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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】記録装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 5/505 20160101AFI20241120BHJP
   B41J 29/46 20060101ALI20241120BHJP
   H02P 5/46 20060101ALI20241120BHJP
   B41J 11/42 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
H02P5/505
B41J29/46 Z
H02P5/46 Z
B41J11/42
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020166111
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022057717
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2023-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神尾 勇希
(72)【発明者】
【氏名】小林 涼
(72)【発明者】
【氏名】杉山 健司
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 和一郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智洋
(72)【発明者】
【氏名】古宇田 武
(72)【発明者】
【氏名】杉山 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】永瀬 知之
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-182689(JP,A)
【文献】特開2003-326783(JP,A)
【文献】特開2001-194834(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 5/505
B41J 29/46
H02P 5/46
B41J 11/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体にプリントを行うプリント手段と、
前記プリント手段を制御する第1のコントローラと、
前記第1のコントローラによって制御され、印刷媒体を搬送する搬送ローラを駆動する搬送モータと、
前記プリント手段でプリントされた印刷媒体を搬送する排紙ローラを駆動する排紙モータと、
前記排紙モータを制御する第2のコントローラと、
前記第2のコントローラで制御され、前記プリント手段でプリントされた印刷媒体の搬送経路を形成する第1の位置と前記搬送経路を形成しない第2の位置に移動可能なフラップを駆動する駆動モータと、
前記フラップの移動状態を検出し、前記第1のコントローラおよび前記第2のコントローラに信号線を介してセンサ信号を出力するフラップセンサと、を備え、
前記第1のコントローラは前記センサ信号によって前記搬送モータを制御し、前記第2のコントローラは前記センサ信号によって前記駆動モータを制御することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記第1のコントローラが配された第1の回路基板と、前記第2のコントローラが配された第2の回路基板とを備えることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記搬送経路に配置され、印刷媒体をカットするカッターを備え、
前記フラップが前記第2の位置のときに前記カッターの走行経路が形成されることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項4】
前記第1のコントローラは、前記カッターを駆動するカッターモータを制御することを特徴とする請求項3に記載の記録装置。
【請求項5】
前記駆動モータの駆動を前記フラップに伝達する電磁クラッチを備えることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項6】
前記フラップの前記第1の位置から前記第2の位置への移動時間よりも、前記第2の位置から前記第1の位置への移動時間の方が短いことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項7】
前記フラップの前記第1の位置から前記第2の位置への移動は、前記駆動モータにより行われ、
前記フラップの前記第2の位置から前記第1の位置への移動は、付勢部材により行われることを特徴とする請求項6に記載の記録装置。
【請求項8】
前記搬送ローラの回転を検出し、前記第1のコントローラに信号線を介してセンサ信号を出力する第1の回転検知センサと、
前記排紙ローラの回転を検出し、前記第1のコントローラおよび前記第2のコントローラに信号線を介してセンサ信号を出力する第2の回転検知センサと、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項9】
前記第1のコントローラは、前記第1の回転検知センサのセンサ信号および前記第2の回転検知センサのセンサ信号に基づいて、前記搬送モータによる印刷媒体の搬送と前記排紙モータによる印刷媒体の搬送とを比較し、JAMを検出することを特徴とする請求項8に記載の記録装置。
【請求項10】
前記搬送ローラに追従して回転する第1の従動ローラと、
前記排紙ローラに追従して回転する第2の従動ローラと、をさらに備え、
前記第1のコントローラは、印刷媒体が、前記搬送ローラと前記第1の従動ローラとに挟まれ、且つ前記排紙ローラと前記第2の従動ローラとに挟まれている状態において、前記搬送ローラの搬送量と前記排紙ローラの搬送量の差に応じて、印字している印刷媒体と次に印刷される印刷媒体の印刷処理を変更することを特徴とする請求項8に記載の記録装置。
【請求項11】
前記排紙ローラは、前記搬送ローラよりも速い搬送速度で回転することを特徴とする請求項10に記載の記録装置。
【請求項12】
