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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】脱硝触媒研磨装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 38/00 20060101AFI20241120BHJP
   B01J 32/00 20060101ALI20241120BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20241120BHJP
   B01D 53/96 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
B01J38/00 A
B01J32/00
B01D53/86 222
B01D53/86 ZAB
B01D53/96 500
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020549829
(86)(22)【出願日】2020-06-03
(86)【国際出願番号】 JP2020021946
(87)【国際公開番号】W WO2021245842
(87)【国際公開日】2021-12-09
【審査請求日】2023-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】392026073
【氏名又は名称】ハシダ技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】吉河 敏和
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和広
(72)【発明者】
【氏名】盛田 啓一郎
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 亨浩
(72)【発明者】
【氏名】伊田 展充
(72)【発明者】
【氏名】坂本 大輔
(72)【発明者】
【氏名】日高 広大
【審査官】壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/211549(WO,A1)
【文献】特開2019-150738(JP,A)
【文献】特開2019-150739(JP,A)
【文献】国際公開第2014/155628(WO,A1)
【文献】特開2012-000693(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
B01D 53/73
53/86-53/90
53/94
53/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に延びる複数の貫通孔が設けられた脱硝触媒の前記貫通孔に、空気と共に研磨材を流通させて、前記貫通孔の内面を研磨する脱硝触媒研磨装置であって、
前記脱硝触媒は、前記貫通孔の流路方向が水平面に対して略垂直になるように配置され、
前記研磨材は、前記貫通孔の下方から上方に向けて流通し、
前記脱硝触媒の上方に配置され、空気と共に前記研磨材を吸引する吸引部と、
前記脱硝触媒の下方に配置され、垂直方向に延びる流路を有する流入路と、
前記流入路の上流側に配置され、空気と前記研磨材とを混合する混合部と、を有し、
前記混合部は、前記研磨材が供給される研磨材供給路、及び空気が流入する空気孔を有し、
前記空気孔から流入した空気は、前記混合部において旋回して前記研磨材と混合され
前記空気孔から前記混合部に流入する空気は、前記混合部の円周状の内面に沿って流入する、脱硝触媒研磨装置。
【請求項2】
前記混合部における前記研磨材供給路、前記流入路に通じる開口部、及び前記空気孔以外の箇所は外部から密閉される、請求項1に記載の脱硝触媒研磨装置。
【請求項3】
前記混合部は、円筒形状を有し、前記空気孔は、前記混合部の円周状の側面に略均等の間隔を空けて複数設けられる、請求項1又は2に記載の脱硝触媒研磨装置。
【請求項4】
