(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】積層電子部品
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20241120BHJP
H01C 1/14 20060101ALI20241120BHJP
H01C 1/02 20060101ALI20241120BHJP
H01F 27/29 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
H01G4/30 201F
H01G4/30 201Z
H01G4/30 513
H01C1/14
H01C1/02 Z
H01F27/29 123
(21)【出願番号】P 2021060362
(22)【出願日】2021-03-31
【審査請求日】2023-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 則之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 義憲
(72)【発明者】
【氏名】吉田 亨
(72)【発明者】
【氏名】須田 昭
(72)【発明者】
【氏名】中村 晃
【審査官】小南 奈都子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-038187(JP,A)
【文献】特開2019-050279(JP,A)
【文献】特開平11-103229(JP,A)
【文献】特開2020-061409(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/30
H01C 1/14
H01C 1/02
H01F 27/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層を積層することによって形成され、実装面とされる底面、及び前記底面に対して交差するように延びる側面を有する素体と、
前記素体の前記底面に形成された底面電極と、を備え、
前記底面電極は、第1の電極層と、前記第1の電極層よりも前記素体側に形成される第2の電極層と、を備え、
前記第1の電極層は、前記第2の電極層を覆うように積層された樹脂電極であって、底面部と、前記底面において前記底面部から前記側面まで延びる幅狭部と、前記幅狭部から前記側面に延伸する延伸部を有し、
前記延伸部及び幅狭部における幅寸法は、前記底面における前記第1の電極層の底面部の幅寸法よりも小さ
く、
前記第2の電極層の縁部は、前記素体の一部であるオーバーコート層で覆われる、積層電子部品。
【請求項2】
前記延伸部は、前記側面において、前記底面に対向する上面から離間した位置に配置される、請求項1に記載の積層電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一側面は、積層電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、絶縁層を積層することによって形成され、実装面とされる底面を有する素体と、素体の底面に形成される底面電極と、を備える積層電子部品が記載されている。底面電極は、第1の電極層と、第1の電極層よりも素体側に形成される第2の電極層と、を備える。この構成では、第2の電極層の縁部は、素体の一部であるオーバーコート層で覆われており、第1の電極層は、素体と同時に焼成された第2の電極層に対してき付けたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の積層電子部品では、底面電極を第1の電極層及び第2の電極層による二層構造とすることで、素体のクラックの発生を抑制している。これに対し、第2の電極層を樹脂電極で覆うことで、底面電極の応力の緩和をする場合がある。しかしながら、樹脂電極はめっき性が低いため、電極面積を確保する必要が生じる。その反面、底面以外の場所での電極面積を大きくしすぎてしまうと、底面側のはんだの量が少なくなってしまう。この場合、実装時に底面電極に応力が作用し易くなるという問題が生じる。
【0005】