前記排紙ローラの回転するトルクの上限を制限するトルクリミッタをさらに備え、印刷媒体が、前記搬送ローラと前記第1の従動ローラとに挟まれる摩擦力、及び前記排紙ローラと前記第2の従動ローラとに挟まれる摩擦力は、前記トルクリミッタの上限で前記排紙ローラが回転した際に発生する搬送力よりも大きいことを特徴とする請求項10または11に記載の記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の制御基板を有する記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的にインクジェットプリンタ等の記録装置は、内部に複数のセンサ、アクチュエータを備え、各センサ、アクチュエータはコントローラに接続され制御される。しかし、複数のセンサ、アクチュエータを単にコントローラに接続するだけでは、センサ数もコネクタ数も増大し、コストアップを招く。
【0003】
特許文献1では、この問題を解決するために、センサ信号をコントローラへ入力する接続構成を工夫し、センサ信号をパラレルではなくシリアルにコントローラへ入力することにより、機器内の配線を最小にして、コストダウンを図る技術が提案されている。
【0004】
しかし、このような方法を用いなくとも、同一のセンサで複数の動作を制御するなどしてセンサ数を減らすことができれば、コストダウンを図ることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-059161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、例えばインクジェットプリンタの複数のモータの駆動回路がそれぞれ別の基板で構成される場合を考える。上記のようにセンサ数を減らすためには、1つのセンサ信号を用いて各基板に接続されるモータを制御することが有効である。しかし、駆動回路が複数の基板で構成される場合、基板間のポート数の削減、制御のし易さの面から、各基板に別々にコントローラが設けられることが一般的である。そのため、1つのセンサ信号を複数の基板のモータの制御に共通に用いようとすると、センサ信号をまず1つの基板に入力し、その信号を各基板のコントローラ間で通信により伝達し、各基板での制御に用いることが必要となる。そのため、通信にかかる時間により、別基板に接続されているモータの制御に遅延が発生するという問題が生じる。
【0007】
本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、異なる基板で制御される複数のモータの制御にセンサの信号を共通に用いる場合に、モータ制御の高速化を図ることができる記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係わる記録装置は、印刷媒体にプリントを行うプリント手段と、前記プリント手段を制御する第1のコントローラと、前記第1のコントローラによって制御され、印刷媒体を搬送する搬送ローラを駆動する搬送モータと、前記プリント手段でプリントされた印刷媒体を搬送する排紙ローラを駆動する排紙モータと、前記排紙モータを制御する第2のコントローラと、前記第2のコントローラで制御され、前記プリント手段でプリントされた印刷媒体の搬送経路を形成する第1の位置と前記搬送経路を形成しない第2の位置に移動可能なフラップを駆動する駆動モータと、前記フラップの移動状態を検出し、前記第1のコントローラおよび前記第2のコントローラに信号線を介してセンサ信号を出力するフラップセンサと、を備え、前記第1のコントローラは前記センサ信号によって前記搬送モータを制御し、前記第2のコントローラは前記センサ信号によって前記駆動モータを制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
異なる基板で制御される複数のモータの制御にセンサの信号を共通に用いる場合に、モータ制御の高速化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態における上面排紙中のプリント装置の斜視図である。
図2】上面排紙中のプリント装置におけるシートの搬送経路の説明図である。
図3】前面排紙中のプリント装置の斜視図である。
図4】前面排紙中のプリント装置におけるシートの搬送経路の説明図である。
図5】第1の実施形態におけるプリント装置の電気構成を説明するためのブロック図である。
図6】カッター周辺部の斜視図である。
図7A】第1の実施形態におけるプリント装置の動作を橋渡しフラップ動作に着目して説明するフローチャートである。
図7B】第1の実施形態において使用されるセンサの各ステップの制御方法について記載した図である。
図8】カッター周辺部の説明図である。
図9】橋渡しフラップの退避状態の説明図である。
図10】橋渡しフラップの戻り状態の説明図である。
図11】橋渡しフラップの退避動作を説明するフローチャートである。
図12】橋渡しフラップの戻り動作を説明するフローチャートである。
図13】排紙ローラの周辺部の構成を示す図である。
図14】JAM検出部の構成を示す図である。
図15A】プリント装置の動作の流れを上面排紙部搬送モータの動作に着目して説明するフローチャートである。
図15B】第1の本実施形態において使用されるセンサの各ステップの制御方法について記載した図である。
図16】プリント装置の動作の流れをJAM検出動作に着目して説明するフローチャートである。
図17】JAM検出の流れを表す波形と計算方法を示す図である。
図18】第2の実施形態における累積でのJAM検出動作を示すフローチャートである。
図19】累積でのJAM検出の流れを表す波形と計算方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0012】
(第1の実施形態)
<装置の基本構成>
図1から図5は、本発明の記録装置の第1の実施形態であるプリント装置の構成を示す図である。本実施形態のプリント装置は、プリント媒体(印刷媒体)としてのシートを供給するためのシート供給装置と、そのシートに画像をプリントするプリント部と、シートをプリント装置上面部とプリント装置前面部の2か所に選択的に排紙する排紙部と、を備えたインクジェットプリント装置である。
【0013】
図1は、シート1をロール状に巻回したロールシートを2本セットすることが可能なプリント装置100の上面排紙中の概略図である。上下に配置されたシート供給装置200にセットされた2本のロールシートから選択的に引き出されたシート1に画像がプリントされる。プリントが完了したシートはプリント装置上部に設けられたスタッカ28に排紙される。ユーザは、操作パネル2に備わる各種のスイッチなどを用いて、シート1のサイズ指定、オンライン/オフラインの切り換え、排紙先の設定など、プリント装置100に対する各種コマンドなどを入力することができる。
【0014】
