(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】酸化アルミニウム表面及び界面分子
(51)【国際特許分類】
C07K 19/00 20060101AFI20241120BHJP
C07K 14/745 20060101ALI20241120BHJP
C07K 14/31 20060101ALI20241120BHJP
C07K 1/22 20060101ALI20241120BHJP
G01N 33/553 20060101ALI20241120BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20241120BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
C07K14/745
C07K14/31
C07K1/22
G01N33/553
C12N15/62 Z
(21)【出願番号】P 2020566866
(86)(22)【出願日】2019-02-20
(86)【国際出願番号】 CA2019050204
(87)【国際公開番号】W WO2019161491
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2022-02-17
(32)【優先日】2018-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521557724
【氏名又は名称】パヴォニス ダイアグノスティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】バレル, ロバート エドワード
【審査官】大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-204609(JP,A)
【文献】国際公開第2012/168988(WO,A1)
【文献】特表2016-516037(JP,A)
【文献】国際公開第2006/104035(WO,A1)
【文献】ACS NANO,2009年,Vol.3, No.10,p.3301-3307
【文献】Biosensors and Bioelectronics,1998年,Vol.13, No.3-4,p.271-278
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
C15N15/00-15/90
G01N33/48-33/98
CAPLUS/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的の解析物に結合が生じたかどうかを試験するための診断システム又はキットであって、
酸化アルミニウム表面
を有する基材、
分子体積2.2~25nm
3中に少なくとも5つの遊離カルボキシル基を
含む少なくとも1つのカルボキシリッチドメインを有するポリペプチドを含む界面分子であり、
前記カルボキシリッチドメインにおける遊離カルボキシル基の密度が1.15~9.09/nm
3
であり、前記遊離カルボキシル基が2つ以上のカルボキシ
ル基を含むアミノ酸によりもたらされる、界面分子、並びに
i)前記界面分子に結合した、前記解析物に結合させるための架橋剤、
ii)1つ又は複数の共有結合により前記界面分子に結合し、前記解析物に対して特異性の生体分子、
iii)前記界面分子に対して特異性の第1の抗原決定基を介して前記界面分子に結合し、前記解析物に対して特異性の第2の抗原決定基を有する、改変抗体の形態の生体分子、及び
iv)抗体のFcフラグメントを介して前記界面分子に結合し、前記解析物に対して特異性のFabフラグメントを有する、改変抗体の形態の生体分子
のうちの1つ
を含み、
前記界面分子並びに(i)、(ii)、(iii)及び(iv)のうちの1つが、前記酸化アルミニウム表面に固定化されるか、又は
前記界面分子並びに(i)、(ii)、(iii)及び(iv)のうちの1つが、界面複合体として形成されて、前記酸化アルミニウム表面に固定化する前に解析物と接触
し、
試料と接触させて前記解析物について試験した場合、
(i)が存在するときは、前記架橋剤に前記解析物が結合すると、前記解析物の存在が検出され、
(ii)、(iii)又は(iv)が存在するときは、前記生体分子のいずれかに前記解析物が結合すると、前記解析物の存在が検出される、診断システム又はキット。
【請求項2】
前記酸化アルミニウム表面が、酸化アルミニウムの多孔質層により被覆された場合に発色することが可能な反射金属上に形成され、
前記酸化アルミニウム表面が、多孔質の陽極酸化表面であり、
試料と接触させて前記解析物について試験した場合、
(i)が存在するとき
は、前記架橋剤
に前記解析物が結合すると、色の変化が検出され、
(ii)、(iii)
又は(iv)が存在するとき
は、前記生体分子のいずれかに前記解析物が結合すると、色の変化が検出さ
れ、
前記色の変化は、前記解析物が存在することを表す、請求項1に記載の診断システム又はキット。
【請求項3】
目的の解析物に結合が生じたかどうかを試験する方法であって、
a)酸化アルミニウム表面
を有する基材を形成するステップ、
b)界面分子を形成するステップであり、前記界面分子が、分子体積2.2~25nm
3中に少なくとも5つの遊離カルボキシル基を
含む少なくとも1つのカルボキシリッチドメインを有するポリペプチドを含み、
前記カルボキシリッチドメインにおける遊離カルボキシル基の密度が1.15~9.09/nm
3
であり、前記遊離カルボキシル基が2つ以上のカルボキシ
ル基を含むアミノ酸によりもたらされ、前記界面分子が、
i)前記解析物に結合させるための架橋剤、
ii)前記解析物に対して特異性の生体分子、
iii)前記界面分子に対して特異性の第1の抗原決定基を有し、目的の前記解析物に対して特異性の第2の抗原決定基を有する、改変抗体の形態の生体分子、及び
iv)抗体のFcフラグメントを介して前記界面分子に結合し、目的の前記解析物に対して特異性のFabフラグメントを有する、改変抗体の形態の生体分子
のうちの1つに結合している、ステップ、
c)前記界面分子並びに(i)、(ii)、(iii)及び(iv)のうちの1つを、前記酸化アルミニウム表面に固定化するステップ、又は、前記界面分子並びに(i)、(ii)、(iii)及び(iv)のうちの1つから界面複合体を形成するステップ
d)c)の前記酸化アルミニウム表面又はc)の前記界面複合体を試料と接触させて前記解析物について試験するステップ、並びに
e)前記解析物のc)の前記酸化アルミニウム表面への結合時、又は前記解析物及び前記界面複合体の前記酸化アルミニウム表面への結合時に、前記解析物の存在を検出するステップ
を含む、方法。
【請求項4】
前記酸化アルミニウム表面が、酸化アルミニウムの多孔質層により被覆された場合に発色することが可能な反射金属上に形成され、
前記酸化アルミニウム表面が、多孔質の陽極酸化表面であり、
前記試料と接触させて前記解析物について試験した場合、(i)が存在するとき前記架橋剤、又は(ii)、(iii)若しくは(iv)が存在するとき前記生体分子のいずれかに前記解析物が結合すると、色の変化が検出されて、前記解析物が存在することを表す、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記カルボキシリッチドメインが
、分子体積2.2~25nm
3中に少なくとも10個の遊離カルボキシル
基を含む、請求項1又は2に記載の診断システム又はキット。
【請求項6】
前記カルボキシリッチドメインが、分子体積2.2~25nm
3
中に少なくとも20個の遊離カルボキシル基を含む、請求項1又は2に記載の診断システム又はキット。
【請求項7】
前記カルボキシリッチドメインが、分子体積2.2~17nm
3
中に少なくとも10個の遊離カルボキシル基を含む、請求項1又は2に記載の診断システム又はキット。
【請求項8】
前記カルボキシリッチドメインが、分子体積2.2~17nm
3
中に少なくとも20個の遊離カルボキシル基を含む、請求項1又は2に記載の診断システム又はキット。
【請求項9】
前記カルボキシリッチドメインが、分子体積7.0~17nm
3
中に少なくとも10個の遊離カルボキシル基を含む、請求項1又は2に記載の診断システム又はキット。
【請求項10】
前記カルボキシリッチドメインが、分子体積7.0~17nm
3
中に少なくとも20個の遊離カルボキシル基を含む、請求項1又は2に記載の診断システム又はキット。
【請求項11】
前記カルボキシリッチドメインが、分子体積2.2~17nm
3
中に10~24個の遊離カルボキシル基を含む、請求項1又は2に記載の診断システム又はキット。
【請求項12】
前記架橋剤が、前記界面分子に共有結合するか、又は
前記生体分子が、架橋剤により前記界面分子に共有結合するか、又は
前記界面分子及び前記生体分子が、アミノ酸配列として改変されて、前記界面分子及び前記生体分子が、ペプチド結合により結合するか、又は
前記界面分子が、カルボキシリッチドメインを組み込んでいる改変若しくは合成のタンパク質、ポリペプチド若しくは抗体であるか、又は
前記生体分子が、前記界面分子に対して特異性の第1の抗原決定基を有し、目的の前記解析物に対して特異性の第2の抗原決定基を有する、改変抗体であるか、又は
前記生体分子が、抗体のFcフラグメントを介して前記界面分子に結合し、目的の前記解析物に対して特異性のFabフラグメントを有する、改変抗体である、
請求項1又は2に記載の診断システム又はキット。
【請求項13】
前記界面分子が、連続的若しくは非連続的コーティングとして、描出した点若しくは線として、又はアレイとして、前記酸化アルミニウム表面に形成される;
前記界面分子が、前記酸化アルミニウム表面に間隔をあけて配置された様々な種類の界面分子を含み、前記生体分子が前記界面分子のうちの1種に結合しているか、又は、特異性生体分子が各種の界面分子に、異なる特異性生体分子が結合するように結合している;及び/又は
前記酸化アルミニウム表面が、粒子、粉末、薄膜、スライド、条片、フィルター、ビーズ、磁気ビーズ、磁気粒子又はコーティングの形態の基材に形成される、
請求項1又は2に記載の診断システム又はキット。
【請求項14】
前記酸化アルミニウム表面が、アルミニウム金属又はアルミニウム合金のスパッタリング、蒸発、鋳造又は押出しにより形成され、これがさらに陽極酸化されて、多孔質の陽極酸化された酸化アルミニウム表面を形成する;又は
前記酸化アルミニウム表面が、酸化アルミニウムのRFスパッタリング、反応スパッタリング又は化学蒸着により基材上に形成される、
請求項1又は2に記載の診断システム又はキット。
【請求項15】
前記界面分子又は前記界面複合体が、適する溶媒中の前記界面分子の溶液から、前記酸化アルミニウム表面にコーティングとして固定化された後、前記溶液を除去する、請求項1又は2に記載の診断システム又はキット。
【請求項16】
前記界面分子の前記カルボキシリッチドメインが、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、及びガンマ-カルボキシグルタミン酸(Gla)からなる群から選択されるアミノ酸のうちの1つ又は複数を含む;
前記界面分子が、ビタミンK依存性タンパク質、Glaドメインを含むそのフラグメント、又は修飾Glaドメインを含むそのフラグメントであ
り、前記修飾Glaドメインにおいて、Gla残基の1つ又は複数が、Glu、Asp、Glu-Glu、Glu-Asp、Asp-Glu又はAsp-Aspと置換されている;又は
前記界面分子及び前記生体分子は、前記カルボキシリッチドメインが、タンパク質、ポリペプチド、抗原、抗体、糖質、アプタマー又は脂質に含まれるように改変された分子として形成される、
請求項1又は2に記載の診断システム又はキット。
【請求項17】
前記カルボキシリッチドメインが、ビタミンK依存性タンパク質又は
1つ又は複数のGlaドメインを含むそのフラグメントの1つ又は複数のGlaドメインを含み、前記改変された分子が、プロテインA、プロテインAのフラグメントB又はIgG分子を含む、請求項
16に記載の診断システム又はキット。
【請求項18】
前記界面分子は、Gla残基の1つ又は複数がGlu、Asp、Glu-Glu、Glu-Asp、Asp-Glu又はAsp-Aspと置換されている、タンパク質、タンパク質の1つ若しくは複数のGlaドメイン、又はタンパク質の修飾Glaドメインであり、前記タンパク質が、プロトロンビン、プロトロンビンのフラグメント1、プロテインS、凝固第IX因子、第X因子、第VII因子、プロテインC、マトリクスGlaタンパク質、及び骨Glaタンパク質からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の診断システム又はキット。
【請求項19】
前記生体分子が、抗体-抗原、抗体-ハプテン、酵素-基質、酵素-受容体、毒素-受容体、タンパク質-タンパク質、アビジン-ビオチン、アプタマー-アプタマー標的、及び薬物受容体-薬物からなる群から選択される結合対のメンバーである、請求項1又は2に記載の診断システム又はキット。
【請求項20】
前記界面分子及び前記生体分子が、抗体のFcフラグメントを介して前記界面分子に結合し且つ解析物に対して特異性のFabフラグメントを有する改変抗体の界面複合体の形態であり、前記界面複合体が、前記抗体の前記Fcフラグメントの各重鎖のカルボキシ
ル末端に
結合した前記カルボキシリッチドメインの1つ又は複数を含む、請求項1又は2に記載の診断システム又はキット。
【請求項21】
前記カルボキシリッチドメインの1つ又は複数が、ビタミンK依存性タンパク質、Glaドメインを含むそのフラグメント、又は修飾Glaドメインを含むそのフラグメント、の1つ又は複数のGlaドメインを含み
、前記修飾Glaドメインにおいて、Gla残基の1つ又は複数が、Glu、Asp、Glu-Glu、Glu-Asp、Asp-Glu又はAsp-Aspと置換されており、
前記抗体が、IgGであり、前記タンパク質が、第II因子、第VII因子、第X因子、プロテインC、プロテインZから選択され、前記界面複合体が、前記Fcフラグメントの各重鎖にクローニングした前記Glaドメインの1つ又は2つを含む、
請求項
20に記載の診断システム又はキット。
【請求項22】
生物医学的用途に使用するための酸化アルミニウム表面
を有する基材を再官能化するための界面分子の使用であって、前記界面分子が、分子体積2.2~25nm
3中に少なくとも5つの遊離カルボキシル基を
含む少なくとも1つのカルボキシリッチドメインを有するポリペプチドを含み、
前記カルボキシリッチドメインにおける遊離カルボキシル基の密度が1.15~9.09/nm
3
であり、前記遊離カルボキシル基が2つ以上のカルボキシ
ル基を含むアミノ酸によりもたらされる、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物医学的又は工業的用途に使用するための、生体分子、例えば、タンパク質を結合させるための酸化アルミニウム表面に関する。酸化アルミニウム表面は、診断試験、アフィニティーアッセイ、及び生体分子の複合混合物からの目的の生体分子の単離のような用途に有用である。
【背景技術】
【0002】
過去50年にわたって、生体分子の固定化の必要性は、著しく高まっている。生体分子を固定化する初期の取組みは、ELISAアッセイのような診断学を目的としたものであった。このようなアッセイでは、ポリマー表面、例えば、マイクロタイターディッシュに抗体を加えた。このような表面は、ポリスチレンであることが多かった。抗体が表面にランダムに吸着するため、固定化された抗体はわずか5~7%が活性であった。抗体が表面に配向され、これにより、Fabフラグメントが表面から離れる方向に方向づけられ、表面への実際の結合がFcフラグメントを介して生じた場合、ELISAアッセイの感度が、桁違いに高まり得ることが認識された。配向性固定化生体分子の必要性が、時間とともに高まっている。マイクロ流体デバイス、遺伝子及びタンパク質マイクロアレイ並びに免疫診断は、一般に、すべてが配向結合から恩恵を得る。さらなる解析技術、例えば、水晶マイクロバランス、表面プラズモン共鳴及びキャピラリー電気泳動は、すべてが配向結合の向上から恩恵を得る。アフィニティークロマトグラフィー及びアフィニティー分離のような工業プロセスでは、すべてのタンパク質が表面に規則正しく整列する場合、効率が向上している。このような分野のすべてにおいて同様に重要なことは、非特異性タンパク質の結合を防ぐ必要性である。
【0003】
酸化物へのタンパク質吸着は、バイオセラミクスの分野において非常に重要である。チタニア、アルミナ及びジルコニアは、医学的用途に使用される、さらに一般的な酸化物セラミクスの一部である。これらの優れた物質特性、例えば、耐腐食性、耐摩耗性、成体適合性及び機械的強度のため、このような物質は、医学及び歯学において、生体材料として使用されることが多い。酸化物へのタンパク質吸着では、多くの物質及び環境的側面、例えば、pH、微細構造、ゼータ電位及び表面反応性を考慮しなければならない。
【0004】
タンパク質及び他の成体分子、例えばDNA及びRNAは、特にこれらが荷電している場合、表面に容易に吸着する。吸着プロセスを向上させる試みは、表面を化学的又は物理的に活性化して、荷電部位の数を増加させることを含んでいる。高度に触媒性であるアルミナのような物質を考慮する場合、吸着したタンパク質は変性し得る。これが一般的現象であることを示す十分な証拠が文献に存在する(Murray及びLaband、1979;Murray、1980;Thurman及びGerba、1988;Bowen及びGan、1992)。吸着プロセスがランダムである傾向があるため、この吸着プロセスではまた、立体障害を生じ得る不適切な結合を生じる可能性がある。分子が不適切に配向されるか、又はこれらが密に詰まり過ぎている場合、立体障害が発生する。所望のタンパク質が表面を十分に被覆しない場合、非特異的結合は、重大な問題となり得る。
【0005】