本発明の一側面は、底面電極のめっき付け性を確保しながら、素体におけるクラックの発生を抑制可能な積層電子部品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る積層電子部品は、絶縁層を積層することによって形成され、実装面とされる底面、及び底面に対して交差するように延びる側面を有する素体と、素体の底面に形成された底面電極と、を備え、底面電極は、第1の電極層と、第1の電極層よりも素体側に形成される第2の電極層と、を備え、第1の電極層は、第2の電極層を覆うように積層された樹脂電極であって、側面に延伸する延伸部を有し、延伸部における幅寸法は、底面における第1の電極層の幅寸法よりも小さい。
【0007】
積層電子部品において、底面電極は、第1の電極層と、第1の電極層よりも素体側に形成される第2の電極層と、を備える。ここで、第1の電極層は、第2の電極層を覆うように積層された樹脂電極である。このように、底面電極として樹脂電極を用いることで、底面電極に対する応力を緩和することができる。第1の電極層は、側面に延伸する延伸部を有する。従って、樹脂電極の電極面積を大きくすることで、めっき性を向上することができる。更に、延伸部における幅寸法は、底面における第1の電極層の幅寸法よりも小さい。すなわち、はんだが必要となる底面における第1の電極層の幅寸法は、側面の延伸部における幅寸法よりも大きい。従って、底面のはんだが、側面の延伸部側に引き寄せられることを抑制することができるため、底面でのはんだ量の減少を抑制できる。従って、底面電極と実装基板との距離をはんだの厚みで確保することができるため、実装基板から底面電極への応力を抑制できる。以上より、底面電極のめっき付け性を確保しながら、素体におけるクラックの発生を抑制可能である。
【0008】
延伸部は、側面において、底面に対向する上面から離間した位置に配置されてよい。この場合、延伸部が上面まで到達することなく途切れた状態になるため、延伸部の面積を更に小さくすることができる。そのため、延伸部によって側面側に引き寄せられるはんだの量を更に低減することができる。
【0009】
第2の電極層の縁部は、素体の一部であるオーバーコート層で覆われてよい。これにより、底面電極の端部付近で応力が集中した場合、応力は、第1の電極層とオーバーコート層との境界部を介して、オーバーコート層に分散される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一側面によれば、底面電極のめっき付け性を確保しながら、素体におけるクラックの発生を抑制可能な積層電子部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る積層電子部品の斜視図である。
【
図2】
図1に示すII-II線に沿った断面図のうち、底面電極付近を拡大した拡大断面図である。
【
図3】素体の内部の内部電極及びスルーホール導体の構造の一例を示している。
【
図5】オーバーコート層が形成される場合の底面電極付近の構成を示す拡大断面図である。
【
図6】延伸部のバリエーションを示す模式図である。
【
図7】延伸部のバリエーションを示す模式図である。
【
図8】延伸部のバリエーションを示す模式図である。
【
図9】積層電子部品の製造方法を示す工程図である。
【
図10】積層電子部品の製造方法の各段階における様子を示す模式図である。
【
図11】積層電子部品の製造方法の各段階における様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、実施形態について詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る積層電子部品1の斜視図である。
図2は、
図1に示すII-II線に沿った断面図のうち、底面電極3付近を拡大した拡大断面図である。
図1に示すように、積層電子部品1は、素体2と、複数の底面電極3と、を備える。
【0014】