前記研磨材供給路は、それぞれ異なる種類の前記研磨材が供給される2つ以上の前記研磨材供給路からなる、請求項1~3のいずれかに記載の脱硝触媒研磨装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱硝触媒を研磨する、脱硝触媒研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所では、石炭燃焼に伴い窒素酸化物が発生する。環境保全のため、窒素酸化物の排出量は一定水準以下に抑える必要がある。このため、火力発電所には窒素酸化物を還元するための脱硝触媒が充てんされた脱硝装置が設置されている。脱硝触媒は、使用の継続に伴い性能が低下する。性能の低下した脱硝触媒を再生する技術の一つとして研磨再生が挙げられる。研磨再生は、性能の低下した脱硝触媒の表面を研磨することで、触媒性能を回復させる技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2014/155628号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、研磨材(研削材)と気体との混合物を脱硝触媒の貫通孔に通過させて、貫通孔の内壁を研削する脱硝触媒の再生方法に関する技術が開示されている。脱硝触媒からなる被研削部材の一端部には、当該被研削部材の断面積より大きな断面積の拡開部を具備する上流固定部材が連結される。当該拡開部には、スクリーン部材が配置される。このような拡開部内で、研磨材と気体との混合物は流速が低下されると共に分散され、貫通孔の内壁の均一な研削が可能となる。
【0005】
特許文献1に開示された技術は、研磨材と気体との混合物が、屈曲部を有する上流側連結部材を介して脱硝触媒の貫通孔に流入する。従って、研磨材の分布に偏りが生じやすく、研磨材と気体とを混合する混合部や、長い流路を有する上流固定部材を用いて、研磨材を気体と均一に混合させる必要があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、脱硝触媒に流入する研磨材の分布に偏りが生じにくく、脱硝触媒を均一に研磨できる脱硝触媒研磨装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、長手方向に延びる複数の貫通孔が設けられた脱硝触媒の前記貫通孔に、空気と共に研磨材を流通させて、前記貫通孔の内面を研磨する脱硝触媒研磨装置であって、前記脱硝触媒は、前記貫通孔の流路方向が水平面に対して略垂直になるように載置され、前記研磨材は、前記貫通孔の下方から上方に向けて流通し、前記脱硝触媒の下方に配置され、空気と共に前記研磨材を吸引する吸引部と、前記脱硝触媒の上方に配置され、垂直方向に延びる流路を有する流入路と、前記流入路の上流側に配置され、空気と前記研磨材とを混合する混合部と、を有し、前記混合部は、前記研磨材が供給される研磨材供給路、及び空気が流入する空気孔を有し、前記空気孔から流入した空気は、前記混合部において旋回して前記研磨材と混合される、脱硝触媒研磨装置に関する。
【0008】
前記混合部における前記研磨材供給路、前記流入路に通じる開口部、及び前記空気孔以外の箇所は外部から密閉されることが好ましい。
【0009】
前記混合部は、円筒形状を有し、前記空気孔は、前記混合部の円周状の側面に略均等の間隔を空けて複数設けられ、前記空気孔から流入する空気は、前記混合部の円周状の内面に沿って流入することが好ましい。
【0010】
前記研磨材供給路は、それぞれ異なる種類の前記研磨材が供給される2つ以上の前記研磨材供給路からなることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、脱硝触媒に流入する研磨材の分布に偏りが生じにくく、脱硝触媒を均一に研磨できる脱硝触媒研磨装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係る脱硝触媒が使用される火力発電設備の構成図である。
図2】火力発電設備における脱硝装置の構成例を示す図である。
図3】本実施形態に係る脱硝触媒研磨装置の概略構成図である。
図4】本実施形態に係る脱硝触媒研磨装置の要部を拡大した斜視図である。
図5】本実施形態に係る脱硝触媒研磨装置の要部を拡大した平面図である。
図6】本実施形態に係る脱硝触媒研磨装置による研磨状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明の実施形態に係る脱硝触媒研磨装置の被研磨対象である脱硝触媒は、例えば、以下説明する石炭火力発電設備100で一定期間使用され、性能の低下した脱硝触媒Cである。
【0014】
[石炭火力発電設備]
図1に示すように、石炭火力発電設備100は、石炭バンカ112と、給炭機115と、微粉炭機120と、微粉炭供給管130と、燃焼ボイラ140と、燃焼ボイラ140の下流側に設けられる排気通路150と、この排気通路150に設けられる脱硝装置160、空気予熱器170、熱回収用ガスヒータ180、電気集塵装置190、誘引通風機210、湿式脱硫装置220、再加熱用ガスヒータ230、脱硫通風機240、及び煙突250と、を備える。
