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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】車両の走行制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/165 20200101AFI20241120BHJP
   B60W 30/12 20200101ALI20241120BHJP
【FI】
B60W30/165
B60W30/12
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020168087
(22)【出願日】2020-10-02
(65)【公開番号】P2022060080
(43)【公開日】2022-04-14
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 明博
(72)【発明者】
【氏名】片貝 伸也
(72)【発明者】
【氏名】今井 敦
(72)【発明者】
【氏名】福地 一真
【審査官】吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-137001(JP,A)
【文献】特開平09-272414(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0005907(US,A1)
【文献】特開2013-177054(JP,A)
【文献】特開2019-038314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/165
B60W 30/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両に搭載されて、該自車両の前方の走行環境画像情報を取得する外部認識部と、
前記外部認識部により取得された前記走行環境画像情報から車線区画線および他車両のブレーキランプの点灯およびウインカランプの点滅を検出する走行環境認識部と、
ステアリング機構の駆動源を作動させるステアリング制御ユニットと、
前記ステアリング制御ユニットを前記走行環境認識部の検出結果に基づいて制御し、目標走行経路に沿って前記自車両を走行制御する走行制御ユニットと、
を備え、
前記走行環境認識部は、前記ウインカランプの点滅を検出した前記他車両において、該ウインカランプの点滅が消灯してから所定時間経過している場合にのみ、同一の該他車両の前記ウインカランプの点滅の検出処理を再度実行できる状態にすることを特徴とする車両の走行制御装置。
【請求項2】
前記走行制御ユニットによって制御され、制動機構を作動させるブレーキ制御ユニットを有し、
並走車の自車側の前記ウインカランプの点滅を検出したとき、前記ブレーキ制御ユニットが前記制動機構を作動させて、前記自車両の減速制御を実行することを特徴とする請求項1に記載の車両の走行制御装置。
【請求項3】
前記走行制御ユニットは、
第1の先行車を追従制御中に、前記走行環境認識部により前記ウインカランプの点滅を検出していない並走車自車線への割り込みを検出した場合に、前記自車両に対する前記並走車のラップ率が所定値以上となったか否かを判定し、
前記ラップ率が前記所定値以上となったとの判定に応じて、当該判定を行った時点の前記第1の先行車の目標点の軌跡又は当該軌跡を延長した推定軌跡を保持し、前記軌跡又は前記推定軌跡を前記目標走行経路として前記自車両を走行制御する第1の制御を実行し、
前記第1の制御の実行中に、前記自車両が前記軌跡又は前記推定軌跡の終端に到達するまでの間に、前記ラップ率がゼロになった場合には、前記自車両を前記第1の先行車に追従させる第2の制御を実行し、
前記第1の制御の実行中に、前記自車両が前記軌跡又は前記推定軌跡の終端に到達するまでの間に、前記ラップ率がゼロにならない場合には、前記自車両が前記軌跡又は前記推定軌跡の終端に到達した後に、前記自車両を前記並走車に追従させる第3の制御を実行することを特徴とする請求項1に記載の車両の走行制御装置。
【請求項4】
前記走行制御ユニットは、先行車を追従制御中に、前記車線区画線の認識ができなくなった場合、前記先行車および前記自車両が直近の所定時間において前記車線区画線内を走行しているかを判定し、先行車追従制御の継続または停止を実行することを特徴とする請求項1に記載の車両の走行制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両を先行車に追従して、目標進行路上を走行させる車両の走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の運転支援においては、自車両の前方に設定した目標進行路上に先行車を検出し、その車間距離が設定車間距離以内となった場合、先行車との車間距離を所定に維持させながら目標進行路上を走行させる先行車追従制御が知られている。
【0003】
このような運転支援技術においては、走行車線の左右を区画する白線などの車線区画線の例えば中央を自車両が走行するように目標進行路を設定し、自車両に搭載したカメラやレーダ、或いはこれらの組み合わせからなる走行環境情報取得手段で取得した自車両前方の走行環境情報、およびカーナビゲーションシステムによる地図情報と自車位置情報とに基づき、自車両が目標進行路上を走行するように先行車追従制御、車線維持制御などの各種走行制御を行う。
【0004】
例えば、特許文献1には、先行車の障害物回避行動を早期に検出し、余裕を持って自車両の障害物回避行動を行うことのできる車両の走行制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-171959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、先行車追従制御、車線維持制御などの運転支援中において、車線区画線認識の信頼度が低いときや、車線区画線が認識できず、先行車を追従して走行制御しているときに、所望の進行路に反した先行車の挙動に対して自車両のハンドルがつられるようなステアリング制御が行われてしまう課題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記課題を解決するため。先行車追従制御、車線維持制御などの運転支援を実行している際に、先行車を追従して走行制御しているときに、所望の進行路に反した先行車の挙動に対して、自車両のハンドルがつられるようなステアリング制御を抑制する車両の走行制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様の車両の走行制御装置は、自車両に搭載されて、該自車両の前方の走行環境画像情報を取得する外部認識部と、前記外部認識部により取得された前記走行環境画像情報から車線区画線および他車両のブレーキランプの点灯およびウインカランプの点滅を検出する走行環境認識部と、ステアリング機構の駆動源を作動させるステアリング制御ユニットと、前記ステアリング制御ユニットを前記走行環境認識部の検出結果に基づいて制御し、目標走行経路に沿って前記自車両を走行制御する走行制御ユニットと、を備え、前記走行環境認識部は、前記ウインカランプの点滅を検出した前記他車両において、該ウインカランプの点滅が消灯してから所定時間経過している場合にのみ、同一の該他車両の前記ウインカランプの点滅の検出処理を再度実行できる状態にする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、先行車追従制御、車線維持制御などの運転支援を実行している際に、
所望の進行路に反し、追従している先行車の挙動に対して自車両のハンドルが大きく取ら
れるようなステアリング制御を抑制する車両の走行制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】車両の走行制御システムを示す全体構成図
図2】路車間通信および車間通信を示す説明図
図3】ステレオカメラおよびレーダ装置による検出領域を示す説明図
図4】検出した前方領域画像の他車両と車線区画線の認識を示す説明図
図5】テールランプ、ブレーキランプの点灯およびウインカランプの点滅していない状態の先行車の認識を示す図
