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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】金属質柱の使用方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/24 20060101AFI20241120BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
E04B1/24 C
E04B1/24 Z
E04B1/58 602
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021059227
(22)【出願日】2021-03-31
(65)【公開番号】P2022155817
(43)【公開日】2022-10-14
【審査請求日】2023-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(73)【特許権者】
【識別番号】519378768
【氏名又は名称】株式会社ホルツストラ一級建築士事務所
(73)【特許権者】
【識別番号】521135935
【氏名又は名称】株式会社村田龍馬設計所
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】三宅 朗彦
(72)【発明者】
【氏名】松岡 直人
(72)【発明者】
【氏名】濱田 真
(72)【発明者】
【氏名】前川 利雄
(72)【発明者】
【氏名】野田 亜久里
(72)【発明者】
【氏名】金森 誠治
(72)【発明者】
【氏名】田中 輝雄
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 等
(72)【発明者】
【氏名】青木 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】中里 太亮
(72)【発明者】
【氏名】稲山 正弘
(72)【発明者】
【氏名】村田 龍馬
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-138573(JP,A)
【文献】特開2000-186373(JP,A)
【文献】特開2018-115538(JP,A)
【文献】特開2013-224534(JP,A)
【文献】特開2014-214497(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0256049(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/24
E04B 1/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
4つの外側面で形成された柱の周面より突出するダイヤフラムを備えた断面四角状の金属質柱の使用方法であって
少なくとも1つの特定の外側面より突出する特定のダイヤフラム部分の形状とその他の1つ以上の外側面より突出するその他のダイヤフラム部分の形状とが異なる当該金属質柱の特定のダイヤフラム部分を、木質壁材又は木質梁材と接合するための接合部分として使用したことを特徴とする金属質の使用方法
【請求項2】
4つの外側面で形成された柱の周面より突出するダイヤフラムを備えた断面四角管状の金属質柱の使用方法であって、
少なくとも1つの特定の外側面より突出する特定のダイヤフラム部分の形状とその他の1つ以上の外側面より突出するその他のダイヤフラム部分の形状とが異なる当該金属質柱の特定のダイヤフラム部分を、木質壁材又は木質梁材と接合するための接合部分として使用するとともに、当該金属質柱のその他のダイヤフラム部分を、金属質梁材と接合するための接合部分として使用したことを特徴とする金属質柱の使用方法
【請求項3】
金属質柱は、特定の外側面が1つであり、当該特定の外側面より突出する特定のダイヤフラム部分の当該特定の外側面からの突出長さが、その他の外側面より突出する各その他のダイヤフラム部分の当該外側面からの突出長さよりも長いことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の金属質柱の使用方法
