(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】コールセンタシステム、待ち時間予測方法、および情報処理装置
(51)【国際特許分類】
H04M 3/523 20060101AFI20241120BHJP
【FI】
H04M3/523
(21)【出願番号】P 2021054396
(22)【出願日】2021-03-26
【審査請求日】2023-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000233295
【氏名又は名称】株式会社日立情報通信エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】谷下 友規
【審査官】石井 則之
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-363972(JP,A)
【文献】特開2005-258551(JP,A)
【文献】国際公開第2020/219108(WO,A1)
【文献】特開2016-100880(JP,A)
【文献】特開2016-072765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04M3/00
3/16-3/20
3/38-3/58
7/00-7/16
11/00-11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1または複数の利用者が操作する第1の通信端末と、1または複数のオペレータが操作する第2の通信端末と、前記利用者からの問い合わせに対して前記オペレータが応答するための受付システムとを有したコールセンタシステムであって、
前記受付システムは、
前記第1の通信端末と前記第2の通信端末との間で発信された呼または受信された呼を制御する呼制御部と、
前記オペレータが応答中である場合に、新たに前記第1の通信端末から発信された呼を待ち行列に追加し、前記待ち行列の数を記憶する待ち行列部と、
前記第1の通信端末と前記第2の通信端末との間で制御された呼に基づいて開始された通話の音声を認識する音声認識部と、
前記音声認識部により認識された音声に含まれる問い合わせ内容と、オペレータごとに定められた前記問い合わせ内容の対応時間とに基づいて、問い合わせに対する予想対応時間を算出する対応時間予想部と、
前記オペレータごとの前記予想対応時間と、前記待ち行列の数とに基づいて、前記オペレータが応答中である場合の予想待ち時間を算出する待ち時間算出部と、
前記オペレータが応答中である場合に呼が発信された前記第1の通信端末に、前記予想待ち時間を通知するガイダンス送信部と、
を有することを特徴とするコールセンタシステム。
【請求項2】
前記対応時間予想部は、前記問い合わせ内容の形式に変化があった場合に、変化があった後の形式の前記問い合わせ内容と、当該問い合わせ内容についての前記対応時間とに基づいて、新たな予想対応時間を算出する、
ことを特徴とする請求項1に記載のコールセンタシステム。
【請求項3】
前記待ち時間算出部は、前記待ち行列の数に変化があった場合に、変化があった後の前記待ち行列の数と、前記オペレータごとの前記予想対応時間とに基づいて、新たな予想待ち時間を算出する、
ことを特徴とする請求項1に記載のコールセンタシステム。
【請求項4】
前記待ち時間算出部は、前記待ち行列の数の変化があった場合において、さらに、前記対応時間予想部により前記問い合わせ内容の形式に変化があった旨の通知を受けた場合、前記対応時間予想部による前記新たな予想対応時間を算出する指示を通知し、当該通知に基づいて新たに算出された予想対応時間を用いて、前記予想待ち時間を算出する、
ことを特徴とする請求項2に記載のコールセンタシステム。
【請求項5】
前記利用者からの問い合わせに対する前記オペレータによる応答履歴を管理する履歴管理部を有し、
前記対応時間予想部は、前記呼制御部が前記第1の通信端末から呼の切断要求を受けた場合に、当該切断要求を受けた呼が発信されてから当該切断要求を受けるまでの通話時間を対応時間として算出し、
前記履歴管理部は、当該対応時間と過去の対応時間とに基づいて、新たな対応時間を算出し、算出した新たな対応時間により前記予想対応時間を更新する、
ことを特徴とする請求項1に記載のコールセンタシステム。
【請求項6】
1または複数の利用者が操作する第1の通信端末と、1または複数のオペレータが操作する第2の通信端末と、前記利用者からの問い合わせに対して前記オペレータが応答するための受付システムとを有したコールセンタシステムで行われる待ち時間予測方法であって、
呼制御部が、前記第1の通信端末と前記第2の通信端末との間で発信された呼または受信された呼を制御し、
待ち行列部が、前記オペレータが応答中である場合に、新たに前記第1の通信端末から発信された呼を待ち行列に追加し、前記待ち行列の数を記憶し、
音声認識部が、前記第1の通信端末と前記第2の通信端末との間で制御された呼に基づいて開始された通話の音声を認識し、
対応時間予想部が、前記音声認識部により認識された音声に含まれる問い合わせ内容と、オペレータごとに定められた前記問い合わせ内容の対応時間とに基づいて、問い合わせに対する予想対応時間を算出し、
待ち時間算出部が、前記オペレータごとの前記予想対応時間と、前記待ち行列の数とに基づいて、前記オペレータが応答中である場合の予想待ち時間を算出し、
ガイダンス送信部が、前記オペレータが応答中である場合に呼が発信された前記第1の通信端末に、前記予想待ち時間を通知する、
ことを特徴とする待ち時間予測方法。
【請求項7】
前記対応時間予想部は、前記問い合わせ内容の形式に変化があった場合に、変化があった後の形式の前記問い合わせ内容と、当該問い合わせ内容についての前記対応時間とに基づいて、新たな予想対応時間を算出する、
ことを特徴とする請求項6に記載の待ち時間予測方法。
【請求項8】
前記待ち時間算出部は、前記待ち行列の数に変化があった場合に、変化があった後の前記待ち行列の数と、前記オペレータごとの前記予想対応時間とに基づいて、新たな予想待ち時間を算出する、
ことを特徴とする請求項6に記載の待ち時間予測方法。
【請求項9】
前記待ち時間算出部は、前記待ち行列の数の変化があった場合において、さらに、前記対応時間予想部により前記問い合わせ内容の形式に変化があった旨の通知を受けた場合、前記対応時間予想部による前記新たな予想対応時間を算出する指示を通知し、当該通知に基づいて新たに算出された予想対応時間を用いて、前記予想待ち時間を算出する、
