(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-19
(45)【発行日】2024-11-27
(54)【発明の名称】制御装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
G06F 11/34 20060101AFI20241120BHJP
G06F 11/30 20060101ALI20241120BHJP
G05B 19/05 20060101ALI20241120BHJP
H04L 7/00 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
G06F11/34 104
G06F11/30 140A
G05B19/05 S
H04L7/00 990
(21)【出願番号】P 2021081852
(22)【出願日】2021-05-13
【審査請求日】2024-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々本 学
(72)【発明者】
【氏名】大宮 英典
(72)【発明者】
【氏名】大塚 祐策
(72)【発明者】
【氏名】酒田 輝昭
【審査官】円子 英紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-068200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 11/34
G06F 11/30
G05B 19/05
H04L 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが被制御装置の制御を行う制御装置を複数有する分散制御システムに適用される制御装置であって、
前記分散制御システムを構成する他の制御装置と時刻を同期する時刻同期部と、
前記被制御装置に関する情報を受信する通信部と、
前記被制御装置に関する情報を格納する共有データ格納部と、
前記被制御装置に対する指令値を演算し、演算結果を前記共有データ格納部に格納する演算部と、
前記共有データ格納部に格納された情報を保持する情報保持部と、
前記情報保持部の領域を、前記共有データの情報と、前記演算部での演算に必要な情報量とに応じて設定する領域設定部と、
前記情報保持部に格納されている情報から、前記共有データの情報と、時刻とに応じて選択する情報選択部と、を備え、
前記演算部は前記情報選択部で選択された情報を用いて指令値を算出する
制御装置。
【請求項2】
さらに、前記他の制御装置における共有データ格納部への格納と同期させて、前記共有データ格納部への前記情報の格納を制御する同期更新部を備える
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
さらに、同期時刻に基づいて、同期時刻情報を管理する時刻管理部を有する
請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記通信部は、前記演算部で算出された指令値を含む前記共有データを送信する
請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
前記共有データ格納部に格納される前記被制御装置に関する情報には、前記情報を取得した際の時刻情報が付加されている
請求項1に記載の制御装置。
【請求項6】
前記領域設定部は、前記情報の取得時間差に基づいて情報を保持する領域を設定する
請求項1に記載の制御装置。
【請求項7】
前記領域設定部は、前記指令値の演算に必要な時系列情報を保持する領域を設定する
請求項1に記載の制御装置。
【請求項8】
前記情報選択部は、前記被制御装置に関する情報の取得時間差に基づいて、前記被制御装置に関する情報を選択する
請求項1に記載の制御装置。
【請求項9】
前記情報選択部は、前記被制御装置に関する情報の取得時間差を、前記指令値から取得する
請求項7又は請求項8に記載の制御装置。
【請求項10】
それぞれが被制御装置の制御を行う制御装置を複数有する分散制御システムの制御装置に適用される制御方法であって、
前記分散制御システムを構成する他の制御装置と時刻を同期する時刻同期処理と、
前記被制御装置に関する情報を受信する通信処理と、
前記被制御装置に関する情報を格納する共有データ格納処理と、
前記被制御装置に対する指令値を演算し、演算結果を前記共有データ格納処理で格納する演算処理と、
前記共有データ格納処理で格納された情報を保持する情報保持処理と、
前記情報保持処理で情報を保持する領域を、前記共有データの情報と、前記演算処理での演算に必要な情報量とに応じて設定する領域設定処理と、
前記情報保持処理により格納されている情報から、前記共有データの情報と、時刻とに応じて選択する情報選択処理と、を含み、
前記演算処理では、前記情報選択処理で選択された情報を用いて指令値を算出する
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の社会インフラシステムには、制御システムが設置され、社会インフラを制御システムが統括して管理するようにしている。制御システムには、演算処理を実行する複数の制御装置が設置され、制御システムの自動化と効率化とが図られている。
【0003】
こうした制御システムを構成する制御装置は、フィールドに設置されるセンサなどの検出機器から各種の状態量などの情報を取得し、制御装置を構成する中央演算処理装置により、演算処理を実行する。そして、制御装置は、フィールドに設置されるモータやアクチュエータなどの操作機器(制御対象)に、制御指令(制御データ(制御信号))を出力し、制御対象をリアルタイムに制御する。
【0004】
また、大規模な社会インフラシステムにおける制御システムの場合には、複数の制御装置が共通ネットワークを介して接続され、分散制御システムを構成する。分散制御システムは、広大なフィールドに設置される複数の検出機器から取得される情報を1カ所の制御装置に集約し、演算処理を実行する。このような分散制御システムは、演算処理を実行する制御装置と制御指令を出力する制御装置との役割を分担し、効率の良い制御を実行する。
【0005】
分散制御システムにおける制御装置間の通信方法としては、共有メモリ方式がある。共有メモリ方式では、分散制御システムを構成するそれぞれの制御装置が、それぞれの制御装置において割り当てられるメモリの集合である共有メモリを有し、自らの制御装置は、割り当てられるデータを、他の制御装置に向けて、周期的にブロードキャストする。これにより、制御装置間においてデータの共有が図られ、制御装置間の通信負荷が軽減される。
【0006】
