。
水性媒体としては、公知の水性媒体等を用いることができ、具体的には、水及び親水性有機溶媒[C1~4の1価のアルコール(メタノール、エタノール及びイソプロパノール等)、C3~6のケトン(アセトン、エチルメチルケトン及びメチルイソブチルケトン等)、C2~6のグリコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール及びトリエチレングリコール等)及びそのモノアルキル(C1~2)エーテル、ジメチルホルムアミド並びにC3~5の酢酸アルキルエステル(酢酸メチル及び酢酸エチル等)等]が挙げられる。
これらは2種以上を併用してもよい。これらのうち、安全性等の観点から、水が好ましい。
【0059】
炭素繊維中間基材の処理時における本発明の炭素繊維中間基材用処理剤中のモノオール化合物(A)の含有量は、炭素繊維中間基材の処理時に処理剤の付着量を適量にする観点等から、好ましくは0.1~20重量%、更に好ましくは0.5~10重量%である。
【0060】
本発明の炭素繊維中間基材用処理剤を処理する際の処理液の濃度(炭素繊維中間基材用処理剤の蒸発残分)は炭素繊維中間基材の処理時に処理剤の付着量を適量にする観点等から、好ましくは0.1~20重量%、更に好ましくは0.5~10重量%である。
【0061】
炭素繊維中間基材用処理剤を製造する際に用いる混合装置、溶解装置及び乳化分散装置に制限はなく、撹拌羽根(羽根形状:カイ型及び三段パドル等)、ナウターミキサー、リボンミキサー、コニカルブレンダー、モルタルミキサー、万能混合機(万能混合攪拌機5DM-L、(株)三英製作所製等)及びヘンシェルミキサー等が使用できる。
【0062】
本発明の炭素繊維中間基材用処理剤で処理される炭素繊維中間基材としては、複数の炭素繊維から構成されるものであって、マトリックス樹脂を含浸させる前のものを意味し、例えば、炭素繊維束{短繊維束(チョップド糸等)}、炭素繊維織物(炭素繊維一方向織物、炭素繊維二次元織物、炭素繊維三次元織物、炭素繊維の四次元以上の織物等)、炭素繊維編み物、炭素繊維不織布(フェルト、マット及びペーパー等)及び炭素繊維布帛等が挙げられる。
【0063】
炭素繊維の直径は、特に限定されないが、炭素繊維の取扱い性の観点から、4~20μmが好ましく、更に好ましくは5~10μmである。
【0064】
処理方法としては、炭素繊維中間基材を本発明の炭素繊維中間基材用処理剤に浸す(浸漬法)、又は炭素繊維中間基材に本発明の炭素繊維中間基材用処理剤を散布し(スプレー法等)等が挙げられる。
炭素繊維中間基材用処理剤が含有する蒸発残分の炭素繊維中間基材への付着量(重量%)は、未処理の炭素繊維中間基材の重量に基づいて、0.1~10重量%が好ましく、更に好ましくは1~5重量%である。この範囲であると、複合材料(成形体)強度が更に優れる。
炭素繊維中間基材を本発明の炭素繊維中間基材用処理剤に浸す場合、炭素繊維中間基材用処理剤が含有する蒸発残分の量は、炭素繊維中間基材の炭素繊維間への浸透性の観点から、未処理の炭素繊維中間基材100重量部に対して、0.5~10重量部が好ましく、更に好ましくは1~5重量部である。
炭素繊維中間基材に本発明の炭素繊維中間基材用処理剤を散布する場合、炭素繊維中間基材用処理剤が含有する蒸発残分の量は、炭素繊維中間基材の炭素繊維間への浸透性の観点から、未処理の炭素繊維中間基材100重量部に対して、0.5~10重量部が好ましく、更に好ましくは1~5重量部である。
乾燥温度は、工程時間の観点から、50~250℃が好ましく、更に好ましくは100~200℃である。
乾燥時間は、溶媒除去の観点から、1分~30分が好ましく、更に好ましくは2分~20分である。
【0065】
本発明の炭素繊維中間基材用処理剤で処理した炭素繊維中間基材は、マトリックス樹脂として熱可塑性樹脂と組み合わせて、複合材料として使用されることが好ましい。