図6】ブレーキランプが点灯した状態の先行車の認識を示す図
図7】左ウインカランプが点灯した状態の先行車の認識を示す図
図8】右ウインカランプが点灯した状態の先行車の認識を示す図
図9】テールランプ、ブレーキランプの点灯およびウインカランプの点滅を判定する制御例を示すフローチャート
図10】自車走行路の先行車がウインカランプを点滅して左走行路に離脱する状態を示す図
図11】左走行路の先行車であった車両がウインカランプを点滅して自車走行路に割り込む状態を示す図
図12】自車走行路の割り込んできた先行車がウインカランプを点滅して右走行路に離脱する状態を示す図
図13】運転支援中における先行車のウインカランプ検出時の制御例を示すフローチャート
図14】運転支援中における並走車のウインカランプ検出時の制御例を示すフローチャート
図15】右並走車がウインカランプを点滅させずに右車線から自車線、自車線から左車線に車線変更する場面を説明する図
図16】運転支援中における並走車がウインカランプを点滅せずに車線変更した場面での制御例を示すフローチャート
図17】先行車の目標点の軌跡情報に沿った走行制御中の状態を示す図
図18】自車線に右並走車が割り込んで自車両と所定にラップした状態を示す図
図19】割り込んだ右並走車を先行車に切換えたときの状態を示す図
図20】元の先行車の軌跡情報に沿って走行している状態を示す図
図21】割り込んできた車両が自車線から左車線に離脱する状態を示す図
図22】割り込んできた車両が軌跡情報のリミット位置にきた状態を示す図
図23】先行車を追従しているときに、冠雪によるタイヤ痕によって車線区画線が認識されていない状態を示す図
図24】先行車のトラックが車線変更時に車線区画線を跨いだ状態を示す図
図25】先行車追従中に車線区画線が認識できなくなった場面で先行車追従制御の抑制またはキャンセルを実行する制御例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の形態を説明する。図面は本発明の一実施形態に係り、図1は走行制御システムの全体構成図である。
【0012】
図1,2に示すように、本実施形態における走行制御システム1は、複数の車両にそれぞれ搭載された走行制御装置10と、複数の走行制御装置10が無線通信を介して接続されるネットワーク環境NWに設けられる複数の管制装置100と、を有して構成されている。管制装置100は、例えば、クラウドコンピューティングやエッジコンピューティングによるネットワーク環境、或いは道路付帯設備網によるネットワーク環境のサーバ装置として設けられている。
【0013】
管制装置100は、各車両の走行制御装置10から送信される道路地図情報を逐次統合して更新し、更新した道路地図情報を各車両に送信する。このため、管制装置100は、道路地図情報統合_ECU101と、送受信機102と、を有して構成されている。
【0014】
道路地図境情報統合_ECU101は、送受信機102を通じて複数の車両から収集した道路地図情報を統合して、道路上の車両を取り巻く道路地図情報を逐次更新する。道路地図情報は、例えば、ダイナミックマップからなり、主として道路情報を構成する静的情報および準静的情報と、主として交通情報を構成する準動的情報および動的情報と、の4層の情報を有する。
【0015】
静的情報は、例えば、道路や道路上の構造物、車線情報、路面情報、恒久的な規制情報など、1ヶ月以内の更新頻度が求められる情報によって構成されている。準静的情報は、例えば、道路工事やイベントなどによる交通規制情報、広域気象情報、渋滞予測など、1時間以内での更新頻度が求められる情報によって構成されている。
【0016】
準動的情報は、例えば、観測時点における実際の渋滞状況や走行規制、落下物や障害物など、一時的な走行障害状況、実際の事故状態、狭域気象情報など、例えば1分以内での更新頻度が求められる情報によって構成されている。
【0017】
動的情報は、例えば、移動体の間で送信・交換される情報や現在示されている信号の情報、交差点内の歩行者/二輪車情報、交差点を直進する車両情報など、1秒以内での更新頻度が求められる情報によって構成されている。
【0018】
このような道路地図情報は、各車両から次の情報を受信するまでの周期で維持/更新され、更新された道路地図情報は送受信機102を通じて各車両に適宜送信される。
【0019】
車両の走行制御装置10は、車外の走行環境を認識するためのユニットとして、走行環境認識ユニット11およびロケータユニット12を有する。また、走行制御装置10は、走行制御ユニット(以下、「走行_ECU」と称す)22と、エンジン制御ユニット(以下、「E/G_ECU」と称す)23と、ステアリング(操舵)制御ユニットであるパワーステアリング制御ユニット(以下、「PS_ECU」と称す)24と、ブレーキ制御ユニット(以下、「BK_ECU」と称す)25と、を備える。これら各制御ユニット22~25は、走行環境認識ユニット11およびロケータユニット12と共に、CAN(Controller Area Network)などの車内通信回線を介して接続されている。
【0020】
走行環境認識ユニット11は、例えば、車室内前部の上部中央に固定されている。この走行環境認識ユニット11は、メインカメラ11aおよびサブカメラ11bからなる外部認識装置である車載カメラ(ステレオカメラ)と、画像処理ユニット(IPU)11cと、第1の走行環境認識部11dと、を有している。
【0021】
メインカメラ11aおよびサブカメラ11bは、例えば、自車両Mの前方の実空間をセンシングする自律センサである。これらメインカメラ11aおよびサブカメラ11bは、例えば、車幅方向中央を挟んで左右対称な位置に配置され、自車両Mの前方領域Af(図3参照)を異なる視点からステレオ撮像する。
【0022】
IPU11cは、両カメラ11a,11bで撮像した自車両Mの前方の前方走行環境画像情報を所定に画像処理し、対応する対象の位置のズレ量から求めた距離情報を含む前方走行環境画像情報(距離画像情報)を生成する。
【0023】
第1の走行環境認識部11dは、IPU11cから受信した距離画像情報などに基づき、自車両Mの周辺の道路を区画する車線区画線を求める。
【0024】
また、第1の走行環境認識部11dは、自車両が走行する走行路(自車走行レーン)の左右を区画する車線区画線の道路曲率[1/m]、および左右車線区画線間の幅(車線幅)を求める。
【0025】
この道路曲率、および車線幅の求め方は種々知られているが、例えば、第1の走行環境認識部11dは、道路曲率を前方走行環境画像情報に基づき輝度差による二値化処理にて、左右の車線区画線を認識し、最小二乗法による曲線近似式などにて左右車線区画線の曲率を所定区間毎に求める。
【0026】
また、第1の走行環境認識部11dは、距離画像情報に対して所定のパターンマッチングなどを行い、道路に沿って存在するガードレール、縁石、および、自車両Mの周辺の道路上に存在する歩行者、二輪車、二輪車以外の車両などの立体物の認識を行う。
【0027】
ここで、第1の走行環境認識部11dにおける立体物の認識では、例えば、立体物の種別、立体物までの距離、立体物の速度、立体物と自車両Mとの相対速度などの認識が行われる。なお、このように車載カメラからの画像に基づいて認識した立体物を、カメラオブジェクト(カメラOBJ)と称する。
【0028】
さらに、第1の走行環境認識部11dには、自律センサとして、複数のレーダ装置(例えば、左前側方レーダ装置11fl、右前側方レーダ装置11fr、左後側方レーダ装置11rl、および、右後側方レーダ装置11rr)が接続されている。
【0029】
左前側方レーダ装置11flおよび右前側方レーダ装置11frは、例えば、フロントバンパの左右側部に各々設けられている。これら左前側方レーダ装置11flおよび右前側方レーダ装置11frは、上述したカメラ11a,11bからの画像では監視することのできない自車両Mの左右斜め前方および側方の領域Afl,Afr(図3参照)を監視する。なお、左前側方レーダ装置11flおよび右前側方レーダ装置11frは、各領域Afl,Afrの一部が、カメラ11a,11bによる領域Afと重畳するように配置されている。
【0030】