図2は、プリント装置100の要部の上面排紙中の概略断面図である。2本のロールRに対応する2つのシート供給装置200が上下に配備されている。シート供給装置200によってロールRから引き出されたシート1は、シート搬送部(搬送機構)300によって、シート搬送経路に沿って画像をプリント可能なプリント部400に搬送される。プリント部400は、インクジェット式のプリントヘッド18からインクを吐出することにより、シート1に画像をプリントする。プリントヘッド18は、電気熱変換素子(ヒータ)やピエゾ素子などの吐出エネルギー発生素子を用いて、吐出口からインクを吐出する。プリントヘッド18はインクジェット方式のみに限定されず、またプリント部400のプリント方式も限定されない。例えば、シリアルスキャン方式あるいはフルライン方式などであってもよい。シリアルスキャン方式の場合には、シート1の搬送動作と、シート1の搬送方向と交差する方向におけるプリントヘッド18の走査とを伴って画像をプリントする。フルライン方式の場合には、シート1の搬送方向と交差する方向に延在する長尺なプリントヘッド18を用い、シート1を連続的に搬送しつつ画像をプリントする。
【0015】
プリント部400へ導かれたシート1は、搬送ローラ14によって矢印F1で示される搬送方向へ搬送される。ニップローラ(従動ローラ)15は、搬送ローラ14の回転に追従して従動回転可能である。プリントヘッド18の搬送方向(矢印F1の方向)の下流側にはカッター21が配置されており、プリント終了時に動作してシート1をカットする。なお、このカッター21にほぼ重なる位置には、後述する橋渡しフラップ40(図6参照)が配置されている。カッター21のさらに下流側には、図中の矢印E1,E2の方向に回動可能な排紙切替フラップ22が配置されており、コントローラの制御に基づいて位置が切り替えられる。排紙切替フラップ22は、上面排紙中は矢印E1の方向に回動した位置に位置している。排紙切替フラップ22を通過したシート1は、上面排紙部500によって、プリント部400の上部に設置されるスタッカ28へ排紙される。上面排紙部500とスタッカ28の間には、排紙ローラ25および排紙ニップコロ(従動ローラ)26が備えられており、カットされたシート1を把持して矢印F2で示される排紙方向に排紙する。排紙されたシート1はスタッカ28に収容され、トレイ29および積載紙1aの上部に積載される。
【0016】
図3は、プリント装置100の前面排紙中の概略図である。プリントが完了したシート1はプリント装置100の前面部に設けられた前面排紙支持部161から排紙される。図4は、プリント装置100の要部の前面排紙中の概略断面図である。カッター21の下流側に配置された排紙切替フラップ22が矢印E2の方向に回動した位置に位置している。排紙切替フラップ22を通過したシート1は前面排紙支持部161の上部を通ってプリント装置100の前面に排紙される。プリントの終了後にカットされたシート1は、シート1の自重によって排紙され、プリンタ下部から引き出し可能な前面排紙収容部30へ収容される。
【0017】
図5は、プリント装置100の電気構成を説明するためのブロック図である。プリント装置100には、プリント部制御用コントローラボード(回路基板)501と上面排紙部制御用コントローラボード(回路基板)502が内蔵されおり、各センサ及びアクチュエータの制御を行う。
【0018】
コントローラA503は、プリント部制御用コントローラボード501に実装されており、電源部A504、IF部505、メモリ506、モータドライバA507、操作パネル2、各センサ等と接続される。電源部A504は、外部から供給される電力を、プリント部制御用コントローラボード501、各センサ、アクチュエータの駆動に使用する電圧に変換する回路によって構成される。
【0019】
IF部505は、LAN及びUSB等の制御回路によって構成され、PC及びネットワークとコントローラA503とを接続してデータの通信を可能にする。メモリ506は、コントローラA503を駆動するためのプログラム、所要のテーブル、その他の固定データを格納するために使用される。また、画像データを展開する領域及び作業用の領域等を設けるためにも用いられる。
【0020】
モータドライバA507は、搬送モータA508、カッターモータ509を駆動するための駆動回路であり、コントローラA503から入力される制御信号を受けてモータ駆動信号を出力する。搬送モータA508は、搬送ローラ14を回転駆動する。
【0021】
プリント部400は、コントローラA503から入力される制御信号を受けてプリントデータ等に応じてプリントヘッド18を駆動し、印字動作を行う。センサ群A511は装置の状態を検出するための検出センサ群であり、カッター21に搭載されているカッターセンサ512、搬送モータA508の駆動を検出するためのエンコーダセンサ513等を有する。
【0022】
操作パネル2は、プリント装置100を動作させるためにユーザーが操作するためのパネルであり、LCD、タッチパネル、物理キーなどによって構成される。LCDにはメニュー及び通知が表示され、ユーザーはタッチパネルの操作によりスキャン動作の開始、設定の変更を行うことができる。また、物理キーとしてスタートキー及びストップキー、排紙キーが備えられている。
【0023】
コントローラB514は、上面排紙部制御用コントローラボード502に実装されており、電源部B515、モータドライバB516、各センサ等と接続される。電源部B515は、電源部A504と同様に、外部から供給される電力をプリント部制御用コントローラボード502、各センサ、アクチュエータの駆動に使用する電圧に変換する回路によって構成される。モータドライバB516は、搬送モータB(排紙モータ)517及び橋渡しフラップモータ518を駆動させるための駆動回路であり、コントローラB514から入力される制御信号を受けてモータ駆動信号を出力する。センサ群B519は、装置の状態を検出するための検出センサ群であり、上面排紙部500に搭載されている搬送モータB517の駆動を検出するための排紙ローラ回転検知センサ520、橋渡しフラップモータ518の駆動(橋渡しフラップ40の移動状態)を検出するための橋渡しフラップセンサ521等を有する。搬送モータB517は、後述する排紙ローラ25を回転駆動する。
【0024】
プリント部制御用コントローラボード501と上面排紙部制御用コントローラボード502は接続されており、プリント部制御用コントローラボード501によって上面排紙部制御用コントローラボード502を制御するように構成されている。上面排紙部制御用コントローラボード502をプリント部制御用コントローラボード501とは別に設けることにより、上面排紙部とプリント部とを独立して制御可能である。
【0025】