素体2は、後述するように、複数の絶縁層が積層されてなる。素体2は、直方体形状を呈している。直方体形状には、角部及び稜線部が面取りされている直方体の形状、及び、角部及び稜線部が丸められている直方体の形状が含まれる。素体2は、その外表面として、上面2Aと、実装面とされる底面2Bと、4つの側面2C,2D,2E,2Fとを有している。上面2A及び底面2Bは互いに対向している。側面2C,2Dは、互いに対向している。側面2E,2Fは、互いに対向している。側面2C~2Fは、上面2A及び底面2Bの積層方向(絶縁層が積層される方向)に延び、上面2A及び底面2Bと隣り合っている。素体2において、上面2A及び底面2Bは、積層方向の両端に位置する。素体2の材料(絶縁層の材料)は特に限定されないが、例えば、Al2O3、SiO2、2MgO・SiO2、xBaO・yNdO・zTiO2、(Ca,Sr)TiO2などが採用されてよい。なお、本明細書において「上」「底」という語は、説明の便宜上用いているものであり、積層電子部品1の使用時における姿勢を限定するものではない。例えば、積層電子部品1は、上面2Aが横側を向くように実装されてもよいし、下側を向くように実装されてもよい。
【0015】
底面電極3は、素体2の底面2Bに設けられる電極である。底面電極3は、積層方向から見て、矩形状を呈している。
図1に示す例では、六つの底面電極3が形成されている。これらの底面電極3は、互いに同趣旨の形状を呈している。三つの底面電極3が長手方向に延びる一方の側面2C寄りの位置にて、当該側面2Cに沿って長手方向に並列に並んでいる。他の三つの底面電極3が長手方向に延びる他方の側面2D寄りの位置にて、当該側面2Dに沿って長手方向に並列に並んでいる。なお、積層電子部品1の用途に応じて、底面電極3の数は適宜変更されてよい。底面電極3の形状や数量の他の例については後述する。
【0016】
図2に示すように素体2は、複数の絶縁層4を積層することによって構成される。また、素体2の内部には、複数の内部電極6、及びスルーホール導体7が形成される。素体2は、表面に内部電極6の導体パターンが形成された絶縁層4のシートを積層し、焼成することによって形成される。スルーホール導体7は、一枚当たりの絶縁層4を貫通し、別の絶縁層4に形成された内部電極6同士を接続する導体である。また、スルーホール導体7は、内部電極6と底面電極3とを接続する。なお、絶縁層4同士の境界部は、目視できない程度に一体化されている。
【0017】
図3は、素体2の内部の内部電極6及びスルーホール導体7の構造の一例を示している。
図3に示すように、素体2の内部には、複数の内部電極6、及び複数のスルーホール導体7が三次元的に組み合わされることによって、所定の機能を発揮する電気回路8が形成される。
図3では、一例として、方向性結合器の電気回路8が示されている。複数の底面電極3は、それぞれ当該電気回路8と電気的に接続される。これにより、底面電極3が外部の実装基板と接続されることにより、電気回路8と外部の実装基板とが底面電極3を介して接続される。
【0018】
次に、底面電極3の構成について詳細に説明する。
図2に示すように、底面電極3は、第1の電極層11と、第2の電極層12と、を備える。第1の電極層11は、底面2Bから外部に露出するように形成される層である。第1の電極層11は、素体2の焼成後に、素体2(及び第2の電極層12)に対して、例えば、熱硬化性の樹脂中に導電粉を分散させた導電性の樹脂材料を熱処理によって硬化させることによって形成される。樹脂材料の具体例については後述する。第1の電極層11は、外部の実装基板とはんだ16を介して電気的に接続される層である。従って、第1の電極層11の外表面には、はんだの濡れ性を向上させるためのめっき層14が形成されている。第2の電極層12は、第1の電極層11よりも素体2側に形成される層である。第2の電極層12は、素体2の内部に潜り込むような態様で形成されており、素体2と同時に焼成されることによって形成される。
【0019】
なお、以降の説明においては、
図5に示す断面視において、底面電極3が広がる方向を第1の方向D1とし、底面電極3の厚みに沿った方向を第2の方向D2として説明を行う場合がある。
【0020】
第2の電極層12は、素体2内にて、第1の方向D1に沿って広がる。第2の電極層12は、第1の方向において、側面2Dから離間した位置に配置される。第2の電極層12の材料について説明する。第2の電極層12は、ガラス及び焼結金属を含む導電性の材料によって構成される。焼結金属として、Ag、Cu、Au、Pt、Pd及びこれらの合金などが挙げられる。また、第2の電極層12は、他無機成分として微量金属酸化物を含んでよい。第2の電極層12のガラス軟化点は、810~860℃である。第2の電極層12のガラス含有量は、3.8~10.0wt%である。このように、第2の電極層12の軟化点を高くし、ガラスの添加量を少なくすることで素体2との焼結マッチングをとることができる。焼結マッチングとは、素体2のそりの抑制効果と電極の高緻密性(製品の電気特性、メッキ液の侵入の抑止など)を両立させることである。