左後側方レーダ装置11rlおよび右後側方レーダ装置11rrは、例えば、リヤバンパの左右側部に各々設けられている。これら左後側方レーダ装置11rlおよび右後側方レーダ装置11rrは、上述した左前側方レーダ装置11flおよび右前側方レーダ装置11frでは監視することのできない自車両Mの左右側方から後方にかけての領域Arl,Arr(図3参照)を監視する。
【0031】
なお、左後側方レーダ装置11rlおよび右後側方レーダ装置11rrは、各領域Arl,Arrの一部が、互いに重畳すると共に、各領域Afl,Afrとそれぞれ重畳するように配置されている。
【0032】
各レーダ装置11fl,11fr,11rl,11rrは、ミリ波レーダ、レーザ・レーダ、ライダー(LIDER:Light Detection and Ranging)などを備えて構成されている。各レーダ装置11fl,11fr,11rl,11rrは、水平方向に発射したレーダ波(電波やレーザビームなど)の反射波を受信することにより、自車両Mの周囲に存在する立体物上の複数の反射点を検出する。
【0033】
そして、各レーダ装置11fl,11fr,11rl,11rrは、検出した複数の反射点の相対位置および移動速度などを解析してグルーピング処理することにより立体物を認識する。さらに、各レーダ装置11fl,11fr,11rl,11rrは、認識した立体物上の反射点のうち、自車両Mに直線距離が最も近い反射点を当該立体物の代表点として設定する。なお、このように各レーダ装置11fl,11fr,11rl,11rrにおいて認識した立体物を、レーダオブジェクト(レーダOBJ)と称する。
【0034】
このように各レーダ装置11fl,11fr,11rl,11rrにおいて認識されたレーダOBJに関する代表点Prなどの情報は、第1の走行環境認識部11dに入力される。これにより、第1の走行環境認識部11dでは、自車両Mの前方に存在する先行車などのみならず、自車両Mの側方に存在する並走車両、交差点などにおいて自車進行路に交差する方向から自車両Mに接近する交差車両および自車両Mの後方に存在する後続車両などについても認識することが可能となっている。
【0035】
ここで、第1の走行環境認識部11dは、認識したカメラOBJおよびレーダOBJの位置を、例えば、自車両Mの中心を原点Oとする直交座標系(自車両Mの前後方向をZ軸、自車両Mの車幅方向をX軸とする座標系)の座標に変換する。
【0036】
さらに、第1の走行環境認識部11dは、カメラOBJとレーダOBJとの比較を行い、予め設定された条件に基づいて一致するカメラOBJとレーダOBJの組合せを、特にフュージョンオブジェクト(フュージョンOBJ)として認識する。
【0037】
ロケータユニット12は、道路地図上の自車位置を推定するものであり、自車位置を推定するロケータ演算部13を有している。このロケータ演算部13の入力側には、自車両Mの前後加速度を検出する前後加速度センサ14、前後左右各車輪の回転速度を検出する車輪速センサ15、自車両の角速度または角加速度を検出するジャイロセンサ16、複数の測位衛星から発信される測位信号を受信するGNSS受信機17など、自車両Mの位置(自車位置)を推定するに際して必要とするセンサ類が接続されている。
【0038】
また、ロケータ演算部13には、管制装置100との間で情報の送受信(路車間通信:図2中の一点鎖線参照)を行うとともに、他車両との間で情報の送受信(車車間通信:図2中の二点鎖線参照)を行うための送受信機18が接続されている。
【0039】
さらに、ロケータ演算部13には、高精度道路地図データベース19が接続されている。高精度道路地図データベース19は、HDDなどの大容量記憶媒体であり、高精度な道路地図情報(ダイナミックマップ)が記憶されている。
【0040】
この高精度道路地図情報は、自車両Mの走行制御を行う際に必要とする情報として、例えば、上述の道路地図情報統合_ECU101において逐次更新される道路地図情報と同様の情報を有する。すなわち、高精度度道路地図情報は、主として道路情報を構成する静的情報および準静的情報と、主として交通情報を構成する準動的情報および動的情報と、からなる4層の情報を有する。
【0041】
ロケータ演算部13は、地図情報取得部13aと、自車位置推定部13bと、第2の走行環境認識部13cと、を備えている。地図情報取得部13aは、例えばドライバが自動運転に際してセットした目的地に基づき、現在地から目的地までのルート地図情報を高精度道路地図データベース19に格納されている地図情報から取得する。
【0042】
また、地図情報取得部13aは、取得したルート地図情報(ルート地図上の車線データ)を自車位置推定部13bへ送信する。自車位置推定部13bは、GNSS受信機17で受信した測位信号に基づき自車両Mの位置座標を取得する。
【0043】
さらに、自車位置推定部13bは、取得した位置座標をルート地図情報上にマップマッチングして、道路地図上の自車位置を推定すると共に自車走行路(走行車線)を区画する左右の車線区画線を認識し、道路地図データに記憶されている走行車線中央の道路曲率を取得する。
【0044】
また、自車位置推定部13bは、トンネル内走行などのようにGNSS受信機17の感度低下により測位衛星からの有効な測位信号を受信することができない環境において、車輪速センサ15で検出した車輪速に基づき求めた車速、ジャイロセンサ16で検出した角速度、および前後加速度センサ14で検出した前後加速度に基づいて自車位置を推定する自律航法に切換えて、道路地図上の自車位置を推定する。
【0045】
さらに、自車位置推定部13bは、上述のようにGNSS受信機17で受信した測位信号或いはジャイロセンサ16などで検出した情報などに基づいて道路地図上の自車位置を推定すると、推定した道路地図上の自車位置に基づき、自車両Mが走行中の走行路の道路種別などを判定する。
【0046】
第2の走行環境認識部13cは、送受信機18を通じた外部通信(路車間通信、および、車車間通信)により取得した道路地図情報を用い、高精度道路地図データベース19に格納された道路地図情報を最新の状態に更新する。この情報更新は、静的情報のみならず、準静的情報、準動的情報、および、動的情報についても行われる。
【0047】
これにより、道路地図情報は、車外との通信により取得した道路情報および交通情報を含んで構成され、道路上を走行する車両などの移動体の情報が略リアルタイムで更新される。
【0048】
また、第2の走行環境認識部13cは、走行環境認識ユニット11により認識した走行環境情報に基づいて道路地図情報の検証を行い、高精度道路地図データベース19に格納された道路地図情報を最新の状態に更新する。この情報更新は、静的情報のみならず、準静的情報、準動的情報、および、動的情報についても行われる。
【0049】
これにより、走行環境認識ユニット11により認識した道路上を走行する車両などの移動体の情報については、リアルタイムで更新される。そして、このように更新された道路地図情報は、送受信機18を通じた路車間通信および車間通信により、管制装置100および自車両Mの周辺車両などに対して送信される。
【0050】
また、第2の走行環境認識部13cは、更新された道路地図情報のうち、自車位置推定部13bにおいて推定した自車位置を中心とする設定範囲の道路地図情報を、第2の走行環境情報として認識する。
【0051】
ここで、第2の走行環境認識部13cにより認識される第2の走行環境情報の範囲は、第1の走行環境認識部11dにより認識される第1の走行環境情報よりも広域であり、例えば、自車位置を中心とする半径1kmの範囲の道路地図情報が第2の走行環境情報として認識される。
【0052】
走行環境認識ユニット11の第1の走行環境認識部11dで認識した第1の走行環境情報、および、ロケータユニット12の第2の走行環境認識部13cで認識した第2の走行環境情報などは、走行_ECU22により読込まれる。
【0053】
また、走行_ECU22の入力側には、ドライバが自動運転(走行制御)のオン/オフ切換などを行うモード切換スイッチ、ドライバによる運転操作量としての操舵トルクを検出する操舵トルクセンサ、ドライバによる運転操作量としてのブレーキペダルの踏込量を検出するブレーキセンサ、ドライバによる運転操作量としてのアクセルペダルの踏込量を検出するアクセルセンサおよび自車両Mに作用するヨーレートを検出するヨーレートセンサなどの各種スイッチ・センサ類が接続されている(何れも図示せず)。
【0054】
