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特許7590895インプリント装置、インプリント方法、および物品製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】インプリント装置、インプリント方法、および物品製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20241120BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B29C59/02 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021036673
(22)【出願日】2021-03-08
(65)【公開番号】P2022136865
(43)【公開日】2022-09-21
【審査請求日】2024-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 達也
(72)【発明者】
【氏名】小林 謙一
【審査官】後藤 慎平
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-58735(JP,A)
【文献】特開2020-77797(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
B29C 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上のインプリント材に型を接触させた状態で前記基板と型との位置合わせを行う位置合わせ工程と、前記位置合わせ工程の後に前記インプリント材を光照射によって硬化させる硬化工程とを含むインプリント処理を行うインプリント装置であって、
前記硬化工程の開始前に予め前記インプリント材を部分的に硬化させるための第1の光照射と、前記位置合わせ工程において前記基板を変形させるための第2の光照射とを行う光照射部を備え、
前記光照射部は、
前記インプリント材を硬化させる第1波長域の第1光を発生する第1光源と、
前記基板を変形させる第2波長域の第2光を発生する第2光源と、
空間光変調器と、
を含み、
前記第1の光照射は、前記第1光と前記第2光とを含む第3光を前記空間光変調器によって変調して得られる第1変調光を前記型を介して前記インプリント材に部分的に照射することを含み、
前記第2の光照射は、前記第2光を前記空間光変調器によって変調して得られる第2変調光を前記型および前記インプリント材を介して前記基板に部分的に照射することを含み、
前記第2の光照射による露光量は、前記第1の光照射による露光量に基づいて設定される、
ことを特徴とするインプリント装置。
【請求項2】
前記第2の光照射による露光量は、前記第1の光照射による露光量と前記基板の熱変形量との間の予め得られた関係に基づいて設定される、ことを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項3】
前記型を変形させる型変形機構を更に備え、
前記型と前記基板との重ね合わせ誤差が許容値内になるように、前記第2の光照射による露光量および前記型変形機構の制御量が設定される、
ことを特徴とする請求項2に記載のインプリント装置。
【請求項4】
前記硬化工程において前記インプリント材を硬化させるための第3の光照射を行う第2光照射部を更に備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項5】
前記第1の光照射の後に前記第2の光照射が行われることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項6】
前記第2の光照射の後に前記第1の光照射が行われることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項7】
前記第1光は紫外光であり、前記第2光は可視光である、ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項8】
前記空間光変調器は、デジタルミラーデバイス、液晶素子、回折光学素子、ホログラフィック光学素子のいずれか1つを含む、ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項9】
基板の上のインプリント材に型を接触させた状態で前記基板と型との位置合わせを行う位置合わせ工程と、前記位置合わせ工程の後に前記インプリント材を光照射によって硬化させる硬化工程とを含むインプリント処理を行うインプリント装置であって、
前記硬化工程の開始前に予め前記インプリント材を部分的に硬化させるための第1の光照射と、前記位置合わせ工程において前記基板を変形させるための第2の光照射とを行う光照射部を備え、
前記光照射部は、
前記インプリント材を硬化させる第1波長域の第1光を発生する第1光源と、
前記基板を変形させる第2波長域の第2光を発生する第2光源と、
前記第1光を変調した第1変調光を発生する第1空間光変調器と、
前記第2光を変調した第2変調光を発生する第2空間光変調器と、
前記第1変調光と前記第2変調光とを合成する合成部と、
を含み、
前記第1の光照射は、前記第1変調光および前記第2変調光を共に前記合成部に供給して、前記合成部から出力された光を、前記型を介して前記インプリント材に部分的に照射することを含み、
前記第2の光照射は、前記第1光源を消灯または遮断し、前記第2変調光を前記合成部に供給して、前記合成部から出力された光を、前記型および前記インプリント材を介して前記基板に部分的に照射することを含み、
前記第2の光照射による露光量は、前記第1の光照射による露光量に基づいて設定される、
ことを特徴とするインプリント装置。
【請求項10】
基板の上のインプリント材に型を接触させた状態で前記基板と型との位置合わせを行う位置合わせ工程と、前記位置合わせ工程の後に前記インプリント材を光照射によって硬化させる硬化工程とを含むインプリント処理を行うインプリント方法であって、
前記位置合わせ工程は、
前記インプリント材を硬化させる第1波長域の第1光と、前記基板を変形させる第2波長域の第2光とを含む光を、前記型を介して前記インプリント材に部分的に照射する第1の光照射を行う第1工程と、
前記第2光を前記型および前記インプリント材を介して前記基板に部分的に照射する第2の光照射を行う第2工程と、
を含み、
前記第2の光照射による露光量は、前記第1の光照射による露光量に基づいて設定される、ことを特徴とするインプリント方法。