特許文献1には、このような共有メモリ方式を適用した構成の一例が記載されている。すなわち、特許文献1には、共有メモリと内部メモリを設け、共有メモリの制御データにタイムスタンプを付加して内部メモリに格納し、内部メモリの内容を記憶媒体に保存する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載されるように、共有メモリの制御データにタイムスタンプが付加されていることで、そのタイムスタンプが付加された時点の制御状態は、各制御装置で共有することができる。しかしながら、タイムスタンプが付加された制御データが得られたとしても、分散制御システム内の各制御装置で取得した制御データの時刻が相違していた場合、それぞれの制御装置での制御に活用することは困難であった。
【0009】
本発明の目的は、相違する時刻に検出機器から取得した情報から、分散制御システム内のそれぞれの制御装置で、精度の高い制御を実現する制御装置及び制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
本願は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、制御装置として、それぞれが被制御装置の制御を行う制御装置を複数有する分散制御システムに適用される制御装置であって、分散制御システムを構成する他の制御装置と時刻を同期する時刻同期部と、被制御装置に関する情報を受信する通信部と、被制御装置に関する情報を格納する共有データ格納部と、被制御装置に対する指令値を演算し、演算結果を共有データ格納部に格納する演算部と、共有データ格納部に格納された情報を保持する情報保持部と、情報保持部の領域を、共有データの情報と、演算部での演算に必要な情報量とに応じて設定する領域設定部と、情報保持部に格納されている情報から、共有データの情報と、時刻とに応じて選択する情報選択部とを備え、演算部は情報選択部で選択された情報を用いて指令値を算出するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、相違する時刻において検出機器から取得される情報から、制御対象への制御指令を演算し、製品の品質を向上させ、精度の高い制御を実現することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施の形態例に係る分散制御システム全体の例を示す構成図である。
【
図2】本発明の一実施の形態例に係る制御装置の構成を説明する図である。
【
図3】本発明の一実施の形態例に係る制御装置の構成例(例1)を示す機能ブロック図である。
【
図4】本発明の一実施の形態例に係る制御装置の構成例(例2)を示す機能ブロック図である。
【
図5】本発明の一実施の形態例に係る制御装置の動作例を示すタイミング図である。
【
図6】本発明の一実施の形態例に係る制御装置の情報保持部の保持情報の一例を示す図である。
【
図7】本発明の一実施の形態例に係る制御装置の情報選択部により選択された情報と演算部により演算される指令値の一例を示す図である。
【
図8】本発明の一実施の形態例に係る制御装置の共有データの共有タイミングを示すタイミング図である。
【
図9】本発明の一実施の形態例に係る制御装置(制御システム)がセンサから取得される取得情報を共有する処理の流れを示すフローチャートである。
【
図10】本発明の第一実施の形態例に係る制御装置(制御システム)が制御指令を演算し、制御装置(制御システム)が制御指令を共有する処理の流れを示すフローチャートである。
【
図11】本発明の一実施の形態例に係る制御装置をFA(Factory Automation)システムに適用した場合の一例を示す構成図である。
【
図12】本発明の一実施の形態例に係る制御装置を鉄鋼システムに適用した場合の一例を説明する構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態例(以下、「本例」と称する)を、添付図面を参照して説明する。なお、実質的に同一又は類似の構成には、同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
[分散制御システムの構成]
図1は、本例の分散制御システムの構成を示す。
図1に示すシステムは、第1制御装置101、第2制御装置102、及び第3制御装置103が、共通ネットワーク1を介して相互に通信可能に接続され、分散制御システムを構成する。
【0015】
各制御装置101、102、103は、フィールドに設置されるセンサからの情報を取得する。そして、各制御装置101、102、103は、取得した情報に基づいて、モータやアクチュエータなどの操作機器(制御対象、被制御装置)に、制御指令(制御データ(制御信号、指令値))を出力し、制御対象をリアルタイムに制御する。つまり、分散制御システムは、操作機器に対する制御を実行する複数の制御装置101、102、103により構成される。
なお、以下の説明では、第1制御装置101で行われる制御を制御A、第2制御装置102で行われる制御を制御B、第3制御装置103で行われる制御を制御Cと称する。
【0016】
共通ネットワーク1は、例えば、TSN(Time Sensitive Network)と呼称される一連のIEEE規格群で構成される通信方式によるデータ通信を実行するネットワークや、IEC61784規格などにより規格化される産業用ネットワークが使用される。これらの共通ネットワーク1として使用されるネットワークは、時分割制御に基づくタイムスロット通信を使用することにより、制御装置間の通信遅延における時間確定性を向上させるネットワークである。
【0017】
第1制御装置101は、CPU(Central Processing Unit)1001とメモリ1002とを内蔵する。同様に、第2制御装置102は、CPU1011とメモリ1012とを内蔵し、第3制御装置103は、CPU1021とメモリ1022とを内蔵する。
メモリ1002には、第1制御装置101で制御Aを行うために動作するプログラムAが保持されると共に、共通ネットワーク1を介して、各制御装置101~103間で共有される共有データを保持する領域(共有データ領域)が設置される。ここでの共有データには、制御Aで得た取得情報や、他の制御装置から受信した制御指令が含まれる。
【0018】
同様に、メモリ1012は、プログラムB、及び各制御装置101~103間で共有される共有データ(制御Bで得た取得情報や受信した制御指令)を保持する領域が設置される。メモリ1022には、プログラムCと共有データ(制御Cで得た取得情報や演算した制御指令)、及び各制御装置101~103間で共有される共有データを集めて保持しておく保持情報Cを保持する領域が設置される。
【0019】
また、第1制御装置101には、制御Aを実行するために、フィールドネットワーク20を介して、センサ7、モータ8、アクチュエータ9が接続される。同様に、第2制御装置102には、制御Bを実行するために、フィールドネットワーク21を介して、センサ10、モータ11が接続され、第3制御装置103には、制御Cを実行するために、フィールドネットワーク22を介して、センサ12、センサ13が接続される。
