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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】充電制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/04 20060101AFI20241120BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20241120BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20241120BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20241120BHJP
   H01M 10/633 20140101ALI20241120BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20241120BHJP
   H01M 10/6563 20140101ALI20241120BHJP
   H01M 10/6568 20140101ALI20241120BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20241120BHJP
【FI】
H02J7/04 C
H01M10/48 P
H01M10/44 Q
H01M10/613
H01M10/633
H01M10/625
H01M10/6563
H01M10/6568
H01M10/6556
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020207822
(22)【出願日】2020-12-15
(65)【公開番号】P2022094748
(43)【公開日】2022-06-27
【審査請求日】2023-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤野 崇人
(72)【発明者】
【氏名】南部 公平
【審査官】小林 秀和
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-013726(JP,A)
【文献】特開2019-184374(JP,A)
【文献】国際公開第2012/176275(WO,A1)
【文献】特開2009-254097(JP,A)
【文献】特開2016-086550(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/04
H01M 10/48
H01M 10/44
H01M 10/613
H01M 10/633
H01M 10/625
H01M 10/6563
H01M 10/6568
H01M 10/6556
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリに関するバッテリ情報を取得する取得部と、
前記バッテリの外部充電において充電に必要な時間として想定される想定充電時間を、前記バッテリ情報に基づいて導出する第1導出部と、
前記バッテリの前記外部充電が行われる時間として設定されている設定充電時間と、前記想定充電時間との差分時間を導出する第2導出部と、
前記差分時間に亘って前記バッテリの冷却が行われ、前記想定充電時間に亘って前記バッテリの充電が行われるように、前記バッテリの前記外部充電を実行する実行部と、
を備える、
充電制御装置。
【請求項2】
前記実行部は、前記外部充電において、前記バッテリの充電よりも前に、前記バッテリの冷却を実行する、
請求項1に記載の充電制御装置。
【請求項3】
前記第1導出部は、前記バッテリ情報としての現在の前記バッテリの最大容量に基づいて、前記想定充電時間を導出する、
請求項1または2に記載の充電制御装置。
【請求項4】
前記取得部は、前回の前記外部充電における充電結果に基づいて、前回の前記外部充電の実行時における前記バッテリの最大容量を取得し、
前記第1導出部は、前回の前記外部充電の実行時における前記バッテリの最大容量を、現在の前記バッテリの最大容量として用いる、
請求項3に記載の充電制御装置。
【請求項5】