【請求項11】
請求項1から9のいずれか1項に記載のインプリント装置により基板の上にパターンを形成する工程と、
前記パターンが形成された前記基板に対して加工を行う工程と、
を有し、前記加工が行われた前記基板から物品を製造することを特徴とする物品製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント装置、インプリント方法、および物品製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インプリント装置は、基板のショット領域の上のインプリント材に型を接触させた状態でインプリント材を光照射によって硬化させてショット領域の上にパターンを形成する。インプリント装置では、ショット領域上のインプリント材と型とが接触した状態で、ショット領域と型とが位置合わせされうる。この位置合わせは、アライメントスコープによって基板のショット領域と型との位置合わせ誤差を検出しながら行われうる。
【0003】
位置合わせ時におけるショット領域上のインプリント材の粘性が低すぎると位置合わせ精度が低下しうる。そこで、位置合わせを行う際に、ショット領域上のインプリント材の粘性を高めるため、予めインプリント材の少なくとも一部に光を照射する予備露光を行うことが提案されている。
【0004】
型の凹凸パターンにおける掘り込みが大きい箇所へのインプリント材の充填には、掘り込みが小さい箇所に比べて長い時間が必要である。この彫り込みが大きい箇所においてインプリント材の粘性を高めると、インプリント材の充填のために更に長い時間が必要になり、スループットが低下しうる。この問題に対して、特許文献1には、デジタルミラーデバイス(DMD)等の光調整器を使用して、例えば掘り込みの小さい箇所におけるインプリント材が感光する光を照射することで、スループットを低下させずに位置合わせ精度を高める技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-058735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、DMDは、一般には、インプリント材が感光する波長の光、主に紫外光に対する耐光性が、可視光に比べて低い。DMDの製造メーカが推奨する紫外光照度を超えて紫外光をDMDに照射すると、DMD内の化学物質と紫外光との反応により、DMD内のミラー素子表面およびガラス部品表面に曇りが発生しうる。その結果、DMDの反射率が低下して基板上で所望の紫外光照度が得られなくなる。このことは、スループット低下に繋がる。
【0007】
そのため、基板上に照射可能な紫外光の照度は、DMDの寿命と関連があり、装置の稼働率をある程度維持するためには、紫外光の照度に上限を設けざるを得ない。型と基板との並進ずれを低減させるために必要な紫外光の露光量(照度×露光時間)は実験などにより見積もられることが多い。高い露光量が必要な場合、照度には上限があるため、露光時間を増やす方向に調整されることになる。しかし、露光時間を増やすことは、スループット低下に繋がる。
【0008】
本発明は、例えば、型と基板との位置合わせ精度とスループットの両立に有利なインプリント装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面によれば、基板の上のインプリント材に型を接触させた状態で前記基板と型との位置合わせを行う位置合わせ工程と、前記位置合わせ工程の後に前記インプリント材を光照射によって硬化させる硬化工程とを含むインプリント処理を行うインプリント装置であって、前記硬化工程の開始前に予め前記インプリント材を部分的に硬化させるための第1の光照射と、前記位置合わせ工程において前記基板を変形させるための第2の光照射とを行う光照射部を備え、前記光照射部は、前記インプリント材を硬化させる第1波長域の第1光を発生する第1光源と、前記基板を変形させる第2波長域の第2光を発生する第2光源と、空間光変調器と、を含み、前記第1の光照射は、前記第1光と前記第2光とを含む第3光を前記空間光変調器によって変調して得られる第1変調光を前記型を介して前記インプリント材に部分的に照射することを含み、前記第2の光照射は、前記第2光を前記空間光変調器によって変調して得られる第2変調光を前記型および前記インプリント材を介して前記基板に部分的に照射することを含み、前記第2の光照射による露光量は、前記第1の光照射による露光量に基づいて設定される、ことを特徴とするインプリント装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、例えば、型と基板との位置合わせ精度とスループットの両立に有利なインプリント装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】インプリント装置の構成を示す図。
図2】第1光照射部の構成を示す図。
図3】インプリント方法を示すフローチャート。
図4】紫外光と可視光の照射タイミングを説明する図。
図5】ショット領域内の紫外光が照射される予備露光領域の例を示す図。
図6】第1光照射部の構成を示す図。
図7】紫外光と可視光の照射タイミングを説明する図。
図8】型変形機構と第1光照射部の制御量を決定する処理のフローチャート
図9】紫外光と可視光の照射タイミングを説明する図。
図10】第1の光照射における可視光の照射領域の例を示す図。
図11】第1の光照射における可視光の照射領域および第2の光照射における可視光の照射領域の例を示す図。
図12】実施形態における物品製造方法を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0013】
<第1実施形態>
図1には、実施形態におけるインプリント装置100の構成が示されている。インプリント装置100は、インプリント処理を行うことにより、基板Wの上にインプリント材Rの硬化物からなるパターンを形成する。インプリント処理は、基板Wの上のインプリント材Rに型M(パターン部Mp)を接触させた状態で基板Wと型Mとの位置合わせを行う位置合わせ工程と、位置合わせ工程の後にインプリント材Rを光照射によって硬化させる硬化工程とを含みうる。
【0014】