【請求項4】
金属質柱は、互いに平行に対向する特定の外側面よりそれぞれ突出する各特定のダイヤフラム部分の当該特定の外側面からの突出長さが、その他の外側面より突出する各その他のダイヤフラム部分の当該外側面からの突出長さよりも長いことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の金属質柱の使用方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイヤフラムを備えた金属質柱の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、梁材等の部材と接合するための接合部分となるダイヤフラムを備えた柱が知られている(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-115538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のダイヤフラムを備えた柱は、例えば柱の各外側面より突出するように設けられた各ダイヤフラム部分の形状や大きさが同じである。
しかしながら、各外側面より突出するように設けられた各ダイヤフラム部分の形状や大きさが同じである場合、当該各ダイヤフラム部分には、同じ材質で形成された梁材等の同じ部材を同じ形態で接合するというように、ダイヤフラムの用途が限られてしまうという課題があった。
本発明は、ダイヤフラムの用途を広げることが可能な金属質柱の使用方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る金属質の使用方法は、4つの外側面で形成された柱の周面より突出するダイヤフラムを備えた断面四角状の金属質柱の使用方法であって、少なくとも1つの特定の外側面より突出する特定のダイヤフラム部分の形状とその他の1つ以上の外側面より突出するその他のダイヤフラム部分の形状とが異なる当該金属質柱の特定のダイヤフラム部分を、木質壁材又は木質梁材と接合するための接合部分として使用したことを特徴とする。
また、本発明に係る金属質柱の使用方法は、4つの外側面で形成された柱の周面より突出するダイヤフラムを備えた断面四角管状の金属質柱の使用方法であって、少なくとも1つの特定の外側面より突出する特定のダイヤフラム部分の形状とその他の1つ以上の外側面より突出するその他のダイヤフラム部分の形状とが異なる当該金属質柱の特定のダイヤフラム部分を、木質壁材又は木質梁材と接合するための接合部分として使用するとともに、当該金属質柱のその他のダイヤフラム部分を、金属質梁材と接合するための接合部分として使用したことを特徴とする。
また、金属質柱は、特定の外側面が1つであり、当該特定の外側面より突出する特定のダイヤフラム部分の当該特定の外側面からの突出長さが、その他の外側面より突出する各その他のダイヤフラム部分の当該外側面からの突出長さよりも長いことを特徴とする。
また、金属質柱は、互いに平行に対向する特定の外側面よりそれぞれ突出する各特定のダイヤフラム部分の当該特定の外側面からの突出長さが、その他の外側面より突出する各その他のダイヤフラム部分の当該外側面からの突出長さよりも長いことを特徴とする
本発明に係る金属質の使用方法によれば、例えば意匠性の高い建物を実現できるようになる。
また、本発明に係る金属質柱の使用方法によれば、例えば当該金属質柱に異なる材質の木質梁材と金属質梁材とを接合した複合柱梁接合構造を実現できるようになる
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】ダイヤフラムを有した金属質柱を示す斜視図(実施形態1)。
図2】金属質柱の断面図(横断面図)(実施形態1)。
図3】金属質柱の縦断面詳細図(実施形態1)。
図4】金属質柱と木質壁材との接合構造を示す正面図(実施形態1)。
図5図4のA-A断面図(横断面図)(実施形態1)。
図6】金属質柱と木質壁材との接合構造の適用例を示す縦断面図(実施形態1)。
図7】金属質柱と木質壁材との接合構造を示す分解斜視図(実施形態1)。