ポリマーネットワーク、例えばヒドロゲルは、他の分子を溶解し得る水分を保持する。そして、このような分子は、反応に利用可能である。このような技術の欠点としては、薄膜の厚さ及び拡散プロセスが挙げられ、これらは緩慢な応答を生じ得る。その他は、薄いポリマー膜を使用して、アルミナのような表面をコーティングすることを試みている。ポリマーは、生体分子に共有結合するために使用されるペンダント基を露出している。この技術は、過度に厚い薄膜の問題を解決するのに役立つが、非特異的結合及び不十分な配向を生じ得る。
【0006】
ガラス及びシリカ表面では、生体分子を表面に共有結合させるための最も一般的な技術は、シラン処理(silanation)プロセスによる。このようなプロセスでは、トリエトキシシラン誘導体を表面に加え、ここで、エトキシ基が、ケイ素ヒドロキシ基(silicon hydroxide group)と表面で反応し、エタノールが放出されてシラン化(silated)表面が形成される。トリエトキシシラン誘導体中のケイ素は、表面特性を決定する基に結合する。この基が長鎖アルカンである場合、表面は疎水性となり、一方、この基がメチル基である場合、表面は親水性となる。次いで、このような基は、生体分子に共有結合させるために使用される。このような場合、生体分子は、抗体、抗原、DNA、RNA又はアビジンのような分子であり得る。Maoら(米国特許第8,178,602号)は、R-PEG-シランを使用したこのようなシステムを、表面を官能化する好ましい方法として示している。これらの例におけるR基は、ビオチン又はメトキシのいずれかである。Maoらが2つの表面修飾分子の混合を使用する場合、メトキシ成分は中性スペーサーであり、これは、立体障害を減少させ、ビオチンのより多くのアビジンへの結合を可能とする。Wagnerら(米国特許第6,596,545号)は、シランがリンカー分子のガラスへの結合に使用可能であること、又はチオールが含硫リンカー分子の金表面への結合に使用可能であることを示す。そして、このようなリンカーは、目的の生体分子に結合させることができる。Coyneら(米国特許第6,589,799号)は、支持マトリクス物質の表面ヒドロキシ基の活性化、及び活性化ヒドロキシ基のアルデヒドアルコキシシランとの反応を実証した。そのため、誘導体化アルデヒド支持マトリクス物質は、生体分子の固定化及び生物学的用途に有用であった。
【0007】
他の共有結合技術は、カリックスアレーンの使用を含む。はじめに金属の酸化表面をSiCl4と反応させて、塩化ケイ素表面を生成すると、この塩化ケイ素は、カリックスアレーンと反応して、表面に安定な構造を形成し得る。この構造は、これに共有結合する生体分子を有し得る(Katzら米国特許第6,951,690号)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
発明者は、酸化アルミニウム表面を確実に再官能化して、カルボキシリッチドメインを有する界面分子を生物医学的に適用し得ることを見出した。特に、界面分子は、分子体積2.2~25nm3中に少なくとも5つの遊離カルボキシル基をもたらす少なくとも1つのカルボキシリッチドメインを有するポリペプチドを含み、この遊離カルボキシル基が2つ以上のカルボキシ基を含むアミノ酸によりもたらされ、これによりこの界面分子が酸化アルミニウム表面に固定化される。界面分子を酸化アルミニウム表面に固定化し、生体分子又は架橋剤を界面分子に結合させる。この酸化アルミニウム/界面分子構造又はデバイスは、例えば、診断デバイス又はアフィニティーアッセイのための基礎を、生体分子がこの生物学的同一性を保持するようにもたらし、界面分子への結合を安定な方法で維持する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
広範な一態様において、本発明では、目的の解析物への結合に使用するためのデバイスを提供する。デバイスは、酸化アルミニウム表面及び酸化アルミニウム表面に固定化された界面分子を含む。界面分子は、分子体積2.2~25nm3中に少なくとも5つの遊離カルボキシル基をもたらす少なくとも1つのカルボキシリッチドメインを有するポリペプチドを含み、この遊離カルボキシル基が2つ以上のカルボキシ基を含むアミノ酸によりもたらされ、これによりこの界面分子が酸化アルミニウム表面に固定化される。
【0010】
i)解析物に結合させるための架橋剤、
ii)1つ又は複数の共有結合により界面分子に結合し、解析物に対して特異性の生体分子、
iii)界面分子に対して特異性の第1の抗原決定基を介して界面分子に結合し、解析物に対して特異性の第2の抗原決定基を有する、改変抗体の形態の生体分子、及び
iv)抗体のFcフラグメントを介して界面分子に結合し、解析物に対して特異性のFabフラグメントを有する、改変抗体の形態の生体分子
のうちの1つが、界面分子に結合する。
【0011】
また、本発明は、目的の解析物への結合に使用するための、酸化アルミニウム表面に固定化することが可能である、界面複合体に及ぶ。界面複合体は、分子体積2.2~25nm3中に少なくとも5つの遊離カルボキシル基をもたらす少なくとも1つのカルボキシリッチドメインを有するポリペプチドを含む界面分子を含み、この遊離カルボキシル基は2つ以上のカルボキシ基を含むアミノ酸によりもたらされ、これによりこの界面分子が酸化アルミニウム表面に固定化されることが可能である。界面分子は、
i)界面分子に結合した、目的の解析物に結合させるための架橋剤、
ii)1つ又は複数の共有結合により界面分子に結合し、目的の解析物に対して特異性の生体分子、
iii)界面分子に対して特異性の第1の抗原決定基を介して界面分子に結合し、目的の解析物に対して特異性の第2の抗原決定基を有する、改変抗体の形態の生体分子、及び
iv)抗体のFcフラグメントを介して界面分子に結合し、目的の解析物に対して特異性のFabフラグメントを有する、改変抗体の形態の生体分子
のうちの1つをさらに含む。
【0012】
広範な別の態様では、本発明では、目的の解析物に結合が生じたかどうかを試験するための診断システム又はキットを提供する。診断システム又はキットは、1)酸化アルミニウム表面、及び分子体積2.2~25nm3中に少なくとも5つの遊離カルボキシル基をもたらす少なくとも1つのカルボキシリッチドメインを有するポリペプチドを含む界面分子であり、この遊離カルボキシル基が2つ以上のカルボキシ基を含むアミノ酸によりもたらされ、これにより酸化アルミニウム表面に固定化されることが可能である、界面分子、並びに
2)i)界面分子に結合した、解析物に結合させるための架橋剤、
ii)1つ又は複数の共有結合により界面分子に結合し、解析物に対して特異性の生体分子、
iii)界面分子に対して特異性の第1の抗原決定基を介して界面分子に結合し、解析物に対して特異性の第2の抗原決定基を有する、改変抗体の形態の生体分子、及び
iv)抗体のFcフラグメントを介して界面分子に結合し、解析物に対して特異性のFabフラグメントを有する、改変抗体の形態の生体分子
のうちの1つを含む。
【0013】
上記のうちの一部の実施形態では、界面分子並びに(i)、(ii)、(iii)及び(iv)のうちの1つは、酸化アルミニウム表面に固定化される。他の実施形態では、界面分子並びに(i)、(ii)、(iii)及び(iv)のうちの1つは、界面複合体として形成されて、酸化アルミニウム表面に固定化する前に解析物と接触する。
【0014】
診断システム又はキットの一部の実施形態では、視覚的診断デバイスを提供する。酸化アルミニウム表面は、酸化アルミニウムの多孔質層により被覆された場合に発色することが可能な反射金属上に形成され、酸化アルミニウム表面は、多孔質の陽極酸化表面である。この方法、視覚的診断デバイスでは、試料と接触させて解析物について試験した場合、(i)が存在するとき架橋剤、又は(ii)、(iii)若しくは(iv)が存在するとき生体分子のいずれかに解析物が結合すると、色の変化が検出されて、解析物が存在することを表す。
【0015】
また、本発明は、目的の解析物に結合が生じたかどうかを試験する方法に広範に及ぶ。方法は、
a)固定化した界面分子を有する酸化アルミニウム表面を形成するステップであり、この界面分子が、分子体積2.2~25nm3中に少なくとも5つの遊離カルボキシル基をもたらす少なくとも1つのカルボキシリッチドメインを有するポリペプチドを含み、この遊離カルボキシル基が2つ以上のカルボキシ基を含むアミノ酸によりもたらされ、これによりこの界面分子が酸化アルミニウム表面に固定化され、この界面分子が、
i)解析物に結合させるための架橋剤、
ii)解析物に対して特異性の生体分子、
iii)界面分子に対して特異性の第1の抗原決定基を有し、目的の解析物に対して特異性の第2の抗原決定基を有する、改変抗体の形態の生体分子、
iv)抗体のFcフラグメントを介して界面分子に結合し、目的の解析物に対して特異性のFabフラグメントを有する、改変抗体の形態の生体分子
のうちの1つに結合している、ステップ、
b)a)の表面を試料と接触させて解析物について試験するステップ、並びに
c)a)の表面への解析物の結合時に解析物の存在を検出するステップ
を含む。
【0016】
一部の実施形態では、本発明は、目的の解析物に結合が生じたかどうかを試験する方法に広範に及ぶ。方法は、
a)酸化アルミニウム表面を形成するステップ、
b)酸化アルミニウム表面に結合させることが可能な界面複合体を形成するステップであり、この界面複合体が、分子体積2.2~25nm3中に少なくとも5つの遊離カルボキシル基をもたらす少なくとも1つのカルボキシリッチドメインを有するポリペプチドを含む界面分子を含み、この遊離カルボキシル基が2つ以上のカルボキシ基を含むアミノ酸によりもたらされ、これによりこの界面分子が酸化アルミニウム表面に固定化されることが可能であり、この界面分子が、
i)解析物に結合させるための架橋剤、
ii)解析物に対して特異性の生体分子、
iii)界面分子に対して特異性の第1の抗原決定基を有し、目的の解析物に対して特異性の第2の抗原決定基を有する、改変抗体の形態の生体分子、及び
iv)抗体のFcフラグメントを介して界面分子に結合し、目的の解析物に対して特異性のFabフラグメントを有する、改変抗体の形態の生体分子
のうちの1つに結合している、ステップ、
b)a)の界面複合体を試料と接触させて解析物について試験するステップ、
c)試料及びb)の界面複合体を酸化アルミニウム表面と接触させるステップ、並びに
d)解析物及び界面複合体の酸化アルミニウム表面への結合時に解析物の存在を検出するステップ
を含む。
【0017】
上記方法の一部の実施形態では、酸化アルミニウム表面は、酸化アルミニウムの多孔質層により被覆された場合に発色することが可能な反射金属上に形成され、酸化アルミニウム表面は、多孔質の陽極酸化表面である。この方法では、試料と接触させて解析物について試験した場合、(i)が存在するとき架橋剤、又は(ii)、(iii)若しくは(iv)が存在するとき生体分子のいずれかに解析物が結合すると、色の変化が検出されて、解析物が存在することを表す。
【0018】
上記デバイス、診断システム、キット又は方法の一部の実施形態では、カルボキシリッチドメインは、
分子体積2.2~25nm3中に少なくとも10個の遊離カルボキシル基、又は
分子体積2.2~25nm3中に少なくとも20個の遊離カルボキシル基、又は
分子体積2.2~17nm3中に少なくとも10個の遊離カルボキシル基、又は
分子体積2.2~17nm3中に少なくとも20個の遊離カルボキシル基、又は
分子体積7.0~17nm3中に少なくとも10個の遊離カルボキシル基、又は
分子体積7.0~17nm3中に少なくとも20個の遊離カルボキシル基
をもたらす。
【0019】
上記デバイス、診断システム、キット又は方法の一部の実施形態では、
架橋剤は、界面分子に共有結合するか、又は
生体分子は、架橋剤により界面分子に共有結合するか、又は
界面分子及び生体分子は、アミノ酸配列として改変されて、界面分子及び生体分子が、ペプチド結合により結合するか、又は
界面分子は、カルボキシリッチドメインを組み込んでいる、改変若しくは合成のタンパク質、ポリペプチド若しくは抗体であるか、又は
生体分子は、界面分子に対して特異性の第1の抗原決定基を有し、目的の解析物に対して特異性の第2の抗原決定基を有する、改変抗体であるか、又は
生体分子は、抗体のFcフラグメントを介して界面分子に結合し、目的の解析物に対して特異性のFabフラグメントを有する、改変抗体である。
【0020】
一部の実施形態では、架橋剤は、界面分子に共有結合する。他の実施形態では、生体分子は、架橋剤により界面分子に共有結合する。他の実施形態では、界面分子及び生体分子は、アミノ酸配列として改変されて、界面分子及び生体分子が、ペプチド結合により結合する。よりさらなる実施形態では、界面分子は、カルボキシリッチドメインを組み込んでいる改変タンパク質、ポリペプチド又は抗体である。
【0021】
一部の実施形態では、界面分子は、連続的若しくは非連続的コーティングとして、描出した点若しくは線として、又はアレイとして、酸化アルミニウム表面に形成される。
【0022】
一部の実施形態では、界面分子は、酸化アルミニウム表面に間隔をあけて配置された様々な種類の界面分子のうちの1つであり、生体分子が界面分子のうちの1種に結合している。
【0023】
一部の実施形態では、酸化アルミニウム表面は、粒子、粉末、薄膜、スライド、条片、ビーズ、磁気ビーズ、磁気粒子又はコーティングの形態の基材に形成される。
【0024】
一部の実施形態では、酸化アルミニウム表面は、アルミニウム金属又はアルミニウム合金のスパッタリング、蒸発、鋳造又は押出しにより形成され、これがさらに陽極酸化されて、多孔質の陽極酸化された酸化アルミニウム表面を形成する。
【0025】
一部の実施形態では、酸化アルミニウム表面は、酸化アルミニウムのRFスパッタリング、反応スパッタリング又は化学蒸着により基材上に形成される。
【0026】
一部の実施形態では、界面分子は、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、及びガンマ-カルボキシグルタミン酸(Gla)からなる群から選択されるアミノ酸のうちの1つ又は複数を含む。
【0027】
一部の実施形態では、界面分子は、ビタミンK依存性タンパク質、Glaドメインを含むそのフラグメント、又は修飾Glaドメインを含むそのフラグメントである。
【0028】
一部の実施形態では、界面分子及び生体分子は、カルボキシリッチドメインが、タンパク質、ポリペプチド、抗原、抗体、糖質、アプタマー又は脂質に含まれるように改変された分子として形成される。
【0029】
一部の実施形態では、カルボキシリッチドメインは、ビタミンK依存性タンパク質又はそのフラグメント若しくは誘導体のGlaドメインを含み、改変分子は、プロテインA、プロテインAのフラグメントB又はIgG分子を含む。
【0030】
一部の実施形態では、界面分子は、Gla残基の1つ又は複数がGlu、Asp、Glu-Glu、Glu-Asp、Asp-Glu又はAsp-Aspと置換されている、タンパク質、タンパク質のGlaドメイン、又はタンパク質の修飾Glaドメインであり、ここで、このタンパク質が、プロトロンビン、プロトロンビンのフラグメント1、プロテインS、凝固第IX因子、第X因子、第VII因子、プロテインC、マトリクスGlaタンパク質、及び骨Glaタンパク質からなる群から選択される。
【0031】
一部の実施形態では、生体分子は、抗体-抗原、抗体-ハプテン、酵素-基材、酵素-受容体、毒素-受容体、タンパク質-タンパク質、アビジン-ビオチン、アプタマー-アプタマー標的、及び薬物受容体-薬物からなる群から選択される結合対のメンバーである。
【0032】
また、本発明は、生物医学的用途に使用するための酸化アルミニウム表面を再官能化するための界面分子の使用であって、この界面分子が、分子体積2.2~25nm3中に少なくとも5つの遊離カルボキシル基をもたらす少なくとも1つのカルボキシリッチドメインを有するポリペプチドを含み、この遊離カルボキシル基が2つ以上のカルボキシ基を含むアミノ酸によりもたらされ、これによりこの界面分子が酸化アルミニウム表面に固定化されることが可能である、使用に及ぶ。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】ビタミンK依存性タンパク質プロトロンビン(PT)、第IX因子(FIX)、第X因子(FX)、第VII因子(FVII)、プロテインC(PC)、プロテインS(PS)、マトリクスGlaタンパク質(MGP)、及び骨Glaタンパク質(BGP)の構造ドメインを表す図である。凡例はタンパク質成分を示している。切断が生じて成熟タンパク質構造が生成される場合、タンパク質切断部位を細矢印により示し、酵素的活性化に関連づけられる場合、切断部位を太矢印により示す。Furie B及びFurie BCによる画像である(Furie及びFurie、1988)。
【
図2】プロトロンビンの3D構造を示す図である。タンパク質の6、7、14、16、19、20、25、26、29及び32番目の部位に位置する10個のGla残基が存在する(UnitProt Consortium、2017a)。これは、構造の基礎に8.3nm
3のカルボキシグルタミンドメイン(カルボキシリッチGlaドメイン)を形成し、ここでアルミナ表面への結合が生じる。
【
図3】ヒト凝固第IX因子の3D構造を示す図である。タンパク質の7、8、15、17、20、21、26、27、30、33、36及び40番目の部位に位置する12個のGla残基が存在する。さらなる金属結合部位は、1、2、47、48、50、64、235、237、240、242及び245番目である(UnitProt Consortium、2017b)。これは、構造の基礎に17.0nm
3のカルボキシグルタミンドメインを形成し、ここでアルミナ表面への結合が生じる。
【
図4】プロテインSの3D構造を示す図である。6、7、14、16、19、20、25、26、29、32及び36番目の部位に位置する11個のGla残基が存在する(UnitProt Consortium、2017c)。これは、構造の基礎に12.3nm
3のカルボキシグルタミンドメインを形成し、ここでアルミナ表面への結合が生じる。
【
図5】第II因子の修飾フラグメント1の3D構造を示す図である。タンパク質の6、7、14、16、19、20、25、26、29及び32番目の部位に位置する10個のAsp残基が存在する。これは、構造の基礎に8.7nm
3のカルボキシリッチドメインを形成し、ここでアルミナ表面への結合が生じる。