インプリント材としては、紫外光を受けることによって硬化する光硬化性組成物(未硬化状態の樹脂と呼ぶこともある)が用いられる。光硬化性組成物は、少なくとも重合性化合物と光重合開始剤とを含有し、必要に応じて非重合性化合物または溶剤を更に含有してもよい。非重合性化合物は、増感剤、水素供与体、内添型離型剤、界面活性剤、酸化防止剤、ポリマー成分などの群から選択される少なくとも一種である。インプリント材は、液滴状、或いは複数の液滴が繋がってできた島状又は膜状となって基板上に配置されうる。インプリント材の粘度(25℃における粘度)は、例えば、1mPa・s以上100mPa・s以下でありうる。基板の材料としては、例えば、ガラス、セラミックス、金属、半導体、樹脂等が用いられうる。必要に応じて、基板の表面に、基板とは別の材料からなる部材が設けられてもよい。基板は、例えば、シリコンウエハ、化合物半導体ウエハ、石英ガラスである。
【0015】
本明細書および図面においては、水平面をXY平面とするXYZ座標系において方向が示される。一般には、基板Wはその表面が水平面(XY平面)と平行になるように基板ステージ5の上に置かれる。よって以下では、基板Wの表面に沿う平面内で互いに直交する方向をX軸およびY軸とし、X軸およびY軸に垂直な方向をZ軸とする。また、以下では、XYZ座標系におけるX軸、Y軸、Z軸にそれぞれ平行な方向をX方向、Y方向、Z方向といい、X軸周りの回転方向、Y軸周りの回転方向、Z軸周りの回転方向をそれぞれθx方向、θy方向、θz方向という。
【0016】
型Mは、基板Wと対向する面に回路パターン等のパターンが形成されたパターン部Mpを有する。型Mは、紫外光を透過させることが可能な石英などで構成されうる。
【0017】
型保持部6は、真空吸着力または静電力により型Mを引きつけて保持する不図示のチャック部を含みうる。基板ステージ5(基板保持部)は、真空吸着力または静電力により基板Wを引きつけて保持する不図示の基板チャックを含みうる。また、型保持部6は、基板Wの上のインプリント材に対する型Mの接触および分離を行うために型MをZ方向に駆動する型駆動機構(不図示)と、型MをX方向およびY方向に変形させてパターンの歪みを補正する型変形機構34とを含みうる。なお、基板Wの上のインプリント材に対する型Mの接触および分離は、型駆動機構ではなく、基板WをZ方向に駆動する、基板ステージ5に含まれる基板駆動機構(不図示)により実現されてもよい。あるいは、基板Wの上のインプリント材に対する型Mの接触および分離は、型駆動機構および基板駆動機構の双方により実現されてもよい。すなわち本実施形態では、基板ステージ5と型保持部6は、型Mおよび基板Wと相対位置を調整する相対駆動機構DMを構成しており、基板Wの上のインプリント材に対する型Mの接触および分離は、相対駆動機構DMにより実現されうる。また、型Mと基板Wのショット領域との位置合わせも、相対駆動機構DMにより実現されうる。型駆動機構は、型Mを複数の軸(例えば、Z軸、θx軸、θy軸の3軸、好ましくは、X軸、Y軸、Z軸、θx軸、θy軸、θz軸の6軸)について駆動するように構成されうる。基板駆動機構は、基板Wを複数の軸(例えば、X軸、Y軸、θz軸の3軸、好ましくは、X軸、Y軸、Z軸、θx軸、θy軸、θz軸の6軸)について駆動するように構成されうる。
【0018】
供給部7は、基板W上にインプリント材Rを供給する。インプリント材Rは、上記したように紫外光を受けることによって硬化する性質を有し、その具体的な性質は半導体デバイスの種類等により適宜選択されうる。なお、供給部7は、インプリント装置100の内部に設置せず、外部の供給装置において基板Wの上にインプリント材が予め供給され、これをインプリント装置100内に搬入する構成としてよい。この構成は、インプリント装置100内部での供給工程がなくなるため、インプリント装置100での処理の迅速化の点で有利である。また、この構成は、供給部7が不要となることから、インプリント装置100自体の製造コストを抑える点においても有利である。
【0019】
インプリント装置100は、硬化工程の開始前に予めインプリント材Rを部分的に硬化させるための第1の光照射と、位置合わせ工程において基板Wを変形させるための第2の光照射とを行う第1光照射部1を備える。また、インプリント装置100は、硬化工程においてインプリント材Rを硬化させるための第3の光照射を行う第2光照射部2を備える。
【0020】
本実施形態では、位置合わせ工程において、インプリント材Rの粘性(粘弾性)を高めるためにインプリント材Rの所定部分への予備露光(先行露光ともよばれる。)が行われる。インプリント材Rの所定部分の粘性が高くなることは、基板Wと型Mとの間の剛性が高くなることを意味する。したがって、予備露光の開始後に、基板Wのショット領域と型Mとの間の相対的な位置ずれの振幅が徐々に小さくなる。これにより位置合わせ精度を向上させることができる。また、ショット領域の上のインプリント材のうち所定部分のみを露光することによって、先行露光部以外の部分における充填性の低下を抑えることができる。これによってスループットを向上させることができる。この予備露光は、第1光照射部1を用た第1の光照射として実行される。また、位置合わせ工程においては、後述するように型Mとの位置合わせ精度を向上させるための基板Wの変形が行われる。これは、第1光照射部1を用いた第2の光照射として実行される。基板Wのショット領域の上のインプリント材Rを該ショット領域の全域において硬化させるための光の照射(本露光)は、硬化工程において、第2光照射部2を用いた第3の光照射として実行される。第2光照射部2は、光源と、該光源から射出される紫外光を被照射面となるパターン部Mpに対して所定の形状で照射するための複数の光学素子とを含みうる。第2光照射部2および第1光照射部1の光源としては例えば、高圧水銀ランプ、各種エキシマランプ、エキシマレーザまたは発光ダイオード、レーザダイオードなどが採用可能である。
【0021】
アライメント光学系4は、型Mと基板Wとの相対位置合わせのための計測を担う。アライメント光学系4は、型Mと基板Wとにそれぞれ配置された位置合わせマーク10および11を光学的に検出して両者の相対位置を計測する。アライメント光学系4は、複数の受光ユニット4a(スコープ)を含みうる。複数の受光ユニット4aのそれぞれは、型Mの位置合わせマーク10または基板Wの位置合わせマーク11に合わせて、X方向およびY方向に駆動可能なように構成されている。また、複数の受光ユニット4aのそれぞれは、マークにスコープの焦点を合わせるためにZ方向にも駆動可能なように構成されている。アライメント光学系4は更にリレー光学系を含みうる。リレー光学系は、光学部材21,31,22,23を含み、基板W面と共役な面を位置Cに形成(結像)している。
【0022】
光学部材21は、インプリント装置100における共通光学系として配置されている。すなわち、光学部材21は、アライメント光だけでなく、第1光照射部1、第2光照射部2、観察光学系3のそれぞれからの光についても作用する。