前記第1導出部は、前記バッテリ情報としての前記外部充電の開始時点での前記バッテリの残存容量に基づいて、前記想定充電時間を導出する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の充電制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動車両等の種々の装置において、電力源としてバッテリが用いられている。リチウムイオン電池等の充放電可能なバッテリは、外部充電によって繰り返し充電される。このようなバッテリは、使用される過程において劣化する。そこで、例えば、特許文献1に開示されているように、バッテリの劣化を加味してバッテリの充電制御を適正化する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-252474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、バッテリが劣化すると、バッテリの充電可能な電気量の最大値である最大容量が低下する。ゆえに、バッテリが劣化した場合、バッテリを外部充電する際に、バッテリの残存容量が最大容量に到達するまでに掛かる時間が、バッテリが新品である場合と比べて短くなる。つまり、バッテリの残存容量が最大容量に早期に到達するようになる。よって、バッテリのSOC(State Of Charge)が高い状態に維持される時間が長くなる。それにより、バッテリの劣化が促進されやすくなる。また、バッテリが劣化すると、バッテリの抵抗が増大する。ゆえに、バッテリの外部充電においてバッテリが発熱しやすくなる。このことも、バッテリの劣化が促進されやすくなる要因となる。よって、バッテリの劣化を抑制することが望まれている。
【0005】
そこで、本発明は、このような課題に鑑み、バッテリの劣化を抑制することが可能な充電制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の充電制御装置は、バッテリに関するバッテリ情報を取得する取得部と、バッテリの外部充電において充電に必要な時間として想定される想定充電時間を、バッテリ情報に基づいて導出する第1導出部と、バッテリの外部充電が行われる時間として設定されている設定充電時間と、想定充電時間との差分時間を導出する第2導出部と、差分時間に亘ってバッテリの冷却が行われ、想定充電時間に亘ってバッテリの充電が行われるように、バッテリの外部充電を実行する実行部と、を備える。
【0007】
実行部は、外部充電において、バッテリの充電よりも前に、バッテリの冷却を実行してもよい。
【0008】
第1導出部は、バッテリ情報としての現在のバッテリの最大容量に基づいて、想定充電時間を導出してもよい。
【0009】
取得部は、前回の外部充電における充電結果に基づいて、前回の外部充電の実行時におけるバッテリの最大容量を取得し、第1導出部は、前回の外部充電の実行時におけるバッテリの最大容量を、現在のバッテリの最大容量として用いてもよい。
【0010】
第1導出部は、バッテリ情報としての外部充電の開始時点でのバッテリの残存容量に基づいて、想定充電時間を導出してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、バッテリの劣化を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る電源システムの概略構成を示す模式図である。
図2】本発明の実施形態に係る充電制御装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図3】比較例に係る外部充電が行われた場合におけるバッテリの残存容量の推移の一例を示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る外部充電が行われた場合におけるバッテリの残存容量の推移の一例を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る充電制御装置が行う学習処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図6】本発明の実施形態に係る充電制御装置が行う充電処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0014】
<電源システムの構成>
図1および図2を参照して、本発明の実施形態に係る電源システム1の構成について説明する。
【0015】
図1は、電源システム1の概略構成を示す模式図である。図1に示されるように、電源システム1は、バッテリ10と、インバータ20と、モータ30と、充電制御装置40とを備える。
【0016】
電源システム1は、電気自動車(EV)またはハイブリッド自動車(HEV)等の電動車両に搭載され、車両内の各装置に電力を供給するために用いられるシステムである。モータ30が、車両の駆動源として用いられる。ただし、電源システム1は、車両以外の装置に搭載されてもよい。
【0017】
バッテリ10は、二次電池であり、充放電可能である。バッテリ10は、インバータ20を介してモータ30と接続されている。バッテリ10は、モータ30に供給される電力を蓄電する。バッテリ10としては、例えば、リチウムイオン電池またはニッケル水素電池等の二次電池が用いられる。
【0018】
バッテリ10には、受電部11と、冷却装置12と、バッテリセンサ13とが設けられる。
【0019】
受電部11は、電源システム1が搭載される車両の外部の外部充電器から送電される電力を受電可能である。外部充電器は、車両の外部の外部電源と、当該外部電源と接続される充電用プラグとを有する。車両の駐車時に、外部充電器の充電用プラグが受電部11に接続され、外部電源から受電部11を介して供給される外部電力を用いてバッテリ10の充電が行われる。このような外部充電器を利用したバッテリ10の充電を外部充電と呼ぶ。