【
図6】第II因子の修飾フラグメント1の3D構造の表面電荷マップを示す図である。タンパク質の6、7、14、16、19、20、25、26、29及び32番目の部位に位置する10個のGla残基の代わりに10個のAsp残基が存在する。これは、構造の基礎にカルボキシリッチドメインを形成し、ここでアルミナ表面への結合が生じる。
【
図7】第II因子の修飾フラグメント1の3D構造を示す図である。タンパク質の6、7、14、16、19、20、25、26、29及び32番目の部位に位置するGla残基の代わりに10個の(Asp-Asp)残基が存在する。これは、構造の基礎に7.7nm
3のカルボキシリッチドメインを形成し、ここでアルミナ表面への結合が生じる。
【
図8】第II因子の修飾フラグメント1の3D構造の表面電荷マップを示す図である。タンパク質の6、7、14、16、19、20、25、26、29及び32番目の部位に位置する10個のGla残基の代わりに10個の(Asp-Asp)残基が存在する。これは、構造の基礎にカルボキシリッチドメインを形成し、ここでアルミナ表面への結合が生じる。
【
図9】第II因子の修飾フラグメント1の3D構造を示す図である。タンパク質の6、7、14、16、19、20、25、26、29及び32番目の部位に位置するGla残基に代わる10個の(Asp-Glu)残基が存在する。これは、構造の基礎に8.5nm
3のカルボキシリッチドメインを形成し、ここでアルミナ表面への結合が生じる。
【
図10】第II因子の修飾フラグメント1の3D構造の表面電荷マップを示す図である。タンパク質の6、7、14、16、19、20、25、26、29及び32番目の部位に位置する10個のGla残基に代わる10個の(Asp-Glu)残基が存在する。これは、構造の基礎にカルボキシリッチドメインを形成し、ここでアルミナ表面への結合が生じる。
【
図11】第II因子の修飾フラグメント1の3D構造を示す図である。タンパク質の6、7、14、16、19、20、25、26、29及び32番目の部位に位置する10個の(Glu-Asp)残基が存在する。これは、構造の基礎に12.5nm
3のカルボキシリッチドメインを形成し、ここでアルミナ表面への結合が生じる。
【
図12】第II因子の修飾フラグメント1の3D構造の表面電荷マップを示す図である。タンパク質の6、7、14、16、19、20、25、26、29及び32番目の部位に位置する10個のGla残基に代わる10個の(Glu-Asp)残基が存在する。これは、構造の基礎にカルボキシリッチドメインを形成し、ここでアルミナ表面への結合が生じる。
【
図13】第II因子の修飾フラグメント1の3D構造を示す図である。タンパク質の6、7、14、16、19、20、25、26、29及び32番目の部位に位置する10個の(Glu-Glu)残基が存在する。これは、構造の基礎に11.8nm
3のカルボキシリッチドメインを形成し、ここでアルミナ表面への結合が生じる。
【
図14】第II因子の修飾フラグメント1の3D構造の表面電荷マップを示す図である。タンパク質の6、7、14、16、19、20、25、26、29及び32番目の部位に位置する10個のGla残基に代わる10個の(Glu-Glu)残基が存在する。これは、構造の基礎にカルボキシリッチドメインを形成し、ここでアルミナ表面への結合が生じる。
【
図15】ウシ第II因子のフラグメント1の3D構造を示す図である。タンパク質の6、7、14、16、19、20、25、26、29及び32番目の部位に位置する10個のGla残基が存在する。これは、構造の基礎に7.0nm
3のカルボキシリッチドメインを形成し、ここでアルミナ表面への結合が生じる。
【
図16】ウシ第II因子のフラグメント1の3D構造の表面電荷マップを示す図である。タンパク質の6、7、14、16、19、20、25、26、29及び32番目の部位に位置する10個のGla残基が存在する。これは、構造の基礎にカルボキシリッチドメインを形成し、ここでアルミナ表面への結合が生じる。
【
図17】IgG重鎖のカルボキシ
ル末端に加えたヒト第II因子の修飾(Glaの代わりにAsp)フラグメント1の3D構造を示す図である。タンパク質の6、7、14、16、19、20、25、26、29及び32番目の部位に位置するGla残基の代わりに10個のAsp残基が存在する。これは、IgG構造の基礎に3.6nm
3のカルボキシリッチドメインを形成し、アルミナ表面への結合を可能とする。
【
図18】IgG重鎖のカルボキシ
ル末端に加えたヒト第II因子の修飾(Glaの代わりにAsp)フラグメント1の3D構造の表面電荷マップを示す図である。タンパク質の6、7、14、16、19、20、25、26、29及び32番目の部位に位置するGla残基の代わりに10個のAsp残基が存在する。これは、IgG構造の基礎にカルボキシリッチドメインを形成し、アルミナ表面への結合を可能とする。
【
図19】IgG重鎖のカルボキシ
ル末端に加えたヒト第II因子の修飾(Glaの代わりにGlu)フラグメント1の3D構造を示す図である。タンパク質の6、7、14、16、19、20、25、26、29及び32番目の部位に位置するGla残基の代わりに10個のGlu残基が存在する。これは、IgG構造の基礎に3.7nm
3のカルボキシリッチドメインを形成し、アルミナ表面への結合を可能とする。
【
図20】IgG重鎖のカルボキシ
ル末端に加えたヒト第II因子の修飾(Glaの代わりにGlu)フラグメント1の3D構造の表面電荷マップを示す図である。タンパク質の6、7、14、16、19、20、25、26、29及び32番目の部位に位置するGla残基の代わりに10個のGlu残基が存在する。これは、IgG構造の基礎にカルボキシリッチドメインを形成し、アルミナ表面への結合を可能とする。
【
図21】ヒト第II因子のフラグメント1の最初の35個のアミノ酸に結合したプロテインAのフラグメントBの3D構造を示す図である。タンパク質の6、7、14、16、19、20、25、26、29及び32番目の部位に位置する10個のGla残基が存在する。これは、フラグメントB構造の基礎に2.2nm
3のカルボキシリッチドメインを形成し、アルミナ表面への結合を可能とする。
【
図22】ヒト第II因子のフラグメント1の最初の35個のアミノ酸に結合するプロテインAのフラグメントBの3D構造の表面電荷マップを示す図である。タンパク質の6、7、14、16、19、20、25、26、29及び32番目の部位に位置する10個のGla残基が存在する。これは、フラグメントB構造の基礎にカルボキシリッチドメインを形成し、アルミナ表面への結合を可能とする。
【
図23】Gla(カルボキシリッチ)ドメインを介して表面に固定化したプロトロンビン(FII)界面分子を有する酸化アルミニウム表面を示す模式図である。FIIは、架橋剤、例えばグルタルアルデヒドを用いて修飾され、生体分子、例えば抗原を結合させる。抗原は、この特異性抗体に結合することが分かっている。実施例1は、この図を代表するものである。実施例1では、リンカーは、グルタルアルデヒドであり、抗原は、B型インフルエンザ由来であり、標的抗体は、抗B型インフルエンザ(Influenza B)ウイルスである。
【
図24】Glaドメインを介して表面に固定化したプロトロンビン(Frag 1)界面分子のフラグメント1を有する酸化アルミニウム表面を示す模式図である。Frag 1は、架橋剤を用いて修飾され、その特異性抗体に結合する抗原として示されている生体分子を結合させる。実施例5は、この図を代表するものであり、ここで、リンカーは、グルタルアルデヒドであり、抗原は、B型肝炎(Hepatitis B)ウイルス由来であり、標的抗体は、抗Hep B抗体である。
【
図25】Glaドメインを介して表面に固定化した第IX因子(FIX)界面分子を有する酸化アルミニウム表面を示す模式図である。FIXは、架橋剤を用いて修飾され、この特異性抗体に結合する抗原として示されている生体分子を結合させる。例えば、リンカーは、グルタルアルデヒドであってもよく、固定化抗原は、B型インフルエンザであってもよく、抗体は、抗B型インフルエンザであってもよい。
【
図26】FIIのFrag 1をその構造内に組み込ませるように改変したプロテインAのフラグメントBを固定化し、これによりGlaドメインが酸化アルミニウム表面に結合する、酸化アルミニウム表面を示す模式図である。プロテインAの改変フラグメントBは、この特異性抗原に結合する抗体として示されている生体分子に結合する界面分子を形成する。例えば、固定化抗体は、抗B型インフルエンザ由来であってもよく、抗原は、B型インフルエンザであってもよい。
【
図27】FIIのフラグメント1のGlaドメインをこのFc構造のカルボキシ
ル末端に組み込ませるように改変し、Glaドメインを介して表面に結合させた、抗体(IgG)を有する酸化アルミニウム表面を示す模式図である。改変抗体は、この特異性抗原に結合することが分かっている。例えば、Fabは、抗B型インフルエンザであってもよく、標的抗原は、B型インフルエンザ由来であってもよい。
【
図28】FIIのフラグメント1のGlaドメインをこのFc構造のカルボキシ
ル末端に組み込ませるように改変し、Glaドメインを介して表面に結合させた、抗体(IgG)を有する酸化アルミニウム表面を示す模式図である。改変抗体は、この特異性抗原に結合することが分かっている。2次抗体は、シグナルの増幅に使用され得る標的抗原に結合することが分かっている。2次抗体は、無修飾であり得るか、又は結合酵素若しくは放射標識により修飾してデバイス全体からシグナルを増幅し得る。例えば、Fabは、抗テストステロンであってもよく、標的抗原は、テストステロンであってもよく、増幅抗体は、抗テストステロンであってもよい。
【
図29】プロトロンビンのフラグメント1及びプロトロンビン(FII)の両方を、Glaドメインを介して表面に結合させた2種類の界面分子として有する、酸化アルミニウム表面を示す模式図である。架橋剤、例えばグルタルアルデヒドを加えて、生体分子、例えば抗原を結合させる。このデバイスでは、ある種の界面分子(Frag 1)を使用し、他方の界面分子(FII)との間のスペーサーとして作用させて、立体障害のような因子を減少させる。抗原、及び抗原に対して特異性の抗体(図示せず)は、立体障害が少なく、表面から最も遠い界面分子(FII)に結合する。例えば、固定化抗原は、Hep Bウイルス抗原であってもよく、抗原の結合後にリンカーキャッピング剤(例えばリジン)を加えて、非特異的なタンパク質の結合を防いでもよい。
【
図30A】界面分子及び抗体を含む界面複合体の使用を示す模式図である。複合体は、カルボキシリッチドメインをFc末端に有する改変抗体、又はカルボキシ
ル末端を介してカルボキシリッチドメインとFc共役し、試験試料中の解析物として抗原を捕捉するために使用される、抗体である。この種の改変抗体の例は、IgG抗体のFc末端に結合したビタミンK依存性タンパク質のGlaドメインである。抗原は、酸化アルミニウム表面と接触させ、これにより抗原に結合した改変抗体のカルボキシリッチドメインがアルミナ表面に結合することにより、溶液から分離する。
図30Aは、タンパク質の混合物を有する溶液中の改変抗体を示す。
【
図30C】
図30Cは、改変抗体-抗原複合体のカルボキシリッチドメインを介する酸化アルミニウム表面への結合を示す。
【
図30D】
図30Dは、酸化アルミニウム表面を溶液から除去することによる、目的のタンパク質の混合物からの分離を示す。酸化アルミニウム表面を視覚的診断デバイスとして形成すると、
図30Dにおいて、色の変化により抗原の結合が検出される。例として、Fabは、抗アルブミンであってもよく、標的タンパク質は、アルブミンであってもよい。
【
図31A】界面分子、例えば、プロトロンビン(FII)を固定化した酸化アルミニウム表面を示す模式図である。FII分子は、
図31Aに示すように、架橋剤、例えばグルタルアルデヒドを用いて修飾する。
【
図31C】試料中に解析タンパク質が存在すると、これは、
図31Cに示すように、界面分子のグルタルアルデヒドに結合する。
【
図31D】試料からの表面の除去では、
図31Dに示すように、架橋剤により界面分子に結合したタンパク質を除去する。酸化アルミニウム表面を視覚的診断デバイスとして形成すると、
図31Dにおいて、色の変化によりタンパク質の結合が検出される。
【
図32A】界面分子及び抗体を改変抗体として含む界面複合体を示す模式図である。界面分子、例えば第II因子のフラグメント1は、酸化アルミニウム表面に固定化する。抗体は、
図32Aに示すように、2つの異なるFab抗原決定基であるFab
1及びFab
2を用いて改変する。改変抗体は、当技術分野において公知の技術による、遺伝子改変又は湿式化学により生成することができる。Fab
1は、界面分子に対して特異性であり、これにより界面分子(例えば、抗プロトロンビンの抗トロンビン成分)に結合し、一方、Fab
2は、目的の解析物、例えば抗原に対して特異性である。
【
図32B】
図32Bは、酸化アルミニウム表面の界面分子、及びFab
1を介して界面分子に結合した改変抗体を示す。
【
図32C】
図32Cは、Fab
2を介して解析抗原に結合する改変抗体を示す。或いは、Fab
2は、抗体又はアプタマーのような結合対の部分として機能する、さらなる生体分子に結合させることができる。例えば、Fab
1は、抗トロンビンであってもよく、Fab
2は、抗前立腺特異性抗原であってもよく、一方、解析物は、前立腺特異性抗原である。
【
図33A】カルボキシリッチドメインを介して酸化アルミニウム表面に結合した2つの異なるサイズの界面分子(高及び低)の同時使用を示す模式図である。この配置は、2つの異なる生体分子が、例えば、アプタマーのような架橋剤により、界面分子に結合することを可能とする(
図33A)。リンカーは、1つの界面分子のバルク溶液、及び他の界面分子の分離溶液に加えることができる。例えば、高界面分子は、プロトロンビンであってもよく、低界面分子は、第II因子のフラグメント1であってもよい。
【
図33B】
図33Bでは、生体分子は、架橋剤により結合している。生体分子は、試料中の種々の抗体により認識される種々の抗原である。例えば、標的分子は、2つの異なるホルモン、例えばhCG及びLHであり得る。下部の層が、反射層の酸化アルミニウムであり、視覚的アッセイとして機能する場合、種々の抗体が結合すると、試料中に存在する抗体に応じて多重の配色が発生する。例えば、0は、抗体の非結合に対する色の非変化を表し、1又は2は、抗体1又は抗体2のいずれかの結合に対する色の変化を表し、3は、抗体1及び抗体1の両方の結合に対する色の変化を表す。他の実施形態では、生体分子は、抗体、アプタマー又は代替の結合対の成分であり得る。
【
図34A】ポリクローナル改変IgGの酸化アルミニウム表面への結合を示す模式図である。IgG分子は、Fcフラグメントのカルボキシ
ル末端に形成したカルボキシリッチドメインを用いて改変して、酸化アルミニウム表面に結合させる。
【
図34B】Fabフラグメントは、目的の抗原(
図34Bに示す配向1又は配向2)の種々のエピトープに結合させるためのFab
1及びFab
2として例示する。この方法では、Fabフラグメントは、それに対して発生した抗原に特異的に結合させることが可能である。ポリクローナル抗体を使用することにより、抗体の配向が重要因子ではないため、結合は早くなる。例えば、Fab
1は、前立腺特異性抗原(特異性部位/配向)のモノクローナル1であってもよく、Fab
2は、前立腺特異性抗原(特異性部位/配向)のモノクローナル2であってもよく、一方、解析物は、前立腺特異性抗原である。
【
図35A】酸化アルミニウム表面の界面分子をパターン化するための実施例を示す模式図である。
図35Aでは、アルミニウムは、当技術分野において公知のマスキング技術を使用して、線のパターンで表面にスパッタリングする。アルミニウムを、下部の支持体、例えばスライドの、タンタルの薄膜にスパッタリングする。次いで、アルミニウムを陽極酸化して、タンタル表面の酸化タンタルの層に酸化アルミニウムの層を形成し得る。陽極酸化が完了すると、酸化アルミニウム条片は、干渉色を発することが可能であり、この干渉色は、界面分子、生体分子及び生体分子に結合する解析物それぞれの添加時に変化する。干渉色の変化の検出は、可視スペクトル内で肉眼により、及び/又は可視スペクトル内若しくは可視スペクトル外で、適する検出器、カメラ等により検出することができる。一部の実施形態では、このような干渉色の変化のようなパターンは、下部の反射層の連続的酸化アルミニウム膜に線又はパターンとして界面分子をプリントすることにより達成することができる。
【
図35B】酸化アルミニウム表面の界面分子をパターン化するための実施例を示す模式図である。
【
図36A】バーコードリーダーにより読み取るためのアレイ、アッセイ、患者等に関する情報を含むバーコードとともに、
図35A、35Bに提示するように試験部位を線又はアレイでプリントした本発明による診断デバイスの実施形態を示す図である。
【
図36B】スマートフォンにより読み取るためのアレイ、アッセイ、患者等に関する情報を含むQRコードとともに、
図35A、35Bに提示するように試験部位を線又はアレイでプリントした本発明による診断デバイスの実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本明細書及び特許請求の範囲において使用する、ある特定の用語を以下に定義し、明らかとする。
【0035】
用語「生体分子」は、生体系と相互作用する分子を含む。一般には、生体分子(又は生物学的分子)は、生物に存在する分子又はイオンを表す用語である。生体分子は、大型の高分子(又はポリアニオン)、例えば、タンパク質、糖質、脂質及び核酸(アプタマー)、又はこれらの誘導体若しくはフラグメントを含む。また、生体分子は、低分子、例えば、1次代謝物、2次代謝物、天然物及びこれらの誘導体を含む。生体分子は、通常、内因性であるが、外因性であってもよい。例えば、医薬品は、天然物若しくは半合成(バイオ医薬品)であってもよく、又はこれらは、完全に合成であってもよく、このようなものとして、生体分子の用語に含まれる。また、生体分子は、合成のタンパク質、ポリペプチド及びペプチド、合成のDNA又はRNA、合成脂質並びに合成糖質に及ぶ。
【0036】