【0023】
光学部材31は、アライメント光を反射し、第1光照射部1、第2光照射部2、観察光学系3のそれぞれからの光を透過させるように作用する。光学部材21と光学部材31は、第1光照射部1からの光と第2光照射部2からの光に対して十分に高い透過率を有する部材(例えば、石英や蛍石)で構成されている。
【0024】
光学部材31は、例えばダイクロイックミラーであり、500~2000nmにおける反射率が高く、200~500nmにおける透過率が高い特性を有している。反射率が高い帯域は500~2000nmに限らず、広い方が望ましいが、製造上の制約などで、600~900nmであったり、500~800nmであってもよい。同様に、透過率の高い領域は、200~500nmに限らず、広い方が望ましいが、例えば300~600nmであったり、300~500nmであってもよい。
【0025】
光学部材32は、第2光照射部2からの光を反射し、観察光および第1光照射部1からの光を透過させる。光学部材32は、例えば、ダイクロイックミラーであり、400nm未満(200~400nm、もしくは300~400nm)の反射率が高く、400nm以上(400~500nm、もしくは400~600nm)の透過率が高い特性を有しうる。波長の閾値は400nmに限らず、380nmであったり、420nmであってもよい。
【0026】
光学部材33は、観察光学系3と第1光照射部1からの光を合成する光合成部である。観察光学系3と第1光照射部1の光は、波長が近い(または、重複、同一、もしくは含有関係)ため、ダイクロイックミラーは使えない。このような場合、ハーフミラーとなるが、透過率と反射率でどちらの効率を上げるかは光学設計によって決定される。
【0027】
基板Wには、多種多様の物質が多層膜状に形成され、基板Wの位置合わせマーク11は、その多層膜の任意の階層に形成されうる。そのため、アライメント光学系4の波長帯域が狭く、光が弱め合う干渉条件の波長であった場合、基板Wの位置合わせマーク11からの信号が微弱となって位置合わせが困難となりうる。したがって、アライメント光学系4に使用される光は、例えば、インプリント材Rが感光(硬化)しない波長で、なるべく広い帯域を網羅している。例えば、アライメント光学系4に使用される光は、400~2000nmの波長帯域を網羅しており、好ましくは、少なくとも500~800nmの波長帯域を網羅している。光源としては、例えば、発光波長帯域が広いランプを採用しうる。また、発光波長帯域が数十nm、数nmの光源(発光ダイオード、レーザダイオード等)を複数組み合わせることで、離散的に広帯域を網羅してもよい。
【0028】
アライメント光学系4で計測された型Mと基板Wの相対位置の情報および形状差の情報は、制御部50に伝送される。制御部50は、受信したそれらの情報に基づき、基板ステージ5、型変形機構34、第1光照射部1それぞれの制御量を算出する。そして制御部50は、それらの制御量に基づいて、基板ステージ5、型変形機構34、第1光照射部1のそれぞれを制御する。
【0029】
観察光学系3は、基板Wのショット領域の全体を観察するスコープを含み、インプリント処理の状態、例えば、型Mのインプリント材に対する接触の状態、型Mへのインプリント材Rの充填状態、型Mのインプリント材からの分離の状態等、の確認に用いられる。観察光学系3の計測対象は、型Mのパターン部Mp、基板Wの表面、または、互いに近接しているパターン部Mpと基板Wの表面の双方でありうる。観察光学系3の光は、アライメント光学系4ほどの広い帯域は必要とせず、インプリント材Rが感光(硬化)しない波長であればよい。また、観察光に伴う熱に起因して型Mまたは基板Wが膨張し、インプリント材Rに転写されるパターンに位置ずれや歪みが発生することを抑えるため、観察光は観察可能な限りにおいて微弱であることが望ましい。
【0030】
制御部50は、インプリント装置100の各構成要素の動作および調整などを制御し得る。制御部50は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Arrayの略。)などのPLD(Programmable Logic Deviceの略。)、又は、ASIC(Application Specific Integrated Circuitの略。)、または、プログラムが組み込まれた汎用コンピュータ、または、これらの全部または一部の組み合わせによって構成されうる。制御部50は、インプリント装置100の各構成要素に回線を介して接続され、プログラム等に従って各構成要素の制御を実行しうる。本実施形態の制御部50は、少なくとも基板ステージ5、型変形機構34、第1光照射部1の動作を制御する。なお、制御部50は、インプリント装置100の他の部分と一体で(共通の筐体内に)構成されてもよいし、インプリント装置100の他の部分とは別体で(別の筐体内に)構成されてもよい。
【0031】
図2には、第1光照射部1の構成が示されている。第1光照射部1は、光源ユニット101を含みうる。光源ユニット101は、インプリント材を硬化させる第1波長域の第1光を発生する第1光源121と、基板を変形させる第2波長域の第2光を発生する第2光源122とを含みうる。第1光照射部1は、更に、入力された光を変調した変調光を発生する光調整器102(空間光変調器)を含みうる。
【0032】
第1光源121が発生する第1波長域の第1光は、例えば、インプリント材を硬化させる紫外光であり、第1光源121は、例えば紫外光レーザダイオードにより構成される。第2光源122が発生する第2波長域の第2光は、例えば基板を変形させる可視光であり、第2光源122は、例えば可視光レーザダイオードにより構成される。
【0033】
第1光源コントローラ123は、制御部50からの指令に従って第1光源121を制御する。第1光源121の制御は、第1光源121の点灯および消灯の制御を含みうる。第1光源121の制御は、更に、第1光源121が発生する第1光の強度の制御を含んでもよい。例えば、第1光源コントローラ123は、制御部50からの指令値に従った電流値を有する電流を第1光源121に供給する定電流回路を含みうる。あるいは、第1光源コントローラ123は、指令値に従って第1光源121を駆動する駆動回路と、第1光源121が発生する第1光の一部を受光する光電変換センサとを含み、該光電変換センサの出力を該駆動回路にフィードバックする構成を有しうる。
【0034】