【0021】
第1の電極層11は、第2の電極層12を覆うように積層された樹脂電極である。樹脂電極は樹脂に導電粉が含有(分散)されたものである。樹脂電極の樹脂材料として、例えば、フェノール樹脂、アクリル樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂又はポリイミド樹脂などが採用される。樹脂電極の導電粉の材料としては、Ag、Cuなどが採用される。第1の電極層11は、底面2Bに形成される底面部24と、側面2Cに延伸する延伸部25と、を有する。底面部24は、第2の電極層12を底側から覆うと共に、底面2Bにて第1の方向D1に広がる部分である。底面部24は、側面2Cと底面2Bとの間の角部2Gまで達している。延伸部25は、底面部24と電気的に接続されており、底面2Bから上方へ向かって側面2Cに沿って延びる部分である。延伸部25は、角部2Gにて、底面部24と接続される。
【0022】
図4を参照して、第1の電極について更に詳細に説明する。なお、以降の説明においては、側面2Cから見たときの状態を基準として「幅」という語を用いる。底面部24は、底面2Bの各辺と平行になるような、四辺を有する四角形状をなしている(
図1も参照)。延伸部25は、側面2Cの各辺と平行になるような、四辺を有する四角形状をなしている(
図1も参照)。底面部24は、幅寸法W1を有しており、側面2Cから素体2内部へ向かう長さ寸法L1を有する。延伸部25は、幅寸法W2を有しており、底面2Bからの高さ寸法Hを有している。なお、側面2C付近の長さ寸法L2の領域には、幅寸法W2を有する幅狭部26が形成されている。
【0023】
延伸部25における幅寸法W2は、底面2Bにおける第1の電極層11の幅寸法W1よりも小さい。具体的に、幅寸法W1は0.1~1.0mmの範囲に設定される。それに対し、幅寸法W2は、幅寸法W1に対する30%以上に設定されることが好ましく、40%以上に設定されることが更に好ましい。幅寸法W2は、幅寸法W1に対する90%以下に設定されることが好ましく、70%以下に設定されることが更に好ましい。延伸部25は、底面部24に対して、幅寸法W1内の範囲内の中央位置に配置されているが、どこに配置されていてもよい。底面部24の長さ寸法L1は、0.15~0.50mmの範囲に設定される。幅狭部26の長さ寸法L2は、0.01~0.20mmの範囲に設定される。
【0024】
延伸部25は、側面2C(2D)において、底面2Bに対向する上面2Aから離間した位置に配置される(
図1参照)。すなわち、延伸部25の上端部25aは、上面2Aまで達しておらず、延伸部25は側面2Cの途中で切れている。延伸部25の高さ寸法Hは特に限定されないが、めっき性を向上する観点から、素体2の積層方向における寸法に対して、30%以上であることが好ましく、40%以上であることが更に好ましい。なお、高さ寸法Hの上限は特に限定されず、素体2の積層方向における寸法に対して100%以下であってよい。なお、高さ寸法Hを抑制して延伸部25の面積を小さくする観点から、延伸部25の高さ寸法Hは、素体2の積層方向における寸法に対して、100%以下であることが好ましく、70%以下であることが更に好ましい。底面部24及び延伸部25の厚みは、5~50μmに設定される。底面部24の厚みと延伸部25の厚みは、同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0025】