【0020】
上記のように、受電部11は、充電用プラグと物理的に接続されたプラグイン状態において、外部電源から送電される電力を受電可能である。ただし、受電部11は、外部電源から送電される電力を非接触で受電可能であってもよい。非接触な送電の方式としては、例えば、磁気共鳴方式または電磁誘導方式が用いられ得る。
【0021】
冷却装置12は、バッテリ10を冷却する機能を有する。例えば、冷却装置12は、水冷式であってもよい。水冷式の冷却装置12として、例えば、バッテリ10のセルの近傍に配置され冷却水が流通する配管と、当該配管内で冷却水を送出するポンプとを有する装置が用いられる。この場合、冷却水とセルとの間での熱交換によって、バッテリ10が冷却される。また、例えば、冷却装置12は、空冷式であってもよい。空冷式の冷却装置12として、例えば、バッテリ10のセルの周囲に空気を送風するファンを有する装置が用いられる。この場合、セルの周囲を流れる空気とセルとの間での熱交換によって、バッテリ10が冷却される。
【0022】
バッテリセンサ13は、バッテリ10の残存容量と、バッテリ10の温度である電池温度とを検出し、充電制御装置40へ出力する。なお、バッテリセンサ13から出力される情報は、後述するバッテリ情報に含まれる。
【0023】
インバータ20は、直流と交流との間での電力の変換を実行可能な電力変換機である。インバータ20は、例えば、多相ブリッジ回路を含む。インバータ20は、バッテリ10から供給される直流電力を交流電力に変換してモータ30へ供給可能である。インバータ20にはスイッチング素子が設けられ、スイッチング素子の動作が制御されることにより、バッテリ10とモータ30との間での電力の供給が制御される。
【0024】
モータ30は、車両の駆動輪Wを駆動させるための動力を出力可能である。モータ30は、例えば、多相交流式(例えば、三相交流式)のモータである。モータ30は、バッテリ10からインバータ20を介して供給される電力を用いて動力を生成する。なお、モータ30は、車両の減速時に、駆動輪Wの回転エネルギを用いて発電する発電機としての機能(回生機能)を有してもよい。この場合、モータ30により回生発電された交流電力が、インバータ20によって直流電力に変換されて、バッテリ10へ供給される。
【0025】
充電制御装置40は、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)、CPUが使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する記憶素子であるROM(Read Only Memory)、および、CPUの実行において適宜変化するパラメータ等を一時記憶する記憶素子であるRAM(Random Access Memory)等を含む。
【0026】
図2は、充電制御装置40の機能構成の一例を示すブロック図である。図2に示されるように、充電制御装置40は、例えば、取得部41と、制御部42と、記憶部43とを有する。
【0027】
取得部41は、制御部42が行う処理において用いられる各種情報を取得する。また、取得部41は、取得した情報を制御部42および記憶部43へ出力する。例えば、取得部41は、バッテリセンサ13から情報を取得する。なお、情報の取得には、情報の生成も含まれる。つまり、取得部41は、バッテリセンサ13から取得した情報を用いて、二次的な情報を生成することもできる。
【0028】
特に、取得部41は、バッテリ10に関する情報であるバッテリ情報を取得する。バッテリ情報は、バッテリセンサ13により検出されるバッテリ10の残存容量および電池温度の他に、外部充電器を利用したバッテリ10の外部充電に関する情報を含む。なお、バッテリ情報の詳細については、後述する。
【0029】
制御部42は、バッテリ10の外部充電に関する各種処理を行う。制御部42は、第1導出部42aと、第2導出部42bと、実行部42cとを含む。
【0030】
第1導出部42aは、バッテリ情報に基づいて、バッテリ10の想定充電時間を導出する。想定充電時間は、バッテリ10の外部充電において充電に必要な時間として想定される時間である。
【0031】
第2導出部42bは、バッテリ10の設定充電時間と想定充電時間との差分時間を導出する。設定充電時間は、バッテリ10の外部充電が行われる時間として設定されている時間である。具体的には、設定充電時間は、バッテリ10が新品である場合に、バッテリ10の残存容量によらずにバッテリ10を満充電(つまり、残存容量が最大容量となる状態)にし得るために必要な時間に設定される。
【0032】
実行部42cは、バッテリ10の外部充電を実行する。具体的には、実行部42cは、外部充電において、バッテリ10の受電部11の動作を制御することによって、外部電力を外部充電器からバッテリ10に供給し、バッテリ10の充電を行うことができる。また、実行部42cは、外部充電において、バッテリ10の冷却装置12の動作を制御することによって、バッテリ10の冷却を行うことができる。