ことを特徴とする請求項7に記載の待ち時間予測方法。
【請求項10】
前記利用者からの問い合わせに対する前記オペレータによる応答履歴を管理する履歴管理部を有した前記コールセンタシステムにおいて、
前記対応時間予想部は、前記呼制御部が前記第1の通信端末から呼の切断要求を受けた場合に、当該切断要求を受けた呼が発信されてから当該切断要求を受けるまでの通話時間を対応時間として算出し、
前記履歴管理部は、当該対応時間と過去の対応時間とに基づいて、新たな対応時間を算出し、算出した新たな対応時間により前記予想対応時間を更新する、
ことを特徴とする請求項6に記載の待ち時間予測方法。
【請求項11】
1または複数の利用者が操作する第1の通信端末と、1または複数のオペレータが操作する第2の通信端末との間で、前記利用者からの問い合わせに対する前記オペレータによる応答を制御する情報処理装置であって、
前記第1の通信端末と前記第2の通信端末との間で発信された呼または受信された呼を制御する呼制御部と、
前記オペレータが応答中である場合に、新たに前記第1の通信端末から発信された呼を待ち行列に追加し、前記待ち行列の数を記憶する待ち行列部と、
前記第1の通信端末と前記第2の通信端末との間で制御された呼に基づいて開始された通話の音声を認識する音声認識部と、
前記音声認識部により認識された音声に含まれる問い合わせ内容と、オペレータごとに定められた前記問い合わせ内容の対応時間とに基づいて、問い合わせに対する予想対応時間を算出する対応時間予想部と、
前記オペレータごとの前記予想対応時間と、前記待ち行列の数とに基づいて、前記オペレータが応答中である場合の予想待ち時間を算出する待ち時間算出部と、
前記オペレータが応答中である場合に呼が発信された前記第1の通信端末に、前記予想待ち時間を通知するガイダンス送信部と、
を有することを特徴とする情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コールセンタシステム、待ち時間予測方法、および情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コールセンタなどの電話受付システムにおいて、全てのオペレータが対応中の場合、予想待ち時間を計算し利用者に通知する技術が存在している。例えば、特許文献1では、過去の通話実績から予想待ち時間を算出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1では、現在の通話内容をリアルタイムに分析することなく、過去の通話時間から予想待ち時間を算出し、待ち時間の予測を行っている。このため、現在対応中の通話内容については予想待ち時間に含まれないため、通話時間のばらつきによって、予想待ち時間の精度が低くなる課題がある。
【0005】
本発明は、従来に比べて精度の高い予想待ち時間を利用者に提供することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかるコールセンタシステムは、1または複数の利用者が操作する第1の通信端末と、1または複数のオペレータが操作する第2の通信端末と、前記利用者からの問い合わせに対して前記オペレータが応答するための受付システムとを有したコールセンタシステムであって、前記受付システムは、前記第1の通信端末と前記第2の通信端末との間で発信された呼または受信された呼を制御する呼制御部と、前記オペレータが応答中である場合に、新たに前記第1の通信端末から発信された呼を待ち行列に追加し、前記待ち行列の数を記憶する待ち行列部と、前記第1の通信端末と前記第2の通信端末との間で制御された呼に基づいて開始された通話の音声を認識する音声認識部と、前記音声認識部により認識された音声に含まれる問い合わせ内容と、オペレータごとに定められた前記問い合わせ内容の対応時間とに基づいて、問い合わせに対する予想対応時間を算出する対応時間予想部と、前記オペレータごとの前記予想対応時間と、前記待ち行列の数とに基づいて、前記オペレータが応答中である場合の予想待ち時間を算出する待ち時間算出部と、前記オペレータが応答中である場合に呼が発信された前記第1の通信端末に、前記予想待ち時間を通知するガイダンス送信部と、を有することを特徴とするコールセンタシステムとして構成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、従来に比べて精度の高い予想待ち時間を利用者に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施の形態におけるコールセンタシステムの構成例を示す図である。
【
図4】対応時間予想テーブル(初期値)の一例を示す図である。
【
図5】オペレータスキルテーブルの一例を示す図である。
【
図6】問い合わせ定型文テーブルの一例を示す図である。
【
図7】対応時間予想テーブル(運用時)の一例を示す図である。
【
図8】本システムで行われる待ち時間予測処理を含む一連の問い合わせシーケンスを示す図である。
【
図9】本システムで用いられるコンピュータの概略の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の記載および図面は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施する事が可能である。特に限定しない限り、各構成要素は単数でも複数でも構わない。
【0010】
図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【0011】
以下の説明では、「データベース」、「テーブル」、「リスト」等の表現にて各種情報を説明することがあるが、各種情報は、これら以外のデータ構造で表現されていてもよい。データ構造に依存しないことを示すために「XXテーブル」、「XXリスト」等を「XX情報」と呼ぶことがある。識別情報について説明する際に、「識別情報」、「識別子」、「名」、「ID」、「番号」等の表現を用いた場合、これらについてはお互いに置換が可能である。
【0012】
同一あるいは同様な機能を有する構成要素が複数ある場合には、同一の符号に異なる添字を付して説明する場合がある。ただし、これらの複数の構成要素を区別する必要がない場合には、添字を省略して説明する場合がある。
【0013】