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリスチレン、ポリエーテルスルホン、アクリロニトリル-スチレン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、ポリフェニレンオキサイド及びポリフェニレンサルファイド等が挙げられる。
これらの内、複合材料の強度の観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート及びポリカーボネートが好ましい。
【0066】
複合材料中のマトリックス樹脂と炭素繊維中間基材との重量比(マトリックス樹脂/炭素繊維中間基材)は、複合材料の強度の観点から、10/90~90/10が好ましく、さらに好ましくは20/80~70/30であり、特に好ましくは30/70~60/40である。
【0067】
本発明の炭素繊維中間基材用処理剤で処理した炭素繊維中間基材を用いて複合材料を製造する方法としては、炭素繊維中間基材用処理剤で処理した炭素繊維中間基材(織物、編み物、不織布等)に、熱溶融(溶融温度:100~400℃)した上記熱可塑性樹脂を含浸させて成形する方法、炭素繊維中間基材用処理剤で処理した炭素繊維中間基材(チョップドファーバー)を、溶融した上記熱可塑性樹脂に投入し、混練して、射出成形する方法等により得ることができる。
【実施例
【0068】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定され
るものではない。以下、特に定めない限り、%は重量%、部は重量部を示す。なお、以下
において、実施例1~15及び24は、それぞれ参考例1~16である。
【0069】
<製造例1>クミルフェノールEO6モル付加物(A-1)
撹拌機、加熱冷却装置及び滴下ボンベを備えた耐圧反応容器に、クミルフェノール「PCP」[三井化学ファイン(株)製]212部(1モル部)及び水酸化カリウム0.5部を投入し、窒素置換後密閉し、100℃に昇温し、1時間減圧下で脱水を行った。160℃に昇温し、EO264部(6モル部)を圧力が0.5MPaG以下になるように調整しながら3時間かけて滴下した後、160℃で3時間熟成した。次いで70℃に冷却後、吸着処理剤「キョーワード600」[協和化学工業(株)製]10部を投入し、70℃で1時間撹拌して処理した後、吸着処理剤をろ過してクミルフェノールEO6モル付加物(A-1)を得た。{(A-1)の数平均分子量は480、HLB=11.1}
【0070】
<製造例2>クミルフェノールEO30モル付加物(A-2)
製造例1において、「EO264部(6モル部)」を「EO1320部(30モル部)」に変更した以外は製造例1と同様にして、クミルフェノールEO30モル付加物(A-2)を得た。{(A-2)の数平均分子量は1530、HLB=17.2}
【0071】
<製造例3>スチレン化(2.75モル)フェノールEO5モル付加物(A-3)
撹拌機、加熱冷却装置及び滴下ボンベを備えた反応容器にフェノール94部(1モル部)およびルイス酸触媒「Galleon Earth」[水澤化学工業(株)]5部を仕込み、撹拌下、系内を窒素ガスで置換し90℃に昇温した。同温度にてスチレン286部(2.75モル部)を5時間かけて滴下し、さらに同温度にて5時間反応させた。生成物を50℃に冷却後、触媒を濾別して、フェノールのスチレン2.75モル付加物{スチレン化(2.75モル)フェノール}を得た。
次に、撹拌機、加熱冷却装置及び滴下ボンベを備えた耐圧反応容器に、得られたスチレン化(2.75モル)フェノール380部(1モル部)及び水酸化カリウム0.5部を投入し、窒素置換後密閉し、100℃に昇温し、1時間減圧下で脱水を行った。160℃に昇温し、EO220部(5モル部)を圧力が0.5MPaG以下になるように調整しながら3時間かけて滴下した後、160℃で3時間熟成した。次いで70℃に冷却後、吸着処理剤「キョーワード600」[協和化学工業(株)製]10部を投入し、70℃で1時間撹拌して処理した後、吸着処理剤をろ過してスチレン化(2.75モル)フェノールEO5モル付加物(A-3)を得た。{(A-3)の数平均分子量は600、HLB=7.3}