図8】接合部材を示す正面図(実施形態1)。
図9】金属質柱と木質梁材及び金属質梁材との接合構造を示す斜視図(実施形態2)。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態1
図1乃至図3に示すように、実施形態1に係る柱としての金属質柱1は、4つの外側面1a,1b,1c,1dで形成された柱の周面より突出するダイヤフラム10を備えた断面四角管状の金属質柱である。
尚、本明細書においては、上、下、左、右、前、後は、各図に示した方向と定義して説明する。
金属質柱1は、例えば、外側面1a,1b,1c,1dより突出するダイヤフラム10を備えた角形鋼管、即ち、断面に方向性が無く、断面性能に違いが出ない角形鋼管である。
ダイヤフラム10は、例えば図1図2に示すように、金属質柱1の特定の1つの外側面1aより突出する特定のダイヤフラム部分11を備え、かつ、金属質柱1のその他の3つの外側面1b,1c,1dより突出する3つのその他のダイヤフラム部分12,12,12を備えた構成とした。
そして、少なくとも1つの特定の外側面1aより突出する特定のダイヤフラム部分11の形状とその他の1つ以上の外側面1b,1c,1dより突出するその他のダイヤフラム部分12,12,12の形状とが異なるように構成されている。
特に、特定の外側面1aより突出する特定のダイヤフラム部分11の当該特定の外側面1aからの突出長さが、その他の外側面1b,1c,1dより突出する各その他のダイヤフラム部分12,12,12の当該外側面1b,1c,1dからの突出長さよりも長くなるように形成されている。
【0008】
つまり、特定のダイヤフラム部分11は、その他のダイヤフラム部分12と比べて、形状、外側面1a,1b,1c,1dからの突出長さ等が異なるように構成されている。
例えば、特定のダイヤフラム部分11は、その他のダイヤフラム部分12と比べて、外側面1aからの突出長さが長く、かつ、大きさが大きい形状に形成される。
当該、特定のダイヤフラム部分11は、具体的には、後述する接合部材5のダイヤフラム側接合部52の面積の略2倍程度の面積の板面を有した平板状に形成される。
実施形態1に係る金属質柱1の特定のダイヤフラム部分11は、例えば後述のように、木質壁材2に接合された接合部材5と接合される接合板として用いられるとともに、その他のダイヤフラム部分12は、その他の部材(例えば、後述する金属質梁材16(図6参照))と接合される接合板として用いられるため、ダイヤフラム10の用途を広げることが可能な金属質柱1を提供できるようになる。
【0009】
金属質柱1は、ダイヤフラム10として、例えば、上下方向に間隔を隔てて複数のダイヤフラム10,10…を備える。
尚、ダイヤフラム10は、通しダイヤフラム、外ダイヤフラムのいずれであってもかまわない。
ダイヤフラム10が、通しダイヤフラムの場合、例えば図3に示すように、金属質柱1の外側面1a,1b,1c,1dを形成する各スキンプレート鋼板同士が溶接されて形成された下側のボックス柱部分1Eの上端側とダイヤフラム10を形成する鋼板の下面側とが溶接されるとともに、金属質柱1の外側面1a,1b,1c,1dを形成する各スキンプレート鋼板同士が溶接されて形成された上側のボックス柱部分1Fの下端側とダイヤフラム10を形成する鋼板の上面側とが溶接されて、ダイヤフラム10が金属質柱1を横断するように構成される。尚、図3において、符号1Sは裏当板、Sは溶接部分である。
【0010】
以下、実施形態1に係る金属質柱1の使用例である、当該金属質柱1と木質部材としての木質壁材2との接合構造について説明する。
即ち、実施形態1に係る金属質柱1を用いることによって、図4乃至図8に示すように、金属質柱1のダイヤフラム10の特定のダイヤフラム部分11と木質壁材2とが接合手段3を介して接合された接合構造を実現できる。
【0011】
木質壁材2は、例えば、CLT(Cross Laminated Timber(直交集成板))又は集成材又はLVL(Laminated Veneer Lumber(単層積層材))又は無垢材等の木により形成された壁板である。