【0033】
記憶部43は、制御部42が行う各種処理に用いられる情報を記憶する。特に、記憶部43は、そのような情報として各種バッテリ情報を記憶する。
【0034】
充電制御装置40は、上述したように、電源システム1内の各装置と通信を行う。充電制御装置40と各装置との通信は、例えば、CAN(Controller Area Network)通信を用いて実現される。
【0035】
なお、本実施形態に係る充電制御装置40が有する機能は複数の制御装置により分割されてもよく、複数の機能が1つの制御装置によって実現されてもよい。充電制御装置40が有する機能が複数の制御装置により分割される場合、当該複数の制御装置は、CAN等の通信バスを介して、互いに接続されてもよい。
【0036】
上記のように、本実施形態では、充電制御装置40の実行部42cは、バッテリ10の外部充電を実行する。ここで、実行部42cは、第1導出部42aにより導出される想定充電時間、および、第2導出部42bにより導出される差分時間に基づいて、バッテリ10の外部充電を実行する。それにより、バッテリ10の劣化を抑制することが実現される。充電制御装置40により行われる処理の詳細については、後述する。
【0037】
<充電制御装置の動作>
図3図6を参照して、本発明の実施形態に係る充電制御装置40の動作について説明する。
【0038】
本実施形態では、実行部42cは、差分時間に亘ってバッテリ10の冷却が行われ、想定充電時間に亘ってバッテリ10の充電が行われるように、バッテリ10の外部充電を実行する。以下、図3および図4を参照して、比較例に係る外部充電と本実施形態に係る外部充電との相違の概要を説明する。なお、図3および図4では、理解を容易にするために、残存容量が0Ahになった状態から外部充電が行われた場合における残存容量の推移の例が示されている。ただし、実際には、外部充電の開始時点の残存容量は、0Ah以外の値も取り得る。
【0039】
図3は、比較例に係る外部充電が行われた場合におけるバッテリ10の残存容量の推移の一例を示す図である。図3では、縦軸が残存容量[Ah]を示し、横軸が時間[s]を示している。図3中の破線は、バッテリ10が新品である場合における残存容量の推移を示す。図3中の実線は、バッテリ10が劣化している場合における残存容量の推移を示す。
【0040】
比較例では、外部充電が行われている間、バッテリ10の充電が継続して行われる。図3に示される例では、外部充電の開始時点T0において、残存容量が0Ahになった状態でバッテリ10の充電が開始される。そして、外部充電の開始時点T0から設定充電時間ΔT1が経過した時点である外部充電の終了時点T1において、外部充電が終了し、バッテリ10の充電が終了する。図3で破線により示されるように、バッテリ10が新品である場合の最大容量は、容量C1となっている。バッテリ10が新品である場合には、残存容量が0Ahになった状態で外部充電が開始されると、外部充電の終了時点T1において、バッテリ10が満充電となる。
【0041】
ここで、バッテリ10が劣化すると、バッテリ10の最大容量が低下する。ゆえに、図3で実線により示されるように、バッテリ10が劣化している場合の最大容量は、容量C1よりも小さな容量C2となっている。ゆえに、バッテリ10が劣化している場合には、残存容量が0Ahになった状態で外部充電が開始されると、外部充電の終了時点T1よりも前の時点T2において、バッテリ10が満充電となる。よって、時点T2から時点T1までの間、バッテリ10のSOCが100%程度である状態に維持される。
【0042】
上記のように、比較例では、バッテリ10が劣化することによって、外部充電においてバッテリ10のSOCが高い状態に維持される時間が長くなる。それにより、バッテリ10の劣化が促進されやすくなる。さらに、バッテリ10が劣化すると、バッテリ10の抵抗が増大する。それにより、バッテリ10の外部充電においてバッテリ10が発熱しやすくなる。このことも、バッテリ10の劣化が促進されやすくなる要因となる。
【0043】
図4は、本実施形態に係る外部充電が行われた場合におけるバッテリ10の残存容量の推移の一例を示す図である。図4では、図3と同様に、縦軸が残存容量[Ah]を示し、横軸が時間[s]を示している。図4中の破線は、比較例においてバッテリ10が劣化している場合の残存容量の推移(つまり、図3中で実線により示される推移)を示す。図4中の実線は、本実施形態においてバッテリ10が劣化している場合の残存容量の推移を示す。ゆえに、図4で実線により示される例では、バッテリ10の最大容量は容量C2となっている。
【0044】