【0072】
<製造例4>スチレン化(1.1モル)フェノールEO5モル付加物(A-4)
製造例3において、「スチレン286部(2.75モル部)」を「スチレン114.4部(1.1モル部)」に変更し、「スチレン化(2.75モル)フェノール380部(1モル部)」を「スチレン化(1.1モル)フェノール208.4部(1モル部)」に変更し、「EO220部(5モル部)」を「EO264部(6モル部)」に変更した以外は製造例3と同様にして、スチレン化(1.1モル)フェノールEO6モル付加物(A-4)を得た。{(A-4)の数平均分子量は470、HLB=11.2}
【0073】
<製造例5>スチレン化(2モル)フェノールEO17モル付加物(A-5)
製造例3において、「スチレン286部(2.75モル部)」を「スチレン208部(2モル部)」に変更し、「スチレン化(2.75モル)フェノール380部(1モル部)」を「スチレン化(2モル)フェノール302部(1モル部)」に変更し、「EO220部(5モル部)」を「EO748部(17モル部)」に変更した以外は製造例3と同様にして、スチレン化(2モル)フェノールEO17モル付加物(A-5)を得た。{(A-5)の数平均分子量は1050、HLB=14.2}
【0074】
<製造例6>スチレン化(2.75モル)フェノールEO4モル付加物(A-6)
製造例3において、「EO220部(5モル部)」を「EO176部(4モル部)」に変更した以外は製造例3と同様にして、スチレン化(2.75モル)フェノールEO4モル付加物(A-6)を得た。{(A-6)の数平均分子量は550、HLB=6.3}
【0075】
<製造例7>スチレン化(2モル)クレゾールEO10モル付加物(A-7)
製造例3において、「フェノール94部(1モル部)」を「クレゾール「メタクレゾール」[本州化学工業(株)]108部(1モル部)」に変更し、「スチレン286部(2.75モル部)」を「スチレン208部(2モル部)」に変更し、「スチレン化(2.75モル)フェノール380部(1モル部)」を「スチレン化(2モル)クレゾール316部(1モル部)」に変更し、「EO220部(5モル部)」を「EO440部(10モル部)」に変更した以外は製造例3と同様にして、スチレン化(2モル)クレゾールEO10モル付加物(A-7)を得た。{(A-7)の数平均分子量は756、HLB=11.6}
【0076】
<製造例8>スチレン化(1モル)クミルフェノールEO5モル付加物(A-8)
製造例3において、「フェノール94部(1モル部)」を「クミルフェノール「PCP」[三井化学ファイン(株)製]212部(1モル部)」に変更し、「スチレン286部(2.75モル部)」を「スチレン104部(1モル部)」に変更し、「スチレン化(2.75モル)フェノール380部(1モル部)」を「スチレン化(1モル)クミルフェノール316部(1モル部)」に変更した以外は製造例3と同様にして、スチレン化(1モル)クミルフェノールEO5モル付加物(A-8)を得た。{(A-8)の数平均分子量は540、HLB=8.2}
【0077】
<製造例9>スチレン化(1モル)クミルフェノールEO10モル付加物(A-9)
製造例3において、「フェノール94部(1モル部)」を「クミルフェノール「PCP」[三井化学ファイン(株)製]212部(1モル部)」に変更し、「スチレン286部(2.75モル部)」を「スチレン104部(1モル部)」に変更し、「スチレン化(2.75モル)フェノール380部(1モル部)」を「スチレン化(1モル)クミルフェノール316部(1モル部)」に変更し、「EO220部(5モル部)」を「EO440部(10モル部)」に変更した以外は製造例3と同様にして、スチレン化(1モル)クミルフェノールEO10モル付加物(A-9)を得た。{(A-9)の数平均分子量は760、HLB=11.6}