また、以下の説明では、プログラムを実行して行う処理を説明する場合があるが、プログラムは、プロセッサ(例えばCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit))によって実行されることで、定められた処理を、適宜に記憶資源(例えばメモリ)および/またはインターフェースデバイス(例えば通信ポート)等を用いながら行うため、処理の主体がプロセッサとされてもよい。同様に、プログラムを実行して行う処理の主体が、プロセッサを有するコントローラ、装置、システム、計算機、ノードであってもよい。プログラムを実行して行う処理の主体は、演算部であれば良く、特定の処理を行う専用回路(例えばFPGA(Field-Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit))を含んでいてもよい。
【0014】
プログラムは、プログラムソースから計算機のような装置にインストールされてもよい。プログラムソースは、例えば、プログラム配布サーバまたは計算機が読み取り可能な記憶メディアであってもよい。プログラムソースがプログラム配布サーバの場合、プログラム配布サーバはプロセッサと配布対象のプログラムを記憶する記憶資源を含み、プログラム配布サーバのプロセッサが配布対象のプログラムを他の計算機に配布してもよい。また、以下の説明において、2以上のプログラムが1つのプログラムとして実現されてもよいし、1つのプログラムが2以上のプログラムとして実現されてもよい。
【0015】
図1は、本実施の形態におけるコールセンタシステムの構成例を示す図である。
図1に示すように、コールセンタシステム1000は、利用者が電話受付システム300を介してオペレータとの間の通話や自動応答音声の確認をするための利用者電話機100と、オペレータが電話受付システム300を介して利用者との間で通話をするオペレータ電話機200と、利用者電話機100から受けた通話の音声データをオペレータ電話機200に転送する、あるいは当該音声データの音声内容を分析して予想待ち時間を利用者電話機100に回答する等の制御を行う電話受付システム300と、電話受付システム300の保守を行うためのシステム保守端末400とを有している。
【0016】
利用者電話機100およびオペレータ電話機200は、従来から知られている一般的な電話機を用いることができるため、これらのハードウェア構成や機能の具体的な説明については省略する。電話受付システム300と利用者電話機100との間は、一般的な公衆回線網であるネットワークNにより接続されている。また、電話受付システム300とオペレータ電話機200との間、電話受付システム300とシステム保守端末400との間は、LAN(Local Area Network)等の一般的な通信回線により接続されているものとする。また、以下では、利用者やオペレータが操作する端末の一例として、それぞれ、利用者電話機100、オペレータ電話機200を示しているが、スマートフォンをはじめとする通話機能を有した様々な通信端末についても同様に適用することができる。
【0017】
電話受付システム300は、呼制御部301と、ガイダンス送信部302と、利用者音声受信部303と、オペレータ音声送信部304と、オペレータ通信部305と、利用者音声送信部306と、オペレータ音声受信部307と、待ち行列部308と、待ち時間算出部309と、通話履歴管理部310と、対応時間予想部311と、システムデータ管理部312と、音声認識部313と、データ記憶部314とを有して構成される。電話受付システム300は、1または複数の利用者が操作する利用者電話機100と、1または複数のオペレータが操作するオペレータ電話機200との間で、利用者からの問い合わせに対するオペレータによる応答を制御するサーバ等の情報処理装置として構成することができる。
【0018】
図1に示した電話受付システム300や保守端末400は、例えば、
図9(コンピュータ概略図)に示すような、CPU1601と、メモリ1602と、HDD(Hard Disk Drive)等の外部記憶装置1603と、CD(Compact Disk)やUSBメモリ等の可搬性を有する記憶媒体1608に対して情報を読み書きする読書装置1607と、キーボードやマウス等の入力装置1606と、ディスプレイ等の出力装置1605と、通信ネットワークに接続するためのNIC(Network Interface Card)等の通信装置1604と、これらを連結するシステムバス等の内部通信線(システムバスという)1609と、を備えた一般的なコンピュータ1600により実現できる。
【0019】
各システムや装置(例えば、データ記憶部314)に記憶され、あるいは処理に用いられる様々なデータは、CPU1601がメモリ1602または外部記憶装置1603から読み出して利用することにより実現可能である。また、各システムや装置が有する各機能部(例えば、呼制御部301、ガイダンス送信部302、利用者音声受信部303、オペレータ音声送信部304、オペレータ通信部305、利用者音声送信部306、オペレータ音声受信部307、待ち行列部308、待ち時間算出部309、通話履歴管理部310、対応時間予想部311、システムデータ管理部312、音声認識部313)は、CPU1601が外部記憶装置1603に記憶されている所定のプログラムをメモリ1602にロードして実行することにより実現可能である。
【0020】
上述した所定のプログラムは、読書装置1607を介して記憶媒体1608から、あるいは、通信装置1604を介してネットワークから、外部記憶装置1603に記憶(ダウンロード)され、それから、メモリ1602上にロードされて、CPU1601により実行されるようにしてもよい。また、読書装置1607を介して、記憶媒体1608から、あるいは通信装置1604を介してネットワークから、メモリ1602上に直接ロードされ、CPU1601により実行されるようにしてもよい。
【0021】
以下では、電話受付システム300が、ある1つのコンピュータにより構成される場合を例示するが、これらの機能の全部または一部が、クラウドのような1または複数のコンピュータに分散して設けられ、ネットワークを介して互いに通信することにより同様の機能を実現してもよい。
【0022】
呼制御部301は、利用者電話機100とオペレータ電話機200等との間の呼の制御等を行う処理部である。ガイダンス送信部302は、利用者電話機100に対して予想待ち時間の通知等を行う処理部である。利用者音声受信部303は、利用者電話機100からの発信された通話の音声データの受信等を行う処理部である。オペレータ音声送信部304は、オペレータ音声受信部307が受信した上記音声データの利用者電話機100への送信等を行う処理部である。オペレータ通信部305は、呼制御部301が制御した呼を受けて、オペレータ電話機200の呼び出し等を行う処理部である。利用者音声送信部306は、利用者音声受信部303が受信した上記音声データのオペレータ電話機200への送信等を行う処理部である。オペレータ音声受信部307は、オペレータ電話機200から発信された通話の音声データの受信等を行う処理部である。