【0015】
石炭バンカ112は、図示しない石炭サイロから運炭設備により供給される石炭を貯蔵する。給炭機115は、石炭バンカ112から供給される石炭を所定の供給スピードで微粉炭機120に供給する。
微粉炭機120は、給炭機115から供給された石炭を平均粒径60μm~80μmに粉砕して微粉炭を製造する。微粉炭機120としては、ローラミル、チューブミル、ボーラミル、ビータミル、インペラーミル等が用いられる。
【0016】
燃焼ボイラ140は、微粉炭供給管130から供給された微粉炭を、強制的に供給された空気と共に微粉炭バーナbにより燃焼する。微粉炭を燃焼することによりクリンカアッシュ及びフライアッシュなどの石炭灰が生成されると共に、排ガスが発生する。クリンカアッシュとは、石炭灰のうち、燃焼ボイラ140の底部に落下する塊状の石炭灰をいう。フライアッシュとは、石炭灰のうち、排ガスと共に排気通路150側に流通する、粒径の小さい(粒径200μm程度以下)の石炭灰をいう。
排気通路150は、燃焼ボイラ140の下流側に配置され、燃焼ボイラ140で発生した排ガス及び石炭灰を流通させる。
【0017】
脱硝装置160は、排ガス中の窒素酸化物を除去する。脱硝装置160は、例えば、乾式アンモニア接触還元法により排ガス中の窒素酸化物を除去する。乾式アンモニア接触還元法は、比較的高温(300℃~400℃)の排ガス中に還元剤としてアンモニアガスを注入し、脱硝触媒との作用により排ガス中の窒素酸化物を窒素と水蒸気に分解する方法である。
【0018】
脱硝装置160は、図2に示すように、脱硝反応が行われる脱硝反応器161と、脱硝反応器161の内部に配置される複数段の脱硝触媒層162とを備える。脱硝触媒層162は、複数のケーシング163により構成される。ケーシング163には、複数の脱硝触媒Cが収容される。
脱硝触媒Cは、長手方向に延びる複数の貫通孔C1が形成されたハニカム構造を有する、長尺状(直方体状)の触媒である。複数の脱硝触媒Cは、貫通孔C1の延びる方向が排ガスの流路に沿うように配置される。
【0019】
空気予熱器170は、排気通路150における脱硝装置160の下流側に配置される。空気予熱器170は、脱硝装置160を通過した排ガスと燃焼用空気とを熱交換させ、排ガスを冷却すると共に、燃焼用空気を加熱する。加熱された燃焼用空気は、押込通風機175によりボイラ140に供給される。
【0020】
熱回収用ガスヒータ180は、排気通路150における空気予熱器170の下流側に配置される。熱回収用ガスヒータ180には、空気予熱器170において熱回収された排ガスが供給される。熱回収用ガスヒータ180は、排ガスから更に熱回収を行う。
【0021】
電気集塵装置190は、排気通路150における熱回収用ガスヒータ180の下流側に配置される。電気集塵装置190には、熱回収用ガスヒータ180において熱回収された排ガスが供給される。電気集塵装置190は、電極に電圧を印加することによって排ガス中の石炭灰(フライアッシュ)を収集(捕捉)する装置である。電気集塵装置190において収集(捕捉)されるフライアッシュは、フライアッシュ回収装置191に回収される。
【0022】
誘引通風機210は、排気通路150における電気集塵装置190の下流側に配置される。誘引通風機210は、電気集塵装置190においてフライアッシュが除去された排ガスを、一次側から取り込んで二次側に送り出す。
【0023】
脱硫装置220は、排気通路150における誘引通風機210の下流側に配置される。脱硫装置220には、誘引通風機210から送り出された排ガスが供給される。脱硫装置220は、例えば湿式石灰-石膏法により排ガス中の硫黄酸化物を除去する。湿式石灰-石膏法は、排ガスに石灰石と水との混合液を吹き付けることにより、排ガスに含有されている硫黄酸化物を混合液に吸収させて脱硫石膏スラリーを生成させ、排ガス中の硫黄酸化物を除去する方法である。この際に発生したホウ素やセレン等の微量物質が含まれる排水は、排水処理装置221によって処理される。
【0024】
再加熱用ガスヒータ230は、排気通路150における脱硫装置220の下流側に配置される。再加熱用ガスヒータ230には、脱硫装置220において硫黄酸化物が除去された排ガスが供給される。再加熱用ガスヒータ230は、排ガスを加熱する。熱回収用ガスヒータ180及び再加熱用ガスヒータ230は、排気通路150における、空気予熱器170と電気集塵装置190との間を流通する排ガスと、脱硫装置220と脱硫通風機240との間を流通する排ガスと、の間で熱交換を行うガス-ガスヒータとして構成してもよい。