【0078】
<製造例10>スチレン化(1モル)クミルフェノールEO25モル付加物(A-10)
製造例3において、「フェノール94部(1モル部)」を「クミルフェノール「PCP」[三井化学ファイン(株)製]212部(1モル部)」に変更し、「スチレン286部(2.75モル部)」を「スチレン104部(1モル部)」に変更し、「スチレン化(2.75モル)フェノール380部(1モル部)」を「スチレン化(1モル)クミルフェノール316部(1モル部)」に変更し、「EO220部(5モル部)」を「EO1100部(25モル部)」に変更した以外は製造例3と同様にして、スチレン化(1モル)クミルフェノールEO25モル付加物(A-10)を得た。{(A-10)の数平均分子量は1420、HLB=15.5}
【0079】
<製造例11>β-ナフトールEO7モル付加物(A-11)
製造例1において、「クミルフェノール「PCP」[三井化学ファイン(株)製]212部(1モル部)」を「β-ナフトール「β-ナフトール」[三井化学ファイン(株)製]144部(1モル部)」に変更し、「EO264部(6モル部)」を「EO308部(7モル部)」に変更した以外は製造例1と同様にして、β-ナフトールEO7モル付加物(A-11)を得た。{(A-11)の数平均分子量は450、HLB=13.6}
【0080】
<製造例12>β-ナフトールEO20モル付加物(A-12)
製造例1において、「クミルフェノール「PCP」[三井化学ファイン(株)製]212部(1モル部)」を「β-ナフトール「β-ナフトール」[三井化学ファイン(株)製]144部(1モル部)」に変更し、「EO264部(6モル部)」を「EO880部(20モル部)」に変更した以外は製造例1と同様にして、β-ナフトールEO20モル付加物(A-12)を得た。{(A-12)の数平均分子量は1020、HLB=17.2}
【0081】
<製造例13>スチレン化(1モル)ナフトールEO10モル付加物(A-13)
製造例3において、「フェノール94部(1モル部)」を「β-ナフトール144部(1モル部)」に変更し、「スチレン286部(2.75モル部)」を「スチレン104部(1モル部)」に変更し、「スチレン化(2.75モル)フェノール380部(1モル部)」を「スチレン化(1モル)ナフトール248部(1モル部)」に変更し、「EO220部(5モル部)」を「EO440部(10モル部)」に変更した以外は製造例3と同様にして、スチレン化(1モル)ナフトールEO10モル付加物(A-13)を得た。{(A-13)の数平均分子量は690、HLB=12.8}
【0082】
<製造例14>アントロールEO10モル付加物(A-14)
製造例1において、「クミルフェノール「PCP」[三井化学ファイン(株)製]212部(1モル部)」を「9-アントロール[富士フイルム和光純薬(株)製]194部(1モル部)」に変更し、「EO264部(6モル部)」を「EO440部(10モル部)」に変更した以外は製造例1と同様にして、アントロールEO10モル付加物(A-14)を得た。{(A-14)の数平均分子量は640、HLB=13.9}
【0083】
<製造例15>4-(2-ヒドロキシエトキシ)安息香酸DBU塩(A-15)
反応容器に4-(2-ヒドロキシエトキシ)安息香酸「HE-POB」[上野製薬(株)製]182部(1モル部)、水334部を投入し、撹拌下、ジアザビシクロウンデセン「DBU」[サンアプロ(株)]152部(1モル部)を滴下し、4-(2-ヒドロキシエトキシ)安息香酸DBU塩(A-15)の50重量%水溶液を得た。{(A-15)の分子量は334}
【0084】
<比較製造例1>フェノールEO55モル付加物(A’-2)