用語「アルミナ」及び「酸化アルミニウム」は、本明細書において同義的に使用し、酸化物が、天然か、又は例えばスパッタリング若しくは陽極酸化して酸化アルミニウムを形成することにより形成されたものかにかかわらず、アルミニウム又はアルミニウム金属合金の表面に形成された酸化物を含む。酸化アルミニウム表面は、基材又は支持体、例えば、粒子、粉末、ビーズ、磁気ビーズ若しくは粒子、薄膜、スライド、条片、フィルター又はコーティングに形成し得る。酸化アルミニウム表面は、アルミニウム金属又はアルミニウム合金のスパッタリング、RFスパッタリング、反応スパッタリング、化学蒸着、蒸発、鋳造又は押出しにより形成してもよく、さらに陽極酸化して多孔質の陽極酸化された酸化アルミニウム表面を形成してもよい。
【0037】
用語「生体同一性」及び「生物学的同一性」は、同義的に使用して、他の生体分子、細胞又は組織への結合に対して、それを認識可能又は特異的とする、生体分子の構造的及び化学的特性を指す。例えば、抗原を固定化する場合、動物モデル、in vitroシステム又は計算的モデルにおいて、この抗原に対して発生した抗体が、抗体が溶液中で遊離しているときに有するものと同一の特異性及び感受性で抗原と結合すると、この生体同一性を保持していると言う。本明細書において使用する場合、生体同一性は、生体分子、例えば酵素において生物学的活性を保持することを必ずしも必要とせず、生体分子が、なお認識されれば十分である。
【0038】
用語「ドメイン」は、タンパク質又はポリペプチドの他の部分から機能、特性又は構造により同定可能な、タンパク質又はポリペプチド内のアミノ酸の基を指す。
【0039】
用語「固定化」又は「固定化する」は、本明細書において使用する場合、化学的結合によるか否かにかかわらず、1つ又は複数の界面分子の酸化アルミニウム表面への結合又は接着を指す。
【0040】
用語「共有結合(covalent binding)」、「共有結合(covalent bonding)」及び「架橋」は、界面分子と生体分子との間の共有結合の形成を指すために本明細書において使用する。典型的には、生体分子がポリペプチドである場合、界面分子は、架橋剤により共有結合する。或いは、生体分子を含むように界面分子を改変する場合、共有結合は、ペプチド結合による。
【0041】
用語「ポリペプチド」は、ペプチド結合により結び付いているアミノ酸の鎖を指し、本明細書において使用する場合、天然又は改変にかかわらず、タンパク質、このようなタンパク質のフラグメント、及びこのようなタンパク質又はフラグメントに由来するアミノ酸配列を含む。
【0042】
用語「試料」は、本明細書において使用する場合、目的の1つ又は複数の解析物を含むことが疑われる任意の生体物質又は環境物質を含み、解析物についての試験が陰性となるような、解析物を欠く試料を含む。生体試料は、例えば、体液、及び食品等の有機物を含む。体液は、例えば、全血、血漿、血清、痰、脳脊髄液、胸水、組織、糞便物質等を含む。環境試料は、例えば、土壌、汚泥、水等を含む。試料は、細胞が存在する場合、処理され、例えば、遠心分離、抽出及び/又は溶解され得る。或いは、試料は、診断デバイスに接触させて直接配置し得る。
【0043】
本発明によれば、酸化アルミニウム表面は、生物医学的用途に使用するため、表面に固定化することが可能である界面分子により再官能化される。一部の実施形態では、界面分子は、架橋剤に結合させることにより活性化することができ、次いで、これを使用して、試験試料中の目的の解析物に結合させることができる。他の実施形態では、界面分子は、生体分子に結合させることができ、次いで、これを(直接又は間接的に)使用して、試験試料中の目的の解析物に結合させることができる。一部の実施形態では、生体分子は、架橋剤、又は共有結合、例えば、ペプチド結合のいずれかにより、界面分子に共有結合させる。界面分子及び生体分子は、界面複合体として、ともに改変し得る。他の実施形態では、生体分子は、例えば、界面分子に対して特異性の1つの抗原決定基、及び試験試料中の目的の解析物若しくは別の生体分子に対して特異性の第2の抗原決定基を有する、改変抗体であり得る。他の実施形態では、生体分子は、抗体のFcフラグメントを介して界面分子に結合し、目的の解析物に対して特異性のFabフラグメントを有する、改変抗体であり得る。
【0044】
界面分子は、分子体積2.2~25nm3中に少なくとも5つの遊離カルボキシル基をもたらす少なくとも1つのカルボキシリッチドメインを有するポリペプチドを含む。遊離カルボキシル基は2つ以上のカルボキシ基を含むアミノ酸によりもたらされ、これにより界面分子が酸化アルミニウム表面に固定化される。結合した生体分子は、界面分子に結合している場合、この生物学的同一性を保持する。
【0045】
明確にするために、本明細書及び特許請求の範囲において定義する場合、界面分子が生体分子へ結合したことにより生じる複合体は、ビタミンK依存性タンパク質、例えばプロトロンビンの最終産物を除外する。
【0046】
一部の実施形態では、カルボキシリッチドメインは、分子体積2.2~25nm3中に少なくとも10個の遊離カルボキシル基、又は分子体積2.2~25nm3中に少なくとも20個の遊離カルボキシル基、又は分子体積7.0~20nm3中に少なくとも10個の遊離カルボキシル基、又は分子体積7.0~17nm3中に少なくとも20個の遊離カルボキシル基をもたらす。
【0047】
i)界面分子又は生体分子との界面複合体
本発明によれば、1つ又は複数のカルボキシリッチドメインを介して酸化アルミニウム表面に対する特に高度な親和性を有する界面分子は、例えば、連続的若しくは非連続的コーティングとして、描出した点若しくは線として、又はアレイとして、酸化アルミニウム表面に固定化される。界面分子は、適する溶媒中の界面分子の溶液から酸化アルミニウム表面にコーティングとして固定化された後、溶媒を除去することができる。一般には、界面分子は、アミノ酸、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)及びガンマ-カルボキシグルタミン酸(Gla)のうちの1つ又は複数を含んで、カルボキシリッチドメイン(複数可)を形成する。界面分子の例は、ビタミンK依存性タンパク質、カルボキシリッチGlaドメインを含むそのフラグメント、修飾Glaドメインを含むそのフラグメント、又は1つ又は複数のカルボキシリッチドメインを形成する合成ペプチドである。界面分子及び生体分子は、カルボキシリッチドメインが、タンパク質、ポリペプチド、抗原、抗体、糖質、アプタマー又は脂質に含まれるように改変された分子として形成され得る。例えば、カルボキシリッチドメインは、ビタミンK依存性タンパク質又はそのフラグメント若しくは誘導体の1つ又は複数のGlaドメインを含んでもよく、改変分子は、生体分子、例えば、プロテインA、プロテインAのフラグメントB、又はIgG分子を含んでもよい。
【0048】
1つ又は複数のカルボキシリッチドメインを合成ペプチドとしての界面分子において形成する実施形態では、カルボキシ基を含むアミノ酸は、合成ペプチド中に位置し、間隔をあけて配置して、十分な遊離カルボキシル基を、フォールドした合成ペプチドの表面に露出し、これにより、これらが酸化アルミニウム表面への固定化に確実に利用可能となる。遊離カルボキシル基をフォールドした合成ペプチドの表面に露出するようにフォールドする能力は、以下の実施例において実証するように、分子モデルにより容易に確認することができる。
【0049】
界面分子のサイズは、固定化した界面及び生体分子の特定の用途に応じて変化する。例えば、生体分子が、Fcフラグメントに組み込まれた界面分子を有する改変抗体である場合、界面分子は、好ましくは、サイズ指定して立体障害を制限する。例えば、約50kDのサイズの重鎖を有する抗体では、界面分子は、好ましくは、例えば約30kD未満の小型のサイズを有し、界面分子の1つ又は複数のカルボキシリッチドメインの部分、Glaドメインの部分、又は修飾Glaドメインの部分のそれぞれは、約50個の連続的アミノ酸中に少なくとも5つの遊離カルボキシル基をもたらす。この界面分子をIgG分子に応じてサイズ指定する例は、以下の実施例14及び16~19に示す。
【0050】
酸化アルミニウム表面からの距離は、界面分子のサイズを変更することにより調節することができる。プロトロンビンは、固定化された実体を、表面から約10nm離れて保持し、一方、プロトロンビンのフラグメント1ドメインは、固定化された実体を、表面から約3nm離れて保持する。適するリンカーを使用して距離を変更することができ、分子は、表面から約1nm~約40nm離れて保持する。
【0051】
界面分子は、例えば、
図29に示すように、酸化アルミニウム表面に間隔をあけて配置された様々な種類の界面分子を含んで、立体障害を減少させることができる。
図29に示すように、プロトロンビンは、プロトロンビンのフラグメント1から離れて間隔をあけて配置する。プロトロンビンは、生体分子、例えば抗原に結合させる。
【0052】
酸化アルミニウム表面に固定化された界面分子は、架橋剤により活性化して、目的の解析物に結合させるか(
図31のように)、又は生体分子に結合させることができる。或いは、生体分子及び界面分子は、架橋剤を使用して複合体として予め会合させ、次いで、この複合体を酸化アルミニウム表面に固定化する。或いは、界面分子及び生体分子は、遺伝子改変又は湿式化学により、例えば、抗原又は抗体を、分子の末端に結合するカルボキシリッチドメインの適切な結合配列(例えば、ヒトプロトロンビンの最初の32個のアミノ酸:Ala-Asn-Thr-Phe-Leu-Gla-Gla-Val-Arg-Lys-Gly-Asn-Leu-Gla-Arg-Gla-Cys-Val-Gla
-Gla-Thr-Cys-Ser-Tyr-Gla-Gla-Ala-Phe-Gla-Ala-Leu-Gla-XXX
(配列番号1))を用いて大規模に形成することにより、形成する。
【0053】
一部の実施形態では、界面分子は、連続的若しくは非連続的コーティングとして、描出した点若しくは線として、又はアレイとして、酸化アルミニウム表面に形成される。一部の実施形態では、酸化アルミニウム表面は、粒子、粉末、薄膜、スライド、条片、フィルター、ビーズ、磁気ビーズ、磁気粒子、又はコーティングの形態の基材に形成される。
【0054】
ビタミンK依存性タンパク質を含む、いくつかのGla含有タンパク質:第II因子、第VII因子、第IX因子、第X因子、プロテインC、プロテインS、プロテインZ、オステオカルシン、マトリクスGlaタンパク質(MGP)、骨Glaタンパク質(BGP)、GAS6ペリオスチン、2つの膜貫通Glaタンパク質(TMGP)、及び2つのプロリンリッチGlaタンパク質(PRGP)が存在する。このようなGlaドメインタンパク質のうちの一部の構造を
図1に示す。配列表は、第II因子(プロトロンビン)を配列番号1に、第IX因子を配列番号2に、プロテインSを配列番号3に提供する。各タンパク質の電荷質量比は、これらのタンパク質を低濃度で基材の表面に拡散する方法に重要な役割を果たす。発明者は、遊離カルボキシル基の数、位置及び密度が、タンパク質の酸化アルミニウム表面への結合に重要であることを判定した。特には、以下に提示するように、発明者は、界面分子の、カルボキシリッチドメインの体積、及びカルボキシリッチドメイン中の遊離カルボキシル基(-COOH)の密度が、界面分子の酸化アルミニウム表面への結合を判定する因子であることを確立した。
【0055】
プロトロンビンのフラグメント1のGlaドメインの体積は、コンピュータソフトウェアを使用して確立した。I-Tasserにより生成したモデルを、Molsoft ICM-Proで開いた。目的のタンパク質領域を選択し、他の領域を隠した。表示設定下では、2つの原子間の距離を測定するオプションを選択した。次いで、2つのポイントを選択して、目的の領域の長さ、幅、及び高さの寸法を生成した。このような寸法の生成物により、分子に応じて、Glaドメイン又は荷電領域の体積がもたらされた。同一のソフトウェアを使用して、次いで、以下の表1に示すように、天然に存在するタンパク質、プロテインS、FIX及びウシプロトロンビンのフラグメント1のカルボキシリッチドメインについて、遊離カルボキシル基の体積及び密度を確立した。同様に、表1に示すように、及び以下にさらに十分に記載するように、様々な合成カルボキシリッチドメインについて、プロトロンビンのGlaドメインの基礎構造に基づいて体積及び遊離カルボキシル基の密度を確立した。このような体積は、2.2~17nm
3の範囲であり、遊離カルボキシル基の密度は、1.15~9.09/nm
3の範囲であった。体積範囲は、天然に存在するFIX(17nm
3)及び2つの天然に存在するドメインの融合タンパク質、プロトロンビンのGlaドメイン及びプロテインA由来のフラグメントBドメイン(2.2nm
3)で挟まれていることが見出された。合成カルボキシリッチドメインの体積は、このような2つのタンパク質間の範囲に存在する。密度範囲は、合成カルボキシリッチドメイン(以下に記載するFII-frag 1-Asp、1.15COOH/nm
3)及び2つの天然に存在するドメインの融合タンパク質、プロトロンビンのGlaドメイン及びプロテインA由来のフラグメントBドメイン(9.09COOH/nm
3)で挟まれており、他のカルボキシリッチドメインの例は、このようなタンパク質間の範囲に存在する。表1の密度に体積を乗じることにより、カルボキシリッチドメイン中の遊離カルボキシル基の数がもたらされる。これは、遊離カルボキシル基10~24個の範囲である。合成タンパク質構築物(
図5~14を参照)の第II因子のフラグメント1(
図2及び
図15~16)に対する比較は、基本構造が、一般的クラスタにおいて露出されたカルボキシ
ル基により維持されていることを示す。これは、合成構築物によりカルボキシリッチドメインが形成されて、天然ビタミンK依存性分子とほぼ同一の方法で酸化アルミニウム表面に結合することを示す。
【0056】
分子モデリング研究を含む、以下及びさらに確立された実施例に基づいて、酸化アルミニウム表面に結合させるためのカルボキシリッチドメインは、分子体積2.2~25nm3中に少なくとも5つの遊離カルボキシル基、又は分子体積2.2~25nm3中に少なくとも10個の遊離カルボキシル基、又は分子体積2.2~25nm3中に少なくとも20個の遊離カルボキシル基、又は分子体積2.2~17nm3中に少なくとも10個の遊離カルボキシル基、又は分子体積2.2~17nm3中に少なくとも20個の遊離カルボキシル基、又は分子体積7.0~17nm3中に少なくとも10個の遊離カルボキシル基、又は分子体積7.0~17nm3中に少なくとも20個の遊離カルボキシル基をもたらす。
【0057】
ヒトプロトロンビンは、NH2末端ドメイン中に10個のγカルボキシグルタミン酸(Gla)残基を含む。Gla残基は、付属する対において、又は相互にごく接近して生じる(残基6、7、16、19、20、25、26、29、32)(Walz DAら、1977;UnitProt Consortium、2017a)。20個の遊離カルボキシル基を有する、このような10個のGla残基は、8.3nm3の空間を占める。これは、1nm3あたりカルボキシ基2.4個の密度を付与する。プロトロンビンは、Ca2+に対する高親和性の金属結合部位を有する。このような結合部位は、ポリペプチド鎖中の2つのGla残基により形成され、これは単結合金属イオンを共有する。分子間架橋が形成され、タンパク質の3次構造を安定化する。プロトロンビンのNH2末端ドメインにおける高濃度のGla残基は、界面分子としてアルミナ表面とともに使用する場合、酸化アルミニウムへの特異的配向による着実な結合をもたらす。
【0058】
図2は、プロトロンビンの3次元構造を示し、これは、タンパク質構造の限局(8.3nm
3)部分へのGlaドメインの局在化を例示する。Glaは他のアミノ酸と比較してアルミナ表面に対して高い親和性を有するため、本発明の界面分子のように、プロトロンビンは、酸化アルミニウム表面にGlaドメインにおいて結合することが見出される。プロトロンビンは、72,000Daの分子量、4.7~4.9の範囲の等電点、及び約1μmol/Lの解離定数を有する(Bajajら、1975;Kotkowら、1993;Mann、1976;UnitProt Consortium、2017a)。
【0059】
ヒトプロトロンビンは、フラグメント1、フラグメント2及びトロンビンからなる3ドメインタンパク質である。Gla残基(10個)は、すべてフラグメント1に位置する。これは、155個のアミノ酸残基からなる(ヒト)。Gla残基は、すべて最初の32個のアミノ酸残基に位置する。したがって、この部分は、アルミナ基材に対して高い親和性を有する。20個の遊離カルボキシル基を有する、このような10個のGla残基は、8.3nm3の空間を占める。これは、1nm3あたりカルボキシ基2.4個の密度を付与する。
【0060】
界面分子のカルボキシリッチドメインは、以下及び続く実施例に提示するように、ビタミンK依存性タンパク質又はビタミンK依存性タンパク質のフラグメントのGlaドメインを修飾することにより形成することができる。修飾は、当業者に周知の遺伝子改変技術、又は湿式化学により達成することができる。
【0061】
第II因子のフラグメント1は、ジカルボキシアミノ酸、例えばアスパラギン酸により修飾することができる。これは、
図5に示し、ここでは、タンパク質の6、7、14、16、19、20、25、26、29及び32番目の部位に位置する10個のAsp残基が存在する。これは、構造の基礎に8.7nm
3のカルボキシリッチドメインを形成し、ここでアルミナ基材への結合が生じる。このような10個のAsp残基は、10個の遊離カルボキシル基を有し、8.7nm
3の空間を占める。これは、1nm
3あたりカルボキシ基1.15個の密度を付与する。第II因子の修飾フラグメント1の3D構造の表面電荷マップ(
図6)は、アルミナへの結合を促進するカルボキシリッチドメインにおける表面電荷密度を示す。
【0062】
第II因子のフラグメント1は、1対のジカルボキシアミノ酸、例えばアスパラギン-アスパラギン酸により修飾することができる。
図7では、タンパク質の6、7、14、16、19、20、25、26、29及び32番目の部位に位置するGla残基の代わりに10個の(Asp-Asp)残基が存在する。これは、構造の基礎に7.7nm