【0023】
待ち行列部308は、オペレータ電話機200がすべて通話中である場合に、利用者電話機100から新たに受信された呼を待ち状態とし、その順序の管理等を行う処理部である。待ち時間算出部309は、対応時間予想部311によるオペレータの予想対応時間に基づいて、利用者の予想待ち時間の算出等を行う処理部である。通話履歴管理部310は、オペレータの予想対応時間の更新等を行う処理部である。対応時間予想部311は、音声認識部313による通話の音声データの分析に基づいて、オペレータの予想対応時間の算出等を行う処理部である。システムデータ管理部312は、本システムで用いられる各種テーブルやデータの設定等を行う処理部である。音声認識部313は、利用者とオペレータとの間の通話の音声データの内容の分析等を行う処理部である。データ記憶部314は、例えば、HDD等の記憶装置(外部記憶装置1603)から構成され、データ種別テーブル201と、キーワードテーブル301と、対応時間予想テーブル401、701と、オペレータスキルテーブル501と、問い合わせ定型文テーブル601とを記憶する記憶装置(あるいは記憶媒体)である。電話受付システム300の各機能部が行う具体的な処理については後述する。
【0024】
図2は、データ種別テーブル201の一例を示す図である。データ種別テーブル201は、利用者とオペレータとの間の通話内容を区分するためのテーブルである。
図2に示すように、データ種別テーブル201は、どのような通話内容なのかを区分けして認識し、識別するための区分け情報と、当該区分け情報により区分けされる区分内容とが対応付けて記憶されている。
図2では、例えば、区分情報「1」で区分けされる内容は「製品名」であることがわかる。すなわち、通話内容には少なくとも「製品名」が含まれる必要があることを示している。
【0025】
図3は、キーワードテーブル301の一例を示す図である。キーワードテーブル301は、データ種別テーブル201により区分けされる区分内容の項目に含まれるべきキーワードを定めたテーブルである。
図3に示すように、キーワードテーブル301は、
図2に示した区分内容と、当該区分内容に含まれるべきキーワードとが対応付けて記憶されている。
図3では、例えば、区分内容「製品名」として、製品名1の名称、製品名2の名称、製品名3の名称が、利用者とオペレータとの間の通話で含まれるべきキーワードであると定められていることがわかる。同様に、区分内容「問い合わせ内容」には、「動かない」、「交換したい」、「使い方」といった用語が、利用者とオペレータとの間の通話で含まれるべきキーワードであると定められていることがわかる。本例では、これらの用語が明示的に含まれる場合を示しているが、意味解析等により一定程度これらの用語に近い用語を含めてもよい。
【0026】
図4は、対応時間予想テーブル401(初期値)の一例を示す図である。対応時間予想テーブル401は、オペレータが利用者との間の通話に対応するための予想時間の初期値を定めたテーブルである。
図4に示すように、対応時間予想テーブル401は、
図2、3に示した1または複数の区分内容に対応するキーワード(
図4では区分内容1~4)と、当該1または複数の区分内容で区分される通話においてオペレータが対応のために必要であると予想される対応時間の初期値とが対応付けて記憶されている。
図4では、例えば、区分内容1(製品名)についてのキーワード「製品名1」、区分内容2(問い合わせ内容)についてのキーワード「動かない」、区分内容3(機能種別)についてのキーワード「○○」という組み合わせで識別される利用者との通話では、オペレータは、180秒間、利用者に対する対応が必要であると予想されることを示している。機能「○○」は、例えば、プリンタであれば、用紙を排出する排出ローラといったハードウェアとしての機能のほか、操作パネルに対するタッチ操作といったソフトウェアとしての機能など、製品に応じて定められる様々な機能が挙げられる。対応時間予想テーブル701については、
図7を用いて後述する。
【0027】
図5は、オペレータスキルテーブル501の一例を示す図である。オペレータスキルテーブル501は、オペレータのスキルレベルを定めたテーブルである。
図5に示すように、オペレータスキルテーブル501は、オペレータを識別するためのオペレータIDと、当該オペレータIDにより識別されるオペレータの名前と、当該オペレータのスキルレベルを定めた能力係数とが対応付けて記憶されている。
図5では、例えば、オペレータID「1」のオペレータの名前は「○○ ○○」であり、能力係数は「1.2」であることを示している。
【0028】
図6は、問い合わせ定型文テーブル601の一例を示す図である。問い合わせ定型文テーブル601は、区分内容「問い合わせ内容」の問い合わせ形式がどのような形式であるかを定めたテーブルである。
図6に示すように、問い合わせ定型文テーブル601は、問い合わせ内容の形式を識別するための問い合わせ内容形式種別と、当該種別により識別される問い合わせ内容のデータとが対応付けて記憶されている。
図6では、例えば、音声認識により、問い合わせ内容が1件であると認識された場合には、定型文として、「問い合わせいただいた内容[ ]についてご対応させていただきます。」との文が、オペレータが回答すべき文として定められている。[ ]には、
図3で示したキーワードを含む文言が少なくとも含まれる仕様とする。
【0029】
図7は、対応時間予想テーブル701(運用時)の一例を示す図である。対応時間予想テーブル701は、運用時におけるオペレータが利用者との間の通話に対応するための予想時間を定めたテーブルである。
図7に示すように、対応時間予想テーブル701は、
図4に示した内容と同様、区分内容のキーワード(
図7では区分内容1~4)と、
図5で説明したオペレータの名前と、当該オペレータが当該組み合わせで識別される通話に対応するときの予想対応時間とが対応付けて記憶されている。また、
図7では、各レコードを識別するためのテーブルIDがこれらの項目に対応付けて記憶されている。
図7では、利用者との間の通話に対してオペレータの対応が想定されるすべてのキーワードの組み合わせが記憶されている。
【0030】