製造例1において、「クミルフェノール「PCP」[三井化学ファイン(株)製]212部(1モル部)」を「フェノール94部(1モル部)」に変更し、「EO264部(6モル部)」を「EO2420部(55モル部)」に変更した以外は製造例1と同様にして、フェノールEO55モル付加物(A’-2)を得た。{(A’-2)の数平均分子量は2420、HLB=19.3}
【0085】
<製造例16>ポリオキシエチレン(4.5モル)ラウリルエーテル酢酸ジエタノールアミン塩(B-3)
温度計、撹拌機および窒素ガス導入管を備えた反応容器に、ポリオキシエチレン(4.5モル)ラウリルエーテル酢酸[ビューライトLCA-25NH、三洋化成工業(株)製]44.2重量部(0.1モル部)とメタノール50mlをビーカーに投入し、撹拌下でジエタノールアミン10.5重量部(0.1モル部)を滴下し、2時間撹拌することにより中和し、減圧下60℃でメタノールを除去しポリオキシエチレン(4.5モル)ラウリルエーテル酢酸ジエタノールアミン塩(B-3)を得た。
【0086】
<製造例17>ラウリン酸トリエタノールアミン塩(B-6)
温度計、撹拌機および窒素ガス導入管を備えた反応容器に、ラウリン酸[ルナック L-98、花王(株)製]200重量部(1モル部)とテトラヒドロフラン(以下、THFと略す)200mlをビーカーに投入し、撹拌下でトリエタノールアミン149重量部(1モル部)を滴下し、2時間撹拌することにより中和し、減圧下80℃でTHFを除去しラウリン酸トリエタノールアミン塩(B-6)を得た。
【0087】
<製造例18>デカノールEO55モル付加物(B-7)
製造例1において、クミルフェノール「PCP」[三井化学ファイン(株)製]212部(1モル部)を「デカノール」[KHネオケム(株)製]158部(1モル部)、EO264部(6モル部)をEO2420部(55モル部)に変更した以外は製造例1と同様にして、デカノールEO55モル付加物(B-7)を得た。{(B-7)の数平均分子量は2580、HLB=18.8}
【0088】
<製造例19>ポリエステル樹脂(C-1)
ビスフェノールAのEO2モル付加物「ニューポールBPE-20」[三洋化成工業(株)製]316重量部(1モル部)、テレフタル酸(a11)142重量部(0.86モル部)及びシュウ酸チタン酸カリウム3重量部を、ガラス反応容器中、230℃で0.001MPaまで減圧し水を留去しながら15時間反応させた。反応混合物に更にポリエチレングリコール(b11)「PEG-1000」[三洋化成工業(株)製]263重量部(0.26モル部)を加えて150℃で常圧で2時間反応させ、ポリエステル樹脂(C-1)690重量部を得た。{(C-1)の30℃での粘度(複素粘度)は100Pa・s、HLB=8.8}
【0089】
<製造例20>ポリエステル樹脂(C-2)
テレフタル酸(a11)142重量部(0.86モル部)を163重量部(0.98モル部)、ポリエチレングリコール(b11)「PEG-1000」[三洋化成工業(株)製]263重量部(0.26モル部)をポリエチレングリコール(b12)「PEG-10000」[三洋化成工業(株)製]359重量部(0.04モル部)に変更した以外は製造例19と同様にして、ポリエステル樹脂(C-2)803重量部を得た。{(C-2)の30℃での粘度(複素粘度)は800000Pa・s、HLB=9.8}
【0090】
<実施例1~24及び比較例1~2>
表1に記載の重量部数の原料を配合し、本発明の炭素繊維中間基材用処理剤(X-1)~(X-24)及び比較用の炭素繊維中間基材用処理剤(X’-1)~(X’-2)を得た。
【0091】
【表1】
【0092】
なお、表1に記載した記号の原料の化学組成は以下の通りである。なお、表1における配合量(重量部)は、純分の量で記載した。
(A-1)~(A-15):製造例1~15で得たもの
(A’-1):ビスフェノールAのEO18モル付加物[数平均分子量1020、商品名「ニューポール BPE-180」、三洋化成工業(株)製]
(A’-2):比較製造例1で得たもの