【0025】
脱硫通風機240は、排気通路150における再加熱用ガスヒータ230の下流側に配置される。脱硫通風機240は、再加熱用ガスヒータ230において加熱された排ガスを一次側から取り込んで二次側に送り出す。
【0026】
煙突250は、排気通路150における脱硫通風機240の下流側に配置される。煙突250には、再加熱用ガスヒータ230で加熱された排ガスが導入される。煙突250は、排ガスを排出する。
【0027】
[脱硝触媒研磨装置]
上記説明した石炭火力発電設備100に用いられる脱硝触媒Cは、使用の継続に伴いシンタリング等の熱的劣化、触媒成分の被毒による化学的劣化、及び煤塵が触媒表面を被覆する物理的劣化等により、脱硝性能が低下する。脱硝性能が低下した脱硝触媒Cは、触媒表面である貫通孔C1の内面を研磨し、表面の付着物等を除去することで脱硝性能が回復する。
以下、脱硝性能の低下した脱硝触媒Cの貫通孔C1の内面を研磨し、脱硝性能を回復させる脱硝触媒研磨装置1について説明する。
【0028】
本実施形態に係る脱硝触媒研磨装置1は、脱硝触媒Cの貫通孔C1に空気と共に研磨材Aを流通させて、貫通孔C1の内面を研磨する装置である。脱硝触媒研磨装置1は、図3に示すように、混合部10と、流入路20と、流出路30と、サイクロン40と、バグフィルタ60と、吸引ファン70と、を備える。脱硝触媒研磨装置1の被研磨対象である脱硝触媒Cは、流入路20における上流側固定部材22と、流出路30における下流側固定部材32との間に挟持される。脱硝触媒Cは、脱硝触媒Cの貫通孔C1の流路方向が水平面に対して略垂直になるように固定される。研磨材Aは、脱硝触媒Cの貫通孔C1の下方から上方に向けて流通する。
【0029】
<混合部>
混合部10は、例えば円筒形状を有し、後述する研磨材供給路33a及び33bから供給される研磨材A1及び研磨材A2を内部で空気と混合して流入路20に供給する。なお、本実施形態において、研磨材Aは種類の異なる研磨材A1及び研磨材A2からなるが、本明細書ではこれらを総称して研磨材A、と記載する場合がある。
【0030】
混合部10は、図4に示すように、側面11と、底面13と、上面14と、を有する。側面11は、混合部10の底面13及び上面14と連続し、垂直方向に延びる円周状の面からなる。側面11には、外部から空気が流入する空気孔110aが設けられた空気吸入路110が複数設けられる。本実施形態において、空気吸入路110は、図5に示すように、側面11に略均等の間隔を置いて合計8個設けられる。側面11は、研磨材供給路33a及び33bと、それぞれ開口部111a及び111bを介して接続される。底面13は、円形の平面であり、研磨材供給路33a及び33bから流入した研磨材A1及びA2が堆積する。上面14は、底面13と同様の円形の平面であり、後述する吸入路21と開口部21aを介して接続される。開口部21aは、上面14の略中心に配置される。
【0031】
混合部10は、本実施形態において、空気孔110aと、研磨材供給路33a及び33bに通じる開口部111a及び111bと、吸入路21に通じる開口部21a以外の箇所は外部から密閉される。これにより、脱硝触媒Cの上流側、即ち開口部21a側から吸引ファン70により空気が吸引されると、空気孔110aから混合部10の内部に空気が流入する。また、混合部10は、平面視で円状の内周面を有することが好ましい。これにより、空気孔110aから流入した空気を、好ましく旋回させることができる。
【0032】
空気吸入路110は、内部に空気が流通する流路を有する、例えば角筒形状の筒状部材である。空気吸入路110の流路の一方側端部は、空気孔110aとして外部に向けて開口している。空気吸入路110の流路の他方側端部は、混合部10の内部と連通している。空気吸入路110の形状は、角筒形状に限定されず、円筒形状等、内部に流路を有する形状であればよい。
【0033】
空気吸入路110の一方の側面は、図5に示すように、平面視で混合部10の円状の内周面の接線方向に沿って配置される。空気吸入路110の他方の側面は、平面視で上記一方の側面と平行、かつ混合部10の円状の内周面の内周側に配置される。これにより、図5に矢印で示すように、空気孔110aから混合部10に流入する空気は、平面視で混合部10の円状の内周面の接線方向から流入する。その後、混合部10に流入した空気は、開口部21a側から吸引されることで、また、流入方向の先にある他の空気孔110aから流入した空気と衝突することで、徐々に流れ方向が内周側へと変化する。これにより、空気孔110aから流入した空気は、研磨材供給路33a及び33bから流入した研磨材A1及びA2を巻き込んで旋回し、研磨材A1及びA2を混合しながら内周側へと移動する。そして、空気と研磨材A1及びA2は、均一に混合された状態で、上面14の略中心に配置される開口部21aを介して吸入路21側へと吸引される。