走行_ECU22には、運転モードとして、手動運転モードと、走行制御のためのモードである第1の走行制御モードおよび第2の走行制御モードと、退避モードと、が設定されている。これらの各運転モードは、モード切換スイッチに対する操作状況などに基づき、走行_ECU22において選択的に切換可能となっている。
【0055】
ここで、手動運転モードとは、ドライバによる保舵を必要とする運転モードであり、例えば、ドライバによるステアリング操作、アクセル操作およびブレーキ操作などの運転操作に従って、自車両Mを走行させる運転モードである。
【0056】
また、第1の走行制御モードも同様に、ドライバによる保舵を必要とする運転モードである。すなわち、第1の走行制御モードは、ドライバによる運転操作を反映しつつ、例えば、E/G_ECU23、PS_ECU24、BK_ECU25などの制御を通じて、主として、先行車追従制御(ACC:Adaptive Cruise Control)と、車線中央維持(ALKC:Active Lane Keep Centering)制御および車線逸脱抑制(Active Lane Keep Bouncing)制御と、を適宜組み合わせて行うことにより、目標走行経路に沿って自車両Mを走行させる、いわば半自動運転モードである。
【0057】
また、第2の走行制御モードとは、ドライバによる保舵、アクセル操作およびブレーキ操作を必要とすることなく、例えば、E/G_ECU23、PS_ECU24、BK_ECU25などの制御を通じて、主として、先行車追従制御と、車線中央維持制御および車線逸脱抑制制御とを適宜組み合わせて行うことにより、目標ルート(ルート地図情報)に従って自車両Mを走行させる自動運転モードである。
【0058】
退避モードは、例えば、第2の走行制御モードによる走行中に、当該モードによる走行が継続不能となり、且つ、ドライバに運転操作を引き継ぐことができなかった場合(すなわち、手動運転モード、または、第1の走行制御モードに遷移できなかった場合)に、自車両Mを路側帯などに自動的に停止させるためのモードである。
【0059】
E/G_ECU23の出力側には、スロットルアクチュエータ35が接続されている。このスロットルアクチュエータ35は、エンジンのスロットルボディに設けられている電子制御スロットルのスロットル弁を開閉動作させるものであり、E/G_ECU23からの駆動信号によりスロットル弁を開閉動作させて吸入空気流量を調整することで、所望のエンジン出力を発生させる。
【0060】
PS_ECU24の出力側には、駆動源である電動パワステモータ28が接続されている。この電動パワステモータ28は、ステアリング(操舵)機構にモータの回転力で操舵トルクを付与するものであり、自動運転では、PS_ECU24からの駆動信号により電動パワステモータ28を制御動作させることで、現在の走行車線の走行を維持させる車線中央維持制御および自車両Mを隣接車線へ移動させる車線変更制御(追越制御などのための車線変更制御)が実行される。
【0061】
BK_ECU25の出力側には、ブレーキアクチュエータ29が接続されている。このブレーキアクチュエータ29は、各車輪に設けられているブレーキホイールシリンダに対して供給するブレーキ油圧を調整するもので、BK_ECU25からの駆動信号によりブレーキアクチュエータ29が駆動されると、ブレーキホイールシリンダにより各車輪に対して、制動機構のブレーキ(制動)力が発生し、強制的に減速される。
【0062】
ここで、走行環境認識ユニット11による他車両V1,V2,V3などの立体物および自車両Mが走行する走行路を区画する車線区画線LL,LRの画像認識について、図4に基づき、ここでは片側3車線の道路を例示して説明する。
【0063】
第1の走行環境認識部11dは、図4に示すように、両カメラ11a,11bで撮像した自車両Mの前方領域AfからIPU11cが所定に画像処理する前方の走行環境画像情報に基づき、自車両Mが走行する走行車線としての走行車線R1(自車走行レーン)の左右を区画する車線区画線LL,LRを検出する。
【0064】
このとき、第1の走行環境認識部11dは、前方領域Afの走行環境画像情報から輝度変化に基づいて、左右の車線区画線LL,LRの認識を行う。ここでは、車線区画線LL,LRは、それらの内側を抽出した複数の候補点を近似したラインA、Bに変換して認識される。なお、第1の走行環境認識部11dは、走行車線R1と同様に、左車線R2および右車線R3の車線区画線も同様に認識される。
【0065】
このように、第1の走行環境認識部11dによって認識された走行レーンである走行車線R1の車線区画線LL,LRに基づいて、走行_ECU22が車線区画線LL,LRの中央に自車両Mの目標進行路を決定する。この目標進行路に沿って、ステアリングターゲットが決定されて、PS_ECU24により、電動パワステモータ28が駆動制御されることで、車線中央維持制御、車線逸脱抑制制御などが実行される。
【0066】
また、第1の走行環境認識部11dは、前方領域Afの走行環境画像情報から、例えば、走行車線R1を走行する前方の第1の車両V1を先行車P1と認識し、左車線R2を走行している第2の車両V2を左並走車P2と認識し、右車線R3を走行している第3の車両V3を右並走車P3と認識するパーセプション処理などにより、各車両V1,V2,V3のそれぞれを枠(バウンディングボックス、ウインドウともいう)W1,W2,W3のモデルを作成する。
【0067】
ここでは、検出したオブジェクトが車両を示すタグ(クラス)付け、自車両Mに対する座標情報のラベル付け(ローカライゼーション)などにより、認識した先行車P1、左並走車P2および右並走車P3の車速、自車両Mとの車間距離などを検出する。
【0068】
すなわち、第1の走行環境認識部11dは、認識した各枠W1,W2,W3から自車両Mに対する車間距離Am,Bm,Cmを検出する。さらに、第1の走行環境認識部11dは、自車両Mとの相対速度から車両V1,V2,V3のそれぞれの車速なども検出する。
【0069】
なお、先行車追従時においては、先行車P1(ここでは第1の車両V1)を認識している枠W1の中央に設定される目標点に基づき追従操舵制御されて、自車両Mの車速に対する所定の車間距離に合わせて車速制御が実行される。
【0070】
ところで、近年では、テールランプ、ウインカランプなどにPWM(Pulse Width Modulation)調光信号の制御が行われるLED光源を使用しているものがある。そのため、先行車追従制御、車線維持制御などの運転支援を実行している際に、認識した他の車両V1,V2,V3が、例えば、LED光源のテールランプ、ブレーキランプなどを備えていると、これらテールランプ、ブレーキランプなどが、ちらついて点滅しているように検出される。この場合、テールランプ、ブレーキランプなどと、ウインカランプの点滅(点灯)との区別がつかずウインカランプの点滅を誤認識してしまう。
【0071】
従来では、ウインカランプの点滅の誤認識を防止するため、各車両V1,V2,V3のウインカランプの点滅を一度認識した後、各車両V1,V2,V3が自車両Mの前方領域Afの前方走行環境画像情報から外れない限り、それ以降は同一の車両V1,V2,V3のウインカランプ認識処理を抑止する制御が行われている。
【0072】
しかしながら、自車両Mが走行する走行車線R1から先行車P1と認識している車両V1が離脱したり、再度、同一車両V1が別の車線R2,R3から自車両Mが走行している走行車線R1への割り込みを複数回行ったりした場合(後に説明する図10図12参照)、当該車両V1の2回目以降のウインカランプ認識処理が行わないため、当該車両V1の挙動に合わせて追従してしまうステアリング(操舵)制御が行われる。これにより、所望の自車進行路に反して自車両Mのハンドルが大きく取られてしまう原因となっていた。
【0073】
このような現象を改善するため、第1の走行環境認識部11dは、各車両V1,V2,V3に対して、前方領域Afの前方走行環境画像情報から外れない限り、核車両V1,V2,V3のブレーキランプの点灯およびウインカランプの点滅を複数回検出する制御を行っている。
【0074】
