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特許7590888複合管の製造装置及び製造方法並びに複合管
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  • 特許-複合管の製造装置及び製造方法並びに複合管 図1
  • 特許-複合管の製造装置及び製造方法並びに複合管 図2(a)
  • 特許-複合管の製造装置及び製造方法並びに複合管 図2(b)
  • 特許-複合管の製造装置及び製造方法並びに複合管 図3
  • 特許-複合管の製造装置及び製造方法並びに複合管 図4
  • 特許-複合管の製造装置及び製造方法並びに複合管 図5
  • 特許-複合管の製造装置及び製造方法並びに複合管 図6
  • 特許-複合管の製造装置及び製造方法並びに複合管 図7
  • 特許-複合管の製造装置及び製造方法並びに複合管 図8
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  • 特許-複合管の製造装置及び製造方法並びに複合管 図11
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】複合管の製造装置及び製造方法並びに複合管
(51)【国際特許分類】
   B29D 23/18 20060101AFI20241120BHJP
   F16L 11/11 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
B29D23/18
F16L11/11
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021026250
(22)【出願日】2021-02-22
(65)【公開番号】P2021138140
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-11-10
(31)【優先権主張番号】P 2020035255
(32)【優先日】2020-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】金平 豊
(72)【発明者】
【氏名】萩野 智和
(72)【発明者】
【氏名】市原 幸治
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-202763(JP,A)
【文献】特開2008-202795(JP,A)
【文献】特開平11-030386(JP,A)
【文献】特開2010-210041(JP,A)
【文献】特開2005-164031(JP,A)
【文献】特開平03-194283(JP,A)
【文献】特開平08-075083(JP,A)
【文献】特開2007-139043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/00-48/96
B29C 64/00-64/40
B29C 67/00-67/08
B29C 67/24-69/02
B29C 73/00-73/34
B29D 1/00-29/10
B29D 33/00
B29D 99/00
B33Y 10/00-99/00
E03C 1/00-1/33
F16L 3/00-3/26
F16L 9/00-11/26
F16L 57/00-58/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
山部と谷部が交互に配置された波形断面をなす可撓性の波形管によって可撓性の内管を被覆してなる複合管を製造する装置であって、
前記波形管となる樹脂を供給する樹脂供給部と、
前記内管を軸線に沿って送り出す内管送出口、及び前記樹脂供給部に接続されるとともに前記内管送出口を囲む環状の押出し口を有する押出ノズルと、
前記押出ノズルから管状になって押し出された前記樹脂を前記波形断面に成形する波形型面を有する波形管成形部と、
を備え、前記押出し口の内周径が、前記波形型面における最小の内接円径より大きく、かつ前記波形管成形部内における前記波形管と前記内管との間の軸方向の全域にわたって連続する通気隙間が形成されるように、前記波形型面の形状又は前記押出し口の縁形状が設定されており、
前記波形管のうち前記内管と最も近接された最近接部分における内接円径(φ1)と前記内管の外周径(φ2)との比(φ2/φ1)が0.95より大きくなり、かつ前記波形管及び内管が互いに同軸をなすときの前記最近接部分と前記内管の外周面との間隔が1mm以下となり、かつ前記最近接部分が前記波形管の周方向に非連続となるように、前記波形型面の形状又は前記押出し口の縁形状が設定されていることを特徴とする製造装置。
【請求項2】
山部と谷部が交互に配置された波形断面をなす可撓性の波形管によって可撓性の内管を被覆してなる複合管を製造する装置であって、
前記波形管となる樹脂を供給する樹脂供給部と、
前記内管を軸線に沿って送り出す内管送出口、及び前記樹脂供給部に接続されるとともに前記内管送出口を囲む環状の押出し口を有する押出ノズルと、
前記押出ノズルから管状になって押し出された前記樹脂を前記波形断面に成形する波形型面を有する波形管成形部と、
を備え、前記押出し口の内周径が、前記波形型面における最小の内接円径より大きく、かつ前記波形管成形部内における前記波形管と前記内管との間の軸方向の全域にわたって連続する通気隙間が形成されるように、前記波形型面の形状又は前記押出し口の縁形状が設定されており、
前記波形型面の同じ軸方向位置に、内接円径が最小となる突出型部と、前記突出型部より引っ込んだ引込型部とが設けられ、前記突出型部が周方向に非連続であることを特徴とする製造装置。
【請求項3】
前記波形管成形部が、互いに周方向に合わさって筒状の成形型を構成する割型の対を含み 、
前記引込型部が前記割型どうしの合わせ目を跨ぎ、前記突出型部が前記合わせ目からずれて何れかの割型に配置されていることを特徴とする請求項に記載の製造装置。
【請求項4】
山部と谷部が交互に配置された波形断面をなす可撓性の波形管によって可撓性の内管を被覆してなる複合管を製造する装置であって、
前記波形管となる樹脂を供給する樹脂供給部と、
前記内管を軸線に沿って送り出す内管送出口、及び前記樹脂供給部に接続されるとともに前記内管送出口を囲む環状の押出し口を有する押出ノズルと、
前記押出ノズルから管状になって押し出された前記樹脂を前記波形断面に成形する波形型面を有する波形管成形部と、
を備え、前記押出し口の内周径が、前記波形型面における最小の内接円径より大きく、かつ前記波形管成形部内における前記波形管と前記内管との間の軸方向の全域にわたって連続する通気隙間が形成されるように、前記波形型面の形状又は前記押出し口の縁形状が設定されており、