尚、CLTとは、農林水産省告示第3079号に規定されたように、「ひき板又は小角材(これらをその繊維方向を互いにほぼ平行にして長さ方向に接合接着して調整したものを含む。)をその繊維方向を互いにほぼ平行にして幅方向に並べ又は接着したものを、主としてその繊維方向を互いにほぼ直角にして積層接着し3層以上の構造を持たせた一般材」である。
即ち、CLTは、一般に、張り合わせる板の繊維方向が直交するように複数の板を張り合わせて構成された木材であり、直交集成板と呼ばれている。
また、集成材は、一般に、張り合わせる板の繊維方向が並行方向となるように複数の板を張り合わせて構成された木材である。
また、LVLは、一般に、複数の単板(ベニヤ)を、単板の繊維方向に平行に積層して接着した木材である。
木質壁材2は、建築用の一般的な壁板、又は、垂れ壁(下がり壁)形成用の壁板、又は、腰壁形成用の壁板、又は、袖壁形成用の壁板等であればよい。
木質壁材2は、例えば、左右(横)方向に長い矩形状の板面21,21を有した所定厚さの矩形平板状の壁板により形成される。
【0012】
木質壁材2は、木質壁材2の元となる矩形の木質壁材の角部を切欠いて形成された凹部8を備える。
即ち、図7に示すように、木質壁材2の上側の角部を切欠いて形成された木質壁材2の上側の凹部8は、上端面23と直交して側端面22と平行な垂直面により形成された第1の被支圧面8Aと、側端面22と直交して上端面23と平行な水平面により形成された第2の被支圧面8Bとを備える。
換言すれば、木質壁材2の上側の凹部8は、上端面23の側端縁から下方に延長する垂直面により形成された第1の被支圧面8Aと、当該第1の被支圧面8Aの延長端から側端面22に延長する水平面により形成された第2の被支圧面8Bとで構成された切欠き凹部である。
同様に、木質壁材2の下側の角部を切欠いて形成された木質壁材2の下側の凹部8は、下端面24と直交して側端面22と平行な垂直面により形成された第1の被支圧面8Aと、側端面22と直交して下端面24と平行な水平面により形成された第2の被支圧面8Bとを備える。
換言すれば、木質壁材2の下側の凹部8は、下端面24の側端縁から上方に延長する垂直面により形成された第1の被支圧面8Aと、当該第1の被支圧面8Aの延長端から側端面22に延長する水平面により形成された第2の被支圧面8Bとで構成された切欠き凹部である。
【0013】
即ち、木質壁材2は、板面21の長尺方向である左右方向の端面となる側端面22、及び、板面21の短尺方向である上下方向の端面となる上端面23,下端面24とを有するとともに、側端面22の上部側及び下部側に、それぞれ凹部8を有した矩形平板状の壁板により形成される。
さらに、木質壁材2は、上側の第1の被支圧面8Aと上端面23とに開口する上側の挿入溝25と、下側の第1の被支圧面8Aと下端面24とに開口する下側の挿入溝25と、一方の板面21、挿入溝25、他方の板面21を貫通するように形成されてドリフトピン26を貫通させる複数のピン貫通孔26,26…とを備える。
【0014】
接合手段3は、木質壁材2に接合された接合部材5と、当該接合部材5とダイヤフラム10とを接合するダイヤフラム側接合手段とを備えた構成とした。
【0015】
図4図7図8に示すように、接合部材5は、木質壁材2に接合される接合部としての木質壁材側接合部51と、金属質柱1と対向するように位置される木質壁材2の第1の被支圧面8Aに接触して木質壁材2の回転を抑制する第1の支圧面7Aと、金属質柱1の柱芯1Cと交差するように位置される木質壁材2の第2の被支圧面8Bに接触して木質壁材2の上下方向の動き抑制する第2の支圧面7Bと、ダイヤフラム10に接合されるダイヤフラム側接合部52とを備えた構成とした。
【0016】
上述した木質壁材2の回転とは、金属質柱1に接合された木質壁材2の材軸2C(図5参照)と直交する仮想の水平線である軸を回転中心とした木質壁材2の回転のことである。
また、木質壁材2の上下方向の動きとは、金属質柱1に接合された木質壁材2の材軸直交方向(垂直方向)の動きのことである。
【0017】
即ち、図7図8に示すように、接合部材5は、支圧面構成体7と、木質壁材2に対する木質壁材側接合部51と、金属質柱1のダイヤフラム10に対するダイヤフラム側接合部52とを備えて構成される。