3のカルボキシリッチドメインを形成し、ここでアルミナ基材への結合が生じる。20個の遊離カルボキシル基を有する、このような20個のAsp残基は、8.7nm
3の空間を占め、1nm
3あたりカルボキシ基2.60個のカルボキシ密度を有する。第II因子の修飾フラグメント1の3D構造の表面電荷マップ(
図8)は、アルミナへの結合を促進するカルボキシリッチドメインにおける表面電荷密度を示す。
【0063】
第II因子のフラグメント1は、1対のジカルボキシアミノ酸、例えばアスパラギン-グルタミン酸により修飾することができる。
図9では、タンパク質の6、7、14、16、19、20、25、26、29及び32番目の部位に位置するGla残基の代わりに10個の(Asp-Glu)残基が存在する。これは、構造の基礎に8.5nm
3のカルボキシリッチドメインを形成し、ここでアルミナ基材への結合が生じる。20個の遊離カルボキシル基を有する、このような10個のAsp-Glu残基は、8.5nm
3の空間を占め、1nm
3あたりカルボキシ基2.35個のカルボキシ密度を有する。第II因子の修飾フラグメント1の3D構造の表面電荷マップ(
図10)は、アルミナへの結合を促進するカルボキシリッチドメインにおける表面電荷密度を示す。
【0064】
第II因子のフラグメント1は、1対のジカルボキシアミノ酸、例えば、グルタミン-アスパラギン酸により修飾することができる。
図11では、タンパク質の6、7、14、16、19、20、25、26、29及び32番目の部位に位置するGla残基の代わりに10個の(Glu-Asp)残基が存在する。これは、構造の基礎に12.5nm
3のカルボキシリッチドメインを形成し、ここでアルミナ基材への結合が生じる。20個の遊離カルボキシル基を有する、このような10個のGlu-Asp残基は、12.5nm
3の空間を占め、1nm
3あたりカルボキシ基1.60個のカルボキシ密度を有する。第II因子の修飾フラグメント1の3D構造の表面電荷マップ(
図12)は、アルミナへの結合を促進するカルボキシリッチドメインにおける表面電荷密度を示す。
【0065】
第II因子のフラグメント1は、1対のジカルボキシアミノ酸、例えば、グルタミン-アスパラギン酸により修飾することができる。
図13では、タンパク質の6、7、14、16、19、20、25、26、29及び32番目の部位に位置するGla残基の代わりに10個の(Glu-Glu)残基が存在する。これは、構造の基礎に11.8nm
3のカルボキシリッチドメインを形成し、アルミナ基材への結合が生じる。20個の遊離カルボキシル基を有する、このような10個のGlu-Glu残基は、11.8nm
3の空間を占め、1nm
3あたりカルボキシ基1.69個のカルボキシ密度を有する。第II因子の修飾フラグメント1の3D構造の表面電荷マップ(
図14)は、アルミナへの結合を促進するカルボキシリッチドメインにおける表面電荷密度を示す。
【0066】
ウシプロトロンビンは、フラグメント1、フラグメント2及びトロンビンからなる3ドメインタンパク質である。
図15は、Gla残基(10個)が、すべてフラグメント1に位置することを示す。これは、156個のアミノ酸からなる。Gla残基は、すべて最初の33個のアミノ酸残基に位置する。この部分は、アルミナ基材に対して高い親和性を有する。20個の遊離カルボキシル基を有する、このような10個のGla残基は、7.0nm
3の空間を占める。これは、1nm
3あたりカルボキシ
ル基2.86個の密度を付与する。第II因子のウシフラグメント1の3D構造の表面電荷マップ(
図16)は、アルミナへの結合を促進するカルボキシリッチドメインにおける表面電荷密度を示す。
【0067】
界面分子及び生体分子は、カルボキシリッチドメインが、タンパク質、ポリペプチド、抗原、抗体、糖質、アプタマー又は脂質に含まれるような方法で、当業者に周知の遺伝子改変技術により、改変分子として形成することができる。例えば、ヒト第II因子のフラグメント1、又はGlaドメインを含むビタミンK依存性タンパク質のフラグメントをIgG重鎖のカルボキシ末端に加えて、IgG構造の基礎にカルボキシリッチドメインを形成することができ、改変抗体のアルミナ基材への結合を可能とする。同様に、合成抗原は、カルボキシリッチドメインを目的の抗原の配列に加えることにより生成してイムノアッセイを行うことができる。例えば、5~7種のデング(Dengue)ウイルス血清型が存在し、各血清型に対して特異性の合成抗原を、カルボキシリッチドメインを用いて改変することができる。酸化アルミニウム表面に多重のパターンで配置すると、疾患を迅速に診断することができる。
【0068】
ヒト第II因子の修飾(Glaの代わりにAsp)フラグメント1は、
図17に示すように、IgG重鎖のカルボキシ
ル末端に加えることができる。修飾フラグメント1タンパク質の6、7、14、16、19、20、25、26、29及び32番目の部位に位置するGla残基の代わりに10個のAsp残基が存在する。これは、IgG構造の基礎に3.6nm
3のカルボキシリッチドメインを形成し、アルミナ基材への結合を可能とする。これは、1nm
3あたりカルボキシ
ル基3.03個の密度を有するドメインを生じる。IgG重鎖のカルボキシ
ル末端に加えた、ヒト第II因子の修飾(Glaの代わりにAsp)フラグメント1の3D構造の表面電荷マップ(
図18)は、アルミナへの結合を促進するカルボキシリッチドメインにおける表面電荷密度を示す。
【0069】
ヒト第II因子の修飾(Glaの代わりにGlu)フラグメント1は、
図19に示すように、IgG重鎖のカルボキシ末端に加えることができる。タンパク質の6、7、14、16、19、20、25、26、29及び32番目の部位に位置するGla残基の代わりに10個のGlu残基が存在する。これは、IgG構造の基礎に3.7nm
3のカルボキシリッチドメインを形成し、アルミナ基材への結合を可能とする。これは、1nm
3あたりカルボキシ基2.70個の密度を有するドメインを生じる。IgG重鎖のカルボキシ末端に加えた、ヒト第II因子の修飾(Glaの代わりにGlu)フラグメント1の3D構造の表面電荷マップ(
図20)は、アルミナへの結合を促進するカルボキシリッチドメインにおける表面電荷密度を示す。
【0070】
プロテインAのフラグメントBドメインは、ヒト第II因子のフラグメント1の最初の32個のアミノ酸に結合させることができる。タンパク質の6、7、14、16、19、20、25、26、29及び32番目の部位に位置する10個のGla残基が存在する。これは、フラグメントB構造の基礎に2.2nm
3のカルボキシリッチドメインを形成し、アルミナ基材への結合を可能とする。これは、1nm
3あたりカルボキシ基9.09個を有するドメインを生じる。ヒト第II因子のフラグメント1の最初の32個のアミノ酸に結合するプロテインAのフラグメントBの3D構造の表面電荷マップ(
図22)は、アルミナ基材への結合を可能とするフラグメントB構造の基礎のカルボキシリッチドメインにおける表面電荷密度を示す。
【0071】
ヒト第IX因子(hFIX)は、ビタミンK依存性血漿セリンプロテアーゼであり、これは、血液凝固の内因性経路に関与する。このプレプロチモーゲン形態では、このhFIXは、461個のアミノ酸からなる。この成熟構造への生合成において、このプレペプチド及びプロペプチドを除去する。成熟hFIXは、NH
2末端の付近に12個のGla残基を含み、Glaリッチドメインを生じる。タンパク質のこの領域は、金属イオンに対する親和性を有する膜アンカードメインである(Furie&Furie、1988;1992;Furieら、1979)。また、アルミナ基材表面に対して親和性を有し得る12個の他の金属結合部位が存在する(UnitProt Consortium、2017b)。
図3は、hFIXの3次元構造を示す。画像により、金属に対する高い親和性を有するGlaリッチドメインが同定される。このドメインは、17.0nm
3の体積を有し、アルミナ基材への結合が生じる構造の基礎に位置する。このドメイン中に24個のカルボキシ基が存在し、これは1nm
3あたりカルボキシ基1.4個の密度を付与する。
【0072】
hFIXのアルミナ基材への結合配向は、Glaドメインにおいて行われる。この配向では、タンパク質は、幅広い基礎を有し、このため構造的に安定である。これは、hFIXタンパク質が配向を変更する可能性が低いため、結合配向が着実であることを示唆する。これは、予測可能で着実な結合配向により固定化タンパク質の一貫した特性が生じるために望ましい。第IX因子は、55,000Daの分子量、4.2~4.5の範囲の等電点、及び<1.0μmol/Lの解離定数を有する(Amphlettら、1978;Nelsestuenら、1978;Thompson、1986;UnitProt Consortium、2017b)。
【0073】
プロテインSは、凝固第V/Va因子及び第VIIIa因子の分解において、活性化プロテインC(APC)に対する非酵素的共同因子として作用する糖タンパク質である。このプロテインSは、NH
2末端付近に11個のGla残基を有し、これは、膜結合に重要であり、アルミナ基材への結合部位である。プロテインSは、69,000Daの分子量、5.0~5.5の範囲の等電点を有し、解離定数は0.005μmol/Lである(Lundwallら、1986;Walker、1981;Sugoら1986;UnitProt Consortium、2017c)。
図4は、プロテインSの3次元構造及びGlaドメインの概略位置(残基42~87)を示す。Glaドメインは、NH
2末端付近に接近して位置し、これが、構造の外部に露出し、タンパク質のアルミナ基材への結合部位であることを示唆する。これは、構造の基礎に12.3nm
3のカルボキシグルタミンドメインを形成し、ここでアルミナ基材への結合が生じる。このドメイン中に22個のカルボキシ基が存在し、これは1nm
3あたりカルボキシ基1.79個の密度を付与する。
【0074】
【0075】
ii)酸化アルミニウム表面
酸化アルミニウム表面は、か焼アルミナ、種々の遷移アルミナ(例えば、ガンマ、イータ、デルタ)、酸化水酸化アルミニウム(例えばベーマイト)、及び非晶質アルミナ(例えば、アルミニウムの天然酸化物、陽極酸化アルミニウム及びアルミニウム合金)を含む、酸化及び水酸化アルミニウムの形態をとり得る。一般には、界面分子への結合は、プロトン化表面水酸基とのリガンド交換、又は正荷電表面部位、例えば、露出したアルミニウムイオン及びポリアニオン基間の静電引力により、カチオン性表面部位に生じる。
【0076】
酸化アルミニウム表面は、基材、例えば、粒子、粉末、磁気ビーズ、薄膜、スライド又はコーティング上に形成され得る。アルミニウム酸化表面は、アルミニウム金属又はアルミニウム合金のスパッタリング、RFスパッタリング、反応スパッタリング、化学蒸着、蒸発、鋳造又は押出しにより形成してもよく、さらに陽極酸化して、多孔質の陽極酸化された酸化アルミニウム表面を形成してもよい。
【0077】
iii)生体分子
生体分子は、上記に広範に定義される。アフィニティー結合アッセイでは、生体分子は、結合対:抗体-抗原、抗体-ハプテン、酵素-基質、酵素-受容体、ハプテン-ホルモン、毒素-受容体、タンパク質-タンパク質、アビジン-ビオチン、アプタマー-アプタマー標的、タンパク質-薬物、及び薬物受容体-薬物のメンバーであり得る。
【0078】
本明細書において使用する場合、界面分子に結合した生体分子の結合パートナー又は生体複合体は、結合対についての診断試験において使用する場合、目的の解析物と呼ぶ。
【0079】
一般には、結合対間の結合は、分子結合と呼ぶ。結合対に応じて、分子結合は、非共有結合、可逆的共有結合又は不可逆的共有結合であり得る。分子結合に関与する生体分子は、天然、生合成、合成又は誘導体化したものにかかわらず、タンパク質、核酸、糖質、脂質及び有機低分子、例えば薬物を一般に含む。
【0080】
iv)架橋剤
界面分子、又は生体分子を有する界面分子の修飾/改変分子は、イミドエステル、グルタルアルデヒド、カルボジイミド、マレイミド、ハロアセチル、ヒドラジド及び当業者に一般に公知の任意のその他を含む、任意の数の同反応性又は異反応性2機能架橋剤を使用して活性化することができる。同反応性2機能架橋剤の例は、ペンタン-1,5-ジアールである。異反応性2機能架橋剤の例は、3-[2-ピリジルジチオ]プロピオニルヒドラジドである。次いで、界面は、架橋剤により生体分子、例えば、タンパク質/ペプチド、糖質、核酸及び脂質に結合させることができる。これにより結合したタンパク質/ペプチド、糖質、核酸及び脂質は、表面に保持され、これらの生体同一性を維持し、構造的にインタクトのままであり、したがって、これらが本来の物質として認識可能となり、これにより抗原、抗体、アプタマー等と相互作用する。架橋剤は、当技術分野において周知のように、界面分子及び生体分子の化学に応じて異なる。一般的架橋剤のリストは、https://tools.thermofisher.com/content/sfs/brochures/1602163-Crosslinking-Reagents-Handbook.pdf.に見出される。
【0081】
v)陽極酸化
アルミニウム又は陽極酸化可能なアルミニウム合金物質は、陽極酸化してバリア又は多孔質アルミナ層を生成するために使用することができる。生じる陽極アルミナ膜の主な決定因子は、電解質の種類(Ono、Masuko2003、Abd-Elnaiem、Gaber2013)、強度(すなわち、濃度又はpH)(Belwalkarら2008、Araoyinboら2010、Yimら2007)、及び温度(Li、Zhang&Metzger1998、Abd-Elnaiem、Gaber2013、Yimら2007)並びに電位(Zhuら2011、Ono、Masuko2003、Belwalkarら2008、Rahmanら2012、Abd-Elnaiem、Gaber2013、Yimら2007)を含む。このようなパラメータは、孔径及び孔壁厚(Van Overmeereら2010)と、層の溶解及びエッチング速度により、多孔度をコントロールする。酸化におけるさらなる処理は、前処理(Zhuら2011)及び後処理を含み得る。
【0082】
アルミナが、電解質(例えば、シュウ酸、硫酸及びリン酸)に可溶性である場合、Al3+の溶解が生じ、多孔質アルミナ層を形成する。陽極酸化の初期においては、高度に抵抗性のAl2O3バリア膜が、アルミニウム層に生成される。さらに陽極酸化すると、バリア膜を介して個々の経路の伝播が生じ、これは、孔形成の前兆となる。次いで、バリア膜の分解及び多孔質構造の形成が生じる。アルミニウム層において多孔質酸化物の形成が完了すると、下部の層の陽極酸化が生じる(例えばTa)。バリア酸化物層が完全に形成された場合、電流密度は、およそゼロとなる(Eftekhari2008)。
【0083】
特に興味深いのは、視覚的アッセイに使用するための、反射金属に形成された多孔質の陽極酸化表面である。酸化アルミニウム表面は、酸化アルミニウムの多孔質層により被覆されと発色することが可能な反射金属に形成される。酸化アルミニウム表面は、上記のように陽極酸化して、多孔質の陽極酸化表面を生成し、これにより、試料に接触させて生体分子に対して特異性の解析物について試験した場合、生体分子及び解析物の結合時に、色の変化が検出されて、解析物の存在を表す。
【0084】
vi)溶媒
界面分子の酸化アルミニウム表面への固定化における使用に適する溶媒は、好ましくは、塩含有量が低く、アルミナ表面に対して高親和性を有するアニオン(例えば、リン酸、カルボン酸、硫酸)を欠く、典型的には、水溶液である。結合時間は、表面被覆率、溶媒、及び溶液のpHに応じて異なり得る。
【0085】
vii)シグナル増幅
酸化アルミニウム表面が、例えば視覚的アッセイ用の、発色デバイスの一部である場合、一部の用途はシグナル増幅から恩恵を得ることができ、すなわち、デバイスの結合層の形成において、それは検出可能な色の変化をもたらすのに十分となる。例えば、抗体が、界面分子に結合し又は界面分子を用いて改変され、適合する抗原が非常に小型(例えば、1.5nm未満)である場合、膜厚の変化がそれほど大きくないことがあるため(一般には、1.5nmを超える)、抗原結合時に色の著しい変化が存在しない場合がある。シグナル(すなわち、検出可能な色の変化)を増幅するために、目的の抗原解析物を含む試料に表面を曝露した後、第2の抗体を表面に加えることができる。(抗原に対して特異性の)第2の抗体は、第1の抗体に結合している抗原に結合する。この第2の抗体結合は、所望の抗原が第1の抗体に結合する場合にのみ生じるが、膜厚を例えば約7nm増加させる。この厚さの増加により、干渉色の劇的な変化が生じ、これにより検出可能となる。
【0086】
シグナル増幅の一例を
図28に表す。
図28は、上記に提示するように作製した、下部の反射層上の酸化アルミニウムの薄層としての酸化アルミニウム表面を示す。抗体(IgG)は、FIIのフラグメント1のGlaドメインを、そのFc構造のカルボキシ
ル末端に組み込ませるように改変する。IgGは、Glaドメインを介して酸化アルミニウム表面に結合する。改変抗体は、この特異性抗原に結合することが分かっている。第2の抗体は、標的抗原に結合することが分かっており、これはシグナルの増幅に使用することができる。第2の抗体は、無修飾であり得るか、又はこれは、結合酵素若しくは放射標識を用いて修飾して、デバイス全体からシグナルを増幅し得る。
【0087】
例えば、シグナル増幅は、低分子、例えばホルモン分子を検出するために使用することができる。テストステロン(C19H28O2)は、288個の分子量及び19個の炭素骨格を有する。このテストステロンは、およそ2nmの長さ及び1nm未満の幅であり、これを干渉色に基づくアッセイによる検出下限に定める。シグナルを増幅するために、テストステロン-抗体複合体を認識する第2の抗体を、このシステムに加えることができる。テストステロンが抗体に結合すれば、第2の抗体も結合する。これによって光路長が約7~10nm増加し、これによりシグナルが効率的に増幅され、目的のホルモンの検出が可能となる。
【0088】
viii)キット及び診断的用途