本実施形態では、第1導出部42aは、バッテリ10の外部充電において充電に必要な時間として想定される想定充電時間ΔT2を導出する。想定充電時間ΔT2は、図4で破線により示される比較例における時点T0から時点T2までの間の時間に相当する。第2導出部42bは、設定充電時間ΔT1と想定充電時間ΔT2との差分時間ΔT3を導出する。実行部42cは、外部充電の開始時点T0において、バッテリ10の冷却を開始する。そして、開始時点T0から差分時間ΔT3が経過した時点T3において、バッテリ10の冷却を終了し、バッテリ10の充電を開始する。それにより、図4で実線により示されるように、時点T3において、バッテリ10の残存容量が上昇し始める。その後、時点T3から想定充電時間ΔT2が経過した時点T1において、外部充電が終了し、バッテリ10の充電が終了する。それにより、図4で実線により示されるように、外部充電の終了時点T1において、バッテリ10が満充電となる。
【0045】
上記のように、本実施形態では、差分時間ΔT3に亘ってバッテリ10の冷却が行われ、想定充電時間ΔT2に亘ってバッテリ10の充電が行われる。それにより、外部充電においてバッテリ10のSOCが高い状態に維持される時間がバッテリ10の劣化に伴って長くなることを抑制しつつ、設定充電時間ΔT1内にバッテリ10を満充電にすることができる。さらに、バッテリ10が劣化した場合に、外部充電において、バッテリ10の冷却が行われるので、バッテリ10の発熱を抑制することができる。よって、本実施形態によれば、バッテリ10の劣化を抑制することができる。
【0046】
なお、上記では、外部充電において、バッテリ10の充電よりも前に、バッテリ10の冷却が実行される例を説明した。ただし、外部充電においてバッテリ10の冷却が行われるタイミングは上記の例に限定されない。例えば、実行部42cは、バッテリ10の充電よりも後に、バッテリ10の冷却を実行してもよい。また、例えば、実行部42cは、バッテリ10の冷却よりも前と後の2回に分けてバッテリ10の充電を実行してもよい。外部充電では、バッテリ10の冷却の実行時間の合計が差分時間となり、バッテリ10の充電の実行時間の合計が想定充電時間になればよい。しかしながら、バッテリ10の充電中の発熱を効果的に抑制する観点では、バッテリ10の充電よりも事前にバッテリ10を冷却し、電池温度を低くしておくことが好ましい。
【0047】
以下、図5および図6を参照して、本実施形態に係る充電制御装置40が行う外部充電に関する処理例について説明する。充電制御装置40は、図5に例示される学習処理と、図6に例示される充電処理を行う。バッテリ10の外部充電は、充電処理によって主に実現される。学習処理は、充電処理で用いられるバッテリ情報の一部を事前に学習するための処理である。以下、図5を参照して学習処理について説明した後に、図6を参照して充電処理について説明する。
【0048】
図5は、充電制御装置40が行う学習処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、図5に示される制御フローは、例えば、終了した後に、所定の時間間隔を空けて繰り返し開始される。
【0049】
図5に示される制御フローが開始されると、まず、ステップS101において、充電制御装置40は、電源システム1がONになったか否かを判定する。具体的には、充電制御装置40は、電源システム1がOFFからONに切り替わったか否かを判定する。例えば、充電制御装置40は、車両のイグニッションスイッチからイグニッションONを示す信号を受信した場合に、電源システム1がONになったと判定する。
【0050】
ステップS101において、電源システム1がONになったと判定された場合(ステップS101/YES)、ステップS102に進む。一方、ステップS101において、電源システム1がONになったと判定されなかった場合(ステップS101/NO)、図5に示される制御フローは終了する。
【0051】
ステップS101でYESと判定された場合、ステップS102において、充電制御装置40は、前回の外部充電の開始時点での電池温度が閾値以上であるか否かを判定する。閾値は、バッテリ10の冷却が不要と判断される程度に低い温度(例えば、25℃)に設定される。
【0052】
ステップS102において、前回の外部充電の開始時点での電池温度が閾値以上であると判定された場合(ステップS102/YES)、ステップS103に進み、前回の(つまり、直近の)外部充電に関するバッテリ情報の上書き保存が行われる。一方、ステップS102において、前回の外部充電の開始時点での電池温度が閾値より低いと判定された場合(ステップS102/NO)、図5に示される制御フローは終了する。
【0053】
後述するように、図6に例示される充電処理では、電池温度が閾値以上である場合に、バッテリ10の冷却が行われるように外部充電が実行される。つまり、前回の外部充電の開始時点での電池温度が閾値以上である場合には、前回の外部充電においてバッテリ10の冷却が行われたと判断することができる。ゆえに、図5中のステップS103の処理(つまり、前回の外部充電に関するバッテリ情報の上書き保存)は、前回の外部充電においてバッテリ10の冷却が行われている場合に行われる。それにより、次回の外部充電においてバッテリ10の冷却が行われる場合に用いられるバッテリ情報を最新の情報にすることができる。