ここで、先行車P1と認識している車両V1のウインカランプ認識処理を例示して説明する。なお、複数回のウインカランプ認識処理は、自車両Mの前方を走行する左並走車P2としての車両V2および右並走車P3としての車両V3においても行われるものである。また、車両V1,V2,V3は、区別するため、以下の説明において、第1の車両V1、第2の車両V2および第3の車両V3と記載する場合がある。
【0075】
図5は、先行車P1として認識した第1の車両V1のブレーキランプ41,42、左ウインカランプ43および右ウインカランプ44が点灯していない状態である。図6は、先行車P1として認識した第1の車両V1のブレーキランプ41,42が点灯した状態である。なお、ここでは、先行車P1として認識した第1の車両V1のハイマウントストップランプ45が点灯した状態を例示している。
【0076】
図7は、先行車P1として認識した第1の車両V1の左ウインカランプ43が点灯した状態を例示し、図8は先行車P1として認識した第1の車両V1の右ウインカランプ44が点灯した状態を例示している。
【0077】
なお、第1の走行環境認識部11dは、所定の輝度以上の明るさのランプ(発光)を検出し、ブレーキランプ41,42、左ウインカランプ43および右ウインカランプ44の点灯を認識しており、所定の輝度未満の明るさのランプの点灯は、テールランプなどの点灯と判断している。
【0078】
このようなブレーキランプ41,42、左ウインカランプ43および右ウインカランプ44の認識は、先行車P1となる第1の車両V1のみならず、認識している自車両Mの前方を走行している左並走車P2となる第2の車両V2および右並走車P3となる第3の車両V3においても行われるものである。
【0079】
次に、自車両Mの前方を走行する他車両のブレーキランプ41,42、左ウインカランプ43および右ウインカランプ44の点灯/点滅を認識する際の制御例について、図9のフローチャートに基づいて説明する。なお、以下の制御例は、自車両Mの前方を走行する先行車P1となる第1の車両V1、左並走車P2となる第2の車両V2および右並走車P3となる第3の車両V3において、それぞれの枠W1,W2,W3に対して実行される。
【0080】
先ず、第1の走行環境認識部11dは、車両V1,V2,V3を認識する枠W1,W2,W3内のランプが点灯したか否かを判定する(S1)。ここでは、枠W1,W2,W3内の輝度変化から光を検出することで何れかのランプ点灯が検出される。
【0081】
第1の走行環境認識部11dは、ステップS1で検出した光が点滅しているか否かを判定する(S2)。第1の走行環境認識部11dは、検出した光が点滅していないと判断した場合、ブレーキランプ41,42が点灯していると判定する(S3)。
【0082】
一方、第1の走行環境認識部11dは、検出した光が点滅していると判断した場合、枠W1,W2,W3内における所定の左右領域の両方において当該光が点滅しているか否かを判定する(S4)。なお、第1の走行環境認識部11dは、枠W1,W2,W3内における所定の左右領域の両方で光が点滅していると判断した場合、ブレーキランプ41,42が点灯していると判定する(S3)。これにより、車両V1,V2,V3がブレーキランプ41,42にLED光源を使用しているものと判断できる。
【0083】
一方、第1の走行環境認識部11dは、枠W1,W2,W3内の所定の左右領域の両方において光が点滅していないと判断した場合、枠W1,W2,W3内における所定の左領域に光が点滅しているか否かを判定する(S5)。
【0084】
そして、第1の走行環境認識部11dは、枠W1,W2,W3内の所定の左領域の片方だけで光が点滅している場合、車両V1,V2,V3の左ウインカランプ43が点滅していると判定する(S6)。これにより、車両V1,V2,V3の左ウインカランプ43が点滅していると判断する。
【0085】
一方、第1の走行環境認識部11dは、枠W1,W2,W3内の所定の左領域の片方だけで光が点滅していない場合、先行車P1の右ウインカランプ44が点滅していると判定する(S7)する。これにより、車両V1,V2,V3の右ウインカランプ44が点滅していると判断する。
【0086】
なお、ステップS5において、枠W1,W2,W3の所定の左領域の検出光の点滅を判定しているが、枠W1,W2,W3の右領域としてもよく、その場合、上記制御ルーチンの左右を逆に置き換えた制御が実行されるものである。
【0087】
そして、検出した左右のウインカランプ43,44の点滅が消灯したか否かを判定する(S8)。第1の走行環境認識部11dは、検出した左右のウインカランプ43,44の点滅が消灯したと判定した場合、同一車両V1,V2,V3のウインカランプ43,44の消灯を検出してから所定時間経過したか否かの判定する(S9)。
【0088】
ここでは、車両V1,V2,V3の前回のウインカランプ43,44の消灯を検出してから、少なくとも5秒などの所定の時間経過したか否かを判断する。つまり、第1の走行環境認識部11dは、同一車両V1,V2,V3の前回(1回前)に点滅を検出した左右どちらかのウインカランプ43,44が消灯してから所定時間経過したかを判定する。
【0089】
第1の走行環境認識部11dは、同一車両V1,V2,V3における前回のウインカランプ43,44の消灯を検出してから、所定時間経過した後に、ルーチンを抜けて、ステップS1に戻る。
【0090】
すなわち、第1の走行環境認識部11dは、同一車両V1,V2,V3の前回のウインカランプ43,44の消灯を検出してから、所定時間経過してないと、ステップS1に戻らないため、ウインカランプ43,44の点滅の検出処理を実行しない制御を行う。 従って、第1の走行環境認識部11dは、前回のウインカランプ43,44の消灯を検出してから、所定時間経過している場合にのみ、同一車両V1,V2,V3のウインカランプ43,44の点滅の検出処理を実行可能とする制御を行う。
【0091】
以上のように、本実施形態における走行制御システム1の走行制御装置10は、第1の走行環境認識部11dが車両V1,V2,V3のそれぞれのテールランプ、左右のブレーキランプ41,42の点灯または左右のウインカランプ43,44の点滅を区別して認識し、一度、左右のウインカランプ43,44の点滅を検出した同一車両V1,V2,V3に対して、所定の時間経過した場合に限り、再度、左右のウインカランプ43,44の点滅を検出可能な状態として制御を実行する。
【0092】
これにより、第1の走行環境認識部11dは、自車両Mの前方を走行する車両V1,V2,V3がブレーキランプ41,42および/または左右のウインカランプ43,44にLED光源を使用していても、左右のウインカランプ43,44の点滅を認識することができる。なお、ブレーキランプ41,42の点灯判定は、ハイマウントストップランプ45の点灯の有無により判定してもよい。
【0093】
このような第1の走行環境認識部11dによる自車両Mの前方を走行している他車両V1,V2,V3のウインカランプ43,44の認識制御に基づいて、走行_ECU22が先行車追従制御、車線維持制御などの運転支援を実行する。
【0094】
ところで、従来では、先行車追従制御、車線維持制御などの運転支援の実行中に、車線区画線LL,LRの認識の信頼度が低いときや、車線区画線LL,LRが認識できていない場合、レーンキープアシスト制御を中断し、先行車P1として認識した第1の車両V1を追従走行する制御を実行する。そのため、自車両Mは、先行車追従制御中は、第1の車両V1の挙動に応じて追従するステアリング制御が行われる。
【0095】
従来では、上述したように、LED光源のブレーキランプ41,42を使用している車両V1,V2,V3のウインカランプ43,44を認識するために、一度、ウインカランプ43,44を検出した同一車両V1,V2,V3に対しては、その後のウインカランプ認識処理を抑止する制御が行われている。
【0096】
そのため、レーンキープ制御を中断して、先行車追従制御中、先行車P1である第1の車両V1の挙動によっては、自車両Mが所望の走行経路に反するステアリング制御が行われ、ハンドルが大きく取られてしまう場合がある。
【0097】
その具体例とし、図10に示すように、先行車P1である第1の車両V1は、ウインカランプ43,44を点滅して走行車線R1から左車線R2に離脱(車線変更)した後、図11に示すように、再度、自車両Mの前方に走行車線R1に割り込み(車線変更)、さらに、図12に示すように、右車線R3(または図示しないが左車線R2)に離脱(車線変更)するような挙動を繰り返した場面において、自車両Mが所望の走行経路に反するステアリング制御が行われてしまう場合がある。