木質壁材側接合部51は、左右方向に長い矩形の板面により形成された垂直面を有した矩形状の垂直板51Aにおける木質壁材2に近い側となる他端側部分により構成され、かつ、垂直板51Aにおけるダイヤフラム10に近い側となる一端側部分51aは、支圧面構成体7の補強部材として機能する。
また、ダイヤフラム側接合部52は、左右方向に長い矩形の板面により形成された水平面を有した矩形状の水平板52Aにおけるダイヤフラム10に近い側となる一端側部分により構成され、かつ、水平板52Aにおける木質壁材2に近い側となる他端側部分52aは、板面が木質壁材2の上端面23あるいは下端面24に対向するように位置されて挿入溝25を覆う覆板として機能する。
【0018】
図8に示すように、支圧面構成体7は、ダイヤフラム側接合部52を形成する水平板部位と、当該水平板部位に連結されて当該水平板部位の一方の板面側より垂直に延長するように設けられた3つの垂直板により形成された支圧板7aと中間側補強板7cと端部側補強板7dと、当該支圧板7a、中間側補強板7c、端部側補強板7dの延長端側に連結されるように設けられた水平板7bとを備えて構成される。
【0019】
支圧板7aは、水平板52Aの一方の板面におけるダイヤフラム側接合部52と他端側部分52aとの境界近傍位置から延長するように設けられて、第1の被支圧面8Aと平行な垂直面により構成された第1の支圧面7Aを備えた平板により構成される。
端部側補強板7dは、水平板52Aの一方の板面におけるダイヤフラム側接合部52の端縁(金属質柱1側に位置される端縁)から延長するように設けられて、第1の支圧面7Aと平行な垂直面を備えた平板により構成される。
中間側補強板7cは、水平板52Aの一方の板面におけるダイヤフラム側接合部52から延長するように設けられ、支圧板7aと端部側補強板7dとの間の中間に位置されて第1の支圧面7Aと平行な垂直面を備えた平板により構成される。
水平板7bは、第1の支圧面7Aの延長端より延長する水平面により形成された第2の支圧面7Bを備えた平板により構成される。
【0020】
図7図8に示すように、木質壁材側接合部51を形成する垂直板51Aは、一方の長辺縁が水平板52Aの一方の板面における前後間の中間位置に連結されて、水平板52Aの板面と第1の支圧面7Aとに直交する板面を有した平板により形成される。
当該垂直板51Aは、支圧面構成体7の補強部材として機能する一端側部分51aを構成する一方の短辺縁側が、支圧板7a、中間側補強板7cの前後間の中間位置を貫通して、かつ、当該一方の短辺縁が端部側補強板7dに連結され、当該垂直板51Aの他方の短辺縁側が木質壁材側接合部51として機能する構成となっている。
そして、水平板7bの第2の支圧面7Bを形成する板面とは反対側の板面と垂直板51Aの板面とが直交するように、水平板7bの反対側の板面と垂直板51Aの他方の長辺縁の一端側とが接触するように構成されている。
【0021】
図7に示すように、接合部材5のダイヤフラム側接合部52には、ボルト貫通孔55,55…が形成されている。
また、木質壁材側接合部51には、木質壁材2に形成された複数のピン貫通孔26,26…に対応するピン貫通孔56,56…が形成されている。
そして、特定のダイヤフラム部分11には、ダイヤフラム側接合部52のボルト貫通孔55,55…に対応するボルト貫通孔65,65…が形成されている。
【0022】
即ち、接合手段3は、木質壁材2に接合された接合部材5と、当該接合部材5とダイヤフラム10とを接合するダイヤフラム側接合手段とで構成され、当該ダイヤフラム側接合手段は、互いに重ね合された接合部材5の板部であるダイヤフラム側接合部52の板面とダイヤフラム10の板部である特定のダイヤフラム部分11の板面とを面接触させた状態でこれらを接合するボルト61及びナット62により構成される(図4参照)。
従って、ダイヤフラム側接合手段が、互いに重ね合された接合部材5の板部と特定のダイヤフラム部分11の板部とを接合するボルト接合手段により構成される。
即ち、金属質柱1のダイヤフラム10と木質壁材2とを接合する接合手段3は、木質壁材2に接合された接合部材5と、互いに重ね合された接合部材5のダイヤフラム側接合部52とダイヤフラム10の特定のダイヤフラム部分11とを接合するボルト61及びナット62によるダイヤフラム側接合手段とで構成されることになる。