前記波形管成形部が、前記軸線に沿う軌道部分を共有する2つの環状軌道と、各環状軌道上に循環移動可能に並べられた複数の割型とを備え、前記軌道部分上を移動するときの前記2つの環状軌道の対をなす割型どうしが互いに周方向に合わさることによって筒状の成形型を構成することを特徴とする製造装置。
【請求項5】
山部と谷部が交互に配置された波形断面をなす可撓性の波形管によって可撓性の内管を被覆してなる複合管を製造する装置であって、
前記波形管となる樹脂を供給する樹脂供給部と、
前記内管を軸線に沿って送り出す内管送出口、及び前記樹脂供給部に接続されるとともに前記内管送出口を囲む環状の押出し口を有する押出ノズルと、
前記押出ノズルから管状になって押し出された前記樹脂を前記波形断面に成形する波形型面を有する波形管成形部と、
を備え、前記押出し口の内周径が、前記波形型面における最小の内接円径より大きく、かつ前記波形管成形部内における前記波形管と前記内管との間の軸方向の全域にわたって連続する通気隙間が形成されるように、前記波形型面の形状又は前記押出し口の縁形状が設定されており、
前記押出ノズルの前記押出し口の内周縁に切欠凹部が形成されていることを特徴とする製造装置。
【請求項6】
前記押出ノズルの前記内管送出口の内周径が前記内管の外周径より大きく、前記内管送出口の内周面と前記内管の外周面との間に、前記通気隙間と連なる気体供給路が形成されることを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載の製造装置。
【請求項7】
前記波形管成形部が、前記波形型面に前記樹脂を吸い付かせる吸引機構を含むことを特徴とする請求項1~6の何れか1項に記載の製造装置。
【請求項8】
山部と谷部が交互に配置された波形断面をなす可撓性の波形管によって可撓性の内管を被覆してなる複合管を製造する方法であって、
前記内管を、押出ノズルの中央部の内管送出口から軸線に沿って波形管成形部へ送り出す工程と、
前記波形管となる樹脂を前記押出ノズルに供給して、前記押出ノズルの前記内管送出口を囲む環状の押出し口から前記樹脂を管状にして前記波形管成形部へ押し出す工程と、
前記押し出された前記管状の樹脂を、前記波形管成形部の波形型面によって前記波形断面に成形する工程と、
を備え、前記押出し口の内周径が、前記波形型面における最小の内接円径より大きく、
前記成形工程において、前記波形管成形部内における前記波形管と前記内管との間の軸方向の全域にわたって連続する通気隙間を形成し、
前記波形管のうち前記内管と最も近接された最近接部分における内接円径(φ1)と前記内管の外周径(φ2)との比(φ2/φ1)が0.95より大きくなり、かつ前記波形管及び内管が互いに同軸をなすときの前記最近接部分と前記内管の外周面との間隔が1mm以下となり、かつ前記最近接部分が前記波形管の周方向に非連続となるようにすることを特徴とする製造方法。
【請求項9】
山部と谷部が交互に配置された波形断面をなす可撓性の波形管によって可撓性の内管を被覆してなる複合管を製造する方法であって、
前記内管を、押出ノズルの中央部の内管送出口から軸線に沿って波形管成形部へ送り出す工程と、
前記波形管となる樹脂を前記押出ノズルに供給して、前記押出ノズルの前記内管送出口を囲む環状の押出し口から前記樹脂を管状にして前記波形管成形部へ押し出す工程と、
前記押し出された前記管状の樹脂を、前記波形管成形部の波形型面によって前記波形断面に成形する工程と、
を備え、前記押出し口の内周径が、前記波形型面における最小の内接円径より大きく、
前記成形工程において、前記波形管成形部内における前記波形管と前記内管との間の軸方向の全域にわたって連続する通気隙間を形成し、
前記成形工程において、前記波形型面のうち内接円径が最小となる突出型部によって前記波形管に内側凸部を形成し、かつ前記波形管の前記内側凸部と同じ軸方向位置には、前記突出型部より引っ込んだ引込型部によって前記内側凸部より大径の非突出部を形成して、前記内側凸部を周方向に非連続とし、前記非突出部と前記内管との間に前記通気隙間の一部である連通隙間部を形成することを特徴とする製造方法。
【請求項10】
山部と谷部が交互に配置された波形断面をなす可撓性の波形管によって可撓性の内管を被覆してなる複合管を製造する方法であって、
前記内管を、押出ノズルの中央部の内管送出口から軸線に沿って波形管成形部へ送り出す工程と、
前記波形管となる樹脂を前記押出ノズルに供給して、前記押出ノズルの前記内管送出口を囲む環状の押出し口から前記樹脂を管状にして前記波形管成形部へ押し出す工程と、
前記押し出された前記管状の樹脂を、前記波形管成形部の波形型面によって前記波形断面に成形する工程と、
を備え、前記押出し口の内周径が、前記波形型面における最小の内接円径より大きく、
前記成形工程において、前記波形管成形部内における前記波形管と前記内管との間の軸方向の全域にわたって連続する通気隙間を形成し、
前記成形工程において、前記波形管の内周に軸方向へ延びる縦スジ状凸部を形成することを特徴とする製造方法。
【請求項11】
前記押出ノズルの前記内管送出口の内周径が前記内管の外周径より大きく、
前記成形工程において、前記内管送出口の内周面と前記内管の外周面との間を通して、
前記通気隙間に気体が供給されることを特徴とする請求項8~10の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
前記波形管成形部の吸引機構によって、前記樹脂を前記波形型面に吸い付かせることを特徴とする請求項8~11の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項13】
山部と谷部が交互に配置された波形断面をなす可撓性の波形管と、前記波形管によって被覆された可撓性の内管とを備え、
前記波形管のうち前記内管と最も近接された最近接部分における内接円径(φ1)と前記内管の外周径(φ2)との比(φ2/φ1)が0.95より大きくなり、前記波形管及び内管が互いに同軸をなすときの前記最近接部分と前記内管の外周面との間隔が1mm以下であり、かつ前記波形管と前記内管との間の軸方向の全域にわたって連続する通気隙間が形成され、前記最近接部分が前記波形管の周方向に非連続であることを特徴とする複合管。
【請求項14】
前記波形管には、前記内管に近接され、かつ周方向に非連続の内側凸部と、前記内側凸部より大径の非突出部とが互いに同じ軸方向位置に形成され、前記非突出部と前記内管との間に前記通気隙間の一部である連通隙間部が形成されていることを特徴とする請求項13に記載の複合管。
【請求項15】
前記波形管の内周には軸方向へ延びる縦スジ状凸部が形成されていることを特徴とする請求項13又は14に記載の複合管。
【請求項16】