【0098】
このような場面において、従来は、自車両Mが先行車追従制御中に、図10に示す、先行車P1である第1の車両V1のウインカランプ43,44の点滅を1度検出した後、走行車線R1の前方から左車線R2に離脱して左並走車となった当該第1の車両V1のウインカランプ43,44の点滅の認識を行わない。そのため、図11に示す、第1の車両V1が走行車線R1上の前方へ割り込むときの減速制御が行えない。
【0099】
さらに、図12に示す、第1の車両V1が走行車線R1から右車線R3(図示しないが、再度、左車線R2)へ離脱すると、車線区画線LL,LRの認識の信頼度が低いときや、車線区画線LL,LRが認識できていないため、自車両Mが第1の車両V1に追従するようなステアリング制御が実行されてしまう。
【0100】
そのため、自車両Mの走行制御システム1では、第1の走行環境認識部11dによって認識した他車両情報から、車両の運転支援装置としての走行_ECU22は、先行車追従制御および車線維持制御の運転支援を組み合わせた実行中、先行車P1として追従する第1の車両V1の挙動、例えば、図10から図12に示したような第1の車両V1が走行車線R1、右車線R3(左車線R2)を離脱/割り込みを繰り返して車線変更した場合でも、減速制御を行い、所望の進行路(走行車線R1)に反したステアリング制御を抑制して、自車両Mのハンドルが大きく取られることを抑制する制御が実行される。
【0101】
詳述すると、走行制御システム1の走行制御装置10は、先行車P1としての第1の車両V1の先行車追従制御中に、第1の走行環境認識部11dによって認識した他車両情報から走行_ECU22が実行する制御例を、図13および図14に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0102】
先ず、図13に示す、第1の車両V1が左ウインカランプ43を点滅して左右車線R2,R3のいずれかに走行車線R1から離脱する際に走行_ECU22が実行する制御例を説明する。なお、ここでは、図10に示した、先行車P1である第1の車両V1が左ウインカランプ43を点滅して自車両Mが走行している走行車線R1から第1の車両V1が左車線R2に離脱する場面において、走行_ECU22が実行する制御例を説明する。
【0103】
走行_ECU22は、図13に示すように、第1の走行環境認識部11dによって、先行車P1の左ウインカランプ43が点滅を検出したか否かを判定する(S21)。ここで、第1の走行環境認識部11dにより先行車P1の左ウインカランプ43の点滅が検出されていない場合、ルーチンを抜けて、ステップS21に戻る。
【0104】
第1の走行環境認識部11dにより先行車P1の左ウインカランプ43の点滅が検出された場合、走行_ECU22は、第1の走行環境認識部11dにより車線区画線LL,LRが認識されているか否かを判定する(S22)。このとき、第1の走行環境認識部11dにより車線区画線LL,LRが認識できていれば、走行_ECU22は、通常の先行車追従制御および車線維持制御を組み合わせた制御を実行し(S23)、ルーチンを抜けて、ステップS21に戻る。
【0105】
ステップS22において、車線区画線LL,LRの認識の信頼度が低いときや、車線区画線LL,LRが認識できていない場合、走行_ECU22は、先行車P1の先行車追従制御を一時的に中断(HALT)する(S24)。
【0106】
この状態から、走行_ECU22は、第1の走行環境認識部11dによって、新たな先行車P1が検出されたか否かを判定する(S25)。ここで、走行_ECU22は、新たな先行車P1が検出されていない場合、セット車速に基づいた走行制御を実行し(S26)、ステップS25に戻る。すなわち、走行_ECU22は、新たな先行車P1を検出して認識するまで、セット車速に基づいた走行制御を実行する。
【0107】
一方、走行_ECU22は、ステップS25において、新たな先行車P1が検出された場合、一時停止(HALT)している先行車追従制御を再開(REBOOT)し(S27)、ルーチンを抜けて、ステップS21に戻る。すなわち、走行_ECU22は、新たな先行車P1に対して先行車追従制御を実行する。
【0108】
なお、走行_ECU22は、図12に示した、先行車P1が右ウインカランプ44を点滅して走行車線R1から右車線R3に離脱する場面では上記の左右を逆に読み換えて、図13の制御ルーチンを実行する。
【0109】
次に、図14に基づいて、左右の並走車P2,P3のどちらかを走行する左右の第2の車両V1,V3が走行車線R1に左右のウインカランプ43,44を点滅して走行車線R1に割り込んできた際に、走行_ECU22が実行する制御例を説明する。
【0110】
なお、ここでは、図11に示した、左並走車P2としての第2の車両V2が左車線R2から右ウインカランプ44を点滅して自車両Mが走行している走行車線R1に割り込む場面において、走行_ECU22が実行する制御例を説明する。
【0111】
走行_ECU22は、第1の走行環境認識部11dによって左並走車P2の右ウインカランプ44の点滅が検出したか否かを判定する(S31)。ここで、第1の走行環境認識部11dにより右ウインカランプ44の点滅を検出していない場合、ルーチンを抜けて、ステップS31に戻る。
【0112】
第1の走行環境認識部11dにより右ウインカランプ44の点滅が検出された場合、走行_ECU22は、自車両Mを所定の速度に減速させる(S32)。なお、走行_ECU22は、例えば、左並走車P2に対して、自車両Mの車速に応じた所定の車間距離となるまで、BK_ECU25を制御してブレーキアクチュエータ29を駆動して所定の速度まで減速させる。
【0113】
次に、走行_ECU22は、第1の走行環境認識部11dにより車線区画線LL,LRが認識されているか否かを判定する(S33)。このとき、第1の走行環境認識部11dにより車線区画線LL,LRが認識できていれば、走行_ECU22は、通常の先行車追従制御および車線維持制御を組み合わせた制御を実行し(S34)、ルーチンを抜けて、ステップS31に戻る。
【0114】
ステップS33において、車線区画線LL,LRの認識の信頼度が低いときや、車線区画線LL,LRが認識できていない場合、走行_ECU22は、第1の走行環境認識部11dにより新たな先行車P1が検出されたか否かを判定する(S35)。
【0115】
なお、ここでは、図10および図11に示したように、第1の車両V1が走行車線R1から左車線R2に離脱後、第1の車両V1が再度、走行車線R1に割り込んできた場面においては、第1の車両V1が新たな先行車P1として認識されるものである。
【0116】
ステップS35において、走行_ECU22は、新たな先行車P1が検出された場合、先行車追従制御を一時的に中断(HALT)しているか否かを判定する(S36)。
【0117】
先行車追従制御を一時的に中断(HALT)している場合、走行_ECU22は、一時停止(HALT)している追従制御を再開(REBOOT)し(S37)、ルーチンを抜けて、ステップS31に戻る。すなわち、走行_ECU22は、第2の車両V2を先行車P1と認識し、先行車P1の先行車追従制御を実行する。
【0118】
先行車追従制御を一時的に中断(HALT)していない場合、走行_ECU22は、新たな先行車P1を追従する制御に切換えて(S38)、ルーチンを抜けて、ステップS31に戻る。すなわち、走行_ECU22は、他車両を先行車追従制御している状態であるため、左車線R2から走行車線R1に割り込んできた第2の車両V2を新たな先行車P1に切換えて、第2の車両V2の先行車追従制御を実行する。
【0119】
なお、走行_ECU22は、右並走車P3が左ウインカランプ43を点滅して右車線R3から走行車線R1に割り込み時は、上記左右を逆に読み換えた、図14の制御ルーチンを実行する。
【0120】
以上に説明したように、走行制御システム1の走行制御装置10は、第1の走行環境認識部11dによる他車両V1,V2,V3の左右のウインカランプ43,44の検出結果に基づいて、走行_ECU22が先行車追従制御および車線維持制御を組み合わせた制御を実行する。
【0121】