【0054】
ステップS102でYESと判定された場合、ステップS103において、記憶部43は、前回の(つまり、直近の)外部充電に関するバッテリ情報の上書き保存を行い、図5に示される制御フローは終了する。
【0055】
記憶部43は、例えば、バッテリ情報が登録されている特定の記憶領域を有しており、前回の外部充電に関する各種バッテリ情報を上記特定の記憶領域とは別の領域に一時的に記憶している。記憶部43は、ステップS103において、前回の外部充電に関する各種バッテリ情報を上記特定の記憶領域に上書き保存する。それにより、前回の外部充電に関するバッテリ情報が学習される。
【0056】
ステップS103で上書き保存される前回の外部充電に関するバッテリ情報は、取得部41により取得される。取得部41は、例えば、前回の外部充電における充電結果に基づいて、前回の外部充電に関するバッテリ情報を取得する。前回の外部充電に関するバッテリ情報は、例えば、前回の外部充電で用いられた外部充電器の種類、前回の外部充電の実行時におけるバッテリ10の最大容量、前回の外部充電においてバッテリ10に充電された電力量の合計値である充電量、および、前回の外部充電における実績充電時間を示す情報等を含む。
【0057】
実績充電時間は、バッテリ10の充電に掛かった時間の実績値であり、換言すると、充電の開始時点からバッテリ10が満充電になる時点までの時間である。充電量は、例えば、使用された外部充電器に対して設定されている電流値と、実績充電時間とに基づいて取得され得る。バッテリ10の最大容量は、例えば、前回の外部充電の開始時の残存容量と、充電量とに基づいて取得され得る。また、ステップS103において、記憶部43は、バッテリ情報の上書き保存の処理を行った処理日を示す情報も記憶する。
【0058】
図6は、充電制御装置40が行う充電処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、図6に示される制御フローは、例えば、終了した後に、所定の時間間隔を空けて繰り返し開始される。
【0059】
図6に示される制御フローが開始されると、まず、ステップS201において、充電制御装置40は、バッテリ10がプラグイン状態になったか否かを判定する。プラグイン状態は、上述したように、バッテリ10の受電部11が、外部充電器の充電用プラグと物理的に接続され、受電可能となった状態である。
【0060】
ステップS201において、バッテリ10がプラグイン状態になったと判定された場合(ステップS201/YES)、ステップS202に進む。一方、ステップS201において、バッテリ10がプラグイン状態になっていないと判定された場合(ステップS201/NO)、図6の制御フローは終了する。
【0061】
ステップS201でYESと判定された場合、ステップS202において、充電制御装置40は、充電終了SOCがユーザにより設定されているか否かを判定する。充電終了SOCは、外部充電におけるバッテリ10の充電終了目標となるSOCである。充電終了SOCがユーザにより設定されている場合、ユーザは、外部充電において、バッテリ10のSOCが充電終了SOCになった時点で充電を終了させることを望んでいる。なお、充電終了SOCがユーザにより設定されていない場合、充電制御装置40は、充電終了SOCとして100%を用いる。
【0062】
ステップS202において、充電終了SOCが設定されていると判定された場合(ステップS202/YES)、後述するステップS209に進み、バッテリ10の充電が実行される。一方、ステップS202において、充電終了SOCが設定されていないと判定された場合(ステップS202/NO)、ステップS203に進む。
【0063】
ステップS202でNOと判定された場合、ステップS203において、取得部41は、現在のバッテリ情報を取得する。現在のバッテリ情報は、例えば、今回の外部充電で用いられる外部充電器の種類、現在のバッテリ10の残存容量、および、現在のバッテリ10の電池温度を示す情報等を含む。
【0064】
現在のバッテリ10の残存容量は、例えば、短時間充電を実行することによって取得され得る。また、取得部41は、今回の外部充電で用いられる外部充電器の種類を示す情報に基づいて、当該外部充電器に対して設定されている設定電流値を示す情報も取得することができる。また、ステップS203において、取得部41は、現在の月日を示す情報も取得する。
【0065】
ステップS203の次に、ステップS204において、充電制御装置40は、バッテリ10の電池温度が閾値以上であるか否かを判定する。上述したように、閾値は、バッテリ10の冷却が不要と判断される程度に低い温度(例えば、25℃)に設定される。ゆえに、電池温度が閾値より低い場合、バッテリ10の冷却を行う必要性が低い。そこで、図6に示される制御フローでは、電池温度が閾値より低い場合、後述するように、バッテリ10の冷却が省略され、不要な電力消費が抑制される。
【0066】