また、排紙ローラ回転検知センサ520と橋渡しフラップセンサ521の信号線は、プリント部制御用コントローラボード501と上面排紙部制御用コントローラボード502の両方に共通に接続されている(図面内太線部)。排紙ローラ回転検知センサ520の出力は、コントローラA503が搬送モータA508を駆動する制御、及び、コントローラB514が搬送モータB517を駆動する制御に用いられる。その駆動制御方法については後述する。橋渡しフラップセンサ521の出力は、コントローラA503が搬送モータA508を駆動する制御、コントローラB514が橋渡しフラップモータ518を駆動する制御に用いられる。その駆動制御方法については後述する。
【0026】
なお、本実施形態において、排紙ローラ回転検知センサ520と橋渡しフラップセンサ521が上面排紙部制御用コントローラボード502で分岐している理由は、以下のようなものである。つまり、プリント部制御用コントローラボード501へセンサ信号を受け渡しする際に、他の信号と同一のハーネスとして束ねることでハーネスを削減できるためである。ただし、必ずしも排紙ローラ回転検知センサ520と橋渡しフラップセンサ521が上面排紙部制御用コントローラボード502で分岐している必要はない。
【0027】
次に、図6図12を用いて、本実施形態におけるカッター21の周辺部の動作について説明する。
【0028】
<カッター21の周辺部の詳細説明>
図6は、カッター21の周辺部の詳細な構成を示す斜視図である。
【0029】
プリント部400を通過したシート1は、カッター21に対して矢印F1で示す方向に搬送される。カッター21の下流側には、カッター21が非動作時は搬送経路を構成し、カッター21が動作時はカッター21が走行するための走行経路を構成する橋渡しフラップ40が配置されている。橋渡しフラップ40は、駆動力伝達制御部41、駆動源42、付勢部(付勢部材)43によって位置が切り替えられる(移動可能)。カッター21が動作する場合は、駆動源42によって発生する駆動力が駆動力伝達制御部41を介して橋渡しフラップ40に伝達され、橋渡しフラップ40の位置が切り替えられ、シート1のカット動作が行われる。カッター21が非動作時は、駆動力伝達制御部41が駆動源42からの駆動力を遮断し、付勢部43によって、橋渡しフラップ40の位置が切り替えられ、搬送経路を構成する。
【0030】
次に、プリント動作中のカッター21の周辺部の全体動作について説明する。
【0031】
<プリント動作中のカッター21の周辺部の全体動作>
図7Aは、本実施形態のプリント装置100のプリント動作から排紙を行うまでの動作の流れを、橋渡しフラップの動作に着目して説明するフローチャートである。図7Bは、本実施形態において使用されるセンサの各ステップの制御方法について記載した図である。
【0032】
プリント装置100がプリント動作を行う場合、予めプリント装置100のシート供給装置200にシートのロールRをセットしておく必要がある。ロールRをセットした状態で、操作パネル2の操作が受け付けられ、プリントの設定変更等が行われる。プリントの設定変更等が行われた後、プリント動作を行うために、ユーザーによってプリント開始ボタンが押下される(ステップS701)。
【0033】
プリント開始ボタンが押下されると、コントローラA503は、モータドライバA507に制御信号を送信し、搬送モータA508を回転させることにより、シート1の搬送を開始させる。続いて、プリント部400によってプリントデータ等に応じてプリントヘッド180を駆動してプリントが開始される(ステップS702)。
【0034】
プリントが開始されると、コントローラB514は、モータドライバB516に制御信号を送信し、搬送モータB517の回転も開始させる。プリントしたシート1の先端がカッター21を超えて上面排紙部500に入ると、コントローラB514はモータドライバB516に制御信号を送信し、橋渡しフラップモータ518を回転させることにより、橋渡しフラップ40の退避動作を開始させる(ステップS703)。橋渡しフラップ40の退避動作についての詳細な説明は後述する。
【0035】
橋渡しフラップ40の退避動作が開始されると、橋渡しフラップセンサ521により、退避動作が検出される(ステップS704)。ステップS704において使用されるセンサ、コントローラ、モータを図7Bに示す。
【0036】
ステップS704において橋渡しフラップ40の退避動作が検出されると、橋渡しフラップ40の退避動作を終了する(ステップS705)。このとき、コントローラB514は、橋渡しフラップセンサ521が退避動作を検出すると即座に橋渡しフラップモータ518を制御するため、橋渡しフラップ40の退避動作を遅延なく終了させることができる。
【0037】
ステップS704において橋渡しフラップ40の退避動作を検出できない場合、橋渡しフラップ40の動作エラーとしてプリント動作を終了し、操作パネル2を通じてユーザーにその旨を通知する(ステップS706)。
【0038】
ステップS705において橋渡しフラップ40の退避動作が終了し、プリント部400によってプリントデータ等の印字が完了したらプリント動作を終了する(ステップS707)。
【0039】
プリント動作が終了すると、シート1の搬送も停止される。コントローラA503は、モータドライバA507に制御信号を送信し、カッターモータ509を回転させることにより、カッターセンサ512によりカット動作を検出するまでカッター21の動作を行わせる(ステップS708)。
【0040】
カット動作が終了すると、コントローラB514は、モータドライバB516に制御信号を送信し、橋渡しフラップモータ518を回転させることにより、橋渡しフラップ40の戻り動作を開始させる(ステップS709)。橋渡しフラップ40の戻り動作についての詳細な説明は後述する。
【0041】
橋渡しフラップ40が戻り動作を開始すると、橋渡しフラップセンサ521により、橋渡しフラップ40の戻り動作が検出される(ステップS710)。ステップS710において使用されるセンサ、コントローラ、モータを図7Bに示す。
【0042】
ステップS710において橋渡しフラップ40の戻り動作が検出されると、橋渡しフラップ40の戻り動作を終了する(ステップS711)。このとき、コントローラB514は、橋渡しフラップセンサ521が戻り動作を検出すると即座に橋渡しフラップモータ518を制御するため、橋渡しフラップ40の戻り動作を遅延なく終了させることができる。
【0043】
ステップS710において橋渡しフラップ40の戻り動作を検出できない場合、橋渡しフラップ40の動作エラーとしてプリント動作を終了し、操作パネル2を通じてユーザーにその旨を通知する(ステップS712)。
【0044】