なお、フィールドネットワーク20、フィールドネットワーク21、フィールドネットワーク22には、例えば、IEC61158により規定化されるネットワークなどを使用してもよい。また、制御装置と検出機器や制御対象との間を、直接、デジタル信号やアナログ信号を入出力し、接続してもよい。この場合、制御装置と各検出機器や各制御対象とは、複数の入出力信号線により接続される。
【0020】
第1制御装置101は、センサ7からの入力を受けて、共通ネットワーク1を介して、第2制御装置102及び第3制御装置103とデータを共有する。同様に、第2制御装置102は、センサ10からの入力を受けて、共通ネットワーク1を介して、第1制御装置101及び第3制御装置103とデータを共有する。さらに、第3制御装置103は、センサ12及びセンサ13からの入力を受けて、共通ネットワーク1を介して、第1制御装置101及び第2制御装置102と共有データを共有する。
【0021】
そして、特に、第3制御装置103は、共有される入力データから、例えば、モータ8、アクチュエータ9、モータ11への制御指令(指令値)を演算して共有データに格納し、第1制御装置101及び第2制御装置102と制御指令を共有する。一方、第1制御装置101は、共有される制御指令により、モータ8、アクチュエータ9を制御し、同様に、第2制御装置102は、共有される制御指令により、モータ11を制御する。
なお、フィールドに設置されるセンサ7,10,12,13は、検出機器であり、各種の流量、温度、圧力、張力、回転速度などの状態量を、取得情報として検出する。
【0022】
[制御装置の構成]
次に、第1制御装置101の構成を説明する。ここでは、第1制御装置101を例にして説明するが、第2制御装置102及び第3制御装置103についても基本的には同様の構成である。
【0023】
図2は、第1制御装置101の構成を示す。
制御装置101は、CPU1001、メモリ1002、通信制御部1003、インタフェース部1004、不揮発性記憶媒体1005、バス1006、及び入出力部1007を有する。
【0024】
CPU1001は、第1制御装置101の各構成要素の動作を制御する中央演算処理装置である。
メモリ1002は、CPU1001が動作するための一時的な記憶領域であり、不揮発性記憶媒体1005から転送されるオペレーティングシステム(以下、「OS」と呼称する)や、アプリケーションプログラムなどが格納される。
また、メモリ1002には、第1制御装置101で動作するプログラムAを保持する領域、及び各制御装置101~103間で共有する共有データ(各制御装置が検出機器や制御対象から取得する情報取得情報や制御指令)を保持する領域が設置される。共有データには、既に説明したように、各制御装置が検出機器や制御対象から取得する情報取得情報や制御指令が含まれる。
なお、
図1に示すように、第3制御装置103のメモリ1022には、各制御装置101~103間で共有される共有データを集めて保持しておく保持情報Cを保持する領域が設置される。
【0025】
通信制御部1003は、共通ネットワーク1を介して、第2制御装置102及び第3制御装置103とデータ通信を実行する。データ通信の方式としては、例えば、IEEE802.3規格のMAC(Media Access Control)層の機能が実装される。
なお、通信制御部1003の実装例としては、例えば、IC(Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ゲートアレイなどがある。また、通信制御部1003は、CPU1001と一体化して構成されてもよい。
【0026】
さらに、通信制御部1003は、ネットワークを使用した時刻同期プロトコルを実行する機能を有する。つまり、通信制御部1003は、時刻同期パケットの送受信時における計時機能や、時刻同期パケットへの補正値の設定や加算などの機能を有する。このような時刻同期プロトコルとしては、IEEE1588、IEEE802.1AS、NTP、SNTPが使用される。
また、通信制御部1003は、同期時刻に基づく時刻管理機能として、第2制御装置102及び第3制御装置103への同期時刻情報の通信機能を有する。
また、
図2では、通信制御部1003が、1つで構成した場合を示しているが、複数で構成してもよい。
【0027】
インタフェース部1004は、共通ネットワーク1との間で、データの送受信を実行する。インタフェース部1004は、例えば、IEEE802.3の物理層の機能が実装される。なお、インタフェース部1004は、通信制御部1003に含まれてもよい。
また、インタフェース部1004についても1つで構成したのは一例であり、複数であってもよい。
【0028】
不揮発性記憶媒体1005は、情報の不揮発性の記憶媒体であり、例えば、OS、アプリケーション、デバイスドライバなどの保存、CPU1001を動作させるプログラムの保存、プログラムの実行結果の保存に使用される。
不揮発性記憶媒体1005は、例えば、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ、フラッシュメモリなどで構成される。また、不揮発性記憶媒体1005は、外部記憶媒体として取り外しが容易なUSBメモリ、ソリッドステートドライブなどで構成してもよい。
【0029】
入出力部1007は、第1制御装置101に接続される、例えば、センサ7から取得情報を取得し、モータ8やアクチュエータ9を制御する入出力インタフェースである。入出力部1007は、例えば、前述の各種のフィールドネットワーク20の機能や、デジタル入出力機能やアナログ入出力機能が実装される。なお、
図2では、入出力部1007からの信号線が、1本の場合を示しているが、複数であってもよい。
バス1006は、CPU1001、メモリ1002、通信制御部1003、不揮発性記憶媒体1005、入出力部1007をそれぞれ接続する。
【0030】
次に、第1制御装置101の機能から見た構成を説明する。
図3は、第1制御装置101の機能から見た構成例(例1)を示す。
ここでは、第1制御装置101の構成について説明するが、第2制御装置102についても、同様の機能構成である。また、第3制御装置103は、本例の場合、後述する
図4の構成を適用するが、システム構成によっては、第3制御装置103を
図3に示す構成としてもよい。
【0031】
第1制御装置101は、時刻同期部300、通信部301、同期更新部302、共有データ格納部303、時刻管理部304、入出力制御部305を有する。これらの各構成要素は、第1制御装置101のメモリ1002に格納されたプログラムAの実行で構成される。
【0032】
時刻同期部300は、時刻同期処理の手順を実行する機能部である。実行する時刻同期プロトコルとして、前述のIEEE1588、IEEE802.1AS、NTP、SNTPが使用される。時刻同期部300は、後述の通信部301で時刻同期パケットの送信時や受信時に計測する時刻などを使用し、第2制御装置102及び第3制御装置103と時刻同期する。つまり、時刻同期部300は、分散制御システムを構成する他の制御装置と時刻同期する。