ステップS204において、電池温度が閾値以上であると判定された場合(ステップS204/YES)、ステップS205に進む。一方、ステップS204において、電池温度が閾値より低いと判定された場合(ステップS204/NO)、後述するステップS209に進み、バッテリ10の充電が実行される。
【0067】
ステップS204でYESと判定された場合、ステップS205において、充電制御装置40は、バッテリ情報の上書き保存の前回の処理日から所定期間が経過したか否かを判定する。上記の処理日は、図5中のステップS103の処理が前回行われた日を意味する。所定期間は、最新のバッテリ情報が過度に古い情報であると判断される程度に長い期間に設定される。
【0068】
ステップS205において、バッテリ情報の上書き保存の前回の処理日から所定期間が経過したと判定された場合(ステップS205/YES)、後述するステップS209に進み、バッテリ10の充電が実行される。一方、ステップS205において、バッテリ情報の上書き保存の前回の処理日から所定期間が経過していないと判定された場合(ステップS205/NO)、ステップS206に進む。
【0069】
ステップS205でNOと判定された場合、ステップS206において、第1導出部42aは、想定充電時間を導出する。ここで、第1導出部42aは、バッテリ情報に基づいて想定充電時間を導出する。ステップS206の想定充電時間の導出処理において用いられるバッテリ情報は、例えば、図5中のステップS103で得られるバッテリ情報、および、図6中のステップS203で得られるバッテリ情報を含む。
【0070】
例えば、第1導出部42aは、まず、今回の外部充電において想定されるバッテリ10の充電量である想定充電量を算出する。ここで、ステップS206が行われる場合、ステップS202でNOと判定されているので、充電終了SOCは100%に設定されている。ゆえに、充電終了時のバッテリ10の目標容量は、バッテリ10の最大容量となる。よって、第1導出部42aは、現在のバッテリ10の最大容量から現在のバッテリ10の残存容量(つまり、外部充電の開始時点でのバッテリ10の残存容量)を減算して得られる値を想定充電量として算出し得る。第1導出部42aは、図5の学習処理により得られる前回の外部充電の実行時におけるバッテリ10の最大容量を、現在のバッテリ10の最大容量として用いることができる。
【0071】
そして、第1導出部42aは、図5の学習処理により得られる前回の外部充電での充電量に対する想定充電量の比率を図5の学習処理により得られる前回の外部充電における実績充電時間に乗算し、この演算により得られる値を想定充電時間として導出する。ただし、想定充電量から想定充電時間を導出する処理は、上記の例に限定されない。例えば、第1導出部42aは、想定充電量を設定電流値で除算し、この演算により得られる値を想定充電時間として導出してもよい。
【0072】
上記のように、第1導出部42aは、バッテリ情報としての現在のバッテリ10の最大容量に基づいて、想定充電時間を導出することができる。それにより、バッテリ10の劣化度合いに応じて想定充電時間を適切に導出することができる。第1導出部42aは、現在のバッテリ10の最大容量が小さいほど短い時間を想定充電時間として導出する。
【0073】
また、上記のように、第1導出部42aは、バッテリ情報としての外部充電の開始時点でのバッテリ10の残存容量に基づいて、想定充電時間を導出することができる。それにより、バッテリ10の外部充電の開始時点での状態に応じて想定充電時間を適切に導出することができる。第1導出部42aは、外部充電の開始時点でのバッテリ10の残存容量が小さいほど長い時間を想定充電時間として導出する。
【0074】
なお、想定充電時間をより適切に導出する観点では、上記の例のように、第1導出部42aは、現在のバッテリ10の最大容量、および、外部充電の開始時点でのバッテリ10の残存容量の双方に基づいて、想定充電時間を導出することが好ましい。ただし、第1導出部42aは、現在のバッテリ10の最大容量、および、外部充電の開始時点でのバッテリ10の残存容量の一方を用いずに、想定充電時間を導出してもよい。
【0075】
ステップS206の次に、ステップS207において、第2導出部42bは、設定充電時間と想定充電時間との差分時間を導出する。具体的には、第2導出部42bは、設定充電時間から想定充電時間を減算し、この演算により得られる値を差分時間として導出する。設定充電時間は、今回の外部充電で用いられる外部充電器に対して設定されている。ゆえに、第2導出部42bは、今回の外部充電で用いられる外部充電器の種類に基づいて設定充電時間を特定し得る。
【0076】
ステップS207の次に、ステップS208において、実行部42cは、ステップS207で導出された差分時間に亘って、バッテリ10の冷却を実行する。具体的には、実行部42cは、ステップS207で導出された差分時間に亘って、バッテリ10の冷却装置12を駆動させる。なお、想定充電時間が設定充電時間よりも長く、ステップS207で導出された差分時間が負の値である場合、ステップS208のバッテリ10の冷却処理は省略される。