前記波形管が、発泡倍率1.05倍~4倍の発泡樹脂を含むことを特徴とする請求項13~15の何れか1項に記載の複合管。
【請求項17】
前記波形管が、ポリエチレンを主成分とし、ポリプロピレンを50%未満含むことを特徴とする請求項13~16の何れか1項に記載の複合管。
【請求項18】
前記内管が、架橋ポリエチレン、ポリブテン、耐熱ポリエチレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレンから選択された1以上の樹脂を含み、または前記1以上の樹脂と金属を含むことを特徴とする請求項13~17の何れか1項に記載の複合管 。
【請求項19】
前記内管が、径方向に積層された複数の樹脂層を含むことを特徴とする請求項13~18の何れか1項に記載の複合管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内管を被覆層で被覆してなる複合管の製造装置等に関し、特に波形管(コルゲート管)を被覆層とする複合管の製造装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、内管を波形管で被覆した複合管の製造方法が開示されている。内管は予め用意される。該内管を連続的に送りながら、その外周部を囲むように樹脂を管状にして押出機から押し出し、更に下流側のバキューム式の成形型によって前記樹脂を波形断面の波形管に成形する。
【0003】
特許文献2には、内管と波形管の間に発泡ポリウレタン等の中間層を設けた複合管が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-202763号公報
【文献】国際公開WO2017/213007A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたこの種の複合管においては、内管の内部を通る流体の圧力、流量、温度などが急変したとき、内管がばたついて波形管を叩くことで、さや鳴り音等の異音が発生しやすい。発明者等の知見によれば、かかる異音発生を抑制するには波形管の谷部と内管との間の隙間を1mm程度以下とすることが必要である。一方、波形管の谷部を内管と密着される寸法に成形しようとすると、波形管となる管状の樹脂を成形型面に吸い付かせる際に、樹脂と内管との間に空気が供給されにくく、うまく成形できない。
特許文献2の複合管は、中間層を設けることによって、異音発生を抑制でき、かつ成形時の空気供給不足が問題になることもない。しかし、複雑な成形法であり加工ロスが多くなることが予想され、かつコスト高となる。
本発明は、かかる事情に鑑み、内管と波形管との間に発泡樹脂の中間層を設けることなく異音発生を抑制でき、かつ波形管の成形時には、内管と波形管との間に気体を確実に供給して、波形管を確実に成形できる複合管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明装置は、山部と谷部が交互に配置された波形断面をなす可撓性の波形管によって可撓性の内管を被覆してなる複合管を製造する装置であって、
前記波形管となる樹脂を供給する樹脂供給部と、
前記内管を軸線に沿って送り出す内管送出口、及び前記樹脂供給部に接続されるとともに前記内管送出口を囲む環状の押出し口を有する押出ノズルと、
前記押出ノズルから管状になって押し出された前記樹脂を前記波形断面に成形する波形型面を有する波形管成形部と、
を備え、前記押出し口の内周径が、前記波形型面における最小の内接円径より大きく、かつ前記波形管成形部内における前記波形管と前記内管との間の軸方向の全域にわたって連続する通気隙間が形成されるように、前記波形型面の形状又は前記押出し口の縁形状が設定されていることを特徴とする。
当該特徴構成を有する複合管製造装置によれば、内接円径が押出し口の内周径よりも小さい部分を有する波形管が形成される。該部分を内管の外周面に近接させて、内管のばたつきを抑えることができる。したがって、内管と波形管との間に発泡樹脂の中間層を設けることなく異音発生を抑制できる。
一方、波形管の成形時には、通気隙間に気体が供給されることで、波形管となる樹脂を波形型面に確実に密着させることができ、波形管を確実に成形できる。
【0007】
前記波形管のうち前記内管と最も近接された最近接部分における内接円径(φ1)と前記内管の外周径(φ2)との比(φ2/φ1)が0.95より大きくなり、かつ前記波形管及び内管が互いに同軸をなすときの前記最近接部分と前記内管の外周面との間隔が1mm以下となるように、前記波形型面の形状又は前記押出し口の縁形状が設定されていることが好ましい。
これによって、中間層を設けることなく異音発生を確実に抑制できる。
前記最近接部分は、「前記内接円径が押出し口の内周径よりも小さい部分」を構成する。
【0008】
前記押出ノズルの前記内管送出口の内周径が前記内管の外周径より大きく、前記内管送出口の内周面と前記内管の外周面との間に、前記通気隙間と連なる気体供給路が形成されることが好ましい。
波形管の成形時には、空気(外気)等の気体が気体供給路から通気隙間に供給されることで、前記管状の樹脂を波形型面に確実に密着させることができ、波形管を確実に成形できる。
【0009】
前記波形型面の同じ軸方向位置に、内接円径が最小となる突出型部と、前記突出型部より引っ込んだ引込型部とが設けられ、前記突出型部が周方向に非連続であることが好ましい。
これによって、前記波形管成形部内における前記波形管と前記内管との間の軸方向の全域にわたって連続する通気隙間が形成されるように、前記波形型面の形状が設定される。詳しくは、前記波形管には、前記突出型部によって前記最近接部分となる内側凸部が形成される。かつ、前記引込型部によって前記内側凸部より大径の非突出部が形成される。内側凸部は周方向に非連続となる。非突出部と内管との間に通気隙間の一部である連通隙間部が形成される。前記内側凸部によって内管のばたつきを抑えることができ、異音発生を抑制できる。また、内側凸部が配置された軸方向位置においても、通気隙間が途切れなく連続するようにでき、波形管を確実に成形できる。
【0010】
前記波形管成形部が、互いに周方向に合わさって筒状の成形型を構成する割型の対を含み、
前記引込型部が前記割型どうしの合わせ目を跨ぎ、前記突出型部が前記合わせ目からずれて何れかの割型に配置されていることが好ましい。
これによって、合わせ目における波形型面の内接円径を突出型部における内接円径より大きくでき、波形管となる樹脂が合わせ目に噛み込むリスクを低減できる。したがって、噛み込みによる運転停止を回避しながら、波形管の内側凸部を内管に十分近接させて内管のばたつきを抑えることができ、異音発生を確実に抑制できる。
【0011】