第2光源コントローラ124は、制御部50からの指令に従って第2光源122を制御する。第2光源122の制御は、第2光源122の点灯および消灯の制御を含みうる。第2光源122の制御は、更に、第2光源122が発生する第2光の強度の制御を含んでもよい。例えば、第2光源コントローラ124は、制御部50からの指令値に従った電流値を有する電流を第2光源122に供給する定電流回路を含みうる。あるいは、第2光源コントローラ124は、指令値に従って第2光源122を駆動する駆動回路と、第2光源122が発生する第2光の一部を受光する光電変換センサとを含み、該光電変換センサの出力を該駆動回路にフィードバックする構成を有しうる。
【0035】
制御部50は、第1光源121および第2光源122を個別に制御しうる。制御部50は、第1光源121および第2光源122の一方を点灯させ他方を消灯または遮断させるように第1光源121および第2光源122を制御しうる。また、制御部50は、第1光源121および第2光源122の両方を点灯させるように第1光源121および第2光源122を制御しうる。
【0036】
ダイクロイックミラー125は、第1光源121が発生した第1光と第2光源122が発生した第2光とを合成するビームコンバイナである。反射ミラー126は、第2光源122が発生した第2光をダイクロイックミラー125へ導く。
【0037】
ダイクロイックミラー125で出力された光は、光学素子103を介して光調整器102に入力される。光源ユニット101から発せられた光による光調整器102への照明は、光学素子103により調整されうる。光調整器102では所望の照明パターンが表示されており、光調整器102の下流へ変調光105を反射する。変調光105は、光学素子104により照明倍率が調整されて、基板Wを照明する。
【0038】
光調整器102は、ショット領域Sの少なくとも平面領域にて所望の照射量分布を形成させるために、光源ユニット101からの光を任意の光強度分布に変換してショット領域Sに向けて照射しうる。光調整器102は、複数のミラー素子を光反射面にアレイ配置し、各ミラー素子の面方向を個別に調整することで照射量分布を変化させることが可能なデジタルミラーデバイス(DMD)でありうる。あるいは、光調整器102は、例えば、複数の液晶素子を光透過面に配置し、複数の液晶素子に対する電圧を個別に制御することで照射量分布を変化させることが可能な液晶装置でありうる。あるいは、光調整器102は、ガルバノミラー素子、CGHなどの回折光学素子、またはホログラフィック光学素子のいずれかでありうる。本実施形態では、光調整器102としてDMDを用いた例を説明する。光調整器102は、紫外光および可視光の照射による一部の光吸収による発熱および自己発熱があるため昇温する。光調整器102の性能と寿命を確保するために、空冷もしくは水冷の冷却構成が配置されてもよい。
【0039】
上記したように、第1光照射部1は、ショット領域Sの上のインプリント材Rと型M(のパターン部Mp)とが接触した後にインプリント材Rの一部(予備露光領域)に光を照射し、該一部の粘性を高める処理(予備露光)を行う。
【0040】
ここで、第1光照射部1を使用して予備露光を行うことで型Mと基板Wとの相対位置ずれを低減させる従来手法を説明する。光源ユニット101において第1光(紫外光)を選択し、光調整器102によりショット領域Sの予備露光領域を露光することで、予備露光領域におけるインプリント材Rの粘性が高められる。図5には、ショット領域S内の紫外光が照射される予備露光領域35の例が示されている。予備露光領域35は、位置合わせマーク10、11を除いた領域でありうる。位置合わせマークを避けた領域を予備露光領域とすることで、位置合わせマーク10、11の領域におけるインプリント材の充填性を悪化させることなくインプリント材の粘性を高めることができる。なお、充填状態に応じて予備露光領域35内で紫外光が照射される強度に分布が形成されてもよい。また、充填が完了した箇所から紫外光を照射するように、時間とともに予備露光領域を変化させてもよい。
【0041】
予備露光によってインプリント材Rの粘性を高めることで、型Mと基板Wとの間にせん断力が高まり、型Mと基板Wとの相対位置ずれを抑えることができる。粘性を高めるために必要な露光量は、予め実験等により求めることができる。
【0042】
次に、第1光照射部1を使用して型Mと基板Wとの形状差である重ね合わせずれを低減させる方法に関して説明する。光源ユニット101において第2光(可視光)を選択し、制御部50で算出された光調整器102の制御量(照度分布)に従い、可視光が基板Wに部分的に照射される。基板Wまたは基板W上のインプリント材に吸収された可視光によって、ショット領域Sが所望の形状に熱変形させることができる。それと同時に、型変形機構34において、制御部50で算出された制御量に基づき、型Mの形状補正が行われる。型Mおよび基板Wの双方において形状補正を行うことで、重ね合わせずれを低減し、高精度な位置合わせを行うことができる。
【0043】
図4を参照して、インプリント中における第1光照射部1による紫外光と可視光の照射タイミングについて説明する。図4の上段は従来手法によるタイミングチャートを、下段は本実施形態によるタイミングチャートを示している。従来例において、照射期間110は予備露光工程においてインプリント材を部分的に硬化させるための第1の光照射を行う期間であり、照射期間111は位置合わせ工程において基板を変形させるための第2の光照射を行う期間である。照射期間110では、紫外光がショット領域上のインプリント材の予備露光領域に照射される。照射期間110における露光量(積算光量)は一般に、照度(W/m)×時間(sec)で表される。したがって、スループットを高めるためには、照射時間を短くし、照度を高める必要がある。しかしながら、光調整器102には、照射される紫外光の強度と寿命(ミラーの曇り)が密接に関係している。製造装置で使用するためには、光調整器102の交換頻度が少ない設計が望まれるため、紫外光の強度をある程度以下に抑える必要がある。そうすると、露光量を確保するために照射時間を短くすることには限界が生じる。
【0044】