【0033】
なお、時刻同期部300は、CPU1001で動作するアプリケーションで実現してもよいし、通信制御部1003をICやFPGAで構成する場合のハードウェアとして実現してもよい。
また、時刻同期部300を、CPU1001のソフトウェアと通信制御部1003のハードウェアとの両方で構成してもよい。なお、この場合は、時刻同期パケットの送信タイミングや受信タイミングの計測機能や、時刻同期パケットフォーマットの生成は、通信制御部1003で処理される。
【0034】
通信部301は、共通ネットワーク1に接続され、共通ネットワーク1の通信プロトコルに基づいて、通信処理を実行する。例えば、通信部301は、CPU1001で動作するソフトウェアと、通信制御部1003と、インタフェース部1004とで構成される。つまり、通信部301は、共通ネットワーク1を介して、他の制御装置に自の制御装置に関する情報を送信し、他の制御装置から他の制御装置に関する情報を受信する。通信部301は、自らの制御装置がセンサなどから取得した情報(センサ情報)を送信し、他の制御装置で得た情報(センサ情報)を受信する。
【0035】
同期更新部302は、通信部301から受信する通信内容を保持する。同期更新部302は、後述の時刻管理部304から通知される同期時刻情報(時刻通知や時刻通知割込みなどを含む)により、保持している情報を後述の共有データ格納部303に反映する。つまり、同期更新部302は、他の制御装置における共有データ格納部への共有データ(情報)の格納と同期させて、又は、他の制御装置における共有データ格納部からの共有データ(情報)の格納と同期させて、自らの制御装置における共有データ格納部303への共有データ(情報)の格納を実行する。
【0036】
共有データ格納部303は、各制御装置間で共有する共有データ(情報)を格納する共有データ格納処理を実行する。共有データ格納部303には、メモリ1002の共有データ領域が割り当てられる。例えば、各制御装置が周期的なブロードキャスト通信を実行し、受信した制御装置が、送信元の制御装置を識別し、該当する共有データ領域を更新する。そして、共有データ格納部303は、他の制御装置から送信された共有データを格納する。
【0037】
時刻管理部304は、同期時刻に基づいて、各制御装置における入出力制御部305の同期時刻情報を管理する。
入出力制御部305は、例えば、第1制御装置101に接続されるセンサ7から情報を取得し、モータ8やアクチュエータ9を制御し、情報の入出力を実行する機能部である。つまり、入出力制御部305は、検出機器から情報を取得し、制御対象を制御する情報の入出力を実行する。
【0038】
入出力制御部305ではセンサ7から情報を取得する際に、時刻管理部304から通知される同期時刻情報(センサ情報を取得した時刻が付加されたセンサ情報)、つまりセンサ情報を取得した時刻をセンサ情報に付加し、共有データ格納部303へ渡してもよい。
このように、本例の各制御装置101~103は、分散制御システムを構成する他の制御装置と時刻同期する時刻同期部300を有する。また、本例の各制御装置101~103は、他の制御装置に自らの制御装置に関する情報を送信し、他の制御装置から他の制御装置に関する情報を受信する通信部301を有する。さらに、本例の各制御装置101~103は、入出力制御部305にて入出力される情報としての共有データを格納する共有データ格納部303を有する。
【0039】
次に、本例の制御装置の別の機能構成(例2)を説明する。
図4は、制御装置の別の機能構成(例2)を示す図である。
図4に示す制御装置は、例えば第3制御装置103に適用した例とするが、第1制御装置101や第2制御装置102に適用してもよい。
【0040】
図4に示す制御装置は、時刻同期部300、通信部301、同期更新部302、共有データ格納部303、時刻管理部304、領域設定部401、情報保持部402、情報選択部403、及び演算部404を有する。
時刻同期部300、通信部301、同期更新部302、共有データ格納部303、及び時刻管理部304は、既に
図3で説明した各機能部と同様なので説明は省略する。
【0041】
領域設定部401は、後述する情報保持部402の保持領域サイズ(領域)を設定する領域設定処理を実行する。保持領域サイズは、時刻管理部304により演算される各制御装置の処理の時間差と、後述の演算部404で必要な時系列の情報量とにより設定される。
ここで、各制御装置の処理の時間差としては、例えば、共有データ格納部303から得られる取得情報(センサ情報)の取得時間差や、各制御装置に接続される制御対象への制御指令による制御システムの流動速度から演算して得られる時間差などが含まれる。
【0042】
換言すると、領域設定部401は、情報保持部402の保持領域サイズを、各制御装置の処理の時間差、つまり、共有データ(センサ情報)の取得時間差、及び指令値演算に必要な時系列の情報量に応じて設定する。
すなわち、各制御装置の処理の時間差とは、情報の時間差である。情報の時間差とは、他の制御装置が取得する情報(センサ情報)の取得時間と、自らの制御装置が取得する情報(センサ情報)の取得時間との差(取得時間差)である。
演算部404で必要な時系列の情報とは、例えばFFT(Fast Fourier Transform)解析や、トラッキング制御のように、一定の時間分の時系列の情報を用いて演算する場合に必要な情報量である。
【0043】
なお、保持領域サイズは、基本的には、制御システムの下流の制御装置から見た場合、上流に向かって大きくなる。本例のシステムの場合、保持領域サイズは、第1制御装置101、第2制御装置102、第3制御装置103の順に、小さくなる。つまり、領域設定部401は、情報の取得時間の早い製造ライン上流の制御装置の情報を保持する領域が、情報の取得時間の遅い製造ライン下流の制御装置の情報を保持する領域よりも、大きく設定される。
【0044】
また、保持領域サイズは、演算部404で必要な時系列の情報量が多いほど大きく設定される。さらに、各制御装置の処理の時間差が変動する場合にも、その時間差に応じて、保持領域サイズは動的に設定できる。その他、処理時間差の変動分や、必要な時系列情報量から、あらかじめ一定の大きさの領域を定めて設定してもよいが、前者の設定方法の方が、メモリ1022の占有を最小限にすることができる。
【0045】
情報保持部402は、共有データ格納部303で共有されたセンサ情報を保持する情報保持処理を行う。情報保持部402は、領域設定部401で設定される保持領域サイズを有するリングバッファである。
情報保持部402は、センサ情報を保持する際に、時刻管理部304から通知される同期時刻情報(センサ情報を同期して取得した時刻が付加されたセンサ情報)、つまり、センサ情報を同期して取得した時刻とそのセンサ情報とを保持する。そして、情報保持部402は、情報に同期時刻情報を付加し、センサ情報を保持する。