ステップS711において橋渡しフラップ40の戻り動作が終了すると、プリント終了後の排紙動作を行う(ステップS713)。このとき、コントローラA503は、橋渡しフラップセンサ521が戻り動作を検出すると即座に搬送モータA508を制御するため、プリント終了後の紙送り動作を遅延なく開始させることができる。
【0045】
以上説明したように、橋渡しフラップセンサ521の出力をコントローラA503とコントローラB514に入力することによって、各コントローラが制御しているアクチュエータを個別に制御することができる。仮に橋渡しフラップセンサ521がコントローラB514のみに接続されていた場合、コントローラB514はコントローラA503と通信を行い、搬送モータA508を制御する信号を受け渡す必要がある。そのため、コントローラ間の通信時間分の遅延が生じる。本実施形態の構成を用いることにより、橋渡しフラップの動作による遅延を生じることなく、プリント終了後の排紙処理を実施することが可能となる。
【0046】
次に、プリント時のカッター21の動作について説明する。
【0047】
<カッター21の動作>
図8図10は、カッター21の動作を示す図である。以下で説明するカッター21の動作の実行制御は前述したコントローラA503によって行われる。
【0048】
シート1に対するプリント開始時は、橋渡しフラップ40は搬送経路を構成しており、カッター21は橋渡しフラップ40の幅方向の外側に位置している。シート1へのプリントが開始され、シート1の先端部が橋渡しフラップ40を通過すると、駆動源42が駆動され、駆動力伝達制御部41を介して橋渡しフラップ40に駆動力が伝達され、矢印M1で示す方向に退避する(図9参照)。所定の位置まで橋渡しフラップ40が移動した後、駆動源42はOFFされるが、駆動力伝達制御部42により、橋渡しフラップ40は退避位置で保持される。これにより、カッター21の走行経路が形成される。シート1へのプリント動作を所定量行い、プリント動作が終了した後、シート1は所定の長さでカットされる。カッター21はシート1の幅方向に走行し、シート1をカットした後に、元の位置に戻る。カッター21が元の位置に戻った直後、駆動力伝達制御部41により橋渡しフラップ40の保持は解除され、付勢部43によって矢印M2で示す方向に戻る(図10参照)。この動作にかかる時間は、駆動源42によりフラップ40が駆動される移動時間よりも短い。シート1をカットした後、次のプリント動作が直ちに開始されるため、橋渡しフラップ40は後続シートの先端部が橋渡しフラップ40の位置に進入してくる前に、高速でシートの搬送経路内に戻る。これにより、高速で連続的なプリントを行うことが可能となる。
【0049】
図11及び図12はカッター21の周辺部の動作を示すフローチャートである。図11は橋渡しフラップ40の退避動作時のフローチャートである。
【0050】
橋渡しフラップ40の退避動作開始時は、電磁クラッチをPWM制御により所定のDuty(100%)に設定し、駆動源42(モータ)からの駆動を橋渡しフラップ40に伝達可能な状態とする(ステップS1101)。
【0051】
その後、駆動源42が駆動され、橋渡しフラップ40が矢印M1で示す方向に退避する(ステップS1102)。
【0052】
橋渡しフラップ40の退避動作の終了後、駆動源42(モータ)の励磁がOFFされる(ステップS1103)。
【0053】
その後、電磁クラッチが所定のDuty(50%)に変更され、橋渡しフラップ40の退避が終了する(ステップS1104)。
【0054】
図12は橋渡しフラップ40の戻り動作時のフローチャートである。
【0055】
橋渡しフラップ40の戻り動作開始時は、電磁クラッチが所定のDuty(0%)に変更される(ステップS1201)。
【0056】
その後、バネの力により橋渡しフラップ40が矢印M2で示す方向に戻り始め、戻り動作の所定位置まで戻り、動作を終了する(ステップS1202)。
【0057】
なお、上記の実施形態では、付勢部43によって矢印M2で示す方向に戻るときに、駆動力伝達制御部41により保持力を解除したが、保持力を段階的に変化させるように制御してもよい。橋渡しフラップ40がシート1の搬送経路を形成する位置に戻る直前で、解除した保持力を再度与えることにより橋渡しフラップ40の速度を減速させ、騒音を抑制するようにしてもよい。この場合、橋渡しフラップ40は搬送経路の形成に問題ない速度に減速させる。
【0058】
次に図13図17を用いて、上面排紙部の搬送モータの周辺部の動作およびJAM検出動作について説明する。
【0059】
<JAM検出部の詳細説明>
図13は排紙ローラ25の周辺部の構成を示す図である。
【0060】
排紙ローラ25は、搬送ローラ14で搬送されたシート1を、上面排紙収容部31へ排出するように構成されている。排紙ローラ25は、ギア駆動によって搬送モータB517と接続されて回転するように構成されている。排紙ニップコロ26は従動コロであり、排紙ローラ25と対になるように配置され、バネ等で排紙ローラ25に常に押圧されている。
【0061】
印字が開始されると、排紙ローラ25は回転を開始する。印字が進むにつれ、シート1の先端は搬送路を通過し、排紙ローラ25と排紙ニップコロ26によって挟まれて、搬送される。ここで、排紙ローラ25は常に搬送ローラ14の搬送速度よりも速い速度で回転させる。これは、搬送ローラ14と排紙ローラ25の両方で挟んで搬送する際に、排紙ローラ25の搬送速度が遅いと、搬送ローラ14と排紙ローラ25の間のシート部分にたるみが発生し、ジャムが発生してしまうからである。一方で、シート1を2つのローラで引っ張り合う場合は、張力によってはシート1にダメージ与える恐れがある。そこで、排紙ローラ25の駆動部にトルクリミッタ53(図14参照)を追加し、モータから伝わるトルクに上限を設定できる構成にしている。詳細な構成については後述する。これにより、排紙ローラ25によってシート1への張力の上限を制限することができるため、シート1へのダメージを回避することができる。また、排紙ニップコロ26とニップローラ15の圧力による摩擦力は、トルクリミッタ53の上限で排紙ローラ25が回転した際に発生する搬送力よりも大きくなるように設定されている。
【0062】
印字が終了すると、搬送ローラ14で印字済みのシート1のカットするべき位置をカッター21の位置まで搬送し、カットを実行する。ここで、排紙ローラ25は、カット実行の瞬間は搬送を停止する。これは、カット中に、排紙ローラ25でシート1を引っ張ってしまうと、カット精度が悪化してしまうからである。カット終了後、再び排紙ローラ25は回転を開始し、印字済みのシート1を上面排紙収容部31へ排紙する。
【0063】
図14はJAM検出部の構成を示す図である。
【0064】