【0034】
<研磨材>
混合部10に供給される研磨材Aは、本実施形態において、異なる2種類の研磨材A1及びA2からなる。研磨材A1及びA2は、貫通孔C1の内部を流通する速度が異なる。図6は、研磨材A1及びA2が貫通孔C1に流通する状態を示す模式図である。複数の貫通孔C1に対し、脱硝触媒Cの下方に連結される上流側固定部材22を通じ、空気と混合された研磨材A1と研磨材A2からなる研磨材Aが、下方から上方に向けて流通し、貫通孔C1の内面が研磨される。
【0035】
研磨材A1及びA2は、例えば平均粒子径が異なることで、貫通孔C1を流通する速度が異なる。例えば、研磨材A1は研磨材A2よりも平均粒子径が大きく、質量が大きい、従って、研磨材A1及びA2が空気と共に下方から上方に向けて貫通孔C1を流通する際、研磨材A1に働く重力が研磨材A2よりも大きいため、研磨材A1の流通速度は研磨材A2の流通速度よりも小さくなる。すると、研磨材A1に対し、研磨材A2が衝突し、研磨材A2は貫通孔C1の中で飛散する。これにより、貫通孔C1の内面に衝突する研磨材A2の割合が増える結果、脱硝触媒Cの研磨効率が向上する。
【0036】
研磨材A1及びA2は、図4に示すように、それぞれ異なる研磨材供給路33a及び33bから混合部10に供給される。これにより、研磨材A1及びA2の比率を容易に調節できる。また、混合部10においては、空気孔110aから流入した空気が旋回して、研磨材A1及びA2と混合される。このため、異なる種類の研磨材A1及びA2を用いた場合であっても、研磨材A1及びA2を均一に混合させた状態で貫通孔C1に流入させることができる。
【0037】
研磨材A1は、上記研磨効率を向上させるため、JIS R6001に規定される粒度がF7~F14であることが好ましく、粒度F8~F12であることがより好ましく、粒度F10であることが更に好ましい。同様に、研磨材A2の平均粒子径は、JIS R6001に規定される粒度がF36~F60であることが好ましく、粒度F40~F54であることがより好ましく、F46であることが更に好ましい。研磨材A1の累積高さ50%点の粒子径である平均粒子径は、1.65~2.16mmであることが好ましい。研磨材A2の累積高さ50%点の粒子径である平均粒子径は、0.30~0.45mmであることが好ましい。
【0038】
研磨材A1の研磨材Aにおける割合は、5~15重量%であることが好ましい。研磨材A1の割合が上記範囲に対して少なすぎると、研磨効率を十分向上させることができない。また、研磨材A1の割合が上記範囲に対して多すぎると、脱硝触媒Cを均一に研磨できず、研磨が不十分な箇所と、研磨過剰な箇所が生じてしまう。また、脱硝触媒Cが破損する恐れがある。
【0039】
研磨材Aの材質としては、特に制限されないが、例えば、ダイヤモンド、CBN(立方晶窒化ホウ素)、B4C(炭化ホウ素)、炭化ケイ素、シリカ、セリア、アルミナ、ホワイトアルミナ、ジルコニア、チタニア、マンガン酸化物、炭酸バリウム、酸化クロム、及び酸化鉄等が挙げられる。研磨材A1及びA2は、同一の材質からなる研磨材であってもよいが、研磨材A1及びA2は異なる材質であってもよい。例えば、それぞれ密度が異なる研磨材A1及びA2を用いることで、研磨材A1及びA2の流通速度を異なるものとすることもできる。
【0040】
流入路20は、脱硝触媒Cの上流側の流路であり、空気と共に研磨材Aが吸引ファン70により吸引されて流入する流路である。流入路20は、吸入路21及び上流側固定部材22からなる。
吸入路21は、上流側端部に開口部21aが設けられ、内部に研磨材A及び空気が流通可能な、垂直方向に延びる流路を有する。吸入路21の上記流路は、上流側固定部材22と、混合部10とを連通する流路である。吸入路21の上端部(下流側端部)は、上流側固定部材22と連結される。吸入路21の下端部(上流側端部)には、開口部21aが形成され、混合部10の上面14と連結される。開口部21aを通じて、空気と混合された研磨材Aが吸入路21内に流入する。
【0041】