前記波形管成形部が、前記軸線に沿う軌道部分を共有する2つの環状軌道と、各環状軌道上に循環移動可能に並べられた複数の割型とを備え、前記軌道部分上を移動するときの前記2つの環状軌道の対をなす割型どうしが互いに周方向に合わさることによって筒状の成形型を構成することが好ましい。
前記筒状の成形型の内周面が波形型面となる。該成形型によって波形管を成形できる。
【0012】
前記波形管成形部が、前記波形型面に前記樹脂を吸い付かせる吸引機構を含むことが好ましい。
吸引機構の作動時には、通気隙間に気体が供給されることで、波形型面に前記樹脂を確実に吸い付かせることができ、波形管を確実に成形できる。
【0013】
前記押出ノズルの前記押出し口の内周縁に切欠凹部が形成されていることが好ましい。
これによって、前記波形管成形部内における前記波形管と前記内管との間の軸方向の全域にわたって連続する通気隙間が形成されるように、前記押出し口の縁形状が設定される。詳しくは、前記押出ノズルから管状になって押し出された樹脂の内周における、前記切欠凹部と対応する周方向位置に、軸方向へ延びる縦スジ状凸部が形成される。縦スジ状凸部は、前記管状の樹脂が押出ノズルから出て前記波形型面に達するまでの間における、前記管状の樹脂と内管との最も近接する部分となる。前記波形型面に到達した後の管状の樹脂すなわち波形管においては、縦スジ状凸部のうち、波形型面の前記突出型部などの最小内接円径部分と重なる部分が、内管と最も近接する最近接部分となる。これによって、内管のばたつきを抑え、異音発生を抑制できる。かつ、通気隙間が軸方向に途切れなく連続するようにでき、波形管を確実に成形できる。
前記谷部の内接円径を押出し口の内周縁径より小さくすることで、縦スジ状凸部の所要突出高さを小さくでき、切欠凹部の所要深さを小さくできる。
【0014】
本発明方法は、山部と谷部が交互に配置された波形断面をなす可撓性の波形管によって可撓性の内管を被覆してなる複合管を製造する方法であって、
前記内管を、押出ノズルの中央部の内管送出口から軸線に沿って波形管成形部へ送り出す工程と、
前記波形管となる樹脂を前記押出ノズルに供給して、前記押出ノズルの前記内管送出口を囲む環状の押出し口から前記樹脂を管状にして前記波形管成形部へ押し出す工程と、
前記押し出された前記管状の樹脂を、前記波形管成形部の波形型面によって前記波形断面に成形する工程と、
を備え、前記押出し口の内周径が、前記波形型面における最小の内接円径より大きく、
前記成形工程において、前記波形管成形部内における前記波形管と前記内管との間の軸方向の全域にわたって連続する通気隙間を形成することを特徴とする。
当該複合管製造方法によれば、波形管の成形時には、通気隙間に気体が供給されることで、波形管となる樹脂を波形型面に確実に密着させることができ、波形管を確実に成形できる。該波形管は、内接円径が押出し口の内周径よりも小さい部分を有する。該部分を内管の外周面に近接させて、内管のばたつきを抑えることができる。したがって、内管と波形管との間に発泡樹脂の中間層を設けることなく異音発生を抑制できる。
なお、成形上、波形型面が全周にわたり押出し口の内周径よりも小さい部分を有することは困難である。波形管成形部の割型が合わさるよりも上流で、前記波形管となる樹脂が押出し口から吐出されるため、割型の合わせ面の内周径が押出し口の内周径よりも小さいと、合わせ面に樹脂噛みが発生してしまうからである。前記の突出型部や前記切欠凹部などを設けることで、前記樹脂噛みを回避しながら、内接円径が押出し口の内周径よりも小さい部分を有するような波形管を成形可能となる。
【0015】
前記波形管のうち前記内管と最も近接された最近接部分における内接円径(φ1)と前記内管の外周径(φ2)との比(φ2/φ1)が0.95より大きくなり、かつ前記波形管及び内管が互いに同軸をなすときの前記最近接部分と前記内管の外周面との間隔が1mm以下となるようにすることが好ましい。
これによって、中間層を設けることなく異音発生を確実に抑制できる。
【0016】
前記押出ノズルの前記内管送出口の内周径が前記内管の外周径より大きく、
前記成形工程において、前記内管送出口の内周面と前記内管の外周面との間を通して、前記通気隙間に気体が供給されることが好ましい。
これによって、前記管状の樹脂を波形型面に確実に密着させることができ、波形管を確
実に成形できる。
【0017】
前記成形工程において、前記波形型面のうち内接円径が最小となる突出型部によって前記波形管に内側凸部を形成し、かつ前記波形管の前記内側凸部と同じ軸方向位置には、前記突出型部より引っ込んだ引込型部によって前記内側凸部より大径の非突出部を形成して、前記内側凸部を周方向に非連続とし、前記非突出部と前記内管との間に前記通気隙間の一部である連通隙間部を形成することが好ましい。
前記内側凸部の頂部が前記最近接部分となることによって内管のばたつきを抑えて、異音発生を抑制できる。また、内側凸部が配置された軸方向位置においても、連通隙間部によって、通気隙間が途切れなく連続するようにでき、波形管を確実に成形できる。
【0018】
前記成形工程において、前記波形管の内周に軸方向へ延びる縦スジ状凸部を形成することが好ましい。
該縦スジ状凸部における谷部に形成された部分が、前記最近接部分となり、内管のばたつきを抑え、異音発生を抑制できる。かつ、通気隙間が軸方向に途切れなく連続するようにでき、波形管を確実に成形できる。
【0019】
前記波形管成形部の吸引機構によって、前記樹脂を前記波形型面に吸い付かせることが好ましい。
このとき、通気隙間に気体が供給されることで、波形管を確実に成形できる。
【0020】
また、本発明に係る複合管は、山部と谷部が交互に配置された波形断面をなす可撓性の波形管と、前記波形管によって被覆された可撓性の内管とを備え、
前記波形管のうち前記内管と最も近接された最近接部分における内接円径(φ1)と前記内管の外周径(φ2)との比(φ2/φ1)が0.95より大きくなり、前記波形管及び内管が互いに同軸をなすときの前記最近接部分と前記内管の外周面との間隔が1mm以下であり、かつ前記波形管と前記内管との間の軸方向の全域にわたって連続する通気隙間が形成されていることを特徴とする。
当該複合管によれば、最近接部分によって内管のばたつきを抑えることができる。したがって、内管と波形管との間に発泡樹脂の中間層を設けることなく異音発生を抑制でき、製造コストを低減できる。波形管の成形時には、通気隙間に気体が供給されることで、波形管を確実に成形できる。
【0021】
前記波形管には、前記内管に近接され、かつ周方向に非連続の内側凸部と、前記内側凸部より大径の非突出部とが互いに同じ軸方向位置に形成され、前記非突出部と前記内管との間に前記通気隙間の一部である連通隙間部が形成されていることが好ましい。