図7では、例えば、テーブルID「1」で識別される、区分内容1(製品名)についてのキーワード「製品名1」、区分内容2(問い合わせ内容)についてのキーワード「動かない」、区分内容3(機能種別)についてのキーワード「○○」という組み合わせの利用者との通話に対して、オペレータ「○○ ○○」が対応した場合、予想対応時間は216秒であることを示している。予想対応時間は、
図4に示した対応時間の初期値と、
図5に示したオペレータごとに定められた能力係数とを乗算することにより算出することができる。
【0031】
続いて、本システムで行われるシーケンスについて説明する。
図8は、本システムで行われる待ち時間予測処理を含む一連の問い合わせシーケンスを示す図である。以下では、データ記憶部314については図示を省略している。
【0032】
図8に示すように、システム保守端末400は、運用開始前に、本システムの管理者からの操作を受け付けて、
図2~6に示した各テーブルの各項目を設定し、電話受付システム300のシステムデータ管理部312にこれらのテーブルを送信する。システムデータ管理部312は、システム保守端末400から受信したこれらのテーブルをデータ記憶部314に記憶する(S801)。
【0033】
続いて、初回システム起動時、電話受付システム300の対応時間予想部311は、データ記憶部314から、
図4に示した対応時間予想テーブル401と、
図5に示したオペレータスキルテーブル501とを取得し、
図7に示したオペレータ毎の対応時間予想テーブル701を生成する(S802)。ここで生成したオペレータ毎の対応時間予想テーブル701のデータは、オペレータ毎の初期値であり、後述するように、利用者との間で通話が終了する毎に、その通話時間や標準偏差に基づいて、予想対応時間が更新される。
【0034】
利用者電話機100(利用者電話機1)は、オペレータ電話機200に空きがある状態で、利用者からの操作を受け付け、電話受付システム300に発信する(S803)。
【0035】
電話受付システム300の呼制御部301は、利用者電話機100からの着信を受け付けた後、オペレータ通信部305にその旨通知し、オペレータ通信部305は、空き状態となっている内線番号のオペレータ電話機200を割り当てて、当該オペレータ電話機200を操作するオペレータを呼び出す等の呼び出し処理を行う(S804)。当該呼び出し処理については従来から知られている技術を用いてよい。オペレータ電話機200とオペレータIDとは互いに対応付けられ、例えば、図示しないオペレータ電話機200のメモリ等の記憶媒体に記憶されている。
【0036】
その後、上記呼び出し処理による呼び出しに、オペレータが応答することで通話開始となる(S805)。
【0037】
通話が開始されると、利用者音声受信部303は、利用者からの音声を含む音声データをオペレータ音声送信部304によりオペレータ電話機200に、オペレータ音声受信部307は、オペレータ電話機200からの音声を含む音声データを利用者音声送信部306により利用者電話機100に、それぞれ転送する。このとき、利用者音声受信部303は、利用者からの上記音声データを対応時間予想部311に同報し、オペレータ音声受信部307は、オペレータからの上記音声データを対応時間予想部311に同報する(S807、S808)。
【0038】
また、通話開始後、呼制御部301は、割り当てたオペレータ電話機200を操作するオペレータのオペレータIDと、上記音声データをオペレータ毎に区分分けする情報(例えば、利用者電話機100およびオペレータ電話機200のポート番号等)とを、対応時間予想部311に通知する(S809)。S809の処理が終了すると、対応時間予想部311による通話時間の予測を開始する。
【0039】
対応時間予想部311は、利用者とオペレータとの間の通話中、S807、S808において、利用者、オペレータのそれぞれの上記音声データをリアルタイムに受信している。対応時間予想部311は、S809で通知された、上記音声データをオペレータ毎に区分分けする情報(例えば、利用者電話機100およびオペレータ電話機200のポート番号等)により、受信した上記音声データをオペレータ毎に区別することができる。
【0040】
対応時間予想部311は、S807、S808において受信した音声データにおいて、通話開始から通話終了までの間の経過時間を図示しないタイマにより計時するとともに、上記音声データを音声認識部313に入力し(S810)、音声認識部313は、入力された上記音声データの中から、
図6に示した問い合わせ定型文テーブル601の「問い合わせ内容1件認識用」又は「問い合わせ内容複数件認識用」のいずれかで識別される形式に該当する部分の音声データを取得する。音声認識部313は、取得した音声データから、
図3に示したキーワードテーブル301に含まれるキーワードを取出し、キーワード1~キーワードnを認識する(S811)。
【0041】
なお、音声認識部313は、上記いずれかの問い合わせ内容認識定型文が見つからない場合は、数秒経過してから再度繰り返す。上記問い合わせ内容認識定型文については、あらかじめシステムに従事するオペレータに周知しておき、利用者に対する対応の際に必ずオペレータから発言するようあらかじめ教育しておくものとする。オペレータによる対応手順(発言等)のルール化を併用することで、音声認識の効率化を図ることができる。
【0042】
対応時間予想部311は、S811で認識したキーワード1~キーワードnと、S809で取得したオペレータIDをキーにして、
図7に示したオペレータ毎の対応時間予想テーブル701の中から、該当するテーブルIDを特定し、予想対応時間を決定する(S812)。なお、S811において、音声認識部313が、「問い合わせ内容複数件認識用」で識別される形式に該当する部分の音声データを取得した場合、すなわち、問い合わせ内容が複数件の場合は、S811におけるキーワードの取出し、およびキーワード1~キーワードnの認識、S812における予想対応時間の決定を、件数分繰り返したのち、その合計を予想対応時間に加算するものとする。
【0043】
対応時間予想部311は、会話内容の変化に対応するため、通話中、定期的(例えば、60秒ごと。システムによりあらかじめ設定される)に、
図6に示した問い合わせ定型文テーブル601の「問い合わせ内容訂正用」または「問い合わせ内容追加」のいずれかで識別される形式に該当する部分の音声データが含まれるかを監視する(S813)。
【0044】
対応時間予想部311は、「問い合わせ内容訂正用」または「問い合わせ内容追加」のいずれかで識別される形式に該当する部分の音声データが含まれるか否かを判定することにより、通話内容に変化があったか否かを判定し(S814)、通話内容に変化があったと判定した場合(S814;Yes)、S811に戻り、以降の処理を繰り返す。