排紙ローラ25の一端は、ユニットの側板51にベアリング等により、回転可能に支持されている。排紙ローラ25の端部は側板51からユニットの外側へ延長されており、排紙ローラ25の軸と同軸に駆動ギア52が配置されている。ここで、排紙ローラ25の軸と駆動ギア52は一体で動く構成ではなく、互いに独立して回転可能に構成されている。駆動ギア52に隣接して、トルクリミッタ53が配置されている。駆動ギア52には溝形状、トルクリミッタ53には突起形状が形成されており、嵌め合いによって、駆動ギア52とトルクリミッタ53が一体に回転する。
【0065】
トルクリミッタ53に隣接して、排紙ローラ25の回転を検知するスリットが形成されたジャム検知部材54が配置されている。トルクリミッタ53には突起形状、ジャム検知部材54には溝形状が形成されており、嵌め合いによって、トルクリミッタ53とジャム検知部材54が一体に回転する。
【0066】
また、排紙ローラ25の端部とジャム検知部材54の中心取付穴にはDカット形状が形成されており、排紙ローラ25とジャム検知部材54が一体に回転するように構成されている。結果として、搬送モータB517によって駆動ギア52が回転し、その動力が、トルクリミッタ53を介して、ジャム検知部材54に伝達され、ジャム検知部材54と一体の排紙ローラ25が回転駆動される。
【0067】
ここで、トルクリミッタ53は、モータから伝わるトルクに上限を設定できるように構成されている。そのため、排紙ローラ25の回転に必要なトルクが、トルクリミッタ53の値よりも大きくなった場合、トルクリミッタ53が空回りして、排紙ローラ25は回転しない。
【0068】
また、トルクリミッタ53の設定値は、以下の条件を満たすように設定される。条件とは、張力が発生した際にシート1のダメージがないこと、搬送ローラ14とニップローラ15でのニップ部分において滑りが発生しないこと、上面排紙収容部31を通過する際、搬送抵抗に負けて搬送不良が発生しないこと、である。
【0069】
ジャム検知部材54にはスリットが形成されており、排紙ローラ25と一体に回転する。そのスリットに対して光を投光及び受光するフォトインタラプタである排紙ローラ回転検知センサ520が配置されている。排紙ローラ回転検知センサ520を用いて、スリットによる光の遮光、透過のパルスを検知することにより、排紙ローラ25の回転量を検知することができる。本実施形態では、ジャム検知部材54に汎用的な樹脂を成形した部品を使用しているため、スリットの幅は広く、粗い。しかし、さらに精度よく読み取る必要がある場合は、スリット部分をコードホイールで作成し、エンコーダセンサのように高周期でセンサ値を取得できる構成としてもよい。
【0070】
<上面排紙部搬送モータの周辺部分の全体動作>
図15Aは、本実施形態のプリント装置100の電源ONからプリント、排紙までの動作の流れを、上面排紙部の搬送モータB517の動作に着目して説明するフローチャートである。図15Bは、本実施形態において使用されるセンサの各ステップの制御方法について記載した図である。
【0071】
プリント装置100は、ユーザーによって操作パネル2上の電源ボタンが押下されることにより起動される(ステップS1501)。
【0072】
プリント装置100が起動されると、プリント部400、搬送モータA508などの、プリント機能部分の初期化動作を実施する(ステップS1502)。
【0073】
続いて、上面排紙部500の初期化動作を実施する(ステップS1503)。上面排紙部500の初期化動作では、コントローラB514により搬送モータB517を回転させ、搬送初期化動作を開始させる(ステップS1504)。
【0074】
搬送初期化動作が開始されると、排紙ローラ回転検知センサ520により、搬送モータB517の回転を検出する(ステップS1505)。ステップS1505において使用されるセンサ、コントローラ、モータを図15Bに示している。
【0075】
ステップS1505において搬送モータB517の回転が検出されると、搬送初期化動作を終了する(ステップS1506)。このとき、コントローラB514は、排紙ローラ回転検知センサ520が排紙ローラ25の回転を検出すると即座に搬送モータB517を制御するため、搬送初期化動作を遅延なく終了させることができる。
【0076】
ステップS1505において、搬送モータB517の回転を検出できない場合、上面排紙部の搬送モータの初期化エラーとして初期化動作を終了し、操作パネル2を通じてユーザーにその旨を通知する(ステップS1507)。
【0077】
ステップS1506において、搬送初期化動作が終了すると、プリントスタンバイの状態となり、操作パネル2において、プリントの設定、プリントの開始等が可能となる(ステップS1509)。
【0078】
プリント動作を行う場合、予めプリント装置100のシート供給装置200にロールRをセットしておく必要がある。シート1のロールRをセットした状態で、プリントの設定変更等が行われた後、プリント動作を行うために、ユーザーによってプリント開始ボタンが押下される(ステップS1509)。
【0079】
プリント開始ボタンが押下されると、コントローラA503は、モータドライバA507に制御信号を送信し、搬送モータA508を回転させることにより、シート1の搬送を開始させる。
【0080】
続いて、プリント部400によって、プリントデータ等に応じてプリントヘッド180を駆動してプリントが開始される(ステップS1510)。
【0081】
プリントが開始されると、コントローラB514はモータドライバB516に制御信号を送信し、搬送モータB517の回転も開始させる。排紙ローラ回転検知センサ520は搬送ローラの回転を検出しており、プリントしたシート1の先端がカッター21を超えて上面排紙部500に入り、排紙ローラ25に差し掛かると排紙ローラ25が回転される。排紙ローラ回転検知センサ520は、排紙ローラ25の回転を検出する。排紙ローラ回転検知センサ520により、上面排紙部の排紙ローラ25とプリント部の搬送ローラ14の回転を比較することで、JAM検出を行う(ステップS1511)。ステップS1511において使用されるセンサ、コントローラ、モータを図15Bに示す。
【0082】
ステップS1511の比較により、回転量に一定量以上の相違がないか判定し(ステップS1512)、相違がない場合はプリントを継続する(ステップS1513)。
【0083】
ステップS1512において、回転量に一定量以上の相違がある場合は、JAM検知エラーとしてプリント動作を終了し、操作パネル2を通じてユーザーにその旨を通知する(ステップS1514)。このとき、コントローラA503は、排紙ローラ回転検知センサ520とエンコーダセンサ513がローラの回転を検出すると即座に上面排紙部の排紙ローラ25とプリント部の搬送ローラ14の回転量を比較するため、遅延なくJAM検出を実行することができる。JAM検出の詳細な動作は後述する。