発明者らは、鋭意検討する中で、予備露光においてインプリント材Rへ紫外光と同時に可視光も照射することで、より短時間で並進ずれを効果的に低減させるための露光量が得られることが分かった。可視光の使用は、光調整器102の曇り発生に関係しない。図4に示されるように、実施形態に係る紫外光+可視光の照射期間112は、従来の照射期間110よりも短く済む。つまり、光調整器102の寿命の観点から紫外光の照度に限界があったが、光調整器102の曇り発生に関係しない可視光を同時照射することで、インプリント材Rが感光する照度を高めることが可能となった。これは、インプリント材Rは紫外光に感度を持つように設計されているが、可視光領域にも僅かながら感度を持っていることが原因していると考えられる。可視光でも紫外光に近い波長400nm~500nmが好適である。また、インプリント材の可視光に対する感度が低いため、紫外光より可視光の照度は数倍から十倍程度であることが好ましい。位置合わせ工程において基板を変形させるための第2の光照射を行う期間である照射期間111は従来と同様とすると、第1の光照射と第2の光照射のトータルの時間を、従来よりも短くすることができる。
【0045】
したがって、本実施形態では、例えば、制御部50の指令により、第1光源コントローラ123および第2光源コントローラ124がそれぞれ、第1光源121および第2光源122を点灯にする。これにより、紫外光(第1光)と可視光(第2光)とを含む第3光が光調整器102に供給される。そして、光調整器102によって第3光を変調して得られる第1変調光が型Mを介してインプリント材Rに部分的に照射されることにより、第1の光照射が行われる。また、制御部50の指令により第1光源コントローラ123は第1光源121を消灯または遮断し、第2光源コントローラ124が第2光源122を点灯することにより、可視光(第2光)を光調整器102に供給する。そして、光調整器102によって第2光を変調して得られる第2変調光が型Mおよびインプリント材Rを介して基板Wに部分的に照射されることにより、第2の光照射が行われる。
【0046】
ここで、第1の光照射において照度の高い可視光を基板Wに照射することによる課題が生じる。第1の光照射に係る、紫外光+可視光の照射期間112において、光調整器102に表示されるパターンは、型Mと基板Wとの並進ずれを低減させるための並進抑制パターンである(図5)。この並進抑制パターンで可視光を基板Wに照射すると、従来発生していなかったショット領域Sに熱変形が生じ、重ね合わせずれの原因となる。
【0047】
そこで、本実施形態では、第2の光照射による露光量は、第1の光照射による露光量に基づいて設定されうる。例えば、第2の光照射による露光量は、第1の光照射による露光量と基板の熱変形量との間の予め得られた関係に基づいて設定される。その関係は、例えば、紫外光+可視光の照射期間112で発生する熱変形量を、予め実験またはシミュレーションで求めておく。
【0048】
また、本実施形態において、インプリント装置100は、型変形機構34を備えている。そこで、制御部50は、型Mと基板Wとの重ね合わせ誤差が許容値内になるように、第2の光照射による露光量および型変形機構34の制御量を設定しうる。例えば、制御部50は、上記の実験またはシミュレーションに基づいて予測される熱変形量を、型変形機構34の制御量および第1光照射部1の制御量を計算する際の型Mと基板Wとの形状差情報に加える。これにより、重ね合わせ精度を悪化させることなく、型Mと基板Wとの並進ずれを低減させることができる。
【0049】
図10および図11を用いて詳しく説明する。図10には、ショット領域S内における、制御部50により型Mと基板Wとの形状差情報に基づいて設定された、第1光照射部1から照射される可視光の照射領域113が示されている。照射領域113には、例えば、可視光が照度7000W/mで0.3秒間照射され、基板Wに加えられた熱量は2100J/mであったとする。ここで型Mと基板Wとの並進ずれを抑制するために、図4の紫外光+可視光の照射期間112において、可視光が、照度7000W/mで0.15秒間照射され、基板Wに加えられた熱量が1050J/mであったと仮定する。前述したように、照射領域113に照射された可視光によって、形状補正としては余計な熱量が基板Wに加えられたために、形状差情報にはなかった熱変形が生じる。この熱変形を補正するための補正量を、型変形機構34および第1光照射部1の制御量に加える必要がある。例えば、図4の第2の光照射における可視光の照射期間111では、図11に示すように、照射領域113の熱量を勘案し、基板Wに加えられる可視光の熱量が全体で2100J/mとなるように、照度または照射時間を調整する。例えば、照度7000W/mとした場合、照射時間は0.15秒となる。説明を簡単にするため、図11では並進ずれを抑制するための照射領域113と、形状補正を行う照射領域115を同じとし、また照度も同じにしている。実際は、制御量算出時には型変形機構34による型Mの変形も加わるため、より複雑な照射領域と不均一な照度が使用される。
【0050】
型変形機構34と第1光照射部1の制御量を決定する処理のフローチャートを図8に示す。工程T1で、型変形機構34および第1光照射部1に補正量を入れずに、または、デフォルト値として設定された基準の補正量を適用して、基板Wに対してテストインプリントが行われる。工程T2では、不図示の重ね合わせ精度計測装置により、テストインプリントされた基板Wと型Mとの重ね合わせ精度が計測され、これにより形状差情報が取得される。工程T3では、上述した並進抑制パターンで可視光を基板Wに照射した際の熱変形量が取得(算出)される。工程T4では、形状差情報に工程T3で取得された熱変形量を加えることで、型変形機構34と第1光照射部1の制御量が算出される。工程T5では、インプリント処理が行われ、再度、重ね合わせ精度計測機で、型Mと基板Wとの重ね合わせ精度が計測され、これにより形状差情報が取得される。工程T7で、重ね合わせ精度が基準(規格値)を満たしているかどうかの判定が行われる。重ね合わせ精度が基準を満たしていれば、型変形機構34と第1光照射部1の制御量の算出を終了する。重ね合わせ精度が基準を満たしていなければ、処理は工程T4に戻り、工程T6で取得された形状差情報を用いて制御量の算出を行う。一例において、重ね合わせ精度が基準を満たすまでT4~T7のループが繰り返されてもよい。あるいは、重ね合わせ精度が基準を満たす前に、繰り返し回数が所定回数に達したときに処理を終了してもよい。
【0051】
図3のフローチャートを参照して、インプリント装置100によるインプリント方法を説明する。工程S1において、不図示の基板搬送部により基板Wがインプリント装置100内に搬入され、基板Wが基板ステージ5に載置および固定される。工程S2で、制御部50は、ショット領域Sが供給部7によるインプリント材の供給位置に来るように基板ステージ5を移動させ、その後、供給部7は、ショット領域S(インプリント領域)にインプリント材Rを供給する(供給工程)。
【0052】