【0023】
実施形態1に係る金属質柱1を使用した当該金属質柱1と木質壁材2との接合構造の施工手順の一例について説明する。
まず、工場や現場において、事前に、木質壁材2の側端面22の上下側に、それぞれ、接合部材5,5を取付けておく。尚、木質壁材2の側端面22の上側と下側とには、同じ構成の接合部材5,5を上下反転させて取付ける。
即ち、接合部材5の木質壁材側接合部51を挿入溝25に挿入して、第2の支圧面7Bを第2の被支圧面8Bに接触させるとともに、第1の支圧面7Aを木質壁材2の第1の被支圧面8Aに面接触させて、木質壁材2のピン貫通孔26と接合部材5の木質壁材側接合部51のピン貫通孔56とを一致させた状態とした後、ピン貫通孔26,56,26にドリフトピン27を嵌合状態に貫通させることにより、木質壁材2と接合部材5とが接合される。
また、接合部材5は、木質壁材2に取り付けられた状態で、端部側補強板7dの外表面7fが木質壁材2の側端面22と同一平面上に位置されるように構成される(図4参照)。
また、側端面22の上下側にそれぞれ接合部材5,5が取付けられた木質壁材2は、上の接合部材5のダイヤフラム側接合部52の上板面と下の接合部材5のダイヤフラム側接合部52の下板面との間の長さが、金属質柱1の外側面1aより突出する上下のダイヤフラム10,10の特定のダイヤフラム部分11,11間の長さに対応する長さとなるように形成されている。
そして、接合部材5が取り付けられた木質壁材2を、金属質柱1の外側面1aの前方において左右に設置する。即ち、右側に設置される木質壁材2の左端部側を上下の特定のダイヤフラム部分11,11間の右側に位置させるとともに、左側に設置される木質壁材2の右端部側を上下の特定のダイヤフラム部分11,11間の左側に位置させて、左右の木質壁材2,2の側端面22,22同士、及び、上下の接合部材5,5の端部側補強板7d,7dの外表面7f,7f同士を、金属質柱1の外側面1aの面幅の間の中央線1acの位置に合わせて、突き合せた状態とする。
そして、ダイヤフラム側接合部52のボルト貫通孔55及び特定のダイヤフラム部分11のボルト貫通孔65に貫通させたボルト61の先端側にナット62を締結する。
以上により、木質壁材2に接合された接合部材5と、互いに重ね合された接合部材5のダイヤフラム側接合部52とダイヤフラム10の特定のダイヤフラム部分11とを接合するボルト61及びナット62によるダイヤフラム側接合手段と、で構成された接合手段3によって、左右の木質壁材2,2が、それぞれ、金属質柱1に接合される。
【0024】
この場合、図5に示すように、木質壁材2の材軸2Cが金属質柱1の柱芯1Cから偏心した位置にくるように金属質柱1のダイヤフラム10の特定のダイヤフラム部分11と木質壁材2,2とが接合されることになる。
従って、例えば図6に示したように、窓ガラス15を介して外側から建物内側が見やすいように構成された建物において、窓ガラス15際の垂れ壁(下がり壁)等の木質壁材2を金属質柱1に接合した構造を実現できるようになる。この場合、建物外側から建物を見た際に、左右の木質壁材2,2の間に金属質柱1が目視されない意匠性の高い建物を実現できるようになる。即ち、特定のダイヤフラム部分11に窓ガラス15際の垂れ壁(下がり壁)等の木質壁材2を接合できて、ダイヤフラム10の用途を広げることができ、意匠性の高い建物を実現できる金属質柱1を提供できるようになる。換言すれば、金属質柱1の特定のダイヤフラム部分11を、木質壁材2と接合するための接合部分として使用することにより、ダイヤフラム10の用途を広げることができ、意匠性の高い建物を実現できるようになる。
尚、図6において、符号16は、金属質柱11のその他のダイヤフラム部分12に接合された鉄骨梁等の金属質梁材であり、符号17は床、符号18は金属質梁材16に接合された鉄骨梁(小梁)である。
【0025】