【0046】
情報選択部403は、情報保持部402で保持されている情報から、演算部404での指令値を演算するのに必要な情報を選択する。そして、情報選択部403は、選択された保持情報を演算部404に入力する。つまり、情報選択部403は、情報保持部402に保持されている情報から、指令値演算に必要な情報を選択し、演算部404に入力する。
そして、情報選択部403は、センサ情報の取得時間差、及び指令値演算に必要な時系列の情報量に基づいて、保持情報を選択する。また、時刻管理部304は、センサ情報の取得時間差を、各制御装置がセンサ情報を取得する時刻に基づいて、又は、制御対象への制御指令に基づいて演算する。
【0047】
情報選択部403での情報の選択は、各情報に付加される同期時刻情報に基づいて、実行される。つまり、この情報は、例えば、各制御装置の処理の時間差、例えば、共有データ格納部303から取得する各制御装置が取得したセンサ情報の取得時間差や、各制御装置に接続される制御対象への制御指令による制御システムの流動速度から演算する時間差(取得時間差)などに基づいて、選択される。さらに、情報選択部403は、演算部404での指令値を演算するのに必要な情報、例えば既に説明した一定の時間分の時系列の情報を、各制御装置の処理の時間差を加味して選択する。
【0048】
また、
図4に示す制御装置(例えば第3制御装置103)は、演算部404を有する。なお、
図3に示す制御装置(例えば第1制御装置101)が、この演算部404を有してもよい。
【0049】
演算部404は、入出力制御部305(
図3参照)に接続されるモータやアクチュエータを制御するため、必要な制御指令を演算する機能部である。演算部404における演算処理は、情報選択部403から取得する、各制御装置が取得した情報(センサ情報)を使用して実行される。演算部404は、情報選択部403に格納されている取得情報(センサ情報)を読み出し、制御指令を演算する。演算部404で演算された制御指令は、共有データ格納部303に格納され、他の制御装置(第1制御装置101及び第2制御装置102)と共有される。つまり、演算部404は、通信部301にて送信された共有データに基づいて、制御対象に対する制御指令を演算する。
【0050】
自らの制御装置(第1制御装置101及び第2制御装置102)に割り当てられる制御指令は、自らの制御装置の共有データ格納部303から読み出され、
図2に示す入出力部1007(
図3に示す入出力制御部305)に接続されるモータやアクチュエータに出力される。なお、演算部404は、CPU1001で動作するソフトウェアで実現される。
【0051】
これにより、本例の各制御装置101~103は、相違する時刻において検出機器から取得される取得情報から制御対象への制御指令を演算することができ、製品の品質を向上させ、精度の高い制御を実現することができる。
そして、本例の各制御装置101~103は、現在の状態から過去の状態を推定するものではなく、この推定結果に基づいて制御対象への制御指令を演算するものではないため、制御対象への制御指令に発生する誤差を抑制し、安定した制御を実現することができる。
【0052】
[制御装置による動作と処理の流れ]
次に、本例の各制御装置101~103の動作タイミングを説明する。
図5は、本例の各制御装置101~103の動作タイミングを示す。
図5の例は、製造ラインの上流過程から下流過程に向けて、第1制御装置101、第2制御装置102、第3制御装置103が設置される場合であり、製造対象物が、上流側から下流側に向けて順に流れる過程を示す。
【0053】
第3制御装置103の領域設定部401は、第3制御装置103の情報保持部402の保持領域サイズを、製造ラインの処理の時間差と、演算部404での指令値を演算するのに必要な情報とに基づいて設定する。製造ラインの処理の時間差としては、ここでは、各センサ情報の取得時間差が使用される。演算部404での指令値を演算するのに必要な情報には、例えば、既に説明した一定の時間分の時系列の情報が使用される。
【0054】
一つの製造対象物に注目する場合、時刻t3において、第1制御装置101が加工状態をセンサ7により観測(センシング)し、時刻t5において、第2制御装置102が加工状態をセンサ10により観測(センシング)する。さらに、時刻t7において、第3制御装置103が加工状態をセンサ12及びセンサ13により観測(センシング)する。
ここで、下流過程の制御装置103の処理時間(時刻t7)を基準に、各制御装置における処理の時間差として、第2制御装置102は、第3制御装置103に対し、t7-t5の時間差分の一定の時間分の時系列の情報を保持するための保持領域サイズを確保する。また、第1制御装置101は、第3制御装置103に対し、t7-t3の時間差分の情報を保持するための保持領域サイズを確保する。
【0055】
時刻t3において、第1制御装置101は、製造対象物からセンサ7により形状や位置などの情報を取得し、第1制御装置101の共有データ格納部303に格納する。共有データ格納部303に格納された情報は、第3制御装置103にて、時刻t4において共有データ格納部303から取得され、第3制御装置103は、取得した情報を情報保持部402に保持する。時刻t5において第2制御装置102は、製造対象物からセンサ10により形状や位置などの情報を取得し、第2制御装置102の共有データ格納部303に取得した情報を格納する。
【0056】
共有データ格納部303に格納された情報は、第3制御装置103にて、時刻t6において共有データ格納部303から取得され、第3制御装置103は、情報保持部402に保持する。また、時刻t7において、第3制御装置103は、製造対象物からセンサ12及びセンサ13により形状や位置などの情報を取得し、第3制御装置103の共有データ格納部303に格納すると共に、情報保持部402に保持する。なお、これらの処理は、時刻の経過と共に順次進行する。
各制御装置の共有データ格納部303に格納されたセンサ情報は、自身以外の他の制御装置に送信される。そして、各制御装置101~103は、同期更新部302により、それぞれの共有データ格納部303に格納されたセンサ情報を更新する。
【0057】
さらに、時刻t7において第3制御装置103は、これらの保持されたセンサ情報に基づいて、制御指令を演算し、その演算した制御指令を共有データ格納部303に格納する。そして、この格納された制御指令は、第1制御装置101及び第2制御装置102に送信され、第1制御装置101及び第2制御装置102は、時刻t8において、それぞれの共有データ格納部303を参照し、格納された制御指令に基づいて、対応するモータやアクチュエータの制御を実行する。
【0058】
このように、本例によれば、同一の製造対象物に関するセンサ情報に基づいて、制御指令を演算することができる。このため、制御対象への制御指令に発生する誤差を抑制し、安定した制御を実現することができる。