前記内側凸部の頂部が前記最近接部分となることによって内管のばたつきを抑えて、異音発生を抑制できる。また、内側凸部が配置された軸方向位置においても、連通隙間部によって、通気隙間が途切れなく連続するようにできる。
【0022】
前記波形管の内周には軸方向へ延びる縦スジ状凸部が形成されていることが好ましい。
該縦スジ状凸部における谷部に形成された部分が、前記最近接部分となり、内管のばたつきを抑え、異音発生を抑制できる。かつ、通気隙間が軸方向に途切れなく連続するようにでき、波形管を確実に成形できる。
【0023】
前記波形管が、発泡倍率1.05倍から4倍、より好ましくは1.2倍から2.5倍の発泡樹脂を含むことが好ましい。
成形時の発泡によって、最近接部分を内管に一層近接させることができる。
【0024】
前記波形管が、ポリエチレンを主成分とし、ポリプロピレンを50%未満含むことが好ましい。
前記内管が、架橋ポリエチレン、ポリブテン、耐熱ポリエチレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレンから選択された1以上の樹脂を含み、または前記1以上の樹脂と金属を含むことが好ましい。
前記内管が、径方向に積層された複数の樹脂層を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、複合管の内管と波形管との間に発泡樹脂の中間層を設けることなく、異音発生を抑制できる。波形管の成形時には、内管と波形管との間に気体を確実に供給して、波形管を確実に成形できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る複合管を示し、その一部を図2(a)のI-I線に沿う断面にした側面図である。
図2(a)】図2(a)は、図1のII-II線に沿う、前記複合管の断面図である。
図2(b)】図2(b)は、前記第1実施形態の複合管の変形態様を示す断面図である。
図3図3(a)は、複合管製造装置の一例を示す平面図である。図3(b)は、複合管製造装置の他の一例を示す平面図である。
図4図4は、前記複合管製造装置の共有軌道部分及びその周辺部の平面断面図である。
図5図5は、図4のV-V線に沿う、前記複合管製造装置の押出しノズルの断面図である。
図6図6は、前記波形管成形部の断面図である。
図7図7は、前記波形管成形部の対をなす割型の断面図である。
図8図8は、本発明の第2実施形態に係る複合管を示し、その一部を図9のVIII-VIII線に沿う断面にした側面図である。
図9図9は、図8のIX-IX線に沿う、前記複合管の断面図である。
図10図10は、前記第2実施形態に係る複合管製造装置の一部の断面図である。
図11図11は、図10のXI-XI線に沿う、前記第2実施形態の複合管製造装置の押出しノズルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
<第1実施形態(図1図7)>
図1及び図2(a)は、本発明の第1実施形態に係る複合管1を示したものである。複合管1は、内管9と、その外側の波形管10(コルゲート管)を備えている。
【0028】
内管9は、全長にわたって一定の円形断面に形成され、かつ可撓性を有している。内管9の材質としては、架橋ポリエチレン(PE-X)、ポリブテン、高耐熱ポリエチレン(PE-RT)、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)などの合成樹脂が挙げられる。内管9が、これら合成樹脂の何れか1つを主成分として含んでいてもよく、複数の合成樹脂を含んでいてもよい。
内管9が複数の樹脂層を含み、これら樹脂層が内管9の径方向に積層されていてもよい。
更に、内管9が、金属強化多層構造などの金属を含む複合樹脂管であってもよい。
内管9の材質として、上記は例示であり、可撓性、流体流通性などの所要の性能を確保し得るものであれば、特に制限はない。
内管9の内部が、水、湯などの流体が通る流体通路となる。
【0029】
波形管10は、山部11及び谷部12を有し、波形断面になっている。山部11と谷部12とが管軸方向に交互に一定の配置ピッチで形成されている。
山部11は、波形管10の外部から見て環状の凸部となり、内部から見ると環状の凹部となっている。谷部12は、波形管10の外部から見て環状の凹部となり、内部から見ると環状の凸部となっている。
【0030】
波形管10は、可撓性の樹脂によって構成され、好ましくは発泡樹脂によって構成されている。前記発泡樹脂の発泡倍率は、好ましくは1.05倍~4倍であり、より好ましくは1.2倍から2.5倍である。
より好ましくは、波形管10は、ポリエチレンを主成分(50wt%以上)とし、50wt%未満のポリプロピレンを含む。
柔軟性の観点からは、波形管10の主成分のポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)が好ましい。
波形管10の材質として、上記は例示であり、可撓性、内管9に対する保護性などの所要の性能を確保し得るものであれば、波形管10の材質として特に制限はない。
【0031】
波形管10の内部に内管9が挿通されている。内管9の外周が波形管10によって被覆されている。内管9と波形管10とは互いに同一の軸線L上に略配置されている。
【0032】
図1及び図2(a)に示すように、波形管10における、一部(第1)の谷部12Aに、内側凸部13が形成されている。好ましくは、波形管10の軸方向の一定間隔置きに、内側凸部13を有する谷部12Aが配置されている。したがって、内側凸部13は、波形管10の軸方向に非連続である。
1つ置き又は複数個置きもしくは多数個置きの谷部12が、内側凸部13を有する谷部12Aであってもよい。すべての谷部12が、内側凸部13を有する谷部12Aであってもよい。谷部12A以外の谷部12は、内側凸部13を有さない谷部12Bである。
【0033】
内側凸部13は、他(第2)の、内側凸部13を有さない谷部12Bの谷底部よりも内管9側(軸線L側)へ突出されている。該内側凸部13の頂部が、波形管10における最も内管9と近接された最近接部分13pとなっている。内側凸部13は、谷部12の周方向に好ましくは等間隔置きに複数(例えば4つ)配置されている。したがって、内側凸部13及び最近接部分13pは、波形管10の周方向に非連続である。
【0034】
周方向に隣り合う内側凸部13どうしの間に、非突出部14が形成されている。非突出部14は、内側凸部13より大径である。内側凸部13と非突出部14とが、波形管10の互いに同じ軸方向位置における周方向に並んで配置されている。
波形管10における谷部12Aの外周面には、内側凸部13に対応する凹部15が形成されている。
【0035】
図1に示すように、内側凸部13の軸線Lと平行な断面は、半楕円状ないしは放物線状に形成されている。