実施形態1に係る金属質柱1を使用した当該金属質柱1と木質壁材2との接合構造によれば、木質壁材2に接合された接合部材5と、当該接合部材5とダイヤフラム10とを接合するダイヤフラム側接合手段を構成するボルト61及びナット62とを備えた接合手段3を用いて、木質壁材2と金属質柱1のダイヤフラム10の特定のダイヤフラム部分11とを接合したので、木質壁材2を金属質柱1に容易に接合できる。
また、木質壁材2の材軸2Cが金属質柱1の柱芯1Cから偏心した位置にくるように金属質柱1のダイヤフラム10の特定のダイヤフラム部分11と木質壁材2,2とを接合できるようになる。即ち、特定のダイヤフラム部分11に木質壁材2を接合できるようになるため、ダイヤフラム10の用途を広げることが可能な金属質柱1を提供できる。
また、実施形態1に係る金属質柱1を使用した当該金属質柱1と木質壁材2との接合構造によれば、角部に凹部8を備えた木質壁材2を用いるとともに、支圧面構成体7を備えた接合部材5を用いたので、接合部材5の第1の支圧面7Aと木質壁材2の第1の被支圧面8Aとを面接触させた構造とすることにより、木質壁材2の回転を抑制できるようになり、かつ、接合部材5の第2の支圧面7Bと木質壁材2の第2の被支圧面8Bとを面接触させた構造とすることにより、木質壁材2の上下方向の動きを抑制できる好適な接合構造を実現できるようになった。
【0026】
尚、面接触させる第1の被支圧面8A及び第1の支圧面7Aは、完全な垂直面でなくとも、垂直に近い面であればよい。即ち、第1の被支圧面8A及び第1の支圧面7Aは互いに面接触して木質壁材2の回転を抑制できるように形成された面であればよい。
同様に、面接触させる第2の被支圧面8B及び第2の支圧面7Bは、完全な水平面でなくとも、水平に近い面であればよい。即ち、第2の被支圧面8B及び第2の支圧面7Bは互いに面接触して木質壁材2の上下方向の動きを抑制できるように形成された面であればよい。
【0027】
また、図6に示すように、上下のダイヤフラム10,10の間の位置に、鉄骨梁等の金属質梁材16を接合するための通常のダイヤフラム10A、即ち、金属質柱1の4つの外側面1a,1b,1c,1dより突出するダイヤフラム部分がすべて同じダイヤフラム部分(例えばその他のダイヤフラム部分12)に形成された従来周知のダイヤフラム10Aが設けられる場合には、例えば、左右の木質壁材2,2の後板面(背面)に、当該ダイヤフラム10Aのダイヤフラム部分を除けるための溝を形成しておけばよい。
尚、図6に示すように、上下のダイヤフラム10,10の特定のダイヤフラム部分11,11と木質壁材2とが接合されるとともに、上のダイヤフラム10及び中間のダイヤフラム10Aのその他のダイヤフラム部分12と金属質梁材16とが接合される柱梁接合構造を実現できる。即ち、ダイヤフラム10,10A,10を備えた当該金属質柱1を使用することによって、当該金属質柱1に、異なる材質の木質壁材2と金属質梁材1Zとを接合した複合接合構造を実現できるようになる。
【0028】
また、木質壁材2の材軸2Cが金属質柱1の柱芯1Cから偏心した位置にくるように金属質柱1のダイヤフラム10の特定のダイヤフラム部分11と木質壁材2,2とが接合された構成において、図示しないが、さらに、金属質柱1に溶接等で取付けられた接合板と木質壁材2,2の後板面(背面)側とをビス等の止めネジを用いて接合するようにしてもよい。
また、このように、金属質柱1に溶接等で取付けられた接合板と木質壁材2,2の後板面(背面)側とをビス等の止めネジを用いて接合する場合等においては、図示しないが、金属質柱1の外側面1a側を避けるための凹部を左右の木質壁材2,2の後板面(背面)側に形成するようにしてもよい。
【0029】
尚、ダイヤフラム側接合手段を、互いに重ね合された接合部材5のダイヤフラム側接合部52とダイヤフラム10の特定のダイヤフラム部分11とを接合する溶接手段により構成してもかまわない。この場合、特定のダイヤフラム部分11には、ボルト貫通孔65,65…は不要となる。
【0030】
また、第1の被支圧面8Aを備えるとともに第2の被支圧面8Bを備えない木質壁材を用いるとともに、第1の支圧面7Aを備えるとともに第2の支圧面7Bを備えない第2の接合部材を用いるようにしてもよい。
逆に、第2の被支圧面8Bを備えるとともに第1の被支圧面8Aを備えない木質壁材を用いるとともに、第2の支圧面7Bを備えるとともに第1の支圧面7Aを備えない第2の接合部材を用いるようにしてもよい。