【0059】
次に、本例の制御装置101、102、103の情報保持部402の内容の一例を説明する。
図6は、制御装置101、102、103の情報保持部402の内容の一例を示す。
図6(a)は、第1制御装置101のセンサ7のセンサ情報の保持領域60に保持される取得時刻とセンサ情報の関係を示す。
図6(b)は、第2制御装置102のセンサ10のセンサ情報の保持領域61に保持される取得時刻とセンサ情報の関係を示す。
また、
図6(c)は、第3制御装置103のセンサ12、13のセンサ情報の保持領域62に保持される取得時刻とセンサ情報の関係を示している。
【0060】
保持領域60には、第1制御装置101に接続されるセンサ7で取得したセンサ情報が、時刻t1から取得した時刻と共に格納される。保持領域61には、第2制御装置102に接続されるセンサ10で取得したセンサ情報が、時刻t4から取得した時刻と共に格納される。保持領域62には、第3制御装置103に接続されるセンサ12及びセンサ13で取得したセンサ情報が、時刻t5から取得した時刻と共に格納される。
【0061】
ここで、演算部404で必要な時系列の情報として、例えばセンサ7に関しては3サンプル、センサ10に関しては2サンプル、センサ12、13に関しては3サンプルの情報を用いるとする。このとき、保持領域60には、時刻t1から時刻t7までの間に取得したセンサ情報(データ値a-1~a-7)が保持される。また、保持領域61には、時刻t4から時刻t7までの間に取得したセンサ情報(データ値b-4~b-7)が保持される。さらに、保持領域62には、時刻t5からt7までの間に取得したセンサ情報(データ値c1-5~c1-7及びc2-5~c2-7)が保持される。
【0062】
図5のタイミング図で説明したように、各制御装置101、102、103の処理の時間差として、第2制御装置102は、第3制御装置103に対し、t7-t5の時間差があり、第1制御装置101は、第3制御装置103に対し、t7-t3の時間差がある。
【0063】
第1制御装置101及び第2制御装置102は、演算部404で必要な時間差分の時系列の情報を、それぞれが保持する。
図6に示すように、この例では、保持領域サイズは、第1制御装置101、第2制御装置102、第3制御装置103の順に小さくなる。これにより、本例の場合には、各制御装置101、102、103の全てがt7-t1の時間差分の情報を保持する必要がなくなり、各制御装置101、102、103は、必要最小限の情報を保持すればよいことになる。
【0064】
第3制御装置103の演算部404は、時刻t7において、第3制御装置103の情報保持部402に保持された他の制御装置から取得したデータ情報と、自身の制御装置103で取得したデータ情報から、情報選択部403により選択された情報を用いて、制御指令を演算する。
【0065】
つまり、この演算には、第1制御装置101にて時刻t1、t2、t3で取得したセンサ7のセンサ情報、第2制御装置102にて時刻t4、t5で取得したセンサ10のセンサ情報、第3制御装置103にて時刻t5、t6、t7で取得したセンサ12及びセンサ13のセンサ情報が使用される。
【0066】
次に、本例の制御装置101、102、103の共有データ格納部303の内容の一例を説明する。
図7は、第3制御装置103の情報選択部403で選択した情報の内容と、演算部404により演算される指令値の一例を示す。
時刻t7において、第3制御装置103は、第1制御装置101にて時刻t1、t2、t3においてセンサ7で取得したセンサ情報(センサ値a-1~a-3)を、情報保持部402に保持されている情報から情報選択部403で選択し、演算部404に与える。
【0067】
また、時刻t7において、第3制御装置103は、第2制御装置102にて時刻t4、t5においてセンサ10で取得したセンサ情報(センサ値b-4、b-5)を、情報保持部402に保持されている情報から情報選択部403で選択し、演算部404に与える。
さらに、時刻t7において、第3制御装置103は、第3制御装置103にて時刻t5、t6、t7においてセンサ12及びセンサ13で取得したセンサ情報(データ値c1-5~c1-7及びc2-5からc2-7)を、情報保持部402に保持されている情報から情報選択部403で選択し、演算部404に与える。
【0068】
つまり、
図7に示す選択データ70は、時刻t7での第3制御装置103において、制御指令を演算するための必要最小限のセンサ情報であり、同一の製造対象物に対する制御装置の処理の時間差(センサ情報の時間差)に応じて選択されるセンサ情報である。
そして、演算部404は、これらのセンサ情報に基づいて、制御指令を演算し、その演算した制御指令を共有データ格納部303に格納する。この際、指令値71として、演算されたモータ8の制御指令(指令値a-M-7)、アクチュエータ9の指令値(指令値a-M-7)、モータ11の制御指令(指令値b-M-7)を、共有データ格納部303に格納する。同様にこれらの処理は、時刻の経過と共に順次進行して行き、続く時刻t8、t9における選択データ72、74と、制御指令の演算結果の指令値73、75が得られる。
【0069】
次に、本例の制御装置の共有データの共有タイミングを説明する。
図8は、共有データの共有タイミングを示すタイミングチャートである。
図8は、制御システムが予め決定される制御周期に基づいて、処理を実行する状態を示している。
【0070】
図8の上側のタイミングチャート(
図8(a))は、第1制御装置101、第2制御装置102、第3制御装置103が、各共有データを制御周期の先頭において共有していることを示す。
第1制御装置101がデータを共有し、第1制御装置101のデータ共有時間が終了すると第2制御装置102がデータを共有し、第2制御装置102のデータ共有時間が終了すると第3制御装置103がデータを共有する(センシング)。そして、第3制御装置103のデータ共有時間が終了すると、次の制御周期の開始時刻までの間、各制御装置101、102、103のCPU1001、1011、1021は、演算や制御などの別の処理を実行する(保持や選択)。
【0071】
つまり、各制御装置101、102、103は、次のデータ共有時間までの間に、センサ情報の取得と格納を実行することにより、同期更新部302により、各制御装置101、102、103の共有データ格納部303が制御周期毎に更新され、データが共有される。
【0072】
図8の下側のタイミングチャート(
図8(b))は、第3制御装置103が制御指令を演算し、演算結果(制御指令)を共有していることを示している。
第2制御装置102のデータ共有期間が終了すると、第3制御装置103は、第1制御装置101及び第2制御装置102から送信された共有データであるセンサ情報と第3制御装置103におけるセンサ情報とに基づいて、制御指令を演算する。