また、第1の走行環境認識部11dは、PWM調光制御されたLED光源のテールランプ、左右のブレーキランプ41,42の点灯がちらついて検出されるため、特に、ブレーキランプ41,42の点灯を左右のウインカランプ43,44の点滅と誤認識することが防止できる。
【0122】
そして、第1の走行環境認識部11dは、同一の各車両V1,V2,V3に対して、前回のウインカランプ検出から所定の時間経過後に、再度、同一の各車両V1,V2,V3のウインカランプ判定処理を実行する状態となる。
【0123】
このように、走行制御システム1の走行制御装置10は、車線区画線LL,LRの認識の信頼度が低いときや、車線区画線LL,LRが認識できていないときの先行車追従制御中において、第1の走行環境認識部11dが同一車両V1,V2,V3に対して、前回のウインカランプ検出から所定時間経過後にウインカランプ判定処理を繰り返して実行可能な状態となる。
【0124】
そのため、走行制御装置10は、例えば、各車両V1,V2,V3が走行車線R1から左車線R2または右車線R3への離脱と左車線R2または右車線R3から走行車線R1の割り込みを繰り返し行う場面において、自車両Mを減速させることができ、所望の進行路に反した先行車の挙動に追従するステアリング制御を抑制することができ、自車両Mのハンドルが大きくつられることが防止される。
【0125】
ところで、車線区画線LL,LRの認識の信頼度が低いときや、車線区画線LL,LRが認識できていないときの先行車追従制御中に、左右の並走車P2,P3がウインカランプ43,44を点滅(点灯)せずに車線変更する場合がある。具体的には、例えば図15に示すように、ここでは右並走車P3である第3の車両V3が左ウインカランプ43を点滅させずに、走行車線R1に割り込んで、さらに、そのまま左車線R2に離脱(車線変更)するような場面である。
【0126】
このような場面では、第3の車両V3の左ウインカランプ43が検出されないため、走行車線R1に割り込んできた、自車両Mが当該第3の車両V3を追従するステアリング制御が実行されてしまい、ハンドルが大きくつられる場合がある。
【0127】
このような場面において、走行制御システム1の走行制御装置10は、図16のフローチャートに示す制御例を実行する。ここでは、右車線R3を走行する第3の車両V3を右並走車P3として認識している状態を例示する。
【0128】
図16に示すように、走行制御装置10の走行_ECU22は、車線区画線LL,LRの認識の信頼度が低いときや、車線区画線LL,LRが認識できない先行車追従制御中において、第1の走行環境認識部11dの走行環境画像情報から、自車両Mに対して右車線R3を走行する第3の車両V3の右並走車P3のラップ率が0%より大きいか否かを判定する(S41)。
【0129】
自車両Mに対して並走車P3のラップ率が0%以下であった場合、走行_ECU22は、ルーチンを抜けて、ステップS41に戻る。ここでは、例えば、図17に示すように、右並走車P3が右車線R3を走行している状態であって、自車両Mが記憶した先行車V1の目標点Tの軌跡に沿って走行制御が実行されている状態である。
【0130】
一方、自車両Mに対して、認識している並走車P3のラップ率が0%以上となった場合、自車両Mを所定の速度に減速させる(S43)。ここでは、例えば、図18に示すように、右並走車P3が左ウインカランプ43を点灯せずに、右車線R3から走行車線R1に割り込んできた状態である。
【0131】
そして、走行_ECU22は、例えば、左並走車P2に対して、自車両Mの車速に応じた所定の車間距離となるまで、BK_ECU25を制御してブレーキアクチュエータ29を駆動して所定の速度まで減速させる。
【0132】
次に、走行_ECU22は、右車線R3を走行する第3の車両V3が右並走車P3のラップ率が所定の%(例えば、ラップ率100%)以上であるか否かを判定する(S44)。自車両Mに対して並走車P3のラップ率が所定%未満であった場合、走行_ECU22は、ルーチンを抜けて、ステップS41に戻る。
【0133】
一方、自車両Mに対する並走車P3のラップ率が所定%以上であった場合、走行_ECU22は、右並走車P3の第3の車両V3の認識を新たな先行車P1として認識を切換える(S45)。ここでは、例えば、図19に示すように、第3の車両V3が自車両Mの前方にて走行車線R1に割り込んできた状態である。
【0134】
第3の車両V3を新たな先行車P1として認識した場合、走行_ECU22は、先行車P1を切換えた時点に記憶している元の先行車P1(先先行車となる第1の車両V1)の目標点Tの軌跡を保持し、先行車P1の先行車追従制御を一時的に中断(HALT)する(S46)。そして、走行_ECU22は、記憶保持した目標点Tの軌跡情報に沿った走行制御する(S47)。すなわち、走行_ECU22は、元の先行車P1(先先行車となる第1の車両V1)の記憶している目標点Tの軌跡を保持し、新たな先行車P1(第3の車両V3)の追従制御ではなく、元の先行車P1(第1の車両V1)の軌跡情報に基づく走行制御を実行する。なお、記憶保持する軌跡情報は、元の先行車P1(第1の車両V1)の目標点Tの軌跡を推定して延長してもよい。
【0135】
ここでは、先行車P1と認識している第3の車両V3に対する先行車追従制御は行わず、第3の車両V3が走行車線R1に割り込む前の先行車P1である第1の車両V1の目標点Tの軌跡を保持して、この目標点Tの軌跡情報に沿った走行制御が実行される。
【0136】
そこから、走行_ECU22は、現在認識している先行車P1が最後に記憶した目標点Tに到達したか否かを判定し(S48)、自車両Mに対する先行車P1のラップ率が0%以下となったか否かを判定する(S49)。
【0137】
自車両Mに対する先行車P1のラップ率が0%以下となっていない場合、ステップS48に戻り、当該ラップ率が0%以下となった場合、新たな先行車P1を検出したか否かを判定する(S50)。
【0138】
なお、自車両Mに対する先行車P1のラップ率が0%以下となっていないときは、例えば、図20に示すように、第3の車両V3が走行車線R1の前方を走行している状態であり、ラップ率が0%以下となった場合、第3の車両V3が他車線、例えば、図21に示すように左車線R2に離脱する状態である。なお、第3の車両V3が再度、右車線R3に離脱する状態も同じである。
【0139】
また、ステップS49の判定は、自車両Mに対する先行車P1のラップ率が0%以下とならない限り、ステップS48の先行車P1が目標点Tに到達するまで実行される。なお、割り込んできた新たな先行車P1が、そのまま走行車線R1から他車線、ここでは左車線R2に離脱して車線変更した場合、走行_ECU22は、記憶保持している第1の車両V1の目標点Tの軌跡情報に沿った走行制御を実行し、自車両Mのハンドルがつられることを防止する。
【0140】
ステップS48の先行車P1が最後の目標点Tへの到達に関し、例えば、図21に示すように、第3の車両V3が走行車線R1前方を走行し、走行_ECU22は、元の先行車P1である第1の車両V1の最後の目標点Tに到達するリミット位置を判定している。
【0141】
なお、走行_ECU22は、ステップS48において、第3の車両V3である先行車P1が最後の目標点Tに到達したと判定した場合、またはステップS50において、第3の車両V3ではない新たな先行車P1を検出した場合、軌跡情報に基づいた走行制御から一時停止(HALT)している先行車追従制御を再開(REBOOT)し(S51)、ルーチンを抜けて、ステップS41に戻る。
【0142】
すなわち、記憶保持した元の先行車P1の目標点Tの軌跡情報のリミット位置に、割り込んできた右並走車P3の第3の車両V3を先行車P1として先行車追従制御を再開する。また、第3の車両V3ではない新たな先行車P1を検出した場合には、新たな先行車P1の先行車追従制御を再開する。
【0143】
そして、ステップS50において、走行_ECU22は、新たな先行車P1が検出されていない場合、セット車速に基づいた走行制御を実行し(S52)、ルーチンを抜けて、ステップS41に戻る。
【0144】
なお、走行_ECU22は、左車線R2を走行する左並走車P2が走行車線R1に割り込み、走行車線R1から右車線R3または再度、左車線R2に離脱する場面においては、上記の左右を逆に読み換えて、図16の制御ルーチンを実行する。
【0145】