図2(a)に示すように、内側凸部13の軸線Lと直交する断面は、円弧状に形成されている。
なお、内側凸部13の断面形状は、前記に限らず適宜改変できる。図2(b)に示すように、内側凸部13の軸線Lと直交する断面形状が台形状でもよい。
【0036】
図1に示すように、谷部12Aにおける4つの内側凸部13と接する内接円の直径(内接円径)φ13と、内管9の外周径φとの比(φ/φ13)は、0.95より大きい。好ましくは、0.95<(φ/φ13)≦0.99である。
前記内接円径φ13は、各内側凸部13と軸線Lとの距離の2倍に相当する。
波形管10及び内管9が互いに同軸をなすときの最近接部分13pと内管9の外周面との間隔は、1mm以下であり、好ましくは0.8mm以下である。
最近接部分13pは、周方向に非連続である限り、内管9の外周面と接していてもよい。
【0037】
内側凸部13の突出高さH13(非突出部14の内周面から最近接部分13pまでの径方向距離)と、谷部12の深さD12(山部11の外周面から谷部12の外周面までの径方向距離)との比(H13/D12)は、好ましくは1≦(H13/D12)≦5である。
波形管10と内管9との間には、通気隙間18が形成されている。通気隙間18の大きさD18(波形管10と内管9との間隔)は、谷部12Bにおいて、好ましくは3mm≦D18≦6mmである。D18が小さ過ぎると、後述する波形管10の成形に支障を来す。D18が大き過ぎると、複合管1が必要以上に大径になったり、波形管10を縮めにくくまたは曲げにくくなったりする。
内側凸部13を有さない谷部12Bを形成することによって、波形管10と内管9との間の通気隙間18をより大きくすることができる。通気隙間18が空気断熱層となることによって、複合管1の保温性が向上する。
【0038】
通気隙間18は、軸方向に並んだ第1谷部12Aによって、複数の隙間部18aに区分けされている。隣接する2つの第1谷部12Aどうしの間における、波形管10と内管9との間の環状空間が、隙間部18aを構成する。隙間部18aは、山部11と内管9との間の隙間部分18bと、第2谷部12Bと内管9との間の隙間部分18cとを含む。
非突出部14と内管9との間には、通気隙間18の一部である連通隙間部18eが形成されている。谷部12Aを挟んで両側の隙間部18aどうしが連通隙間部18eを介して連通している。ひいては、通気隙間18が、複合管1の軸方向の全域にわたって途切れることなく連続している。連通隙間部18eは、複合管1の軸方向に対し、直線状に形成されている必要はなく、軸方向の位置によって周方向の位置が変わっていてもよい。
【0039】
図3は、複合管1の製造装置3を示したものである。製造装置3は、樹脂供給部4と、押出ノズル20と、波形管成形部30とを備えている。
詳細な図示は省略するが、樹脂供給部4は、波形管10の原料となる樹脂19を受け入れるホッパー、樹脂19を加熱溶融するヒータ、発泡剤の添加部、樹脂19と発泡剤を混錬して押し出すシリンダー及びスクリューを含む。ホッパー投入前の原料樹脂19に発泡剤が含まれていてもよい。
【0040】
図3(a)に示すように、樹脂供給部4及び押出ノズル20は、クロスヘッドダイを構成していてもよく、図3(b)に示すように、オフセットダイを構成していてもよい。
【0041】
図4及び図5に示すように、押出ノズル20は、環状になっている。押出ノズル20の中心穴は、内管送出口21を構成している。内管送出口21の内周径φ21は、内管9の外周径φ9より大きい(φ21>φ)。
【0042】
押出ノズル20には、環状の押出し口22が形成されている。該押出し口22が内管送出口21を囲んでいる。押出し口22の上流端に樹脂供給部4が接続されている。押出し口22の環状の下流端が、押出ノズル20の先端面に開口されている。
【0043】
図3及び図4に示すように、押出ノズル20の押出し方向の下流側(図3において右側)に波形管成形部30(コルゲーター)が配置されている。波形管成形部30は、2つ(複数)の長円形の環状軌道31と、環状軌道31ごとの複数個の半割筒状の割型32と、吸引機構50を備えている。環状軌道31は、垂直に配置されていてもよく、水平に配置されていてもよく、斜めに配置されていてもよい。2つの環状軌道31は、互いに1の軌道部分31aを共有している。共有軌道部分31aは、押出ノズル20の軸線(押出し方向)を真っ直ぐに延長した軸線Lに沿う直線状になっている。
【0044】
図3に示すように、各環状軌道31上に複数の割型32が環状に並べられている。図示は省略するが、モーター、ギア、あるいはチェーン、スプロケットなどを含む移動機構によって、割型32が、対応する環状軌道31上を循環移動される。2つの環状軌道31の割型32の動きは互いに同期される。
図4及び図6に示すように、2つの環状軌道31の割型32は、共有の軌道部分31a上において互いに対をなす。これら割型32の対が、軌道部分31a上を移動する期間中、周方向に合わさることによって、閉じた筒状の成形型33となる。複数の成形型33が軸線L上に一列に並べられている。
図6に示すように、成形型33の180度離れた2箇所には、対をなす割型32どうしの合わせ目38が形成されている。
【0045】
図4に示すように、各割型32ひいては成形型33の内周面は、波形型面39を構成している。波形型面39は、山型部34及び谷型部35を含む。これら型部34,35が軸線Lに沿って交互に配置されている。
山型部34は、径方向外側へ凹むとともに成形型33の全周にわたる凹環状に形成されている。山型部34の内周径φ34は、押出し口22の外周径φ22Aより大きい(φ34>φ22A)。
谷型部35は、山型部34より径方向内側(軸線L側)へ突出する凸環状に形成されている。
【0046】
波形型面39の形状は、波形管成形部30内における波形管10と内管9との間に通気隙間18が形成されるように設定されている。通気隙間18は、軸方向の全域にわたって連続している。更に、波形型面39の形状は、最近接部分13pの内接円径φ13と内管9の外周径φとの比(φ/φ13)が0.95より大きくなり、かつ最近接部分13pと内管9の外周面との間隔が1mm以下となるように設定されている。
【0047】
詳しくは、図7に示すように、一対の割型32からなる成形型33の一部(第1)の谷型部35Aには、4つ(複数)の突出型部36が形成されている。突出型部36は、他(第2)の谷型部35Bより径方向内側へ突出され、波形型面39における、最も突出された部分を構成している。4つの突出型部36が、成形型33の周方向に間隔を置いて、好ましくは等間隔置きに配置されている。すなわち、突出型部36は、成形型33の周方向に非連続である。
図4に示すように、これら突出型部36の内接円の直径φ36すなわち波形型面39における最小の内接円径は、押出し口22の内周径φ22Bより小さい(φ22B>φ36)。