そして、次のデータ共有時間において、演算によって得られた制御指令を共有し、第1制御装置101及び第2制御装置102は、第3制御装置103から送信された制御指令により、対応するモータやアクチュエータに対し、制御を実行する。
【0073】
ここで、例えば第2制御装置102のCPU1011で、他の処理負荷の増加により制御指令演算の所要時間が延び、次の制御周期に間に合わなかった場合には、さらに次の制御周期において制御指令を演算することができる。すなわち、次の制御周期に間に合わなかった場合、その時点で情報保持部402に保持されている最新の情報を情報選択部403が選択して演算部404へ入力することで、常に最適な取得情報から制御指令を演算することができる。
【0074】
次に、本例の制御装置(制御システム)がセンサから取得される取得情報を共有する処理の流れを説明する。
図9は、本例の制御装置がセンサから取得される取得情報を共有する流れを示すフローチャートである。
まず、制御システムの動作が開始すると(ステップS91)、制御システムが起動する(ステップS92)。次に、各制御装置でセンサ情報を取得する(ステップS93)。
その後、取得したセンサ情報が、各制御装置で共有される(ステップS94)。
そして、ステップS93での情報取得とステップS94での共有処理が、制御周期毎に繰り返される。
【0075】
次に、本例の制御装置が制御指令を演算し、演算した制御指令を共有する処理の流れを説明する。
図10は、本例の制御装置が制御指令を演算し、制御装置が制御指令を共有するフローを説明する処理の流れを示すフローチャートである。
まず、制御装置の動作開始(ステップS101)により、制御装置が起動する(ステップS102)。起動後、選択されたセンサ情報が、各制御装置で共有される(ステップS103)。なお、このステップS103での情報共有は、
図9のフローチャートでのステップS94に相当する。
【0076】
次に、領域設定部401が、情報保持部402の保持領域サイズを設定する(ステップS104)。なお、制御装置の流動速度は、必ずしも一定ではない場合があり、この場合は、その流動速度の変化に応じて、保持領域サイズを設定することが好ましい。
そして、各制御装置で取得したセンサ情報を、取得した時刻と共に情報保持部402に格納する(ステップS105)。
センサ情報を格納した後、情報選択部403において、情報保持部402に格納されたセンサ情報に付加された同期時刻情報と、指令値演算に必要な時系列の情報量に基づいて、センサ情報を選択する(ステップS106)。そして、演算部404にて、制御指令を演算する(ステップS107)。さらに、演算された制御指令を、各制御装置で共有する(ステップS108)。
これらのステップS103からステップS108までの処理が、制御周期毎に繰り返される。
【0077】
以上のように、本例の制御装置によると、第3制御装置103が、第1制御装置101及び第2制御装置102に接続されるモータやアクチュエータに出力される制御指令を演算する際に、製造対象物が加工された時刻に取得したセンサ情報から制御指令を演算することができる。このため、最適な取得情報から制御指令を演算することができ、精度の高い制御を実現することができる。
【0078】
なお、制御指令を演算する制御装置は、必ずしも下流に設置される制御装置である必要はなく、共有データを取得する制御装置であれば、いずれの制御装置でもよい。また、共有データは、全ての制御装置で共有する必要はなく、制御指令を演算する制御装置が、演算に必要なセンサ情報を取得して、演算してもよい。同様に、制御指令も全ての制御装置で共有する必要はなく、モータやアクチュエータが接続される制御装置が取得してもよい。
【0079】
[制御装置の適用例]
図11は、本例の制御装置を、FA(Factory Automation)システムに適用した場合の一例を示す。
図11に示すFAシステムは、情報LAN(Local Area Network)620に接続されるサーバ520と、情報LAN620に接続される監視端末521とにより、制御LAN621に接続される第1制御装置101及び第2制御装置102の制御を実行する。
【0080】
第1制御装置101は、制御LAN621に接続されるPLC(Programmable Logic Controller)720、PLC721及びPLC722を制御し、第2制御装置102は、制御LAN621に接続されるPLC723を制御する。つまり、PLC720、PLC721、PLC722は、第1制御装置101により制御され、PLC723は第2制御装置102により制御される。
そして、PLC720は、ピッキングロボット822を制御し、PLC721は、コンベアモータ823及びカメラ821を制御する。また、PLC722は、塗装ロボット824を制御し、PLC723は、カメラ825を制御する。
【0081】
ベルトコンベア826に搭載される製品(製造対象物)は、PLC720が制御するピッキングロボット822により、所定(正規)の位置(例えば、製品の向きなど)に設置される。
ベルトコンベア826は、PLC721が制御するコンベアモータ823により、所定の速度で移動する。
ベルトコンベア826を移動する製品は、PLC721が制御するカメラ821により撮影され、このカメラ821は、この製品が所定の位置に設置されているか否かを観測する。
【0082】
PLC721は、カメラ821で撮影された製品の画像を取得し、製品が所定の位置に設置されているか否かの検査を実行する。
PLC722が制御する塗装ロボット824は、製品の表面を塗装する。
PLC723が制御するカメラ825は、塗装された製品を撮影し、製品が正しく塗装されている否かを観察する。
PLC723は、カメラ825で撮影された製品の画像を取得し、製品が正しく塗装されている否かの検査を実行する。
【0083】
そして、第1制御装置101には、カメラ821によるカメラ情報(センサ情報)が入力され、第2制御装置102には、カメラ852によるカメラ情報(センサ情報)が入力される。
第1制御装置101及び第2制御装置102は、これら入力されるカメラ情報を共有データとして制御装置間で共有する。そして、第2制御装置102は、同一の製品に対するカメラ情報の時間差に応じて選択されるカメラ情報である共有データを選択し、共有データに基づいて、ピッキングロボット822及び塗装ロボット824に対する制御指令を演算する。
【0084】
なお、ピッキングロボット822が製品を設置する時刻、カメラ821が製品を撮影する時刻、塗装ロボット824が製品を塗装する時刻、及びカメラ825が製品を撮影する時刻は、各制御装置の時刻管理部304により管理される。ここで、管理される時刻の時間差は、コンベアモータ823の速度と、ピッキングロボット822、カメラ821、塗装ロボット824、カメラ825の位置(これらの間の距離)と、により取得される。
【0085】