図5に示すように、第2の電極層12の縁部22は、素体2の一部であるオーバーコート層5で覆われてよい。具体的に、第2の電極層12は、本体部21と、第1の方向D1において外周側に形成される縁部22と、を有する。第2の電極層12の縁部22は、素体2の一部であるオーバーコート層5で覆われている。第2の方向D2における縁部22の上側の面22aは、素体2の絶縁層4と接触する。第2の方向D2における縁部22の底側の面22bは、素体2のオーバーコート層5と接触する。このように、縁部22は、絶縁層4とオーバーコート層5とで挟み込まれるような態様で、素体2の内部に潜り込んでいる。縁部22は、本体部21から第1の方向D1における外周側へ向かうに従って、第2の方向D2における上側へ傾くと共に、先細りとなるように形成される。そのため、縁部22の底側の面22bは、本体部21から第1の方向D1において遠ざかるに従って、底面2Bから上側へ離れる。
【0026】
上述の様な構成により、本体部21から第1の方向D1における外周側へ向かうに従って、縁部22の面22bと接触するオーバーコート層5の厚みが大きくなる。このように、オーバーコート層5は、縁部22の底側に潜り混んで面22aを支持する領域を有する。当該領域は、縁部22を覆う被覆部23を構成する。被覆部23は、第2の方向D2において本体部21側へ向かうに従って先細りとなる。第2の電極層12の本体部21は、被覆部23から露出するような構成となる。なお、上側の面22aと、底側の面22bとは、第2の電極層12の第1の方向D1における端部12aの位置にて、互いに交差する。
【0027】
第1の電極層11の底面部24は、オーバーコート層5を挟んだ状態で、第2の電極層12に積層される。上述のように、オーバーコート層5は、被覆部23において第2の電極層12の縁部22を覆う。第1の電極層11は、底側から、第2の電極層12の本体部21、及びオーバーコート層5の外表面(すなわち底面2B)を覆うように形成される。そのため、第2の電極層12の縁部22の底側の面22bと、第1の電極層11との間には、オーバーコート層5の被覆部23が挟まれるように配置される。なお、素体2にオーバーコート層5が形成される場合であっても、第1の電極層11は、
図2と同様に、延伸部25を有する。
【0028】
底面2Bでの底面電極3の形状、大きさ、及び配置は特に限定されず、例えば、
図6~
図8に示すような構成を採用してもよい。また、各底面電極3の延伸部25の構成も適宜変更可能である。なお、
図6~
図8では、中央に底面2Bを示す底面図が示され、底面図の下側に長手方向に延びる側面2Dを示す側面図が示され、底面図の右側に短手方向に延びる側面2Eを示す側面図が示される。なお、側面2Fの様子は側面2Eと同様であり、側面2Cの様子は側面2Dと同様である。
図6~
図8に示すように、側面2C,2D付近に小型の底面電極3C,3Dが形成される。側面2E,2F付近に大型の底面電極3E,3Fが形成される。
【0029】
図6(a)に示す例では、側面2C,2Dには、底面電極3C,3Dから上面2Aまで到達しない延伸部25が形成される。側面2E,2Fには、底面電極3E,3Fから上面2Aまで到達しない、幅広な延伸部25が形成される。
図6(b)に示す例では、側面2C,2Dには、底面電極3C,3Dから上面2Aまで到達しない、延伸部25が形成される。側面2E,2Fには、底面電極3E,3Fから上面2Aまで到達する、幅狭な延伸部25が形成される。
【0030】
図7(a)に示す例では、側面2C,2Dには、底面電極3C,3Dから上面2Aまで到達する延伸部25が形成される。側面2E,2Fには、底面電極3E,3Fから上面2Aまで到達しない、幅広な延伸部25が形成される。
図7(b)に示す例では、側面2C,2Dには、底面電極3C,3Dから上面2Aまで到達する延伸部25が形成される。側面2E,2Fには、底面電極3E,3Fから上面2Aまで到達する、幅広な延伸部25が形成される。
【0031】
図8(a)に示す例では、側面2C,2Dには、底面電極3C,3Dから上面2Aまで到達しない延伸部25が形成される。側面2E,2Fには、底面電極3E,3Fから上面2Aまで到達する、二つに分割された幅狭な延伸部25が形成される。
図8(b)に示す例では、側面2C,2Dには、底面電極3C,3Dから上面2Aまで到達しない、二つに分割された延伸部25が形成される。側面2E,2Fには、底面電極3E,3Fから上面2Aまで到達する、二つに分割された幅狭な延伸部25が形成される。
【0032】
次に、
図9~
図11を参照して、積層電子部品1の製造方法について説明する。
図9は、積層電子部品1の製造方法を示す工程図である。
図10及び