上流側固定部材22は、内部に研磨材A及び空気が流通可能な、垂直方向に延びる流路を有し、下流側が脱硝触媒Cの下端部(上流側端部)と連結されて脱硝触媒Cを固定する。上流側固定部材22の上流側は、吸入路21と連結される。上流側固定部材22の流路と、吸入路21の流路とは垂直方向に連続する流路である。吸入路21から空気と共に流入した研磨材Aは、上流側固定部材22を介して脱硝触媒Cの貫通孔C1に流入する。本実施形態に係る脱硝触媒研磨装置1では、研磨材Aを吸引する動力として、吸引部としての吸引ファン70のみを用いている。また、混合部10から吸入路21を介し、垂直方向に研磨材Aを空気と共に吸引する。従って、研磨材Aは十分に分散され、かつ流速の低い状態で上流側固定部材22に流入する。
【0042】
吸入路21の流路横断面積は、上流側固定部材22の流路横断面積よりも小さい。吸入路21の流路横断面積を小さくすることで、吸入路21を流通する研磨材A及び空気の流速を大きくすることができる。これにより、吸入路21の開口部21aから研磨材Aが吸入されやすい。また、研磨材Aが吸入路21から上流側固定部材22に流入する際、流路横断面積が大きくなることで研磨材Aの流速が低下し、かつ研磨材Aが分散されるため好ましい。
【0043】
流出路30は、脱硝触媒Cの下流側の流路である。流出路30は、研磨材Aと、脱硝触媒Cの表面が研磨されることで生じた被研磨物とが流通する流路である。研磨材Aと被研磨物とは、吸引部としての吸引ファン70により空気と共に吸引される。流出路30の途中にはサイクロン40が設けられ、研磨材Aと被研磨物とが分離される。
流出路30は、脱硝触媒Cの上端部(下流側端部)と連結されて脱硝触媒Cを固定する下流側固定部材32と、下流側固定部材32とサイクロン40とを連結する下流側流路31と、サイクロン40で分離された研磨材Aを混合部10に供給する研磨材供給路33と、を有する。
【0044】
サイクロン40は、公知のサイクロン分級器であり、混合部10よりも高い位置に配置される。サイクロン40の上流端は、下流側流路31と連結される。サイクロン40の下部には研磨材供給路33が連結され、サイクロン40により分離された研磨材Aが流通する。サイクロン40の下流端は、搬送パイプ41と連結され、搬送パイプ41の下流端は、バグフィルタ60と連結される。サイクロン40により分離された被研磨物は、空気と共に搬送パイプ41を通じてバグフィルタ60に流入する。
【0045】
研磨材供給路33は、上流側端部がサイクロン40と連結される、1又は複数の流路である。研磨材供給路33は、サイクロン40から混合部10に向けて下方に傾斜又は垂下している。サイクロン40から研磨材供給路33に流入した研磨材Aは、自重により落下して混合部10に供給される。即ち、研磨材Aは、脱硝触媒研磨装置1内を循環する。本実施形態では、図4に示すように、研磨材供給路は2つの研磨材供給路33a及び33bの2つの研磨材供給路からなる。研磨材供給路33aは、研磨材A1が流通し、研磨材供給路33bは、研磨材A2が流通する。研磨材供給路33a及び研磨材供給路33bの上流側には、例えば篩等の分級部(図示省略)が設けられ、サイクロン40で分離された研磨材Aが異なる平均粒子径を有する研磨材A1と、研磨材A2とに分級される。
【0046】
バグフィルタ60は、公知の集塵装置である。バグフィルタ60は、脱硝触媒Cの被研磨物を含む空気中の粉塵を捕集する。捕集された粉塵は、バグフィルタ60の下部に設けられた図示しない貯蔵部に貯蔵され、所望のタイミングで回収される。バグフィルタ60の下流端は、連結パイプ61と連結される。連結パイプ61の下流端は、吸引部としての吸引ファン70に連結される。バグフィルタ60を通過して粉塵が除去された清浄な空気は、吸引ファン70によって吸引されて、排気ダクト71により大気中に排出される。
【0047】
(研磨再生方法)
次に、脱硝触媒研磨装置1を用いて脱硝触媒Cを研磨再生する方法について説明する。
脱硝触媒研磨装置1の被研磨対象である、脱硝性能が低下した脱硝触媒Cを、石炭火力発電設備100の脱硝装置160から取り外す。この際、脱硝触媒Cの貫通孔C1は、石炭灰等で閉塞されている場合があるため、適宜エアブローや水洗等により閉塞物を取り除く。次に、上流側固定部材22と、下流側固定部材32との間に脱硝触媒Cを挟持し、脱硝触媒Cを固定する。この際、例えば脱硝触媒Cの、脱硝装置160における排ガスの入口側端部であった付着物の多い側を、研磨材Aの流速の高い下流側となるように配置して固定してもよい。
【0048】