【0045】
例えば、対応時間予想部311は、「問い合わせ内容訂正用」の形式に該当する部分の音声データが含まれていると判定した場合には、それまで算出した予想対応時間をリセットして、新たな予想対応時間を算出する。また、例えば、対応時間予想部311は、「問い合わせ内容追加」の形式に該当する部分の音声データが含まれていると判定した場合には、それまで算出した予想対応時間に加えて、さらに追加された部分の音声データに対応する予想対応時間を、
図7に示したオペレータ毎の対応時間予想テーブル701を用いて決定し、それまで算出した予想対応時間と決定した予想対応時間とを加算した新たな予想対応時間を算出する。
【0046】
そして、対応時間予想部311は、通話内容に変化がないと判定した場合(S814;No)、算出または決定した予想対応時間を、最新の予想対応時間として出力する。以降、対応時間予想部311は、S813における会話内容の変化の監視、およびS814における通話内容に変化があったか否かの判定を、算出または決定した予想対応時間を出力した後も、利用者との間の通話が切断されるまで継続して行い、さらに通話内容に変化があったと判定した場合(S814;Yes)、その旨を待ち時間算出部309に通知する(S822-1)。
【0047】
ここで、オペレータ電話機に空きがない場合の利用者に対する予想待ち時間の通知について考える。S815において、利用者電話機100(利用者電話機2)は、オペレータ電話機200に空きがない状態で、利用者からの操作を受け付け、電話受付システム300に発信する(S815)。
【0048】
電話受付システム300の呼制御部301は、利用者電話機100からの着信を受け付けた後、全オペレータが応答中である旨を認識し、その旨を待ち行列部308に通知する。待ち行列部308は、呼制御部301からの通知に基づいて、該当の呼を待ち行列に追加して待ち人数を加算し、その人数を記憶し、待ち時間算出部309にその人数を出力する(S816)。後述するように、待ち行列は、利用者とオペレータとの間の通話終了、又は、待ち中の利用者のキャンセルにより減算される。全オペレータが対応中である旨の認識は、例えば、オペレータ通信部305が、空き状態となっている内線番号のオペレータ電話機200が割り当てられない場合、その旨を呼制御部301に通知することにより行えばよい。
【0049】
続いて、呼制御部301は、待ち時間算出部309に待ち時間を通知する指示を行う(S817)。
【0050】
待ち時間算出部309は、S814までに決定または算出した最新の予想対応時間を、対応時間予想部311から取得する(S818)。既に説明したように、対応時間予想部311は、S810~S814の処理を実行して得られた各オペレータの予想対応時間を、待ち時間算出部309に出力する。
【0051】
待ち時間算出部309は、待ち行列部308が記憶している待ち人数を取得する。待ち時間算出部309は、取得した当該待ち人数のそれぞれについて、すなわち待ち中の利用者のそれぞれについて、予想対応時間が少ない順に、待ち人数分に応じた予想対応時間を、予想待ち時間に加算する(S819)。
【0052】
例えば、いま、
図1において、利用者A、B、Cの3人の呼が待ち行列部308により記憶されているとする。また、利用者A、B、Cの呼は、この順で待ち行列部308に記憶され、利用者Aの呼が1番目として記憶されている。この場合、まず、待ち時間算出部309は、待ち行列部308が記憶している待ち人数「3」を取得する。そして、待ち時間算出部309は、まず、S810~S814の処理を実行して得られた各オペレータの予想対応時間のうち、最も早く待ちが解除される予想対応時間、すなわち最も短い予想対応時間を取得し、利用者Aについての予想待ち時間とする。続いて、待ち時間算出部309は、S810~S814の処理を実行して得られた各オペレータの予想対応時間のうち、2番目に短い予想対応時間を取得し、取得した当該予想対応時間に、利用者Aについての予想対応時間を加算した時間を、利用者Bについての予想待ち時間とする。同様に、待ち時間算出部309は、S810~S814の処理を実行して得られた各オペレータの予想対応時間のうち、3番目に短い予想対応時間を取得し、取得した当該予想対応時間に、利用者Aおよび利用者Bについての予想対応時間を加算した時間を、利用者Cについての予想待ち時間とする。
【0053】
このように、全オペレータが対応中になった後、最初に呼を受け付けた利用者Aの待ち人数は1名であり、次に呼を受け付けた利用者Bの待ち人数は2名となる。対応中のオペレータのいずれかの通話(例えば、1名の場合は予想対応時間が最も短いオペレータの通話。2名の場合は、予想対応時間が最も短いオペレータの通話とその次に予想対応時間が短いオペレータの通話。)が、利用者Aは1名分、利用者Bは2名分終了すれば対応可能となる。したがって、待ち時間算出部309は、利用者A、利用者Bそれぞれの待ち人数分の予想対応時間を計算する。
【0054】
そして、待ち時間算出部309は、算出したこれらの予想待ち時間をガイダンス送信部302に出力し、ガイダンス送信部302は、それぞれ、利用者A、B、Cが操作する利用者電話機100に通知する(S820)。
【0055】
その後、待ち時間算出部309は、待ち行列部308が記憶している待ち行列の数およびその変化を定期的(例えば、10秒ごと。システムによりあらかじめ設定される)に監視する(S821)。さらに、待ち時間算出部309は、対応時間予想部311から、S822-1において、さらに通話内容に変化があったと判定した旨の通知を受けたか否かを判定し(S822-2)、さらに通話内容に変化があったと判定した旨の通知を受けたと判定した場合(S822-2;Yes)、S810に戻り、以降の処理を繰り返す。
【0056】
そして、対応時間予想部311は、新たな予想対応時間を決定、算出し(S812)、再び、問い合わせ定型文テーブル601の「問い合わせ内容訂正用」または「問い合わせ内容追加」のいずれかで識別される形式に該当する部分の音声データが含まれるかを監視する(S813)。対応時間予想部311は、通話内容に変化がないと判定した場合(S814;No)、算出または決定した予想対応時間を、最新の予想対応時間として出力する。S819において、待ち時間算出部309は、対応時間予想部311が出力した最新の予想対応時間を用いて、待ち中の利用者のそれぞれについて、予想対応時間が少ない順に、待ち人数分に応じた予想対応時間を、予想待ち時間に加算し、S820において、ガイダンス送信部302が、新たに算出された最新の予想待ち時間を各利用者が操作する利用者電話機100に通知する。