例えば診断試験のための一部の実施形態では、本発明は、適切な基材、例えばスライドに酸化アルミニウム表面を形成した診断デバイスを含む、診断システム又はキットに及ぶ。視覚的アッセイ又は視覚的診断デバイスでは、診断デバイスは、酸化アルミニウムの多孔質層により被覆された場合に発色することが可能な反射金属、例えばタンタル上の酸化アルミニウム表面を含む。このような用途では、酸化アルミニウム表面は、多孔質の陽極酸化表面として形成される。視覚的アッセイ又は視覚的診断デバイスの一部の実施形態では、界面分子は、酸化アルミニウム表面に形成され、特異性抗原は、界面分子に結合させる。特異性抗原を使用して、このキットにより、試験液、例えば体液、組織等と接触させた場合、抗原及び抗体の結合時にデバイスに色の可視的変化が生じるため、抗原(解析物)に対して特異性の抗体の存在が検出される。
【0089】
視覚的アッセイ又は視覚的診断デバイスの一部の実施形態では、キットは、上記に提示するような診断デバイスであるが、特異性抗体と共役している診断デバイスを含む。一部の用途では、特異性抗体は、カルボキシリッチドメインを界面分子として含むように改変する。このキットにより、抗原の結合時にデバイスに色の可視的変化が生じるため、試験液中の特異性抗原の検出が可能となる。
【0090】
視覚的アッセイ又は視覚的診断デバイスの一部の実施形態では、キットは、上記に提示するような診断デバイスであるが、界面分子に対して特異性の第1の抗原決定基(Fab1)及び試験試料中の目的の解析物、例えば抗原に対して特異性の第2の抗原決定基(Fab2)を有する2重特異性改変抗体に結合している診断デバイスを含む。このキットにより、抗原の改変抗体への結合時に色の可視的変化が生じるため、試験液中の特異性抗原の検出が可能となる。2重抗体合成技術は、周知である(例えば、Brinkmann、Ulrichらを参照)。
【0091】
視覚的アッセイ又は視覚的診断デバイスの一部の実施形態では、キットは、上記に提示するような診断デバイスであるが、アプタマーと共役している診断デバイスを含む。アプタマーが、この特異性標的分子に結合して、色の可視的変化が生じる。
【0092】
視覚的アッセイ又は視覚的診断デバイス一部の実施形態では、キットは、上記に提示するような診断デバイスであるが、カルボキシリッチドメインを界面分子として含む改変プロテインAと共役している診断デバイスを含む。このプロテインAは、抗体のFC領域に結合し、抗体の適切な配向が確実となって、この対応する特異性抗原が、色の可視的変化により検出される。
【0093】
視覚的アッセイ又は視覚的診断デバイスの一部の実施形態では、キットは、上記に提示するような診断デバイスであるが、界面分子は、架橋剤への結合により修飾されているか又は活性化されている、診断デバイスを含む。架橋剤が、試験試料中の目的の特異性解析物(例えば、尿中のタンパク質)に結合して、色の可視的変化が生じる。
視覚的アッセイ又は視覚的診断デバイスの一部の実施形態では、キットは、上記に提示するような酸化アルミニウム表面を含むが、界面分子及び架橋剤又は生体分子が、例えば、
界面分子に結合しているか又は界面分子へ結合させるための架橋剤であって、目的の解析物に結合することが可能である、架橋剤、或いは
界面分子に結合しているか又は界面分子へ結合させるための、目的の解析物に対して特異性の生体分子、或いは
第1の抗原決定基を介して界面分子に結合しているか又は界面分子へ結合させるための改変抗体であって、目的の解析物に対して特異性の第2の抗原決定基を有する、改変抗体の形態の生体分子
のうちの1つを形成することにより、酸化アルミニウム表面とは別に形成されている。
【0094】
キットの成分は、界面分子とは別に含んで試験の前に組み合わせてもよく、又は界面分子及び架橋剤若しくは生体分子は、界面複合体としてキット内で形成してもよい。界面複合体を試料に接触させて解析物について試験し、次いで、試料及び界面複合体を酸化アルミニウム表面に接触させる。キットにより、解析物及び界面複合体の酸化アルミニウム表面への結合時に解析物の存在が、色の可視的変化により検出される。
【0095】
診断デバイスに加えて、このようなキットは、デバイスを収容する容器、及び1つ又は複数の他の成分を典型的に含む。キットは、1つ又は複数の容器に医薬品又は診断グレードの成分、例えば、架橋剤、アッセイ標準物質、試験成分等を含み得る。キットは、デバイス又は成分の使用を奨励又は記載する、説明書又はラベルを含み得る。説明書は、成分のパッケージング上、又は成分のパッケージングと関連して、書面の説明書を含み得る。また、説明書は、例えば、キットの1つ若しくは複数の成分を混合するため、並びに/又は試料を単離及び解析するための、任意の方法により提供された、任意の口頭又は電子的説明書を含み得る。
【0096】
試料中の明確な解析物の定量を促進するために、アッセイ成分には、解析物の標準物質を用いることができ、この場合、標準物質は、デバイスに形成されて解析物の定量が可能となる、検出される所定量の解析物である。標準物質は、解析して、解析物の量を試料中に存在する解析物の量と等しくする標準曲線を生成することができる。視覚的アッセイでは、標準物質は、診断デバイスを予備試験して陰性結果及び陽性結果を表す色見本票を含み得る。
【0097】
タンパク質プリンティングの技術は、周知であり、界面分子、生体分子並びに/又は界面分子及び生体分子の複合体をプリントするために使用することができる(例えば、Delaney、Joseph Tら、McWilliam Iら、及びLi、Jら)を参照)。例えば、インクジェットプリンタによる、タンパク質プリンティングを使用し、種々のタンパク質のアレイを析出して、試験を多重化することができる。各タンパク質は、これらの標的分子(例えば、抗体、抗原、アプタマー、DNA標準物質又はRNA標準物質)が存在すると変化する色を発する。例えば、イムノアッセイでは、種々のタンパク質を酸化アルミニウム表面に特定のパターンで配置することにより多重化することができる。このようなパターンは、直線、曲線、円、点、又は複合パターンの形態であり得る。これらは、試験試料中の多様な解析物についての情報をもたらす。結果は、プリントした種々の部分のパターンの色の変化により判定する。例えば、多様な抗原は、特定のウイルス、例えば、チクングニア(Chikungunya)、デング熱(Dengue Fever)、黄熱(Yellow Fever)及びジカ(Zika)を引き起こすウイルスに特徴的な診断表面に結合させ得る。診断技術により、特定の領域における色の変化に基づいて、疾患だけでなく、存在する血清型をも同定する。この多重試験では、単一試料由来の1つ又は2つ以上のウイルス又は血清型に患者が感染している症例を判定する。
【0098】
一部の用途では、生体分子への解析物特異的結合は、任意の適する検出器を使用して検出することができ、行う試験又はアッセイの種類に依存する。一般には、検出器は、照明光源及び検出電子機器を含む。光源は、例えばポイントオブケア診断のための日光、又は他の光源、例えば、LED、レーザー及び白熱電球であり得る。このような供給源を、光学フィルター、偏光子、回折格子、及び特定の光スペクトル成分を生成する他の光学成分と組み合わせて使用することができる。他の形態の放射線、例えば、生物発光、蛍光及びその他を使用することができる。励起波長は、可視部のスペクトル(波長300~700nm)又は他の波長、例えば、赤外及び紫外に存在し得る。次いで、吸収、反射又は再発光された光は、肉眼を使用して(可視波長について)、又は感光検出器、例えば光ダイオード若しくは光電子倍増器を使用して、スペクトル及び/又は空間フィルタリングと組み合わせて、観察及び/又は検出することができる。
【0099】
色の変化が可視検出限界未満であり、肉眼で検出できない場合、高感度検出方法が利用可能である。デジタル画像解析、分光光度法及び他の光子計数検出器により、反射波長の変化の解析が可能となる。高解像度画像の取得及びデジタル処理は、色のパターンを定量及び解析する生物学研究において一般に使用するため、当技術分野において十分に理解されている技術である。可視色の定量は、デジタル処理により達成することができる。色を識別するために、色度座標の2Dプロットを可能とする、国際照明委員会(International Commission on IlluminationすなわちCommission Internationale de l’Ecla、CIE)色空間を使用して、プロットを作成することができる。分光光度計は、反射特性についてのフルスペクトル測定により、ヒトの肉眼により検出可能なものを越える解析をもたらすことができる。非常に低いレベルの光強度では、光子計数検出装置(例えば光電子倍増器)を使用して、検出前にシグナルを増大させることにより光子数を測定することができる。
【0100】
適する検出器の一例は、反射する表面の反射率を測定する反射分光計である。或いは、検出器は、カメラ又はイメージングデバイスであり得る。検出は、例えば、視覚的アッセイでは、ポイントオブケアの現場においてであってもよく、又は試料収集若しくは患者の現場から遠隔であってもよい。
【0101】
本発明の方法は、データの統合、解析、保存及び送信のためのコンピュータに及び、これにより、検出した解析物特異的結合を、データ取得成分のいずれか1つにより取得したデータと統合することができる。次いで、このように統合した結合及びデータは、コンピュータにより解析及び保存して、後に利用することができる。コンピュータは、1つ又は複数のアルゴリズム及び/又はソフトウェアにアクセスし、例えば、蓄積したデータ又は標準曲線と比較することにより、アッセイ成分のデータを解析して、試験する解析物の存在及び/又は量を判定する、オペレーティングシステムを典型的に含む。未加工データ並びに/又は統合及び解析したデータは、表示画面、例えば、コンピュータディスプレイ又は携帯電話、PDA等に表示される。
【0102】
バーコードリーダーは、アッセイ成分についての情報を自動で入力するために提供することができる。バーコードリーダーは、バーコード起動システムと組み合わせることができ、これにより、解析する試験が同定され、特定のこの試験のワンポイントアッセイの較正が自動で開始されて、ユーザのエラーが減少する。それぞれの個々のアッセイ成分は、読み取られて装置を初期化するのに使用されるユニークなバーコードを含み、これにより適切なアルゴリズムが利用され得る。本発明によるアッセイ成分の例となる実施形態は、
図36A(バーコード)及び36B(QRコード)に示す。
【0103】
診断デバイスは、上記のような成分のうちの1つ又は複数を含む、試料装置、例えば、携帯デバイス又はキットとして構成され得る。
【0104】
ix)用途
カルボキシリッチドメインを形成する界面を本発明に従って固定化する酸化アルミニウム表面は、広範に及ぶ用途を有し、例えば、生物医学的用途における多様な生成物のための種々の表面へのタンパク質コーティング;視覚的イムノアッセイとしての医療診断デバイスのための陽極薄膜へのコーティング、環境モニタリングのための陽極薄膜へのコーティング;食品安全診断デバイスのための陽極薄膜へのコーティング;ELISA試験等のためのマイクロタイタープレート中の陽極膜へのコーティング;診断のためのMEMS/NEMSへのコーティング、標的治療送達のためのナノ粒子へのコーティング;コントラストイメージングのためのナノ粒子へのコーティング;カラムによるアフィニティー分離用途のためのアルミナ粒子;生体分子及び細胞のアフィニティー回収のための磁気粒子;抗体の正確度を試験前に検証するリサーチアッセイ;試験を促進する蓋付きプラスチック試料カップのためのコーティング、並びに医療デバイス又はインプラントへのコーティングを例として含む。
【0105】
本発明を、以下の非限定的実施例によっても例示する。
【実施例】
【0106】
(i)アフィニティーデバイスとしての酸化アルミニウム表面及び界面分子
実施例1
この実施例では、プロトロンビンを界面分子として固定化するアルミナ基材へのタンパク質(詳細にはウイルス抗原)の結合を実証する。アルミナ基材は、タンタルを非晶質の支持体に200nmの厚さに最初にスパッタリングした後、アルミニウムをTaに120nmの厚さにスパッタリングすることにより生成した。アルミニウムは、電気化学的酸化(陽極酸化)によりアルミナに変換し、これは、0.4Mのリン酸の電解質を用いた8Vでのリン酸陽極酸化を用いて、電流が0mA付近に減衰するまで行った。これにより、14nmの厚さのTa2O5層の上部におよそ190nmの厚さのAl2O3の層が生成された。生成されたデバイスの色は、偏光子により白色光を用いて15°で観察した場合、金色であった。プロトロンビンは、アルミナ表面に30分間、100%RHの環境下で配置し(1mg/mLの溶液を10μL)、次いで、脱イオン水で徹底的にすすいだ。デバイスを風乾させた後、色は、さび色に変化した。次いで、デバイスは、25mMのリン酸緩衝液pH6.9を加えた0.5%(v/v)のグルタルアルデヒド溶液に60分間浸した。脱イオン水により再度すすいだ後、B型インフルエンザウイルスの抗原、香港5/72株を表面に60分間配置した(1.75mg/mLの溶液を10μL)。次いで、デバイスを25mMのリン酸緩衝液で60分間すすいで風乾させると、色は、ラベンダーに変化した。色の変化は、抗原の固定化により生じた光路長の増大によって生じた。
【0107】
実施例2
この実施例では、IgGのようなタンパク質が、陽極アルミナ表面に結合しないことを例示する。デバイスは、実施例1のように生成し、プロトロンビンは、実施例1に記載するものと同一の手順により、表面の3つの描出した点のうちの2つに固定化した。プロトロンビンの固定化後、さび色が観察された。抗プロトロンビンを、プロトロンビンを有する1つの点及び残りの空の点に15分間加え(100μg/mLの溶液を10μL)、脱イオン水で洗い流した。デバイスを風乾させ、次いで、実施例1のように15°で観察した。抗原(プロトロンビン)とタンパク質抗体(抗プロトロンビン)の両方を含む点で、バーガンディ色の点が観察された。色の変化は、固定化されたタンパク質が、抗体により認識され、この抗体がタンパク質に結合してタンパク質層の全厚を変化させたことを示した。抗プロトロンビンをそこに加えた裸の陽極酸化物表面において、観察可能な色の変化は存在しなかった。これは、光の光路長を変化させるのに十分な残留タンパク質が表面に存在しなかったため、タンパク質が陽極表面に結合しなかったことを示す。
【0108】
実施例3
この実施例では、グルタルアルデヒドをアミノプロテイン、詳細には、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンによりキャッピングし、これによって固定化プロトロンビンとの結合が生じないことにより、固定化タンパク質を特異性とすることが可能な方法を示す。
【0109】
実施例1に記載するように、デバイスを生成し、プロトロンビンを表面に固定化し、グルタルアルデヒド溶液を加えた。次いで、デバイスを1×TBS緩衝液に浸して、結合可能なすべてのグルタルアルデヒドをキャッピングした。タンパク質(詳細には、IgG抗体、ヤギ産生抗B型インフルエンザ)の層を表面に30分間配置し、次いで、脱イオン水で洗い流した。デバイスを風乾させ、次いで、15°で観察した。認められる色の可視的変化は存在しなかった。このような色の変化の欠如は、加えた非特異性抗体への露出により、光路長が変化しなかったことを示した。これは、デバイスが、非特異性タンパク質により偽陽性を示すことなく親和性基材として機能することを示すのに重要である。
【0110】
実施例4
この実施例では、抗原をプロトロンビン界面に結合させることによる、表面の抗体-抗原複合体についての視覚的アッセイを例示する。実施例1に記載するように、デバイスを生成し、プロトロンビンを表面に固定化し、架橋剤を加えた。次いで、B型肝炎(Hep B)の合成表面抗原を、実施例1と同一の手順を使用して、プロトロンビンに結合させた。抗原の結合後、さび色が観察された。
【0111】
次いで、残りのグルタルアルデヒドを、0.3Mのリン酸緩衝液pH7.0中0.1MのL-リジン溶液により60分間キャッピングした。最終的には、血清試料(n=20)を表面に15分間配置し、脱イオン水で洗い流した。デバイスを風乾させ、次いで、15°で観察すると、マゼンタ色の点が観察された。色の変化は、結合したタンパク質が抗体により認識され、この抗体がタンパク質に結合してタンパク質層の全厚を変化させたことを示した。
【0112】
上記の実施例では、天然に存在するタンパク質プロトロンビンを、アルミナにコーティングする界面として使用する。次いで、プロトロンビンを、同反応性又は異反応性2機能分子により活性化して、目的のタンパク質をプロトロンビンに結合させた。プロトロンビン(約10nm)よりも薄い界面分子(例えば、約3nm)が望ましい場合、以下の実施例に示すように、プロトロンビン分子のフラグメント1をプロトロンビンの代わりに使用することができる。次いで、グルタルアルデヒド又は他の任意の同反応性又は異反応性2機能分子を使用して、目的の生体分子をフラグメント1に結合させることができる。
【0113】
実施例5
この実施例では、抗原をFIIのフラグメント1に結合させることにより、抗体-抗原複合体を表面に形成する能力を例示する。実施例1のようにデバイスを生成し、フラグメント1をプロトロンビンの代わりにアルミナ表面に固定化した。フラグメント1をデバイス表面に30分間、100%RHの環境下で配置し(0.3mg/mLの溶液を10μL)、次いで、脱イオン水で徹底的にすすいだ。デバイスを風乾させた後、色は、明るいさび色に変化した。次いで、B型肝炎ウイルスに対する抗原を、実施例1と同一の架橋手順を使用して、表面に結合させた。B型肝炎抗原の固定化後、さび色が観察された。
【0114】
次いで、残りのグルタルアルデヒドを、0.3Mのリン酸緩衝液pH7.0中0.1MのL-リジン溶液により60分間キャッピングした。最終的には、抗Hep B抗体を表面に15分間配置し(100μg/mLの溶液を10μL)、脱イオン水で洗い流した。デバイスを風乾させ、次いで、15°で観察すると、紫色の点が観察された。色の変化は、固定化したタンパク質が抗体により認識され、この抗体がタンパク質に結合してタンパク質層の全厚を変化させたことを示した。
【0115】
実施例6