脱硝触媒研磨装置1の作動を開始すると、吸引ファン70が作動を開始し、混合部10の側面11に設けられた複数の空気孔110aから空気が混合部10内に流入する。空気孔110aから流入した空気は、混合部10内で旋回し、研磨材A1及びA2と混合される。均一に混合された研磨材A1及びA2は、吸入路21の開口部21aを通じ、空気と共に上流側に吸引される。吸入路21及び上流側固定部材22は、内部に垂直方向に延びる流路を有する。従って、研磨材A1及びA2は、均一な状態で、空気と共に垂直方向に吸引され、脱硝触媒Cの貫通孔C1に流入する。
【0049】
研磨材Aは、貫通孔C1の内面の研磨を行った後、下流側固定部材32から流出する。流出した研磨材Aと被研磨物とは、空気と共に吸引ファン70により吸引されて、下流側流路31を介してサイクロン40に流入する。サイクロン40では、研磨材Aと被研磨物とが分離される。研磨材Aは、研磨材A1及びA2に分級されて、それぞれ研磨材供給路33a及び33bを介して混合部10に流入する。
【0050】
サイクロン40で分離された被研磨物は吸引ファン70により吸引されて、搬送パイプ41を介してバグフィルタ60に流入して捕集される。被研磨物が捕集された後の空気は排気ダクト71を通じて外部に排出される。所定時間、脱硝触媒研磨装置1の作動を継続させ、脱硝触媒Cの貫通孔C1の内面を研磨し、貫通孔C1の内面に付着した付着物等を取り除くことで脱硝触媒Cを再生する。
【0051】
以上説明した本実施形態に係る脱硝触媒研磨装置1によれば、以下の効果が奏される。
【0052】
脱硝触媒Cを、長手方向に延びる複数の貫通孔C1の流路方向が水平面に対して略垂直になるように配置し、研磨材Aを吸引ファン70により空気と共に吸引することで、研磨材Aを貫通孔C1の下方から上方に向けて流通させた。混合部10に形成された空気孔110aから流入する空気は混合部10の内部で旋回し、研磨材供給路33から流入する研磨材Aと空気とが混合される。この状態で流入路20を介し、脱硝触媒Cの貫通孔C1に研磨材Aと空気とが流入するため、脱硝触媒に流入する研磨材の分布に偏りが生じにくく、脱硝触媒を均一に研磨できる。
【0053】
混合部10における、研磨材供給路33a及び33bの開口部111a及び111bと、吸入路21の開口部21aと、複数の空気孔110a以外の箇所は、外部から密閉される。これにより、吸引ファン70により吸引される空気は全て複数の空気孔110aから流入して、開口部21aから流出するので、コンプレッサ等の装置を要さずに、十分な研磨材Aの流速が得られ、かつ、研磨材Aを空気と混合できる。このため、均一かつ十分に脱硝触媒Cの研磨を行うことができる。
【0054】
混合部10は、円筒形状を有し、空気孔110aは、混合部10の円周状の側面11に略均等の間隔を空けて複数設けられる。これにより、複数の空気孔110aから混合部10に流入する空気を好ましく旋回させながら、混合部10の中心付近に移動させることができる。従って、空気と混合された研磨材Aが均等に混合された状態で、流入路20から貫通孔C1へと供給できる。このため、均一な脱硝触媒Cの研磨を行うことができる。
【0055】
研磨材供給路33は、異なる種類の研磨材A1及びA2が供給される、研磨材供給路33a及び33bからなる。これにより、研磨材A1及びA2の貫通孔C1内の流通速度が異なることで、研磨材同士の衝突が起こり、貫通孔C1内の研磨効率が向上する。また、混合部は内部で空気が旋回して研磨材Aと混合されるため、研磨材Aが異なる種類の研磨材A1及びA2からなる場合であっても、均一に空気と研磨材A1及びA2とを混合できる。
【0056】
本発明は、上記実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0057】
上記実施形態において、混合部10を、円筒形状を有するものとして説明した。上記に限定されない。混合部10は、空気孔から空気が流入することで、内部で空気と研磨材とが旋回して混合されるものであればよい。
【0058】
上記実施形態において、研磨材供給路33を、研磨材A1及びA2が供給される研磨材供給路33a及び33bからなるものとして説明した。上記に限定されない。研磨材Aの種類は3種類以上であってもよい。研磨材供給路33は上記研磨剤Aの種類に対応して3つ以上であってもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 脱硝触媒研磨装置
10 混合部
11 側面
110a 空気孔
111a、111b 開口部
20 流入路
21a 開口部
33 研磨材供給路
70 吸引ファン(吸引部)
C 脱硝触媒
C1 貫通孔
A 研磨材
図1
図2
図3
図4
図5
図6