【0084】
ステップS1513において所定長さのプリントが完了すると、プリント動作を終了する(ステップS1515)。プリント動作が終了すると、プリント動作終了後の動作として、カット動作や排紙動作を実施する(ステップS1516)。
【0085】
以上説明したように、排紙ローラ回転検知センサ520の出力をコントローラA503とコントローラB514に入力することによって、各コントローラが制御しているアクチュエータを個別に制御することができる。仮に排紙ローラ回転検知センサ520がコントローラB514のみに接続されていた場合、コントローラB514はコントローラA503と通信を行い、上面排紙部排紙ローラ25の回転量をコントローラA503に通知する必要がある。そのため、コントローラ間の通信時間分の遅延が生じる。本実施形態の構成を用いることにより、JAM検出動作を遅延なく実施することが可能となる。
【0086】
<JAM検出部の動作>
図16図17を用いてJAM検出部によるJAM検出の流れについて説明する。図16は、JAM検出動作に着目したフローチャートであり、図17は、JAM検出の過程を表す波形と計算方法を示している。なお、プリンタ側搬送をLF、上面排紙側搬送をEJと表記して説明する。
【0087】
ステップS601において、プリント動作が開始され、シート1の先端が下流ニップ(排紙ローラ25)を通過する1つ前のフィードが完了したらJAM検出を開始する(ステップS602)。これはつまり、LFとEJでニップした状態においてJAM検知を行うということである。JAM検出を行うためのセンサ信号として、コントローラA503で制御する搬送モータA508の動作を検出するエンコーダセンサ513と、コントローラB514で制御する搬送モータB517の駆動部である排紙ローラ25の動作を検出する排紙ローラ回転検知センサ520を用いる。
【0088】
ステップS602において、JAM検出が開始されると、コントローラA503とコントローラB514は、内部に保持していたLF搬送量を0にリセットし(ステップS603)、EJ搬送量も0にリセットする(ステップS604)。
【0089】
その後、LF搬送量およびEJ搬送量のカウントを開始する(ステップS605、ステップS606)。ここでEJ搬送量のカウントはLFが動作していないときもカウントを継続する。LF搬送量はエンコーダセンサ513の取得値よりカウントを行う。EJ搬送量は排紙ローラ回転検知センサ520の取得値よりカウントを行う。
【0090】
ステップS607において、エンコーダセンサ513の取得値より、LF搬送量がJAM判定搬送量Yに達したか否かを判定し、達していた場合は、その時点での排紙ローラ回転検知センサ520の取得値より、EJ搬送量を算出する(ステップS609)。達していない場合は、カット位置までの搬送が終了しているか否かを確認し(ステップS608)、終了していなければ印刷とJAM検知を継続する。終了していれば、JAM検知を終了する。
【0091】
ステップS609において、EJ搬送量を算出する。EJ搬送量は、排紙ローラ回転検知センサ520の1スリット搬送量をSとすると、スリット切替数を掛け合わせることにより算出することができる。LF搬送量と算出したEJ搬送量の差分からたるみ量を算出し(ステップS610)、たるみ量に応じて処理を変更する。
【0092】
ステップS611において、たるみ量がJAM判定閾値Xj'以下の場合、正常の印字であると判定し、カット位置までの搬送が終了していなければ(ステップS612)、印字を継続する。ステップS611において、たるみ量がJAM判定閾値Xj'よりも大きい場合、ステップS614に進む。
【0093】
ステップS614において、たるみ量がJAM判定閾値Xj'より大きく、JAM判定閾値Xj以下の場合、JAMの予兆が始まっていると判定し、印字中の印字は継続し、次の印刷を停止させる。この場合、上面排紙収容部31に排紙された印刷物が満載を超えているか、あるいは、シート1の種類、巻径、環境によって排紙が困難な場合が想定される。そのため、上面排紙収容部31に積載されたシート1を取り除くように、表示パネル2に表示する。積載紙が取り除かれたことを確認出来た後、次の印刷を再開させる。これにより、JAM発生を事前に防止することができる。
【0094】
たるみ量がJAM判定閾値Xjより大きい場合、JAM発生と判定し(ステップS618)、印字を即停止させる。
【0095】
ここで、本実施形態では、LF搬送量がJAM判定搬送量Yに達したタイミングでEJ搬送量を算出しているが、排紙ローラ回転検知センサ520の分解能によってその距離を変更可能である。本実施形態では、排紙ローラ回転検知センサ520の分解能が粗いため、EJ搬送量、たるみ量に誤差が乗りやすい。そのため、判定するLF搬送量を大きく設定して、誤差の比率を小さくしている。
【0096】
続いて、図17を用いてJAM検出の過程をセンサの信号波形を用いて説明する。排紙ローラ回転検知センサ520は、排紙ローラ25に取り付けられたジャム検知部材54の回転を検出するので、その信号波形は、図17に示す通り、矩形波のようなHIGH、LOWが周期的に切り替わる波形となる。排紙ローラ回転検知センサ520の取得した信号をコントローラB514に入力し、Xp(ms)の周期でポーリングすることにより、コントローラB514はセンサ値を取得する。このとき、読み飛ばし対策として、ポーリング周期Xp(ms)に対し、HIGH区間Hh(ms)およびLOW区間Hl(ms)が小さい必要がある。
【0097】
ここで、JAM判定搬送量Y=10mm、排紙ローラ回転検知センサ520の1スリット搬送量T=1.0mm、JAM判定閾値Xj'=1mm、JAM判定閾値Xj=3mm、とした場合の計算方法を示す。
【0098】
まず、通常時の動作について説明する。通常時は排紙ローラ25が一定速度で回転されているため、排紙ローラ回転検知センサ520の信号波形は周期的にHIGH、LOWが切り替わる。コントローラB514がポーリングしたセンサ値より、HIGH、LOWの切り替わりをカウント(I~V‘)して、図17では10カウント分と判定する。コントローラB514では、1カウント分に対する移動量からカウント数に応じた移動量を計算し、EJ搬送量X1(mm)とたるみ量を算出する。
【0099】
EJ搬送量X1=1.0mm×10回切替=10.0mm
たるみ量(JAM判定搬送量Y-EJ搬送量X1)(mm)=0mm
0mm≦JAM判定閾値Xj' (1.0mm)
以上より、正常と判断され、印刷は継続される。
【0100】