【0057】
このように、利用者に対して予想待ち時間が通知された後であっても、通話中の利用者とオペレータとの間の通話内容の変化に応じて最新の予想待ち時間が算出され、利用者に通知される。したがって、利用者は、従来よりも精度の高い待ち時間を知ることができるため、電話を切るべきか否かを適切に判断することができ、利用者のストレス軽減につなげることができる。
【0058】
さらに、待ち時間算出部309は、S822-2において、さらに通話内容に変化があったと判定した旨の通知を受けていないと判定した場合(S822-2;No)、S821で監視している待ち行列の数およびその変化に変化があったか否かを判定する(S823)。待ち時間算出部309は、S821で監視している待ち行列の数およびその変化に変化がないと判定した場合は(S823;No)、S821に戻り、待ち行列部308が記憶している待ち行列の数およびその変化の監視を継続する。
【0059】
一方、待ち時間算出部309は、S821で監視している待ち行列の数およびその変化に変化があったと判定した場合は(S823;Yes)、S819に戻り、待ち行列部308が記憶しているその時点の最新の待ち人数を取得し、取得した当該待ち人数のそれぞれについて、待ち人数分に応じた予想対応時間を算出し(S819)、ガイダンス送信部302が最新の待ち人数に応じて算出された予想待ち時間を、各利用者が操作する利用者電話機100に通知する(S820)。
【0060】
このように、待ち行列の数が変化した場合でも、変化した待ち行列の数に応じて、最新の予想待ち時間が算出され、利用者に通知される。したがって、通話中の利用者とオペレータとの間の通話内容が変化した場合と同様に、利用者は、従来よりも精度の高い待ち時間を知ることができるため、電話を切るべきか否かを適切に判断することができ、利用者のストレス軽減につなげることができる。
【0061】
なお、S819において、待ち時間算出部309は、S816において待ち行列部308から出力された待ち人数が、全オペレータの数(すなわち、オペレータ電話機200の総数)を一定の閾値以上超える場合は、ガイダンス送信部302がその旨を利用者電話機100に通知するとともに、利用者から、代表的なキーワード(例えば、キーワード1の製品名、キーワード2の問い合わせ内容)の音声入力を促す。利用者音声受信部303が入力された音声を受信すると、対応時間予想部311は、当該キーワードと、オペレータの名前が不明であることを示す「-」とをキーにして、
図7に示したオペレータ毎の対応時間予想テーブル701の中から、該当するテーブルIDを特定し、予想対応時間を決定するS812と同様の処理を行う。オペレータの名前が不明となる理由は、オペレータが割り当てできないためである。
【0062】
さらにS819の場合と同様に、待ち時間算出部309は、待ち行列部308が記憶している待ち人数を取得し、取得した当該待ち人数のそれぞれについて、すなわち待ち中の利用者のそれぞれについて、予想対応時間が少ない順に、待ち人数分に応じた予想対応時間を、予想待ち時間に加算する。さらに、待ち時間算出部309は、S820の場合と同様に、算出したこれらの予想待ち時間をガイダンス送信部302に出力し、ガイダンス送信部302は、それぞれ、利用者A、B、Cが操作する利用者電話機100に通知する。
【0063】
このように、S823までの処理を繰り返し行うことで、利用者は、対応内容の変化や待ち人数の変化に追従した最新の待ち時間を把握することができるようになる。
【0064】
その後、先の利用者とオペレータとの間の通話が終了すると、以下に示すように、予想対応時間が更新される。
【0065】
例えば、呼制御部301は、利用者電話機100(利用者電話機1)から、S803で行った発信の切断操作に基づく通話終了を検出すると(S824)、S804で割り当てられたオペレータ電話機200を操作するオペレータの通話が終了した旨を、対応時間予想部311に通知する(S825)。
【0066】
対応時間予想部311は、S806からS825までの時間、すなわち通話開始から通話終了までの経過時間を算出し、経過時間の間の通話の音声データを、オペレータID(あるいは名前)、テーブルIDに対応付けて記憶しておく(S826)。このとき、対応時間予想部311は、S810~S814までの処理で、当該オペレータの通話が、1の問い合わせ内容についてのものであったか、複数の問い合わせ内容についてのものであったかを判定する。対応時間予想部311は、1の問い合わせ内容についてのものであったと判定した場合は、算出した経過時間を当該オペレータの実際の対応時間とする。また、対応時間予想部311は、複数の問い合わせ内容についてのものであったと判定した場合は、「問い合わせ内容複数件認識用」のいずれかで識別される形式に該当する部分の音声データごとに通話時間を分割し、それぞれの問い合わせ内容(つまり、
図7に示したキーワードの組み合わせ)についての経過時間を算出し、算出した経過時間を、各キーワードの組み合わせについての当該オペレータの実際の対応時間とする(S827)。
【0067】
そして、対応時間予想部311は、
図7に示したオペレータ毎の対応時間予想テーブル701を参照し、S827で算出した対応時間に対応するキーワードの組み合わせのテーブルIDと当該対応時間とを通話履歴管理部310に通知する(S828)。この場合、対応時間予想部311は、該当するテーブルIDに加え、該当するテーブルIDと同じキーワードを含むテーブルID(例えば、
図7では、テーブルID「14」~「16」のテーブルID)についても、上記算出した対応時間を通話履歴管理部310に通知する。
【0068】
通話履歴管理部310は、対応時間予想部311から通知を受けたテーブルIDのテーブルについて、
図7で示したオペレータ毎の対応時間予想テーブル701を更新する(S829)。例えば、通話履歴管理部310は、対応時間予想テーブル701の予想対応時間が初期値のままである(すなわち、
図4に示した対応時間初期値と同じ値である)場合は、S827で算出された対応時間を、予想対応時間に設定する。また、通話履歴管理部310は、対応時間予想テーブル701の予想対応時間が初期値でない場合は、過去にそのキーワードの組み合わせについて対応したときの対応時間が記憶されているため、当該対応時間(すなわち過去に対応したときの対応時間)から、今回対応した時の対応時間の標準偏差を求め、予想対応時間を更新する。なお、通話履歴管理部310は、S826において、次回の更新時に標準偏差を求めるため、当該標準偏差の算出に用いる一定数以上の過去の対応時間を、テーブルID毎に記憶しておくものとする。記憶する過去の対応時間の数は、システムにおける業務種別や、データベース容量に応じて決定すればよい。