以上のように、本例の制御装置をFAシステムに適用することで、第2制御装置102が、第1制御装置101に接続されるピッキングロボット822及び塗装ロボット824に出力される制御指令を演算する際に、製品が通過した時刻に取得したカメラ情報から制御指令を演算することができる。このため、最適な取得情報から制御指令を演算することができ、品質、精度の高い制御を実現することができる。
【0086】
図12は、本例の制御装置を、鉄鋼システムに適用した場合の一例を示す。
鉄鋼システムは、鉄鋼の熱延設備800を、第1制御装置101、第2制御装置102、第3制御装置103、第4制御装置104及び第5制御装置105が、制御を実行する。第1制御装置101、第2制御装置102、第3制御装置103、第4制御装置104及び第5制御装置105は、共通ネットワーク600に接続される端末500により、制御される。
【0087】
加熱炉801で加熱された鋼は、熱延設備800に投入される。熱延設備800は、粗圧延機802、仕上圧延機803、冷却設備804及び巻取機805を有する。
温度センサ700により取得される加熱炉801の温度は、フィールドネットワーク601を介して、第1制御装置101に入力される。
第2制御装置102は、送り制御・板速度センサ部701を制御し、粗圧延機802の回転数を調整し、鋼の送り速度を検出する。
【0088】
第3制御装置103は、圧延制御・板厚センサ部702を制御し、仕上圧延機803の回転数や張力を調整し、鋼の板厚を検出する。
温度センサ703により取得される冷却設備804の温度は、第4制御装置104に入力される。
第5制御装置105は、巻き取り制御・板厚センサ・板速度センサ部704を制御し、巻取機805の回転数を調整し、鋼の板厚や鋼の巻き取り速度を検出する。また、第5制御装置105は、各制御装置に対する制御指令の演算を実行する。
【0089】
各制御装置101~105は、
図9及び
図10に示した動作フローに従って、制御を実行する。
ここで、各制御装置101~105における処理時間、つまり、鋼が通過する時間は、送り制御・板速度センサ部701から取得される鋼の送り速度、巻き取り制御・板厚センサ・板速度センサ部704から取得される鋼の巻き取り速度によって取得される。さらに、鋼が通過する時間は、加熱炉801と熱延設備800との間の距離、粗圧延機802、仕上圧延機803、冷却設備804、巻取機805の位置(これらの間の距離)によっても取得される。但し、鋼が通過する時間を得るために、これらの情報のいずれかを省略してもよい。
【0090】
また、各センサで取得する前述の温度や張力、板厚は、時系列データとして一定時間の情報を用いてその変動振幅や変動周期を解析し、板厚が均一となるよう第3制御装置103が仕上圧延機803を制御する。
【0091】
以上のように、本例の制御装置を鉄鋼システムに適用することで、各制御指令を演算することができる。具体的には、粗圧延機802の回転数を調整するための制御指令、仕上圧延機803の回転数や張力を調整するための制御指令、巻取機805の回転数を調整するための制御指令を演算する際に、鋼が通過した時刻に取得したセンサ情報から演算することができる。
このため、現在の状態から過去の状態を推定し、この推定結果に基づいて制御対象への制御指令を演算する方法と比較して、最適な取得情報から制御指令を演算することができ、品質、精度の高い制御を実現することができる。
【0092】
[変形例]
なお、ここまで説明した制御装置は、
図11に示すFAシステムや
図12に示す鉄鋼システムの他、上下水処理システム、発電制御システム、エレベーター制御システム、鉄道制御システム、自動車制御システム、建設機械制御システムなど、種々の制御システムに使用することができる。FAシステムや鉄鋼システムの場合であっても、
図11や
図12に示すシステム構成は一例であり、制御装置の数などの構成は、適用される制御システムによって変化する。
【0093】
また、本発明は上述した実施の形態例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した実施の形態例は本発明を分かりやすく説明するために、具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を有するものに限定されるものではない。
また、ある実施の形態例の構成の一部を、他の実施の形態例の構成の一部に置換することもできる。また、ある実施の形態例の構成に他の実施の形態例の構成を追加することもできる。また、各実施の形態例の構成の一部について、それを削除し、他の構成の一部を追加し、他の構成の一部と置換することもできる。
【0094】
また、
図2、
図3、
図4などの構成を示す図では、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものだけを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【0095】
また、上述した実施の形態例で説明した制御装置は、
図3や
図4に示す各処理機能部を、ソフトウェア(プログラム)で構成してコンピュータに実行させる他に、一部又は全ての処理を実行する専用のハードウェアで構成してもよい。プログラムで構成する場合のプログラムなどの情報は、HDD(hard disk drive)やSSD(Solid State Drive)などの不揮発性ストレージの他に、半導体メモリ、メモリカード、光ディスク等の記録媒体に置くことができる。
また、制御装置の一部又は全部をハードウェアで構成する場合、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)で構成することができる。
【符号の説明】
【0096】
1、600…共通ネットワーク、20、21、22、601…フィールドネットワーク、1001、1011、1021…CPU、1002、1012、1022…メモリ、7、10、12、13…センサ、8、11…モータ、9…アクチュエータ、100、102、103、104、105…制御装置、1003…通信制御部、1004…インタフェース部、1005…不揮発性記憶媒体、1006…バス、1007…入出力部、300…時刻同期部、301…通信部、302…同期更新部、303…共有データ格納部、304…時刻管理部、305…入出力制御部、401…領域設定部、402…情報保持部、403…情報選択部、404…演算部、520…サーバ、521…監視端末、620…情報LAN、621…制御LAN、700、703…温度センサ、701…送り制御・板速度センサ、702…圧延制御・板厚センサ、704…巻き取り制御・板厚センサ・板速度センサ、720、721、722、723…PLC、822…ピッキングロボット、821…カメラ、823…コンベアモータ、824…塗装ロボット、825…カメラ、826…ベルトコンベア、800…圧延設備、801…加熱炉、802…粗圧延機、803…仕上圧延機、804…冷却設備、805…巻取機