【0048】
図7に示すように、谷型部35Aにおける隣接する突出型部36どうしの間の部分は、引込型部37を構成している。引込型部37は、突出型部36より径方向外側へ引っ込んでいる。突出型部36と引込型部37とが、波形型面39の互いに同じ軸方向位置における周方向に並んで配置されている。
【0049】
図6及び図7に示すように、引込型部37は、成形型33の割型32どうしの合わせ目38を跨ぐように配置されている。
突出型部36は、合わせ目38からずれて、片側(何れか1つ)の割型32に配置されている。好ましくは、突出型部36は、各成形型33の軸方向の両端には形成されておらず、特に進行方向先端(図4において右端)には形成されておらず、成形型33の端と突
出型部36との間に1以上の第2谷型部35Bが配置されている。そうすることによって、成形型33の割型32どうしが軸線L上で合わさろうとするとき、隣の成型33との間に樹脂19Aが巻き込まれるのを防止できる。
【0050】
図4に示すように、引込型部37の内接円径は、他(第2)の谷型部35Bの内周径φ35と等しい。引込型部37及び谷型部35Bの内周径φ35は、押出し口22の外周径φ22Aより小さく(φ22A>φ35)、更に押出し口22の内周径φ22Bより小さく(φ22B>φ35)、かつ突出型部36の内接円径φ36より大きい(φ35>φ36)。したがって、下式(1)が成り立つ。
φ34>φ22A>φ22B>φ35>φ36 (1)
なお、引込型部37の内接円径は、谷型部35Bの内周径φ35と等大に限らず、谷型部35Bの内周径内周径φ35より大きくてもよく小さくてもよい。
【0051】
吸引機構50は、多数の吸引穴52と、吸引路53を含む。吸引穴52は、波形型面39に分散して配置されている。これら吸引穴52から吸引路53が延びて真空ポンプ51に連なっている。吸引路53には開閉バルブ54が設けられている。
【0052】
複合管1は、次のようにして製造される。
予め、内管9を成形して硬化させたり入手したりするなどして、用意しておく。
該内管9を、押出ノズル20に導入し、内管送出口21から波形管成形部30へ向けて送り出す。
内管送出口21の内周面と内管9の外周面との間には、環状の気体供給路1dが形成される。気体供給路1dの上流端(図4において左方)は大気に解放される。
気体供給路1dの上流端にコンプレッサやポンプなどの気体圧送装置を接続し、押出ノズル20から波形管形成部30に向けて空気などの気体を送り込むようにしてもよい。
内管9は、成形型33の内部に導入されて送り方向の下流側(図4において右側)へ送られる。成形型33内の内管9は、軸線L上に配置される。
【0053】
併行して、樹脂供給部4において、樹脂19を加熱溶融し、かつ発泡剤を所定量添加することによって所定の発泡倍率(好ましくは1.05倍~4倍)で発泡されるようにする。該樹脂19を、押出ノズル20に供給し、押出し口22から波形管成形部30へ向けて押し出す。
押出し時の樹脂19Aは、押出し口22と実質的に同じ内周径及び外周径の管状になっている。管状の樹脂19Aは、内管9を囲む被覆層となる。
【0054】
波形管成形部30においては、割型32が環状軌道31に沿って循環されている。押出し口22の近傍において、対応する割型32どうしが接近して合わさることで、筒状の成形型33が形成される。
該成形型3の内部に管状の樹脂19Aが導入される。突出型部36が割型32どうしの合わせ目38からずれており、合わせ目38における波形型面39の内接円径が比較的大きくなっているために、樹脂19Aが合わせ目38に噛み込むのを防止できる。
【0055】
続いて、吸引機構50によって、波形管成形部30の吸引穴52からバキュームする。これによって、管状の樹脂19Aが成形型33の波形型面39に密着され、波形断面の波形管10に成形される。詳しくは、山型部34によって山部11が成形される。谷型部35によって谷部12が成形される。第1の谷型部35Aによって、第1の谷部12Aが成形され、第2の谷型部35Bによって第2の谷部12Bが成形される。
【0056】
更に詳しくは、谷型部35Aにおいては、突出型部36によって内側凸部13が成形される。引込型部37によって非突出部14が形成され、更に連通隙間部18eが形成される。該連通隙間部18eによって、隙間部18aどうしが連通される。ひいては、成形型33内の通気隙間18が軸方向の全域にわたって気体供給路1dに連なる。
これによって、前記バキュームに伴って、外気(空気)が気体供給路1dから通気隙間18の全域に供給される。この結果、樹脂19Aを波形型面39に確実に吸い付けることができ、波形管10を円滑に成形することができる。ひいては、波形管10及び内管9からなる複合管1を確実に作製できる。
【0057】
例えば、波形管10がポリエチレンを主成分とし、内管9がポリエチレン又はポリブテンを主成分とする場合、波形管10となる樹脂19Aが内管9にくっ付き易く離れにくいところ、本発明方法によれば、樹脂19Aと内管9との間に空気を通しやすくでき、樹脂19Aを内管9から確実に引き剥がす、またはくっ付きを防ぐことができる。
なお、波形管10又は内管9をポリエチレンとポリプロピレンの複合樹脂とすれば、くっ付きにくくなるが、ポリエチレンだけの場合よりも硬くなる。
【0058】
成形型33が軌道部分31aに沿って押出し口22から遠ざかるように移動されるのに伴って、該成形型33の内部の複合管1が同方向へ移動される。
軌道部分31aにおける押出し口22とは反対側の端部(図4において右)において、成形型33の対をなす割型32どうしが離れ、複合管1が、波形管成形部30から軸線Lに沿って送り方向の下流側へ送り出される。
【0059】
このようにして作製された複合管1においては、波形管10の内側凸部13によって、内管9がばたつくのを抑えることができる。更に内側凸部13と内管9との間の隙間が1mm以下であるために、内管9のばたつきを十分に抑えることができる。これによって、内管9の内部に水などの流体を流したとき、さや鳴り音等の異音が発生するのを防止できる。異音防止等のために、波形管10と内管9の間に発泡樹脂中間層を介在させる必要が無く、コスト高になるのを防止できる。また、波形管10と内管9との間の通気隙間18によって断熱層が形成されているため、発泡樹脂中間層がなくても複合管1の保温性は高い。
【0060】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において既述の形態と重複する構成に関しては、図面に同一符号を付して説明を省略する。
<第2実施形態(図8図11)>