【0077】
ステップS208の次に、ステップS209において、実行部42cは、バッテリ10の充電を実行し、図6に示される制御フローは終了する。具体的には、ステップS206、S207の処理が行われている場合、ステップS209において、実行部42cは、ステップS206で導出された想定充電時間に亘って、バッテリ10の充電を実行する。
【0078】
ここで、ステップS202でYESと判定された場合、ステップS206、S207の処理は行われない。この場合、ステップS209において、実行部42cは、例えば、バッテリ10の残存容量が充電終了SOCに到達するまで、バッテリ10の充電を実行する。また、ステップS204でNOと判定された場合、または、ステップS205でYESと判定された場合にも、ステップS206、S207の処理は行われない。これらの場合、ステップS209において、実行部42cは、例えば、設定充電時間に亘って、バッテリ10の充電を実行する。
【0079】
上記では、図5および図6を参照して、充電制御装置40が行う処理例について説明した。ただし、充電制御装置40が行う処理は、上記の例に限定されない。例えば、図5の制御フローでは、電源システム1がONになった時に、ステップS103の処理が行われる。ただし、図5のステップS103の処理は、外部充電が行われた際(例えば、外部充電の終了時)に行われてもよい。なお、その場合、図5のステップS103の処理は、外部充電においてバッテリ10の冷却が行われた場合に限り行われる。
【0080】
<充電制御装置の効果>
続いて、本発明の実施形態に係る充電制御装置40の効果について説明する。
【0081】
本実施形態に係る充電制御装置40では、第1導出部42aは、バッテリ10の外部充電において充電に必要な時間として想定される想定充電時間を、バッテリ情報に基づいて導出する。また、第2導出部42bは、バッテリ10の外部充電が行われる時間として設定されている設定充電時間と、想定充電時間との差分時間を導出する。そして、実行部42cは、差分時間に亘ってバッテリ10の冷却が行われ、想定充電時間に亘ってバッテリ10の充電が行われるように、バッテリ10の外部充電を実行する。それにより、外部充電においてバッテリ10のSOCが高い状態に維持される時間がバッテリ10の劣化に伴って長くなることを抑制し、かつ、バッテリ10の発熱を抑制することができる。ゆえに、バッテリ10の劣化を抑制することができる。
【0082】
また、本実施形態に係る充電制御装置40では、実行部42cは、外部充電において、バッテリ10の充電よりも前に、バッテリ10の冷却を実行することが好ましい。それにより、バッテリ10の充電よりも事前にバッテリ10を冷却し、電池温度を低くしておくことができるので、バッテリ10の充電中の発熱を効果的に抑制することができる。ゆえに、バッテリ10の劣化をより効果的に抑制することができる。
【0083】
また、本実施形態に係る充電制御装置40では、第1導出部42aは、バッテリ情報としての現在のバッテリ10の最大容量に基づいて、想定充電時間を導出することが好ましい。それにより、バッテリ10の劣化度合いに応じて想定充電時間を適切に導出することができる。
【0084】
また、本実施形態に係る充電制御装置40では、第1導出部42aは、前回の外部充電の実行時におけるバッテリ10の最大容量を、現在のバッテリ10の最大容量として用いることが好ましい。それにより、現在のバッテリ10の最大容量を適切に特定することができるので、そのような最大容量に基づいて想定充電時間をより適切に導出することができる。
【0085】
また、本実施形態に係る充電制御装置40では、第1導出部42aは、バッテリ情報としての外部充電の開始時点でのバッテリ10の残存容量に基づいて、想定充電時間を導出することが好ましい。それにより、バッテリ10の外部充電の開始時点での状態に応じて想定充電時間を適切に導出することができる。
【0086】
以上、添付図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されないことは勿論であり、特許請求の範囲に記載された範疇における各種の変更例または修正例についても、本発明の技術的範囲に属することは言うまでもない。
【0087】
例えば、本明細書においてフローチャートを用いて説明した処理は、必ずしもフローチャートに示された順序で実行されなくてもよい。いくつかの処理ステップは、並列的に実行されてもよい。また、追加的な処理ステップが採用されてもよく、一部の処理ステップが省略されてもよい。
【符号の説明】
【0088】
1 電源システム
10 バッテリ
11 受電部
12 冷却装置
13 バッテリセンサ
20 インバータ
30 モータ
40 充電制御装置
41 取得部
42 制御部
42a 第1導出部
42b 第2導出部
42c 実行部
43 記憶部
ΔT1 設定充電時間
ΔT2 想定充電時間
ΔT3 差分時間
図1
図2
図3
図4
図5
図6