次に、工程S3で、制御部50は、インプリント材Rが供給されたショット領域Sが型Mの直下に位置するように、基板ステージ5を移動させる。工程S4で、制御部50は、型保持部6の型駆動機構を駆動させて、ショット領域S上のインプリント材Rに型Mを接触させる(接触工程)。これによりインプリント材Rは、型Mのパターン部Mpに沿って流動し、パターン部Mp内にインプリント材が充填される。通常、型Mの接触が完了した後、パターン部Mp内にインプリント材が確実に充填するものとして予め定められた期間、待機することになる。
【0053】
工程S5~S7は、基板Wの上のインプリント材Rに型Mを接触させた状態で基板Wと型Mとの位置合わせを行う位置合わせ工程である。工程S5では、制御部50は、第1光照射部1を制御して予備露光を実施する。これは、図4で示した、第1の光照射として紫外光+可視光を照射する照射期間112に相当する。すなわち、工程S5は、インプリント材Rを硬化させる第1波長域の第1光(紫外光)と、基板Wを変形させる第2波長域の第2光(可視光)とを含む光を、型Mを介してインプリント材Rに部分的に照射する第1の光照射を行う第1工程を含む。
【0054】
工程S6では、制御部50は、型Mとインプリント材Rとが接触した状態で、型Mと基板Wとの位置が合うように基板ステージ5の位置合わせ駆動を行う。具体的には、基板Wおよび型Mに配置された位置合わせマーク10および11をアライメント光学系4によって検出し、制御部50はその検出の結果に応じて、基板ステージ5の駆動により、型Mのパターン部Mpとショット領域Sとの位置合わせを行う。工程S7では、制御部50は、工程S6と並行して、第1光照射部1を制御して可視光照射による基板Wの形状補正を行う。これは、図4で示した、第2の光照射として可視光を照射する照射期間111に相当する。すなわち、工程S7は、基板Wを変形させる第2波長域の第2光(可視光)を型Mおよびインプリント材Rを介して基板Wに部分的に照射する第2の光照射を行う第2工程を含む。さらに、工程S7では、制御部50は、型変形機構34により型Mの形状補正も実施する。工程S7では、上記したように、第2の光照射による露光量および型変形機構34の制御量は、工程S5での第1の光照射による露光量と基板の熱変形量との間の予め得られた関係に基づいて設定される。
【0055】
工程S8では、制御部50は、第2光照射部2により、型Mを介してインプリント材Rに紫外光を照射させ、インプリント材Rを硬化させる(露光工程)。なお、第2光照射部2ではなく第1光照射部1からの紫外光を用いて、インプリント材Rを硬化させてもよい。あるいは、第1光照射部1からの紫外光および第2光照射部2からの紫外光の両方を用いて、インプリント材Rを硬化させてもよい。
【0056】
工程S9では、制御部50は、型保持部6の型駆動機構を再駆動し、型Mを硬化したインプリント材Rから引き離す(離型工程)。これにより、基板Wのショット領域S上に型Mのパターン部Mpに対応するパターンを有する硬化物が形成される。
【0057】
また、工程S4(接触工程)から工程S9(離型工程)の間、観察光学系3により、型M、基板W、および基板Wの上のインプリント材Rに関して異常が発生していないかをモニターされうる(工程S10)。
【0058】
以上のインプリント方法によれば、基板Wのショット領域Sに対して、型Mのパターン部Mpに対応するパターンを、良好な重ね合わせ精度で転写することが可能となる。
【0059】
<第2実施形態>
図6には、第2実施形態における第1光照射部1’の構成が示されている。第1実施形態における第1光照射部1は、1つの光源ユニット101と1つの光調整器102を有していたが、第2実施形態における第1光照射部1’は、2つの光源ユニットと2つの光調整器とを備えうる。例えば、第2実施形態における第1光照射部1’は、第1光源ユニット106と、第2光源ユニット109と、第1光調整器102a(第1空間光変調器)と、第2光調整器102b(第2空間光変調器)とを含みうる。第1光源ユニット106は、インプリント材を硬化させる第1波長域の第1光を発生する第1光源161を含み、第2光源ユニット109は、基板を変形させる第2波長域の第2光を発生する第2光源162を含みうる。
【0060】
第1光源161が発生する第1波長域の第1光は、例えば、インプリント材を硬化させる紫外光であり、第1光源121は、例えば紫外光レーザダイオードにより構成される。第2光源162が発生する第2波長域の第2光は、例えば基板を変形させる可視光であり、第2光源162は、例えば可視光レーザダイオードにより構成される。
【0061】
第1光源ユニット106における第1光源コントローラ163は、制御部50からの指令に従って第1光源161を制御する。第1光源161の制御は、第1光源161の点灯および消灯の制御を含みうる。第1光源161の制御は、更に、第1光源161が発生する第1光の強度の制御を含んでもよい。第1光源コントローラ163の機能、構成は、第1実施形態における第1光源コントローラ123と同様でありうる。
【0062】
第2光源ユニット109における第2光源コントローラ164は、制御部50からの指令に従って第2光源162を制御する。第2光源162の制御は、第2光源162の点灯および消灯の制御を含みうる。第2光源162の制御は、更に、第2光源162が発生する第2光の強度の制御を含んでもよい。第2光源コントローラ164の機能、構成は、第1実施形態における第2光源コントローラ124と同様でありうる。
【0063】
制御部50は、第1光源161および第2光源162を個別に制御しうる。制御部50は、第1光源161および第2光源162の一方を点灯させ他方を消灯または遮断させるように第1光源161および第2光源162を制御しうる。また、制御部50は、第1光源161および第2光源162の両方を点灯させるように第1光源161および第2光源162を制御しうる。
【0064】
第1光源161からの第1光(紫外光)による第1光調整器102aへの照明は、光学素子107により調整されうる。第1光変調器102では所望の照明パターンが表示されており、第1光調整器102の下流へ第1変調光120を反射する。第1変調光121は、光学素子121により照明倍率が調整されて、後述するダイクロイックミラー108へと入射する。
【0065】
第2光源162からの第2光(可視光)による第2光調整器102bへの照明は、光学素子165により調整されうる。第2光変調器102bでは所望の照明パターンが表示されており、第2光調整器102bの下流へ第2変調光166を反射する。第2変調光166は、光学素子104により照明倍率が調整されて、後述するダイクロイックミラー108へと入射する。
【0066】