【0069】
このように、S829までの処理を行うことにより、利用者に通知する予想待ち時間の根拠となるオペレータの予想対応時間を、オペレータごとに最新の状態に更新しておくことができる。したがって、通話中の利用者とオペレータとの間の通話内容が変化した場合や、待ち行列の数が変化した場合において算出される予想対応時間の元となる情報を、最新のオペレータの対応状況に応じて精度よく、待ち時間算出部309や対応時間予想部311に提供できる。その結果、利用者は、さらに、従来よりも精度の高い待ち時間を知ることができるため、電話を切るべきか否かを適切に判断することができ、利用者のストレス軽減につなげることができる。
【0070】
以上説明したように、本実施例におけるコールセンタシステム1000によれば、オペレータが対応中の通話内容をリアルタイムに分析し、予想待ち時間の算出に反映することにより、精度の高い予想待ち時間を利用者に提供することができる。
【0071】
すなわち、1または複数の利用者が操作する第1の通信端末(例えば、利用者電話機100)と、1または複数のオペレータが操作する第2の通信端末(オペレータ電話機200)と、上記利用者からの問い合わせに対して上記オペレータが応答するための受付システム(例えば、電話受付システム300)とを有したコールセンタシステム1000において、上記受付システムは、上記第1の通信端末と上記第2の通信端末との間で発信された呼または受信された呼を制御する呼制御部(例えば、呼制御部301)と、上記オペレータが応答中である場合に、新たに上記第1の通信端末から発信された呼を待ち行列に追加し、上記待ち行列の数を記憶する待ち行列部(例えば、待ち行列部308)と、上記第1の通信端末と上記第2の通信端末との間で制御された呼に基づいて開始された通話の音声を認識する音声認識部(例えば、音声認識部313)と、上記音声認識部により認識された音声に含まれる問い合わせ内容と、オペレータごとに定められた上記問い合わせ内容の対応時間とに基づいて、問い合わせに対する予想対応時間を算出する対応時間予想部(例えば、311)と、上記オペレータごとの上記予想対応時間と、上記待ち行列の数とに基づいて、上記オペレータが応答中である場合の予想待ち時間を算出する待ち時間算出部(例えば、待ち時間算出部309)と、上記オペレータが応答中である場合に呼が発信された上記第1の通信端末に、上記予想待ち時間を通知するガイダンス送信部(例えば、ガイダンス送信部302)と、を有するので、精度の高い予想待ち時間を利用者に提供することができる。
【0072】
また、
図8のS811~S814において説明したように、上記対応時間予想部は、上記問い合わせ内容の形式に変化があった場合に、変化があった後の形式の上記問い合わせ内容と、当該問い合わせ内容についての上記対応時間とに基づいて、新たな予想対応時間を算出する。したがって、オペレータと利用者との間で行われる通話の内容の変化に追従して、当該変化に応じた予想対応時間を算出することができる。
【0073】
また、
図8のS819~S823において説明したように、上記待ち時間算出部は、上記待ち行列の数に変化があった場合に、変化があった後の上記待ち行列の数と、上記オペレータごとの上記予想対応時間とに基づいて、新たな予想待ち時間を算出する。したがって、利用者の待ち数の変化に追従して、当該変化に応じた予想待ち時間を算出することができる。
【0074】
また、
図8のS822-1、S822-2、およびS810以降の処理で説明したように、上記待ち時間算出部は、上記待ち行列の数の変化があった場合において、さらに、上記対応時間予想部により上記問い合わせ内容の形式に変化があった旨の通知を受けた場合、上記対応時間予想部による上記新たな予想対応時間を算出する指示を通知し、当該通知に基づいて新たに算出された予想対応時間を用いて、上記予想待ち時間を算出する。したがって、オペレータと利用者との間で行われる通話の内容が繰り返し変化する場合でも、当該変化に応じた予想対応時間を算出することができる。
【0075】
また、
図8のS826~S829で説明したように、上記利用者からの問い合わせに対する上記オペレータによる応答履歴を管理する履歴管理部(例えば、通話履歴管理部310)を有し、上記対応時間予想部は、上記呼制御部が上記第1の通信端末から呼の切断要求を受けた場合に、当該切断要求を受けた呼が発信されてから当該切断要求を受けるまでの通話時間を対応時間として算出し、上記履歴管理部は、当該対応時間と過去の対応時間とに基づいて、新たな対応時間を算出し、算出した新たな対応時間により上記予想対応時間を更新する。したがって、過去の対応実績に基づいて予想対応時間を定めることができる。
【0076】
以上、図面を用いて詳細に説明したが、本発明は上述の種々の例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【0077】
例えば、S822で通話内容に変化があったか否かを判定したのちに、S823で待ち行列の数およびその変化に変化があったか否かを判定することとした。しかし、例えば、利用者からの問い合わせの数が多く、待ち人数の変化は頻繁に起こるような環境下で本システムを用いる場合等には、これらの順序を入れ替えて、S823の処理を先に行ったり、S822、S823の処理の順序を、システム保守端末400からの指示により選択や切り替えが可能としてもよい。これにより、速やかに精度の良い待ち時間を通知することができる。
【符号の説明】
【0078】
1000 コールセンタシステム
100 利用者電話機
200 オペレータ電話機
300 電話受付システム
400 システム保守端末
301 呼制御部
302 ガイダンス送信部
303 利用者音声受信部
304 オペレータ音声送信部
305 オペレータ通信部
306 利用者音声送信部
307 オペレータ音声受信部
308 待ち行列部
309 待ち時間算出部
310 通話履歴管理部
311 対応時間予想部
312 システムデータ管理部
313 音声認識部
314 データ記憶部
201 データ種別テーブル
301 キーワードテーブル
401 対応時間予想テーブル(初期値)
501 オペレータスキルテーブル
601 問い合わせ定型文テーブル
701 対応時間予想テーブル(運用時)
N ネットワーク