この実施例では、酸化アルミニウム表面に固定化し、界面分子を架橋剤に結合させることにより活性化した、試験試料中の解析物への結合に使用するための界面分子を例示する。実施例1のようにデバイスを生成し、プロトロンビンを酸化アルミニウム表面の2つの点に固定化した。一方の点では、実施例1に記載するように、グルタルアルデヒドを架橋剤に結合させることにより、プロトロンビンを活性化した。他方の点は、修飾しなかった。両方の点は、さび色となった。ナンセンスIgG(すなわち、プロトロンビンに対して非特異性)の溶液を両方の点に加え、60分間置いておいた後、洗浄ステップ及び風乾を行った。ナンセンスIgGに結合した活性化プロトロンビンを含む点は、色で示した場合、紫色に変化する。第2の点は、色が変化せず、結合が生じないことを示した。この実施例は、
図31に模式的に例示し、尿中のタンパク質を検出する診断試験の用途を、ポイントオブケアデバイスとして例示したものである。
【0116】
(ii)カルボキシリッチな界面を有する改変生体分子
実施例7
この実施例では、カルボキシリッチアミノ酸配列を有するアンカータンパク質として改変した、アルミナ表面に結合させるための界面分子を例示する。ここでは、ヒト第II因子由来のフラグメント1の最初の32個のアミノ酸を修飾し、酸化アルミニウム表面に安定な形態で直接共役させる。修飾フラグメント1は、ジカルボキシアミノ酸Aspと関連するカルボキシ基のクラスタを介してアルミナ表面に結合させる。タンパク質の6、7、14、16、19、20、25、26、29及び32番目の部位に位置するGla残基をAspと置換する。これにより、実施例6の天然フラグメント1と比較して、表面への結合に利用可能なカルボキシ基の数が半減する。この置換により、タンパク質フォールディングソフトウェアにより生成された、構造のコンピュータモデルに示すように(
図5)、フラグメント1のアミノ末端にカルボキシリッチドメインが生じる。F1フラグメントの修飾Glaドメインの配列表は、配列番号4に提供する。タンパク質の表面電荷のコンピュータモデルは(
図6)、これを支持し、アルミナ基材への結合が生じる、改変界面分子の基礎のカルボキシリッチドメインを示す。
【0117】
実施例8
この実施例では、カルボキシリッチアミノ酸配列を有するアンカータンパク質として改変した、アルミナ表面に結合させるための界面分子を例示する。ここでは、ヒト第II因子由来のフラグメント1の最初の32個のアミノ酸を修飾し、酸化アルミニウム表面と安定な形態で直接共役させる。修飾フラグメント1は、ジカルボキシアミノ酸Asp(1つのジカルボキシアミノ酸)と関連するカルボキシ基のクラスタを介してアルミナ表面に結合させる。タンパク質の6、7、14、16、19、20、25、26、29及び32番目の部位に位置するGla残基は、Asp-Aspと置換する。これは、実施例6の天然フラグメント1と比較して、表面への結合に利用可能なカルボキシ基の数を保持する。この置換により、構造のコンピュータモデルに示すように(
図7)、フラグメント1のアミノ末端にカルボキシリッチドメインが生じる。F1フラグメントの修飾Glaドメインの配列表は、配列番号5に提供する。タンパク質の表面電荷のコンピュータモデルは(
図8)、これを支持し、改変界面分子の基礎のカルボキシリッチドメインを示す。
【0118】
実施例9
この実施例では、カルボキシリッチアミノ酸配列を用いて改変した、アルミナ表面に結合させるための界面分子を例示する。ヒト第II因子由来のフラグメント1の最初の32個のアミノ酸を、酸化アルミニウム表面に安定な形態で直接共役させるために修飾する。修飾フラグメント1は、ジカルボキシアミノ酸Asp-Gluと関連するカルボキシ基のクラスタを介してアルミナ表面に結合させる。タンパク質の6、7、14、16、19、20、25、26、29及び32番目の部位に位置するGla残基は、Asp-Gluと置換する。これは、実施例6の天然フラグメント1と比較して、表面への結合に利用可能なカルボキシ基の数を保持する。この置換により、構造のコンピュータモデルに示すように(
図9)、フラグメント1のアミノ末端にカルボキシリッチドメインが生じる。F1フラグメントの修飾Glaドメインの配列表は、配列番号6に提供する。タンパク質の表面電荷のコンピュータモデルは(
図10)、これを支持し、改変界面分子の基礎のカルボキシリッチドメインを示す。
【0119】
実施例10
この実施例では、ヒト第II因子由来のフラグメント1の最初の32個のアミノ酸が、酸化アルミニウム表面と安定な形態で直接共役させるために修飾されている、改変界面分子を例示する。修飾フラグメント1は、ジカルボキシアミノ酸Glu-Aspと関連するカルボキシ基のクラスタを介してアルミナ表面に結合させる。タンパク質の6、7、14、16、19、20、25、26、29及び32番目の部位に位置するGla残基は、Glu-Aspと置換する。これは、実施例6の天然フラグメント1と比較して、アルミナ表面への結合に利用可能なカルボキシ基の数を保持する。この置換により、構造のコンピュータモデルに示すように(
図11)、フラグメント1のアミノ末端にカルボキシリッチドメインが生じる。F1フラグメントの修飾Glaドメインの配列表は、配列番号7に提供する。タンパク質の表面電荷のコンピュータモデルは(
図12)、これを支持し、改変界面分子の基礎のカルボキシリッチドメインを示す。
【0120】
実施例11
この実施例では、さらなる改変界面分子を例示する。ヒト第II因子由来のフラグメント1の最初の32個のアミノ酸を、酸化アルミニウム表面と安定な形態で直接共役させるために修飾する。修飾フラグメント1は、ジカルボキシアミノ酸Glu-Gluと関連するカルボキシ基のクラスタを介してアルミナ表面に結合させる。タンパク質の6、7、14、16、19、20、25、26、29及び32番目の部位に位置するGla残基は、Glu-Gluと置換する。これは、実施例6の天然フラグメント1と比較して、表面への結合に利用可能なカルボキシ基の数を保持する。この置換により、構造のコンピュータモデルに示すように(
図13)、フラグメント1のアミノ末端にカルボキシリッチドメインが生じる。F1フラグメントの修飾Glaドメインの配列表は、配列番号8に提供する。タンパク質の表面電荷のコンピュータモデルは(
図14)、これを支持し、改変分子の基礎のカルボキシリッチドメインを示す。
【0121】
実施例12
この実施例では、ウシ第II因子由来のフラグメント1の界面分子を例示する。ウシフラグメント1は、ヒトフラグメント1と比較して4番目に追加のアミノ酸の挿入を有する。ウシフラグメント1を使用すると、構造のコンピュータモデルに示すように(
図15)、フラグメント1のアミノ末端にカルボキシリッチドメインが生じる。F1フラグメントの修飾Glaドメインの配列表は、配列番号9に提供する。タンパク質の表面電荷のコンピュータモデルは(
図16)、これを支持し、分子の基礎のカルボキシリッチドメインを示す。
【0122】
(iii)カルボキシリッチドメインを有する遺伝子改変又は化学的誘導体化タンパク質/抗体
実施例13
この実施例では、ヒト第II因子のフラグメント1由来のカルボキシリッチアミノ酸配列を用いて、化学的に変異又は改変した、酸化アルミニウム表面と安定な形態で直接共役させるための抗体(ここではIgG重鎖)を例示する。この改変分子は、抗体のFcフラグメントのカルボキシ末端に、結合させるか又は組み込む。タンパク質の6、7、14、16、19、20、25、26、29及び32番目の部位に位置するGlaは、Aspと置換する。これにより、天然フラグメント1と比較して、表面への結合に利用可能なカルボキシ基の数が半減する。この置換により、構造のコンピュータモデルに示すように(
図17)、修飾フラグメント1のアミノ末端にカルボキシリッチドメインが生じる。F1フラグメントの修飾Glaドメインの配列表は、配列番号10に提供する。タンパク質の表面電荷のコンピュータモデルは(
図18)、これを支持し、アルミナに結合させるための改変分子の基礎のカルボキシリッチドメインを示す。
【0123】
実施例14
この実施例では、ヒト第II因子のフラグメント1由来のカルボキシリッチアミノ酸配列を用いて、化学的に変異又は改変した、酸化アルミニウム表面に安定な形態で直接共役させるためのIgG重鎖抗体を例示する。改変分子は、抗体のFcフラグメントのカルボキシ末端に、結合させるか又は組み込む。タンパク質の6、7、14、16、19、20、25、26、29及び32番目の部位に位置するGla残基は、Gluと置換し、これにより、天然フラグメント1と比較して、表面への結合に利用可能なカルボキシ基の数が半減する。この置換により、構造のコンピュータモデルに示すように(
図19)、フラグメント1のアミノ末端にカルボキシリッチドメインが生じる。重鎖IgG抗体を用いたF1フラグメントの修飾Glaドメインの配列表は、配列番号11に提供する。タンパク質の表面電荷のコンピュータモデルは(
図20)、これを支持し、アルミナ表面に結合させるための改変分子の基礎のカルボキシリッチドメインを示す。
【0124】
実施例15
この実施例では、別の改変界面生体分子を例示する。プロテインAのフラグメントBドメインを、ヒト第II因子のフラグメント1の最初の32個のアミノ酸に結合させる。フラグメント1タンパク質の6、7、14、16、19、20、25、26、29及び32番目の部位に位置する10個のGla残基が存在する。コンピュータモデルにおいて生成した場合の改変分子を
図21に示す。改変分子の配列表は、配列番号12に提供する。これは、フラグメント1-フラグメントB構造の基礎に2.2nm
3のカルボキシリッチドメインを形成し、アルミナ基材への結合を可能とする。これにより、1nm
3あたり9.09個のカルボキシ基を有するカルボキシリッチドメインが生じる。ヒト第II因子のフラグメント1の最初の32個のアミノ酸に結合したプロテインAのフラグメントBの3D構造の表面電荷マップは(
図22)、アルミナ基材に結合させるための改変分子の基礎の表面電荷密度を示す。
【0125】
実施例16
第II因子、第VII因子、第X因子、クリングルドメインを有する第II因子、プロテインC、プロテインZ由来のGlaドメインのうちの1つ又は複数を含むGla配列、及びカルボキシリッチドメインを有する合成ペプチド配列(Bauzonらの米国特許第9,694,048号を参照)を、IgGのFcフラグメントのそれぞれにクローニングした(抗ガウス(Gaussia)ルシフェラーゼ)。使用したクローニング技術は、トロント大学のCentre for Commercialization of Antibodies and Biologicsにおいて標準的Fc改変技術であった(Liuら)。このようなタンパク質又は合成ペプチド由来のGlaドメインは、1~3個の単位としてクローニングし、これにより、タンパク質由来の1、2又は3個のGlaドメインが、IgG生体分子のFcフラグメントのそれぞれに存在した。これらは、表2においてGla 1x、Gla 2x又はGla 3xと名付けられている。クローニング技術では、可動性リンカー配列(配列番号20に示す、Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)及びオープンリーディングフレーム(配列番号21)を使用して、GlaドメインをFcフラグメントに結合させた。また、Fcフラグメントの1重鎖あたり2つ以上が結合する場合、可動性リンカー配列を使用してGlaドメインを結合させた。他のリンカー及びORFは、当技術分野において周知であり、使用し得る。クローニング技術では、サブクローン4275hG1を使用し、この場合、hG1は、(すなわち、ヒトIgG1)として表す、Abアイソタイプを指し、4275は、ガウスルシフェラーゼに特異的に結合し、この哺乳動物によるin vivoでの研究における標準的陰性対照として使用される抗体である(Liuら)。クローニングにより、Gla配列がFcフラグメントの両重鎖のカルボキシル末端に追加された。したがって、表2に列挙するGla 1xは、IgGのFcフラグメントにクローニングした、2つのGlaドメインを有し、Gla 2xは、4つのGlaドメインを有し、Gla 3xは、6つのGlaドメインを有した。すべてのクローンは、体積10mlで表した。このように表した形態では、いずれの場合においても、天然型のGlaドメイン配列を利用した。
【0126】
【0127】
実施例17
この実施例では、実施例16の固定化する改変抗体により生じた強力な色の変化を、スパッタリングした様々な初期のアルミニウム厚について例示する。200nm厚のタンタル層を基材にスパッタリングした後、90~140nm厚の範囲のアルミニウム層をスパッタリングすることにより、薄膜デバイスを形成した。次いで、0.4Mのリン酸及び0.1Mのシュウ酸を含む混合した電解質中で、4Vの定電位を適用することにより、金属の薄膜を陽極酸化した。電解浴から取り出す際、表面を脱イオン水で徹底的にすすいだ。引き続いて、デバイス表面は、実施例16に記載するように、天然プロトロンビン(0.004mg)及びFc領域のGlaドメインを用いて修飾した組換えIgGのタンパク質溶液に曝露した(表2)。タンパク質を30分間曝露した後、溶液を除去し、脱イオン水ですすいで風乾した。天然プロトロンビンと同様に法線から75度で見た場合、アルミナ厚にかかわらず、改変IgG(Gla 1x)(約150kDa)により、デバイス表面に強力な色の変化が生じた。クローニングしたGla単位の数が1~3個から増加するにつれて、色の変化を生じる能力は低下し、これにより、Gla 3x改変抗体では、色の変化は、わずかにヒトの肉眼に見えるのみであったが、上に示すように、他の検出技術を使用することができる。このような色の変化は、改変タンパク質を、目的に合わせたアルミナ厚に良好に固定化することが可能であり、この改変タンパク質により、1次及び2次色領域において様々な色の変化が生じることを示す。
【0128】
実施例18
この実施例では、実施例16のGla修飾により、実施例16の改変抗体を表面に固定化し、一方、IgG分子により、色の可視的変化が自然には生じなかったことを例示する。引き続いて、実施例16の改変ヒト抗体でコーティングした表面を、ヤギ抗ヒト(GAH)IgG(0.02mg)又はヤギ抗マウス(GAM)IgG(0.02mg)のいずれかの溶液でコーティングした。GAH IgG(陽性対照)を固定化した改変抗体を有する点に曝露すると、色の変化の増加が生じたが、GAM IgG(陰性対照)を固定化した改変ヒト抗体を有する点に曝露すると、色の可視的変化は生じなかった。また、GAHとGAMの両方の溶液を裸のデバイス表面に30分間曝露すると、いずれの溶液からも色の変化は生じなかった。これは、吸着した組換え抗体をGAHが表面に検出した場合に2次IgG層が形成されることによる色の変化を明らかに実証した。
【0129】
実施例19
この実施例では、実施例16の固定化した改変抗体を、この特異性抗原、ガウスルシフェラーゼに曝露した場合に生じた強力な色の変化を例示する。200nm厚のタンタル層をシリコン基材にスパッタリングした後、110nm厚のアルミニウム層をスパッタリングすることにより、薄膜デバイスを形成した。次いで、0.4Mのリン酸及び0.1Mのシュウ酸を含む混合した電解質中で、4Vの定電位の適用により、金属の薄膜を陽極酸化した。電解浴から取り出す際、表面を脱イオン水で徹底的にすすいだ。引き続いて、デバイス表面は、実施例16に記載するように、天然プロトロンビン(0.004mg)及びFc領域のGlaドメイン(第VII因子Gla 1x)を用いて修飾した組換えIgG(抗ガウスルシフェラーゼ)のタンパク質溶液に曝露した。タンパク質を30分間曝露した後、溶液を除去し、脱イオン水ですすいで風乾した。天然プロトロンビンと同様に法線から75度で見た場合、改変IgG(約150kDa)により、デバイス表面に強力な色の変化(明るい紫色)が生じた。次いで、表面は、プロトロンビン(第II因子)由来のフラグメント1の0.2mg/mlの溶液に曝露して、表面の任意の活性部位をキャッピングした。蒸留水ですすいで乾燥した後に、さらなる色の変化は、観察されなかった。次いで、ガウスルシフェラーゼ(0.2mg/ml)又はプロカルシトニン(0.2mg/ml)の溶液を表面に30分間曝露した後、すすいで乾燥させた。ガウスルシフェラーゼに曝露した改変IgGを有する表面は、青紫色に変化したが、プロカルシトニンに曝露した表面は、色が変化しなかった。プロトロンビンにより処理した表面では、ガウスルシフェラーゼ又はプロカルシトニンのいずれによっても、色が変化しなかった。このような色の変化は、改変タンパク質をアルミナ表面に良好に固定化ことが可能であり、この改変タンパク質により、これらの特異性抗原に曝露すると、色の変化が生じることを示す。改変及び固定化抗体は、この機能性を保持する。
【0130】
[参照による組込み及び変形]
本出願を通じたすべての参考文献、例えば、発行若しくは付与された特許又は等価物を含む特許文献、特許出願公開及び非特許文献書又は他の資料は、各参考文献が、本出願の本開示と少なくとも部分的に矛盾しない限り、参照により個々に組み込むと同様に、これによって、これらの全体を参照により本明細書に組み込む(例えば、部分的に矛盾する参考文献は、部分的に矛盾する参考文献の部分を除いて、参照により組み込む)。
【0131】
本明細書において利用されている用語及び表現は、説明のための用語であり非制限用語であるとして使用し、このような用語及び表現の使用において、指示及び記載する特徴又はこの部分のいかなる等価物をも除外する意図は存在しないが、主張する本発明の範囲内において、種々の修飾が可能であることが認識される。したがって、本発明が、好ましい実施形態により詳細に開示されているが、例となる実施形態及び任意の特徴、本明細書に開示する概念の修飾及び変更が、当業者により用いられ得ること、並びにこのような修飾及び変形が、添付の特許請求の範囲により定義するように、本発明の範囲内に存在すると考えられることが理解されるべきである。本明細書において提供する特定の実施形態は、本発明の有用な実施形態の例であり、本発明が、本明細書において提示するデバイス、デバイス成分、方法ステップの多数の変形を使用して実行可能であることが当業者に明らかである。当業者に明らかであるように、方法及び本方法に有用なデバイスは、多数の任意の成分並びに処理要素及びステップを含み得る。
【0132】