第1光照射部1’は、第1変調光120と第2変調光166とを合成する合成部としてのダイクロイックミラー108を有する。ダイクロイックミラー108で合成された光は、第1実施形態と同様の光学経路を通過して、基板Wに導かれる。
【0067】
以上の構成により、第1実施形態と同様の光照射が実行される。すなわち、第1の光照射は、第1変調光120および第2変調光166を共にダイクロイックミラー108に供給して、ダイクロイックミラー108から出力された光(紫外光+可視光)を、型Mを介してインプリント材Rに部分的に照射することを含む。また、第2の光照射は、第1光源161を消灯または遮断し、第2変調光166をダイクロイックミラー108に供給して、ダイクロイックミラー108から出力された光(可視光)を、型Mおよびインプリント材Rを介して基板Wに部分的に照射することを含む。このとき、第2の光照射による露光量は、第1の光照射による露光量に基づいて設定される。
【0068】
第1実施形態では、光調整器102が1つであったため、光調整器102で表示する紫外光を照射するためのパターンと可視光を照射するためのパターンを時間で分ける必要があった(図4参照)。本実施形態では、光調整器が2つあるため、図7に示すように紫外光と可視光を並行して基板Wに照射することができる。したがって、図3に示す工程S6と工程S7を並行して進められることから、スループット向上に寄与することができる。
【0069】
<第3実施形態>
図3で示したインプリント方法においては、工程S5でインプリント材Rに紫外光および可視光を照射する予備露光が行われた後に、工程S7で可視光照射による基板Wの形状補正および型変形機構34による型Mの形状補正が行われた。
【0070】
しかし、これらの工程の順序は逆であってもよい。すなわち、可視光照射により基板Wの形状補正および型変形機構34による型Mの形状補正が行われた後に、インプリント材Rに紫外光および可視光を照射する予備露光が行われてもよい。
【0071】
図9には、第3実施形態における紫外光と可視光の照射タイミングの例が示されている。第1実施形態に係る図4では、予備露光工程においてインプリント材を部分的に硬化させるための第1の光照射を行う照射期間112の後に、位置合わせ工程において基板を変形させるための第2の光照射を行う照射期間111が設定されていた。これに対し、第3実施形態では、図9に示すように、予備露光工程においてインプリント材を部分的に硬化させるための第1の光照射を行う照射期間112の前に、位置合わせ工程において基板を変形させるための第2の光照射を行う照射期間111が設定される。
【0072】
第3実施形態においても、第1実施形態と同様、予め実験またはシミュレーション等により、第1の光照射による露光量と基板の熱変形量との間の関係を求めておく。第2の光照射による露光量は、この予め得られた関係に基づき、第1の光照射による露光量に応じて設定されうる。例えば、制御部50は、この予め得られた関係から予測された基板Wの熱変形量を、型変形機構34の制御量と第1光照射部1の制御量を計算する際の型Mと基板Wとの形状差情報に加える。本実施形態では、紫外光+可視光の照射期間112によるインプリント材Rへの照射が、可視光の照射期間111より時間的に後になるため、インプリントシーケンス中におけるインプリント材Rの粘性変化までの時間を長く確保できる。その結果、インプリント材Rが型Mのパターン部Mpへの充填を妨げる影響が小さくなるため、歩留まり向上が期待できる。
【0073】
<物品製造方法の実施形態>
インプリント装置を用いて形成した硬化物のパターンは、各種物品の少なくとも一部に恒久的に、或いは各種物品を製造する際に一時的に、用いられる。物品とは、電気回路素子、光学素子、MEMS、記録素子、センサ、或いは、型等である。電気回路素子としては、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAMのような、揮発性或いは不揮発性の半導体メモリや、LSI、CCD、イメージセンサ、FPGAのような半導体素子等が挙げられる。型としては、インプリント用のモールド等が挙げられる。
【0074】
硬化物のパターンは、上記物品の少なくとも一部の構成部材として、そのまま用いられるか、或いは、レジストマスクとして一時的に用いられる。基板の加工工程においてエッチング又はイオン注入等が行われた後、レジストマスクは除去される。
【0075】
次に、物品製造方法について説明する。図12の工程SAでは、絶縁体等の被加工材2zが表面に形成されたシリコン基板等の基板1zを用意し、続いて、インクジェット法等により、被加工材2zの表面にインプリント材3zを付与する。ここでは、複数の液滴状になったインプリント材3zが基板上に付与された様子を示している。
【0076】
図12の工程SBでは、インプリント用の型4zを、その凹凸パターンが形成された側を基板上のインプリント材3zに向け、対向させる。図12の工程SCでは、インプリント材3zが付与された基板1zと型4zとを接触させ、圧力を加える。インプリント材3zは型4zと被加工材2zとの隙間に充填される。この状態で硬化用のエネルギーとして光を型4zを介して照射すると、インプリント材3zは硬化する。
【0077】
図12の工程SDでは、インプリント材3zを硬化させた後、型4zと基板1zを引き離すと、基板1z上にインプリント材3zの硬化物のパターンが形成される。この硬化物のパターンは、型の凹部が硬化物の凸部に、型の凸部が硬化物の凹部に対応した形状になっており、即ち、インプリント材3zに型4zの凹凸パターンが転写されたことになる。
【0078】
図12の工程SEでは、硬化物のパターンを耐エッチングマスクとしてエッチングを行うと、被加工材2zの表面のうち、硬化物が無いか或いは薄く残存した部分が除去され、溝5zとなる。図12の工程SFでは、硬化物のパターンを除去すると、被加工材2zの表面に溝5zが形成された物品を得ることができる。ここでは硬化物のパターンを除去したが、加工後も除去せずに、例えば、半導体素子等に含まれる層間絶縁用の膜、つまり、物品の構成部材として利用してもよい。
【0079】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0080】
1:第1光照射部、2:第2光照射部、3:観察光学系、4:アライメント光学系、5:基板ステージ、6:型保持部、34:型変形機構、100:インプリント装置、M:型、W:基板、R:インプリント材
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