このように構成した場合でも、木質壁材の回転、又は、木質壁材の上下方向の動きを抑制できる接合構造を実現できるからである。
【0031】
また、上記においては、木質壁材2と接合部材5との接合手段は、ドリフトピン以外の接合手段を用いてもよく、例えば、ボルト、ナットによる接合手段を用いてもよい。
また、接合部材5として鋼板を用いた例示したが、これら接合部材は、鋼板以外の板状部材であってもよく、例えば、鋼以外の金属製の板状部材、金属以外の板状部材を用いてもよい。
【0032】
実施形態2
図9に示すように、互いに平行に対向する特定の外側面1a,1dよりそれぞれ突出する各特定のダイヤフラム部分11,11の当該特定の外側面1a,1dからの突出長さが、その他の外側面1b,1cより突出する各その他のダイヤフラム部分12,12の当該外側面1b,1cからの突出長さよりも長くなるように形成されたダイヤフラム10を備えた金属質柱1とした。
つまり、特定のダイヤフラム部分11は、その他のダイヤフラム部分12と比べて、外側面からの突出長さが長く、かつ、大きさが大きい形状に形成される。
そして、当該金属質柱1の特定のダイヤフラム部分11,11を、木質梁材2Zと接合するための接合部分として使用するとともに、当該金属質柱1のその他のダイヤフラム部分12,12を、H形鋼梁材等の金属質梁材1Zと接合するための接合部分として使用した柱梁接合構造を実現した。即ち、当該金属質柱1を使用することによって、当該金属質柱1に異なる材質の木質梁材2Zと金属質梁材1Zとを接合した複合柱梁接合構造等を実現できるようになる。
尚、当該特定のダイヤフラム部分11と木質梁材2Zとの接合は、木質梁材2Zに取付けられた接合部材と当該特定のダイヤフラム部分11とを、ボルト及びナット、又は、溶接などで接合してもよいし、あるいは、特定のダイヤフラム部分11と木質梁材2Zとをドリフトピンなどで接合するようにしてもよい。例えば、ボルト及びナットやドリフトピンで接合される場合、特定のダイヤフラム部分11には、貫通孔11Hが形成される。
また、その他のダイヤフラム部分12と金属質梁材1Zとの接合は、溶接、又は、ボルト及びナットなどで接合すればよい。
実施形態2によれば、ダイヤフラム10の用途を広げることが可能な金属質柱1を提供できるようになった。
また、その他のダイヤフラム部分12,12と比べて、外側面からの突出長さが長く、かつ、大きさが大きい形状に形成された特定のダイヤフラム部分11,11に木質梁材2Zを接合できるようになるので、木質梁材2Zと金属質柱1との接合強度を向上させることができ、木質梁材2Zと金属質柱1との接合強度と、金属質梁材1Zと金属質柱1との接合強度の強度差を小さくできるため、好ましい。
尚、実施形態2においては、木質梁材2Zの代わりに、木質壁材2を接合してもよい。
【0033】
上述したピン貫通孔、ボルト貫通孔の数は、要求される強度、ドリフトピンの数、ボルトの数に応じて、適宜、自由に設定すればよい。
また、上述したボルトは高力ボルト(ハイテンションボルト)を用いることが好ましい。
【0034】
また、金属質柱1として、角形鋼管を用いた例を示したが、金属質柱1は、断面が三角形、円形、多角形などの鋼管を用いてもよい。
【0035】
また、木質部材として、木質壁材2、木質梁材2Zを例示したが、木質部材は、例えば、木質床材、その他の部材であってもかまわない。
【0036】
尚、本発明の柱は、金属質柱でなく、その他の材質の柱、例えば木質柱であってもよい。
即ち、本発明の柱は、柱の周面より突出するダイヤフラムを備え、柱の周面より突出するダイヤフラムの一部分の形状とその他の部分の形状とが異なるように構成されて、ダイヤフラムの用途を広げることが可能な柱であればよい。
【符号の説明】
【0037】
1 金属質柱、1a,1b,1c,1d 外側面、1Z 金属質梁材、
2 木質壁材(木質部材)、2Z 木質梁材(木質部材)、10 ダイヤフラム、
11 特定のダイヤフラム部分、12 その他のダイヤフラム部分。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9