続いて、JAM予兆検知時の動作について説明する。コントローラB514がポーリングしたセンサ値より、HIGH、LOWの切り替わりをカウント(I~IV‘)して、図17では8カウント分と判定する。コントローラB514では、1カウント分に対する移動量からカウント数に応じた移動量を計算し、EJ搬送量X1(mm)とたるみ量を算出する。
【0101】
EJ搬送量X1=1.0mm×8回切替=8.0mm
たるみ量(JAM判定搬送量Y-EJ搬送量X1)(mm)=2.0mm
JAM判定閾値Xj' (1.0mm)<たるみ量(2.0mm)≦JAM判定閾値Xj(3.0mm)より、JAM予兆検知と判断され、今印刷している印刷物は継続し、次の印刷を停止させる。そして、上面排紙収容部31に積載された紙をユーザに取り除かせてから、印字を再開させる。
【0102】
続いて、JAM発生検知時の動作について説明する。コントローラB514がポーリングしたセンサ値より、HIGH、LOWの切り替わりをカウント(I~III‘)して、図17では6カウント分と判定する。コントローラB514では、1カウント分に対する移動量からカウント数に応じた移動量を計算し、EJ搬送量X1(mm)とたるみ量を算出する。
【0103】
EJ搬送量X1=1.0mm×6回切替=6.0mm
たるみ量(JAM判定搬送量Y-EJ搬送量X1)(mm)=4.0mm
たるみ量(4.0mm)>JAM判定閾値Xj(3.0mm)より、JAM発生と判断され、現状の印刷をすぐに停止させる。
【0104】
なお、本実施形態では、コントローラB514の制御方法として、ポーリングによりセンサ値を取得したが、割込み制御を使用すれば、ポーリング周期Xp(ms)に対し、HIGH区間Hh(ms)およびLOW区間Hl(ms)が小さい必要はない。
【0105】
また、図17の説明では、JAM判定閾値Xj'=1mm、JAM判定閾値Xj=3mmとした場合について説明したが、プリンタの搬送経路等が違えば、閾値の最適値も変化する。よって、実際のプリント装置に合わせて最適化が必要である。
【0106】
以上説明したように、たるみ量に応じて、JAM予兆検知とJAM検知の処理を変更することにより、JAMの発生を事前に回避することができるので、印刷物の無駄を減らすことができる。
【0107】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、JAM検出をJAM判定搬送量Yごとに行ったが、第2の実施形態では、累積でのJAM検出について説明する。図18図19を用いて、本実施形態における累積でのJAM検出について説明する。
【0108】
<JAM検出部の動作>
図18図19を用いて、JAM検出部による累積でのJAM検出の流れについて説明する。
【0109】
累積でのJAM検出を実施する理由は、JAM判定搬送量Yごとの検出のみでは、即座にJAMとなった場合は検出できるが、徐々に搬送量が低下することを検知できないからである。例えば第1の実施形態において、たるみ量2.0mmの場合、JAM判定閾値Xj' (1.0mm)<たるみ量(2.0mm)≦JAM判定閾値Xj(3.0mm)より、JAM予兆検知と判断される。しかし、この状態が継続されると、たるみ量は累積され、現在印刷しているページが終了する前にJAMが発生してしまう。本実施形態では、こうした状況においてもJAMを検知できるように、累積によるJAM検出も実施する。
【0110】
図18は、累積でのJAM検出動作に着目したフローチャートを示しており、図19は累積でのJAM検出の過程を表す信号波形と計算方法を示している。なお、本実施形態でもプリンタ側搬送をLF、上面排紙側搬送をEJと表記して説明を行う。
【0111】
本実施形態のJAM検出は、第1の実施形態で説明したJAM検出の後に続けて実施する。JAM検出の基本的な検出方法は第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0112】
第1の実施形態によりJAM判定を実施し、正常と判断された場合は、たるみ累積量を算出する(ステップS812、ステップS817)。図19に示すように、たるみ累積量X3(mm)は、JAM判定搬送量Yに対し算出したたるみ量X1a(mm)~X1x(mm)をプリント中加算することで算出する。
【0113】
次に、算出したたるみ累積量X3(mm)をJAM判定閾値Xjs(mm)と比べ、大小によって、印刷処理を変更する。ここで、JAM判定閾値Xjs(mm)はLFからEJまでのシート搬送路内に吸収可能なたるみ量以下に設定する必要があるため、実際のプリント装置のシート搬送路に応じて最適化する必要がある。
【0114】
たるみ累積量X3(mm)<JAM判定閾値Xjs(mm)の場合、シート搬送路でたるみ累積量X3(mm)を吸収できるため、プラテン上での紙浮きは発生せず、キャリッジと印刷物が干渉してJAMを発生させてしまうことはない。よって正常と判断し、プリントを継続する。
【0115】
一方、たるみ累積量X3(mm)≧JAM判定閾値Xjs(mm)の場合は、シート搬送路で吸収しきれないたるみ累積量X3(mm)がプラテン上での紙浮きとなって現れ、キャリッジとの干渉によってJAMが発生してしまう。よってJAM発生と判断し、印字をすぐに停止させる(ステップS823)。
【0116】
たるみ累積量X3のリセットは、プリント動作が終了し、次の用紙先端が下流ニップを通過する1つ前のフィードが完了したら実施される。
【0117】
また、EJのニップ部で微小な滑りが発生したり、シート搬送路内で発生していたたるみ累積が搬送抵抗の低下によって一気に送られた場合には、たるみ累積量X3が負の値になることがある。しかし、この現象はたるみが発生しているわけではないため、本実施形態では無視することとする。
【0118】
以上説明したように、第2の実施形態によれば、第1の実施形態では検知できないJAM予兆を検知できるため、JAMを事前に回避し、印刷物の無駄を減らすことができる。
【0119】
(他の実施形態)
また本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現できる。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現できる。
【0120】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0121】
1:シート、1a:積載紙、2:操作パネル、14:搬送ローラ、15:ニップローラ、18:プリントヘッド、21:カッター、22:排紙切り替えフラップ、25:排紙ローラ、26:排紙ニップコロ、40:橋渡しフラップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図16
図17
図18
図19