図8に示すように、本発明の第2実施形態に係る複合管1Bにおいては、波形管10Bの内周面に縦スジ状凸部16が形成されている。縦スジ状凸部16は、波形管10Bの管軸方向に沿って延びる縦スジ状に形成されて、山部11及び谷部12を縦断するとともに、これら山部11及び谷部12に倣う波形状になっている。図9に示すように、4つ(複数)の縦スジ状凸部16が、波形管10Bの内周面の周方向に間隔を置いて、好ましくは等間隔置きに配置されている。
縦スジ状凸部16は、波形管10Bの周方向に非連続である。周方向に隣り合う縦スジ状凸部16どうしの間に、波形管10Bの全長にわたって連続する通気隙間18が確保されている。
【0061】
縦スジ状凸部16における谷部12に形成された部分の頂部が、波形管10Bのうち最も内管9に近接する最近接部分16bを構成している。
図8に示すように、最近接部分16bの内接円径φ16と、内管9の外周径φとの比(φ/φ16)は、0.95より大きい。好ましくは、0.95<(φ/φ16)≦0.99である。
【0062】
波形管10及び内管9が互いに同軸をなすときの最近接部分16bと内管9の外周面との間隔は、1mm以下であり、好ましくは0.8mm以下である。
最近接部分16bが内管9の外周面と接していてもよい。
【0063】
図10に示すように、第2実施形態の複合管製造装置3Bにおける押出ノズル20の縁形状は、波形管成形部30内における波形管10と内管9との間の軸方向の全域にわたって連続する通気隙間18が形成されるように設定されている。更に、押出ノズル20の縁形状は、最近接部分16bの内接円径φ16と内管9の外周径φとの比(φ19/φ16)が0.95より大きくなり、かつ最近接部分16bと内管9の外周面との間隔が1mm以下となるように設定されている。
【0064】
詳しくは、図11に示すように、押出ノズル20には、押出し口22の内周縁に4つ(複数)の切欠凹部23が形成されている。これら切欠凹部23は、押出し口22の周方向に間隔を置いて、好ましくは等間隔置きに配置されている。図10に示すように、各切欠凹部23は、押出ノズル20の軸方向へ延びるとともに、押出ノズル20の先端面へ向かうにしたがって漸次深さが増大しつつ、押出ノズル20の先端面に達している。
なお、切欠凹部23の深さは、押出ノズル20の軸方向の位置に依らず一定であってもよい。
【0065】
図10に示すように、複合管製造装置3Bにおける波形管成形部30には、突出型部36(図4参照)が形成されていない。各谷型部35の内径が、波形型面39のうち最小の内接円径を構成している。
【0066】
図10に示すように、押出ノズル20の押出し口22から樹脂19を押し出すとき、該樹脂19の一部が切欠凹部23に入り込む。これによって、押し出された管状の樹脂19Aの内周面に、凸条19dが形成される。凸条19dは、押出方向(管状樹脂19Aの軸方向)に沿って真っ直ぐ延びる。凸条19dの突出高さは、内筒41の先端面での切欠凹部23の深さに応じた一定の大きさになっている。
該凸条19dを含む管状の樹脂19Aを、波形管成形部30に導入して波形に成形する。これによって、管状の樹脂19Aが波形管10Bとなり、凸条19dが縦スジ状凸部16となる。周方向に隣接する縦スジ状凸部16どうし間に通気隙間18が確保されることで、成形工程において、樹脂19Aを波形型面39に確実に吸い付かせることができ、波形管10Bを確実に成形することができる。さらに、縦スジ状凸部16からも樹脂19Aが波形型面39に供給されるので、山部11が肉薄になってしまうのを防止できる。
【0067】
波形管10Bによれば、縦スジ状凸部16における最近接部分16bによって、内管9のばたつきを抑えることができ、さや鳴り音等の異音発生を抑制できる。
谷部12の内接円径を押出し口22の内周縁径より小さくすることで、縦スジ状凸部16の所要突出高さを小さくでき、切欠凹部23の所要深さを小さくできる。
【0068】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、第1実施形態において、波形管10の周方向における内側凸部13の個数は4つに限らず、複数であればよく、3つ以下でもよく5つ以上でもよい。
山部11に内側凸部13を形成してもよい。
各成形型33に突出型部36を設ける必要はない。
各成形型33の軸方向に複数の突出型部36が設けられていてもよい。
第2実施形態において、波形管10の周方向における縦スジ状凸部16の個数は4つに限らず、複数であればよく、3つ以下でもよく5つ以上でもよい。
波形成形面に縦スジ状保持凸部の形成部を設けてもよい。縦スジ状保持凸部16の頂部(最近接部分16b)が、波形管10Bの山部11及び谷部12に倣うことなく、波形管10Bの全長にわたって真っ直ぐ延びていてもよい。
波形管が、内側凸部13と縦スジ状凸部16の両方を有していてもよい。
必ずしも式(1)が成り立つ必要はない。合わせ目38への樹脂19Aの噛み込み防止の観点からは、谷型部35Bの内周径φ35が、押出し口22の内周径φ22Bより大きくてもよく、更には谷型部35Bの内周径φ35が、押出し口22の外周径φ22Aより大きくてもよい(φ34>φ35>φ22A>φ22B>φ36)。
波形管成形部30は、バキューム式に代えて、管状樹脂19Aと内管9の間を加圧するブロー式であってもよいし、バキューム式とブロー式を併用してもよい。
波形管成形部30の環状軌道が、軸線Lの周りに3以上設けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、例えば給水給湯管に適用できる。
【符号の説明】
【0070】
1,1B 複合管
1d 気体供給路
3,3B 複合管製造装置
9 内管
10,10B 波形管
11 山部
12 谷部
12A 一部の谷部
12B 他の谷部
13 内側凸部
13p 最近接部分
14 非突出部
16 縦スジ状凸部
16b 最近接部分
18 通気隙間
18a 隙間部
18e 連通隙間部
19 波形管となる樹脂
19d 凸条
20 押出ノズル
21 内管送出口
22 押出し口
23 切欠凹部
30 波形管成形部
31 環状軌道
31a 軌道部分
32 割型
33 成形型
34 山型部
35 谷型部
35A 一部(第1)の谷型部
35B 他(第2)の谷型部
36 突出型部
37 引込型部
38 合わせ目
39 波形型面
50 吸引機構
13 内側凸部の突出高さ
12 谷部の深さ
18 通気隙間の大きさ
複合管の軸線
製造装置の軸線
φ 内管の外周径
φ13 内側凸部の内接円径
φ16 最近接部分の内接円径
φ21 内管送出口の内周径
φ22A 押出し口の外周径
φ22B 押出し口の内周径
φ34 山型部の内周径
φ35 他の谷型部の内周径
φ36 突出型部の内接円径(最小内接円径)

図1
図2(a)】
図2(b)】
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11