本明細書における範囲、例えば、温度範囲、時間範囲、サイズ範囲、又は組成物若しくは密度の範囲が与えられる場合はいつでも、すべての中間範囲及び部分的範囲、並びに所与の範囲に含まれるすべての個々の値は、本開示に含むことを意図する。本発明の明細書に含まれる、任意の部分的範囲又は範囲若しくは部分的範囲における個々の値が、本発明の特許請求の範囲から除外され得ることが理解される。
【0133】
本明細書において言及するすべての特許及び公開は、本発明が属する技術分野の当業者のレベルを示す。本明細書において引用する参考文献は、この全体を本明細書において参照により組み込むものであって、この公開日又は出願日現在の最新技術を示し、この情報が本明細書において利用可能であり、必要に応じて、先行技術に存在する特定の実施形態を除外することを意図する。例えば、物質の組成物を主張する場合、本明細書に引用する参考文献において開示の付与をもたらす化合物を含む、出願人の発明に先立って当技術分野において公知及び利用可能な化合物が、本明細書において主張する物質の組成物に含まれることを意図しないことが理解されるべきである。
【0134】
本明細書において使用する場合、「含む(comprising)」は、「含む(including)」、「含む(containing)」、又は「により特徴づけられる」と同義であり、包括的であるか又は制約がなく、さらなる列挙しない要素又は方法ステップを除外しない。本明細書において使用する場合、「からなる」は、特許請求の範囲の要素において特定しない任意の要素、ステップ、又は成分を除外する。本明細書において使用する場合、「から本質的になる」は、特許請求の範囲の基本的及び新規の特徴に実質的に影響する、物質又はステップを除外しない。本明細書のいずれの場合においても、用語「含む」、「から実質的になる」及び「からなる」のいずれかは、他の2つの用語のいずれかと置換し得る。本明細書において例示的に記載する本発明は、本明細書において詳細には記載しない任意の要素又は複数の要素、制限又は複数の制限の非存在下で適切に実施され得る。
【0135】
当業者は、詳細に例示する以外の、出発物質、生物学的物質、試薬、合成方法、精製方法、解析方法、アッセイ方法、及び生物学的方法を、過度の実験法を用いることなく、本発明の実施において利用可能であることを理解する。このような任意の物質及び方法の、当技術分野において公知のすべての機能的等価物は、本発明に含むことを意図する。利用されている用語及び表現は、説明のための用語であり非制限用語であるとして使用し、このような用語及び表現の使用において、指示及び記載する特徴又はこの部分の任意の等価物を除外する意図は存在しないが、主張する本発明の範囲内において種々の修飾が可能であることが認識される。したがって、好ましい実施形態及び任意の特徴により本発明を詳細に開示しているが、本明細書において開示する概念の修飾及び変形が、当業者により用いられる可能性があり、このような修飾及び変形が、添付の特許請求の範囲により定義する本発明の範囲内に存在すると考えられることが理解されるべきである。
[参考文献]
[さらなる実施形態]
さらなる実施形態は以下のとおりである。
[実施形態1]
目的の解析物への結合に使用するためのデバイスであって、
酸化アルミニウム表面、
分子体積2.2~25nm
3
中に少なくとも5つの遊離カルボキシル基をもたらす少なくとも1つのカルボキシリッチドメインを有するポリペプチドを含み、前記酸化アルミニウム表面に固定化した、界面分子であり、前記遊離カルボキシル基が2つ以上のカルボキシ基を含むアミノ酸によりもたらされ、これにより前記界面分子が前記酸化アルミニウム表面に固定化される、界面分子、並びに
i)前記界面分子に結合した、前記解析物に結合させるための架橋剤、
ii)1つ又は複数の共有結合により前記界面分子に結合し、前記解析物に対して特異性の生体分子、
iii)前記界面分子に対して特異性の第1の抗原決定基を介して前記界面分子に結合し、前記解析物に対して特異性の第2の抗原決定基を有する、改変抗体の形態の生体分子、及び
iv)抗体のFcフラグメントを介して前記界面分子に結合し、前記解析物に対して特異性のFabフラグメントを有する、改変抗体の形態の生体分子
のうちの1つ
を含む、デバイス。
[実施形態2]
目的の解析物への結合に使用するための、酸化アルミニウム表面に固定化することが可能である、界面複合体であって、
分子体積2.2~25nm
3
中に少なくとも5つの遊離カルボキシル基をもたらす少なくとも1つのカルボキシリッチドメインを有するポリペプチドを含む界面分子であり、前記遊離カルボキシル基が2つ以上のカルボキシ基を含むアミノ酸によりもたらされ、これにより酸化アルミニウム表面に固定化されることが可能である、界面分子、並びに
i)前記界面分子に結合した、目的の解析物に結合させるための架橋剤、
ii)1つ又は複数の共有結合により前記界面分子に結合し、目的の解析物に対して特異性の生体分子、
iii)前記界面分子に対して特異性の第1の抗原決定基を介して前記界面分子に結合し、目的の解析物に対して特異性の第2の抗原決定基を有する、改変抗体の形態の生体分子、及び
iv)抗体のFcフラグメントを介して前記界面分子に結合し、目的の解析物に対して特異性のFabフラグメントを有する、改変抗体の形態の生体分子
のうちの1つ
を含む、界面複合体。
[実施形態3]
目的の解析物に結合が生じたかどうかを試験するための診断システム又はキットであって、
酸化アルミニウム表面、
分子体積2.2~25nm
3
中に少なくとも5つの遊離カルボキシル基をもたらす少なくとも1つのカルボキシリッチドメインを有するポリペプチドを含む界面分子であり、前記遊離カルボキシル基が2つ以上のカルボキシ基を含むアミノ酸によりもたらされ、これにより前記酸化アルミニウム表面に固定化されることが可能である、界面分子、並びに
i)前記界面分子に結合した、前記解析物に結合させるための架橋剤、
ii)1つ又は複数の共有結合により前記界面分子に結合し、前記解析物に対して特異性の生体分子、
iii)前記界面分子に対して特異性の第1の抗原決定基を介して前記界面分子に結合し、前記解析物に対して特異性の第2の抗原決定基を有する、改変抗体の形態の生体分子、及び
iv)抗体のFcフラグメントを介して前記界面分子に結合し、前記解析物に対して特異性のFabフラグメントを有する、改変抗体の形態の生体分子
のうちの1つ
を含み、
前記界面分子並びに(i)、(ii)、(iii)及び(iv)のうちの1つが、前記酸化アルミニウム表面に固定化されるか、又は
前記界面分子並びに(i)、(ii)、(iii)及び(iv)のうちの1つが、界面複合体として形成されて、前記酸化アルミニウム表面に固定化する前に解析物と接触する、診断システム又はキット。
[実施形態4]
前記酸化アルミニウム表面が、酸化アルミニウムの多孔質層により被覆された場合に発色することが可能な反射金属上に形成され、
前記酸化アルミニウム表面が、多孔質の陽極酸化表面であり、
試料と接触させて前記解析物について試験した場合、(i)が存在するとき前記架橋剤又は(ii)、(iii)若しくは(iv)が存在するとき前記生体分子のいずれかに前記解析物が結合すると、色の変化が検出されて、前記解析物が存在することを表す、実施形態3に記載の診断システム又はキット。
[実施形態5]
目的の解析物に結合が生じたかどうかを試験する方法であって、
a)固定化した界面分子を有する酸化アルミニウム表面を形成するステップであり、前記界面分子が、分子体積2.2~25nm
3
中に少なくとも5つの遊離カルボキシル基をもたらす少なくとも1つのカルボキシリッチドメインを有するポリペプチドを含み、前記遊離カルボキシル基が2つ以上のカルボキシ基を含むアミノ酸によりもたらされ、これにより前記界面分子が前記酸化アルミニウム表面に固定化され、前記界面分子が、
i)前記解析物に結合させるための架橋剤、
ii)前記解析物に対して特異性の生体分子、
iii)前記界面分子に対して特異性の第1の抗原決定基を有し、目的の前記解析物に対して特異性の第2の抗原決定基を有する、改変抗体の形態の生体分子、及び
iv)抗体のFcフラグメントを介して前記界面分子に結合し、目的の前記解析物に対して特異性のFabフラグメントを有する、改変抗体の形態の生体分子
のうちの1つに結合している、ステップ、
b)a)の前記表面を試料と接触させて前記解析物について試験するステップ、並びに
c)a)の前記表面への前記解析物の結合時に前記解析物の存在を検出するステップ
を含む、方法。
[実施形態6]
目的の解析物に結合が生じたかどうかを試験する方法であって、
a)酸化アルミニウム表面を形成するステップ、
b)前記酸化アルミニウム表面に結合させることが可能な界面複合体を形成するステップであり、前記界面複合体が、分子体積2.2~25nm
3
中に少なくとも5つの遊離カルボキシル基をもたらす少なくとも1つのカルボキシリッチドメインを有するポリペプチドを含む界面分子を含み、前記遊離カルボキシル基が2つ以上のカルボキシ基を含むアミノ酸によりもたらされ、これにより前記界面分子を前記酸化アルミニウム表面に固定化することが可能であり、前記界面分子が、
i)前記解析物に結合させるための架橋剤、
ii)前記解析物に対して特異性の生体分子、
iii)前記界面分子に対して特異性の第1の抗原決定基を有し、目的の前記解析物に対して特異性の第2の抗原決定基を有する、改変抗体の形態の生体分子、及び
iv)抗体のFcフラグメントを介して前記界面分子に結合し、目的の前記解析物に対して特異性のFabフラグメントを有する、改変抗体の形態の生体分子
のうちの1つに結合している、ステップ、
b)a)の前記界面複合体を試料と接触させて前記解析物について試験するステップ、
c)前記試料及びb)の前記界面複合体を前記酸化アルミニウム表面と接触させるステップ、並びに
d)前記解析物及び前記界面複合体の前記酸化アルミニウム表面への結合時に前記解析物の存在を検出するステップ
を含む、方法。
[実施形態7]
前記酸化アルミニウム表面が、酸化アルミニウムの多孔質層により被覆された場合に発色することが可能な反射金属上に形成され、
前記酸化アルミニウム表面が、多孔質の陽極酸化表面であり、
試料と接触させて前記解析物について試験した場合、(i)が存在するとき前記架橋剤、又は(ii)、(iii)若しくは(iv)が存在するとき前記生体分子のいずれかに前記解析物が結合すると、色の変化が検出されて、前記解析物が存在することを表す、実施形態5又は6に記載の方法。
[実施形態8]
前記カルボキシリッチドメインが、
分子体積2.2~25nm
3
中に少なくとも10個の遊離カルボキシル基、又は
分子体積2.2~25nm
3
中に少なくとも20個の遊離カルボキシル基、又は
分子体積2.2~17nm
3
中に少なくとも10個の遊離カルボキシル基、又は
分子体積2.2~17nm
3
中に少なくとも20個の遊離カルボキシル基、又は
分子体積7.0~17nm
3
中に少なくとも10個の遊離カルボキシル基、又は
分子体積7.0~17nm
3
中に少なくとも20個の遊離カルボキシル基
をもたらす、実施形態1~7のいずれか1つに記載のデバイス、界面複合体、診断システム、キット又は方法。
[実施形態9]
前記架橋剤が、前記界面分子に共有結合するか、又は
前記生体分子が、架橋剤により前記界面分子に共有結合するか、又は
前記界面分子及び前記生体分子が、アミノ酸配列として改変されて、前記界面分子及び前記生体分子が、ペプチド結合により結合するか、又は
前記界面分子が、カルボキシリッチドメインを組み込んでいる改変若しくは合成のタンパク質、ポリペプチド若しくは抗体であるか、又は
前記生体分子が、前記界面分子に対して特異性の第1の抗原決定基を有し、目的の前記解析物に対して特異性の第2の抗原決定基を有する、改変抗体であるか、又は
前記生体分子が、抗体のFcフラグメントを介して前記界面分子に結合し、目的の前記解析物に対して特異性のFabフラグメントを有する、改変抗体である、
実施形態1~8のいずれか1つに記載のデバイス、界面複合体、診断システム、キット又は方法。
[実施形態10]
前記界面分子が、連続的若しくは非連続的コーティングとして、描出した点若しくは線として、又はアレイとして、前記酸化アルミニウム表面に形成される、実施形態1~9のいずれか1つに記載のデバイス、診断システム、キット又は方法。
[実施形態11]
前記界面分子が、前記酸化アルミニウム表面に間隔をあけて配置された様々な種類の界面分子を含み、前記生体分子が前記界面分子のうちの1種に結合しているか、又は、特異性生体分子が各種の界面分子に、異なる特異性生体分子が結合するように結合している、実施形態10に記載のデバイス、診断システム、キット又は方法。
[実施形態12]
前記酸化アルミニウム表面が、粒子、粉末、薄膜、スライド、条片、フィルター、ビーズ、磁気ビーズ、磁気粒子又はコーティングの形態の基材に形成される、実施形態1~11のいずれか1つに記載のデバイス、診断システム、キット又は方法。
[実施形態13]
前記酸化アルミニウム表面が、アルミニウム金属又はアルミニウム合金のスパッタリング、蒸発、鋳造又は押出しにより形成され、これがさらに陽極酸化されて、多孔質の陽極酸化された酸化アルミニウム表面を形成する、実施形態1~12のいずれか1つに記載のデバイス、診断システム、キット又は方法。
[実施形態14]
前記酸化アルミニウム表面が、酸化アルミニウムのRFスパッタリング、反応スパッタリング又は化学蒸着により基材上に形成される、実施形態1~12のいずれか1つに記載のデバイス、診断システム、キット又は方法。
[実施形態15]
前記界面分子又は前記界面複合体が、適する溶媒中の前記界面分子の溶液から、前記酸化アルミニウム表面にコーティングとして固定化された後、前記溶液を除去する、実施形態1~14のいずれか1つに記載のデバイス、診断システム、キット又は方法。
[実施形態16]
前記界面分子が、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、及びガンマ-カルボキシグルタミン酸(Gla)からなる群から選択されるアミノ酸のうちの1つ又は複数を含む、実施形態1~14のいずれか1つに記載のデバイス、界面複合体、診断システム、キット又は方法。
[実施形態17]
前記界面分子が、ビタミンK依存性タンパク質、Glaドメインを含むそのフラグメント、又は修飾Glaドメインを含むそのフラグメントである、実施形態1~14のいずれか1つに記載のデバイス、界面複合体、診断システム、キット又は方法。
[実施形態18]
前記界面分子及び前記生体分子は、前記カルボキシリッチドメインが、タンパク質、ポリペプチド、抗原、抗体、糖質、アプタマー又は脂質に含まれるように改変された分子として形成される、実施形態1~14のいずれか1つに記載のデバイス、界面複合体、診断システム、キット又は方法。
[実施形態19]
前記カルボキシリッチドメインが、ビタミンK依存性タンパク質又はそのフラグメント若しくは誘導体の1つ又は複数のGlaドメインを含み、前記改変された分子が、プロテインA、プロテインAのフラグメントB又はIgG分子を含む、実施形態18に記載のデバイス、界面複合体、診断システム、キット又は方法。
[実施形態20]
前記界面分子は、Gla残基の1つ又は複数がGlu、Asp、Glu-Glu、Glu-Asp、Asp-Glu又はAsp-Aspと置換されている、タンパク質、タンパク質の1つ若しくは複数のGlaドメイン、又はタンパク質の修飾Glaドメインであり、前記タンパク質が、プロトロンビン、プロトロンビンのフラグメント1、プロテインS、凝固第IX因子、第X因子、第VII因子、プロテインC、マトリクスGlaタンパク質、及び骨Glaタンパク質からなる群から選択される、実施形態1~14のいずれか1つに記載のデバイス、界面複合体、診断システム、キット又は方法。
[実施形態21]
前記界面分子は、Gla残基の1つ又は複数がGlu、Asp、Glu-Glu、Glu-Asp、Asp-Glu又はAsp-Aspと置換されている、タンパク質、タンパク質の1つ若しくは複数のGlaドメイン、又はタンパク質の修飾Glaドメインであり、前記タンパク質が、プロトロンビン、プロトロンビンのフラグメント1、プロテインS、及び凝固第IX因子からなる群から選択される、実施形態1~14のいずれか1つに記載のデバイス、界面複合体、診断システム、キット又は方法。
[実施形態22]
前記生体分子が、抗体-抗原、抗体-ハプテン、酵素-基質、酵素-受容体、毒素-受容体、タンパク質-タンパク質、アビジン-ビオチン、アプタマー-アプタマー標的、及び薬物受容体-薬物からなる群から選択される結合対のメンバーである、実施形態1~21のいずれか1つに記載のデバイス、界面複合体、診断システム、キット又は方法。
[実施形態23]
前記界面分子及び前記生体分子が、抗体のFcフラグメントを介して前記界面分子に結合し且つ解析物に対して特異性のFabフラグメントを有する改変抗体の界面複合体の形態であり、前記界面複合体が、前記抗体の前記Fcフラグメントの各重鎖のカルボキシ末端にクローニングした前記カルボキシリッチドメインの1つ又は複数を含む、実施形態1~22のいずれか1つに記載のデバイス、界面複合体、診断システム、キット又は方法。
[実施形態24]
前記カルボキシリッチドメインの1つ又は複数が、ビタミンK依存性タンパク質、Glaドメインを含むそのフラグメント、又は修飾Glaドメインを含むそのフラグメント、の1つ又は複数のGlaドメインを含む、実施形態23に記載のデバイス、界面複合体、診断システム、キット又は方法。
[実施形態25]
前記抗体が、IgGであり、前記タンパク質が、第II因子、第VII因子、第X因子、プロテインC、プロテインZから選択され、前記界面複合体が、前記Fcフラグメントの各重鎖にクローニングした前記Glaドメインの1つ又は2つを含む、実施形態24に記載のデバイス、界面複合体、診断システム、キット又は方法。
[実施形態26]
生物医学的用途に使用するための酸化アルミニウム表面を再官能化するための界面分子の使用であって、前記界面分子が、分子体積2.2~25nm
3
中に少なくとも5つの遊離カルボキシル基をもたらす少なくとも1つのカルボキシリッチドメインを有するポリペプチドを含み、前記遊離カルボキシル基が2つ以上のカルボキシ基を含むアミノ酸によりもたらされ、これにより前記界面分子を前記酸化アルミニウム表面に固定化することが可能である、使用。
【配列表】