図11は、積層電子部品1の製造方法の各段階における様子を示す模式図である。なお、
図10及び
図11では、底面電極3が四つの場合の例を示している。
図10(a)(b)(c)の上段側の図は平面図を示し、下段側の図は側面図を示す。
図11(c)は、
図6~
図8と同様な表現の図が示されている。なお、
図9~
図11は、
図5に対応するような、オーバーコート層5が形成される場合の製造方法について説明する。
【0033】
図9に示すように、まず、絶縁層4のシートを形成する工程が実行される(ステップS10)。この工程では、PETフィルムなどの基材シート30上に、絶縁層4を構成するペーストが塗布されることでシートが形成される(
図10(a)参照)。次に、絶縁層4のシートにスクリーン印刷を行うことで、底面電極3の第2の電極層12を形成する工程が実行される(ステップS20)。この工程では、絶縁層4の外表面にスクリーン印刷によって第2の電極層12に対応する形状にペーストが印刷される(
図10(b)参照)。なお、当該タイミングにて、他の絶縁層4のシートに、内部電極6の印刷がなされる。次に、絶縁層4の外表面にスクリーン印刷を行うことで、オーバーコート層5を形成する工程が実行される(ステップS30)。この工程では、絶縁層4の外表面にスクリーン印刷によってオーバーコート層5に対応する形状にペーストが印刷される(
図10(c)参照)。このとき、オーバーコート層5は、第2の電極層12の縁部を覆うように印刷されて、印刷後にプレスされる。
【0034】
次に、印刷後の絶縁層4のシートを積層することで、焼結前の素体2である、シート積層基板40を作成する工程が実行される(ステップS40)。シート積層基板40は、オーバーコート層5が最外層となるように、各絶縁層4が積層される(
図11(a)参照)。次に、シート積層基板40を所定の大きさにダイサー切断又はナイフ切断すると共に、グリーンバレルで面取り処理を行う工程が実行される(ステップS50)。次に、シート積層基板40を焼結して素体2を作成すると共に、焼成後のバレル処理を行う工程が実行される(ステップS60)。これらの工程によって、角Rが形成された素体2が形成される(
図11(b)参照)。
【0035】
次に、底面2Bに対するスクリーン印刷のために、素体2を整列する工程が実行される(ステップS70)。そして、素体2の底面2Bに対して樹脂電極のスクリーン印刷を行うことによって、第1の電極層11の底面部24を形成する工程が実行される(ステップS80)。この工程では、第2の電極層12を覆うように、スクリーン印刷によって底面2Bに第1の電極層11の底面部24を形成する工程が実行される(
図11(c)の「A1」参照)。次に、側面2C,2Dに対するスクリーン印刷のために、素体2を整列する工程が実行される(ステップS90)。そして、素体2の側面2C,2Dに対して樹脂電極のスクリーン印刷を行うことによって、第1の電極層11の延伸部25を形成する工程が実行される(ステップS100)。この工程では、スクリーン印刷によって側面2C,2Dに第1の電極層11の延伸部25を形成する工程が実行される(
図11(c)の「A2」参照)。次に、側面2E,2Fに対するスクリーン印刷のために、素体2を整列する工程が実行される(ステップS110)。そして、素体2の側面2E,2Fに対して樹脂電極のスクリーン印刷を行うことによって、第1の電極層11の延伸部25を形成する工程が実行される(ステップS120)。この工程では、スクリーン印刷によって側面2E,2Fに第1の電極層11の延伸部25を形成する工程が実行される(
図11(c)の「A3」参照)。第1の電極層11は、導電性の樹脂材料を熱処理によって硬化させることによって形成される。次に、第1の電極層11の外表面にめっき処理を施すことによって、めっき層14を形成する工程を実行する(ステップS130)。
【0036】
なお、オーバーコート層5を有しない積層電子部品1を製造する場合、ステップS30の工程を省略する。これにより、
図10(b)に示す状態で、第2の電極層をプレスすることで、絶縁層4の内部に入り込むようにする。
【0037】
次に、本実施形態に係る積層電子部品1の作用・効果について説明する。
【0038】