以上に記載したように、走行制御システム1の走行制御装置10は、車線区画線LL,LRの認識の信頼度が低いときや、車線区画線LL,LRが認識できていないときの先行車追従制御中に、左右の並走車P2,P3のいずれかがウインカランプ43,44を点滅せずに自車両Mが走行する走行車線R1に車線変更しても、走行_ECU22が元の先行車P1の目標点Tの軌跡情報を保持した走行制御を実行する。
【0146】
すなわち、走行_ECU22は、元の先行車P1から左右の並走車P2,P3のいずれかを新たな先行車P1に切換えたとき、この先行車P1が保持した軌跡情報の最後の目標点Tのリミット位置に到達するまで、先行車追従制御を一時停止し、元の先行車P1の目標点Tの軌跡情報に従って走行制御する。
【0147】
走行_ECU22は、割り込んできた新たな先行車P1に追従しないようにリミットをかけて、元の先行車P1の目標点Tの軌跡情報のリミット位置まで、新たな先行車P1に追従しない走行制御を実行するため、所望の進行路に反するステアリング制御を抑制することができ、自車両Mのハンドルが大きくつられることが防止される。
【0148】
なお、保持した軌跡情報の最後の目標点Tのリミット位置まで、割り込んできた車両が到達した場合、走行_ECU22は、先行車追従制御を再開する。さらに、割り込んできた車両がリミット位置に到達する前に、走行車線R1から他車線に離脱した場合、走行_ECU22は、新たに先行車P1を認識すると、一時停止していた先行車追従制御を再開し、新たに先行車P1を認識しないと、セット車速の走行制御を実行する。
【0149】
ところで、先行車追従中に、先行車P1が直近の所定時間に車線区画線LL,LR内を走行していない場合や、走行環境認識部11dにより車線区画線LL,LRが認識できていない状態で、例えば、図23に示すように、第1の車両V1が冠雪した路面に付いたタイヤ痕(轍)Fなどを跨ぐような場面では、第1の走行環境認識部11dがタイヤ痕Fを車線区画線LL,LRとして誤認識する場合がある。
【0150】
このように、先行車P1が車線区画線LL,LRと誤認識したタイヤ痕Fを跨いでいく場面では、走行_ECU22は、先行車P1の車線変更とみなして、先行車P1を追従する目標点Tが車線区画線LL,LRに寄らないように制御したり、先行車追従制御をキャンセルしたりする。
【0151】
また、例えば、図24に示すように、トラックTRなどの大型車の先行車P1が車線変更する際に、車線区画線LL,LRを跨ぐ場面、走行_ECU22は、同様に車線区画線LL,LRの認識の信頼度が低下した場合、先行車追従制御のキャンセルを実行する。
【0152】
しかしながら、先行車P1が直近の所定時間に車線区画線LL,LR内を走行していない場合や、走行環境認識部11dにより車線区画線LL,LRが認識できていない状態で、例えば、先行車P1が冠雪した路面に付いたタイヤ痕Fなどを跨いだ場合、走行_ECU22が先行車P1を追従する目標点Tが車線区画線LL,LRに寄らないように制御すると、所望の自車進行路に反して自車両Mのハンドルが大きく取られてしまう原因となっていた。
【0153】
そのため、自車両Mの走行制御システム1では、先行車追従制御中において、車線区画線LL,LRの認識の信頼度が低いときや、車線区画線LL,LRが認識できない場面となったときに、走行_ECU22が図25のフローチャートに示す制御例を実行する。
【0154】
具体的には、図25に示すように、走行_ECU22は、第1の走行環境認識部11dにより車線区画線LL,LRが認識されているか否かを判定する(S61)。このとき、第1の走行環境認識部11dにより車線区画線LL,LRが認識できていれば、走行_ECU22は、通常の先行車追従制御および車線維持制御を組み合わせた制御を実行し(S62)、ルーチンを抜けて、ステップS61に戻る。
【0155】
一方、第1の走行環境認識部11dにより車線区画線LL,LRが認識できていない場合、先行車P1が直近の所定時間において、過去の走行環境画像情報から車線区画線LL,LR内を走行していたか否かを判定する(S63)。
【0156】
そして、先行車P1が車線区画線LL,LR内を走行していた場合、走行_ECU22は、自車両Mが直近(直前)の所定時間において、過去の走行環境画像情報から車線区画線LL,LR内を走行していたか否かを判定する(S64)。
【0157】
自車両Mが車線区画線LL,LR内を走行していた場合、先行車P1の目標点Tの軌跡情報に沿った先行車追従制御を継続する(S65)。
【0158】
ステップS63において、先行車P1が直近の所定時間に車線区画線LL,LR内を走行していなかった場合、走行_ECU22は、先行車追従制御をキャンセル(停止)して制御ルーチンを終了する。
【0159】
また、ステップS64において、自車両Mが直近の所定時間に車線区画線LL,LR内を走行していなかった場合、走行_ECU22は、自車両Mの車線変更アシスト機能(アクティブレーンチェンジアシスト機能)を抑制して、ルーチンを抜けて、ステップS61に戻る。
【0160】
以上に記載したように、以上に記載したように、走行制御システム1の走行制御装置10は、走行_ECU22が先行車追従制御中に車線区画線LL,LRの認識の信頼度が低くなったり、車線区画線LL,LRが認識できなくなったりすると、先行車P1と自車両Mが、その直近の所定の時間で車線区画線LL,LR内の走行の有無を判断して、先行車追従制御の継続またはキャンセル(停止)を実行する。
【0161】
これにより、走行環境認識部11dにより車線区画線LL,LRが認識できていない状態で、例えば、先行車P1が冠雪した路面でタイヤ痕Fを跨ぐ場面では、先行車P1および自車両Mが直近の所定の時間で車線区画線LL,LR内を走行していれば、走行制御装置10が先行車追従制御を継続するため、自車両Mのハンドルを大きく取られることを減少させることができる。
【0162】
さらに、自車両Mが直近の所定の時間で車線区画線LL,LR内を走行していなければ、車線変更アシスト機能を抑制することで、自車両Mが誤った車線で走行することを防止することができる。
【0163】
なお、走行制御システム1は、各ECU22~25などに中央処理装置(CPU)、ROM、RAMなどの記憶装置などを含むプロセッサを有している。また、プロセッサの複数の回路の全て若しくは一部の構成は、ソフトウェアで実行してもよい。例えば、ROMに格納された各機能に対応する各種プログラムをCPUが読み出して実行するようにしてもよい。
【0164】
さらに、プロセッサの全部若しくは一部の機能は、論理回路あるいはアナログ回路で構成してもよく、また各種プログラムの処理を、FPGAなどの電子回路により実現するようにしてもよい。
【0165】
以上の実施の形態に記載した発明は、それらの形態に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。さらに、上記には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合せにより種々の発明が抽出され得るものである。
【0166】
例えば、開示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、述べられている課題が解決でき、述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得るものである。
【符号の説明】
【0167】
1…走行制御システム
10…走行制御装置
11…走行環境認識ユニット
11a…メインカメラ
11b…サブカメラ
11d…第1の走行環境認識部
22…走行制御ユニット
23…エンジン制御ユニット
24…パワーステアリング制御ユニット
25…ステアリング制御ユニット
28…電動パワステモータ
29…ブレーキアクチュエータ
41…左ブレーキランプ
42…右ブレーキランプ
43…左ウインカランプ
44…右ウインカランプ
45…ハイマウントストップランプ
Af…前方領域
LL,LR…車線区画線
M…自車両
P1…先行車
P2…左並走車
P3…右並走車
R1…走行車線
R2…左車線
R3…右車線
T…目標点
V1,V2,V3…車両(第1~第3の車両)
W1,W2,W3…枠
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