(B-1):ポリオキシエチレン(4モル)ラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミンの30重量%水溶液[商品名「サンデット ET」、三洋化成工業(株)製]
(B-2):アルキル(C12、13)硫酸トリエタノールアミン液の40重量%水溶液[商品名「サンデット LTD」、三洋化成工業(株)製]
(B-3):製造例16で得たもの
(B-4):ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩[商品名「ニューコール707SF」、日本乳化剤(株)製]
(B-5):ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム塩[商品名「ラテムルPD-140」、花王(株)製]
(B-6)~(B-7):製造例17~18で得たもの
(C-1)~(C-2):製造例19~20で得たもの
【0093】
実施例と比較例の炭素繊維中間基材用処理剤を用いて、炭素繊維中間基材を処理し、以下の評価方法で、複合材料の強度及びマトリックス樹脂の浸透性を評価した。結果を表1に示す。
【0094】
<炭素繊維中間基材の製造>
実施例1~24で得た炭素繊維中間基材用処理剤(X-1)~(X-24)及び比較用の炭素繊維中間基材用処理剤(X’-1)~(X’-2)を蒸発残分が2重量%となるように水に溶解、分散させた液に、炭素繊維織物[商品名「EC3C」、台湾プラスチック製]を浸し蒸発残分(付着量)が炭素繊維織物に対して2重量%となるようにニップロールを通過させて処理剤を含浸させ、200℃で3分間熱風乾燥させ、処理剤で処理した炭素繊維中間基材(炭素繊維織物)を得た。
【0095】
<複合材料の強度>
得られた処理剤で処理した炭素繊維中間基材(炭素繊維織物)の両面をポリカーボネート樹脂フィルム「テクノロイC000」[住友化学(株)]で積層し270℃で2MPaの圧力で3分間圧縮することにより、厚み250μmの炭素繊維複合材料(炭素繊維体積含有率50%)を得た。
得られた炭素繊維複合材料の曲げ弾性率及び曲げ強度をJIS K7074に準拠して測定した。
【0096】
<マトリックス樹脂の浸透性>
(1)得られた処理剤で処理した炭素繊維中間基材(炭素繊維織物)の両面をポリカーボネート樹脂フィルム「テクノロイC000」[住友化学(株)]で積層し270℃で2MPaの圧力で1.5分間圧縮することにより、厚み250μmの炭素繊維複合材料(炭素繊維体積含有率50重量%)を得た。
(2)得られた炭素繊維複合材料のカットし、繊維方向に対して垂直方向の断面を光学顕微鏡で確認した。
(3)断面画像(倍率900倍)を紙にプリントアウトし、樹脂が含浸している部分と含浸していない部分を切り取り、それぞれの紙の重さを量って以下の式で含浸性を求めた。
マトリックス樹脂の浸透性(%)=(樹脂が含浸している部分の重さ)/[(樹脂が含浸している部分の重さ)+(樹脂が含浸していない部分の重さ)]×100
【0097】
表1の結果から、実施例1~24の本発明の炭素繊維中間基材用処理剤で処理した炭素繊維織物は、マトリックス樹脂が1.5分と短時間で85%以上浸透しており、ほぼ中心まで浸透していることから、マトリックス樹脂の浸透性が高いことがわかる。本発明の炭素繊維中間基材用処理剤で処理した炭素繊維織物を使用した炭素繊維複合材料は、曲げ弾性率、曲げ強度が高く、成形体強度が優れていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明の炭素繊維中間基材用処理剤は、炭素繊維束{短繊維束(チョップド糸等)}、炭素繊維織物(炭素繊維一方向織物、炭素繊維二次元織物、炭素繊維三次元織物、炭素繊維の四次元以上の織物等)、炭素繊維編み物、炭素繊維不織布(フェルト、マット及びペーパー等)及び炭素繊維布帛等の炭素繊維中間基材のマトリックス樹脂の浸透性を高めるための処理剤として有用である。