積層電子部品1において、底面電極3は、第1の電極層11と、第1の電極層11よりも素体2側に形成される第2の電極層12と、を備える。ここで、第1の電極層11は、第2の電極層12を覆うように積層された樹脂電極である。このように、底面電極3として樹脂電極を用いることで、底面電極3に対する応力を緩和することができる。第1の電極層11は、側面2C,2D,2E,2Fに延伸する延伸部25を有する。従って、樹脂電極の電極面積を大きくすることで、めっき性を向上することができる。具体的に、電解めっきを行うときには、バレルの溶液中において、積層電子部品1の電極が金属メディアを介して陰極と接触して通電する。すなわち、メディアと電極の接触確率が高いほど通電の頻度が高くなり、めっき効率が高い状態となる。樹脂電極を用いた場合は、電極表面に占める非金属(樹脂)の割合が大きくなるため、めっき効率が低下する傾向にあるが、本実施形態では、延伸部25によって電極面積を大きくできるため、めっき効率を向上できる。
【0039】
更に、延伸部25における幅寸法W2は、底面2Bにおける第1の電極層11の幅寸法W1よりも小さい。すなわち、はんだ16が必要となる底面2Bにおける第1の電極層11の幅寸法W1は、側面2C,2D,2E,2Fの延伸部25における幅寸法W2よりも大きい。従って、底面2Bのはんだ16が、側面2C,2D,2E,2Fの延伸部25側に引き寄せられることを抑制することができるため、底面2Bでのはんだ量の減少を抑制できる。従って、底面電極3と実装基板との距離をはんだ16の厚みで確保することができるため、実装基板から底面電極3への応力を抑制できる。以上より、底面電極3のめっき付け性を確保しながら、素体2におけるクラックの発生を抑制可能である。
【0040】
延伸部25は、側面2C,2D,2E,2Fにおいて、底面2Bに対向する上面2Aから離間した位置に配置されてよい。この場合、延伸部25が上面2Aまで到達することなく途切れた状態になるため、延伸部25の面積を更に小さくすることができる。そのため、延伸部25によって側面2C,2D,2E,2F側に引き寄せられるはんだ16の量を更に低減することができる。
【0041】
第2の電極層12の縁部22は、素体2の一部であるオーバーコート層5で覆われてよい。これにより、底面電極3の端部付近で応力が集中した場合、応力は、第1の電極層11とオーバーコート層5との境界部を介して、オーバーコート層5に分散される。
【0042】
次に、
図12を参照して、実施例及び比較例に係る積層電子部品に対する熱衝撃試験について説明する。比較例に係る積層電子部品として、第1の電極層11を省略したものを準備した。従って、比較例には延伸部25は形成されていない。また、実施例は、
図5に示すように、樹脂電極の第1の電極層11の底面部24と第2の電極層12とが、オーバーコート層5の一部を挟むような構造が得られている。また、
図2に示すような延伸部25が、側面にて延伸している。これらの積層電子部品をはんだを介して基板に接続し、-40℃~125℃で昇温と降温を繰り返す。このとき、各温度で30分保持する。このような条件にて、熱衝撃試験を実施した。8個の底面電極について、素地クラック(素体2のクラック)、端子破壊(めっき層の底面電極からのはがれなど)、はんだクラックの発生について観察した。8個中の何個の底面電極に不具合が生じたかをカウントした。試験結果を
図12に示す。
【0043】
図12に示すように、比較例では、各サイクル数での素地クラック、及び端子破壊が確認された。なお、素地クラックとして、底面電極と絶縁層との角部の応力集中部から、上方へ延びて絶縁層が破壊されるようなクラック、及び応力集中部から底面電極と絶縁層との境界部に沿って延びるようなクラックが観察された。端子破壊として、電極-めっき間のはがれが確認された。また、また、比較例では、実施例よりも多くのはんだクラックの発生が確認された。はんだクラックとして、はんだの内部が破壊されるようなクラックが確認された。これに対し、実施例では、高いサイクル数であっても、素地クラック及び端子破壊が防止できていることが確認された。また、低いサイクル数では、はんだクラックの発生が抑制出来ていることが確認された。
【符号の説明】
【0044】
1…積層電子部品、2…素体、3…底面電極、5…オーバーコート層、11…第1の電極層、12…第2の電極層、25…延伸部。